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イ ギ リ ス 契 約 法 に お け る 経 済 的 強 迫

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(1)次. イギリス契約法における経済的強迫. 目 はじめに. 序. 一. 主要判例. 近時の判例とその分析. 一. 二. 二 四. 小. 括. 三 その他の判例. む. 七. 六. 五. 四. 三. 二. 因. び. 括 す. 小. 不当な利得. 他の選択手段・結果の重大性. 約. 意思の抑圧︵Oお旨O旨O且巳. 脅迫行為の不法性. 一 取引能力と経済的強迫. 三 学説の提示するファクター. 四. イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶. 吉. 田. 口. 禾. 二二七. 夫.

(2) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. はじめに. 二二八. 現実の脅迫︑あるいは当事者間の地位較差・経済的困窮等に起因する事実上の強制によって不当な契約が締結され. る場合には︑法律上︑様々な救済手段が規定される︒英米法においては︑伝統的にコモン・・1上の強迫︵α彗①のの︶ ︵1︶ 及びエクイティー上の不当威圧︵9&まぎ剛ご窪8︶の法理が重要な地位を占めていた︒ ︵2︶ コモン・ロー上の強迫概念は極めて厳格なものであり︑単なる強制︵8震獣彦︶だけでは強迫とはならない︒強迫 ︵3︶. の成立要件としては︑①人の生命もしくは身体に対して暴力を現実に加え︑または人を不法に監禁し︑もしくは監禁 ︵4︶. ︵5︶. すると脅かして畏怖を生ぜしめること︑②その行為は契約の相手方自身が行い︑または少なくとも契約当時脅迫行為. は客観的・画一的に下されるということである︒強迫の成否の判断の際には︑﹁強制︵強迫︶行為それ自体﹂と﹁被. が行われていることを相手方が知っていること︑③監禁が犯罪または不法行為となるものであること等が挙げられ ︵6︶ る︒また︑現実に犯した犯罪について告訴すると威嚇しても強迫とはならない︒特徴的なことは︑強迫の存否の判断. ︵7︶. ︵8︶. 脅迫者に実際に生じた畏怖︶とでは︑前者︵行為の不法性︶が専ら重視され︑後者︵現実の畏怖︶はあまり重要では. ないとされていた︒その際には通常人が基準となる︒ ︵9︶ 歴史的にみると︑強迫の観念は︑犯罪あるいは不法行為に対する法的コントロールの副産物に過ぎず︑実際にもこ ︵1 0︶ れらは重なり合うことが多く︑犯罪または不法行為の中に吸収・同化されてきた︒このような強迫法理は︑二二世紀 ︵11︶. 中葉には既に確立し︑一八世紀までほとんどと言ってもよいほど変化せず︑それ以後もごく最近に至るまで当初の観. 念はほぼそのまま維持されてきている︒契約関係にある当事者間における強迫の成立が︑相手方に対する現実の暴. 行︑あるいは暴行する旨の脅迫がなされた場合に限定されてきた結果︑強迫法理は︑より軽度な強制が加えられた場.

(3) ︵皿︶. 合には機能せず︑エクイティー上の不当威圧の発展を促すこととなった︒このため︑最近に至るまで強迫に関する一 ︵13︶. 般の関心は薄く︑特に一八七三年裁判所法の制定によってコモン・pIとエクイティーが統合されてからは︑強迫そ ︵M︶. れ自体を論ずることは無意味となったとまで言われている︒理論上も︑強迫法理は意思理論の帰結として極端に限定 され︑一九世紀には事実上その適用の場を失っていたと見ることができる︒. コモソ・ローの強迫の厳格さは︑次のような類型的処理からも窺われる︒従来の説明によれば︑強迫は︑﹁本人に対 ︵驚︶. ︵16︶. する強迫︵α葺o霧9需毎睾︶﹂と﹁物に対する強迫︵身お器aαqo&ω︶﹂とに分類され︑前者のみが契約取消原 ︵17︶. ︵18︶. 因となる︵強迫の効果に関しては争いがある︶︒﹁経済的強迫︵08きヨざ費お霧︶﹂は︑イギリスにおいては承認さ. れていなかったが︑最近のいくつかの判例は少なくとも理論上は︑これを認めている︒判例に対応し︑不公正な取引に対. する介入のテクニックとして︵経済的︶強迫概念を用いることに好意的な学説も増加し︑強迫概念自体に関する理解に. も微抄な変化が生じ始めている︒本稿の目的は︑こうした強迫概念の変化及びその背景を整理・検討することである︒. ︵1︶イギリスの制定法で特に重要なのは一九七七年不当契約条項法︵q昌♂マ9旨声9↓貧βω︾9一〇ミ︶である︒本法については︑広瀬久 八三年︶参照︒. 和﹁附合契約と普通契約約款ーヨー揖ツパ諸国に於ける規制立法の動向ー﹂﹃岩波講座・基本法学4ー契約﹄三=二頁︑三三五−三四〇頁︵一九. ︶.. 田中和夫﹃英米契約法︹新版︺﹄一一九ー一二〇頁︵一九六五年︶︒. ︾霧078︾巽o頃OOz舅>8N斜O︵鵠浮劉●O爵ω月お︒︒. ↓ミ守ミ鉾切oミo︒︹お一一︺一因. ︵2︶. 田中・前出注︵3と二〇頁︒. ゆ900q合. ︵4︶. ︵3︶. ︵5︶. ○αq一一く一ρ肉$醤o§ごb黛鳶oうω︸国醤ミ§ミ馬愚o︑切蟄︑偽ミ§軌醤偽㌧oミミ黛醤織↓魯ミミ鳴§鴨織切還 息o︑Goミ憶 ミ︸卜oOぎOO冒rぴ●︸●悼o. 木下毅﹃英米契約法の理論︹第2版︺﹄三四九頁︵一九八五年︶参照︒. oP ︵7︶. 二二九. ︵6︶. イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(4) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 二一二〇. アメリカ法では︑従来の強迫の基準は﹁通常の人間の自由意思を奪うのに十分であるかどうか﹂であったが︑現在は﹁より主観的な基準﹂. 80ゐ〇一︵ちoo一︶︒. すなわち﹁通常の人間に対してその行為がどんな効果を生ずるかではなくて︑むしろその特定の人間に対してその行為がどんな効果をもたらす. ︵8︶. ︵菊塁↓︾鵠客男↓8002舅︾o塁㈱お貰げ︶︵︑︑箕2一&霧繧導サo目曳巽o盗贔ぼ8&=き島冒凝o奪①暮︑︑︶︶が︑第二次リステイトメン. かによって決まる﹂︵並木俊守﹃アメリカ契約法﹄七二頁︵一九七一年︶︶と言われる︒契約法第一次リステイトメントもそのように規定する. 00乞↓勾>o拐雀謡︵一︶︶︒. ︵一︒ミy. トではさらにもう一つの基準︑つまり﹁その者に合理的代替手段がないこと﹂という基準が定められている︵閑国ω暴爵累身↓︵留8る︶8. ︵10︶O讐一︿一9讐黛 β03評讐NO一︐. ︵9︶評壽oP肉§ミミらbミ霧ωー添醤騨︒・塁き㌔ミ︒︒鷺ミ慨ミ﹂㎝さ雷●r寄<●卜︒q︒︒℃謡. ︵1 1 ︶弍︒. 2︶不当威圧に関しては︑及川光明﹁英米法における不当威圧の法理の生成とその態様﹂亜細亜法学一巻一号一五五頁︵一九六六年︶︑同﹁イギ. リス契約法における不当威圧の法理に関する若干の動向ーω︒饗Bき卿の判決を中心としてf﹂早稲田法学六一巻三・四合併号一七一頁︵一. ︵1. 九八六年︶︑木下・ 前 出 注 ︵ 6 ︶ 三 五 四 − 三 五 七 頁 参 照 ︒. 注︵3︶一二〇頁︑伊藤正己編﹃英米法概論﹄二三〇頁︵一九六八年︶︑砂田卓士﹃イギリス契約法︹改訂版︺﹄九八頁︵一九七五年︶等︶が︑強. ︵13︶同法によって︑強迫は不当威圧の広範な概念に吸収され︑強迫の限界如何を問題にすることは実際上不必要となったと言われる︵田中・前出. O嶺︵這①Oy及川光明﹁イギリス法における. 迫の効果を無効︵ぎ箆︶と解し︑不当威圧の効果を取り消し得る︵ぎ箆筈◎ものと解する見解を採った場合には︑その範囲においては強迫の 限界を明確にしておく必要がある︵﹇弩鼠ヨサb黛器ωω§織園︒ミO︒ミミミ︒︒︸卜︒O竃8●ダ勾男. 強迫︵U貰霧ω︶の効果に関する一考察﹂亜細亜法学二巻一号一五八頁︵一九六七年︶参照︶︒ >o弓お㎝︵一〇おy. ︒ 9は次のような事案︒原告X 一般にはこのように説明されている︒リーディング・ケースであるのぎミきヒO鳴ミ鳴︵一︒︒8︶峯︾匹や国O︒︒︒. ︵4 1 ︶︾↓躍>F円爵幻阿目>Zo糊訪冨O悶男雷国∪○竃○悶Oo乞弓. ︵土地賃貸人︶は被告Y︵土地賃借人︶の地代滞納を理由として︑Y所有動産に対して自救的動産差押︵黛曾お器︶を行うとともに︑滞納地代が. ︵5 1︶. は一ヶ月以内に支払う旨約した︒Xの提起した支払請求訴訟において︑Yは︑Xの差押は違法︵妻3轟2一︶であり︑Yの合意は強迫によるもの. 支払われないならば︑差押さえた動産を処分すると述べた︒Yは︑Xの自救的動産差押を解除するため︑Xの要求に応じて︑一部を却金で︑残金.

