システム技術開発調査研究 17−R−10
高信頼性トレーサビリティシステム に関する調査研究
報 告 書
― 要 旨 −
平成18年3月
財団法人 機 械 シ ス テ ム 振 興 協 会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件は 急速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、直 面する問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度化 する社会的ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。
このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興 協会では、日本自転車振興協会から機械工業振興資金の交付を受けて、機械システムの開 発等に関する補助事業、新機械システム普及促進補助事業等を実施しております。
特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技 術、あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますの で、当協会に総合システム調査研究開発委員会(委員長 政策研究院 リサーチフェロー 藤正 巖氏)を設置し、同委員会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業 を民間の調査機関等の協力を得て実施しております。
この「高信頼性トレーサビリティシステムに関する調査研究報告書」は、上記事業の一 環として、当協会が社団法人北海道総合研究調査会に委託して実施した調査研究の成果で あります。
今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の成果が一つ の礎石として役立てば幸いであります。
平成18年3月
財団法人機械システム振興協会
はじめに
平成 13 年 9 月、わが国で初の BSE 感染牛が発覚し、食品に対する国民の不安が高まると 同時に食品の安全・安心に対する関心も高まった。しかし、その後も様々な食品の偽装表 示の問題や無認可食品添加物の使用が明らかになるなど、食品の安全・安心に対する国民 の信頼は大きく揺らいだ。これに対して、農林水産省では食の安全・安心に対する信頼回 復のため、牛肉については、「牛の固体識別のための情報の管理及び伝達に対する特別措置 法」(牛トレーサビリティ法)を施行し、各流通段階で牛の固体番号が記録され、生産・流 通の履歴がたどれるようになっている。
こうした中、国や地方自治体の働きかけもあって、各地で実証実験の実施が進むなど、
食品流通全般にトレーサビリティシステムの導入機運が高まっている。しかしその有用性 が認められつつも、情報の入力・管理に煩雑な作業が伴うこと、消費者が価格転嫁を必ず しも受け入れていないこと、また産地の情報等、情報自体の信頼性を確保することが出来 ていないことなど、多くの課題が残されており、これら課題解決につながる調査研究を推 進することが求められている。
本調査研究では、特に食品の偽装表示の問題に着目し、偽装を防止し、情報の信頼性を 確保する「高信頼性」トレーサビリティシステムの開発の可能性を探るとともにその必要 性の調査を行い、効果的で円滑なシステムの導入と普及を目指している。近年、経済のグ ローバル化が進む中、商品や原材料を海外から調達している事例が多いことに加え、世界 的な健康・安全嗜好の高まりから、信頼できる日本の食品が国際市場で認められ需要が拡 大しており、今回調査研究を行うシステムは、国内だけでなく海外における日本製品の高 付加価値を確保する手段となることが期待できる。
平成18年3月
社団法人北海道総合研究調査会
目 次
序
はじめに
Ⅰ 調査研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Ⅱ 調査研究の実施体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Ⅲ 調査研究の要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第 1 章 トレーサビリティに関する動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 1‑1 トレーサビリティシステム導入の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 1‑2 トレーサビリティシステムの導入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 第 2 章 トレーサビリティに関する取り組みと意識・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 2‑1 アンケート調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 2‑2 ヒアリング調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 第 3 章 高信頼性トレーサビリティシステムの技術的検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 3‑1 偽装を防止する技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 3‑2 トレーサビリティシステムへの応用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 3‑3 高信頼性トレーサビリティシステムの提案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46 第 4 章 調査研究の課題及び今後の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 4‑1 課題の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 4‑2 今後の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
