北海道東部の牧草地から採取したギシギシ属植物の 形態の特徴
その他(別言語等)
のタイトル
Morphological characters of rumex plants collected from sown grasslands in eastern Hokkaido
著者 本江 昭夫
雑誌名 帯広畜産大学学術研究報告. 第I部
巻 15
号 3
ページ 229‑235
発行年 1987‑11‑30
URL http://id.nii.ac.jp/1588/00002074/
j詑9
北海道東部の牧草地から採取した ギシギシ属植物の形態の特徴
木 江 昭 夫◆
(受理:1987年5月31口)
Mor■phologlCalCharacters of Thmex Plants Collected from Sown Grasslandsin F:astern Hokkaido
Akjo H〔)Nnn
摘 要
l)北海道東部の牧草地内とその周辺に侵入しているギシギシ亜屑植物を明らかにするため に.この実験を行った。19鋸年と19Rl年の5月上旬6月下旬に個体を採取し,本学の開場に 80cm間隔で移植した。t982年6月下旬に最大の桐生菓を採取し,8月上旬に種子を含む内花破 片を採取し,それぞれの形態の特徴を調査した‖
2)調査した163個体のうち,愚生集と内花披片の形態から、エゾノギシギン(円.0わf㍑Sよ
♪丑山s⊥・),ナガバギシギシ(丑rrご叩混ざい,ノダイオウ(月.Jo几g巾ヱよ混ざPC.)と判別 されたものはそれぞれ45.42,22個休であり,エゾノギシギシとナガバギシギシ,エゾノギシ ギシとノダイオウの雑種と判別されたものはそれぞれ24.30個体であった。
3)根生糞の形態では,残部の角度に種の特徴があり,エゾノギシギシでは.253度.ナガバ ギシギンでは73慶,ノダイオウでは159度であった。次いで.電身の長さと最大の幅との比率 が識別に有効であり,それぞれ2.2.4.9.2.5であった。
4)これら3倭のうちの2種間で形成された柱間雑種の内花破片には,母種よりも小さく不 明確ではあったが.病状突起または鋸歯がかなず認められた。
エゾノギシギシ(月㍑me尤0占f比丘小)/上比バJ..)は現 侃世界的に見て,狙帯の牧草地における一般的な雑 草であり2),わが国では北海道にかぎらず全国の牧草 地において,最も重要な雑草の一つである。ユノノギ
シギシは北海道において最初に草地雑草として定着し
たが,次第に南下して.本州でも生育地を広げていっ たと言われている丘)【,エゾノギシギシの生育地の拡人 は牧草地の作付面積の増加と密接に関連しており,し
たがって.項在の牧草地の造成と管理の方法がェゾノ
ギシギシの生育に適したものになっていると考えられる。
そこで,エゾノギシギシを防除しようとする場合,
その草地雑草としての特性を生態学的に明らかにする
必要があるが.その前に,牧草地にはどのようなギシ ギシ属植物が.現在侵入・走者しているのかを明らか にする必要があろう。そこで,この研究では,北海道
東部の牧草地とその周辺においてよく見られるギシギ 帯広畜産大学草地学科草地生態学研究室
Laboratory o[(ユrass】and Ecology,L)cparLL7▲ent Of Crassland Scicnce,Ot)ihiro Universlty Of AgriculLure arld Veterinary Medicinc.Obihiro.1Tokkaido,JapaJl.
51
幻○ 本江噸夫
(軌軋〝咄棚
【A潤.〝∂加s7わ/f捕
rC〕斤.わ)曙ZわJf猫
Fig.1.Morphologyorb8.Sa11earinthre8月址mg∬
species and their hybrids.Each lear was(1rawn withlnean Valuesin Tablel.