(5) であったと抗弁した︒裁判所はYの抗弁を認めなかった︒本件については︑争いの協定との関係から︑先例としての価値につき疑問視されてい る︒. ︵16︶多数説によれば︑強迫の効果は﹁取り消し得る﹂にとどまる︵餌霧02も§ミ88ρ暮N8らO爵︒D霞寄経悶鵠8﹂﹇︾妻亀OO〜男>8 とする考えが定着したようである︵望月礼二郎﹃英米法︹改訂版︺﹄三七〜頁︵︸九八五年︶︶︒. N謹︵ろ甚a︒男舅竃胃身ごo︒一y︶が︑無効とする見解もある︵﹇きぎβ︒ワ黛貰黛き帯る︒及川・前出注︵13︶参照︶︒近時の判例で取消原因. また︑英米法においては︑取消による契約の遡及的無効という考え方自体が存在せず︑かかるアプ官ーチの差異は︑﹁大陸法的意思理論と英米. ︵19︶. 法的関係理論の差異にみられる法文化的発想の差異に基づくものである﹂との興味深い指摘が木下教授によってなされている︵木下毅﹁英米契約. 二 近時の判例とその分析. 類8Pの§ミきa9︒. 法における強迫ー原状回復法的アプ戸ウチ〜﹂立教法学一四巻一一九頁︑一四二頁︵一九七五年︶︒同・前出注︵6︶三五八頁参照︶︒. 序. ︵18︶後出判例︹1︺〜︹W︺等︒. ︵∬︶経済的強迫は︑特にアメリカにおいて論じられることが多い︒代表的な文献としては︑U. 一. 過去においてイギリス法は︑アメリカ法とは異なり︑一般的な取引能力不均衡を扱う法理を有していなかったと言. われていたが︑pイド・バンク事件におけるデニング卿の説示以降︑相対的弱者をそれ自体を根拠として保護するか. の如ぎ判決が相次いで下されている︒しかし︑その一連の判例の多くでは︑従来の営業制限法理の適用ないし不当威 ︵20︶. 圧法理の適用によって救済を与えることも可能であったと解される︒取引能力不均衡法理自体に関しても︑その漢然. たる内容故に︑サブ・ルール形成の必要性が指摘されたり︑従来の準則の柔軟な解釈にょるべきであるとの主張がな. されていた︒その一つとして強迫概念の拡張︑即ち経済的強迫が論じられるに至ったのであるが︑その背景として. 二三一. は︑伝統的な強迫法理の要件が厳格に過ぎ︑被脅迫者に現実に与えた影響をほとんど考慮しなかったことが指摘され イギリス契 約 法 に お け る 経 済 的 強 迫 ︵ 吉 田 和 夫 ︶.

(6) ︵飢︶. ている︒. 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 一⁝二 ︵22︶. ぎ冨一9緯ミ9判例・文献等については︑拙稿﹁イギリスにおける非良心的契約論﹂早大大学院法研論集. ここでは︑近時下された数件の判決及びそれに対する評釈を取り上げ︑ 検討を加えることにする︒. ︵19︶O雷ω霞駕や蜀嘔ooJ︒︒黛㌣. ミ●暮bっミ︐. 三九号二五七頁︵ 一 九 八 六 年 ︶ ︒ ︵20︶. ︵21︶↓田寄国ン↓鵠び︾≦O閲OO2↓勾き↓o︒一〇︵①爵亀︑おo︒ω︶.. ︵22︶なお︑正面から経済的強迫が論じられたわけではないが︑重要な判決として︑b飾Oboミミ簿ω鉾欝霧︹お8︺N9甲①嵩・がある︵本. 一四巻一号一一一頁︑二五頁以下︵一九八○年︶参照︒コメントとしては≦ぎ号5↓ぎ肉Qミミミ⑲b︒無謁慧亀︑薦鴇ミ. o︒N戸9. 件については︑及川光開﹁イギリス契約法における非良心性に関する若干の動向f記録長官∪窪巳畠卿の判決を中心としてー﹂亜細亜法学. 例として説明される場合もあるが︵↓寄一冒y︾客Oq目身問O問弓鶏﹇>巧O問OO2↓菊︾O↓減①︵もo益a●おco蒔と↓FいO富07002円 ︾O↓. 勾国<・一①q︵お象yがある︶︒本件は︑契約の再交渉につき債務者が債権者に対して経済的圧迫を加えた点に特色があり︑取引能力不均衡法理の一. 存しないことから︑経済的強迫の一例とされることもある︒アメリカ法に関して︑本件と類似した例が挙げられている︵AはBに対してある部. ぴ︾毛壱勺男昭零目苺H良︵N昌q銭﹂鵠一y︶︑原告の苦境を利用したということは認められるものの︑少なくとも当初からの取引能力不均衡 は. 品を引き渡す義務を負つており︑Bは真にそれを必要としている︒Aは︑Bがその所有する家屋をある価格で自分に売却することに同意しない限. 幻o薫男噂Oo2男>sω爲O︵ご刈0︶︒︶︒. ︵23︶. りは︑部品は引ぎ渡さないと脅迫する︶︒アメリカ法では︑非身体的な不法行為がなされた場合にむ強迫は成立するとされる︵ω畠濫男昏. 二 主要判例. 08軌黛ミ織ミミミ§魯㎏§6絵§偽ミO︾§鉾ω謹3国\の毎ミミ鴨︵↓ぎω&o§§亀簿鴨のき9蓋︶. Xは︑一九七〇年にYから二隻のタンカーをチャーターした︒その後不況となり︑Xの親会社たるAは︑チャ. ︹1︺. 勧. ーター料を引き下げさせる目的で︑Yと再交渉した︒X及びAは︑Yに誤った印象を与えるために︑Xには実質的な. 資産がないこと及び現在莫大な負債を抱えていることをほのめかすとともに︑チャーター料引き下げに応じない限.

