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論文 腐食ひび割れの補修が残存耐荷性能の回復に及ぼす影響

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(1)

論文 腐食ひび割れの補修が残存耐荷性能の回復に及ぼす影響

尾形 直紀

*1

・山崎 理美

*2

・大下 英吉

*3

要旨:島国である我が国では経年劣化に伴う塩害による鉄筋腐食は深刻な問題となっている。RC構造物にお い て鉄 筋と コン クリ ート の付着 は実 構造 物の 耐荷 性能 におい て非 常に 重要 な位 置づ けにあ る。 そこ で, 本研 究では腐食ひび割れに補修を施したRC 梁部材の耐荷力,付着応力の回復性能について検討を行った。また , 補修を施す領域を分けることでより有効な補修領域についての検討を行った。

キーワード:鉄筋腐食,耐荷力,付着応力,すべり,ひび割れ,補修

1.はじめに 1.1 研究背景

昨今の社会情勢において,既存の構造物を適切に維持 管理し,長期的な供用を目指すために維持補修は重要な 位置づけにある。また,構造性能ならびに耐久性能とラ イフサイクルコストの両者を含めた観点から議論されな ければならず,設定した構造物の余寿命に対してその機 能と性能を十分に発揮しなければならない。したがって,

構造物によっては長期延命を目的とした補修補強工法の 適用が必要なものもあれば短期延命を目的としたものも ある。維持管理手法に際しては前者の長期延命の補修補 強工法は1回あたりのコストが高く処理の手法が複雑で ある。一方で後者に関しては,1 回あたりのコストが低 く処理が比較的容易な補修工法を5年から10年ごとに繰 り返した適用により,構造性能を維持することは必要不 可欠となる。特に,後者においては構造性能に大きく影 響を及ぼす部位の特定と適切な対処方法の確立が必要不 可決である。

既 存 構 造 物 の 長 期 供 用 化 の た め に は 各 種 劣 化 に 起 因 した構造性能の変化を正確に把握する必要がある。その ため,近年では内的,外的要因により構造物に生じる各 種劣化現象が構造性能に及ぼす影響について各方面で盛 んに研究が行われている。鉄筋コンクリートに生じる劣 化現象は多岐にわたっているが,特に中性化や塩害によ る鉄筋腐食は構造体として機能する鉄筋量を減少させる とともに鉄筋とコンクリートの一体性すなわち付着性能 を低下させるなど構造性能に及ぼす影響が大きい劣化現 象の一つである。

このような観点から,鉄筋腐食を生じたRC 部材の耐 荷力性状,付着性状を評価した研究は現在までに数多く ある。例えば,梁全長にわたり過度に鉄筋腐食を生じる ことにより定着が不十分なRC 梁部材の残存耐荷力は定 着部の鉄筋の抜け出しにより,大幅な耐荷力低下が起こ

ることが報告されている。この要因は,鉄筋の腐食と,

それに伴い発生する腐食ひび割れの影響による付着応力 の低下である。すなわち鉄筋腐食を生じたRC 部材の耐 荷性状,付着性状を定量的に評価することは,腐食劣化 の生じたRC 構造物の構造性能を評価する上で極めて重 要な位置付けにある。

鉄筋腐食したRC部材の補修による耐荷力,付着応力 の回復性能に関する研究は著者らの知る限りさほど多く ない。これは,前述した鉄筋腐食に起因する各種の劣化 現象が前述の構造性能に及ぼす影響の定量的な評価を可 能とする手法が確立されていないためである。このよう なことから各学協会においてその確立に向けた取り組み が行われている。

1.2研究目的

本研 究で は,RC 部 材 に対し て短 期延 命を 目的 とし た 補修工法に着目し,腐食ひび割れの補修効果が耐荷力の 回復性能に及ぼす影響の評価を行うことを目的とする。

具体的には鉄筋とコンクリートの曲げ試験を実施し,耐 荷力,荷重と変位の関係,付着応力とすべりの関係につ いて評価を行った。また,補修を施す領域を変化させる ことにより補修対象領域が耐荷力の回復性能に及ぼす影 響についても検討を行った。

