卒業研究論文
論文題目
果物の近赤外スペクトルの
非接触測定法に関する研究
東北大学 工学部 情報知能システム総合学科
山田・大寺・北研究室
B3TB2008 浅野孝介
2 内容 第1 章 序論 ... 3 1.1. 背景 ... 3 1.2. 目的 ... 5 第2 章 原理 ... 7 2.1. 近赤外分光法 ... 7 2.1.1. 近赤外分光法による非破壊検査 ... 7 2.1.2. 重回帰分析 ... 8 2.1.3. スペクトルの前処理 ... 10 2.2. 分光イメージング ... 12 2.2.1. 分光画像の各撮影方式 ... 12 2.2.2. フォトニック結晶 ... 13 第3 章 果実の近赤外スペクトルの非接触測定 ... 15 3.1 照射光のスポットサイズの測定 ... 16 3.2. 桃の近赤外スペクトルの非接触測定 ... 19 3.3. 照射部、受光部非接触測定の試み ... 24 第4 章 非接触測定で得られた近赤外スペクトルによる糖度推定の試み ... 29 4.1. 非接触で得られたスペクトルの糖度推定 ... 29 4.2. インタラクタンス法によるスペクトルの連続測定 ... 31 第5 章 LED 光源の試作 ... 34 5.1. 赤外線パワーLED の電流-電圧特性 ... 34 5.2. 赤外線パワーLED とハロゲン光源の強度比較 ... 36 5.3. ヒートシンクの効果と LED の強度の安定性 ... 38 第6 章 結論 ... 40 謝辞 ... 41 参考文献 ... 42 外部発表 ... 44
3
第
1章 序論
1.1.
背景
現在、工業製品や農畜産物の品質を、従来よりもきめ細やかに計測、評価する手法へ の要求が高まってきている。その手法として注目されているのが近赤外分光法である。 近赤外分光法とは、近赤外領域(波長 800~2500nm)の光を試料に照射し、その光の吸収や 反射光のスペクトルを計測することで、試料内部の成分を調査する手法のことである。 本研究では、特に果実の成分の分析を目標として研究を行う。果実の成分を推定する 方法としては、まず可視画像からの推定が挙げられる。これに関する研究は 1946 年~ 1960 年ごろに行われた [1]が、糖度を正確に推定するには近赤外光が有効であることが 示されたため、現在は近赤外光を用いた手法が主流になりつつある。 近赤外光が果実の成分推定に適している理由は以下に挙げられる。 ・非接触や光ファイバを用いた分析が可能となり、その場で成分分析を行うことができる ・透過性が高いので、物質内部の非破壊分析が可能となる ・光子エネルギーが小さいため、試料を損傷しにくい ・固体、液体、気体のどの状態の試料でも計測できる、また、形状や厚さにもよらず計測 が可能 一方、近赤外分光法の欠点としては、多数の倍音および結合音のバンドの情報が混ざ るため、特定の成分の情報のみを抽出するのが難しいことが挙げられる。 近赤外分光法での測定対象としては、魚、果実、野菜などの農漁業生産物や、工業製 品、人体などが挙げられる。その中でも果実の成分分析についてここでは述べる。果実 の成分の情報として重要なのは、糖度、酸度、硬度、可溶性固形分(SSC: soluble solid contents)などの指標である。糖度や酸度は果物のおいしさにかかわる指標であり、糖度 と酸度のバランスが良いほどおいしい果実だと言える。また、硬度は果実の成熟度を推 定する上で重要な指標である。また、SSC は糖、酸などの可溶性の成分が溶け込んでい る固形物のことで、屈折率糖度計で測定することができる。このSSC に含まれるショ糖 (スクロ―ス)の量が糖度の指標として用いられる。20℃のショ糖液 100g 中に含まれるシ ョ糖のグラム数をBrix 値と呼び、糖度の単位として用いられる。Brix 値は%で表される が、単位として「度」を用いることもある。 先行研究では桃やりんご、パパイヤなどについて、近赤外光を照射するプローブと、 反射光を検出するプローブをともに接触させて糖度やSSC を推定する研究が行われ、比4 較的よい精度で推定が行われている。これらの研究をもとにして、糖度推定の機器がす でに実用化されている。屋内用としては、選果場で大型の糖度計が使用されている [2]。 これは、遮光環境下で糖度を非接触測定できる機器であり、全数検査が可能である。一 方、屋外用としては、可搬型のピンポイント糖度計がある [3]。これは、果実の表面にプ ローブを密着させて糖度を計測する機器であり、ピンポイントでの糖度推定が可能であ る。またコンパクトで持ち運びができるという利点がある。これらの機器を用いて、収 穫後の果実の検査を全数で、しかも非接触、非破壊で行うことができる。 しかし、農業分野では収穫後だけでなく、収穫前の果実の糖度の推定への要求が高ま っている。これは、いくつかの付加価値の高い果物で収穫後の品質をより高めたいとい う要求があるためである。例えば桃は、みかんやりんごなどと比べ比較的高級な果物な ので、収穫後の果実糖度のわずかな違いが品質のランクに影響する。しかし、外観色に はわずかな変化しかなく、収穫適期の判別には経験に頼る必要がある。また、収穫して から店頭に並ぶまでの時間経過での成熟も考慮する必要がある。収穫適期を判別するに は果実全体の糖度分布をみる必要があるが、現在屋外用として用いられている可搬型の 糖度計の場合、果実の一点だけの糖度しか調べることができない。また、果実にプロー ブを接触させる必要があるため、手の届かない高所にある果実の情報を得ることができ ない。よって収穫適期の判別には、非接触で果実の糖度や酸度等の分布を二次元可視化 する必要がある。 このうち、非接触測定については、2006 年 Lu らによって、非接触での硬度の推定が すでに行われている [4]。この研究では、桃に直径 1.6mm のスポットサイズの光を照射 し、そこから1.5mm はなれた箇所から、直線状にズームレンズを用いてスキャニングし、 ハイパースペクトル画像を作成している。そして得られたハイパースペクトル画像から、 スキャニングを行ったラインの各波長での光強度の分布を求めている。この輝度分布を ローレンツ関数でフィッティングしている。ローレンツ関数 は以下のように表される。 = 1 + (1.1-1) このローレンツ関数の , のいずれかの値か、または × を用いて硬度F を重 回帰分析によって求める。その式は以下のようになる。 = + (1.1-2) X は , または × のいずれかの値を表す。 また、 , の両方の値を用いた場合、F は以下のような式で計算される。
5 = + + (1.1-3) また、硬度の実測値はMT 硬度計と呼ばれる機器を用いて測定している。MT 硬度計は、 果実にプローブを押し当てたときの反発応力を硬度として測定する機器であり、反発応 力の強さはニュートン(N)で表される。この研究において、検量線への当てはまりの良さ を示す決定係数は最大で0.77 が得られている。この結果より、桃の硬度を非接触で高い 精度で推定することが可能だといえる。この先行研究から、桃の糖度についても同じく 非接触測定が可能であると考え、本研究を行うにあたっての論拠とした。 図1.1-1:桃の硬度推定の実験系 [4]
1.2.