(7) り︑チャーターを拒絶し︑またX会社を解散すると述べた︒チャーターの目的たるタソカーには譲渡抵当︵日oユ・. 題鵬Φ︶が設定されており︑Yとしてはなんとかチャーター料を確保する必要に迫られていたが︑不況のため直ちに. 他のチャーター者を見つけることは困難だった︵この事実をXは承知している︶︒Yは止むなくチャーター料引き下 げに同意した︒. ところが一九七三年の中頃までに景気は急速に回復し︑Xは莫大な利益を上げつつあった︒Yは約定通りのチャー. ター料に戻すよう求め︑それに応じなければ﹁強制﹂を理由としてチャーター契約をキャソセルすると述べた︒Xが. 拒絶したため︑Yはタンカーを引き上げた︒そこでXは︑Yに対して︑契約に基づいてタンカーの引き渡しを求め. た︒Yは︑チャーター料引き下げの合意は︑X及びAの不実表示または強迫によってなされたものであるから無効. 閤①震判事は︑Xに詐欺︵坤壁身げ碁︶及び善意不実表示︵冒ま8算冨冥霧窪鼠叶ごp︶の責任があること. ︵一δ置︶であると主帳した︒. ㈲. ﹁契約の取消が認められるためには︑少なくとも一方当事者が︑自由意思を奪い去られたと言い得る程の強制によ. は認めたが︑強迫を理由とする無効の主帳は斥けた︒ただし︑次のような見解︵傍論︶が示された︒. って圧倒されていることが必要である︒本件においては︑十分な意思に対する強制︵意思の抑圧︶が存したとの事実. はなく︑また異議留保︵質9窃一︶を行った事実もない︒Yは︑その合意は拘束力を有するということを認識してい. ない︒かくして︑Yが大ぎな圧迫を受けて行動したことは確かであるけれども︑商事上の圧迫︵8ヨヨ震9巴冥窃︑. 雲3︶があったに過ぎない︒法律上︑彼の行った行為が無効と言える程の意思に対する強制の下で︑当該合意がなさ れたとは言えない﹂︒. 二⁝二. ⑥ 取引能力の優越状態を濫用する場合︑裁判所はそれに対応してきたのであり︑そうした裁判所の立場は︑厳格 イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(8) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 二三四. な強迫法理の根底をゆるがす傾向にあったけれども︑強迫法理の正当性自体に関しては特に考察されることはなかっ. たと言える︒これに対し本件は︑契約をキャンセルする旨の一種の脅迫によって契約内容の変更を強いるとの状況. で︑強迫問題を論じるとともに新たな論点を提示した点で重要な判決である︒①本件において閑o霞判事は︑強迫の. 判断にあたって︑自由意思に基づいて当該合意がなされたと評価し得るか否かが重要であるとする︒従来の判例の一. 般的立場︑すなわち﹁脅迫行為の不法性﹂を重視し︑被脅迫者におよぼされた実際の影響はあまり考慮に入れないと ︵24︶. の立場とは異なったアプローチが採られていると言える︒②﹁強制﹂については︑経済的強迫と商事上の圧迫とを区. ︵25︶. 別する際に考慮されるべぎファクター︵異議留保の有無︶が提示されている︒これも新たな論点であるが︑本件のよ. うに被脅迫者の内心を重視する主観的なアプ・iチをとった場合︑両者の区別は困難になる︒③物に対する強迫は契 ︵26︶ 約取消事由たり得ないとの見解の先例と言われる象ミ鷺鉾切魅ミ恥にも触れ︑その先例としての価値を疑問視する︒ ︵27︶. 具体的には︑契約当事者の所有建物に火を付けるとか︑貴重な所蔵絵画を殿損するといった脅迫も十分取消事由たり 得ると述べている︒. 本件は︑強迫の判定規準として従来の物に対する強迫と本人に対する強迫といった区別を採用せず︑むしろ主観的. ︵28︶. な規準によることを明らかにしている︒その結果︑新たに﹁商事上の圧迫﹂概念が提示されたが︑その内容や決定の ためのファクターが明確にされなかった点で︑以後に問題を残したと見ることができる︒. ㈲. XはYとの間で︑タンカーの建造契約をアメリカドル建てで締結した︵建造料は五回分割払︶︒契約締結から. ︹π︺ ﹄<ミきOらミ蕊⑦ミ辱黛毬晦Oo●トミ●嘘︒矯疑黛蕊駄ミ○§亀§q誌§Oo●トミ︒︵↓ミム〜ミミ讐山ミ§︶. 1月 0後アメリカドルは10驚下落し︑Yは︑未払分︵四回分︶については︑以後10劣の上乗せをするよう要求した︒X. は︑弁護士にも相談し︑増額要求には何の法的根拠もないことを知っていたが︑既にAとの問で完成したタンカーの.

(9) チャーター契約を締結しており︑Aに提供すべぎ代わりのタソカーを調達することも困難な状況にある︵もっともX. としては︑仮に10劣の増額要求に応じたとしても︑Aとの契約によりある程度の利益を得ることは確実であったと認 定されている︶︒Yは︑XA間のチャータ⁝契約については不知︒. 止むをえず要求に応じたXは︑①10%増額支払に対するYの追加的約因は存しない︑②増額支払の合意は経済的強. 蜜08ヰ簿判事は次のように説示した︒①若干疑いはあるものの︑Yは信用状の増額という損失︵留貫ぎo導︶. 迫によって自由意思によらずに︵ぎぎピ暮巽一牙︶なされたものであるから取り消し得ると主張した︒. 切. を被っているので︑約因は存在する︒②たとえ十分な約因が存在したとしても︑契約を破棄する旨の脅迫によって新 たな契約が締結された場合には︑経済的強迫を理由として契約を取り消し得る場合もある︒. しかし︑結論的には︑Xが支払後二年間もの間︑異議留保を行わず︑訴訟提起もしなかった点が追認ないし承認と. 本件は︑原契約を破棄する旨の脅迫によってある合意がなされ︑それに基づいて金銭が支払われた場合に︑経. 評価されたために︑Xの請求は認められなかった︒. ⑥. 済的強迫を根拠として金銭の返還を求め得るということを︵傍論ながら︶認めた初めての判決である︒あるコメント ︵29︶ によれば︑﹁契約法における裁判の変わりつつある役割の指針として︑相当の重要性を有する判決﹂である︒説示内. 容は︑次のように要約できる︒①強迫によって支払のなされた金銭の返還が認められるか否かは︑本人に対する強. 迫︑物に対する強迫という確立されたカテゴリーにとらわれずに決せられる︒②強制は︑経済的強迫の形式をとるこ. とがあり︑本件のような契約を破棄する旨の脅迫は経済的強迫の一類型として認められる︒②そのような脅迫によっ. て新たな契約が締結された場合には︑契約を取り消すことができる︒竃089卑判事は︑本件事実は経済的強迫を構. 二三五. 成するのに十分であると結論付けたものの︑異議留保の不存在・二年間の放置等の理由から︑承認ないし追認がなさ イギリス契約 法 に お け る 経 済 的 強 迫 ︵ 吉 田 和 夫 ︶.

(10) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. れたものと認定し︑支払われた金銭の返還は認めなかった︒. 二三六. 本件でも問題となるのは︑取消事由たる経済的強迫と︑一般的に容認される商事上の圧迫との区別である︒重要と. 思われる事実は次のようなものである︒①Xはソリシターから法律上のアドバイスを受けており︑Yの要求が法律上. の根拠を欠くことも承知していた︒②Xのソリシターは︑X側としてとり得る救済手段や法律上の対抗措置につき助. 言を与えていた︒②X側には十分な資産があり︑支払ったとしても破産するおそれはなく︑増額分を捻出することが. 困難だったとの証拠はない︒④Xは︑Yから要求が持ち出された時期にもAとの間で交渉を進め︑チャーター契約を. ︵31︶. 締結している︒以上の事実から考えてみると︑Xが経済的な苦境に陥っていたと言えるかは微妙な問題であり︑かえ ︵30︶ って自らの計算によって自発的に支払要求に応じたとも見られる︒そうだとすれば︑本件における経済的強迫に関す ︵32︶. る説示部分は︑一層その傍論的性格を強められることになる︒. A社は︑B社の主要な資産たるビルを獲得することを目的として︑Bの全株式を取得した︵XはBの全株式を. ︹皿︺ぎ︒○§e●卜§属欝卜︒議. ㈲. れた株式を直ちに転売してしまうと株価が急落するおそれがあったため︑次のような約束がなされた︒①割当の翌年. 所有︑YはAの大株主︶︒Aは取得した株式の対価として︑Xに対しAの株式を割り当てたが︑もしXが割り当てら. 0男は転売しない︵主約束︶︒②Yは︑Xの転売禁止期間が満了した時点で︑株式 まで︑Xは割り当てられた株式の6. 割当時点での価格で︑Xから株式を買い戻す︵補助的約束︶︒A社の株価は当分は上昇を続けるものと一般に予想さ. れていたため︑この取引はYにとって有利な取引であると考えられた︒その後Xは︑Yの補助的約束を変更し︑割当. 時の株価を最低限として株価上昇分も保証しない限りは︑Yへの株式再売買は拒絶すると述べた︒Yは弁護士にも相. 談し︑Xの要求には何の法的根拠もないこと︑及びYは約束は基づいて特定履行を求め得ることを熟知してはいた.