2.腐食ひび割れ補修実験

2.1試験体概要およびコンクリートの配合

試験体の形状と寸および配筋を図-1に示す。試験体は,

220mm×1950mm×180mm の 梁 部 材 で あ り ,主鉄 筋 に は , 主筋降伏による曲げ破壊を防ぐため, D19(USD685)高強 度異型棒鋼を60㎜間隔に2本配筋した。試験体は,打設 後24時間で脱型した後に,7日間湿布養生を行った。コ ンクリートの配合を表-1に示す。練混ぜ水には鉄筋の腐 食を促進させるために5%NaCl水溶液を使用し,セメン トは早強セメントを使用した。なお,荷重の載荷は,材

*1 中央大学 理工学部土木工学科 (学生会員)

*2 中央大学 理工学研究科土木工学専攻 (学生会員)

*3 中央大学 理工学部都市環境学科教授 工博 (正会員)

コンクリート工学年次論文集,Vol.35,No.2,2013

(2)

(a)低圧注入工法

齢28 日の時点で行った。

2.2腐食試験手法

鉄筋の腐食促進試験手法は,設定した腐食率が早期に 得られ,その制御が比較的容易である電食試験法を採用 し た 。そ の具体的 な方 法は図-2 に示す よう に,5%NaCl 水溶液を満たした水槽内に試験体を浸漬させ,鉄筋を陽 極側,銅板を陰極側に接続し,既定の積算電流量に到達 するまで直流定電流12。3Aを通電した。

2.3試験体名称

図-3に試験体名称の一例を示す。Fは定着性状を表し ており,0は主鉄筋がストレート,90は 90°フック加工 を施している。その後の数値10は目標腐食率,Rは補修 工法を表しており,0は未補修,1は低圧注入工法,2は 充填工法を表している。また,アルファベットは補修を 施した領域であり,図-4に示すようにAは試験体の全長,

Bは試験体の定着域のみを表している。なお,F90は鉄 筋を90°フック加工を施した試験体であり,既往の研究

4)

から引用した。詳細は3。4章で後述する。

2.4補修工法と補修剤

腐 食 ひ び 割 れ の 補 修 工 法 の概要 を図 -5 に示す 。同 図 (a) に示す低圧注入工法は,主にひび割れ幅が 0。2mm から 1mm 程度の微細なひび割れに対してゴムなどの圧 力で 24 時間かけて補修剤をひび割れに注入する工法で ある。一方,同図(b)に示す充填工法は1mm以上の比較 的大きなひび割れにそってU字もしくはV字の溝を入れ その溝に補修剤を充填させる工法である。低圧注入工法 の補修剤には,7 日間の養生で強度を発揮するエポキシ 系樹脂補修剤を使用した。充填工法の補修剤には,エポ キシ系樹脂補修剤でも低圧注入工法で使用した補修剤よ りも硬化後の可とう性が高いポキシ系樹脂補修剤を使用 した。いずれの試験体においても,補修後に7 日間養生 し荷重の載荷を行った。また,充填工法は一般的には腐 表-1 コンクリートの配合

図-1 試験体概要

図-2 電食試験概要

図-5 補修工法概要 図-4 補修領域

(a)A全長補修

(b)B定着域補修

試験体名 腐食率( %) 圧縮強度( N/ mm

2

) 補修工法 補修領域

F0 -0 -R0 - 3 0 .0 - -

F0- 10 - R0 8.1 3 5 .0 - -

F0 -1 0 -R1- A 8.4 2 9 .6 全長

F0 -1 0 -R1- B 12 .1 2 1 .2

F0 -1 0 -R2- B 5.6 3 0 .9 充填工法

低圧注入工法 定着域 表-2 実験パラメータ

F0 -10- R1- A

主鉄筋の定着性状

0 :なし 90:フック

目標腐食率

補修工法 0:未補修 1:低圧注入工法 2:充填工法

補修領域

A:全長補修 B:定着域補修

図-3 試験体名称

データ ロガー 安 定化電 源(2 0A)