目的
今回我々は、圃場で桃の収穫適期の判別を行うことができる機器の開発を目標として いる。そのために機器に要求される仕様をまとめると以下のようになる。 (1) 糖度、酸度、硬度などを二次元画像として可視化できること (2) 木になった状態の果実を非接触測定できること(約 30~50cm 離れて測定) (3) コンパクトで可搬型であること (4) 農園単位で購入できるほどの低価格であること (5) 外光下での測定が可能であること6 (1),(2)の要求を満たすために、背景で述べた近赤外分光法という非破壊測定法を用いる。 (5)の要求を満たすためには、風による果実の揺れや太陽光のスペクトルの時間変化の影 響を除外する必要がある。よって、カメラの撮影方式としてスナップショット方式を採 用した。この方式は一度の撮影で複数の波長の分光画像を取得できる方式である。また、 撮影用の照明として、近赤外 LED ストロボ照明を用いる。LED はスポット照射するこ とが可能であり、また、太陽光の強度よりも強い光を照射することが可能なためである。 この照明をパルス駆動させて瞬時に発光と消灯を行い、LED が発光したときの画像から、 消灯したときの画像を差分することで、外光の影響を除去することができる。 また、撮影した果実の画像から糖度を推定するために、マルチスペクトルイメージン グという方法を用いる。これは、複数の波長の分光情報を同時に取得するというイメー ジングの手法である。この技術を用いることで、画像の x 軸方向, y 軸方向および波長 方向の 3 つの軸の情報をもつハイパースペクトル画像を取得できる。このハイパースペ クトル画像から、果実の各部位の糖度を推定し、果実全体の糖度分布を二次元可視化す ることができる。 近赤外分光法は、800~2500nm 付近の波長帯の光を用いるので、イメージングを行う には、この波長帯をカバーできるイメージセンサが必要である。このうちの900~2500nm の波長帯については、InGaAs や HgCdTe などを用いたセンサーでカバーできるが、価 格が高価であり、(4)の農園単位で購入できる価格ではない。一方、800~1100nm の波長 帯ならば、シリコン系のセンサーでカバーできる。このイメージセンサーは民生用に大 量に流通しているため、価格が比較的安価で、かつ画素数の多い素子が容易に入手でき る。 本研究では、上で述べた糖度推定システムのいくつかの要素技術の確立を目指した。 それは以下の通りである。 (1) 非接触測定での糖度の推定 (2) 外光下での非接触測定 (1)について、非接触で近赤外スペクトルを測定し、インタラクタンス法で測定したス ペクトルと同じ情報が得られるかどうか調べた。また、非接触で得られたスペクトルか ら糖度を推定し、正確に糖度推定が行えるかどうかを調べた。また、(2)の要件を満たす ために用いるLED 照明は、外光よりも十分大きい強度を有する必要がある。また、LED を用いる際には定格電力や放熱にも注意する必要がある。よって本研究では、近赤外LED 照明の強度および電流-電圧特性を調べ、LED の発光に適した制限抵抗の値を求めた。ま た、ヒートシンクを取り付けた場合の放熱の効果を検証した。さらにLED の発光強度を 測定した。
7
第
2 章 原理
2.1. 近赤外分光法
2.1.1. 近赤外分光法による非破壊検査
近赤外分光法では、吸光光度法という方法を用いる。これは試料に光を当てた場合に、 試料内で吸収された光の量(吸光度)を測定し、試料内の成分の濃度を測定する方法である。 吸光光度法で用いられる法則にランベルト・ベールの法則 [5] [6]がある。これは、ある 物質に光が入射した時、その物質の濃度や厚さが光の吸収にどのように影響するかを示 した法則である。 いま、平行光が厚さ l の物質に入射されたとする。入射光の強度を I0とすると透過光強 度は以下のように表される。 = ∙ 10 ( はモル吸光係数, c は濃度) (2.1.1-1) これを、ランベルト・ベールの法則と呼ぶ。この式から、入射光の強度が、試料の濃 度及び試料の幅が増加するほど指数関数的に減衰することが分かる。以下にその導出を 示す。 いま、厚さ l の物質内で、光の減衰が起こる厚さ dx の薄層を考える。ここに光が入射 したとき、1m2あたりの入射光強度が Ixから + に減衰したとすると、その減衰量は 光が進んだ距離 dxに比例する。よって、 − = (2.1.1-2) この式の両辺を Ixで割ると、 − = (2.1.1-3) いま、入射光の強度を ,透過光の強度を とし、両辺を積分すると、 − = (2.1.1-4) これを解くと = (2.1.1-5) 通常は、自然対数ではなく常用対数を用いる。その場合、 = 2.303 (2.1.1-6) と変換される。式(2.1.1-5)から、式(2.1.1-1)が導かれる。 また、吸光度Aはランベルト・ベールの法則から次のように表される。8 = = (2.1.1-7) 本研究では反射光強度から各波長での吸光度を求め、その値を用いて果実糖度を推定 した。
2.1.2. 重回帰分析 [7] [8]
測定により得られた近赤外スペクトルから、意味のあるスペクトルデータを推定する には、コンピュータを用いて対象物の情報を抜き出す必要がある。近赤外スペクトルは、 赤外スペクトルに比べて多くの物質の吸収が重なった複雑なスペクトルを有するため、 各スペクトルがどの物質に起因するのか特定するのが困難だった。しかし、分光器の性 能が向上したこと、またスペクトルから測定対象物に関する有益な情報を抜き出すため の統計的手法が多数考案されたことによって、複雑なスペクトルから任意の対象物の情 報を抜き出すことができるようになってきた。 スペクトルを統計的に解析する手法として回帰分析がある。回帰分析とは、求めたい 変数(目的変量)と他の変数(説明変量)の関係を数式で表現した時、その数式の係数 の最適値を求める方法である [9]。 説明変量が 1 つだけのときは単回帰分析、説明変量 が複数のときは重回帰分析と呼ばれる。本研究では、目的変量は糖度、説明変量は各波 長の吸光度である。