(11) が︑A会社の社会的信用が損なわれることをおそれ︵当時Aの株式は公開されたばかりだった︶︑Xの要求に応じ た︒. ところが︑予想に反して株価は下落︒Xは転売禁止期問満了後︑Yに対して保証の履行︵割当時の株価で買い戻す こと︶を求めた︒一審ではX勝訴︑二審ではX敗訴︒. Yの主張︵反論︶は次の通りである︒①Xによって提供された約因は過去の約因であるから︑有効な約因たり得な. い︒②パブリヅク・ポリシーに反する︒③Yの行った約束は︑契約を破棄する旨の脅迫によって得られたものである から︑強迫を理由として取り消し得る︵あるいは無効である︶︒. ㈲枢密院司法委員会は次のように判断した︒①XのAに対する約束︵転売禁止約束︶は︑Yの保証によって償われ. ることが当初から意図されていた︒Yの補助的約束はそのような意図の達成によって償われるのであるから︑強行可. 能な約束である︒②ある約束に対する約因が既存債務を他の第三者に対して履行する約束である場合でも︑契約はパブ. リヅク・ポリシーに反するものではない︒③強迫を構成するために必要とされるような﹁合意自体を無効とする程度. に達する意思に対する強制﹂が存在していたことを認めるに足りる証拠は存しない︒単なる商事上の圧迫では十分と. はいえない︒原則として︑契約取消事由としての経済的強迫を承認することに反対する理由はないが︑成立が認めら. れるためには︑締結された契約は自由意思による行為︵<oξp$蔓霧一︶ではなかったことが証明されねばならない︒. ⑥第一の争点は︑Xの約束が過去の約因であったかということであった︒﹁過去の約因﹂に関する一般準則によ. れば︑ある約束に対する約因はその約束と交換に与えられなければならない︒この点に関する確定した準則によれ. ぽ︑ある行為が支払約束者によってなされ︑当事者双方がその行為に対しては金銭が支払われるか︑あるいは何らか. 二三七. の利益が与えられることを認識し︑そしてその支払約束ないし利益は法律上強行しうる約束であるとき︑約束前の行 イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(12) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. ︵33︶. 二三八. 為であっても︑その行為は後の支払約束に対する有効な約因となるものとされる︒︒本件で︑XはYに対して︑約一. 年間は株式を転売しないと約したが︑この約束は︑転売によって株価が下落することを恐れたYの要求によってなさ. れたものであった︒そして後にYはXに対して︑転売禁止期間内に株価が下落した場合には︑その結果Xの被る損失. を補償する旨約した︒確かにXの約束はYが保証を与えるより前になされたが︑それはYの要求に応じた結果であ. り︑またXは株価下落のリスクに対して何らかの形の補償を受けられるという点では︑両者の理解は一致していたも のと考えられる︒. 第二の争点は︑︵後発的︶取引能力優越者が︑契約を破棄すると脅迫することによって相手方に新たな約束をさせ ︵34︶ ︵35︶ ることが︑パブリック・ボリシーに反するかという点であった︒裁判所は舘貸ミ詠§ミミ恥§︑ω議專鉾さ註魯を ︵36︶ 引用した上でこれを斥けたが︑それらはむしろ約因の不存在故に契約が成立しなかったケースである︒裁判所は︑. ﹁商人がそれぞれ独立して交渉している場合︑Yが主張するようなパブリヅク・ポリシ!の準則を援用することは︑. 正義及び法の実現のための手助けとはならず︑受容しがたい変則を招くこととなる︒独立して交渉する者は︑もしそ. の合意が詐欺・錯誤・あるいは強迫によって無効である旨の証明がなされ得ないならば︑その取引に拘束されるとい ︵37︶. うことが正義の要求である︒約束が︑人の意思に対する強制によって得られる場合︑強迫法理が正義実現のために役. 立つのである﹂と判示した︒ここからは︑取引能力不均衡法理に対する疑念も読み取れるが︑ともかく︑Yの主張す るような問題は︑約因法理あるいは強迫法理の適用によるべきことが明らかとされた︒. 第三の争点は︑経済的強迫の存否であった︒裁判所は︑↓鳶象ξ§§織ミ鴨ω&ミミにおける凶o員判事の分 ︵38︶. 析︑すなわち︑強迫とは︑合意を無効とする程度に達する意思に対する強制であり︑単なる商事上の圧迫のみでは強. 迫とはならないという見解を採用した︒具体的には︑①請求を受けた時点で︑Xは異議留保を行ったか︑②他の選択.

(13) 手段を有していたか︑③公平無私の︵冒8冨邑o暮︶助言を受けていたか︑④当該契約を取り消すための何らかの手. 段を講じていたか︑という四つのファクターが挙げられている︒本件においては︑Yは事実を十分に認識しており︑. 訴訟も提起せず︑保証を与える際にはリスクを覚悟していたと認められるから︑経済的強迫にはあたらないと判示さ. Obor9閃国<●戯8. れた︒ただ︑前述判例と同様︑経済的強迫を理論上承認することに反対すべき理由はないとした点は重要であろう︒. ︵おま︶がある︒. ︵23︶︹一〇蕊︺一配o琶.ω肉o℃・80 ︒・本件コメントとして閃880Fbミ翁物ミ壇趣鳶ミ§ミ馳︑ミ&ミOQミミミ. ︶︒詳しくは後述する︒. o9 ロ088︸讐ωo. ミミOミ︑島竃oP戸勾宰●留刈︵一SOどOogPbミ器︒︒ξ. 為の不法性︑③約因の不均衡︑④被脅迫者のとり得た法的手段︑⑤要求を拒否した場合に生ずるであろう結果の重大性等が挙げられる︵O讐マす. ︵24︶上記ファクターは必ずしも重要ではない︒例えば︑実質的フアクターとして︑①取引能力の本来的な不均衡または後発的な不均衡︑②脅迫行. ︒︒. ξミ琴3ざ讐80︒180. 雲貰. ︵26︶ 讐㌧ミ昌03a︒. ︵25︶切8鍍oφω§ミ88鐸暮お曾OαQ一三Φ︶︒D§ミ昌9Φド讐8c︒9. ︵27︶. 20け窃一3ダ9勾男・鳶㎝︵一竃④︶●等がある︒. ︵28︶︹おお︺β甲89本件コメントとしては︑︾鼠置ω一q︒ミミ&卜. ︾α帥糞ω︸簑貰黛590No︒︸暮㎝零9. 壇鳶恥ミ§&切︑ミ息亀O︒ミミミ︸︹一〇〇︒O︺O︾窯騨罫︾8⁝○まω ︵29︶. の結果としてなされた有効な決定であつたとする︒. ︾畠目ヂ婁黛. き3鵠︸碧臼9↓. 田爵rの§ミき8G︒鳩讐置. ︵30︶○讐ぞすω鳶ミき38讐ω8・は︑事実関係から判断すると︑増額分を支払う旨の約定は︑通常の商取引上の圧迫︵賢ωぎ霧ω冥霧霊お︶. ︵31︶①約因の問題に関しては︑Oo9ρ︒っ愚蕊蓉9鵠℃暮合1お. ︵Oαq鵠昆ρ恥§ミき8ざ讐8一.︶︒②ドルの価値下落によるフラストレイシヨン法理の適用は︑本件では主要な争点とはならなかつたし︑. ー困・等参照︒約因が存在していたとしても︑経済的強迫と商事上の圧迫とを区別する際に︑相当な約因の存在は重要なファクターとなる. 二三九. 主張されたとしても成功しなかつたものと見られる︒コモソ・ローは︑当事者のコント据ールを超えた後発的・外的ファクターが存在するときフ. イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(14) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 二四〇. ラストレイシヨソ法理に依拠するが︑本件で当事者の基本的な前提は不変であり︑ドルの価値下落は合理的に予見可能であつたとされる. ︹一⑩お︺ω≦・ダ幻・お伊本件コメントとしては︑Oo9ρ︒うξミ醤ミ鳴鵠.︑︹1︺〜︹皿︺をまとめて扱うものとしては︑国くきω℃肉きぎミご. ︵○αq自二ρミ●暮80●︶︒③異議留保の不存在は︑請求を斥ける際の大きな理由となつている︒ ︵ 3︶ 2. ︒ごいω霧●r一G︒c︒︒がある︒ b黛這霧 ︹這c ︵33︶↓召一畠いも愚ミ昌9⑦鉾碧①一1①b︒︒. ︒8︶⑲O鋤言Pooミ・. ︵一お一︶℃o爵①一8.. ︵35︶ ︵目G. ︵4 3︶. ︵37︶. h罫曾①ω㎝︒. 砺ミ㌧︑. その他の判例. ︵38︶. o鉾鴇①罐︒ 昌03も. 讐謡脚Oo99︒っ黛㌧鳩Qβ08DGo. 讐. 餌●︶︒. ︵36︶元来この結論はパブリック・ポリシーに基礎付けられていたことは確かであるが︑現在では約因の問題になる︵↓寄昌図r⇔§ミ琴$曽鳩. 三. ︵39︶ の聴3のミ辱驚醤晦Oo︒の●鉢●魁.肉む9ミ鳶↓ミミ醤晦09︵↓ミ辱︑8亀80︶. 強迫に関する定義は判例上確立したかに見えたが︑その後の判例では若干の変化も見受けられる︒ ︹y︺. 口○琶判事は︑強迫を理由とする救済が認められるのは︑﹁課された圧迫が︑意思に対する強制によって他方当事. qミ◎ミ亀↓§趣ミ勉ミ讐国ミ●鯖>﹄ミミミ&軌§ミ. ↓︑§憩ミ〜ミミ趣ミ恥︑ミ恥ミ勘§︵↓ミq鳶魁ミ総. 者の同意を無効とする﹂場合であると述べており︑これは︹工︺〜︹皿︺の定義とほぼ一致する︒ ︵如︶. ︹V︺ の鳴蕊き魁︶. 事案は︑被告たる労働組合の一員が原告たる船主に対し︑被告の福祉基金に寄付しない限り船の出航許可を与えな.

