中国における英語教育
著者 加須屋 弘司
雑誌名 東京家政大学研究紀要 1 人文社会科学
巻 39
ページ 201‑212
発行年 1999
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009029/
中国における英語教育
加須屋 弘司
(平成10年9月30日受理)
English Education in the People s Republic of China
Hiroshi KAsuYA
(Received on September 30,1998)
1.はじめに
ソビエト連邦の崩壊と中国自体の開放政策によって,
中華人民共和国(以後,中国)では従来のロシア語教育 から英語教育への転換が急がれている.しかも,従来の ロシア語教育が文法訳読を中心に行われてきたのに対 し,現在の英語教育は実用的な言語教育を目指している 点で,言語教育そのものに対する根本的な考え方が,大
きく変わってきている.
現代の英語教育と言う観点からは,戦後の教育改革以 来,我が国の方が一歩先んじているはずであるが,現在 の英語の運用力に関する統計資料では,中国の方が日本 よりも遙かに優れている.矢田裕士,新井哲男,加須屋 弘司の3名は,本学のプロジェクト研究の一環として,
中国の英語教育の実状を調査し,我が国の英語教育に資 する要件を調査した.本論文は,その研究報告である.
最近のTOEFLの統計を見ても,受験者の平均点は 東アジア地域では中国が最も高く,続いて韓国,次が日 本である.大学英語教育学会九州・沖縄支部研究プロジ ェクトの調査「このままでよいのか大学英語教育」(松 柏社1997)は,表1の通りである.
聴解力,文法力,語彙力,読解力のいずれの分野でも,
日本の大学生は中国や韓国の大学生に較べてかなりの差 で劣っている.英語教育が始まってまだ日も浅く,十分 な資格を持った英語教師が不足し,教材や教具も不充分 な中国で,なぜ平均点が高いのか.我が国のように英語 教師の有資格者が教師になれず巷にあふれていて,教材 や教具が完備した教育環境の中で,義務教育から英語学 習を始め,大学まで含めると10年以上にわたって英語を 学習しているのに,なぜ中国や韓国の英語教育の成果に
表1 国籍別のテストの成績
能力別 国 籍 平均点
中 国 105.8
英語聴解力
i0〜219点) 韓 国 89.2 日 本 73.9
中 国 152.1
英語文法力
i0〜189点) 韓 国 117.6 日 本 99.8 中 国 87.1
英語語彙力
i0〜136点) 韓 国 91.2 日 本 69.2 中 国 87.4 英語読解力
i0〜136点) 韓 国 76.9 日 本 49.0
中 国 432.3
総 合 力
i0〜680点) 韓 国 37{Σ5
日 本 291.8
全サンプル 1781 335.5
英語英文学科 第4英語研究室
及ばないのか.いろいろな場面で検討,討議されてきた.
最も明快な答は,大学生の資質と意欲の差である.中国 では当該年齢の青年の大学に進学する割合は0.1%〜0.2
%に過ぎなく,能力的にも経済的にもかなりのエリート であり,親戚全体の支援を受けて進学しているだけに学 習意欲は,まさに命がけである.だから,アルバイトに 精を出し,多種様々な歓楽にうっっを抜かしている日本 人の学生にはとても太刀打ちできないと言う説明である.
しかし,「このままでよいのか」という疑問には何の答 にもならない.そこで,中国での英語教育の実態を調査 し,そこから何らかの示唆を得たいと思い,1997年夏に
中国内モンゴル地区のフフホト市と山西省太原市を視察
した.
2.中国の教育制度と英語教育
中国の教育は,中央行政府の国務院のもとに置かれた 国家教育委員会によって立案・実施されている中央集権 型の制度である.最近は上海等の特別区で私立学校も設 立されたと聞くが,教育は国家の統制のもとにある.広 大な国土で,政治,産業,教育,文化など,どの分野で も地域格差が大きく,一概に中国の教育を述べることは できないが,標準的な制度として考察したい.
1985年に9年制義務教育令が公布されて,徐々に全国 的に6−3−3−4制が定着しっっある.義務教育前は,
6才になるまでは幼稚園教育がなされ,この間に,歌や ゲームや絵や玩具を用いて英語教育を行っている都市部 の幼稚園もある.6才から11〜12才までは小学校教育が 行われるが,この間に都市部の小学校では約132万人の 児童が,だいたい9歳から英語を学び始める.特に1995 年まで重点校に指定されていた小学校では,英語教育が 盛んに実施されている.このレベルの英語教育は,各学
校が資格ある教師をどれだけ確保できるかによって左右 される傾向があり,北京や上海のような国際都市では英 語教育は質量共に次第に盛んになりっっある.家庭でT Vの教育番組や商業ベースで製作されたビデオ等で英語 を学習している子供の数は増加していると言う.全国的 には,小学校の就学率は100%に近いが,中学校では初 級・高級を平均して就学率は50%以下である.
11〜12才からは生徒は中学校に進む.中学校では,中 国語,数学,科学と並んで外国語は教育課程の中で主要 科目と位置づけられている.外国語を学ぶ生徒の約95%
は英語を履修しているが,辺地では教員を確保すること が極めて困難なようである.日本語やロシア語を学ぶ生 徒もいるが,英語を選択する者が圧倒的に多い.主要都 市では,一般カリキュラムに従って学ぶ中学校のほかに,
外国語教育を専門にする中学校が全国に数校あると聞く.
