• 検索結果がありません。

高精度ガスメータ標準器の研究開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "高精度ガスメータ標準器の研究開発"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)高精度ガスメータ標準器の研究開発 Research and Development for the Accuracy of the Standard Wet Gas Meter. 小. 林. 駿. (Hayao Kobayashi). 2003. 7.

(2) 現 在 、 我 国 の 家 庭 用 ガ ス メ ー タ の 検 定 台 数 は 、 年 間 400 万 台 と い う 莫 大 な 数 に及んでいる。これを検定評価する湿式ガスメータ基準器の精度は、ガス計量事 業において不可欠の重要事である。国際法定計量機構が進める国際化に対応する た め 、 我 国 で も 新 計 量 法 が 93 年 に 制 定 さ れ 、 従 来 の 法 定 計 量 に 基 づ く 基 準 器 制 度とは別に、計量の標準供給制度(トレーサビリティ制度)が発足した。この中 で、従来の精度は多数の国際機関によって合意された「不確かさ」と言う表現で 定量化されることになった。当初、この対応として新規な高精度の音速ノズル標 準器導入が検討されたが、経済性の面などから湿式ガスメータを高精度化する要 望が高まった。申請者は、永年に亘るガス計量業界での計量技術の開発研究を基 軸に、国際的に適合する誤差評価に基づく湿式ガスメータの高精度化研究に注力 し、社会的使命感に燃えた意欲により積み重ねた成果内容が、本論文の骨子とな っている。 本 論 文 は 全 体 が 11 章 か ら 構 成 さ れ て い る 。 第 1 章 か ら 第 4 章 ま で は 、 湿 式 ガ スメータの論理解析が主たる内容である。第 1 章は、湿式ガスメータを始め各 種流量計の歴史的背景を踏まえ体系化してまとめており、「体積流量計概論」と も言える着実な内容となっている。 第2章では、湿式ガスメータの原理・構造と基本的特性の解明についての基礎 解析に加え、新しい視点から計量誤差要因解析について言及している。長い歴史 をもつ湿式ガスメータの初期からの基礎解析が、その後の展開に繋がる経緯を明 らかにすると共に、高精度流量測定に対する誤差解析の貢献度にも触れており、 評価できる内容である。 第3章は、湿式ガスメータ高精度化のための系統的誤差に関する理論解析を行 った結果を論述している。水準器の感度は設置姿勢誤差の影響を受けること、ま た、封液温度と誤差の相関から、計量ドラムと装置の膨張・収縮が相互に誤差を 相殺し、封液温度の計量誤差への影響は桁違いに小さいことが明らかにされ、温 度特性に関する一連の実験から、理論値を検証するに足る精度の高い実験結果が 得られている。これらは既存の湿式ガスメータにおける計量誤差を解析する上で また、高精度の標準器を供給する上での重要な知見である。ガスメータに特有の 著しい計量誤差について、計量原理からその由来を明確にした成果は、意義深い ものと言える。 第 4 章 で は 、 湿 式 ガ ス メ ー タ の 短 所 で も あ る 回 転 ゆ ら ぎ に つ い て 、 3、 4、 5、 6 の 隔 室 数 別 に 3D− CAD を 用 い た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 解 析 が 行 わ れ 、 ゆ ら ぎ 生 成 の主因子が回転毎の計量体積の微小変動に在り、他に回転モーメント、水没下の 負荷抵抗も影響することが明らかにされている。ゆらぎの解析は新規知見に富み 一般性の高い特許技術として確立されており、湿式ガスメータの高精度化を実現 した顕著な成果と認められる。 第5章は高分子材料の活用による効果を中心に、在来の計量ドラムの半田付板 1.

(3) 金加工方式における問題点を解決した開発研究について述べたものである。この 成 果 は 、 こ れ ま で 200 年 近 く も 未 改 良 の ま ま 放 置 さ れ て き た ガ ス メ ー タ の 加 工 技術に対し、斬新で有用な方法を供する成果となっている。更に、軽量化により 微小流量領域への計量拡大が可能となり、湿式ガスメータの計量ドラムに変革を もたらしており、独創的かつ画期的な進歩として 高い評価に値するものである。 第6章では、高度技術集約型産業等研究開発調査報告書に申請者も分担執筆し て「ガスメータ検定方法等調査研究報告書」として既に公表されている内容につ いて、改めて詳細な計測データを加えて論述し直したものであり、従来の湿式ガ スメータ(基準器)の性能・精度に関する疑義を払拭する根拠となったものであ る。高精度な音速ノズルに匹敵する精度が低コストで実証され、公的機関で初め て承認された優れた成果として評価できる。 第7章は、湿式ガスメータに使用する置換封液についての実験結果をまとめた もので、従来の炭化水素系に比較してシリコーン油系の優れた特性が実証されて いる。適切な高分子材料を計測技術へと巧みに応用した例でもあり、湿式ガスメ ータの微小流量の計測性能向上に大きく貢献している。 第8章では、封液に水を使用した場合の計量誤差問題に焦点を絞り、水蒸気分 圧の影響を明確にしている。旧計量法では過去20余年に亘り数値のみを規定し 実験内容や裏付けとなる水蒸気圧発生の機構に触れなかったが、申請者は最も多 用されている水封式湿式ガスメータの高精度化を図るため、計量中の水蒸気発生 機構を工学的に解明し、更に、質量実験による補正式を確立して一般化を図って いる。このような計量精度向上に対する具体的成果は、計量産業界へ広く貢献で きるものと高く評価できる。 第 9 章 は 、 国 際 法 定 計 量 機 構 で 要 求 さ れ る 微 小 流 量 域 ( 毎 時 1〜 300 L) の 計 測に用いる湿式基準器の研究開発に関する内容である。計量ドラムの隔室数4室 から5室に変えて回転ゆらぎを著しく低減させると同時に、ソフト面からゆらぎ 防止装置を開発し、実際の標準器に搭載している。さらに、微小駆動力で安定し た精度保持ができるメータ構造を確立している。この結果、ゆらぎ低減や計測精 度の向上に加え、計測時間が大幅に短縮されている。微小流量計測が可能な湿式 基準器の研究開発は、我が国の計量法において流量計測に関する信頼性増加の一 助となっており、微小流量標準器としても大いに期待できる研究である。 第 10 章 で は 、 音 速 ノ ズ ル 標 準 器 の 代 替 と な り う る 実 用 標 準 器 と し て 、 最 高 精 度が達成された湿式ガスメータ開発の経緯に関する記述であり、その精度が注目 されて国際連帯の形成に至ったことが併記されている。流量実用標準器に関する 一連の研究とセンサー技術の採用により、音速ノズルに匹敵する高精度の実用標 準 器 が 完 成 さ れ て い る 。 付 加 さ れ る 誤 差 は 0.12〜 0.16%ま で 低 減 さ れ 、 音 速 ノ ズ ルに近い精度の特定二次標準器になり得る精度を有することが証明されている。 湿 式 ガ ス メ ー タ 体 積 比 の 校 正 誤 差 は 、 従 来 の 0.15〜 0.24% に 比 較 し て 、 同 一 の 2.

