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Kyushu University Institutional Repository

日韓FTAと農業問題

鄭, 英一

ソウル大学経済学部 : 教授

https://doi.org/10.15017/2198489

出版情報:韓国研究センター年報. 2, pp.11-15, 2002-03-15. 九州大学韓国研究センター バージョン:

権利関係:

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日韓 FTAと 農業問題

ソウル大学 の鄭英一です。皆様 の前でお話で きる機 会 を与 えていただ き、本当にうれ し く思い ます。今 日 のテーマ は 「日韓 FTAと 農業 問題」です。 まず、 レ ジュメ とは別 に、最近 の韓 国の コメ問題 について話 し たい と思い ます。その後、 レジ ュメ に戻 りまして話 を 続 けたい と思い ます。

い ま韓 国で は 2度 目の コメの過剰問題が深刻化 して い ます。 コメが主食で ある点 は 日本 と変わ りません。

しか し、農業のなかで コメの比重が高い ことに問題の 深刻性があ ります。農家所得 のなかで コメの所得が 占 め る割含 は4分 の 1であ り、農業所得のなかで コメの比 重 は 2 分 の 1 と い う状況です。 したが つて、 日本 とは、

かな り異 なる状況 にあると推測で きる と思い ます。 し か し、都市家計 の立場 か らみ る と、 コメに対す る支 出 は平均で 2%台 です。都市家計 に とって、 コメの値段 はさほど問題ではあ りません。

最近、韓 国の コメの状況が悪化 した理 由は、構造的 な供給過剰が深刻 になつたためです。 1度 目の コメの 過剰 は、 1 9 9 0 年 代初めで した。当時、翌年繰越の在庫 が国内消費量の約40%も あ りました。 この在庫 の大部 分 は、 「統一米」 とい うイ ンデ ィカ とジャポニカのク ロス品種で した。統一米は、1970年 代のはじめに韓国 の コメ不足 を解消す るために、開発 された新 しい品種 I   R 6 6 7 で あ ります。 この品種 の導入 によって、収量 は2 〜 3 割 ほど上昇 し、コメの 自給が 1970年 代半 ばに は達成 され ました。 しか し、味が良 くない とい う特徴 があ りました。それ ゆえ、統一米 は、所得の増加 に よ る暗好の高級化 が進 むにつれ、消費者 か らは嫌 われ る 運命 にあつたのです。 しか し、 1990年 代のはじめごろ

まで、政府 は増産体制のために統一米を買い入れ ました。

だが消費者が購入 しないため、在庫 は増 えました。政 府 は、 1 9 9 3 年 か ら在庫 を一掃す る政策 を採用 し、イ ン ドネ シアヘ の輸 出な どで、 1度 目の コメの供給過剰 を

鄭   英

( ソゥル 大 学 経 済 学 部 教 授 )

乗 り切つたわけです。

2度 目のコメの過剰は、1993年の大凶作を契機 とし ています。当時、コメが不足 したため、政府は増産施 策をとりました。その結果、1990年代後半には、多 く の ジャポニカの高収量品種が開発 され まして、反収 が 平均500キ ロを越 えました。 この数字 は、 1980年 代前 半 と比べ ます と70〜 80キ ロの増産、約 17〜 18%の 収 穫増であ ります。 また、 1990年 代後半 にはWTOの 影 響で、 コメを除いた農産物 の市場開放が急進 し、他 の 作物 の植付 けが非常 に不利 にな りました。 しか し、 コ メは依然 として政府が買い上 げてい ましたので、農民 の コメ生産へ のシフ トが進 み、 コメの作付面積 は増加 しました。その結果、 コメが余 るようにな り、2001年 には、米穀年度の年度末で ある10月末 に繰越量が年 間 消費量の29%ま で上が りました。2001年 度 は非常 に作 柄が よか った ことか ら、2002年 の 10月 は年 間消費 の 39%と い う在庫の繰越が予想 されてい ます。

他方、消費 はす ごいス ピー ドで減 り、今年 は一人 当 た り90キ ロです。 日本 は65キ ロですか ら、 まだ相対的 には多 いか もしれ ませ ん。 しか し、 1990年 の数字 は 120キ ロで あ りました。 10年 の間に25%も 一人当た り のコメ消費量が減少 しました。 さ らに、韓 国の人 口増 加率は、い ま約0.8%で す。一人当た りのコメ消費量 は、