この段階での英語教育の目標は,4技能の基礎的な訓練 を通して,基本的な英語の知識と,基礎的な英語運用力 をっけさせることであり,英語学習への興味を喚起し,
学習習慣を身にっけさせ,英語学習を継続する素地を作 ることとされている.生徒は約1000語の語彙を習得する 表2 中国の教育組織
師範大学
seacher s Colleges
@(4years)
,幽・冒一■一一囑・・曹雪,冒,
h一囑▼P 一曹一響
普通大学
mormal Universities
@ (4years)
曹9匿曹,一一
。響,,F■一曹・一■
総合的大学
feneral Universities i4 years;5 0r 6 years)
専科学院
mormal Colleges
@(3yeras)
中学専門学校 recondary normal
rchools (20r 4 yeras)
L曹曹.曹..
高級中学校
renior Middle Schools
@(Ages 15〜18)
職業学校
uocational Schools
@(Ages 15〜18)
し.___一
?D¶
初級中学校
iunior Middle Schools
@(Ages 12〜15)
Kindergartens iAges 2〜6)
小 学 校 orimary Schools
@(Ages 6−12)
(注)一は、生徒・学生の進路を示す。
は、教員資格を得た学生の勤務先を示す。
ただし、省や郡、都市による差異がある。
ことが求められ,年間34週,平均週5回,1回50分の時 間が英語指導に当てられている。
初級中学校を終えると,生徒は3年間の高級中学校ま たは職業学校へ進む.この両方の学校では,英語は断然 人気のある外国語であり,1995年には250万人が受験し た大学(すべて国立大学)の入試科目の中で最も重要な 科目である.この3年間に基本的な英語の音声と文法を
マスターし,使用可能な語彙は最低1,200語に達する.
4技能での「ある程度の熟達」を習得し,辞書を使えば 教科書や易しい読み物を読むことができるようになる.
しかし,重点校として設定された学校における生徒の期 待はこれよりも高い.2,700〜3,000語の語彙を習得し,
普通に用いられるイデオムをある程度習得し,教科書と 同じ程度の教材を辞書を用いて読むことができ,ある程 度の「話す能力」を習得することが求められる.
高級中学校を終えた後は,大学に進むこととなる.大 学は主に次の3種類に分けられる.普通大学(NormaI University)と特別大学(Special University)と総合 的大学(General University)である.普通大学は4年 間の専門教育と教員養成を行い,特別大学は農業,音楽,
気象学,海洋学等を主眼とし,総合的大学は医学部を含 むその他の学問を扱う.中国の高等教育は現在は変動期 にあり,普通大学と総合大学には国の施策によって定め られた重点大学が含まれる.重点学校制度は,文化大革 命の騒動の後に,国家目標の達成に必要な人材を効率よ く育成するために取られた制度で,国や省や都市レベル で各段階の教育ごとに拠点校を定あ,優秀な教師と予算 を配分して,質の高い教育を実施する一種のエリート教 育の仕組みである.現在では,重点大学の数を増加する 施策に対処するために大学間に厳しい競争が始まってい るようである.
大学では,最低2年間の外国語学習が必修である.英 語専攻の制度と英語を専攻しない制度の2種類がある.
英語を専攻としない場合も,大部分の学生が英語を選択 し,年間平均300授業時間の指導を受ける.英語の能力 検定には国家検定制度があり,必ずしも全国的に統一さ れてはいないが,第1段階から第6段階までの区分があ り,第6段階が最高である.通常は段階4,英語を専門 にする学生や大学院に進学する学生は段階6が卒業の必 要条件である.1段階を進むのには通常1学期かかるが,
優秀な学生は段階を飛んで進級することが可能である.
第1段階に達しない学生は,予備教育を受けてこの段階
に進むことになる.大学卒業の最終学位を得るためには 学生は段階4を終了し,試験に合格しなければならない 段階4と段階6の認定は重要な意味を持ち,国家規模の 試験がなされ,学生の成績に記録される.受験者の平均 点はその大学の英語学科が評価される尺度となり,大学 自体の評価に深い関係がある.英語専攻でない大学院生 は,学位を授与される前に第6段階の試験に合格しなけ ればならない。英語専攻の学生も同じ6段階の制度を進 むが,一般学生とは違ったより専門的な試験を受ける.
1995年の教授内容によれば,正確さも流暢さも要求され る.また,コミュニケーション能力も強調されて,全国 で実施される検定試験はTOEFLに似た形式で,町の書 店には,模擬試験の問題集が並んでいる.
3.英語教育の現状
中国における英語教育は,教師と学習者が近年急速に 増加したために,さまざまな混乱と格差が生じているの が実状である.1957年には,全国の中学校での専任の英 語教師は,わずかに843人であったが,1995年にはその 数は約400,000人に増加し,学習者も今世紀末には,中 学校から大学まで含めると57,000,000人以上になると 推定されている.さらに,学校以外で英語を学習して いる人の数は150,000,000人にものぼり,控えめな統 計でも英語を使えるようになりたいと思う者の数は 200,000,000人にも達すると言われている.