(4) 湿 式 メ ー タ で も 僅 か 0.06〜 0.08% と な り 、 極 め て 高 い 精 度 が 達 成 さ れ て い る 。 また、比較法による体積同士の校正でも高精度が保証されている。この結果は、 湿式ガスメータが今後とも流量標準供給の要と成り得ることを証明したものであ る。 第 11 章 は 、 本 研 究 成 果 の 総 括 と 今 後 の 展 望 が 述 べ ら れ て い る 。 本 研 究 で 達 成 された精度は、湿式ガスメータの誤差要因に関する論理解析を基礎にして、実験 解析により新計量法の精度を担保できる研究として、ガス計量の分野で具体的社 会貢献に繋がった重要例であり 国際競争力の維持にも繋がる優れた成果である。 以上の通り本論文は、永年使用されてきた湿式ガスメータ(基準器)を高精度 化する目的に沿って、基礎特性と誤差要因を詳細に解析した内容を述べたもので ある。一連の改良開発や基礎解析の結果を基に、新計量法に対応すると共に国際 法定計量機構にも供し得る一般性の高い成果が得られている。前述した 5 室ド ラ ム と 樹 脂 化 ド ラ ム の 発 明 、 高 精 度 10L 基 準 器 の 開 発 、 水 蒸 気 圧 補 正 式 の 確 立 、 微小流量湿式基準器の開発および音速ノズル代替可能な実用標準器の開発は、計 量機構と誤差要因を基礎工学的に再構成した知見に基づくものである。これ等の 研 究 成 果 は 、 ガ ス 計 量 の 標 準 供 給 (JCSS)や 、 家 庭 用 ガ ス メ ー タ 検 定 用 基 準 器 の 精度の信頼性を検証する観点から、社会的にも極めて重要な成果と評価できる。 ま た 、 本 研 究 は 70 件 に 及 ぶ 特 許 等 の 工 業 所 有 権 と し て 技 術 的 に も 確 立 さ れ て お り、ガスの計量技術を始めあらゆる流体計測の関わる化学工学および関連分野に 着実な進歩をもたらしたものと結論される。よって本論文は博士(工学)の学位 論文として価値あるものと認める。. 2003 年 7 月 審査員. (主 査 ) 早 稲 田 大 学. 教. 授. 工 学 博 士 (早 稲 田 大 学 ). 西出. 宏之. 早稲田大学. 教. 授. 工 学 博 士 (早 稲 田 大 学 ). 平田. 彰. 早稲田大学. 教. 授. 工 学 博 士 (早 稲 田 大 学 ). 大田. 英輔. 早稲田大学. 名誉教授. 工 学 博 士 (早 稲 田 大 学 ). 土田. 英俊. 計測科長. 工 学 博 士 ( ロンドン大学). 高本. 正樹. (独 )産 業 技 術 総合研究所. 3.

(5)

参照

関連したドキュメント

CLMV諸国外国投資誘致のための拠点開発の検討 (バ ンコク研究センタープロジェクト I).

本実験では,低速移動体を対象として LEX 信号を用い た高精度測位(以下 LEX)とローカル基準局を用いた RTK 測位(以下

3.1 高吸水性ポリマー安定液の定義

Schönhuth eds., Ethnologishe Beiträge zur Entwicklungspolitic, Vol.II, Bonn: Beiträge zur Kulturkunde

[r]

伊藤 成朗(いとうせいろう) 。アジア経済研究所 開発研究センター、ミクロ経済分 析グループ長。博士(経済学)。専門は開発経済学、応用ミクロ経済学、応用時系列

行った.その結果,ECT患者群は,非ECT慢性痛患者群に 比べて神経症レベルや抑うつが高く精神的健康度が非常に

伊藤成朗(いとうせいろう) アジア経済研究所 開発研究センター、ミクロ経済分析グル ープ長。博士(経済学)。専門は開発経済学、応用ミクロ経済学、応用時系列分析。最近の 著作に”The