法を応用して測定結果を解析Lた】0)。
結 果
調査したギシギシ亜腐植物の163個体のうち,根生 薬と内花破片の形態から.エゾノギシギシ(凡 0ム山S匝J;比S L.),ナガバギシギシ(且cr〜5p比ぶL.),
ノダイオウ(且わ几飢わ〜よ㍑S DC.)と判別されたも のはそれぞれ45,42.22個体であり.エゾノギシギシ とナガバギシギシ,エ、/ノギシギシとノダイオウの雑 種と判別されたものほそれぞれ24,30個体であった。
ナガバギシギシとノダイオウの雑種については該当す
るものがなかった。また,エゾノギシギシやナガバギ シギシに比べて,ノダイオウの生育は自然の状態で見 られるよりも劣り,根佳葉も小さかった。これは,採 シ亜属(Subgen.月払me賞L.)3種3)の形態を調査
し,同時に種間雑種の存在の可能性についても検討し た。
実 験 方 法
1980年と1981年の5月上旬6月下旬に,帯広市の
牧草地内とその周辺において認められたギシギシ亜属
植物の個休を採取し,本学の開場に80cn間隔で移植し た。合計163個体について,1982年6月下旬に最大の 根生姜を採取し,長さ,幅.角度,葉脈数を測定した。
また.8月上旬一9月上旬に種子と内花破片を採取し,
後者について長さ.幅、角度を測定し.感状突起,鋸 歯の特徴を記録した。調査した結果について,それぞ れの種の典型的な形態をもつ個体とに分け.判明関数
ギシギシ属植物の形態 2ユ1
二丁
∧誠T
ニ
丁
軋札止加拘触 :B)且c血♪比、
曲曲
「  ̄丁
:A)×:Bl 伍)×(C)
Fig.2.MorphlogyofperianthsegmentinthreeRumex species and their hybrids.Each segmentwas
drawn with tneanv且111eSinTable2.
Tablel.MorphoIoglCalchElraCterB Of basalle8fin three RLLmeXSpeCies and their hybrids
月はme:rSPeCies* Hybrid Character
C Mean A:K B AXC A 8
0,142
−0.156
0.05B−0.228 0.722 0.526
−0.012
0.033−0.320
4 2 5 ワ︼ 4 0 6 6 ハロ 7 0 6 7 2 7 1 り山 1
1 0 6 6 1 −
9 7 5 6 3 仁U 1 2 ﹁〇7 1 8 nU 2 鑓U 6 ∩∠ 3 3 2 3 8 3 7・11 16 3・
2 1 3
q︺ 2 4 虫U 5 6 2 9 9 nC 1 6 7 2 7 1 1 1
6 9 9 1 9 9 9 3 0 . 白U 7 −
7
9 nU 6 6■︼ ﹁つ2 4 ロリ ハリ n∠ 9 1 2 1 2 1 3 ・l
a)Lengthofbasalle且r(cm)
b)】虎口gthnfpetiole c)100・b/(且十b)(%〉
d)Nlax.breadth ofb且Sallear(cm)
e)a/d
f)Breadth at middle poirlt(cm)
g)Tipangl♂=叫(○)
h)B且Se且ngle***(q)
i)No.of mainlateralveins
A.B and C represent R.obtLLSぴoltLLS.R.crbpu8and R.long姉)liLLS,rCSPeCtively・
Weightedvector was calculated bythe discriminarltanalysIS・
AnglewasmeasuredasatriaTlgleconsistedo:tip(orba8e)andl/20legthDfle且f・
53 一
本江昭夫
丁且ble乱 Morphologlealch良和cters o∫p8rianLh se即1entin thr鮒 月払爪eガSpeeies aIld their hybIl舶
232
月払刑gエSpeQi露* Hybrid
Ch8ra8樋r
A 8 C, Mean ÅxB A〉くC
揖1劇場th(mm)
b)Bre孔dぬ(mm)
℃)且ノb
d)No.がtee払onone8ide e)Ⅵp且ngle(■)
f)鮎an離(−)
g)No.oftlユbercles
﹂5朗038 42 1
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88㈹ 舶. 5
畢89 11即 4亜 n∂ 4 ハリ nU 1 2 nd l l
4.3 4.8
n.0ふ0
3.7 5.0 −0.059 1.16 8.96 −D,2190 0 0.071
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1.5 1.7
−0.乱13
1∴ほ 1,47 0.011 h)Bractlengtb(mm) 1.7i〕bノ(2・h)
軋74*;A・B良血Cr8preSent凡ob細めヱi 8】風erねヤ描an11月・g叫す脚i帆r餌peぬ柁1y・
榊;Weight%d veet(}r WaS Calculated by thやdiscrimln已nt a†柑卜・ドjt,.