このように中国で英語教育が発展したのは,背景にメ ディアなどの力があったのも事実である.国営の放送や 地方放送局なども英語だけでなく他の言語によるニュー スや映画やその他の番組を放送,放映しているからであ る.テレビやラジオが英語学習番組を編成し,多くの視 聴者を集めている.China Dailyという英字新聞も購 読者が多く,それには香港の返還という事情が購読者数 を急増させたと言う見方もある.
歴史的に見れば,1949年に中華人民共和国となって以 来,中国の英語教育は幾多の盛衰を繰り返してきた.英 語は,中国の「現代化のバロメーター」と見られて,科 学,技術,国家発展,現代化等のための実用言語として 広く受け入れられてきたのも事実であるが,一方では,
個人的にも文化的にも,西欧化への通り道であるという 見方と衝突を繰り返してきた.英語を学習することが中 国人としてのアイデンティティに悪影響を与え,「精神 的公害」をまき散らすのではないか,現代化とは西欧化
表3 中国における就学数(1995)(People s Daily Overseas Edition:5March 1996)数字は1,000,000人単位
教育 段階 全日制教育
成人教育(定時制,通信,TV)高等教育 α145(大学院)
Q.90 (学部)
2.57
Senior Middle Schools 316.53
2.88(成人専門学校)76.90 (成人技術専門)
Junior Middle Schools 47.28 Primary Schools 131.95
5.30
(注)t16.53には職業・専門学校の9.39を含む のことかといった危惧感を払拭することができなかった のも事実である.
1950年代初期は中国に経済的技術的援助をしていたソ ビエト連邦の影響が強く,ロシア語が最も広範囲に指導 されていたので,英語教育は急激に衰退していた.それ までのdirect methodがブルジョア的であると見な されて,その反動としてソ連で作成された教科書を用い てのgrammar−translation metohdによるロシア語 教育が定着していた.1950年代後半になると,ロシア語 の履修者が減少し,英語が台頭してきたので,1960年代 には,ロシア語教師の中で英語教師への転向のための再 教育を受けた者が目立っようになった.中国における教 科書編集者たちは中国人や中国の状況に適切な教材や教 授法を模索し,次第に口頭練習が影響力を持っに至った.
口頭訓練が発達し,聴覚機器を用いて置換ドリルなどが 盛んに行われるようになったが,1966〜76年の文化革命 時代には英語教育は混乱を極あた.外国語学習はブルジョ ア的だと非難され,外国の文献は破棄され,英語教師の 多くは他の知識人とともに再教育のために農村地区に送 られ,学校や大学は数年にわたって閉鎖を余儀なくされ た.国家試験により大学が再び学生を迎え入れるように なったのは,1977年以降であった.英語教育は中国の再 生と解放のためには重要な科目として復権したのである.
英語教育の復活と同じ頃,Communicative Approach が導入されて,当時の中国人の英語教師たちは, func−
tional とか situational とか呼んでいたようであ る.1998年に発表された「義務教育大綱」(我が国の
「学習指導要領」に対応する)では,初級中学における 英語科指導の目標は次のように記されている.
「英語教育の目的は,4技能の訓練を通して,英語の 基礎知識とコミュニケーションに必要な初歩的な英語運 用力を習得させ,学習意欲を高め,望ましい学習習慣を
育て,基礎学力を養うことである.また,思想,品格 道徳心を磨き,愛国心や社会主義の考え方を身にっけさ せること,さらに,思考力と自学能力を発達させること である.」
大筋では,我が国の学習指導要領に記載されている目 標と大差はないが,言語能力の育成に留まらず,「思想,
品格,道徳心を磨き,愛国心や社会主義の考え方を身に っけさせること」が英語教育に盛り込まれている点は,
社会主義中国の英語教育観の特徴である.一方でcom−
munication能力の養成を目標に掲げながら,高級中 学では,「特に,読解能力の養成を重視し,併せて,英 語の基礎を固めるために学習と運用が継続できるよう一 定の自学能力を獲得させること」を加えて,読解能力の 育成が強調され,この傾向は今日での大学での読解重視 に連結している.先進の科学技術情報を得るためという 国家目標を反映しているからであろう.
Communica㌻ive Approachを普及し発展させるこ とは,国土の大きさや施設や教材教具の不足,教員養成 なども考慮すれば,決して容易なことではない.外国語 教育に限らず,従来の中国における言語教育指導法は,
知識の吸収に中心を置くものであって,教師,教科書,
文法,語彙の4点が尊重されていた.教師は,権威ある 者,知識の宝庫,知的にも道徳的にも模範者であるとさ れ,教えられる知識はすべて教科書に盛り込まれ,教師 はそれを解説する立場にあった.従って,教科書は,学 習の最も重要な要素として,詳細に教えられ,時には暗 唱させられたりするのが普通であった.文法と語彙は知 識を得るための要素であって,教室で教師によって説明 される.学習者は懸命に努力して,1年間に何百,何千 の単語を覚えたのである.このような伝統の中で,言語 技能の発達に関して,英語の母語話者の教師が招聰さ れ,Communicative Approachとして, learners,
interaction, tasks and problems, functions and usesの4っの事項に焦点を合わせた指導法が導入され
たが,最初は異端的なものに受け取られがちであった.