年間 3〜 4%減 つてい ます。それ ゆえ、 コメの総消費 量 は、毎年 3%と 、 ものす ご く速いス ピー ドで減少 し ている状態にあ ります。

しか し、総供給量 は安定 してい ます。冷害 さえなけ れば、台風 な どで は、 さほ ど生産が減 らない安定生産 の条件が整 ってい ます。現在の値段で は、栽培面積 も かな り増 えて きてい ます。WTO協 定 によって最小市 場接近 (MMA)に よる物量が増 え、韓 国の場含 は、

1995年 の 1%か ら2004年 の 4%へ と増 えてい ますが、

2004年 には20万 トンを超 える輸入義務があ ります。 よ

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って、年間300〜 400万 石の過剰があると思われ ます。

これ まで、韓 国は世界 のなかで例外的 にコメの政府 買い上げ価格 を上昇 させて きた唯一の国で した。 1980 年代後半 か ら、 あ らゆる国が コメの管理価格 を下 げて

きたの に対 し、韓国だけは民主化の波のなかで、 コメ の値段が毎年数%ず つ上昇 しました。その結果、 日本 の場合、政府の買い上げ価格が1986〜 88年 の平均に比べ、

最近は17%以 上引 き下げているのに対 して、韓国の場含、

同 じ期 間に 2倍 以上 、 116%も 引 き上 げてい ます。 よ って、韓国で は、 1980年 代後半 と比べて、価格が 3倍 近 く上昇 しました。絶対価格でみて も、 日本の90%近

く高い値段 になつてい ます。同 じ品質のジャポニカで 国際価格 を比べ ます と、今年の 11月 現在、韓 国の コメ の農家販売価格は、アメ リカの4.5倍、中国の5,7倍です。

韓国で は、2004年 、WTOに おけるコメ関税化の再 交渉を控 えてい ます。その時の関税率 は、約388%で す。

この数字 は1993年 のウルグアイ ラウン ドの ときに決め た ものです。そ うす ると少 な くとも5倍 以上 の大 きな 内外価格差が あ り、関税化猶予 の撤廃 は防波堤 の崩壊 を意味 します。い まの状況であれば、 もし2005年 に関 税化へ移行す ることになれ ば、韓国の コメは大変な簡 撃 に巻 き込 まれるで しょう。

政府買い上 げ制度 は、既 に限界 に達 してお りますc WTOの 規定 によ りAMS(国 内絡補助)を 減 らす義 務があ ります。市場価格 よ り高い管理価格 に よる買い 上 げは、その対象 とな りますが、WTO発 足以前の90 年代前半 まで、韓国はコメの生産量の約30%を 買い上げ、

それ を もとに して市場管理 を行 つてい ました。 しか し、

現在、買い上 げる量 は減 ってい ます。毎年、約750億 ウォンのAMSを 減 らす必要があ ります。今年 は生産 量の 15%に 過 ぎません。 これか ら市場管理 は困難 にな るで しょう。 ゆえに、政府買い上 げ価格 は、政策価格 として市場価格 をサポー トす る機能 を既に失 っています。

今年の政府買い上 げ価格 は、40キ ロ籾一俵基準で 6万 ウォン強です。他方、市場価格 は 5万 〜 5万 3千 ウォ ンと、 10〜 17%以 上低い水準であ ります。農民 は、政 府 に対 して買い上 げの拡大 を要求 してい ますが、政府

としては、 どうしようもない状況です。

また、国内補助 を減 らす必要 のあ る唯一 の国が韓 国 です。 これ はウルグアイ ラウン ド協定 の結果です。い まA M S を 実質的 に減 らさなければ、そ して 日本の よ うにコメを市場価格で買い上 げ、公共 の在庫 にす る方 式 を採用 しなけれ ば、 コメ農家 に対す る所得支援や経 営安定化 な どの追加的な政策手段が全 く得 られない状 況 とな ります。私 は、 これ は差 し迫 った問題だ と考 え てい ます。

さらに、経営規模 の零細性、 これ は 日本 と同 じです。

しか し、韓国のコメ農家の栽培面積は平均 1ヘ クタール。

また、  1 ヘ クタール未満の農家 は全農家の76%で す。

それ ゆえ、価格方式 による農家支援 は実質的 に も限界 があ ります。

つ ぎに最近、大騒 ぎになった、私が責任 を取 つてお ります韓 国の糧穀流通委 員会 (日本の米価審議 会にあ た る)に つ いてお話 したい と思い ます =韓 間 にtま 時 穀管理法 に基づ き糧穀流通 委二1会 とい うユギfて重FTど れてい る制度があ ります .こ 力 委強=iti京丁!二章.!