Ⅰ 調査研究の目的
近年、BSE、偽装表示事件などを背景とし、安全・安心で良質な食品を求める消費者ニー ズの高まりに対応し、食品流通全般にトレーサビリティシステムの試行的な導入が進めら れてきている。しかし、その有用性を認められつつも、現状ではトレーサビリティシステ ムの導入は試行的段階にあり、今後より実用的な導入に向けて、従来の課題解決につなが る調査研究を推進することが求められている。
そこで本調査研究では、特に食品の偽装表示の問題に着目し、偽装を防止し、情報の信 頼性を確保する「高信頼性」トレーサビリティシステムの開発の可能性を探るとともにそ の必要性の調査を行い、効果的で円滑なシステムの導入と普及を目指すことを目的として いる。
Ⅱ 調査研究の実施体制
社団法人北海道総合研究調査会は、情報の偽装を防止する「高信頼性トレーサビリティ システム」に対する調査研究を行うために、外部有識者からなる「高信頼性トレーサビリ ティ調査検討委員会」を設置し、より効果的で円滑なシステムの導入と普及にむけての議 論を行った。また一部の業務は、専門的な知見を有する業者に対して外部研究・外注を行 った。
三菱電機株式会社 再委託
委託
高信頼性トレーサビリティ調査検討委員会 社団法人北海道総合研究調査会
総合システム調査研究開発委員会 財団法人機械システム振興協会
総合システム調査開発委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長 政策研究員 藤 正 巖
リサーチフェロー
委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 太 田 公 廣 産学官連携部門
コーディネータ
委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携部門
コーディネータ
委 員 東北大学 中 島 一 郎 未来科学技術共同研究センター
センター長
委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫 総合理工学研究所
教授
委 員 東京大学大学院 藤 岡 健 彦 工学系研究科
教授
委 員 東京大学大学院 大 和 裕 幸 新領域創成科学研究科
教授
高信頼性トレーサビリティ調査検討委員会委員名簿
(順不同、敬称略) 委員長 酪農学園大学 鈴 木 忠 敏
酪農学部 教授
委 員 公立はこだて未来大学 三 上 貞 芳 システム情報科学部
教授
委 員 ホクレン農業協同組合連合会 高 橋 克 典 農産事業本部
課長補佐
委 員 ナラサキ産業株式会社 近 藤 篤 祐 産業システム一課
主任
委 員 株式会社阪急品質管理センター 廿日出 芳 雄 品質管理センター長
委 員 社団法人北海道貿易物産振興会 武 蔵 外 征 常務理事
委 員 株式会社損害保険ジャパン 菅 原 哲 夫 企業商品業務部 (藤 原 秀 海)
課長代理
委 員 社団法人北海道消費者協会 須 藤 榮 商品テスト部
主任技師
委 員 自由が丘商店街振興組合 平 井 泰 男 理事長
Ⅲ 調査研究の内容
第 1 章 トレーサビリティに関する動向
1‑1 トレーサビリティシステム導入の背景
1‑1‑1 食の安全・安心に対する関心の高まり
現在、「食の安全・安心」への関心が高まり、様々なメディアで食品の安全性について取 り上げられるようになってきた。こうした一連の動きの始まりは 2001 年(平成 13 年)9 月 に発生した国内の BSE 問題に端を発する。BSE(Bovine Spongiform Encephalopathy=牛 海綿状脳症)とは、異常なタンパク質の一種であるプリオンが、脳内に蓄積されることで 発症すするプリオン病の一つであり、これに感染すると脳障害を起こし、運動失調などを きたした末に死亡することがある。この BSE に感染した国産牛が発見された事で、日本で は不安感が蔓延し国産牛肉の需要減退を招く大きな事態へと発展した。
この問題に対して農林水産省では 2003 年 6 月「牛の個体識別のための情報の管理及び伝 達に対する特別措置法」(牛トレーサビリティ法)を施行し、牛個体識別台帳を作成し、牛 ごとに個体識別番号、出生または輸入年月日、移動履歴等を記録するとともに、その情報 をインターネット等により公表するトレーサビリティシステムが構築された。
図表 1‑1 農水省の牛肉トレーサビリティシステム
生産者
と畜場
消費者
家畜改良センター
と畜報告 牛の出生・異動届出
・耳標装着
・枝肉への個体識 別番号の表示
個体識別台帳
・精肉への個体識別番号 又は荷口、ロット番号の 表示
食肉小売業
・部分肉への個体識別 番号又は荷口、ロット 番号の表示
食肉卸売業
特定料理店
DNA鑑定
・と畜後の枝肉から採取したサン プルと、小売牛肉や牛肉料理 提供店で出された牛肉DNA 照合
ア ク セ ス
地方農政事務所の立ち入り検査
農水省の牛肉トレーサビリティシステム
1‑1‑2 情報の偽装に関する問題
こうした BSE 問題が世間に浸透する事で、消費者の間では「食の安全性」に対して疑問 視する意見が強くなり、各メディアでも食に対する様々な問題を取り上げるようになって きた。そうした動きの中、新たな事件として「産地偽装」という問題が発生した。この問 題が決定的となったのは、2002 年 1 月に発覚した雪印食品の偽装牛肉事件であった。この 事件の背景として、農林水産省は BSE 発生後、国産牛に感染はないか全頭検査を行うにあ たり、全頭検査以前に解体した国産牛肉を買い取る制度を施行し、買い取った牛肉は業界 団体で焼却処分することになっていた。雪印食品・ 関西ミートセンターでは、BSE 問題以降 売れなくなって在庫がたまっていた、オーストラリア産輸入牛肉を国産牛肉のダンボール 箱に詰め替えて、日付などを偽ったラベルを貼るなどの偽装工作をした。また、その後の 調査で、同社では全社会的に人気が落ちていた北海道産の牛肉を熊本産と偽って出荷した り、輸入豚肉を国産と偽っていたことが発覚し、販売を上げるために、産地偽装が常態化 していたことが判明した。また、食肉大手のスターゼン、全農チキンフーズ、丸紅畜産等々 の産地表示偽装が続々と発覚し、牛肉だけでなく、豚肉、鶏肉といった様々な食品で偽装 が常態化していることが明らかになった(図表 1‑2)。さらには、米、野菜、魚など全食品 に偽装が及んでいることが次々と発覚し、消費者の「食」に対する不安感、不信感が高ま っていった。