学習者はお互いに会話をやりとりする中で英語を習得す るのであり,問題を与えられて,その解決を図る過程で 言語への感覚を高め,暗唱ではなくてコミュニケーショ ンを通して言語の機能を習得し,訓練の成果を最高に高 めるという指導法は,それだけに新鮮でもあったが,反 面,抵抗も大きかったようである.現在では,都市部の 英語教師の中には,従来の教授法との差異を認め,
communicative approachの重要性を認識して,英 語教育の発展を切望している人が多い.しかし,中国の 現状から見て,知識吸収型の教授法と,純粋にコミュニ ケーションを中心に据えた教授法との折衷主義が広く普 及しているのが現状である。Communicativeな英語 教育の発展を妨げている要素としては,国土の大きさに 加えて,文法と語彙の知識による読解力を強調する現在 の試験制度がある.また,依然として古色蒼然とした内 容の教科書を使っていることも,教員養成や教授資料の 不足,変革に対する制度上の抵抗,学級規模の大きさな ども英語教育の発展を妨げている要素に数えることがで きる.ある統計によると,中学校では,平均1クラスの 生徒数は51人である.
中国では,教師や学習者が国外で出版された教科書を 自由に入手することは極めて困難である.既に輸入され たAlexαnder s 1>θωConceptシリーズは,1970年代 後半から現在に至るまで,広く使用されている.また,
O Neil 8 Kernel Lessonsは, Text, Exercisesの 解説の部分を中国語に翻訳して,ニケ国語による教科書 として出回っている.そのほかには,Alexander s Mαinline Progress(1980)は,勤労学生のための通 信教育用のテクストとして特別にStudents Guideを つけて特に大都市部で普及しているようだ.
4.言語運用技能と教科書
英語教育の6段階制度を概説しているCollege Eng−
lish Syllabusは, productive vocabularyとして 5,350語を段階別に示している.
我が国の指導要領の語彙制限は中学校,高等学校のた めのものであるが,これは大学における第1段階から第 6段階までの語彙にっいてのガイドラインである.「理 解できる語彙数」と「運用できる語彙数」を分けて示し
てあるのは,我が国の英語教育でも取り入れても良い方 策ではないだろうか.また,「書くこと」について,あ る程度の段階を示してあるのも興味ある指示のしかたで
ある.
さまざまな段階でのさまざまな言語能力の育成を視野 に入れているが,比較的高度なReading Comprehen−
sionの育成が最優先され,学習者自身の専門分野に関 する記事や書籍を読む能力の育成が重要視されている.
4−1.大学英語教科書
近年,大学の英語専攻以外の学生に広く使用されてい る6巻本の教科書は,College English Intensive Reαdingで,各章の構成は下記のようになっている.
1.1〜2ページの本文
2.新語,新連語 (英語の同意語,パラフレイズ,
時には中国語の解説付き)
3.テクストの背景に関する注釈
4.音読練習問題(初期には抑揚記号付き)
5.理解チェックのための質問(選択肢または文で答 える)
6.語彙,語形成の練習問題(空所補充)
7.文法に関する練習問題(clozeテストまたは文結 合練習)
8.制限作文(guided writing)
9.上級読解練習 (scanningなど)
学生は高級中学校の時代から,同じように編纂された 教科書を使っているので,この形式にはすぐに慣れるよ
うだ.
テクストの内容は,西欧の日常生活に関する題材や美 術や科学に関する題材までが含まれている。英語専攻の 学生たちが使用する教科書には,4巻本のContempo−
rαrツCollege English(Zhou&Zhen 1990)と, 6 巻本のCollege English(Hu et al.1992)があり,
同じ形式で編纂されているが,語彙も多く,翻訳や補助 の読解教材や詳細な音声学や音韻論 ペアーワーク,集 団討議課題などが加えられている.各章の指導手順は 下記のように指示されている.
1.新語の意味を調べ,可能ならばテクストの録音を 聴き,音読の練習をするなどの予習をする 2.授業中は,教師はテクストを音読させ,発音をチ ェックし,理解度をチェックするための質問をす る
表4 英語専攻以外の学生の大学英語段階表(語彙数とWriting目標)
PRELIMINARY BANDS
(Examples of targets)1 2
Productive vocabulary:1,200 words Writing:elementary training
←
GENERAL ENGUSH BANDS(Examples of targets)
1 Productive vocabulary: 1,500 words Receptive vocabulary: 2,150 words Writing:Combine words into sentences
@ (simple, complex and compound)
2 Productive vocabulary二 1,800 words Receptive vocabulary: 2,750 words
Writing:Combine sentences into paragraph
3 Productive vocabulary: 2,050 words Receptive vocabulary: 3,350 words Writing:Write coherent short paragraph 4 Productive vocabulary:2,300 words
Receptive vocabulary:4,000 words
@ 30mlnutes without serlous grammatical mistakes
←
MORE ADVANCED GENERAL ENGLISH&SPECIALIZED
READING
5
6
Productive vocabulary: 2,550 words Receptive vocabulary:
4,650words
Write 120−150 word coherent passage(e. g. a letter Writing:
or summary of a text)within 30 minutes Productive vocabulary: 2,800 words
Receptive vocabulary: 5,300 words
Writing:In additin to the above, an abstract of a thesis
Cortazzi M. and Jin L.(1996)English Teaching and Learning in Chinaによる.