げ価格 を提案 し、そゴノ隻 食 〜ti:==f.■!暑 を=‐ 「 るよう、雄驚主な頭ト エiJ■増 を1■t̲if こ .ざ うな持幹な革受が お :=.ニエ 豊士電 'て 。 if こ . 覇受tよ1951年 乃韓:=食:妻炉重 書,メこき、二FA r isA七担 度です .ti時 、tヨ民 う食 生掻う 責宝宅t:最 t幸 装者駐 策で あつたため、日会が関 与す る ことになったうです 1972年 か らの維新体制では、この ような調硬はけしrJ・

らん と、政府が廃止 したのですが、 1988年 に民 主化 し た とき、再び 国会が この制度 を復活 させ ました。 それ ゆえ、今で も、 この ような制度が続 け られてい るわけ です。政府が どの ような提案 を出 して も、農民 の票 を 意識す る政治家 は、常 に上積み を して コメの価格 を決 めるとい う習慣が、 これ までず つと続 け られてい ます。

この糧穀流通委員会 は、農林部長官 の諮問機関で、

民 間委員20名 で構成 されてい ます。 この内訳 は、生産 者代表が5人 、消費者代表が5人 、あ と中立的な委員が

10人 となつてい ます。 中立 的な委員 は、研究者 が5人 、 流通専門家が3人、マスコ ミ関係者が2人 であ ります。

ここで、毎年 の ことですが、 コメの値段 を どうす る のか討論 します。その とき総論で は、いかな る方 向に

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進 む必要が あるのかにつ いての同意が得 られ ます。 し か し最終段階 にな る と、農民 団体 には彼 らが政治 的に 決 めた 目標 があ りますので、 こち らの意見 とは一致 し ない とい う構造 になってい ます。そのため彼 らは退場 す ることにな り、 「一方的に委員会が決定をした」 と 非難がいつ も出て きます。今年 もまった く同様で、政 策転換 につ いて は、みんな賛成 します。 しか し、最終 段階で、消費者団体 と中立 的な委員が 「今年 はマイナ ス に しなければな らない」、 「マイナス にす る と同時 に 農家所得補填策 と経営安定策を同時に取 り入れるべ きだ」

とい う勧告 を出 しました ところ、生産者 の代表 は退場 しまして、一方的な委員会の決定 を非難す る とい うこ とになつたわけです。

私 たちは、今年 4〜 5%の 下 げ幅 を提案 しました。

約定買い上 げ制で あ りまして、今年決定 した値段 は、

来年 の米価 とな ります。今年 の米価 は、昨年 の委員会 が据 え置 きを勧告 したのですが、政府 と国会 を通 じて 4%引 き上 げにな りました。 したが って、据 え置 きか ら4〜 5%引 き下 げ となったわ けですか ら、その下 げ 幅 は非常 に大 きい とい えます。なぜ 、 この ような勧告 を したか とい ます と、委員の多 くは 自分達 の勧告 した 価格 は、政府 と国会 に行 けば上が ることを踏 まえてい ます。だか ら、あ らか じめ大幅の引 き下 げの勧告 を し ない と、委員会 の意図が最後 は逆 になって しまうと考 えるわけです。 まあ、みんなが政治家 になつた とい う 感 じです。それだ け農業 は、政治色 の濃い分野で あ る

ということは、 日本 も同 じだ と思い ます。

つ ぎに、政策の提案 について簡単 に申し上げ ます。

まず政府買い上 げ制度 が、 もとの機能 を果た していな い状況 を変 える必要 があ ります。民 間流通 を活性化す る必要 があ ります。 また、価格 と需給 は市場で決定 し、

政府は公共在庫 を確保す るために市場価格で買い入れる。

さ らに、農家 のセー フテ ィネ ッ トを作 る政策 は、価格 支持から経営安定へ と方向転換する必要があ ります。様々 な見解があ りますが、で きるだ け農家経営の 自立性 を 高 め、直接支払 い制 を現実化す る。品質 中心 の流通へ の改善、消費者 を中心 とした政策転換 のや り方 も検討 す る。 この ような事柄が勧告 に含 まれ ました。