5%NaCl水溶液

銅板(陰極)

鉄筋(陽極)

(b)充填工法

40 180

180=60@3 単位: ㎜

W C S G 混和剤 Nacl

168 280 826 996 2.8 8.11

単位量(kg/m

3

)

300 575 200 575 300

1950

(3)

食鉄筋周辺のコンクリートまではつり鉄筋とコンクリー トの付着を回復するために腐食生成物を除去する処理や プ

ライマー処理を行うが,本実験においては短期延命の観 点から腐食生成物の除去は実施しないこととした。

2.5実験パラメータおよび載荷試験方法

各試験体の腐食率,圧縮強度,補修工法,および補修 領域を表-2に示す。

載荷試験は(0。5mm/min)変位制御で行い,載荷点間隔

200mm,支点間距離1350mmの静的4点載荷とした。

2.6測定項目

測定項目は,スパン中央部のたわみ,鉄筋の軸方向 ひずみ,腐食率である。

スパン中央部のたわみは1/1000mm変 位計を試験体中 央部に1点,載荷点直下に2点設置して測定した。

鉄筋の軸方向ひずみの測定方法は,鉄筋ひずみの測定 であるが,図-6 に示す貼り合わせ鉄筋を用い,鉄筋内部 にひずみゲージを貼り付けることにより測定した。その 具体的な方法は,鉄筋を軸方向に切断後,その断面内に

2mm×4mm の溝を切削し,ひずみゲージを貼り付けた後

に 2 対 の 切断さ れ た 鉄 筋 をエ ポ キ シ 樹 脂 接着剤に よ り 貼り合わせ1 本の鉄筋とした。貼り合わせ鉄筋は2 本の 鉄筋のうち引抜き鉄筋のみとし,残りの鉄筋は通常の鉄 筋 を使用 し た 。 な お , ひ ずみ ゲージの貼り 付 け間 隔は 50mmで ある。

鉄 筋 は載荷試 験終 了後 には つり 出 し,10%濃度の クエ ン酸二アンモニウム溶液に 24 時間浸漬させ,腐食生成 物を除去した。その後,腐食鉄筋の質量を計測し,電食 以前の健全な鉄筋との質量差を健全な鉄筋の質量で除す ることにより腐食率を算出した。腐食率算定式を次式に 示す。なお,表-2に示す腐食率は,各鉄筋を50mm 間隔 で切断し腐食率nを算出し,それを平均した値である。

(1)

ここで, は腐食後の鉄筋の断面積であ りAは健全鉄 筋の断面積である。なお,腐食後の断面積に関しては式 (1)より算出した腐食鉄筋の断面積に,鉄筋に設けた溝の

断面積(16mm2 )を加えた値とした。

試験体F0-10-R0,F0-10-R1-A,F0-10-R1-Bでは設定電 圧にできるだけ近い値で通電したが,試験体F0-10-R2-B では,電食試験時に他の試験体の電食試験時に比べ低電 圧で長時間通電したため平均腐食率が低くなった。

3.補修による構造性能回復効果 3.1鉄筋の腐食性状

図-7に各試験体の腐食率分布を示す。いずれの試験体 0.0

5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800

位置(mm)

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800

位置(mm)

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800

位置(mm)

図-7 腐食率分布

(a)F0-10-R0(腐食,未補修)

(b)F0-10-R1-A(腐食,低圧注入工法,全長補修)

(c)F0-10-R1-B(腐食,低圧注入工法,定着域補修)

(d)F0-10-R2-B(腐食,充填工法,定着域補修)

) 100 / 1

,

(

n A

A = × −

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800

位置(mm)

図-6 貼り合わせ鉄筋

  

,

100

×

= m m

n (%)

A

ひずみゲージ

4mm

2mm

軸方向への切断 貼り合わせ

(4)