(15) いと述べたのに対し︑船主が要求に応じて寄付を行った︑というものである︒原告は経済的強迫を理由として金銭の. 返還を求めた︒貴族院は全員一致で︑原告は強制されたとの事実だけでなく︑要求が不当あるいは不法であったこと. を証明しなければならないと判示した︒すなわち9覧oκ卿によれば︑﹁︵被脅迫者の︶同意が他方当事者の圧迫によ. ってなされ︑その圧迫を法律上正当︵お臓江B辞Φ︶ではないとみなし得ることが︵経済的強迫の︶理論的根拠であ. る﹂とされた︒またω8疑菖き卿は﹁被脅迫者の意思の抑圧にまで達する圧迫﹂及び﹁圧迫の不法性﹂の存在が必要. 餌N8卜oま︵O貸ミ鷺︶トミ●魁●↓ミミO蔑9恥︒トミ︒. であると述べている︒本判決は︑従前の判決とは若干ニュアンスを異にし︑行為が不法であることを要求している︒ ︵鰻︶ ︹N︺. 本件の主要論点は︑営業制限の合意の有効性であると考えられ︑経済的強迫は︑原告の多くの主張のうちの一つに. 過ぎない︒原告会社︵︾一〇〇ピ9び夫妻の経営する私会社︵冥貯暮①8ヨ冨p矯︶︶は︑一九四六年に︑被告から融資. を受ける見返りとして︑石油を他からは入手しない旨の営業制限契約を締結し︑以後数回にわたってその内容は改訂. された︒しかし原告の経営状態は好転せず︑原告はソリシターとも相談の上で︑一九六九年に被告との間でりース・ ︵姐︶. パヅク契約を締結した︒一九七九年に原告は︑リース︑ハヅク契約の無効を主張して提訴した︒原告の主張は多岐にわ. たるが︑それらはいずれも斥けられている︒経済的強迫の主張に関しては︑①﹁自らの自由意思によらずに︵βp&∵. 一ぼαq馨︶取引関係に入ったこと︵異議留保は必要不可欠ではないが︑非常に重要なファクターである︶﹂︑②﹁被告の. 要求に応じる以外には︑現実的な選択の途がなかったこと﹂︑③﹁合意は︑被告によりあるいは被告の利益のために. 二四一. 加えられた不当な圧迫によってなされたものであること﹂︑④﹁その圧迫から解放されたならば︑即座に取引を拒絶 すること﹂を立証する必要があると判示した︒. イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(16) 四. 009︹おoo一︺ω訪=国︒ヵ●一coOD ︹這o︒O︺ω口o網儀︑ω肉8︐0. 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶ ︵39︶. ︵41︶ ︹おo︒G. 二四二. ︹おo︒呂 い切島●r曽o︒︒がある︒. ︒︺一≦︑罫㌍o︒S本件コメントとしては︑譲鵠江霧oP︑ミ鳩ミ§霧§織肉霧饗ミミo︑↓ミ§鳩︹おo︒ω︺2閣毛ダ傾︒窯一があ. ︵40︶︹おc ︒呂N︾=中界翰9本件コメソトとしては︑O巽蔓節国く弩P肉S§ミ魯bミ禽︒︒. る︒. 括. る信頼関係を濫用した︑④営業欄限法理はリース・バック契約には適用されない等の主張がなされた︒. ︵42︶①リース・バック契約は︑実際には譲渡抵当である︵虚偽表示︶︑②契約内容は︑苛酷かつ非良心的である︑③被告は︑原告被告間に存在す. 小 ︵43︶. ︹1︺〜︹皿︺で︑裁判所が︑特に商人間取引であることを考慮して︑結果的に経済的強迫を認めなかったことは ︵44︶. 妥当であるとされている︒商人間で独立してなされた取引に過度に干渉すべきでないという態度は︑他の判例︑例え ︵45︶. ぱト象ミ◎ミミミ§魯㌧§§ミ醤偽Oo.トミ︒磐さミミミ︑及び勺香ミo㌧ミ織§識§トミ.鉾縛ミ蕊6ミ目ミミ︐. 愚ミ妹トミ.で明らかとされたような・商人間取引と消費者取引との問を区別する立場の延長線上にある︒判所は︑契. 約自由の原則は同等の取引能力を有する当事者間の商事取引に限定されるべぎであるとの一般原則を表明している︒ ︵46︶. ︹1︺〜︹皿︺で明らかになったように︑裁判所は強迫の判定基準として︑﹁意思に対する強制が︑合意を無効とす. る程度にまで達する強制であるか否か﹂ということを挙げる︒その際に重要なファクターとなるのは︑①被脅迫者が. 異議留保を行ったか︑②強制によって契約を締結した時点で他に採り得る手段︵適切な法律上の救済手段等︶があっ ︵嬰︶. たか︑③公平無私の助言を得ていたか否か︑④新たな契約関係に入った後に︑その契約を取り消すための行動を始め たか︑等であった︒. なかでも異議留保は︑絶対的な条件とは言えないとしても︑第一に強制の存在を立証するために︑第二にその契約.