その後、各団体の動 きが観察 され ました。 その動 き のなかで、重要なことだけを幾つか申し上げます。 まず、

農民団体 の反発です。韓 国には経済関連省庁が集 まつ てい る政府果川 (クワチ ョン)庁 含 とい う場所があ り ます。その果川 に、今年の 11月 末、 2万 人以上の農民 が押 しか けるとい う大 きな騒 ぎがあ りました。農民 団 体の意見 は、所得補償 がなければ、価格引 き下 げには 絶対反対 とい うことです。政治家 も同 じ意見です。他方、

政府 は、流通委員会 の提案 を尊重 し、政策 の転換 を実 施 してい く方針で あ ります。大統領 は、 11月 末 に、従 来の コメ政策 は問題があ り、その転換 は避 け られない とい う見解 を発表 しました。今後、大統領傘下の特別 委員会が組織 され、WTOの 交渉 に向 けて政策 の転換 を検討す る準備 が開始 された と、問いてお ります。最 後 に、マス コ ミは、私 たちの提案 を 「当然で ある」 と して支持 してい ます。彼 らは、い まの うちに転換 しな い と2005年 には大変な ことになると、 コメ産業 を救 う ために も積極的な転換が必要であると主張 してい ます。

今後の展望 について、私の個人 的な見解 を聞いて頂 きたい と思い ます。 コメ政策 の方 向転換 はスター トし 始 めた と思い ます。来週 、政府案 を国会 に提 出す る予 定ですが、 コメの買い取 り価格 は、前年比 4〜 5%減 は無理で も、 2〜 3%減 あるい は据置の提案 にな る と 思い ます。ただ国会の承認 は越年 とな るで し ょう。政 治家 は、農民 の所得補填 に対 して、 しつか りとした政 府の回答 を得た後 に、承認 をす ると思われ ます。

以上が、大 まかな現状で あ ります。韓 国は、 ウルグ アイ ラウン ドの コメ交渉 において、最初 はいかなる大 統領候補 も、いかなる政党 も、 コメの輸入 は一粒足 り

とも許 さない としました。 しか し、 これ はで きない約 束で した。1994年の前年には大 きな社会的陳情 を受けて、

農漁村発展総含対策 によ り膨大 な資金 を投入 し、構造 調整 を始 めたわ けです。農民の受 け皿 がで きていない ところに、投資 または融資で農家の経営改善 をす る と い う手法で、政治的な判 断に よ り、大金が投下 され ま

した。 これ らの資金が非効率 に用い られた とい うのが、

現在の一般的な評価であ ります。

私 たちの主張 は、 この ままで は、 ウルグアイ ラウン

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ドの繰 り返 しにな るとい うことです。時間は 3年 しか あ りませ んが、最 も潜在 的な輸 出国で ある中国の米価 に合わせ るため、 コメの値段 を少 な くとも20%は 引 き 下げる必要があ ります。そして、 この引 き下げと同時に、

農民の所得補償 のために水 田農業直接支払 い制度 の強 化な どでヽヽTOで 許容 されている政策手段 を活用 します。

農業振興地域で は 1ヘ クタール当た り25万 ウォン、そ れ以外の地域で は20万 ウォンとい う水 田農業直接支払 い制度 の単価 を今 の 2倍 に上 げることがで きます。そ うすれ ば、買い入れ価格 を4〜 5%引 き下 げて も、栽 培農家の所得 にはあ ま り差が無 い とい う試算 が 出てい ます。 また、長期 的 には、 日本 、アメ リカ、そ してカ ナダで も実施 されてい る経営安定対策 な どを採用す る 必要があるで しょう。

日本の場合は、新食糧法の施行 (1995)と 稲作経営 安定政策の導入 (1998)な ど、韓国 よ り進んでい ます。

しか し、基本的 には韓国 も日本 も、高い価格で農業 を 保護す る とい う、欧米 とかな り違 った共通点 を持 つて い ます。 この辺 を、 どの ように私たちが考 えてい くのか、

それが 日韓 FTAに お ける農業 問題 の一つの大 きな焦 点 になるので はないか と思い ます。以上 を前提 としま して、テキス トの内容 をお話 したい と思い ます。