3.新語と文法事項は教室で詳細に解説され,例文が 示される.発音,翻訳,同意語の使用やパラフレ イズの練習をする
4.教科書の練習問題を終えると,教科書内容のパラ フレイズ,要約,言い換えなどの練習をする 5.教師の中には印刷された練習問題以外に,さらに discussionやdebateやrole−playingまでさせ る者もいるが,大部分の教師にとっては,そのよ うな練習をさせる時間的余裕もないし,クラスサ イズが大きいために実行は困難である.
教師も学生も幅広い予習が必要であり.,教師は教科書 の内容に関する知識や文法事項や語彙については権威あ る立場にあるという自覚から,用意周到な説明の準備を
して授業に臨み,学生は語彙を覚えたり,文法例文を暗 唱したりして,教科書を注意深く予習し,テクスト全体 を暗唱する者さえいる.
このようなIntensive Readingは,今までにいろい ろな議論を呼んできた.その主な論点は下記の通りであ
る.
1.Intensive Readingは中国における英語教育に 関する考え方や教育実践の基幹となるものである.
2.言語の機能に気づかせて技能を習得させることよ りも,言語形式に関する知識という点で,言語を とらえている.
3.口頭による言語技能を扱わない.
4.教師中心の活動で,学生は聞いたり,暗唱したり
受け身的な立場にある.
5.Interactiveな言語活動や,個々の学習者の解釈 上の考え方にあまり注意が払われていない.たと えば,教科書に関する理解度チェックの質問は,
たいていは文字通りの意味で,答えは1っしかな い.学生に言外の意味を考えさせることはしない.
6.テクストがあまりにも単純化されていて,その結 果,先を予測させることはない.
7.かなりの部分が文学的な内容で,学生の将来のニ ーズに適合しない.
このような状況のもとで,多くの心ある英語教師は,
Intensive Readingという科目にもっとcommunica.
tiveな課題や活動を補充することを示唆している.
4−2.Extensive Reading (多読)
大学の英語教科書は,さらに広く用いられている補助 教材で増補されている.各6巻本の多読教科書,速読教 科書,聴解教科書と,4巻本の文法教科書である.英語 専攻以外の学生は,第4段階で,最初に一般的な題材の 教材を1分間に少なくても50語の速さで読むことが求め られ,その次に,新出語が全単語数の2%を越えない程 度の教材を,1分間に90語の速さで,70%以上の正確さ で読むことが求められる.第6段階に到達するまでに,
さらに上級の一般的な題材のテクストを1分間に70語の 速さで読むことが求められ,同じ語彙レベルでも易しい
テクストならば,1分間に少なくても120語の速さで読 むことが求められる(College English Syllαbus 1991:3−4).読解速度を設定してあることは,読解の速
さの重要性を強調するためであり,学生の速読習慣を段 階的に発達させようという意図である.(ibid.:306)
この種の多読指導は,読解速度を測定するのに便利な ように単語数を数えてある短いテクストを読むことや,
短編小説を読む科目でなされる,多読科目のテクストに は,幅広い話題が収録され,精読のテクストと同様に,
各テクストに中国語の訳をっけた新語表と選択肢問題が ついている.この選択肢問題は,読解力と語彙力を測定 するためである.読解に関して事前に問題を与えたり,
事後に言語活動をするようにはなっていないが,教師の 中には自作の練習をさせる者もいる.
学生の中には高級中学校以来の訳読が定着して,精読 の読書習慣を多読の教室に持ち込み,読む速さや予測や 推測のし方や,観賞したり楽しんだりして読む方法など
の読書技術を発達させることよりも,すべての単語を理 解し,細かな事にも注意を払って,読んだことをすべて 中国語に翻訳する癖をつけてしまっている者も多いよう だ.時間を計って短いテクストを,skimmingの技術 やscanningの技術をを磨きながら読むことは,上記 のような読書習慣を払拭するために推奨されるのであ る.学生の読書力を伸ばすためには,多読にもっと時間 を使うことを望んでいる教師も多い.英語の文献が入手 しにくい状況にある割には,中国の大学生の英語を読む 能力は大変優れているという報告がなされている.この 多読速読指導は,我が国の大学における英語教育に取
り入れる価値のある要素ではなかろうか.
4−3Communicative Approachと教科書
上海のInternational Studies Universityから出 版されたANeωEnglish Courseのような,中国で 編纂された教科書の中には,従来の中国の教授法と communicative approachを統合しようとする意図 が見られ,ある面では画期的であり,効果的であると見 られている.したがって,これらの教科書には今後も注 目していかなければならない.この教科書は4つのレベ ルに分けられていて,4技能を統合し,言語機能と学習 者どうしのinteractiveな活動に焦点を合わせてある。
ある項目に学習者の注意を集中させる学習と,目標項目 を定めずに言語活動を行わせる学習の両面を取り入れ,
教師主導型の学習から自発的コミュニケーションへと学 習者を誘導していこうとするものである.
