Roll to Rollプロセスを用いたBaTiO 3 ナノ粒子分散液塗布による 薄膜コンデンサの形成と樹脂封孔効果
藤吉 国孝*1 牧野 晃久*1 有村 雅司*1 山下 洋子*1
Fabrication and Resin Coating Effect of a Thin Film Capacitor Deposited by Roll to Roll Process Using Nano-Sized BaTiO 3 Particles Dispersed Suspension
Kunitaka Fujiyoshi, Teruhisa Makino, Masashi Arimura and Yoko Yamashita
我々はこれまで,チタン酸バリウムのナノ粒子分散液を調製し,この液を塗布および乾燥させることでチタン酸 バリウムナノ粒子堆積薄膜を作製してきた。今回は,プリント配線板内蔵用高容量薄膜コンデンサの開発を目的に,
現在工業的に用いられている roll to roll プロセスで,銅箔上にチタン酸バリウムナノ粒子堆積薄膜を連続形成 した。得られた薄膜はクラックなどが無く概ね平滑であり,1MHz での容量密度は 39nF/cm2,誘電損失は 7.2%であ った。さらに,得られた薄膜表面からエポキシ樹脂を塗布して封孔することで,誘電損失,耐電圧,抵抗率などの 諸特性を向上させることができ,1MHz での容量密度は 36nF/cm2,誘電損失は 2.3%であった。
1 はじめに
我々はこれまで,高濃度ゾルゲル法と呼ばれるゾル ゲル法を改良した方法でチタン酸バリウム(BaTiO3)の ナノ粒子を合成し,バインダー樹脂(高分子分散剤)
を用いることなく有機溶媒中に良分散させることを検 討してきた1)。このBaTiO3ナノ粒子バインダレス単分 散液をスピンコートすると,低温で比誘電率の比較的 高いBaTiO3ナノ粒子堆積薄膜が形成可能であるため,
高容量密度の薄膜コンデンサへの応用が期待される。
しかし,これまで我々が用いてきたスピンコート法 では,塗液のロスが非常に多く,また1回で塗布可能 な面積も小さい。そこで本研究では,量産化に適した 大面積のBaTiO3ナノ粒子堆積薄膜を形成する方法につ いて検討した。具体的には,基材として銅箔ロールを 用い,我々がこれまで検討してきたBaTiO3ナノ粒子バ インダレス単分散液を連続的に塗工し,誘電体薄膜付 き銅箔を作製するプロセスについて検討した。さらに,
表面から樹脂を塗布し,空隙を封孔することで,誘電 損失などの特性の改善を検討した。
2 実験
既報1)に従い,高濃度ゾルゲル法でBaTiO3ナノ粒子 を合成し,分散媒である2-メトキシエタノール中に投 入後,分散処理してBaTiO3ナノ粒子バインダレス単分 散液とした。roll to rollプロセスを用い,乾燥膜厚 が700nm程度になるように,古河電気工業製の電解銅
図1 roll to rollプロセスで銅箔上に連続形成した BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜の外観写真
箔F2-WS(厚み18μm,幅30cm,ロール状)の光沢面上 にライン速度5m/minでBaTiO3ナノ粒子バインダレス単 分散液を塗布し,150℃以下の温度で乾燥させること でBaTiO3ナノ粒子堆積薄膜を作製し,内径3インチの 紙管にロール状に巻き取った(図1)。この薄膜はナノ 粒子が堆積したものであり,内部に粒子間の空隙を有 することから,BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜表面にエポキ シ樹脂の極薄層が形成されるように,作製したBaTiO3 ナノ粒子堆積薄膜上からエポキシ樹脂溶液を塗布し,
封孔を行った。塗工装置としては,BaTiO3ナノ粒子堆 積薄膜を作製したものと同一のroll to rollプロセス を用い,ロール状に巻き取っておいたBaTiO3ナノ粒子 堆積薄膜付き銅箔をライン速度5m/minで流しながら,
BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜表面にエポキシ樹脂溶液を塗 工し,150℃以下の温度で乾燥させることで,樹脂封 孔を行った。
作製したサンプル表面にメタルマスクを密着させて 真空蒸着を行うことにより,直径1mmのアルミ上部電
*1 化学繊維研究所
極を多数作製し,銅箔下部電極が密着するように銅板 上に置いた。図2のように,銅板とアルミ上部電極に テスターの測定端子を接触させ,アルミ上部電極10点 について抵抗率を測定し,1kΩ未満をリークと定義し リーク率を算出した。さらに,アジレント・テクノロ ジー製のインピーダンスアナライザ4192Aならびにア ジレント・テクノロジー製のpAメーター4140Bの測定 端子を図2のように接続して,誘電特性ならびにリー ク電流を評価した。
図2 BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜の電気的特性測定方法 の断面概念図
3 結果と考察
作製したBaTiO3ナノ粒子堆積薄膜の電気的特性を評 価したところ,1MHzでの容量密度は39nF/cm2であった が,誘電損失は7.2%,リーク率は70%といずれも高い 値を示した。ここで,空隙を有する膜では,大気中の 水分を吸着することで,特に低周波数域の誘電損失が 増大することが報告されている2)。また,リーク率が 高い原因はBaTiO3ナノ粒子堆積薄膜中の空隙に由来す ると考え,BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜中の粒子間空隙の エポキシ樹脂による封孔を検討した。
すると,樹脂封孔したことで,リーク率は0%となり,
誘電損失も低下し(1MHzでの誘電損失:2.3 %)周波 数依存性が小さくなった(図3)。更に,リーク電流は 2桁以上低減し,耐電圧は増加して50V以上となり(図 4),いずれの特性も改善された。容量密度については,
樹脂封孔することで若干低下し,1MHzで36nF/cm2とな った。これは,表面に比誘電率の低いエポキシ樹脂の 極薄層が形成されたことに起因すると考えられる。一 方,誘電損失の場合と同様に,周波数依存性は小さく なり向上した。
4 まとめ
高濃度ゾルゲル法でBaTiO3ナノ結晶粒子を合成し,
バインダー樹脂を用いることなく,有機溶媒中に分散 させた。この液をroll to rollプロセスで銅箔上に連
続塗布・乾燥させ,BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜を作製し た。得られたBaTiO3ナノ粒子堆積薄膜は表面からエポ キシ樹脂を塗布して封孔することで,誘電損失,耐電 圧,抵抗率などの諸特性を向上させることができた。
図3 (a)BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜と(b)樹脂封孔 BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜の誘電損失の周波数 依存性
図4 (a)BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜と(b)樹脂封孔 BaTiO3ナノ粒子堆積薄膜のリーク電流の電圧依 存性
5 参考文献
1)Arimura M., et al.:Key Engineering Materials, Vol.350, pp.11-14(2007)
2) 原 義 豪 ら : エ レ ク ト ロ ニ ク ス 実 装 学 会 誌 , Vol.8(No.7),pp.573-579(2005)
6 掲載論文
エ レ ク ト ロ ニ ク ス 実 装 学 会 誌 Vol.13(No.1), pp.52- 57(2010)
7 謝辞
本研究は,NEDO技術開発機構産業技術研究助成事業 の助成を受けて実施した成果です。
10
-100 10 20 30 40 50
電圧 (V)
リーク電流(A/cm2)10
-910
-810
-710
-610
-5(a) 10
-410
-3(b) 0
10 20 30
10
3周波数 (Hz)
誘電損失(%)