も主鉄筋の腐食率は鉄筋軸方向にばらつきを生じている。

これは,鉄筋腐食に起因してかぶりコンクリートに鉄筋 に沿ったひび割れが発生し,ひび割れを介して NaCl 水 溶液がコンクリート内部に侵入することにより,鉄筋腐 食が加速したことで生じた。

図-8に各試験体の腐食ひび割れ性状を示す。いずれの 試験体においてもかぶり面には鉄筋に沿った腐食ひび割 れが発生している。また,F0-10-R2-Bにおいては鉄筋に 沿ったひび割れは片側にしか見られなかった。これは,

全体的に腐食率が小さかったためである。

3.2破壊性状

図-9 に 各試 験体 の 荷 重 の載荷時に よ る ひ び 割 れ 性 状 を示す。試験体F0-10-R0 ,F0-10-R1-A およびF0-10-R2-B では鉄筋の抜け出しによる付着割裂ひび割れを生じてい る。

図-10 に荷重 と中央変位の関係を示す 。ここでは,鉄 筋腐食した試験体と腐食ひび割れに補修を施した試験体 の比較,また非腐食試験体とそれぞれの工法で補修を施 した試験体との比較を行う。

補修を施した試験体F0-10-R1-A,F0-10-R1-Bと補修を 施していない試験体F0-10-R0を比較すると,補修した試 験体の剛性は大きく鉄筋とコンクリートの一体性が確認 される。しかしながら,破壊を生じる変形量は小さく脆 性な挙動を生じる。

また,低圧注入工法で補修した試験体F0-10-R1-Aおよ

びF0-10-R1-Bと鉄筋が非腐食である試験体F0-0-R0を比

較すると,脆性的な破壊性状を示す。これは,低圧注入 工法で使用した補修剤の剛性がコンクリートより大きく,

また,硬化後に塑性的挙動を示すためである。そのため,

試験体の剛性も上がったと考えられる。

一方で,充填工法で補修した試験体F0-10-R2-Bと鉄筋 が非腐食である試験体F0-0-R0を比較すると同一の荷重 作用時における中央変位が大きくなる。これは,充填工 法で使用した補修剤の粘性が高いために,健全なコンク リートよりもじん性が高まったためである。

図-8 腐食ひび割れ性状

図-9 ひび割れ性状

(a)F0-10-R1-A(腐食,低圧注入工法,全長補修)

(b)F0-10-R1-B(腐食,低圧注入工法,定着域補修)

(c)F0-10-R2-B(腐食,充填工法,定着域補修)

(c)F0-10-R1-A(腐食,低圧注入工法,全長補修)

(d)F0-10-R1-B(腐食,低圧注入工法,定着域補修)

(e)F0-10-R2-B(腐食,充填工法,定着域補修)

(a)F0-0-R0(非腐食,未補修)

(b)F0-10-R0(腐食,未補修)

かぶり面

かぶり面

かぶり面

0 20 40 60 80 100 120

0 10 20 30 40 50 60 70

N

変位(mm)

F0-0-R0(非腐食)

F0-10-R0(未補修)

F0-10-R1-A(低圧注入工法、全長補修) F0-10-R1-B(低圧注入工法、定着域補修)

F0-10-R2-B(充填工法、定着域補修)

図-10 荷重と中央変位の関係

(5)

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

τ/fc

2/3

S/ D

F0 - 1 0 - R0 F0 - 1 0 - R1- A F0 - 1 0 - R1- B F0 - 1 0 - R2- B

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

τ/

2/3

S /D

F0 - 1 0 - R0 F0 - 1 0 - R1- A F0 - 1 0 - R1- B F0 - 1 0 - R2- B

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

τ/

2/3

S /D

F0 - 1 0 - R0 F0 - 1 0 - R1- A F0 - 1 0 - R1- B F0 - 1 0 - R2- B

100.8

63.32

80.5 90.5

84.8 90.04

0 20 40 60 80 100 120

F0-0-R0 F0-10-R0 F0-10-R1-A F0-10-R1-B F0-10-R2-B F90-10-R0 N)