こうした偽装を防ぐ取り組みとして最近では、農林水産省及び各自治体で「食品表示ウ ォッチャー」や「食品表示 110 番」が設置されている。「食品表示ウォッチャー」というの は、国や都道府県が消費者に委嘱して不正表示がないか監視するもので、全国 700 人体制 でスタートしている。これに選ばれた人には違反を見抜けるように、食品表示の仕組み、
食材に関する講習が行われる。また、「食品表示 110 番」は誰もが不正表示を発見した場合 に告発できる部署として、公的に設置されている。こうした情報提供の場により、偽装問 題は減少しつつあるが、まだ、偽装事件はなくなっておらず、消費者の不安がぬぐいきれ たとは言えない。そこで、消費者が自ら食品の安全性を調べる事ができる、「安全・安心」
な食品が消費者の目に見える形で届けられるシステムが求められている。
図表 1‑2 主な食品偽装事件 主な食品偽装事件
雪印食品 2001 年 1 月 23 日偽装発覚。農林水産省が全頭検査以前に解体し た国産牛肉を買い取る制度を悪用し、輸入肉を国産用の箱に詰め 替える。のちに国産牛肉の産地も偽装していたことが発覚した。
丸紅畜産 1999 年〜2002 年 2 月、ブラジル産などの輸入鶏肉を国産高級ブ ランド「ネッカチン」などと偽装表示した。
セントラルフーズ 2002 年 7 月〜8 月、山形産牛肉を松坂牛と偽装して販売した。
日本ハム 子会社日本フードが元専務の指示で、輸入牛肉を国産牛肉と偽装 して日本ハムを通して、日本ハム・ ソーセージ工業協同組合に買 い取らせていたことが発覚した。
スターゼン 牛肉や豚肉のパックに偽装表示シールを張って九州のスーパー マーケットなどに販売。ブランド鶏肉「みつせ鶏」に他の鶏肉を 混ぜて出荷した。
全農チキンフーズ 食肉製造の鹿児島くみあいチキンフーズと共謀し、2001 年 11 月
〜12 月、外国産鶏肉を国産と偽装し、コープネット事業連合に 出荷した。
ハンナン 農林水産省が全頭検査以前に解体した国産牛肉を買い取る制度 を悪用。BSE 検査済み証明書を大量コピーして、輸入肉に貼り付 けるなどして偽装。羽曳野市長の関与が認められるスキャンダル になった。
浅田農産 2004 年 2 月、鳥インフルエンザにかかった鶏を出荷していたこ とが判明。創業者の会長は自殺。同社は廃業。鶏大量死の届け出 を怠ったとして、家畜伝染予防法違反の罪に問われた。
出典:図解食品トレーサビリティのすべて
1‑2 トレーサビリティシステムの導入
1‑2‑1 トレーサビリティシステムに関する実証実験
BSE 問題や産地偽装問題の他にも、輸入野菜の残留農薬といった問題や、遺伝子組換え食 品の問題等が次々と明るみになり、消費者の間では「食の安全・安心」 に対しての不安を 訴える声が大きくなっていった。こうした中、安全を保証するシステムとして「食品トレ ーサビリティシステム」がクローズアップされることとなった。
こうした背景から、農林水産省消費・安全政策 課で実施しているトレーサビリティ開発 実証事業では、平成 14 年度は 7 件、平成 15 年度は 12 件が採択されるなど(図表 1‑3)、ト レーサビリティシステム関する実証実験は様々な企業・機関で実施されている。
図表 1‑3 トレーサビリティ開発実証事業
年度 団体名 対象品目 概要
財団法人日本冷凍食品検 査協会
鶏肉加工品、調 理冷凍品、水産 練製品
調理加工品のトレーサビリティおよび情報一元化管理 システムの開発
生活協同組合事業連合会 首都圏コープ事業連合
鳥唐揚げ、冷凍 野菜
加工食品の生産・加工 ・流通過程 におけるID分化・ 統 合に対応したトレーサビリティシステムの開発と実証 社団法人築地市場協会 一般鮮魚、養殖
魚等
水産物トレーサビリティ基本システムおよび水産物ID センターの構築
青果物EDI協議会 野菜、惣菜 ITを利用した生鮮及び加工食品トレーサビリティ情報 の個別開示システム
財団法人日本卵業協議会 鶏卵 鶏卵個々に識別コードを直接印字したトレーサビリ ティシステムの構築
T‑Engineフォーラム 野菜 ユビキタスID技術を用いた、青果物トレーサビリティ システムの構築
青果物流通研究会 野菜 中卸業者ネットワーク 青果物流通研究所(GLS) に おける流通履歴情報の共有システム構築と運用実験 社団法人日本フードサー
ビス協会
青果物、豚肉等 を素材とするメ ニュー
外食産業の受発注システムと連動したトレーサビリ ティシステムの構築
静岡市農業協同組合 お茶 二次元コード、SEICAデータベース及び農薬データ等を 利用したトレーサビリティシステムの構築・実 証 別海町酪農・ 乳製品ト
レーサビリティ協議会 牛乳・乳製品 酪農・乳 製品(チーズ、ヨーグルト、牛乳)における トレーサビリティシステムの開発実証試験
財団法人食品産業セン
ター ポテトチップス 加工食品(スナック菓子)トレーサビリティシステム の開発と実証
社団法人日本給食サービ
ス協会 野菜サラダ 集団給食食事業者の野菜サラダに使用する食材のト レーサビリティシステムの構築
財団法人日本冷凍食品検
査協会 鶏肉 生産農家が出荷した鶏肉を処理、加工、販売する仕組 みの実証試験を実施
財団法人都市農山漁村交
流活性化機構 青果物 販売する馬鈴薯、ねぎ、きゅうり、りんご、青みかん 等の青果物について実証試験を実施
(特定非営利法人)国際
公正取引推進協会 果汁飲料
製造する飲料水を対象として、原材料情報から製造・流 通に至る履歴データベースを第3者が管理する実証試 験を実施
社団法人食品需給研究セ
ンター 養殖かき 養殖・水 揚げされた商品について、店舗及び共同購入 により販売される生かきを対象に実証試験を実施 青果物EDI協議会 野菜
青果物の生産、市場流通、小売店に至る流通と共選共 販、個選共販、個選個販、産直といった様々な販売形 態に適応した実証試験を実施
財団法人食品産業セン
ター 水産練り製品 2次元コードを活用したトレーサビリティシステムの実 証試験を実施
全国農業協同組合中央会 米 あきたこまちについて、倉庫、精米工場を経て、店舗 で販売されるまでの経路について、実証試験を実施 平成
15年度
平成 14年度
出典:農林水産省ホームページ
1‑2‑2 高信頼性トレーサビリティシステムの導入に向けて