これ まで 日韓 FTAの 論議 において、両 国は、各 々 敏感な問題 を抱 えてい ます。韓 国側 は、短期的な対 日 貿易赤字 の深化 と、競争力の弱 い国内企業の対 日依存 度 の深化 を最 も心配 して きました。 これ に対 して 日本 側 は、高い障壁で保護 されて きた農業部 門に対す る影 響 を最 も懸念 してい ます。

2000年 現在、 日本の経済活動人 口に占め る農業部 門 の労働力の比重 は4.8%で あ り、農林水産業のGDPに 占める比重 は1.6%で あ ります。 これ らの数値 は、それ ぞれ韓 国の 11.4%と 4.6%に 比較 します と、かな り低 い水準です。 しか し、 日本の農業団体 は、農業の多面 的な機能 を強調 しなが ら、外国 との FTA推 進 において、

農産物 を除外す ることを要求 してい ます。 この ような 要求 は、農産物の輸 出競争力の強い国 と弱い国のあい だの FTA推 進 において、一般的に見 られることであ り、

日本特有の現象ではあ りません。

韓国 において も、最初の FTA交 渉相手 国で あるチ リとの交渉が 1999年 12月か ら進め られて きましたが、

農産物議許案 をめ ぐる問題が障害 とな りました。その 結果、今年 7月 発効 を目標 として進 め られた交渉 は中 断状態 にあ り、交渉 の再開は不透明 な状態 にあ ります。

韓国一チ リの農業部門の交渉 における問題点 は、FTA に ともな う農業部 門の被害予測や、それが国内の農業 政策 に及 ぼす影響 に対す る具体 的な検討が足 りなかつ た ことで あ ります。 FTA締 結後 に、被害が予想 され る品 目について、具体 的な対策 を用意す るためには、

相手 国農業 に対す る基礎研究が必要です。韓 国は、韓 国―チ リの FTA交 渉 の前 に、チ リ農業 に対す る研究 をほ とん ど行 わなか ったため、農産物議許案 は断片的 な資料 ・情報 に基づ き作成 され、非常 に不完全 な内容 に止 まつていたこと力S明らかになつてい ます。

日本 の農林水産物 の輸入のなかで、韓 国か らの輸入 は約 10%と 重要な位置 を占めてい ます。 よって、両国 の FTA推 進 において、 この分野 を例外品 目として取 り扱 うな らば、すべ ての品 目の 自由化 を目標 とす るW TO規 定 との整合性 に問題が発生 します。 ゆえに、包 括的 FTAの 一環 として、農林水産分野 を含めるため に共同の努力が要請 され ます。

すべての産業部門をカバーす るFTAと す るためには、

両国の農業政策の調和が必要であ りますこliなと韓IJは、

ともに国内農産物価格 を高水準 に維持す る ことで 婁 業 を保護す るとい う消 費者負Ⅲl理の農求皮 張を逢資 し て きました。 しか し、欧米の題勢 は、貞f安支払 目を中 心 とす る財政負担型 の農業政策へ と急速 に転換 しつつ あ ります。つ ま り、で きる限 り価格 は国際価格 に接近 させ なが ら、農家所得 の維持 は別途 の政策手段で支 え るとい う考 え方です。 この ような価格支持 か ら所得補 填 または経営安定へ の政策転換が行われ なければ、農 業問題は FTAの 足かせ になると思われ ます。

日本 と韓 国の農業 は非常 に似てい るため、WTOを 中心 とす る多国間体制のなかで互い に問題 を解決す る ため、共 同で努力 しなけれ ばな りませ ん。最近 、研究 者の間で、 この努力 を具体化す る動 きがあ ります。両 国の農業経済学会が この ようなテーマ を中心 とす る共

韓 国研究セ ンタ十年報 vo 2 14

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打5

同シンポジウムや共同研究 を推進す るため、国際交流 委 員会 を発足 させ ました。その第一 回の会議が、今年 の 10月 に東京で開催 され、第二回の会議 は12月 中旬 に ソウルで開かれ る予定 にな つてお ります。 日韓両 国が アジアの経済統含推進 において リーダー シ ップを発揮 す るためには、 自国の農業保護政策 と全般的な国民経 済 の発展 との調和 を、増進す る必要があ ります。なお、

