人生前半のアクティビティとモビリティの課題
~若者世代( 20 ~ 30 歳代)の活動減少から見た 社会問題に対する一考察~
土井 勉 1 ・安東 直紀 2 ・白水 靖郎 3 ・中矢 昌希 4 ・西堀 泰英 5
1
フェロー 京都大学大学院 工学研究科(〒615-8540 京都市西京区京都大学桂C1-2-313)E-mail: [email protected]
2
正会員 京都大学大学院 工学研究科(〒615-8540 京都市西京区京都大学桂C1-2-313)E-mail: [email protected]
3
正会員 中央復建コンサルタンツ株式会社(〒102-0083 千代田区麹町2-10-13)E-mail: [email protected]
4
非会員 中央復建コンサルタンツ株式会社(〒533-0033 大阪市東淀川区東中島4-11-10)E-mail: [email protected]
5
正会員 中央復建コンサルタンツ株式会社(〒460-0003 名古屋市中区錦2-3-4)E-mail: [email protected]
本稿では,様々な面で日本の将来を支え,更に活気づけていくことが期待される若者世代(20~30歳 代)に着目して,パーソントリップ調査データを用いて交通行動の変化と将来見通しを確認し,そこから 見えてくる問題点について考察した.その結果,若者世代における活動の減少傾向が継続すれば,すう勢 以上にトリップ数が減少することを確認した.トリップ数の減少が進むことで,地域経済や公共交通維持 への悪影響をもたらし,さらには出会いの減少による晩婚化・少子化に拍車をかけることになりかねない.
これらの問題に対応するためには,都市交通政策からのアプローチに加えて,医療・福祉分野との連携 や,都市機能再配置と一体的な交通行動構造を変えるなど,社会構造全体を変えていく必要があることを 指摘した.
Key Words : travel behavior of youth, socio-economic activity , Collaboration with traffic engineering and other fields , person trip survey
1.
はじめに我々の日常生活は通勤・通学,業務,買い物・通院・
交遊など多様な目的で外出して人と出会い,情報や物資 を交換することで成立している.我々が,これらの活動 を行う際に存在する距離を克服する方法として,リアル な空間で対応する方策が交通であり,バーチャルに対応 するのが電話やインターネットに代表される情報通信と 言える.
交通とは文字通り「交わり」「通う」ことである.交 通を行うことで人々は顔を合わせ,人と人の繋がりを形 成・維持し,その関係を発展させてきた.情報通信技術 は,長くリアルな交通の代替や補助的な役割を担ってき たが,近年の急速な技術革新により,ネットショッピン
グやSNS(Social Networking Service)を活用した仮想現実 的な社会・経済活動が可能となっている.こうした時代 の潮流は若者世代に限らず,高齢者にも拡がりつつある.
ただし,こうしたバーチャルなコミュニケーションが 拡大するほど,リアルなコミュニケーションがより重要 となる.我々は人と人が直接的に会い,時間を共有する ことで一人では生み出せない価値が創出されることを経 験的に理解している.だからこそ,今なお都市に人が集 まり,活気と賑わいが生まれるのである.
これら認識に対して,最近の若者世代を表現する言葉 としてはネガティブなものを多く耳にする.「草食系」
「嫌消費」「クルマ離れ」-総じて「さとり世代」と称 される20歳代・30歳代の若者は,「バブル世代」や高齢 者と比較して元気がないと評されることが多い.
本稿では,パーソントリップ調査(以下,PT調査と 称す)データを用い,今後,様々な面で日本の将来を支 え,更に活気づけていくことが期待されるこれら世代に 着目して,交通行動の変化と将来見通しを確認し,そこ から見えてくる問題点について考察する.
2. 京阪神都市圏パーソントリップ調査の概要
若者世代の交通行動の変化を把握するに当たり,交通 マーケティングの考え方に基づいて,個人属性を踏まえ た分析・比較を行うため,京阪神都市圏PT調査の結果 を活用した.