重回帰分析を用いることで、糖度を複数の波長で表せるような係数 を求めることで、糖度を推定できる。最適化した係数を重回帰係数、定数項を重回帰定 数と呼ぶ。 いま、目的変量を 、説明変量を とする。重回帰分析により推定される目的変量は、 係数 ( = 0, 1, ⋯ , )を用いて = + + + ⋯ (2.1.2-1) と表される。ここでy とy の誤差 = − (2.1.2-2) が最小となるような係数A が、重回帰係数である。ここで = + + ⋯ (2.1.2-3) で表される関数L が最小となるように A を求める。L が最小となる条件は、L の偏微分 について = 0, = 0, ⋯ , = 0 (2.1.2-4) が成り立つことである。 いま、説明変数が2 個の場合の重回帰分析を考える。A0, A1, A2について関数 L を偏微分 し、式(2.1.2-4)に当てはめると、以下の式が成り立つ。9 − − − = 0 (2.1.2-5) − − − = 0 (2.1.2-6) − − − = 0 (2.1.2-7) 式(2.1.2-5)~(2.1.2-7)を正規方程式と呼ぶ。この場合は説明変量が 2 個の正規方程式で ある。 次に、この正規方程式を、積和と平方和というパラメータで表現する。 積和 Spp 、平方和 Spq ( = 1,2, ⋯ , , = 1,2, ⋯ , , ≠ ) は次のように表される。 = − (2.1.2-8) = − − = (2.1.2-9) ここで、式(2.1.2-7)を次のように変形する。 = − − (2.1.2-10) この式を式 (2.1.2-5) ,(2.1.2-6) に代入すると、それぞれの式は以下のように表される。 − + − = − (2.1.2-11) − + − = − (2.1.2-12) 積和と平方和を用いて上の式を置き換えると = (2.1.2-13) A に係る行列を平方和積和行列と呼ぶ。また、積和、平方和をそれぞれ N で割ると、 積和は分散、平方和は共分散を表す式になる。よってこの行列を分散共分散行列と呼ぶ こともある。 式(2.1.2-13)を、説明変量が p 個の場合に拡張すると、以下のような式となる。 ⋯ ⋮ ⋱ ⋮ ⋯ ⋮ = ⋮ (2.1.2-14)
10 平方和積和行列の逆行列を両辺に掛けて ⋮ = ⋯ ⋮ ⋱ ⋮ ⋯ ⋮ (2.1.2-15) となる。したがって重回帰係数A , A , ⋯ , A を求めるには、式(2.1.2-15)のような逆行列 問題を解く必要がある。 また、重回帰分析で求めた推定値と実測値の相関は、相関係数や決定係数と呼ばれる パラメータを用いて評価することができる。相関係数は以下のように表される。 いま、共分散を ( , )、分散を とすると、 = 1 ( − ) (2.1.2-16) ( , ) = 1 ( − ) − (2.1.2-17) 分散と、共分散を用いると、相関係数は以下のように定義される。 = ( , ) (2.1.2-18) 決定係数は、相関係数の 2 乗であり、最小値は 0、最大値は 1 である。決定係数が 1 に近いほど、推定値と実測値の相関が高いと言える。
2.1.3. スペクトルの前処理
(1) メディアンフィルタ メディアンフィルタは、設定した窓幅内のデータを、その窓幅内の中間値で置き換える処 理法である。この処理を行うことで、窓幅内の極端な値を除去することができる。 (2) 移動平均 移動平均は、スペクトルデータを、ある区間内の平均値を、区間を移動しながら求め、ス ペクトル全体を平滑化する方法のことである。移動平均には、さまざまな種類があるが、 ここでは単純移動平均と加重移動平均の一種である、サビツキ―・ゴーレイ法(SG 法: Savitzky-Golay 法)について述べる。・単純移動平均 (SMA: simple moving average)
あるデータ点 i において、(i-m)から(i+m)の(2m+1)の範囲において平均値をとる。そ れをすべてのデータ点について行うことで平滑化できる。このとき平均値をとるデータ 点数(2m+1)を窓幅と呼ぶ。単純移動平均の計算式を以下に示す。
11 ( ) = 1 2 + 1 ( + ) (2.1.3-1) ・SG 法(Savizky-Golay 法) [10] 単純移動平均の窓幅が大きすぎると、測定対象物の吸収ピークまで平滑化してしまう 可能性がある。この問題を解決する移動平均の方法として加重移動平均(WMA: weighted moving average)が挙げられる。これは窓幅内での平均化の際に、重み関数を各データ点 の値に乗算する。この処理を行うことでこの重み関数として最もよく用いられているの が、Savizky と Golay によって提案された重み関数である。重み関数をw(j)とすると、 加重移動平均処理を行った後のスペクトル は ( ) = 1 ( ) ∙ ( + ) (2.1.3-2) ただし、 = ( ) (2.1.3-3) サビツキ―・ゴーレイ法においては、重み関数w(j)は以下の式で表される [7]。 ( ) = 3 ( + 1) − 1 − 5 (2.1.3-4)
(3) SNV (Standard Normal Variate) [11]
この処理では、元のスぺクトルの値から、平均値を差分し、さらにそれをスペクトルの 標準偏差で割るという処理を行う。 スペクトルの平均値は ( ) = 1 ( , ) (2.1.3-5) 及びスペクトルの標準偏差は ( ) = 1 − 1 ( ( , ) − ( )) (2.1.3-6) と表されるので、SNV 後のスペクトルは ( , ) = ( , ) − ( ) ( ) (2.1.3-7) となる。 平均値を差分することで、スペクトルのベースラインがそろい、さらに標準偏差で割るこ とで、各スペクトルの標準偏差を 1 にすることができる。またこの処理は、各スペクトル の確率分布を、標準正規分布に変換するという操作に相当する。標準正規分布とは、平均
12 値が0、分散が 1 となるような分布のことである。正規分布を標準正規分布に変換した例を 以下に示す。 図 2.1-1:標準正規分布の例