(17) ︵48︶. を追認していないことを立証するために︑それぞれ重要な証拠となるものと考えられる︒異議留保の欠鉄に関して. は︑︹工︺で強迫が認められない一つの理由とされたし︑︹豆︺では︑請求の遅延とも相侯って︑承認ないし追認との. 評価がなされている︵︹皿︺では異議留保の有無を明らかにする証拠は存しない︶︒また︑和解︵争いの協定︶との区. ︵49︶. 別も困難な問題である︒ ︹1︺では︑強迫の存在を主張する者が︑﹁当該取引を終結させるものとして︑そうした解. 決策をとると考えていたか︑あるいは現状を依然として未確定なものと考えていたことを明確にしていたか﹂が重要. であるとされ︑証拠上︑合意が拘束力を持つことは認識していたとされた︒︹皿︺においては︑被告が自らのリスク 計算に基づいて合意していたと認定された︒. 以上のように︑かつて﹁物に対する強迫﹂とされたヶースは︑現在ではより柔軟な規準︑すなわち実際に﹁意思に ︵50︶. 対する抑圧﹂が存在したが否かによって決せられることとなった︒この規準は︑契約自体の有効性が争われる場合の. ︵. ︶ 51. 他に︑支払済金銭の返還を求める場合にも適用されるに至り︑かつての不合理な区別は完全に解消されたものと解さ れる︒. ︹ご謡︺一≦・r勾●誌Oo︒・音楽家と音楽事務所との問の営業制限契約の有効性が争われた事例︒笠井修﹁イギリス契約法における交渉力の. ︵43︶ ○讐一i9如黛︾︑ po3凶暮ooOト. 不均衡法理の形成﹂一橋論叢八九巻六号コ四頁︵一九八三年︶参照︒. ︵44︶. ︒O︶ー免責条項は常に適用されるべきかー﹂ジユリスト七九三号六〇頁︵一九八三年︶参照︒ O器o︵おG. ︒ω・本件及び基本的違反の法理に関しては︑佐藤正滋﹁﹃契約の基本的違反﹄に関するイギリスのづぎ87a琴二身 ︵45︶︹おo︒O︺N≦.ダ幻﹄G. ︵7 4︶. ︑. oO嵩鉾卜黛§層篤§卜o§騨国織.簿Oω㎝■. ︵46︶︑§O§鉾卜§属ミト§鱗︒り§ミきσωρ暮①も︒曾↓ぎ豊ぎミ§織↓ぎ防&ミ鳶鳩︒︒§ミb9⑦卜⊃q︒︸暮ωG︒O︒. 二四三. ︵48︶国くきω℃⇔§ミぎ8認・讐這一ー一8・和解︵争いの協定︶がなされなかつたことの証拠ともなる︵目曙δさ肉偽§oミごbミ霧︒︒︸一曽. イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(18) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 判例︹V︺︒. 黎辱ミき8器︸簿ωω09. ωOダ︸●&ざまGo︵一〇〇︒ω︶.︶︒. ︵50︶. ︵鞠︶. 学説の提示するファクター. ︵駐︶従釆も︑そのような区別が確立された準則であつたといい得るかは一部で疑問視されていた︒. 三. 二四四. 経済的強迫の定義︑及び商事上の圧迫との区別のための基準︑判例上必ずしも明確であるとはいい難い︒ 以下で. 取引能力と経済的強迫. は︑判例・学説が示唆するファクターにつき簡単に述べることにする︒ 一. 契約当事者が商人であるか︑あるいは一般消費者であるかといった差異は︑裁判所の下す判断の重要なポイントで ︵52︶. はあるが︑決定的な区別ではない︒契約に際して加えられる圧追の形態は極めて多様であり︑裁判所は取引関係全体 を見て判断を下さねばならない︒ ︵53︶. 一般的に︑消費者契約または個人経営に近い商人と大企業間での契約においては︑裁判所の契約への介入は正当化. されやすい︒しかし︑取引能力不均衡法理を経済的強迫の決定要因として第一義的に用いることは︑適当とはいえな. い場合もあり得る︒第一に︑いうまでもなく︑取引能力の優越する状態を一方が濫用しない限りは問題はない︒第二 ︵54︶ に︑取引能力不均衡法理概念は極めて包括的である︒裁判所は︑個別的ケースで市場の状況を調査することを余儀無. くされ︑重い負担を課されることにもなりかねない︒第三に︑特に商取引においては不確定性に対する危惧も根強. い︒取引能力不均衡法理の内容を明確化する意味で︑強迫概念の拡張が行われてきたと解し得ることからも︑要件の.

(19) ︵56︶. ︵誌︶. 明確化が強く望まれてくる︒第四に︑前述の判例のように︑契約を破棄する旨の︑あるいは履行を拒絶する旨の脅迫. による経済的強迫の事例では︑契約締結以前の取引能力の較差はあまり重要ではない︒賓ミ譜ヒご§勘磐切§昌. ︵農夫・銀行間︶や奔のさミ幾ミミ§蹄︑き§ミミ晦Oo・トミ・磐蜜貸ミミミ︵出版社・音楽家間︶等の取引能. 力不均衡判例では︑本来的な不均衡による救済が認められていると考えられる︒これに対しb飾O切ミミミ恥磐. ︵57︶. 肉鳴麩及び︹1︺〜︹皿︺では本来的取引能力は同等か︑あるいはむしろ被脅迫者の方が優越している︒後者では︑. すでに契約が存在し︑その債務関係の変更を請求した点で利害状況は異なっているのであり︑︹皿︺のような典型例 はむしろ稀である︒. 結局︑取引能力の問題は︑経済的強迫︑とりわけ判例にあらわれたような契約破棄の脅迫がなされた事例では︑そ. れだけでは決定的なファクターとはならない︒重要なのは︑契約による結びつきの結果として生じた取引能力の優越 状態︵後発的な取引能力不均衡︶を濫用したか︑ということである︒. ヤoミミ. ㌔O︒︒ヤ山鳴蕊忌§蕊器肉S鳶oミ魯的き妹尋鳴霞o黛竃o︑卜o唖織ω︸8q呂<●円○閃02目Oピ●一●ωOO︵6蕊︶︒︒. ︵52︶取引能力不均衡を︑経済的パースペクティブから検討するものとして︑↓冨獣一80ぎ↓誉bミ︑篭ミミhミ餐Q鳶こミoロミ偽ミミ§恥. 正当化され得る︵○ぴq置証p黎㌧ミぎ帯ざ餌け銭ド︶︒. ︵53︶混合経済にあっては︑大規模会社・小規模会社が共存し︑政府の承認の下に独占︹類似︺状態が維持されていると考えれぱ︑かような状態は. ︵55︶判例︹1︺〜︹皿︺︒. 9︶参照︒ ︵54︶拙稿・前出注 ︵ 1. ︵56︶債務の一部免除を要求する場合も挙げられる︵bやq山ミミミω鉾肉ミ⇔も§ミ唇8漏︶・︒. ミ・︶︒. 二四五. ︵57︶経済的強迫の成立が認められるのは︑現に当事者に契約関係が存在し︑一方が権利の放棄を余儀無くされた場合に限られるとし︑強制によっ て新たに締結された契約については取り消しえないと主張するものもある︵O蝿Φ聲切§ミぎ3卜︒o︒・讐. イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(20) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 二 脅迫行為の不法性. 二四六. 従来は強迫の成立のためには︑脅迫行為自体が不法であることが要求された︒不法とは︑犯罪行為または不法行為. ︵具体的には︑恐喝・強奪︑制定法に違反する行為︑コミュニティーの秩序を乱す行為等︶に限定される厳格なもの. であった︒その多くは︑脅迫によってある合意を強要したり︑金銭を支払わせたりする事案であったが︑これに対. し︑判例に現われた経済的強迫の事案は︑既になされた契約内容の変更を求めるものが多い︒こうした事案の相違. も︑不法性に関する考え方を変化させた一つの要因と見られる︒しかし︑判例が被脅迫者の内心状態を主に強調し︑ ︵58︶. 圧迫行為の性質にあまり注意を払わないことに対しては︑疑問の目が向けられている︒また︑経済的強迫の事例で ︵59︶ は︑行為自体は全く合法であるのに︑ある特定の状況下では不適当と解されることがあり得る︒ ︵6 0︶ このような状況の変化によって行為の不法性自体はほとんど重要性を失ったとの見方もあるが︑一般に︑商事上の ︵研︶. 圧迫と区別し得る程度の﹁不法性﹂は必要であるとされる︒そうした不法性の内容としては︑犯罪あるいは不法行為 ︵62︶. ︵63︶. の他︑契約を破棄する旨の脅迫も含まれる︒契約当事者が契約の履行を期待することは当然であり︑そうした期待は. 法的に保護されねばならない︒ただ︑従来の裁判所の立場も必ずしも明確ではなく︑物に対する強迫と本人に対する. ミ葛&臓鳶︑§蛛ミミ9ミ﹃§3ωωO︾鼠切●戸いOS一お︵ち試Y&こ恥愚ミき冨8︑暮お9↓選一〇♪. 昌9Φ8馨ω3●. Go︸餌什&S. 強迫とを区別することによって間接的に表明していたに過ぎないとも思われる︒不法性の内容が曖味になったことは 確かであろう︒. ↓曙一〇さqり黛 腎 ︑. 昌08. ︵58︶. O伊q崔く一9G︒黛㌧︑. 切鶏80ぞbミ$ω湧. ︑ド. ︵59︶. ︵60︶. ︵研︶.