PT調査とは,人の1日の全ての動きを捉えることを
目的としたサンプル調査である.表-1に分析に用いた京 阪神都市圏PT調査の概要を示す.表-1 第
3~5
回京阪神都市圏(近畿圏)PT調査の概要 項目 第3回 第4回 第5回 調査対象圏域 京阪神都市圏 近畿2府4県4
政令市 圏域人口(5歳以上)
1,671
万人 1,830万人 1,976万人 調査対象者 調査対象圏域居住者(5歳以上)
調査年次 平成
2
年 平成12
年 平成22
年 抽出率 約2.3% 約2.3% 約3.5%※3時点比較を行う場合は,第3回調査圏域の集計値を用いた
3. 若者世代の移動実態の変化
(1)
外出率の減少1日に外出した人の割合(外出率)について,平成12
年から平成22
年の推移を見ると,60
歳以上では約3
~8
ポ イント増加しているのに対して,20~30歳代では約3~5 ポイントの減少(図-1
)となっている.0%
20%
40%
60%
80%
100%
平成2年 平成12年 平成22年
(歳)
図
-1
年齢階層別の外出率の推移(平日)(2) 生成原単位の減少
1
人1
日あたりのトリップ数(生成原単位)について,平成12年から平成22年の推移を見ると,65歳以上の高齢 者は約0.2トリップ/人日増加しているのに対して,働き 盛りの年代である20~30歳代は,約0.3~0.6トリップ/人 日の減少(図
-2
)となっている.特に30歳代の生成原単位の減少傾向は,前述の外出率 の減少と比較して顕著なものとなっている.つまり,外 出の機会自体が減少していることに加え,外出した場合 でも交通行動を行わない傾向になっていることが分かる.
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50
平成2年 平成12年 平成22年 (トリップ/人日)
(歳)
図
-2
年齢階層別の生成原単位の推移(平日)一方,休日の生成原単位について男女別にみると,男 女ともに
20
~40
歳代で減少傾向にあり,特に20
~30
歳代 で大きく減少している.(図-3
)休日のトリップは自由目的が大半を占めるため,休日 原単位の低下は都市の活力低下に関係すると考えられる.
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50
5
~9
歳10
~14
歳15
~19
歳20
~24
歳25
~29
歳30
~34
歳35
~39
歳40
~44
歳45
~49
歳50
~54
歳55
~59
歳60
~64
歳65
~69
歳70
~74
歳75
歳以上<休日:男性> (トリップ/人日)
男性 平成12年 男性 平成22年
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50
5
~9
歳10
~14
歳15
~19
歳20
~24
歳25
~29
歳30
~34
歳35
~39
歳40
~44
歳45
~49
歳50
~54
歳55
~59
歳60
~64
歳65
~69
歳70
~74
歳75
歳以上<休日:女性> (トリップ/人日)
女性 平成12年 女性 平成22年
図
-3
休日の年齢階層別の生成原単位の推移(上段:男性,下段:女性)
20~30歳代の生成原単位の減少傾向の要因を探るため,
世帯構成と職業に着目したところ,就業者に比べて無 職・その他(アルバイト等)の外出率・生成原単位が男 女とも小さいことが分かる.なお,世帯構成(単身/同 居)の違いについては男女で傾向が異なった.(図-4)
男性(
30
~34
歳)就業者 無職・その他
単身 3.4
2.9 2.7
3.6
3.1 2.9
92.2 91.2 92.3
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
H2 H12 H22 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
1.3 1.5 1.3
3.6
2.8 3.0
37.6 52.1
43.3
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
H2 H12 H22 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
同居 3.2
2.9 2.4
3.5 3.1
2.6
92.5 92.5 91.3
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
H2 H12 H22 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
0.9 1.0 0.8
3.0 2.8 2.6
29.6 37.2
30.2 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
H2 H12 H22 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
女性(30~34歳)
就業者 無職・その他
単身 3.2
2.8 2.7
3.6
3.0 2.8
91.3 94.1 96.0
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
H2 H12 H22 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
2.4
1.6 1.4
3.7
2.7 3.1
65.7 60.4
45.2
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
H2 H12 H22 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
同居 3.6 3.1
2.5
3.8 3.4
2.8
94.2 93.4 89.3
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
H2 H12 H22 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
3.2 2.9
2.0
4.2 3.8 3.5
76.4 76.5
57.9
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
H2 H12 H22 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
図-4 世帯構成別職業別の生成原単位・外出率の比較(平日)
次に,自動車保有と居住地域による違いを見たところ,
自動車を持たない人は持つ人と比べて,都心部では大き な差はないものの,地方部になると外出率・生成原単位 が低下する傾向が伺えた.(図-
5
)30~34歳
自動車保有 自動車保有なし
男性
2.5 2.8 2.2 2.6 2.3 2.7 2.4 2.7
88.7 85.3 85.0 87.2