2.2. 分光イメージング
分光イメージングとは、画像の各位置における分光情報を取得し可視化する技術のこ とである。この技術を果実に応用することで、果実の各部分での分光情報を取得できる。 そしてその分光情報から、吸光度などの特性を求め、果実の各部位での糖度、酸度、硬 度などを求めることができる。したがって分光イメージングは、本研究で目指している 果実の糖度の二次元可視化を行うための有効な手段である。分光イメージングを行うに は、波長選択素子を用いて、特定の波長範囲の光をそれに対応するイメージセンサの画 素に入射させる必要がある。 分光画像撮影の方式について2.2.1 で述べる。また、本研究で採用するスナップショッ ト方式の撮影を実現するために必要なデバイスであるフォトニック結晶について2.2.2 で 述べる。2.2.1. 分光画像の各撮影方式
分光画像を取得するには、フィルタなどで光を特性の波長に分光させ、イメージセン サに入射させる必要がある。分光イメージングにおいては、画像のx,y 軸及び波長方向の 軸を考え、その 3 つの軸で表現される分光画像をハイパースペクトル画像と呼ぶ。以下 でハイパースペクトル画像の各撮影方式について述べる。13 (1) プッシュ・ブルーム方式 [12] 対象物のx 軸方向及び波長方向の情報を取得し、カメラまたは対象物を y 軸方向に 掃引することで対象物全体のハイパースペクトル画像を得る。y 軸方向に掃引するた めには大型の装置が必要で、掃引に時間がかかる。 (2) 可変波長フィルタ方式 [13] 透過波長を制御できる、液晶可変波長フィルタや音響光学フィルタ [14]などの素 子を用いて、撮影ごとに波長を切り替えて画像を撮影する。波長の切り替え時間があ るため、同時に複数の分光画像を取得することができない。 (3) スナップショット方式 一度の撮影で複数の波長の分光画像を取得する。場所ごとに透過特性が変わるフィ ルタを用いる。本研究では次に述べるフォトニック結晶型波長フィルタを用いた。 今回目指す糖度推定システムでは,果実の拡散反射スペクトル以外の,風による果実 の揺れや,太陽光のスペクトルの時間変化などの影響を除去する必要がある。そのため には,一回の撮影で複数の波長の分光画像を取得する必要がある。よって我々は撮影方 式としてスナップショット方式を採用した。
2.2.2. フォトニック結晶 [15]
フォトニック結晶は、屈折率の多次元周期的構造である。屈折率の周期は光の波長と ほぼ同程度である。フォトニック結晶内の光波の波数と周波数の関係(分散関係)を調べる と、電子のバンドギャップと同様に、光波が存在できない波長帯域があることが分かる。 これをフォトニックバンドギャップ(PBG: Photonic Band Gap)と呼ぶ。この PBG を用 いることで偏光や透過特性の制御などの機能を実現できる。また、結晶内に点状や線状 の欠陥を導入することで光導波路などを実現できる。 フォトニック結晶の種類には、ウッドパイル型、オパール型、自己クローニング型な どがある [16]が、量産可能なのは自己クローニング型である。これは凹凸パターンのあ る基板に、そのパターンを保持したまま多層膜を積層してフォトニック結晶を形成する 方法である。表面の凹凸パターンや膜厚を最適化することで、偏光子や波長フィルタ、 複屈折素子などを実現できる。我々はこの自己クローニング型のフォトニック結晶型波 長フィルタを用いて分光画像を取得している。 本研究では、フォトニック結晶にロングパスフィルターの機能を持たせている。フォ トニック結晶のストップバンドと、パスバンドの境界をバンドエッジと呼ぶ。このバン ドエッジがバンドギャップの長波長側にある場合、フォトニック結晶の面内格子周期の 変化に応じてバンドエッジの波長が大きくシフトする [17]。よって、面内格子周期(ピッ チ数)を制御することでロングパスフィルターのカットオフ波長を制御することができる。 また、ロングパスフィルタ―の複数の透過特性を差分することで、バンドパスフィルタ14 ーとして機能させることができる。
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第
3 章 果実の近赤外スペクトルの非接触測定
本研究で目指す最終的な製品は、外光下で糖度を非接触測定かつ二次元可視化できる 機器の開発である。そのためにはまず、離れた位置からプローブ光を照射し、同じく離 れた位置で果実からの拡散反射光を計測した場合に、従来手法であるインタラクタンス 法と同様のスペクトルが得られることを確かめる必要がある。なお、距離を離して測定 した場合にはSN 比が低下するので、拡散反射光を正しく受光できていても、スペクトル の形がわずかに変わってしまうことがあるが、スペクトルの概形が重なっていれば、SN 比を向上させることで、インタラクタンス法で測定したスペクトルと同様のスペクトル が得られると考えられる。 本章では、白桃の拡散反射スペクトルを、次の4 パターンで測定した。 1. インタラクタンス法での測定(受光部、照射部を果実に接触) 2. 照射部を果実に接触させ、受光部を非接触 3. 受光部を果実に接触させ、照射部を非接触 4. 受光部、照射部ともに果実と非接触 1 のインタラクタンス法では、表面反射光は受光されないので、拡散反射スペクトルが 正しく受光できると予想した。また、2 の場合、直接反射光は果実表面で照射プローブ内 に閉じ込められるので、拡散反射光のみ受光できると考えられる。3 の場合は、受光部が 密着しているので、直接反射光が受光部に入ることはないと考えられる。よって、1~3 の場合は拡散反射光を受光可能だと考えられる。 4 の場合には、直接反射光が受光される可能性があり、インタラクタンス法のときのス ペクトルの形が変わってしまうと考えた。そのため、照射光のスポットサイズをあらか じめ測定しておき、照射光が果実表面に当たっている部分と、受光部が検出する範囲と が重ならないように調整して測定を行った。 次に測定系について述べる。測定は外光を遮断するため、遮光筐体の中で行った。光 源としてはハロゲン光源(Ocean Optics 製, HL-2000 型)を用いた。ハロゲン光源から出射 された光は光ファイバを通ってコリメータで平行光にされ、桃に照射される。そして桃 の拡散反射光は、受光側のコリメータで受光され、光ファイバを通って分光器に入力さ れる。分光器は観測可能な波長域が700~980nm のもの(Ocean Optics 製, USB-4000 型) を用い、光ファイバはコア径 1000μm,開口数 0.39 のマルチモード光ファイバ(Thorlab 製, M35L01)を用いた。16
