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先天性肺動脈弁狭窄に対する経皮的Balloon Valvuloplastyの v−

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日本小児循環器学会雑誌 2巻3号 301〜305頁(1987年)

先天性肺動脈弁狭窄に対する経皮的Balloon Valvuloplastyの

       v− 

         ゆ

フォローアヅフ・スタァィー

(昭和61年8月1日受付)

(昭和62年1月14日受理)

横地 一興

    豊田

  久留米大学医学部小児科

三ケ島尊利  一ノ瀬英世  坂本 博文 温  赤木 禎治  加藤 裕久

  北九州中央病院小児科

 鈴 木  和 重

key words:バルーンカテーテル,経皮的肺動脈弁形成術,肺動脈弁狭窄,フォローアップスタディー

      要  旨

 16例の先天性肺動脈弁狭窄(val PS)に対し,延べ18回の経皮的balloon valvuloplastyを行い,うち

11例に1年後の経過観察を行った.7例は心カテーテル検査,4例はドプラー心エコー図で肺動脈弁圧 較差を計測した.心カテーテルを行った7例中2例に1年後,さらに右室圧低下に伴う圧較差の減少が

見られ,右室造影で右室流出路狭窄の改善が確かめられた.圧較差が高かった2例に対し,再度valvulo−

plastyを行い有効であった.全例に軽い肺動脈弁逆流がドプラー心エコー図で観察されたが,臨床的に 問題となるものはなかった.心電図の右軸偏位,右室肥大もvalvuloplasty後改善した. balloon valvulo−

plastyはval PSの治療として有効で,しかも安全な方法であり,効果の持続性も期待できると考える.

 先天性肺動脈弁狭窄に対するバルーンカテーテルを 用いた経皮的肺動脈弁形成術(Balloon Valvuloplas−

ty)の効果および安全性については多くの報告があり,

広く認められるようになってきた1)』5).しかし,長期的 な効果の持続性あるいは後遺症の問題などは今後検討 されねぽならない課題である.我々は1984年よりbal−

loon valvuloplastyを肺動脈弁狭窄に試み,その有効 性を報告した6).今回,balloon valvuloplastyを行っ た例のフォローアップスタディーとして,1年後の血 行動態および形態の変化を検討した.

        対象および方法

 対象は1984年6月より1986年7月までにballoon

valvuloplastyを行い有効であった16例中,心カテーテ

ル検査あるいはドプラー心エコー図で検討した11例 で,男児7名,女児4名である.フォローアップ時の 年齢は3歳から9歳であった.フォローアップ期間は

別刷請求先:(〒830)福岡県久留米市旭町67      久留米大学医学部小児科  横地 一興

7ヵ月から13ヵ月(平均12±4ヵ月)であった.

 方法は7例に心臓カテーテル検査を行い,4例はド プラー心エコー図(アロカ,SSD−730)で主肺動脈内の Peak Flow Velocityより簡易ベルヌーイ法(P=4V2)

を用い肺動脈右心室収縮期圧較差(SPG)を推測した.

 全例,心電図,胸部レソトゲン,断層心エコー図お よびドプラー心エコー図を記録しballoon valvulo−

plasty前,および24時間後の値と比較検討した.

      結  果  心内圧の変化

 11例の術前右室圧(RVP)は97±32/5±5mmHgで

肺動脈右室収縮期圧較差(SPG)は73±32mmHgで

あった.術直後の右室圧は48±18/5±4mmHgで圧較 差は28±152mmHgと有意(p<0.01)に低下した.フォ

ローアップ時7例の右室圧は56±20/5±4mmHgで収 縮期圧較差は27±23mmHg,さらにドプラー心エコー

図による圧較差の推測値を臓ると21±19mmHgで

あった(表1).

 心カテーテルを行った7例中2例に,一年後,さら

(2)

表 1

Pre valvuloplasty Post valvuloPlasty Follow−up data Patients Age Sex

RVP PAP AOP SPG RVP PAP AOP

SPG

RVP PAP AOP SPG

1 5

M

120/8 24/16 110/60 96 55/8 14/9 105/55 41 95/12 26/20 110/66 69

2 5

M

85/10 22/18 100/58 63 35/8 16/11 95/58 19 45/8 25/14 140/70 20

3 4

M

115/0 26/11 124/56 89 36/0 27/0 117/42 9 45/3 33/15 126/65 12

4 3 F 149/14 23/17 102/49 126 86/12 34/19 100/52 52 49/6 43/12 103/69 6

5 4

M

100/5 20/12 100/45 80 68/10 2⑪/12 120/60 48 70/0 25/15 105/65 45

6 6

M

92/0 21/8 103/67 71 37/0 14/6 79/49 23 48/0 22/15 132/86 26

7 5 F 137/0 21/10 109/63 116 59/5 18/11 98/59 41 40/4 29/8 121/60 11

一一一一一一一A−一百.一一一一一≡A.一一一一一一一 一一一一一一一一一一一一一一一一←一一一一一梧≡≡≡≡一一,一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・A−一一→一一←一←一一一一一一一一一一一一一一一一一一一「 一一一一F−一一 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