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
都心部 都心周辺部 郊外部 地方部 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
2.3 2.3
2.0 1.4
2.7 2.7 2.6
1.9 86.7 85.3
76.0 70.8
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
都心部 都心周辺部 郊外部 地方部 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
女性
2.3 2.9 2.3 2.9 2.4 3.0 2.6 3.1
76.8 79.1 79.1 82.6
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
都心部 都心周辺部 郊外部 地方部
% トリップ/人日
グロス ネット 外出率
2.2 2.3 2.0
2.7 2.8 2.7
81.9 82.1 74.5
20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 1 2 3 4 5 6
都心部 都心周辺部 郊外部 地方部 トリップ/人日 %
グロス ネット 外出率
図
-5
自動車保有有無別地域別の 生成原単位・外出率の比較(平日)(3) 自動車運転免許及び自動車保有率の減少
自動車運転免許保有率の推移を見ると,女性は平成12 年から平成22年にかけて,ほぼすべての年齢階層で増加 しているのに対して,男性の保有率は60歳以上で約11~
23ポイントと大きく増加しているのに対して,20~30歳
代では約2~4ポイントの減少(図-6)となっている.0%
20%
40%
60%
80%
100%
18
~19
歳20
~24
歳25
~29
歳30
~34
歳35
~39
歳40
~44
歳45
~49
歳50
~54
歳55
~59
歳60
~64
歳65
~69
歳70
~74
歳75
歳以上<男性> 男性 平成12年 男性 平成22年
図
-6
年齢階層別の自動車運転免許保有率の推移(男性)この傾向は,自動車の保有率についても同様であり,
60
歳以上の男性では約9
~21
ポイントの増加であるのに 対して,20~30歳代では約6~9ポイントの減少(図-7) となっており,自動車を利用・保有可能な若者が減少し ていることが分かる.なお,女性の自動車保有率は20歳 代を除き,全て増加している.0%
20%
40%
60%
80%
100%
18
~19
歳20
~24
歳25
~29
歳30
~34
歳35
~39
歳40
~44
歳45
~49
歳50
~54
歳55
~59
歳60
~64
歳65
~69
歳70
~74
歳75
歳以上<男性> 男性 平成12年 男性 平成22年
図
-7 年齢階層別の自動車保有率の推移(男性)
(4) 自動車トリップ数の減少
こうした変化を受け,20~30歳代の男性の自動車利用 トリップ数は,総トリップ数の減少幅以上に大きく減少 している.
特に
20
歳代においては,平成12
年から平成22
年にかけ て総トリップ数が約4割減少した中で,自動車利用トリ ップ数は約6
割の減少(図-8)となっている.代表交通手段の構成比で見ても,20歳代の自動車利用 は
10
ポイント以上の減少となっている.鉄道
590 459 404
486 473 334
418 427 346
458 440 490
バス 自動車
655 480 200
845 928 362
814 880 481
971 881 735
自動二輪
・原付 自転車 徒歩 その他
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500
凡 例 平成2年 平成12年 平成22年 平成2年 平成12年 平成22年 平成2年 平成12年 平成22年 平成2年 平成12年 平成22年
20
~24
歳25
~29
歳30
~34
歳34
~39
歳1,861
千トリップ/日
1,514 986
1,814 1,937 1,069
1,645 1,749 1,219
1,916 1,741 1,748
図
-8
年齢階層別代表交通手段別トリップ数の推移(男性)4. ライフスタイルの変化
ここでは,若者世代の移動実態に影響を及ぼしている と考えられる要因
3
点について,現状を整理する.(1) 就業形態の変化
PT調査結果から,20~30歳代の就業形態を就業者・就
学者・その他(無職・アルバイト等)に分類し,その実 数及び構成比を整理した.女性は25~39歳において,就 業者数及びその構成比が増加している.その一方,男性は30歳代の「無職・アルバイト等」の 人数が
10
年間で約2
倍,20
年間で約7
倍と大きく増加(図- 9
)している.この傾向は,単身世帯ではなく,家族と 同居している世帯において顕著である.1,116.9
1.5 16.9
1,171.0
3.9 54.2
1,147.2
6.0
114.3 0
200 400 600 800 1,000 1,200
就業者 就学者 その他
30‐39歳 H2 30‐39歳 H12 30‐39歳 H22
(千人)
図
-9
就業形態別人口の推移(男性)(2) 所得額の変化
年齢階層別・雇用形態別に
1
カ月あたり賃金の推移を 見ると,平成17年以降,30歳代の正規雇用者でも減少し ていることが分かる.また,30
歳代の正規/非正規雇用 による賃金格差は約10万円/月となっている.(図-10)0 50 100 150 200 250 300 350 400
20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳
平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
(千円/月)
<男性 正社員・正職員>
0 50 100 150 200 250 300 350 400
20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳
平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
(千円/月)
<男性 正社員・正職員以外>
図-10 年齢階層別・雇用形態別賃金の推移(男性)
資料:賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
(3) 晩婚化の進展
男性の未婚割合について,平成6年から平成21年の推 移を見ると,
20
歳代・30
歳代いずれも増加(図-11
)して いる.30歳代の増加幅は20歳代よりも大きくなっている ことから,社会全体として晩婚化が進展していることが 分かる.20%
40%
60%
80%
100%
20 ~2 4歳 25 ~2 9歳 30 ~3 4歳 35 ~3 9歳
平成6年 平成11年 平成16年 平成21年
<男性>
図-11 年齢階層別の未婚割合の推移(男性)
資料:世帯動態調査(厚生労働省)
5.
