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セメント質年輪法を用いたニホンジカの齢査定

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Academic year: 2022

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人間科学研究 Vol. 26,Supplement(2013)

修士論文要旨

研究の目的と背景

 近年、ニホンジカ(

Cervus nippon

)が日本各地で増加 し,各種の被害問題が発生している。このため、狩猟や有害 獣駆除による個体数調整が必要とされている。適切な保護 管理を行うためにも、また行動生態学的観点からも、年齢や 出産履歴、繁殖成功度を把握することが極めて重要である。

 動物の齢査定には様々な手法があるが、その中でも最も よく用いられる手法が、歯に形成される層の数に基づく「セ メント質年輪法」である。

 セメント質の成長は代謝と関係しており、栄養状態の良 い春~夏には大きく早く蓄積し、冬には止まり沈着層が薄 くなる。ヘマトキシリンなどで染色した場合、濃染層が冬 のものであり、これが越冬回数すなわち年齢となるため齡 査定を行うことができる(三浦,2008)。シカの年齢も他の 動物と同様にこの「セメント質年輪法」によって推定でき るとされているが、その形成輪が実際の年齢と一致するか どうかはまだ確認されていない。

 そこで本研究では、宮城県金華山島で個体識別され、出 生年・死亡年がわかっているシカの歯を対象に、セメント 質に形成される「年輪」と呼ばれる形成輪が実際の年齢と 一致しているのかどうか、年輪のどの部分に注目すれば正 確な齢査定ができるのかを検討することを目的とした。な おメスの層形成には、加齢のほかに妊娠や出産などが影響 すると考えられるため、本研究ではまずオスを対象とした。

方法

(1)年齢既知個体からのサンプル

 金華山島では1998年からニホンジカの生態調査が実施さ れている。識別個体にはICチップが挿入されており、死亡 個体の頭骨が収集された時点で個体識別が行われる。この ように収集された60個体以上の歯サンプルのうち、今回は オス33個体(出生年・死亡年既知個体:26、出生年不明・

死亡年既知個体:7)の歯を対象とした。

(2)組織切片の作成

 下顎第一切歯をギ酸(7.5%)溶液で脱灰後、凍結ミクロ トームにより10 ~ 20μmの縦切片を作成し、ヘマトキシリ ン(カラチ)によって単染色をほどこし、常法にしたがい 組織学的標本を作製した。その後作製した標本を光学顕微

鏡で観察し、デジタルカメラで撮影した。

(3)分析

 撮影画像から歯に形成された濃線層の数をカウントした。

また観察された形成輪の品質を以下の基準に基づき,4つ に区分した。Grade1(形成輪がまっすぐではっきりして いる)、Grade2(偽線が存在し、カウントの難しい部位が ある)、Grade3(偽線が多数存在、もしくは分岐している 形成輪が多数ありカウントが困難)、Grade4(冬季層と偽 線の識別が不可能)。個体の事前情報がない状態で,形成輪 の数をカウントし,その後に実年齢との一致を検討した。

結果と考察

 形成輪の品質は、Grade1が20個体(60.1%)、Grade2 が7個体(21.2%)、Grade3が4個体(12.1%)、Grade4: 2個体(6.1%)となった。形成輪のカウントが可能であっ たGrade1-3に該当する個体(92.0%)において、歯の萌 出時期や層の形成時期を考慮すると95.7%で形成輪の数と 実年齢の一致が確認された(下図)。ニホンジカのオスにお いてもセメント質年輪法は有効であり、高い精度で齡査定 が実施可能であると言える。今後はメスにおいても適用で きるか否を検討する必要がある。

 また、最外層に注目することで冬季層形成完了直後に死 亡した個体であるかどうかは確認することができた。金華 山島のニホンジカは高密度で生息しており、餌資源が安定 しないために層の幅にもその不安定さが認められ、死亡時 期推定の難しさが示唆された。今回5-12月に死亡した個 体のサンプルが少なかったため、夏季層のどの段階かで死 亡したかの検討が十分に行えなかったが、これについても 今後検討していく必要がある。

セメント質年輪法を用いたニホンジカの齢査定

Age determination of Sika deer by annular structure of dental cementum

宮地 一聡(Kazusa Miyachi)  指導:三浦 慎悟

参照

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