英語専攻の学生向けに編纂されたCommunicαtive English forσhinese Leαrnersは,4レベル構成で 12巻本であるが,一層明白にコミュニケーションを全面 に打ち出している.この教科書は,The Guangzhou Foreign Language Instituteで1979年から1986年 の7年間にBritish Councilの援助を得て,プロジェ クト研究として開発されたのである.これは,中国にお いて外国語教育にcommunicative approachesに基 盤を置いた最初の教科書であると評価されていて,その 内容も外国語の指導や学習の方法でも前例を見ない試み である.この教科書は,要約すれば下記の原則に則った ものであり,中国の外国語教師にとっては比較的新しい 考え方を示すものである.
1.各章は,テクストよりも段階を追った一連の課題で 構成されている.
2.精読,多読等の2種類以上の「読むこと」の言語活 動が配されている.
3.学習は,教師よりも学習者中心である.
4.4技能すべてが常に組み込まれた言語運用に統合さ れている.
この教科書の特徴は,ペア・ワーク,情報伝達,本場 英語の初歩からの使用,ロール・プレイング,言語感覚 高揚活動(社会言語学的な観点から言語使用の適切さ e.g.苦情や世辞に対する答え方など)などの言語活動 が多く組み込まれていることである.
Xu氏は序文で次のように述べている.「この教授法は,
いろいろな意味で目新しかったので,最初はかなりの抵 抗があった.単にcommunicative approachを提案 しただけではなく,実際に言語そのものの本質をコミュ ニケーションと見なしたのである.この教科書は次第に 注目を集めるようになり,最初に発行されたときから徐々 に多くの教師から,その教授法に積極的な関心が寄せら れるようになった.現在は改訂に着手しているが,各章 の終わりに言語構造をもっと分かり易く解説し,要約を 掲載する予定である.」
4−4中学校・高等学校の最近の教科書事情
英語の必要性が認識されるに従って,中国の諸学校に とっては,英語教育に用いられる教科書に関しては新し い時代が到来している.就学以前のレベルでは,「話す こと」と「聞くこと」に照準を合わせた親と子供向けの 本やテープが出回っていて,歌やゲームや簡単な日常会 話などが収録されている.小学校レベルでは,中国とシ ンガポールの共同開発によるPrimαry English/br Chinaが幾っかの学校で使用されている.この4巻本 の教科書は,小学校5・6年の2年間にわたって使用さ れ,口頭による技能が強調されている.ゲームが多く取 り入れられ,英語に対する興味の喚起と保持に注意が払 われている.興味深いことは,発音訓練のために最初か ら発音記号が指導されることである.これは,中国の子 供たちが読み書きを,pinyinという中国式発音記号を 使って習うからであろうか.
中学校で最も重要な英語科目は広くReadingとして 知られている科目である.人民教育出版社とロングマン の共編の「初級中学英語」が全国の約75%の中学校で使 われている.この科目は教科書中心の科目で,一般に行 われている限りでは,基本的にはreadingの科目とは言
えない.我が国の中学校の教科書と同じように,すべて の言語技能を統括した科目であり,翻訳を交えて語の意 味や用法,文法知識に力点を置く科目である.したがっ て,外国語としての英語教育科目の最も基礎的な部分を 扱い,教師がこの科目で教えようとする事項はすべて,
文字テクストを通して指導されると言う意味でread−
ingなのであって,言語活動としてのreadingに力点 を置いた科目ではない.言語材料の選択や配列にっいて は,今後の分析に待たなければならないが,初級中学の 段階ではかなり大胆な精選作業が行われているようであ
る.
この科目には下記のようないろいろな目標が設定され ている.
1.教科書を正しい発音で音読すること(または,暗 唱すること)
2.語彙を増加し,作文で新語を使用すること 3.テクストに示されている文法事項を理解し,練習 すること
4.教科書の題材に関して話すこと
5.テクストの題材や言語材料を基礎にして短い作文 を書いたり,翻訳をすること
また,中学校生徒向けには,Junior English for Chinαという4巻本の教科書も広範囲に使用されてい る.各巻ごとに,生徒用教科書,ワークブック,オーディ オテープ,壁掛けチャート,教師用指導書がある.教師 用指導書には各unitごとに,指導法に関する懇切な解 説がなされ,復習,教材提示,練習,言語活動,まとめ の5っの指導順序が示されている.この教師用指導書は,
中国における教師研修に重要な機能を果たしていて,言 語活動には,ペア。ワーク,グループ・ワーク,身体反 応,ゲームなどが盛り込まれている.生徒用の教科書に は,通常の文法事項のチェックのほかに,発音と綴りの 関連表,英語と中国語による文法事項の要約,発音記号 と中国語の意味をっけた全unitの新語や新連語が収録 されている.テクストの題材は,中国や西欧の祭り,中 国の風物,世界の人口,ピラミッド,英語と米語,中国 の礼儀作法,西洋の礼儀作法などである.