3.1 照射光のスポットサイズの測定
前章で述べたように,果物の糖度、硬度の情報は直接反射光ではなく、果物内部を通 った拡散反射光に多く含まれている。照射部と受光部をともに果実から離して測定する 場合に直接反射光を受光しないための方法として、照射されたスポットと、受光部が見 ている果実表面の位置が重ならないようにするという方法が挙げられる。 この方法を実現するためには,照射光及び受光部の検出範囲をレンズで絞ることが必 要となる。このときの果実に表面における照射光の直径(スポットサイズ)をあらかじめ求 めておき、測定の際照射光のスポットと受光側のスポットが重ならないようにする必要 がある。また、レンズで光を集光した際、光が確実に一点に収束し、迷光などが存在し ないことが重要である。よって今回の測定では,スポット照射をCMOS カメラで撮影し てスポットサイズを求めた。 今回光を集光するのに用いた光学系を図3.1-1 に示す。ファイバを通った光は、コリメ ータで平行光となり、平凸レンズ(Edmund Optics 製, PCX, VIS-NIR マルチコート)で一 点に集光される。スポットサイズの測定に用いたカメラは、NIR 用モノクロ CMOS カメ ラ(iDS 製, モノクロ CMOS カメラ)である。また,カメラのレンズに近赤外用レンズを用 いた。さらに、近赤外光のみを撮影するため,カメラのレンズの前面に可視カットフィ ルタを挿入した。照射光を黒アルマイト板に照射し,板に写った照射光を撮影した。次 に撮影した画像について,画素を抜き出し,輝度分布を求めた.また、同じ光学系でカ メラを動かさずに定規を撮影し、撮影した画像の画素値(pixel)と実際の長さ(mm)の関係 を求めた。また、ダークスペクトルの影響を除外するために、カメラのレンズにカバー をかぶせて画像を撮影し、元の画像から差分した。17 図3.1- 1:スポットサイズの測定系 輝度分布において,ピーク値の 1/e2のときの分布の幅を,スポットサイズとして定義 した。この定義はビーム径を求めるのに一般的に用いられる定義である。輝度分布はお おむねガウス分布に従うと予想されることから、ビーム径はそのガウス分布の幅を表し ている。撮影は中心のスポット照射のピークが、飽和しないように露光時間を調整して 行った。撮影した画像データは 16bit なので、輝度の最大値は 65536 である。また、露 光時間を何パターンか変えて撮影を行った。また、露光時間を変えることにより輝度値 は変化するが、分布の概形は変化せず、したがってビーム径も変化しないと考え、いく つか露光時間を変えて撮影を行った。
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図 3.1-2:CMOS カメラを用いて測定した画像 (ダーク差分後の画像, 露光時間 0.02ms
この画像から、縦440 ピクセルのラインの輝度分布を作成)
19 横軸が縦方向の画素値、縦軸は輝度値を表す。この分布から、スポットサイズを求め ると、100mm 非接触とした場合のスポットサイズは約 2.8mm と求められた。先に述べ たLu らによる桃の硬度推定の先行研究では、スポットサイズを 1.6mm に絞っていた。 先行研究よりもスポットサイズは大きくなったが、十分に光を集光することができたと 言える。
3.2. 桃の近赤外スペクトルの非接触測定
先行研究としては、2016 年に森下によって、ハロゲン光源を桃表面に密着させ、受光 部のみを非接触とした状態での拡散反射スペクトルの測定が行われている [18]。この研 究では測定した拡散反射スペクトルの概形がほぼ一致し、非接触での拡散反射スぺクト ル測定の可能性が示された。本研究ではこの研究を発展させ、照射部を離した場合及び 照射部と受光部を離した場合のスペクトルを測定した。 具体的な測定の手順について以下で述べる。リファレンスはテフロン板の拡散反射ス ペクトルとした。そしてテフロン板の拡散反射スペクトルの受光強度を 100 として、桃 のスペクトルを正規化した。リファレンスの取り方は、テフロン板に照射用コリメート レンズと受光用コリメートレンズを、両者の角度が90 度になるように配置し、密着させ た状態で、テフロン板の拡散反射光を測定した。また、ハロゲン光源の光をアルマイト 板で遮ってダークスペクトルを測定し、これを差分した状態で測定を行った。 次に、桃に照射用プローブ、受光用プローブを密着させ、拡散反射スペクトルの測定 を行った。照射用プローブと受光用プローブの距離は約2cm に設定した [19]。 インタラクタンス法で拡散反射スペクトルを測定したあと、照射部を密着させたまま、 受光部を平行移動させスペクトルを測定した。同様に、受光部を密着させたまま、照射 部を桃から離して測定を行った。また、照射部、受光部両方を非接触にした場合には、 二つのプローブを同距離だけ離して測定した。これは、我々が、LED 照明と受光用のカ メラを一体としたシステムを目指しているからであり、この場合、照射部と受光部は同 じ距離だけ果物から離れていることになるためである。 測定対象は白桃で、測定箇所は以下の図に示すように桃の上半分の 4 か所および下半 分の4 か所の計 8 箇所である。20 図 3.1-1:桃の拡散反射スペクトル測定位置 以上の手順で測定し、白桃の位置0 を測定して得られた生データを以下に示す。 図3.2-2:受光部のみ非接触場合の桃の拡散反射スペクトル (縦軸の強度は、テフロン板の拡散反射スペクトルの強度を 100 として正規化した値, 以下同じ)