8 8 F 45/4 22/15 125/60 23 36/9 22/14 120/68 14 8

9 9

M

55/10 22/12 120/65 33 30/4 16/7 104/75 14 15

10 4

M

79/0 29/18 95/47 50 35/0 15/10 99/63 20 11

11 4 F 90/0 25/13 92/45 65 51/2 22/15 93/50 29 12

RVP:Right Ventricular Pressure, PAP:Pulmonary Arterial Pressure, AOP:Aortic Pressure SPG:Pulmonary to Right Ventricular Systolic Pressure Gradient

単位はすべてmmHg.

症例8〜11はドプラー心エコー図により圧較差を測定した.

︵︸H m

0 5 1

0 0 1

0 5

芒Φ壱巴oΦ﹂コ次Φ左

Changes in PA−RV Systolic Pressure Cradient

   Before     After      Cathet.  Repeat

      Valvuloplasty 図1 心カテーテル検査を行った7例(実線)中,2  例に圧較差がフォローアップ時さらに改善した.圧  較差が大きい2例に再度弁拡大術を行った.4例(破  線)に圧較差をドアラー心エコー図で推測した.

Angiographic Findings of RVOT    in PA Balloon Valvuloplasty

Systole

Diastole

     Pre      Post   FolIow Up       Valvuloplasty

図2 フォローアップ時の右室造影で右室流出路の拡  大と,Poststenotic dilatationの改善が見られる.

に右室圧の低下に伴う圧較差の減少が見られた(図

1).

 フォローアップ心カテ時,圧較差が69および45 mmHgと高値を示した2例は,再度Valvuloplastyを

行い最終的雌縫はそれぞれ17および16mmHgま

で低下した.

 右心室および肺動脈の形態(図2)

 フォローアップ心カテ時,右室造影を行い,術前,

術後と比較した.フォローアップ時,圧較差がさらに 減少した2例では右室流出路の収縮期狭少化が緩和さ れ,主肺動脈のpoststenotic dilatationも軽減した.

 心電図変化

 1)QRS平均電気軸(図3)

 術前はプラス110±28度の右軸偏位傾向を示してい たが,フォローアップ時はプラス74±23度と正常平均 電気軸を示した.

 2)VIR波+V5S波(図4)

 右室負荷所見としてのVIR+V5Sを比較すると術 前2.9±0.9mVがフォローアップ時1.7±0.6mVと低

下した.

 3)VIT波

 術前58%が陽性T波を示したが,フォローアップ時

(3)

昭和62年5月1日

180

go

0

      x.s:1;z.E}t

       R:r 一一,Mt

      90

図3 QRS平均電気軸は,フォローアップ時,反時計  方向すなわち正常軸方向へ移動している.

Changes in

Right Ventricular Hypertrophy VIRv吉s︵哩 3・

o

       垣う一    −

1

無〆● 疋

      Before Aft●r Follovv

      UP

図4 右室肥大所見(VIR+V5S)がフォローアップ時  改善している.

は全例陰性T波となった.

 ドプラー心エコー図

 1)肺動脈右室圧較差の推測(図5)

 主肺動脈内にsample volumeを設置しpeak fiow velocityより求めた圧較差と,心カテーテル時に実測 した圧較差を比較しY=O.83X+4.9, r=0.93の良い 相関が得られた.

 2)肺動脈弁逆流の検出(図6)

 フォローアップの対象となった11例全例に術後肺動 脈弁逆流が証明された.うち1例は術前よりすでに肺 動脈弁逆流が認められた.

 心音の変化(図7)

 術前は全例,肺動脈弁口部でLevine 3度以上の駆 出性収縮期雑音が聴取されたが,術後,収縮期雑音は 減弱した.しかし,収縮期雑音が消失した例はない.

303−(49)

mmHg

75

0 5

Φ

合0

25

 ●  .

PS

s.

n:21 y=O.83x+4.9

r:0.93

0     25    50    75㎜Hg

         Catheterization

図5 ドプラー心エコー図による肺動脈弁圧較差の測  定値と,心カテーテル検査時の実測値との対比(y=

 0.83x十4.9, r=0.93)

肺動脈弁逆流の拡張早期雑音は3例で明らかに聴取さ

れた.

 合併症,後遺症

 フォローアップ時肺動脈弁逆流以外に特に後遺症は 見られなかった.

      考  案

 バルーンによる肺動脈弁拡大術は1982年Kan, J.S.