取地と異なり.生育させた試験圃場の土壌の水分条灘
がノダイオウの生育にとって乾垂すぎていたためと思
われる。
1)根生業の形態の特徴
根生薬の各形質の平均値と判別関数掛こより求めた
重みベクトルを蓑1に示した。また,それぞれの平均 値をも.ちいて描いた略図を図1に有した。3種の椒生 薬は基部の角軌こより,最も識別しやすいと考えられ る。その儀吼エゾノギシギシでは253度,ナガ′ヾギ ンギンでは7a度,ノダイオウでは159狂であった。次 いで,薫身の長さと最大の幅との比率が識別に有効で あり,それぞれ2.2,4_9,2.5であった。
2)内花被片の形態の特徴
内花被片の各形質の平均値と判別関数法により求め
た重みベクトルを妾2に示した。また,それぞれの平 均値をもちいて構いた略図を図2に示した。3種の識 別ほ,頓生葉の形態の特徴だけでは不明確であったが,
内花破片め題状突起と鋸歯の特徴により容易に識別で
きた¢、エゾノギシギシには刺状の鋸歯と卵型の稲状突 起があり,ナガバギシギシには鋸歯はなく.大きな卵
型の癌状突起があり,また,ノダイオウには恕状突起 も鋸歯もなかった。これらき種のうちの2種聞で形成
ぎれた鍾関雑種には母機よりも小遠く不明確ではあっ
たが,感状突起または鋸歯はかならず認められた。
3)判別関数法の合成変暮による穫の糟別申可能性
についで
判別常数法により′求めた重みベクトルをもちいて,
磯生葉と内花被片の合成変登を計算し,桧葉を囲きに 示した。エゾノギシギシ,ナガバギシギシ,ノダイオ
ウの相生葉と内花被片の合成変屋はそれぞれ明確に種
を区分した。エゾノギシギシとナガバギシギシ,エゾ
ノギシギシとノダイオウの拷問雑種の内花被片の合成
変皇はそれぞれナガバギシギシ,エゾノギシギシ、とほ ぼ同様の値を示した。・乳エゾ/ギシギシとナガバ ギシギシの萄間雑種の桐生稟の合成変貴は,それぞれ の母種のほぼ中間に位置し,形態の特徴から楼閣雑種
の識別は可能と思われる。しかし エゾノギシギタと ノダイオウの凄間雑種の裾生薬の合成変量は,それぞ
れの母種と重複した位置を占め,種観雑種の識別は非 常に困難であると推察された。
考 集
タヂ科(凸埼脚血離別料のギシギシ属(月毎爪ゼ方)
は.ギシギシ亜属(月比椚g∬),スイノ確属(A澤尭喝裏 ヒメスイバ亜属(A亡gfoぶe∠〜d)の3亜屑に分けられ る。.後者の2亜属に含まれる種は磯臭練であ匂,葉 の基部が絆形となる点でギシギシ重岡と区別される丁)。
現在.ギシギン亜属の横物は日本全国に蔽いて,22硬 生育していることが知られている=・阜J。これらのう ち大半は帰化植物であり,とくに,明治以降に帰化し たものが多い。北海道では13様のギシギシ東南植物が 知られている。
R肛11・蝿研射場よると,ヨーロッパでは.エゾノギ シギシ.ナガバギシギシ.ノダイオウはそ叫ぞれ12,
ギシギシ属植物の形態 233
臼斤 適地吋扉■泌
四月・C頑?
田且わ?め′〜7岱
Basa】1eaf
4 0 4 8
C〔〉mPOSjte variable
Fig・3・tllrequencydistribution ofthree RumexspecieE,andtheirhybridswithrespect tobasalユeafandperianthsegment・Compositevariablewascalculatedbythe di8Criminantanaユysis・BoundarybeLweerltWOSpeCie呂isshownbyadottedline.
11.3種のギシギシ亜属植物と裡間雑種を形成すると している。日本では,エゾノギシギシとナガバギシギ シの種間雑種が,牧野によりノハラダイオウ(兄 prα ビ几占gぶMじ汀l・I汀.KDC‡1)と命名された時期があ
る㌔古くは,リンネは.斤.αm〟肌 L.と命名して いる■)=)これ以外では.最近.北村・村田りが近畿地
方でギシギシとノダイオウの種間雑種を認めているに
すぎない。現実には,日本に帰化したギシギシ亜唇の
樺間でより多くの雑種ぎ形成されていると思われるが.
