量子常誘電体KTaO3?のX 線照射による誘電異常, photocurrent の測定
著者 中西 悠介
URL http://hdl.handle.net/10236/13569
2014 年度修士論文要旨
量子常誘電体 KTaO
3の X 線照射による誘電異常, photocurrent の測定 関西学院大学大学院理工学研究科
物理学専攻 阪上研究室 中西 悠介
量子常誘電体KTaO3では、単結晶基板に金の共面電極を蒸着させ、極低温下でX線を照射にすることよって 生じる電気容量C、損失係数Dの増加現象とメモリー効果が報告されている[1]。メモリー効果とは、試料にX 線を照射する(ON)時、一時的に照射を止める(OFF)と、C等の値が一時的に変化するが、再び、照射を始めると 元の値まで回復する現象の事である。本研究では、X 線照射中に生じる C、D の変化やメモリー効果について LCRメータを用い詳細な測定を行った。低温領域では、X 線照射中にC、Dの値が振動する現象を新たに観察 した。更に、得られた電気容量、損失係数からR=1/(2πfCD)の式を用いて試料の抵抗成分Rを見積もった。f は LCR メータの交流電圧の周波数である。また、試料に流れる光電流(photocurrent)、熱励起電流(thermally
stimulated current)についても測定を行った。光電流はX線照射により流れる電流であり、熱励起電流はX線
照射後に試料温度を上げる事で流れる電流である。
図.1は X 線照射中の抵抗成分の時間変化を表してお り、メモリー効果が見られる。現在、我々はX線を照 射することで、試料内部に格子欠陥が生成され、電気 伝導領域のネットワークが形成されていくモデルを 基に解析を行った。図.1のインセットは、X線をOFF からON にした場合のRと経過時間の関係を示して おり、初期の緩和を示す時定数τに温度依存性がある ことが分かる。τの温度依存性から、今回の試料の格 子欠陥の生成速度の評価を行った。
大井らは、熱励起電流のピーク温度とアレニウスプロ ットを用い欠陥準位の深さを評価している[2]。図.2 は、本研究で測定した熱励起電流の温度依存性を示し ており、インセットにはアレニウスプロットの結果を 示している。アレニウスプロットにより、異なる昇温 速度の電流値のピーク温度 Tm(K),昇温速度β(K/s)の 値を用い欠陥準位を求めることができる。プロットか ら得られる直線の傾きとボルツマン定数の積の値が 欠陥準位の深さに相当する。また、本研究では昇温速 度は1.0, 2.4, 4.8, 9.6(K/min)と変化させた。図.2のイ ンセットの直線の傾きより、試料にかなり浅い準位が 生じていることが分かった。
図.1 X線 ON-OFF時の抵抗成分
図.2 熱励起電流の温度依存性とアレニウスプロ ット
[1]西畑, 武貞他, 日本物理学会 2006 年年次大会 27aYA11
[2]K. Ohi, S. Iesaka, J. Phys. Soc. Jpn., Vol. 40 (1976) pp.1371-1376