&enior English for Chinα も, Junior English for Chinαとほげ同じ構成であるが,まだEnglishと いう教科書が大半の高等学校で使われている.このレベ ルでの題材は,D塾sneyland, Karl Marx,中国の農 業,身振り言語などである.中国の現状下では,これら
の教科書は,教授法を徐々に改革するという効力を発揮 しているが,伝統的な教授法をあまり強く圧迫するには 至っていない.しかし,教師側の言語学や教授法に関す
る関心を高めていることは事実である.
4−5 Listening Skills
中国の大学ではIistening skillsを伸ばすことも強 調されている.Step by Stepのような教科書はlis−
tening能力を育成するために,本物のBritish英語や American英語の録音教材を使用している.一般に実 施されている教授法は,まず教師が主要な語彙を説明 し,次にテープによる音声を,部分的にまたは全体を通 して聞かせる.教師が内容にっいて口頭で質問し,学習 者はworkbookにある選択肢の中から正解を選んで答 える.教師は,必要に応じて,テープを再生しながら,
学習者の答えをチェックするという手順である.語彙を 除いて,学習者がテープを聴く前の準備指導や,聴きな がらの言語活動や聞き終わってからの言語活動はほとん どなされていない.従って,listening skillsを細かく 分析して,それぞれの観点に応じた指導法と,体系的な もっと幅広い聴解訓練をすることが,教師と教科書の両 方に求められている.録音教材の吹き込み者は,数年前 よりも幅広く登用されているが,アメリカ,イギリス,
オーストラリア,ニュージーランド,カナダ等の国々か ら多くの英語教師が指導しているため,学習者はいろい ろなアクセントに戸惑いを感じている者が多い.さらに 上級の1istening科目では,今後取り組まなければなら ない問題だが,どの程度までcultureを扱うかという問
題がある.
4−6Grammar, Writing and Contrastive Studies (文法,作文,言語比較)
いろいろな地方で,文法・翻訳という外国語教授法の 伝統が今でも見られるように,また,教材を指導する際 や,試験で文法に関する問題が多いことから見ても,中 国では文法指導が全国的に重要視されている.文法指導 は教師中心の指導で,学習者が互いに反応し合う機会は 極めて少ない.文法は,コミュニケーションの手段や文 の意味を構成する基盤としてよりも,単なる知識として 指導されるがそれでも,教師や学習者の中にはその文 法知識を吸収するからこそ,上級の段階で正確な文作る ことができるという者も多い.中国では,文法教科書の
中には,英語と中国語の両方で編纂されたものもある
(e.g. A Prαcticαl English Grαmrnαr Thomson
&Martinet).
中国語と英語とを対比して学ぶことは,話された英語 を理解するのにも作文の間違いを理解するのにも役立っ と信じている中国人の教師や学習者が多い.また,中国 人学習者の共通の間違いを,中国語からの観点で説明し,
列挙してある参考書も多い.「書くこと」は,大学英語 の段階では比較的扱いが軽く,大学以前のレベルでは,
文法事項の練習としての作文にとどまっている.学習者 の作文能力を高めるための,pre−writing, planning activities, draft−−redraftといった手順を踏む指導法 は普及していない.また,日本人学習と同じように,中 国人学習者の作文は,倫理の組み立て方が英語と異なる ために,意味が明確でないとよく言われる.この困難点 を克服しようとして,rhetricを対比するなど,談話形 式を中国語から英語に変換するなど,いろいろな試みが 辛抱強くなされてきた.Kaplan(1962,1966)は,東ア ジアの人々の作文は直線的でなく,特に,中国語の8段 階形式の展開法( eight−legged )の影響が強いと言っ ている.日本では「起承転結」の4段階形式の展開法だ が,中国では8段階に細分化されているようである.こ の論文形式は,19世紀後半まで約500年間にわたって,
中国における役人の登庸試験で最も重要視されていたか らである.この論文形式の影響が今日まで継続している ことを認める者もいるが,中国語の言語規則が英語表現 に干渉することと,writingの指導のあり方に原因が あるとする英語教師も多い,たとえば,中国人は英語の 接続詞を多用したり誤用したりすること多いが,この問 題は中国語における接続詞構造を英語に適用することに 原因がある.中国語では,まず背景が述べられてから,
はじめて中心的なことを述べるので, because...,
so... 竅falthough...,but_. のような英語表現 が見られ,このことは中国人の学習者にとっては極めて 誤りやすい点となっている.
もっと一般的には,中国人は日本人と同様に,中心的 なことを後に回す帰納法的な表現を好むから,もっと演 繹的に表現するように指導すべきだと言う教師も多い.
このことは単にrhetorical patternsの相違ではなく,
中国人の社会文化的考え方が作文に影響している問題で ある.また,中国人の学習者は,個人的意見を表明する ことを避け,他の人の言葉を引用したり,言い換えたり,
常套句を使うことを好むことにも問題があるという見方 をする学者もいる(Tsao 1983;Matalene 1985).