トレーサビリティシステムの開発や実証実験は進みつつあり、システムの導入機運が高 まっているものの、産地偽装といった問題も依然として発生しているなどの課題が存在し、
現在はまだ、システムが広く普及するまでには至っていない。
経済のグローバル化が進む中、近年の世界的な健康・安全嗜好の高まりから信頼できる 日本の食品が国際市場で認められ需要が拡大しつつある。しかし、近年では日本の食材、
特に国内外で認知度の高い「北海道」の食材に対して、海外で偽装が行われているという 報告が聞かれるようになった。一度高められた「産地ブランド」は偽装という手法を用い られると、本来の商品が持つ、優れた価値とは全く逆の不適切な評価を受け、認知度の高 さが逆に仇となり、その信用は地に落ちる事となる。こうして一度信用を失ったブランド の価値を高める事は非常に困難であり、そういった事態に陥る前に早急な対策が必要不可 欠である。だが、現在の海外での偽装技術は非常に高く、既存のトレーサビリティシステ ムでは対応しきれていないという技術的な課題がある。
こうした国内外での問題を解決するための1つの手段として、情報の偽装防止技術を用 いた「高信頼性トレーサビリティシステム」の導入は有効である。
次章以降では、こうした「高信頼性トレーサビリティシステム」について、現状のトレ ーサビリティシステムの課題及び高信頼性トレーサビリティシステムのニーズを調査する とともに、情報偽装を防止する技術に関する調査を行い、これらの調査結果から高信頼性 トレーサビリティシステムの提案及び実用化に向けた課題抽出等を行う。
第 2 章 トレーサビリティに関する取り組みと意識
2‑1 アンケート調査
2‑1‑1 調査の概要
①調査目的
高信頼性トレーサビリティシステムの導入の為には、既存のトレーサビリティシステム の現状を知り、課題や要望を把握する必要がある。そこで、生産者、食品加工業者、食品 流通業者、食品小売業者といった川上から川下での各段階におけるトレーサビリティシス テムの導入状況や意識を、また、実際にトレーサビリティシステムを使用する事になる消 費者には、食の安全・安心 やトレーサビリティに対する意識を聞く事で、現状のトレーサ ビリティシステムにおける課題等を調査した。
②調査方法
生産者、食品加工業者、食品流通業者、食品小売業者については、アンケート票の郵送 配布及び郵送回収による調査を実施した。消費者については、インターネットアンケート による調査を実施した。
③実施日程
平成 17 年 12 月 6 日〜平成 17 年 12 月 26 日
④アンケート対象
◇道内で一次産品を生産している生産者
◇札幌市・東京 23 区・名古屋市・大阪市・福岡市に事業所のある食品流通業者・食品加 工業者・食品小売業者
◇東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県に居住する 18 歳以上の消費者
⑤回収数
アンケートの回収状況は、図表 2‑1 のとおりである。
図表 2‑1 回収状況
調 査 対 象 調 査 対 象 数 回 収 数 回 収 率
生 産 者 1,000 64 6.4%
食 品 加 工 業 者 200 10 5.0%
食 品 流 通 業 者 1,000 29 2.9%
食 品 小 売 業 者 1,000 28 2.8%
消 費 者 1,000 1,000 100.0%
なお要旨版では、集計結果の考察のみを掲載した。
2‑1‑2 アンケート結果結果からの考察
アンケート結果より、消費者と食品業者との間での意識の違いや、今後のトレーサビリ ティシステム普及にあたっての課題等を考察する。
(1)食の安全・安心について
食の安全・安 心については多くの消費者が関心を持っており、食品購入時においては、
高齢になるほど「味」や「価格」よりも「安全性」を重視するという傾向が見られた。特 に関心が強い事柄としては、「BSE」への関心が一番高かったが、「食品添加物」や「鳥イン フルエンザ」「残留農薬」「産地偽装」といった問題への関心も同様に高くなっていた。
図表 2‑2 食の安全・安心について(N=1,000)
44.7% 53.4% 1.9%
0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 100.0%
大変関心がある すこし関心がある
まったく関心がない 関心がある
約98%
関心のある問題
・BSE
・食品添加物
・ 鳥インフルエンザ
・産地偽装
高齢になるほど味や価格よりも安全性を重視している
(2)商品ラベルの確認
食品の安全・安心については多くの消費者が関心を持っていることがわかったが、実際 の日常生活で食品を購入する際には、何に気をつけているかを調査するために、商品ラベ ルで確認する項目について聞いてみた。実際に食品を購入する時に商品ラベルを確認する 消費者が大多数であり、商品の種類にもよるが、「原産地」や「賞味・消費期限」を確認す るという意見が多かった。特に肉類や魚貝類、農産物については、その傾向が強く見られ た。
図表 2‑3 商品ラベルの確認(N=1,000)
41.9% 56.1% 2.0%
0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 100.0%
必ず見る 商品によっては見る
ラベルを見る 約98%
全く見ない 確認する項目
・賞味期限、消費期限
・原産地
(3)トレーサビリティシステムの必要性
トレーサビリティシステムの必要性については、食品業者では約 7 割、消費者では約 9 割が必要としている事がわかった。トレーサビリティシステムが必要だと思う理由につい ては、「商品の安全性を示すことで、イメージが向上するから」という、商品のイメージア ップに関する理由が最も多いが、「消費者が求めているから」「事故があった時に、すぐに 原因追求ができるから」といった意見も多く見られた。
一方、トレーサビリティシステムが必要ないという意見も食品業者では 3 割程度見られ た。理由としては「現状のままで安全性は十分だと思うから」といった、現状維持を望む 意見も多かったが、「導入コストの負担が大きいから」「維持管理費が高いから」といった コスト面や、「操作に手間がかかるから」「情報に信頼性を持たせるのは難しいから」とい ったシステム面での不備を理由に挙げる意見も多く見られた。