人口及びトリップの将来見込み(1) 将来人口の推移
国立社会保障・人口問題研究所による都道府県別将来 人口(平成
19
年5
月推計)では,近畿2
府4
県の将来人口 は2010年比で2020年には約3%,2030年には約10%減少す ると見込まれている.このうち,75
歳以上は増加する一 方で,15~39歳においては2020年に約13%,2030年には約26%と大きく減少(図
-12
)する.単位:千人
注)<>内は2010年に対する伸び
5‐14歳
1,915
1,504
1,229
15‐39歳
6,138
5,313
4,516
40‐64歳
7,003
6,690
6,278
65‐74歳
2,671
2,659
2,366
75歳以上
2,117
3,038
3,492
0 5,000 10,000 15,000 20,000
凡 例
2010年
2020年
2030年
19,843 合計
19,205
<0.97>
17,880
<0.90>
(千人)
図
-12
年齢5
区分別将来推計人口の推移(近畿2
府4
県)トリップの母数となる夜間人口が減少することで,将 来的にも総トリップ数の減少が進展する.
更に,現在の20~30歳代のライフスタイルの変化が継 続した場合(生成原単位の低下傾向が継続した場合)に は,(生産年齢人口の減少)×(生成原単位の低下)の 掛け算によって,更にトリップ総量が減少すると考えら れる.
(2) 世代ごとの交通特性の変化予測
ここでは,
20
~30
歳代の生成原単位の減少と高齢者の 生成原単位の増加に着目して,平成2年・平成12年・平 成22
年の3
時点の性別・年齢階層別・目的別生成原単位 の推移を基に,表-2に示す考え方で2030年時点の生成原 単位の将来推計を行った.表
-2 生成原単位の将来推計の考え方
対象年次 平成
42
(2030
)年ベース年次 平成
2
(1990
)年,平成12
(2000
)年,平成
22
(2010
)年対象
性別
年齢
4
区分別(5
~14
歳,15
~64
歳,65
~74
歳,75歳以上)目的別(出勤・登校・自由・業務・帰宅)
備考
・上記年次・対象の生成原単位(グロス)
の推移を元にロジスティック曲線でトレ ンド推計
・平成
22
年~平成42
年の推移幅は,平成2
年~平成22
年の推移以上にはならないも のと設定図
-13
に,男性及び女性の全目的における生成原単位の 推計結果を示す.男性においては,年少人口に大きな変化は見られない が,生産年齢人口に着目すると,
2030
年時点で前期高齢 者(65~74歳)よりも小さく,後期高齢者(75歳以上)とほぼ同程度まで落ち込むことが見込まれる.
2.69 2.70 2.67
2.65 2.81
2.68
2.38
2.11 1.99
2.15
2.40
2.67
1.19
1.38
1.67 1.99
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50
1990年 2000年 2010年 2030年推計
<男性> (トリップ/人日)
5~14歳 15~64歳 65~74歳 75歳以上
2.68 2.69
2.63 2.60
2.62 2.68
2.38
2.25
1.57
1.82 1.98
2.26
0.91 1.01
1.13 1.28
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50
1990年 2000年 2010年 2030年推計
<女性> (トリップ/人日)
5~14歳 15~64歳 65~74歳 75歳以上
図
-13
年齢4
区分別での生成原単位の将来推計(上段:男性,下段:女性)
(3) 将来人口と世代別の交通特性の変化を反映した
トリップ数の将来予測
ここでは,近畿圏の総トリップ数に関する将来予測と して,表-3に示す
2
ケースで,平成32(2020)年,平成42(2030)年のトリップ数の試算を行った.推計は,PTデ ータの拡大係数(市町村別・性・年齢階層別に設定)を 将来人口に基づくものに付け替える方法で行った.