■補修あり補修あり補修あり補修あり■補修な し補修な し補修な し補修な し

3.3実験値と二羽式より算定した耐荷力値

本節では,実測した鉄筋腐食率を用いて式(1)より腐食後 の断面積を算出することで腐食後の鉄筋比をもとめ,二 羽式に基づき耐荷力を算定した。また算定値と実験値の 耐荷力と比較を行う。せん断耐荷力算定式として式(2)が 提案されている。

(2) ここで, はコンクリートの圧縮強度, は鉄筋比, は 有効高さ, は部材幅, はせん断スパンである。この 式は一般的にせん断補強筋を用いない棒部材の設計せん 断耐荷力を算出するのに使われ,コンクリート強度,有 効高さ及び鉄筋比を考慮して導かれたものである。本研 究におい て も式(2)よ り算出 さ れ る算定値と 比 較 を 行 う 。

図-11 に 各試 験体の 実験値を記 号■で表し ,およ び式 (2)より算出した算定値を実線で表す。

補 修 を 施 し た試 験体 に お い て は二 羽 式よ り算定 し た せん断耐荷力よりも補修を施した試験体はいずれにおい ても,耐荷力が高かったことがわかる。特に,F0-10-R1-B に お い て は式(2)よ り算出 さ れ る算定値に 比 べ 耐 荷 力 が 特に大きくなっている。このことから低圧注入工法で定 着域を補修することが耐荷力の回復に最も効果的である

と言える。

3.4耐荷力回復性能

図-12に各試験体における耐荷力の一覧を示す。また,

同図には既往の研究

4)

による主鉄筋にフック加工を施し 未補修の試験体F90-10-R0の耐荷力を併せて示す。いず れの補修工法で補修を施した場合においても鉄筋が健全 な試験体に比べ耐荷力は小さな値を示している。これは,

補修剤をひび割れに浸透させ鉄筋とコンクリートの付着 を回復させるためであるが,鉄筋腐食に伴い腐食生成物 が鉄筋の周囲に存在しているために鉄筋とコンクリート の付着が健全なものに比べ小さくなるためである。一方,

補 修して いない試験体 F0-10-R0 に比べ 補修し た試 験体 F0-10-R1-A ,F0-10-R1-BおよびF0-10-R2-Bの耐荷力は 大きくなっている。これは,補修剤を浸透させた効果が あったものだと考える。また,主鉄筋にフック加工を施 し未補修の試験体F90-10-R0と,ストレート鉄筋の定着 域 に低圧注入工法を した試験体 F0-10-R1-B の 比較 をす ると,後者の低圧注入工法で定着域のみを補修した試験 体は,前者の主鉄筋にフック加工を施した試験体に比べ

(c)定着領域 (b)せん断領域 (a)曲げ領域

図-13 破壊側における付着応力すべり関係

1000 ) 1 4 . 1 75 . 0 ( 1000) ( ) 100 ( ' 2 .

0 4

1 3

1 3

1

a bd d Pw d

f

Vc= c +

Pw

d

fc

b a

図-12 各試験体における耐荷力 図-11 各試験体の算定値と実験値の比較

0 20 40 60 80 100

5 7 9 11 13

N))))

腐 食 率 ( %)

腐 食 率 ( %)

腐 食 率 ( %)

腐 食 率 ( %)

F0-10-R0 F0-10-R0 算定値

F0-10-R1-A F0-10-R1-A 算定値

F0-10-R1-B F0-10-R1-B 算定値

F0-10-R2-B F0-10-R2-B 算定値

(6)

ても耐荷力にほとんど差異はない。これは,定着域のみ を補修すると定着域の鉄筋とコンクリートの付着が回復 し,抜け出しが抑制されたためである。

また,低圧注入工法と充填工法の異なる2種類の補修 工法で定着域のみを補修した試験体において,前者の補 修工法で補修した試験体においては,腐食率は高いにも 関わらず耐荷力は大きくなっている。これは,低圧注入 工法で用いた補修剤が塑性的挙動を示すため鉄筋とコン クリートの間にも補修剤が浸透しコンクリート同士だけ でなく鉄筋とコンクリートの付着が回復するが,充填工 法で使用した補修剤は粘性が高いため鉄筋とコンクリー トの間まで補修剤が充填されず,付着の回復がコンクリ ート同士の付着の回復効果のみにとどまったためである と考えられる。