図表 2‑4 トレーサビリティの必要性(消費者 N=1000,食品業者 N=124)
4.0%
70.2% 25.8%
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0%
22.0% 71.1% 5.4%
1.5%
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0%
絶対に必要である
食品業者
消費者
必要である 約9割 必要である 約7割
必要だと思う 必要ないと思う 無回答
あった方が良い なくても良い 必要ない
必要ない理由
・ 安全性を示して商品のイメージアップができ るから
・消費者が求めているから
・事故があった時に原因追求ができるから 必要である理由
・現状のままで安全性は十分だから
・コストや作業面での負担が大きいから
・ 情報に信頼性を持たせるのは難しいから
・売上げ向上が見込めるとは思わないから
(4)情報の提供について
今後トレーサビリティシステムを強化・導入して欲しい商品については、「牛肉」「豚肉」
「鶏肉」といった肉類が多かった。また、トレーサビリティシステムから提供して欲しい 情報については商品毎に違いがあり、畜産物では「飼料への農薬使用状況」や「品種」と いった情報提供の要望が高かったが、水産物では「水揚げ場所」や「水揚げ日」といった 鮮度に関わる情報、農産物では「農薬の種類」や「農薬散布回数」といった農薬に関わる 情報、加工食品では「原材料の消費期限」や「原材料の原産地」といった原材料に関わる 情報提供の要望が高かった。
情報提供の方法については、40 歳未満ではインターネットや店頭の端末での情報提供を 望む意見が多かったが、40 歳以上では説明の掲示といった方法を望む意見が多かった。
図表 2‑5 情報の提供について(N=1,000)
57.7%
55.6%
48.1%
59.9%
46.2%
57.9%
57.6%
49.5%
0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0%
畜産物
水産物
農産物
加工食品
原材料の原産地 飼料への農薬使用状況
品 種
水揚げ場所 水揚げ日
農薬の種類 農薬散布回数
原材料の消費期限
29.2% 30.1% 38.7% 1.0%
1.0%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
その他 40歳未満の
要望が高い
40歳以上の 要望が高い
お客様相談室で専門 担当官が説明する 各商品の売場に
説明を掲示する 各売場に情報提供用の 端末を置く
インターネットで商品情報を 見られるようにする
(5)トレーサビリティシステムの課題・問題点
ここまでの結果でトレーサビリティシステムが必要とされている事が分かったが、実際 にはまだ 3 割程度しか導入されていないというのが現状であった。トレーサビリティシス テムを普及させるにはいつくかの課題があるが、一番の課題は「導入コストが高い」とい う点が挙げられた。誰がコストを負担するかについては、食品業者の意見としては、消費 者がコストを負担すべきという意見が多かった。もし、コストを負担するとするならば、
商品単価の何%までなら上乗せされても許容できるか聞いてみると、食品業者、消費者とも に商品単価の「1%以内」ならば良いという意見が多かったが、「まったく許容できない」と いう意見も多く見られた。
またコストの他にも、「取引する業者によってシステムが異なる」や「システムの操作方 法が複雑」「データの誤入力が発生する」「データの偽装が容易」といったシステム面での 課題も多く挙げられた。
システム面での操作の許容範囲については「手書きで伝票に書く程度」や「キーボード でデータを入力する程度」なら許容できるという意見が多かったが、「現状の作業以上に手 間をかけるべきでない」という意見も多く見られた。
図表 2‑6 商品単価に上乗せされるコストの許容範囲
(食品業者 N=124,消費者 N=1,000)
16.7% 35.2% 28.6% 16.0% 2.0%
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0%
16.9% 50.0% 16.1% 5.6% 11.3%
無回答
それ以上 でも可 まったく許容 5%以内
できない
食品業者
消費者
1%以内
3%以内 コストは消費者が負担するべき(6)情報の偽装問題について
偽装問題の防止については、「偽装した人・業者に対する罰則を強化する」という意見が 消費者、食品業者ともに一番多かった。また、消費者サイドでは「行政指導・立ち 入り検 査を強化する」といった行政からの抑止力による偽装防止方法や、「食品業界以外の第三者 機関が情報を管理する」といった、食品とは直接関連のない中立の機関による適切な情報 を管理を行う必要があるという意見が多かった。
一方、食品業者サイドでは「業界団体(農協・ 漁協等)が情報を管理する」といった業 界が責任を持って情報を管理するといった意見や、「食品業界における食の安全・安心に対 する意識を高める」といった、業界のモラルの向上により偽装防止を防ぐ必要があるとい う意見が多かった。
図表 2‑7 偽装問題の防止について(消費者 N=1,000 食品業者 N=124)
業界団体(農協・漁協等)が情報を管理する 食品業界以外の第三者機関が情報を管理する 食品業界における食の安全・安心に対する意 識を高める
行政指導・立ち入り検査を強化する 偽装した人・業者に対する罰則を強化する 内部告発者を保護する仕組みを整える 商品や売り場に生産者の写真を貼り付ける 偽装されない仕組み(システム)を開発する 偽装できない科学的な情報と関連づける 流通経路の透明性を向上する
特に必要ない その他
16.9%
21.0%
2.4%
31.5%
10.5%
32.3%
1.6%
3.2%
41.9%
39.5%
41.4%
14.5%
0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0%
27.0%
19.1%
4.8%
34.7%
11.0%
17.1%
1.5%
0.6%
42.7%
41.0%
25.4%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
47.5%
食品業者 消費者