ら1)が報告して以来,比較的安全で,有効な方法として 多くの施設で行われてきた.現在は効果の持続性や後 遺症などのフォローアップスタディーが必要とされる 時である.我々は術後一年間は3〜4ヵ月毎の外来

フォローを行い,非観血的に血行動態および形態の変 化を観察し,原則として一年後に心カテーテル検査を 行うようにしている.自験11例では少なくとも術後一 年は一旦低下した右室圧の再上昇は見られなかった.

むしろ2例で右室圧がさらに低下した.しかも,2例

共に術前の圧較差が100mmHg以上の高度のPSで

あった.その右室流出路形態の変化から考えられるこ とは,高度な肺動脈弁狭窄による右室流出路筋性肥厚 が後負荷の軽減に伴い経時的に改善したためであろ

う.これは術後の心電図変化とも良く相関する.さら に長期の有効性を考える際,Valvuloplastyによる肺 動脈弁および弁輪部の形態変化を知る必要性がでてく る. Wall, J.ら7)は直視下にValvuloplasty後の肺動脈

弁を観察し,弁の変化を,1)弁交連部の分離

(4)

DopPler Echocardiography at PA Batloon Valvuloplasty

MPA

RVOT

        Before         After

図6 術前主肺動脈内(MPA)の流速の早い乱流が術後,流速の減少とともに層流に  近くなり,同時に右室流出路(RVOT)で拡張期に肺動脈弁逆流が捕えられた,

Phooocardbomph厚b●f㎝&aft●r PA V蜘bp』8ity

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   AFTER  MT   第2肋間胸骨左縁(2LIS)の駆出性収縮期雑音 がValvuloplasty後に減弱している.

(Commissural Splitting),2)弁の裂開(Cusp Tear−

ing),3)弁付着部の剥離(Cusp Avulsion)の3型に 分類している.我々も一例肺動脈弁狭窄に心房中隔欠 損を合併した例で,balloon valvuloplasty後に心房中 隔欠損の根治手術が必要となった際,直視下に弁を観 察することができたが,その例はWallらの2)の変化 に相当した.単に弁輪が拡大するのではなく,むしろ

弁そのものに大きな変化を来すことが効果の持続をも たらしているものと考えられる.その場合,valvulo・

plasty後の肺動脈弁逆流の合併が問題となる.我々の 経験でも3例に拡張早期雑音が聴取された.さらに,

ドプラー心エコー図で右室流出路を検索すると程度は 軽いが全例に肺動脈弁逆流が証明された.これはドプ

ラー心エコー図が聴診より鋭敏に肺動脈逆流を捕らえ るために我々の例は他の報告より頻度が高くなったと 思われる.しかし,幸い現在までに心拡大や心不全を 来すような管理上問題になる例はない.もちろん,肺 動脈弁逆流を作らない事が理想ではあるが,開胸術後 でも高頻度に肺動脈弁逆流を合併することや8),10W pressure chamberの右心系に逆流を作ることはhigh pressure chamberの左心系の逆流ほどsymptomatic ではないこと,valvuloplastyの持つ多くの長所,例え ば安全性,低コスト,美容的,さらには患児の精神的 負担が少ないことなどを考えれぽ,肺動脈弁逆流のた めにvalvuloplastyを中止する必要はないと思われ る.今後,さらに長期のフォローアップを重ねたうえ で,有効性についての結論がだされるべきであるが,

我々の経験では慎重な適応と手技で臨めば,開胸手術 成績に近いものが得られると考える.

(5)

昭和62年5月1日 305−(51)

      文  献

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Follow up Study of Transluminal Balloon Valvuloplasty for        Pulmonary Valve Stenosis

   Kazuoki Yokochi, Takatoshi Mikajima, Eisei Ichinose, Hirofumi Sakamoto, On Toyoda,

      Teiji Akagi and Hirohisa Kato

Division of Cardiology, Department of Pediatrics and Child Health, Kurume University School of Medicine        Kazushige Suzuki

      Department of Pediatrics, Kitakyusyu Central Hospital

    Follow・up study for 11 patients with pulmonary arterial(PA)balloon valvuloplasty was performed after one year. Two patients revealed further improvement in pulmonary arterial(PA)to right ventricular(RV)systolic pressure gradient(SPG)which was demonstrated by anatomical degradation in the RV outflow tract.

    All others remained at a same level as that immediately after valvuloplasty in all but two cases on which we performed second valvuloplasty. The QRS mean frontal axis of ECGin all these moved in a counterclockwise direction. While pulmonary regurgitation was detected by Doppler echocardiography in all cases, three of them were audible by the auscultation. From clinical view point, we have experienced no obvious problems. We find the efficacy of PA balloon valvuloplasty is sustained over long periods, further long term follow−up studies should, however, be needed to establish the conclusive agreement of PA balloon valvuloplasty.

参照

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