3.5付着応力回復性能

鉄筋に沿った各位置における付着応力τは,式(3)を用 い算出した。

(3) ここで,Dは鉄筋径,Pは鉄筋の引張力である。具体 的な鉄筋の引張力勾配の算出方法であるが,腐食試験体 の 鉄 筋 は断面 欠損を 有 す る こ と か ら測定 近傍領 域

(10mm)の 腐食率を 3。1節において述べた同様の手法に

より測定し,測定点近傍の周長,断面積を算出した。そ して着目する測定点を含む近傍の3点を通る2次曲線か ら描く測定点の鉄筋の引張力勾配を算出した。

すべり量は,試験体端部から対応する測定点までのひ ずみを積分することにより式(4)から算出される。

(4) ここで,Sはすべり量, は鉄筋ひずみである。

破 壊 側に お け る試 験体 が破 壊に至る ま で の値か ら得 られた付着応力すべり関係を図-13に示す。なお,既往 の研究

2)

と同様に,縦軸は圧縮強度の2/3乗で ,横 軸の すべり量は鉄筋径で除することにより無次元化した。ま た,付着に関与する相対ずれは剛性ずれを加味しておら ず,図-13の結果も前途のようになっている。

( ( ) )

(

0.6

)

3 /

'2 1 exp 40 /

9 .

0 fc − − S D

τ = (5)

いずれの領域においても未補修の試験体に比べて補修 をした試験体のほうが,付着応力が大きくなっているこ とがわか る。したがって,図-13 からも補 修による効果 があったと言える。

また,各局所点から得られた値を平均化することによ り本研究では評価を可能とした。

既往の 研 究

2)

に お い て曲 げ 区 間に お け る ひ び 割 れ が 応力を分散させることにより耐荷力が向上することが報

告されている。同図(a)に示すように曲げ領域の付着応力 は 低圧 注 入工 法 で 定 着 域 を 補 修 し た試 験体 F0-10-R1-B に 比 べ , 低圧 注 入工 法 に よ っ て 全 長 を 補 修 し た試 験体

F0-10-R1-A の付 着応力の回復は顕著 であった。対し て,

曲げ区間を補修したことにより鉄筋とコンクリートの付 着 が 回 復 す る こ と に 伴 い , 変 形 性 能 を妨 げる た め

F0-10-R1-Aに おける耐荷力の回復効果は F0-10-R1-Bに

比べ確認されなかった。

4.まとめ

本研究では,腐食ひび割れの補修効果を補修工法の違 い,荷重と変位の関係,耐荷力,付着応力の観点から検 討したものである。以下,本研究により得られた知見を 示す。

1) 鉄筋腐食を生じたRC梁部材の耐荷力を回復させる と い う点 では 低圧 注入工法 が有 効 であ る。し かし , 荷 重 と 変 位 の 関係で は 荷 重 に 対 す る 変 位 が小さ く な っ て し ま う と い う こ と が 問 題 点 で あ る た め橋梁 などの実構造物に対して低圧注入工法を行うと,剛 性が高くなる。

2) 鉄筋腐食を生じたRC梁部材において,充填工法で 補修するということは,耐荷力の回復という点では 低圧注入工法に劣るものの,荷重と変位の関係では 低圧 注 入工 法 に 比 べ剛性 が 下 が り破 壊 時の 変 位 は 大きくなる。

3) 充填工法では,鉄筋とコンクリートの間の付着応力 は回復してないが,かぶり面のひび割れたコンクリ ー ト同 士の 付 着 は 鉄 筋 腐 食 に よ る ひ び 割 れ が 補 修 剤により塞がり,コンクリート同士付着が回復され 結果,実験値の付着応力が回復される。

参考文献

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dx dP πD

τ 1

=

dx s=

ε

ε

参照

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