(7)食の安全・安心、トレーサビリティシステムについて
こうした食の安全・安心 やトレーサビリティシステム全般について、消費者が実際に感 じている事を自由記述形式で消費者 1,000 人に聞いてみた。「わからない」「特にない」と いった意見が半数近くあったが、具体的な意見も多く見られた。食品の安全・安心 を望む 声とともに、現在の制度に対する問題点や、システム面での改善、コスト面での要望等の 意見が多く見られた。また、情報面での要望も多く「わかりやすく信頼できる情報が欲し い」という意見が多く見られた。他にも、問題を起こさないために「業界や消費者の意識 の向上」が必要であるといった意見もあり、今後はこうしたニーズを踏まえてトレーサビ リティシステムの導入を検討していく必要があると思われる。
図表 2‑8 食の安全・安心、トレーサビリティシステムについて
制度
◇内部告発者を保護する仕組みが必要
◇違反した業者に対する罰則の強化が必要
◇第三者機関による管理を行う事が必要
◇行政が責任をもって管理を行う事が必要
◇税や補助金での支援が必要
◇食の安全について各国共通のボーダーラインを定 める事が必要
◇偽装が出来ない仕組み(システム)が必要
◇流通経路を明確にするシステムが必要
◇消費者が簡単に使えるシステムが必要
◇ICタグやQRコード、RFIDタグの導入が必要
システム
コスト
◇なるべく安い方が良いが、安全・安 心な食品が手 に入るならば、多少値段が上がるのも仕方がない
◇トレーサビリティシステムの導入は賛成だが、商 品価格に上乗せして消費者に負担をかけるのはや めて欲しい
◇ 信頼性とコストのバランスが重要だと思う
情報
◇消費者にわかりやすい言葉で情報を提供して欲しい
◇信頼のできる正確な情報を提供して欲しい
◇原材料の情報をもっと明確にして欲しい
◇インターネットや冊子、売り場での直接の説明など 様々な方法で情報を提供して欲しい
◇アメリカ牛など輸入品について詳しい情報が欲しい
意識向上
◇消費者の信頼を裏切らないよう、安全で安心な物を 提供して欲しい
◇食品業界全体のモラルを高める事が必要
◇食の安全・ 安心についての意識を高める教育が必要
消極的意見
◇どんなに優れたシステムでも、必ず抜け道があり最 終的にはモラルの問題となると思う
◇マスコミに踊らされて神経質になり過ぎている。本 当に必要があるのか疑問である
◇自分で生産した物以外は何も信じられない
2‑2 ヒアリング調査
現在、食品トレーサビリティシステムの導入は進みつつあるが、実際に導入している現 場では維持管理費といったコストや作業負担等といった様々な課題を抱えていると考えら れる。こうした課題や、システムを導入した後の消費者の反応や要望など、実際の現場に おける詳細な情報や考え方等を把握するために、生産者、加工業者、流通業者、小売業者 に対してヒアリング調査を行った。またあわせて情報の偽装に対応する高信頼性トレーサ ビリティシステムのニーズに関してもヒアリングを行った。
ヒアリングした内容としては全体を通して言えば、偽装が発生することにより著しく商 品のブランド価値が失われる商品、例えば産地名がブランドになっている商品(地域ブラ ンド商品)について、高信頼性トレーサビリティシステムのニーズは高いのではないかと いう意見が多く聞かれた。また産地は消費者が重視する情報であり、産地情報の偽装を防 ぐことは生産者と消費者のニーズが一致するとの意見も多かった。
また各事業者、消費者個別のヒアリング内容として、特に今後のトレーサビリティシス テムの方向性を考える上で有用と考えられる意見を以下に示す。
①生産者(米生産農家)
安全で安心な物を作り、それを消費者に届けたいとの思いがある。
産地を偽装した商品が出てくると、地域ブランドを失墜させることになるので、非常に 困る。近年ではブログで生産過程の公開するなど、生産者と消費者とをインターネットを 通じて距離を縮める事で信頼性を高める「コミュニケーションツール」としての役割も今 後のトレーサビリティシステムの一つ可能性であると考えられるではないか。
②食品加工業者(乳製品の加工)
食品加工業者は品質に関する安全面での管理を重要視しており、品質情報をホームペー ジで公開している。
取引を行う生産者と連携した地域ぐるみでの産地ブランドの構築という動きが高まって いる。せっかく高めたブランドも、偽装した商品が 1 度でも出回ってしまうと、低下して しまう。
③流通業者(鶏卵の流通)
生産履歴を公開することは商品の大きな付加価値となるため、生産者と流通業者がお互 いに手を組んでトレーサビリティシステムを導入するという動きは、今後も広がっていく と考えられる。
「流通の中抜き論」が示唆される中、トレーサビリティシステム導入による「商品の高 付加価値化」は、他社との差別化を図る大きなポイントと成り得るものであり、今後のさ
らなる展開が期待される。
④小売業者(スーパー)
消費者に最も近い位置にあり、もし商品に問題があった時はストレートに批判が返って くるにも関わらず、生産者には一番遠い位置にあり、その流通過程を詳細に把握する事は 現状では非常に困難である。しかし、そうした課題に対応するため、生産者まで遡及が可 能なトレーサビリティシステムを自ら導入している。
消費者から「産地の証明」を求められるニーズも多く、導入コストが負担にならないレ ベルでならばトレーサビリティシステムの導入を検討したい。
⑤消費者(首都圏在住の主婦)
トレーサビリティシステムでは最低限必要な情報がわかりやすく手に入ればよく、詳細 な情報まではそれほど望んではいない。トレーサビリティシステムに求めるのは「安心の 担保」という部分であり、システムが導入されていれば、安全対策を行っている証明と言 え、安心して商品を購入できる。
産地の情報は重視しており、海外農産物の残留農薬の問題があったため、極力国内産の 農産物を購入している。海産品に関しては、居住地が海に近いため、地場産品を購入して いる。
図表 2‑9 高信頼性トレーサビリティシステムに対するニーズ
生産者 消費者
・安全・安心な商品を消費者に届けたい
・地域ブランドである産地情報を守りたい
・安全・安心な商品が欲しい
・産地情報を重視している
地域ブランドを守るため 産地の偽装を防ぎたい
加工業者 小売業者
・商品の説明責任がある
・消費者から「産地の証明」を求められる
・取引を行う生産者と連携した地域ぐるみ で産地ブランドを構築する動き