(21) 8け⑦癖︒︒︸讐ホc︒一国く弩ω鳩 ↓. ︒︒. ωo普の09ω黒︾憧食昌oσ①ど餌け. 貸㌣ ︵2 6︶. 覧oさ噛き. ︵3 6︶. ⇔黛︾︑亀. 一一ド. 三 意思の抑圧︵o奉さ霞冒①零旨︶. ︵65︶. 昌Oけ①ωN︸. 帥什. 一〇Nー一〇も○●. ︵66︶. 判例の採る﹁意思の抑圧﹂理論に対する批判は少なくなく︑強迫に関する一般理論にも動揺が見られる︒︾仲ぞ魯 ︵磁︶ は︑経済的強迫が将来における契約法の発展領域であることに疑いを差し挟む余地はないとの前提に立ち︑判例が依. 然として古典的契約法の伝統的な理論に支配されているのは残念なことであるとする︒ただ﹁意思の抑圧﹂理論は︑ ︵67︶. コモソ・冒1上長い歴史を有しているから︑裁判所が経済的強迫という新しい概念を正当化するためにこの理論を用. いたとしても驚くべきことではない︒強迫による契約が取り消し得るとされるのは︑契約が自由な意思の産物である ︵68︶ からなのではなくて︑被脅迫者に課された圧迫が何らかの理由から不法なものであるからなのである︒︵強迫一般に ︵69︶. 関して︶人聞の意思がある圧迫によってのみ抑圧されるであろうとの考え方は︑論理的には擁護し難く︑実際上も適 ︵⑳︶. 用困難である︒圧迫には︑社会・経済体制及びコミュティーのモラルの観念と調和するものと︑調和しないものとが ︵71︶. あるが︑両者の区別は︑圧迫の種類を区別することによってなされるのであり︑人間の心の中における圧迫の効果を. 分析することによってはなされ得ないのである︒︾江畷魯は以上のように述べ︑重要なのは﹁社会・経済体制及びコ. ミュニティーのモラルの観念﹂であるとする︒そして具体的には︑意思の抑圧理論を次のように批判する︒第一に︑ ︵72︶ ︑ 被脅迫者は︑通常︑自らの行為を十分理解している︒第二に︑意思の抑圧理論では被脅迫者が他の選択をなし得なカ. 二四七. ったことが必要とされるにもかかわらず︑その選択手段の有用性を考慮するというのは︑内的に矛盾.対立してい イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(22) ︵3 7︶. 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. ︵盟︶. 二四八. る︒第三に︑この理論は通説的見解︑すなわち強迫によってなされた契約は取り消し得るのであって︑無効ではない ︵75︶︵76︶. というとの見解と調和しがたい︒そして第四に︑結局この理論は︑強迫の存在を主張する当事者の心理的な動機の探 究へと目をそらせてしまい︑好ましくない結果につながるとする︒ ︵77︶. 088も訪は団替同様︑判例の採る主観的アプローチは適切ではないと述べ︑経済的強迫の決定要因は結果の重. 大性であると主張する︒国話屡は︑経済的強迫法理の不当な拡張を防止するためには︑脅迫者の課した圧迫が不法. ︵80︶. ︵81︶. ︵田︶ であることが立証されることを要求すべきであり︑このテストを用いることによって︑圧迫の性質に対する考慮を犠 ︵79︶ 牲にしてまでも︑被脅迫者の心理に過度に注目することが避けられるとする︒○σQ譲三Φも︑アメリカにおける議論を. 援用しつつ︑より客観的なファクターによって︑強迫の存否を決すべぎであると主張する︒ ︵82︶. 以上のように︑学説の多くは︑経済的強迫の概念自体には好意的であるが︑判例が表面上採っている主観的アプ冒 ーチについては批判的であると見られる︒. ︒rO●湘閣<●お8一〇〇︒︵一〇〇︒N︶︒ ミ匙﹄.︑℃Oo. ︵6 o三①α︒おc 4︶︾↓凄︾F︾2碧↓脚OuqO目O寓↓○↓寓国﹇︾≦O男Oo2↓閃︾o↓ω8一︵o ︒一︶二αoこ閏8§ミ魯bミ禽ω§織さ鳴︑.O魁ミ守ミミ. 論である︵︾目募F ︒ ︒ § 辱 ミ 蓉 3 0 ト 魯 器 一 ︶ ● ︒. ︵6 5︶強迫は︑被脅迫者に対して課された圧迫によつて真実の選択権が奪われ﹁意思が抑圧された﹂という証拠の存否によつて決せられるという理. ︵66︶ミ●. ︵6 7︶>けぞ餌F婁︾這ぎ帯O倉讐這o ︒・. ︵69︶︾円躍>F簑㌣ 昌08一ト四什ホ①︒. ︵68︶︾↓躍︸F︒︒黛︾ミき3①ト餌け器一・. ︵71︶ミ︒. ︵70︶ミ..

(23) ︵73︶ミ.霧8一. ︵72︶︾鍮鴇Fω愚ミ88①♪曾80︒. ︵履︶ミ・なお︑強迫を理由とする取消の効果につき︑勘ぐ昌は︑ピストルをつぎつけられて契約にサインしたような場合︑その契約は少なくと. 簿8一ーN8.. も取消可能であり︑おそらくは無効であると述べている︵︾目醤F句篭ミき帯①ト国什B曽︶︒ ︵75︶︾謡饗ダ黎㌣薗蓉8①轟. けちc︒ー8ρ︶︒︾江矯昌に批判的な見解として. なお︾け蔓昏は︑卜§息鉾b・︑・>ミ之ミ愚ミ§国醤ミ蕊織︹お誤︺︾ρ①器9を例として挙げ︑経済的強迫を扱う前述判例が下さ. れる以前に︑貴族院は﹁意思の抑圧理論﹂を否定していたとする︵︾江旨F防患ミ乞呂①肝. ︵76︶. Ooo梓ρ︒り黛︾憶黛昌o$Noo︼暮醤●. は︑↓首蜀島ざqも鳶&㌧誘も︑b黛︑蕊や8﹃O●即国く︒あω︵這coωyがある︒ ︵77︶. 国く曽p9讐 ㌣ 魚 き 3 ω ㌍ 鉾 一 〇 ω ● 国織●. ︵78︶. ︑織︒讐oo一①り. OoQ=iρ︒︒黛︾ミ葛8評暮ω一〇ーω一9. ︵79︶. ︵80︶. ︵83︶. ︾島饗びが強迫理論一般を論ずるのに対して︑ 他の論者は専ら経済的強迫と商事上の圧迫の区別を中心に論ずる点で︑やや視点が異なるよう. ︵81︶. 因. である︒. ︵82︶. 四 約. 英米法における強迫の問題は約因法理の外衣をまとって現れることが多く︑経済的強迫の場合も︑しばしば約因の. 相当性が問題とされる︒エクィティー裁判所は︑何らかの圧迫・強制が存したと認められるケースで︑約因が極めて. 低価値であるときには︑当該取引に非良心的要素が存在したか否かを調査した︒そして約因が不均衡であることは︑. 二四九. 合意が強制によってなされたことの一つの根拠とされた︒前出︹1︺〜︹皿︺で見たように︑被脅迫者側は︑相手方 イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(24) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 二五〇. の約束に対しては︑十分な︵霊諌§o暮︶約因を提供したと主張する︒もっとも︑そこでの約因問題は︑既存賃務の. 履行約束は十分な︵⑪qoa︶約因たり得るかという問題であった︒契約内容の変更が争点となるケースでは︑しぼし. ばそうしたアプpーチが採られよう︒一般的には︑相当な︵&8轟8︶約因が提供されたとしても︑経済的強迫を. 木下・萌出注︵6︶三四七ー三四八頁︒ ○Φq二く剛9襲辱ミpo38暮ωお●. 他の選択手段・結果の重大性. ︵雛︶. ︵83︶. 理由とする取消が認められるとされている︒相当な約因の存在によって強迫の不存在が暗示されることはあろうが︑ ︵艇︶ その不存在の決定要因とはならないと考えられる︒. 五. 意思の抑圧理論を︑特に商事上の圧迫との区別が困難であるとして︑批判する論者が重視するファクターである︒. ︹皿︺で︑原告は主合意の特定履行の請求をなし得ることを知っていたが︑﹁会社の社会的信用が低下することをお. それて﹂被告の要求に応じた︒原告は︑他の選択手段があったにもかかわらず︑自らのリスク計算に基づいて合意の. 変更に応じたのであり︑一般に承認された商事上の圧迫が存在したとみる余地もある︒︹狂︺事件でも︑前述のよう. な利害関係から考えると︑強迫の成立は疑問視される︒そこでOひq響δは︑経済的強迫の決定要因は︑実行可能 ︵86︶. ︵85︶ な・他の選択手段の有用性であるとする︒○ひq岩泣①によれば︑経済的な破滅状態のみが存する場合には︑明らかに経. 済的強迫があるということがでぎる︒裁判所が検討しなければならないのは︑事実関係から︑被脅迫者は他の選択手. ︵87︶. 段を有しないために︑止むをえず要求に応じたのか︑あるいは単に計算ずくの取引決定を自らのリスクで行い︑それ. が失敗に終わったのか︑ということである︒その際には商業道徳と商慣習が重要な意昧を持つ︒088も︑経済酌.