21 図 3.2-3:照射部のみ非接触の場合の桃の拡散反射スペクトル 生データを見ると、スペクトル全体にノイズが含まれることが分かる。このうち、ス パイク状のノイズは、いくつかの決まった波長に毎回現れた。よってこのスパイク状の ノイズは、分光器内部のCCD の画素に由来する固定パターンノイズだと考えられる。ま た、スペクトルには、CCD へ入射する光子数の統計的変動に起因するショットノイズな どが含まれる。 これらのノイズについて、まずスパイクノイズをスペクトルから除去するため、メデ ィアンフィルタを用いた。メディアンフィルタは窓幅内の中央値を、その幅の中間値で 置き換える処理なので、スパイク状のノイズを除去できる。この処理を行った後のスペ クトルは以下のようになる。 図 3.2-4:メディアンフィルタ適用後のスペクトル (受光部非接触) また、高周波成分のノイズは、単純移動平均およびSG 法を用いて除去した。単純移動
22 平均における波長軸方向の窓幅は1nm 間隔とした。また、単純移動平均を行った後のス ペクトルに対してSG 法を適用した。SG 法は窓幅が大きすぎると、もとのスペクトルの 概形まで変えてしまう恐れがあるため、無制限に窓幅を大きくすることはできない。今 回はスペクトルの概形がほぼ変わらない7nm 間隔(窓幅 7)で SG 法を適用した。SG 法を 適用する前と後のスペクトルを以下に示す。 図 3.2-5:SG 法適用前のスペクトル 図 3.2-6:SG 法適用後のスペクトル (7nm 間隔で適用) 図からわかるように、ノイズが多く含まれる高周波成分が除去され、なめらかなスペ クトルになっていることが分かる。 ノイズを除去する処理は以上の通りだが、距離を変えて測定したスペクトルは、受光 強度のベースラインが異なる。また、スペクトルの傾きもばらついている。よって、ベ ースラインおよびばらつき補正のために、SNV を適用した。SNV 適用後のスペクトルを
23 以下に示す。 図 3.2-7:受光部のみ非接触の場合の拡散反射スペクトル (SNV 後) 図 3.2-8:照射部のみ非接触の場合の拡散反射スペクトル (SNV 後) 受光部のみ非接触とした場合は、スペクトルがほぼ重なった。また、照射部のみ非接 触にした場合もスペクトルはほぼ重なった。また、白桃の他の部位のスペクトルでも同 様に概形が重なったものが多かった。しかし、測定した部位によって、受光部や照射部 を接触させた場合でもスペクトルのずれが大きい場合があった。このような現象が起こ った原因として、照射光が果実にあたる位置,または受光部がスペクトルを検出する範 囲が,距離を離していったときにずれたため,別な位置の拡散反射スペクトルを受光し
24 たためだと考えられる。 また、照射部、受光部をともに非接触とした場合のスペクトルを以下に示す。 図 3.2-9:照射部、受光部非接触の場合の拡散反射スペクトル (SNV 後) 300, 400mm 離した時、インタラクタンス法で測定したスペクトルと概形が異なった。 これは照射部と受光部を両方離した場合には直接反射光を受光したためだと考えられる。 よって次にレンズで光を集光させ拡散反射光を受光する試みを行った。
3.3. 照射部、受光部非接触測定の試み
片方のプローブのみを密着させた場合のスペクトルは、700nm,850nm 付近に変曲点が あるのに対し、両方のプローブを非接触にした場合は、短波長側から長波長側に向かって 直線的に減少するスペクトルになった。このことから,照射部,受光部をともに非接触に した場合には,拡散反射スペクトルが受光できていなかったと考えられる。このような結 果となった原因として、果実表面で正反射した直接反射光が、拡散反射光のスペクトルに 混ざって受光されたためだと考えられる。よってレンズでスポットサイズを小さくし、照 射光のスポットと受光部が検出するスポットが重ならないようにして測定し、拡散反射光 を受光することを試みた。 今回使用した測定系を図に示す。照射部はファイバの光をコリメータで平行光に変換 し、平凸レンズで集光している。受光部も同様に平凸レンズを入れて集光させている。 ハロゲン光源、分光器、光ファイバは3.1,3.2 と同様のものを用いた。25 図3.3-1:照射部、受光部非接触測定の場合のスペクトル測定系 測定の手順としては、まず、照射部から光を照射し、その位置にシールを貼る。同様 に受光部からも光を照射しシールを貼る。このとき前に求めたスポットサイズから、照 射部および受光部からの光が重ならないように光の照射位置を調整する。次に、照射部 から光をシールの位置に照射し、そのままレールで照射部を平行移動させ、常にシール の位置にスポット照射が当たるように調整する。受光部に対しても同様の作業を行う。 これによって、平行移動させても照射部、受光部が見ている位置が一定になる。積算時 間は19 秒、平均回数は 1 回とした。得られた拡散反射スぺクトルに対しては、0.7nm 間 隔でメディアンフィルタを適用した後、平均化処理を行ってデータ点の間隔を1nm にし、 そのあとSG 法を 3nm 間隔で適用して高周波成分のノイズを除去した。そして最後に SG 法を適用した。これら一連の処理を行った後の拡散反射スペクトルを以下に示す。
26 図 3.3-2:照射部、受光部両非接触時の拡散反射スペクトル 得られた拡散反射スペクトルは、インタラクタンス法で測定した場合と、両方非接触 にした場合とでほぼ概形は重なった。わずかにずれが生じたのはコリメータ内で生じた 迷光によるものだと考えられる。果実表面にスポット照射した際、迷光があると、本来 のスポットの位置からずれた場所に光があたり、直接反射光が生じてしまう。その直接 反射光を受光したため、スペクトルの概形がずれたと考えられる。 次に、照射と受光のスポットを重ねた場合と、重ねていない場合とで反射スペクトル を測定し、比較した。スポット同士が重なっている場合には直接反射光、重なっていな い場合には拡散反射光を受光するはずなので、反射スペクトルの概形はスポット同士が 重なったときと重なっていないときとで大きく異なると予想した。 測定では、照射部、受光部にカメラ用レンズ(Edmund 製, MVO ダブルガウスレンズ 54690G, 焦点距離 50mm)を用いた。リファレンス測定時にテフロン板ではなく、直径 100mm、高さ 100mm のテフロンロッド(中興化成工業製 PTFE ロッド)を用いた。積算 時間は17 秒とし、平均化処理は行わなかった。りんごと照射部、受光部との距離はとも に200mm に設定した。 測定の際には、スペクトルを測定する前に、照射部と受光部の両方から光を照射して スポットの位置を確認した。そして照射部の位置を固定したまま、受光部をわずかに回 転させ、二つのスポットの間の距離を調節した。スポットの直径は4mm であった。スペ クトルは、完全に重ねた場合(0mm)と、7.5mm から 17.5mm まで、2.5mm 間隔で測定 した場合とで測定した。得られたスペクトルを以下に示す。