表
-3
将来予測のケース設定ケース 将来人口 世代別の交通特性
case1
(すう勢)
国立社会保障・人口
問題研究所推計値 現況と同じ
case2
同上表-2に基づき,世 代別の生成原単位の 変化を考慮して,拡 大係数を補正
将来推計人口に基づく拡大係数の付け替えのみを行っ た「case1」では,2010年から2020年のトリップ減少率は 約6%であるのに対して,2030年には約14%の減少とな ることが見込まれる.
これに性別・年齢4区分別・目的別の生成原単位のト レンド推計結果を反映した「case2」においては,2030年 時点で約16%のトリップ減少となる.
登校目的トリップ数は,2030年時点で約32%と他の目 的と比較して大きく減少する.また,高齢人口が増加す るものの,自由目的トリップ数も約8%の減少(図
-14
) が見込まれる.単位:千トリップエンド/日
注)<>内は2010年に対する伸び 出勤
13,242
12,137
11,039
登校
5,826
4,952
3,956
自由
25,371
24,886
23,223
業務
8,626
7,943
7,286
帰宅
37,228
34,925
31,735
不明
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000
凡 例
2010年
(現況)
2020年
(case1)
2030年
(case1)
90,294 合計
84,844
<0.94>
77,239
<0.86>
図
-14 近畿圏の目的別発生集中量の将来予測
また,手段別には鉄道利用トリップの減少幅が大きく,
2030年までに約2
割減少(図-15)すると見込まれる.単位:千トリップエンド/日
注)<>内は2010年に対する伸び 鉄道
16,484
15,399
13,728
12,965 バス
2,295
2,298
2,135
2,200 自動車
32,116
30,163
27,740
26,636 自動二輪
・原付
3,249
3,026
2,742
2,597 自転車
15,944
14,960
13,550
13,378 徒歩
19,812
18,622
17,003
17,339 その他
192
183
171
162 不明
201
192
171
167
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000
凡 例
2010年
(現況)
2020年
(case1)
2030年
(case1)
2030年
(case2)
90,294 合計
84,844
<0.94>
77,239
<0.86>
75,445
<0.84>
図-15 近畿圏の代表交通手段別発生集中量の将来予測
6.
おわりに本稿では,第
5
回近畿圏PT
調査結果から明らかになっ た若者世代の移動実態の変化に着目し,その変化幅を把 握するとともに,変化の背景にある要因やトリップ数の 将来見通しを確認した.人口減少及び少子高齢化に伴う総トリップ数の減少に 加えて,若者世代における活動の減少傾向が継続すれば,
すう勢以上にトリップ数が減少することが確認できた.
トリップ数の減少は,鉄道や道路の混雑緩和等に寄与 し,道路空間の再配分といった質の向上の機会となるこ とが考えられるため,それ自体は必ずしも悪い面ばかり ではない.
しかし,トリップ数の減少に伴って消費活動まで減少 し,都市や地域の持続的な発展・効率的な運用に影響を 及ぼすことは大きな問題となる.特に,福祉予算費増大 の影響を受け,交通・運輸関係に投じられる予算が逼迫 するであろう見通しを踏まえると,公共交通の維持に関 しては,極めて厳しい局面を迎えることとなる.
更に,自由トリップ数の減少については,都市の活力 衰退に直接的に関連するものであり,特に単身者の外出 機会・交流の減少は,出会いの減少にも繋がり,晩婚 化・少子化に拍車をかけることも考えられる.
想定されるこれらの問題に対しては,都市交通政策
(例えば,公共交通の利用促進,地方部におけるクルマ の準公共交通的活用,ネットワーク型コンパクトシティ の形成など)での対応が考えられるが,それだけで全て 対処できるものではない.
今後は,交通分野と医療・福祉分野との連携などに取 り組むとともに,都市機能再配置と一体的に交通行動構 造(トリップチェーン構造)を変え,更には若者の外出 機会の創出に取り組むなど,社会構造全体を変えていく 必要があると考える.
参考文献
1)
土井勉,白水靖郎,隅田道男,森文彦,南部浩之:パーソントリップ調査データからみた総合交通政策 の課題に関する考察~近畿圏
PT
調査から~,土木計 画学研究・講演集(CD-ROM) 47 ROMBUNNO.145
,2013.
2)
厚生労働省:賃金構造基本統計調査3)
厚生労働省:世帯動態調査(