流通業者
・「商品の高付加価値化」は、他社との 差別化を図る大きなポイント
安全・安心のため偽装 のない産地情報が必要
図表 2‑10 ヒアリングを行った企業・機関
No. 業種 企業・団体 概要 取組概要
1 生産者(米) 11ヘクタ ールの稲作農家であり、J Aを介さないで米の販 売及び米 ぬかなどを用いた機能性食 品を開発・販売を お こなって いる。
位置時間 情報を保証する機能を組み 込んだトレーサビリ ティシス テムを導入している。
2 生産者(玉ねぎ、南 瓜 等)
減農薬栽 培の取り組みを通じて都市 圏の生協組合員の産 地訪問や 農業体験交流を実施。
JAを通じ 、生協等に出荷している。 トレーサビリティに 関する取 り組みとしては、伝票に情 報を書き込んで出荷 している 。
3 生産者(さくらんぼ) 特別栽培 農産物の認証を受けた、さ くらんぼを生産して おり、夏 〜秋にかけて観光農園とし て一般開放してい る。また 併設するセルフサービスの 食堂では、炭火の焼 き肉等を 安価で提供している。
安全・安 心にこだわったさくらんぼ を生産しており、特 別栽培農 産物の認証を受けている。 ホームページでは、
栽培履歴 だけでなく肥料や農薬、土 壌等の情報も公開し ている。
4 生産者(しじみ、鯨等) 水産物の トレーサビリティシステム 実証実験と実用化報 告及び水 産物流通支援サイト実証実 験報告を行うセミ ナーを開 催。
十三湖産 しじみ以外にも、キチジ( ウトロ)、ケイジ
(羅臼) 、サンマ・カキ (厚岸)、 ソイ(追直)、タラ コ(登別 )、コンブ・ヒ ラメ(福島 )等で取り組んで る。
5 食品加工(乳製 品) 乳製品に 関する品質だけでなく、牛 さらに牛が食べる牧 草、また その土壌までを対象に良品 質になるよう研究を 行ってい る。
牛乳の生 産日から、牛の食べていた 草及び草地の土壌分 析結果ま でトレースできる仕組みを 構築。ホームページ から情報 を閲覧することができる。
6 食品加工(惣菜 ) 創業60年 以上の歴史を持ち、安全な 素材と味にこだわり を持って 、煮豆や佃煮、惣菜などと いった日本の伝統的 な食品を 製造している。
消費者の ニーズがある必要最低限な 情報について自社 ホームペ ージ上で公開をしている。 現在は、一部の商品 について 、原料名、原産地、残留農 薬検査結果、遺伝子 組替えに ついて情報公開をしている 。
7 食品加工(研究 機関) 食品産業 界の調整役・ 推進役として 、各業種団体、食品 企業等と 密接な連携を図り、食品産 業界の意見を集約 し、経済 界における他部門とも密接 な連絡をとり食品産 業界の普 及啓発を推進している。ま た様々なトレーサビ リティシ ステムを開発し実証試験を 行っている。
平成14年 に水産練り製品、平成15年 にポテトチップにつ いてのト レーサビリティシステムを 開発し実証実験を 行った。 平成17年度については、冷 凍食品についてのト レーサビ リティシステムを開発して いる。
8 食品加工(検査 機関) 食の安 全と安心をまもる総合食品 検査機関 という基 本概念の 基に、幅広い分野で、分析 試験・検 査・コン サ ルティン グを総合的に実施している 。
平成14年 度、鶏肉に関するトレーサ ビリティシステムの 実証実験 を実施。神奈川や静岡に拠 点を持っている機関 と連携し て、農場→処理場→加工場 →店舗に至るまで追 跡可能な システムを構築した。
9 食品加工(牛肉 ) 農協等13 団体に所属する生産者が飼 育する牛を加工、大 手バッカ ーや量販店に販売している 。
法で規定 されているデータに加え、 生産者の情報等を自 治体が運 用するWebシステムで検索 できる仕組みを取り 入れてい る。
10 流通業者(鶏卵 ) 生産農場 は、地域の養鶏農家で組織 される農事組合法人 によって 運営されている。販売する 卵は地域の市のシェ アの3割を 占めている。
卵の履歴 書システムを導入し、ホー ムページで情報を閲 覧できる 。提供している情報として は、生産者情報、栄 養価など の商品情報、衛生管理結果 などのGPセンター情 報等があ る。
11 流通業者(牛・ 豚) 併設して セリ場があり、周辺にある 県からの畜産事業者 も利用し ている。
牛・豚に 関するシステムを導入して おり、ホームページ 上で生産 ・流通 履歴が確認できる。 BSEが騒がれる前か ら検討し はじめ、早くから情報公開 している。豚に関し ても先駆 的に仕組みを組み立てた。
12 流通業者(飲食 料品卸)生鮮魚介 類・ 有機野菜の生産地買付 、直販事業及び通販 事業を行 っている。
時期の優 れたリーズナブルな価格で ダイレクトに朝採旬 材を新鮮 な状態で消費者に届けてい る。
13 流通業者(運送 業者) 北海道を 活動基盤とする総合物流企 業である通運企業と 首都圏の 通運会社の2社が相互の輸 送ネットワークや情 報を共有 し、シナジーを産み出すこ とを目的として設立 された持 ち株会社。
送り状番 号より荷物を検索できる貨 物追跡システムを構 築、荷主 に公開している。システム は基本的に荷主に合 わせて構 築するのでバラバラなシス テムを管理するのが 大変との 意見。
14 流通業者(有機 農産物)有機や特 別栽培農産物をはじめとし た、こだわりの農産 物を生産 する生産者とそれを欲しが る小売業者などの コーディ ネートを行っている。
より良い ものを生産者と、より安全 でおいしいものを購 入したい 消費者を結びつけるトレー サビリティシステム を導入し ており、ネット上で栽培履 歴等が確認できる。
15 小売業(百貨店 ) 札幌都心 部にある百貨店。ヒアリン グは食品の品質管理 を行う部 署に対して行った。
店独自で のトレーサビリティへの取 り組みは行っていな い。スー パーと違い、商品を多く扱 わない百貨店は、ト レーサビ リティの導入はまだ消極的 だとの意見。
16 小売業(百貨店 ) 百貨店グ ループ全体の品質管理を行 う目的で設立され、
システム は当百貨店グループだけに 留まらず、広く国内 の百貨店 で用いられている。
百貨店グ ループ食の安心ネットを構 築。メーカーに原材 料などの 商品情報と各種検査、表示 内容等をシステム データベ ース登録させ、品質管理セ ンターで審査、お客 様にホー ムページを通して伝えてい る.