27 図 3.3-3:スポット同士を重ねた場合と、離した場合のスペクトル (積算時間 17 秒, 平均回数 1 回, スポット直径 4mm) 得られた生データに対して、窓幅0.7nm でメディアンフィルタを適用後、1nm 間隔に 平均化を行い、さらに 7nm 間隔で SG 法を適用した。最後に SNV を適用してベースラ イン補正を行うと、以下の図のようなグラフとなった。 図 3.3-4:スポット同士を重ねた場合と、離した場合のスペクトル(正規化後) 得られたスペクトルの概形は、スポット同士が完全に重なった場合と重なっていない 場合とで全く異なるものになった。このことから、スポット同士が重なる場合には直接 反射光、重ならない場合には拡散反射光を受光したと考えられる。直接反射光のスペク
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第
4 章 非接触測定で得られた近赤外スペクト
ルによる糖度推定の試み
4.1. 非接触で得られたスペクトルの糖度推定
我々が糖度推定のターゲットにしている桃の等級の例としては、「天(糖度 13.5 度以上 +規定形状)」、「○特秀(12 度以上+規定形状)」、「○秀(11 度以上+規定形状)」, 「秀(10 度以上)」(福島県伊達みらい選果場)といったものがある。よって収穫後の果実を正確に ランク分けするためには、糖度推定の誤差を1%以下に収める必要がある。実際に選果場 では、糖度検査機器を用いて1%程度の誤差で推定が行われている。一方、収穫適期を判 断する場合には、選果場で使用される機器よりも若干低い精度である2~3%でも許容され ると考えられる。正確な推定誤差の許容値については今後現場の要望を聞いて決定して いくが、現時点では、我々の目指す屋外での糖度推定システムにおいて±2~3%の誤差内 に収めることが必要と考える。 プローブを非接触として測定したスペクトルから、果実の糖度を正確に推定するには、 まずインタラクタンス法で測定したスペクトルと、非接触で測定したスペクトルの概形 が重なる必要がある。非接触でスペクトルを測定した際に、インタラクタンス法で測定 したときの情報と同じ情報が含まれていれば、SN 比を向上させることで、インタラクタ ンス法で測定したスペクトルと重なるはずである。もし正確に拡散反射スペクトルが測 定できているのであれば、推定精度の低下は、スペクトルに重なったノイズによって生 じる。よって、SN 比と推定精度の関係を求めることができれば、推定誤差を許容範囲内 に抑えるのに必要なSN 比を見積もることができる。 今回、前章で述べた桃の拡散反射スペクトル、およびインタラクタンス法で新たに測 定した黄桃のスペクトルを用いて、糖度推定を行い、糖度推定の精度を調べた。検量線 として、2016 年に森下らによって作成された白桃 43 個分の検量線を用いた。検量線作 成の手順は以下の通りである [20]。 今回糖度推定に用いた波長は、ステップワイズ法 [21]という、重回帰分析の説明変量 として最適な使用波長を求める方法を用いて求めた。この方法は、ステップワイズ法で 求めた使用波長、及び重回帰分析を用いて求めた重回帰係数を以下の表に示す。まず、 白桃の拡散反射スぺクトルのうち、受光部のみおよび照射部のみ接触させた場合に得ら れたスペクトルに対して、糖度推定を行った。30 表 4-1:糖度推定に用いた重回帰係数と使用波長 図 4.2-1:重回帰分析の使用波長 糖度推定の前に、第3 章で、拡散反射スペクトルに対して行ったのと同様の前処理で、 ノイズ除去及びベースライン補正を行った。具体的には、まず0.7nm 間隔(窓幅 7)でメデ ィアンフィルタを適用し、次にスペクトル全体を1nm 間隔で平均化した。その後、さら に15nm 間隔(窓幅 15)で SG 法を適用した。最後に SNV を適用して、ベースライン補正 を行った。一連の処理を行ったスペクトルに対して重回帰分析を行い、得られた糖度を 以下の表に示す。糖度はBrix 糖度として表している。
31 表 4-2:受光部非接触の場合のスペクトルから推定した糖度 この結果から糖度のばらつきは非常に大きいことが分かる。図をみると、受光部非接 触の場合は、吸光度の差スペクトルにほぼ差は見られない。よって、グラフ上のわずか な差でも、糖度推定に大きな影響を与えることが分かった。
4.2. インタラクタンス法によるスペクトルの連続測定