それ に向けた、 よ り積極的な政策策定 と国民含意の形 成のための努力が必要であると思い ます。

最後 に、両国 FTA推 進 の課題 につ いて簡単 に触れ たい と思い ます。 これ まで、 日韓 FTAに 関す る議論は、

韓国の対外経済政策研究院 と日本 のア ジア経済研究所 の共 同研究 、そ して 日韓の産業協力のための民 間フ ォ ー ラムの活動を中心 に、非常に限 られた範囲で行われ て きました。 FTA締 結 は、静態的には韓国の貿易赤 字 を拡大 させ る ものの、対韓投資の増加 、生産性 向上 な どプラスの動態的な効果が、両国 ともにマイナスの 静態的な効果 をはるかに上 回 る と推定 されてい ます。

よつて、日韓 FTAは 単なる関税撤廃 に止 まることな く、

包括的 FTAと して推進 され なければな りませ ん。産 業技術協力の強化、貿易収支不均衡の改善措置、労働 時間、基準 ・認証制度 の調和 と相互承認 、貿易関連手 続 きの簡素化 ・効率化 ・電算化、投資規制の整備、 ビ ザ 関係 の手続 きの間素化 を含 む人的交流制度 、問題発 生時の支援制度、そ して知 的所有権の保護 な どが含 ま れるべ きであ ります。

しか し、 日韓 FTA推 進 のため には、両国間の相互 不信の解消 と、 FTA論 議の底辺拡大 とい う二つ の前 提が まず満た され るべ きです。韓 国は、過去 に対す る 日本 の態度 に不信感 を抱いてい ます。 日本は、韓国の 労使関係 を中心 とす る投資環境 に強い不信感 を持 つて い ます。 日本 には、成熟 した政治的先進国 として リー ダー シ ップの発揮が、そ して韓 国 には、投資環境改善 のため積極 的な努力が、要求 されてい ます。両 国間の FTA論 議 は始 まつたばか りで あ り、両 国内の大多数 の国民 は、関心が低 く、 ときには相反す る利害関係 を もつてい ます。それ ゆえ、両 国の国民 的含意 を引 き出 す までには相当に時間がかか ると予想 され ます。

しか し両 国は、EUや NAFT Aな ど、グ ローバ ル化 の波 のなかで加速化す る地域経済統含 の流れ を直視 し なければな りません。30年 間の東アジアの経済成長 は、

対米貿易 に大 き く依存 して きました。 しか し最近 は、

域内国家 間の相互依存度が急速 に高 まつてい ます。 と りわけ、最近のアジア金融危機 における地域的な同調 現象 を契機 として、地域 内の有機 的な協力体制 の形成 が不可欠であるとの意見が出されています。具体的には、

AMFや FTAの 設立の必要性が広 く提起 されてい ます。

東北アジア地域 には、い まだ に冷戦体制の遺産 、異 質的な経済体制、そ して異 なる発展段階 とい う難題が あ ります。それで も、相互協力の可能性 の高い地域や 分野 か ら、具体 的な地域経済統含 を推進 していかなけ れば、 この地域 は世界経済の流れか ら取 り残 され る可 能性があ ります。

しか し、最近で は、域 内国家間の新 しい動 きも現 れ てい ます。昨年 のシ ンガ ポール に続いて、今年 ブルネ イで開催 されたASEANプ ラス3首脳会談 において、

東ア ジア 自由貿易圏構想が提起 された ことは、非常 に 大 きな意味 を持 つてい る と思い ます。 また、 日本 はシ ンガポール とEPAを 締結 しました。なお、中国 とAS EANは 今後 10年以 内に FTAを 締結す ると含意 しま した。

このような国際環境の変化 を考慮すると、日韓両国は、

短期的 には共 同の懸案で ある構造調整 を突破 日 として、

長期的には産業技術協力のための梃子 として、戦略的 な意義 を FTAに 与 える必要があ ります。 さらにEUや NAFTAに 対応す るアジア経済統含体の結束 を視野 に 入れて、その中心軸 を構成す る作業 を推進すべ きで あ ります。 と りわけ、 日韓 FTAの 締結 に ともな う短期 的な損得勘定 を超 えて、未締結 の不利益 にこそ注 目し、

長期 的な観点か らの持続的な努力が必要だ と思い ます。

これでわた しか らの報告 を終わ りたい と思い ます。

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