(25) ︑ド暮ωミ︒. Oo99黎㌧ミ譜9Φ鱒oo︑緯心q●. 不当な利得︵蝦鵠甘纂①5二魯置①暮︶. ︵88︶. ︵7 8 ︶ミ︒. ︵86︶ミ●. ︵5 8︶. 強迫の決定要因は被脅迫者の意思抑圧の有無ではなく︑ 圧迫に応じない場合に生ずるであろう結果の重大性であると ︵88︶ 述べ︑客観的なアプローチを主張する︒. 六. 括. ○讐一丘ρ§︾ミ昌90ざ暮ω一P. 脅迫者に︑不当な利得がもたらされたことは特に救済の根拠として要求されることはない︒不当に得られた利得の ︵89︶ 原状回復は︑法に従って決定されるべぎものであって︑利得自体が法なのではないからであるとされる︒ ︵89︶. 七 小. ごく最近に至るまで︑不公正な契約からの救済手段として強迫が主張されることはほとんどなかったが︑前に述べ. た数件の判決は︑本人に対する強迫以外の脅迫を強迫概念中に包含する可能性を論じている︒それに伴って︑本人に. 対する強迫と物に対する強迫といった不合理な区別は解消されることが明言され︑より実質的な規準が模索され始め. ている︒判例は表面上︑かつての脅迫行為の不法性を重視する立場から︑被脅迫者の内心︵意思の抑圧の有無︶によ. 二五一. って決する立場へと変化したかに見えたが︑再び前者の重要性を指摘するものも現れている︒事案のほとんどは︑ほ イギリス契約法における経済的強迫︵吉田和夫︶.

(26) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 二五二. ぼ対等の地位にある商人間取引であり︑契約取消事由たる経済的強迫と単なる商事上の圧迫との区別が問題となって. いる︒こうした局面では︑意思の抑圧という主観的な規準は有効ではないことになり︑学説は判例の主観的アプ巨ー. チを批判し︑客観的なファクターを他に求めている︒具体的な事案をみる限りにおいては︑両者の採る結論は同一で. あり特に問題はないと考えられるが︑取引能力の点で隔絶した当事者間の契約の有効性が争われる事案でいかなる態. む. す. び. 度が示されるかは注目される︒. 四. 以上述べてきたように︑強迫あるいは経済的強迫が論じられる背景には︑多くの制度上の問題があった︒不当な強. 制ないし圧迫によって締結された契約に関しては︑厳格なコモン・ロー及び比較的柔軟なエクイティーが競合的管轄. 権を有していたこと︑そしてそれが裁判所法の制定によって統一されたこと等の他にも︑準契約上の救済が実際上与. えられてきたこと︑争いの協定がなされたと見るべぎ場合がほとんどであったこと等は重視さるべき事実である︒. 強迫概念自体に関して言えば︑コモソ・ロ;上︑古くは強迫と犯罪・不法行為との区別は明確とは言えず︑強迫を. 理由とする救済手段は︑脅迫行為に対する制裁としての機能をも有していた︵現在においてもそうした側面を強調す. ︵90︶. るものもある︶︒元来︑強迫は肉体的・物理的強制を意味するのであって︑経済的強制を意味するのではないと言わ. れ︒こうした考え方は︑大陸法・英米法に共通するものであろう︒ただ英米法の特徴は︑当事者の意思を尊重する大 ︵91︶ 陸法に対して︑当事者の意思を離れ︑当事者の関係により法的効果を発生させる点にあるとされている︒いわゆる関. 係理論全体にわたる評価はひとまずおくとしても︑例えば不当威圧法理︵非良心的取引法理︶は古くから契約当事者. 間の地位の較差に対しては敏感な対応を示し︑限定的な領域ながら︑重要な救済手段として機能してきた︒裁判所の.

(27) このような提言は︑近時のイギリス契約法における最も注目すべぎ改革の試みの一つとされる︒取引能力不均衡法理. 対応も︑レッセ・フェール哲学に直面して後退を余儀無くされたものの︑再び取引能力不均衡法理として統合され︑. に対しては︑何らかの共感を示すものはあるものの︑一般の支持を得るには至っていないようである︒デニング卿の ︵92︶. 個人的な見解に過ぎないとも評価できよう︒更に︑最近の強迫概念の拡張によって︑取引能力不均衡法理の必要性は. 著しく弱められていることも確かである︒かくしてイギリス法上の取引能力不均衡法理が不公平な取引に対して直接 ︵93︶. ︵94︶. 的に適用される可能性は少なくなり︑せいぜい裁判官が強迫や不当威圧法理を今までより自由に適用することを促進. 木下・前出注︵6︶参照︒. 星野英一﹁契約思想・契約法の歴史と比較法﹂﹃岩波講座・基本法学41契約﹄三頁︑壬二頁︵一九八三年︶︒. する程度の役割を果たすに過ぎないと思われるが︑今後の判例が如何に展開していくかは必ずしも明らかではない︒ ︵90︶. 日本法においては︑強迫それ自体が単独で争点となった事例は比較的少なく︑脅迫行為の違法性につき告訴・告発の問題が取り上げられた位. ﹄織・. ↓寄胃国ダ︒り黛辱ミ昌9⑦N尉幾けω一〇︒・. ︵91︶. ︵2 9︶ ︵93︶. であるけれども︑ イギリス法上の経済的強迫に類似する判断を示す判例も存在する︒その数少ない判例の一つとして︑東京地判昭五四・九.二七. ︵94︶. 判タ四〇二号一 一五頁︵使用貸借農地の返還につき︑そもそも農業委員会の許可を得ていなくて借主に耕作権原がなく︑また使用収益をなすに足. 貸主の強迫によるものであるとした事例︶が目を引く︒この判決は︑﹁︵原告が︶金員の支払を約束しないと返還に応じないとの態度を示. る期問も経過していて貸主の返還請求が適法であるのに︑借主が貸主の窮地に乗じて一〇〇万円の﹁迷惑料﹂の支払を約束させたのが︑公序良俗. 東京地︵八王子支︶判昭五八・二・九判時一〇七八号九五頁︵市の宅地開発等に関する指導要綱に基づいて所定建物の建築主のした教育施設. これを断るときは被告に経済的に大きな損失が及ぶことを暗に示唆して強迫し︵た︶﹂ことを認定し︑補償契約の﹁取消﹂を認めている︒ま. に反し︑. た︑. し︑. 負担金の寄付が︑ 強迫にょるものとは認められなかつた事例︶は︑﹁本件において教育施設負担金を負担することは建設工事の前提であり︑負担. を拒否すれば工事を断念する以外にないというのが種々交渉の末原告の到達した認識であ︑ りそこに畏怖の入り込む余地はなく︑被告において︑. 二五三. 原告が本件指導要綱に基づく給水制限措置に畏怖しているのに乗じて本件教育施設負担金の寄付を強制したという認識をもつていたとは到底うか. イギリス契 約 法 に お け る 経 済 的 強 迫 ︵ 吉 田 和 夫 ︶.

(28) 早稲田法学会誌第三十七巻︵一九八七︶. 二五四. なお︑公序良俗違反との関係・独禁法との関係等に関しては︑ 米倉明﹁法律行為︵二七︶1公序良俗違反の法律行為﹂法学教室七〇号︵一九八. がえない﹂として ︑ 強 迫 の 主 張 を 斥 け て い る ︒. 六年七月号︶参照︒.

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