v
改 訂 版 序
「量子力学
1
,I I J
を書いてから2 0
年が経過してしまった.幸い多くの読 者の好評を得て版を重ねることができたのは,非常に有難いことだと思って いる.あちこちの本の切りばりでなく,自分なりにできるだけ岨輔した内容 を,自分の言葉で書こうと努力したのが良かったのではないかと思ってい る.その代り,説明が我流になるわけなので,
こんな書き方でいいのかとい う一抹の不安が伴うはずで、あるが,その点は原島鮮先生,野上茂吉郎先生 という勿体ないような立派な査読者に原稿を読んでいただけたので,安心し て勝手なことを書くことができたのである.版も古くなり活字も今の傾向からいうと小さすぎるので,改訂することに なったが,結果としてみると旧版とあまり違わないものになってしまった.
旧版を読み返してみると,
2 0
年前に全力投球をしただけあって,自分で言うのもおかしいが,我ながらよく書けていると感心して,そのままにしたい ところが大部分だったのである.量子力学も生誕から
6 0
年以上たって,も はや古典の域に達しているということもある.この
2 0
年で一番違ったことは,コンビューターの普及であろう.量子力
学の多くの問題も,むつかしい特殊関数の式をひねくり回すより,数値計算にかけたほうがてっとり早く結果をグラフに描かせ,眼で見ることができる ようになった.本書を抜本的に現代化するとしたら,そういう点であろう
.
しかし,そのような目的のためには,筆者よりず、っと適任の桜井捷海氏による『パーソナルコンピューターを用いた量子力学入門』のようなよい書物が裳華 房から出されたので,読者はぜひ本書と併用していただきたい.
この
2 0
年の聞に,上記査読者の両先生も,本選書の編集委員長の金原寿
郎先生も,みな故人となってしまわれた.これら諸先生の御助言は本書に とってまことに貴重であった.それを大切にしたかったので改訂個所が少な『基礎物理学選書
5 A
量子力学 (1)(改訂版)~ (小出昭一郎著/裳筆房)Vl 改 訂 版 序
くなってしまったのだと言ったら,著者のものぐさに対する言いわけじみて
いるだろうか.原稿の整理や面倒な校正など,いろいろお世話になった裳華 房の真喜屋実孜氏,野村孝子さんに厚く感謝したい.
1 9 9 0
年9
月小 出 昭 一 郎
Vl1
初 版 序
さきに本選書
2として刊行された「量子論 J
は,量子論に対する一般教養 的な本として,あるいは本格的に勉強を始める前に大体の概念を得るオリエ ンテーションの目的で書かれたものである.最初に書いた原稿はこの目的の ためには程度が高すぎるというので,編集委員長の金原先生のおすすめに従 い,思い切ってかなりの部分を割愛した.そしてその切り捨てた部分をもと にして生まれたのがこの「量子力学J
である.従って本書は「量子論」にく らべるとやや程度が高く,将来使うために本格的に量子力学を勉強しようと いう人の入門のために書かれたものである.現在では,物理の専門家でなくても量子力学を必要とする分野は多いので あるから,大学一般教養課程の古典物理学と同程度でしかも実用になる量子 力学の参考書は当然要求されている. 量子力学は古典物理学よりずっとむ ずかししかなり程度の高い力学や電磁気学をおえてからでなければ手のっ けられないものである"というような神話か伝説(?)があるとしたら,も うこの辺でこれを打破したいというのが著者の願いである.
そこで本書では,予備知識としては,大学理科初年級の一般物理学と数学 のみを要求するにとどめ,大学
2
年生や高専上級の読者でも好学の士ならば 楽に読み通せるようにした.この点には,査読者の原島鮮先生も非常に気を つけて下さったので,自信をもってそう言いうると思う.そのために,特殊 関数を使い慣れないと理解しにくい記述は避け,その代り本質的なことは初 等的な例から説きおこしてくわしく説明を加えた.計算もできるだけ具体的 な例をとって式の変形なども省略せずに記した.省いたところは読者自ら紙 と鉛筆をとって試みられればできるはずであり,そうすることによって理解 が定着するから,必ず試みていただきたい.また,前の方を参照するところ には,できるだけそのページ数を記しておいたから,見るべきところは見てVlll 初 版 序
いただきたい.
「量子論」に使った原稿のところは新たに書き直して補ったが,その際,
なるべく記述の仕方を変えるよう努力し,
r
量子論」をおえて本書に進まれ る読者が損をしたような気にならないよう留意した.しかし,同じ対象を同 じ人聞が時期を隔てず書くので,似たような記述や若干の重複は避けられな かった.ご了承をお願いする.量子力学では,扱う対象によって,使う方法がいろいろである.波動関数 の形を問題にすることもあるし,行列ばかりいじくりまわす場合もある.し かし,量子力学の骨組みは一貫しているので,表面に気をとられてそれを見 失うことがあってはならない.そのための配慮は他書にはないくらい行なっ たつもりである.
最初の章には,簡単な量子力学史を記したが, 量子力学そのものを知らな いと何のことかわからない所も多いと思う.そういう所は気にせずに読みと ばして欲しい.後の方へ進んでから,頭の疲れたときの気晴らしにでも読み 返して頂ければよいと思って書いたのである.
執筆にあたっては,第
l
章を除き,あまり他書を見ないようにし,切りば り式の本になることを避けたので,記述には我流のところが多い.それに よってひとりよがりの誤りをおかすと困るのであるが,幸い野上茂吉郎先生 と原島鮮先生が実にていねいに査読して下さっているので,安心して書くこ とができた.両先生に厚く感謝申し上げる次第である.「量子論」のときと同様,今回も裳華房の遠藤恭平氏,官沼洋子氏には一 方ならぬお世話になった.厚くお礼申し上げたい.
昭和
4 4
年3
月小 出 昭 一 郎