17 小売業(スーパー) 安全・安 心な食品の提供を基本理念 とし、公開できる情 報は全て 開示したいという経緯から トレーサビリティシ ステムを 導入した。
軽量器メ ーカーの寺岡精工とユビキ タスIDとの共同開発 によりト レーサビリティシステムを 構築した。豚肉や鶏 肉、魚の 生産履歴をパックに印字さ れたユーコードによ り追跡す ることができる。
18 小売業(小売店 ) 生産者か ら直接引き受けた有機野菜 を小売店や消費者へ 販売して いる。端境期をなくすため に全国の生産者と独 自の流通 ネットワークを構築してい る。
有機JAS認 定を取得・維持す るため に、農薬の種類・散 布回数等 の生産履歴を紙でつけてい る。
19 小売業(ネット販 売) 機械・プ ラントを販売する企業の1 部門がネット販売を 行ってい る。地域を営業する社員の 口コミで良質な食品 を開拓し ている。
他のネッ ト販売との差別化を図るた め「めじか」等の高 級魚品を 扱うことや、トレーサビリ ティシステムを導入 すること を検討している。
20 研究所 食の科学 的解析、安全性確保・ 流通 ・ 加工技術の開発な どを行っ ている。青果物ネットカタ ログは青果物にも コードを 付与する目的で開発した。
青果ネッ トカタログSEICAを開発。 SEICAで提供する情報 はあくま でカタログであり、多くの トレーサビリティシ ステムの ベースになっている。
21 研究所 プロミス が経農業を普通の産業と捉 え、近代化、効率化 に関する 研究を行っている。
農作物の 化学分析や冷熱研究を行っ ているが、トレーサ ビリティ システムに関する研究は特 化して行っていな い。
22 消費者に対する 23 グル ープヒアリング
横浜市金 沢区:ICタグを用いた実験 を行ったストアが存在す る地域で食の安全に関する 意識が高い地区に住む主 婦達6名
大阪府宝 塚市:食の安全・安心 に関 心のある、料理教室に通 う主婦等6名
第 3 章 高信頼性トレーサビリティシステムの技術的検討
3‑1 偽装を防止する技術
従来のトレーサビリティシステムに用いられるトレース情報や個体情報を扱うコンポー ネント技術として、バーコードや QR コード、IC タグ、RFID、DNA 鑑定、レーザ印字等様々 な技術がある。これらは商品の生産情報、流通管理、商品情報公開の手段として有効であ るが、以下のような課題がある。
●商品情報の信頼性がない
・システムに入力・保管される情報を保証する仕組みがない。
・情報の精度は入力する作業者(生産者、流通管理者、小売業者)に任される。
・産地情報を保証する仕組みがなく十分な研究や検討が行われてない。
など商品に紐付けられる情報に信頼性を持たせるのは難しいのが現状。
●商品個体の信頼性がない
・DNA 鑑定など一部に技術を除いて個体を確実に証明する手段がない。
・特別な鑑定はコスト、時間がかかる。
・加工食品への適用が難しい。
このような課題が存在するため、多種多様な商品においてしばしば偽造が行われている のが現実である。
より高い信頼性を有するトレーサビリティシステムを構築するためには、各種の高度な 技術を組合せて、偽装できない強固な仕組みを構築することが重要である。このための方 法として、下記の技術を検討した。
①位置時間証明システム
トレーサビリティの各段階における位置及び時間を第三者が証明することにより、産地偽 装や、製造年月日の偽造を防止し、高信頼性のあるトレーサビリティシステムを構築する。
②商品識別方式
生産段階から、生産履歴などの情報と実際の物(例えば農産物)を確実に結びつけるこ とが重要であるが、個々の物を特定することは、物の形状が千差万別であるため、非常に 困難である。ラベルを貼る方法から農産物にレーザなどを使って直接マーキングする方法 などについて検討を行った。
3‑1‑1 位置時間証明システム
1)位置時間証明システムの概要
が 高 ま る 中 、 ICT ( Information & Communication Te nology:情報通信技術)を活用し、だれもが安全・安 心に暮らせる社会システムを実 現
されたか、正しく管理されたか等を第三者によって証 高まっている。
プサービス(時刻認証
サ
れ トワークの安
定され1、またそ データ通信協会により「タイムビジネス信頼・ 安心認定制度」
(
ムは、システムの基本的なデータとして様々
な場面で使われる 位置 と 時刻 の情報を、GPS 衛星による位置情報と気象衛星から定 期
界初のシステムである。
頼性の高いシステムやサービスの提供が可能となる。
(2)位置時間証明システムの構成と動作
位置時間証明システムは、パソコンを始め、カメラ、プリンタ、携帯電話等の様々な端 末機器で利用できる。それぞれの端末で利用可能にするには、位置時間証明センターとイ した情報のやり取りを行うためのクライアント機能が必要となる。その た
末に位置時間証明コードをレスポンスとして送り返す。
(
国 民 の 安 全 ・ 安 心 に 対 す る 意 識 ch
することが期待されている。しかし、ICT による社会システムが実現された場合でも、故 意による不正、あるいは過失によってシステムで取り扱うデータが容易に改ざんされてし まうようでは、かえって社会的な混乱を招くことになりかねない。このような背景のもと、
安全・安心に関 わる行為が正当にな 明する仕組みに対する要求が
既に電子文書の存在時刻を証明するサービスとしてタイムスタン
ービスともよぶ)が商用化されている。欧米では数年前より同様のサービスが実用化さ ており、国内においても、総務省より「タイムビジネスに係る指針(ネッ
心な利用と電子データの 安全な長期保存のために)」(2004 年 11 月)が策 れに呼応して、財団法人日本
2005 年 2 月)が創設されるに至っている。
今回提案する位置時間証明情報提供システ
的に送信される雲の画像をもとに生成する証明コードにより、第三者の立場で証明する ことを可能とした世
単に数字や文字の羅列で自由に表現できてしまう位置や時刻という情報を証明すること により、ある事象がいつ、どこで生じたものかを証明したい証拠写真、食品や産廃のトレ ーサビリティといった様々な分野で信
ンターネットを介
めの開発環境として C 言語と Java のライブラリを提供している。
位置時間証明システム構成を図表 3‑1 に示す。基本的な動作は次のとおりである。
①端末から位置時間証明センターに証明コード発行リクエストを送付する。
②位置時間証明センターから端
1 http://www.soumu.go.jp/s‑news/ 2004/041105̲3.html