4−7Vocabulary(語彙)
中国人の英語教師や学生の中には,語彙学習の重要性 を強調する者が多い.中国の本屋に立ち寄ってみれば,
現代の英語教授法に関する書物よりも,英語の語彙学習 に関する本の方が遙かに多い.事実,英単語を記憶する ことは,英語を学ぶ者にとって主要な学習活動となって いるようである.Wang(1986), Chang(1990)は,学 習者が辞書で語彙を暗記することや語彙の復習カードを 作成したり,ノートにニカ国語の単語リストを作ること を重要視している.中国の教科書では,本文中のすべて の新語や新しいidiomsの意味を,英語の同意語や中国 語で説明する練習があって,語彙学習が強化されている.
さらに,教師は学習者がテクストを読む前に新語の解説 をするのである.しかし,Communicαtive English for Chinese Leαrners(Li 1987)は,意図的にこの
項目をはずしている.学習者が自分で語彙リストを作成 することによって,英語の学習法を体得する方法の一部 として,語彙資産を作る方策を各自に工夫させるためで
ある.
5.教員養成
中国の社会では,昔から教師の地位や役割を非常に高 く位置づけてきた.このことは現代中国でも強調されて いて,公式的には教師は現代でも高く評価されている.
教師は,「知的な労働者階級」「人間の心のエンジニア」
「未来の新しい民を彫る彫刻の巨匠」「人民の英雄」と呼 ばれ,教員養成は社会を建設する重要な土台を造る「基 本的機器」であるとも言われている.9月10日は中国で
は教師の日として国の祝日になっているほどである.
しかし,今日ではあらゆる科目にっいて有資格の教師 不足が深刻な問題となっているが,特に英語教育にっい ては教師の不足は深刻である.給料が比較的低いことと,
労働条件が厳しいことがその原因である.また,語学力 を高く評価してくれる外資系企業やベンチャー企業に,
英語教師がhead−huntingされるからでもある.
師範大学,普通大学,専科学院,中学専門学校等にお いて,いうなレベルの教員養成が行われている(第2表 参照).英語の教員養成教育のなかで,中国人教師は英 語,文学,教育カリキュラムを学ぶ.教育実習は,3年
次または4年次に1〜2ケ月の期間で行われ,熟練教師 と共にティームを組んで,共同で授業の準備をしたり,
授業のリハーサルをしたり,授業観察をしたり,授業分 析をしたり共同学習方法で学ぶ(Paine 1990)
現職の英語教師に対しても,最近の教授法に従って体 系的に訓練する必要が広く認められるようになったため,
大学では現職英語教師のためのコースも,次第に開かれ るようになった.中学校レベルでは,指導技術は向上し てきていると言われるが,経済発展のもたらす悪影響で,
教師の社会的地位の低下と待遇の悪さのために,英語教 師にっいでは数も英語力も指導力も1980年代よりも劣悪 になったという見方が強いようだ.
おわりに
プロジェクト研究の一環として,矢田裕士,新井哲男,
加須屋弘司の中国の教育事情視察は,現場で英語教育に 携わっている教師との面談が主であったが,資料を得る ことは決して容易ではなかった.全国規模で行われる英 語能力検定(段階1〜6)の実物の問題は入手できなく,
書店に並んでいる模擬試験問題で推測せざるを得なかっ た.今回の調査は,内蒙古自治区教育庁副庁長の揚曼先 生,内蒙古電力学院,日本語科教授の高天亮先生はじめ,
山西省重型机械学院の英語科の先生方など多くの方々の ご協力を得てできたものである.これらの先生方に厚く 謝意を表する.また,中国各地で英語教育の普及に懸命
に努力をしているイギリス,アメリカ,カナダ,オー ストラリア,ニュージーランド等の国際協力団体 INSET(In−Servive English Teachers)の研究報告 が大いに役立ち,この稿をまとめることができた.
イギリス語,アメリカ語のような個別言語の指導では なく,国際語としての英語指導にどれほどの関心が払わ れているかを知りたかったが,残念ながら,その点に関 しては収穫はあまりなかった.ただ,中国の英語教育が,
大学の卒業要件の一っに英語能力検定を取り入れる一方,
急速にcommunicative approachの方向に走り出し たことを痛感した.我が国の英語教育も,指導目的の明 確化,言語材料のreceptiveな面とproductiveな面の 分離とgrading,学習意欲の喚起方策,また,さまざま な是非論はあろうが,検定制度の導入,教員養成の改善 など,かけ声だけでなく実際に効果ある方策に至急に取 らなければならない.
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Abstract:
7
As a part of the project research with Prof. Hiroshi Yada and Prof. Tetsuo Arai,1 went to China in the surnmer of 1997 to make a field investigation into English education in China. On account of the collapse of the Soviet Union and the open−door policy of China, the conversion from the Russian language to the English lahguage has been rapidly taking place in schools and colleges all over the country. But, on the other hand, according to the results of an international test, TOEFI., English education has been much more fruitful in China than in Japan. I found some primary factors that made China superior to Japan:temperamental difference between Chinese college students and their Japanese counterparts, the different examination systems for college diplomas, Chinese stu−−
dents educational zeal for communicative approaches in teaching English and their more ardent wish for an English speaking capacity. We should take some strong measures to make English edu−
cation more effective in Japan.