この点については今までのところ明らかではない。
R町‖Nじ・主艮9 もヨーロッパ以外の国において∴稀間潮 種が1つの種として扱われることが多いことを指摘し
ている。ギシギシ亜属は大半が北半球に広く分布して いる植物であることからすると,ロ本の固有種である
マダイオウ(尺.几グα血よo MAK■NC)やオオ半シギシ
(〟.几∠良如e花吉g5MAK川口)は種間雑種である可能性
幸江昭夫
≡招4
が高いと考えられる。今回の調査で得た結果からする と.マダイオウはエゾノギシギシとノダイオウとの間
の種閉経種ではないかと思われる。その根拠として,
根生葉と内花被片の形態の特徴.受粉後の内花被片が 肥大する時期にはほとんどの果実は脱落すること.っ まり,大半の花は不受精で,種子の着生ほみられない こと.抽苔期でも連続して根生薬を生産し続けること.
普通は抽苔恥こなるとすべての板生業か枯死し∴茎塵
葉のみになることなどがあiプられる。しかし,正確な
緒論を得るためには遺伝学的な立証が必要であろう。
WTl」‖AMSl】)はエゾノギシギシとナガバギシギシの稀 聞雑種を研究し,培間雑種とナガバギシギシとの聞で 戻し交配を観察している。このような浸透交雑から.
より適応性の広い,侵略的な雑草がうまれる可能性を 指摘している。このように,両種を研究材料とした詳 細な研究から.雑種の進化に関する基礎的な知見が得
られるものと考えられる‖β
今回の調査で明らかなように,牧草地とその周辺に 2種以上のギシギシ亜麻植物が生育しているとき,種 間雑種が形成され,それが牧草地内に侵入している可 能性が高い1)。しかし.牧草地は採草や放牧利用され ているので,ギシギシ亜属構物の花茎が残っているこ とは少なく,棍生薬のみが展開している場合が多い。
したがって,種間雑種が牧草地内に侵入していても,
今まではいずれかの母種として扱われてきたものと推
察される。今回おこなったような判別関数法の解析精 度を高めるために∴調査個体数を多くすれば,根生葉
の形態からでもある程度まで拷問雑種の識別は可能に
なると思われるd
謝 辞
この論文をとりまとめるにあたり.帯広畜産大学の
福永和男教授より貴重な卸助言をいただいた。ここに 記して感謝の意を表します。
引 用 文 献
1)CÅVM,P.8.&一.L.HARPBR:J,E℃01.52−
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Summ8「y
l)The exp¢rimentwas condueted to貼SeSS 斤比mgヱ Sp即7iesirlfestedin so\l′n graSSlan〔1s 且ndthesc boundarysitesin¢aStern Hokk且ido.
ガ比mgエ plants were c〈)11ected rrom early M且y tOlate Juneinlg糾 andlg81,and transpl&ntedinto the experimentalfiE11d且t80−
cmiTlterV已1s. Basalleav¢S Of a maximum 8ize and perianth 6egmentSincluding seeds were sampledinlateJune and early August,
re8peCtiv81y.Their morph〔)logユCalcharacters were examin¢d.
2)Of163plantB,45,42and22plants were
identifiedasbroad1ehveddock(且0と〉比5拘Jf払ぶ L.),Curly dock(月.cr∫8p昆ぶL.)and noTth8rn dock(月.Jo花gホ)〟u占口C.).respectively.a11dtwQ Of their interspecific hybrids.R.
混血東わ仇伯太属.cr∫呼比古(24plarltS)and月_
油助郷埴厄Ⅹ月.わ几凱わg上山β(30plants),Were alsoideTltifiediTlterTnS Of tl始mOrphologlCal character6(〕r basalleaves and perlanth 5egment8■
3)WiLh respect,tQ the morphology of b&Sal
ギシギシ輯植物の形態 235
1ear,baseangle was the most discrimina山e feature of species:253,73and159degree6in R・Obtusifolius.R.crispusand R▼longifolius,
respectively.Theratio oflength ofleaf b上ade to maximum breadth was also di8Criminative.
The values were 2.2,4▲9 and 2.5 for respec山e SpeCies_
4)TuberclesandもeethⅥ・ere always present in perianもh segments or hybrids.although less distinct and smaller than those of phrent plants