ここで、受光部非接触の場合の糖度のずれが大きいことが分かったので、そもそもイ ンタラクタンス法で測定した場合に正しく糖度が推定できているのかという問題がある ことが分かった。そこで、インタラクタンス法で拡散反射スペクトルを30 回連続で測定 し、得られたスペクトルに対して糖度推定を行って、どの程度糖度がずれるのか調べた。 当初の予想としては、インタラクタンス法では果実に完全にプローブを密着させている ので、ノイズは極めて少なく、糖度をほぼ正確に推定できると予想した。 測定対象として黄桃を用いた。積算時間を7200ms とし、30 回連続でスペクトルを測 定した。平均化処理は行っていない。また、前処理としては、メディアンフィルタを7nm 間隔で適用した後、1nm 間隔で平均化し、15nm 間隔で SG 法を適用した。30 回連続で 測定したスペクトルを図4.2-2 に示す。32 図 4.2-2:インタラクタンス法により 30 回連続で測定したスペクトル (積算時間 7200ms, 平均化処理なし) 図 4.2-2 のインタラクタンス法で測定したスペクトルは、非接触測定の場合(図 4.2-1) よりも一致していることが分かる。このスペクトルについて、表4-2 に示した波長での吸 光度と重回帰係数を用いて糖度推定を行った結果が図4.2-3 である。 図 4.2-3:推定糖度のばらつき 15nm の間隔で SG 法を適用した場合でも、糖度のばらつきは最大で平均値の±5%と なった。現時点では、実用化する際に求められる推定糖度の精度は約2~3%と考えている ので、そのばらつきの範囲内に抑えるには、光源の強度を上げるか、または積算処理な どを行うことで、SN 比を改善することが必要だということが分かった。平均値の±5% 程度にばらついている糖度を、±2~3%に抑えるには、現在使用しているハロゲン光源の 約 2~2.5 倍の強度の光源を用いるか、それに相当する積算処理をかける必要があると見 積もることができる。このように、SN 比と推定した糖度の誤差との関係を、実測したス
33 ペクトルから求めることができる。 次に、具体的にどの波長帯でのスペクトルのずれが糖度推定の誤差に影響しているの か調べるため、差スペクトルを作成した。そのグラフを以下の図に示す。 図4.2-4:平均値との差スペクトル(インタラクタンス法, 30 回測定) ( = , = , = , = , = , = ) この図より、長波長側でのスペクトルのずれが他の波長帯に比べて大きいことが分か った。この長波長側には、3 つの重回帰分析の使用波長(936nm, 932nm, 918nm)があり、 それぞれの重回帰係数はそれぞれ-28.9, -104.9, 87.7 である。これらの重回帰係数は他の 使用波長の係数よりも比較的大きい値なので、糖度推定に与える影響が大きい。このこ とから長波長側のスペクトルのずれが、糖度推定のずれに大きく影響を与えていること が分かった。よって、糖度推定の誤差を小さくするには、長波長側の使用波長を少なく して重回帰分析を行うなどの工夫も必要であると考えられる。
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第
5 章 LED 光源の試作
5.1. 赤外線パワーLED の電流-電圧特性
我々の目指す糖度推定機器は可搬型であるため、持ち運びのできないハロゲン光源で はなく、バッテリー駆動可能なLED を用いる。また、外光の強度よりも強い高輝度 LED である必要がある。本研究では、これらの要求を満たす近赤外高輝度LED を用いた。用 いた素子は、中心波長 940nm の LED(OptoSupply 製, OSI5XNE3E1E)及び 850nm の LED(OptoSupply 製, OSI3XNE3E1E)である。二つの素子は共に最大絶対定格電力が 2W, 最大絶対定格電流が 1A である。 LED の素子は LED 用の放熱基板(OptoSupply 製, OSMCPCB8060B) に 実 装 し た 。 放 熱 基 板 と LED 素 子 の 間 に は 、 放 熱 用 グ リ ス (SHENZHEN HALNZIYE ELECTRONIC COMPANY 製, HY-910)を塗った。LED の外 観を以下に示す。 図5.1-1:集光レンズを装着した近赤外高輝度 LED LED の基本構造は、P 型半導体と N 型半導体が接合された PN 接合である。LED に 順方向の電圧をかけると、再結合が起こり、発生したエネルギーが光として放出される。 LED には定格電力および定格電圧、電流があり、定格以上の電流が流れると損壊してし まう。よって、LED を安定的に使用するためには、制限抵抗を回路に入れ、LED に流れ る電流値を制限する必要がある。この制限抵抗の値を求めるために、LED の電流‐電圧 特性を測定する必要がある。今回実験に用いるパワーLED の定格電力は 2W,定格電流 は1A なのでこれらの定格を超えないように電流、電圧値を求め、そこから制限抵抗値を 算出する。 LED の電流-電圧特性は以下の測定系を用いて測定した。固定抵抗の値を変えながら,35 固定抵抗およびLED に印加される電圧をテスターで測定し、固定抵抗の抵抗値と電圧か らLED を流れる電流を求めた。 図5.1-2:LED 発光回路 中心波長940nm, 850nm の LED の電流‐電圧特性は以下のようになった。これより、 両方のLED について、最大定格電流を流すために必要な抵抗値は約 3.3Ωと求められた。 図5.1-3:中心波長 940nm の LED の電流-電圧特性 (2 つの素子で測定)
36 図5.1-4:中心波長 850nm の LED の電流-電圧特性 (3 つの素子で測定)
5.2. 赤外線パワーLED とハロゲン光源の強度比較
次に、赤外線パワーLED と、現在室内でのスペクトル測定に用いているハロゲン光源 の強度を比較し、LED が十分な光強度を有しているかどうか調べた。 スペクトルの測定は以下の図のような測定系を用いて行った。 図 5.2-1:光源のスペクトルの測定系37 ハロゲン光源は第 3 章で拡散反射スペクトルを測定したときのものと同じもの(Ocean Optics 製,HL-2000 型)を用いた。ハロゲン光源及び LED の光をファイバに入射させ、そ の光を透過率 0.01%の反射型 ND フィルタ(S75-15-0.01)に通した。ND フィルタは、光 強度を一定量減衰させるフィルタである。今回は表面の光学薄膜で光を反射させる方式 の反射型ND フィルタを用いた。ND フィルタはキュベットホルダーの中に挿入して使用 した。ND フィルタを透過して減衰された光は分光器に入力させた。また、ハロゲン光源 は直接ファイバを接続して光を入射させた。一方LED は、集光用のレンズを入れて光を 平行光にし、その光をコリメータでファイバに入射させた。測定の結果得られた各光源 のスペクトルを図に示す。 図5.2-1:ハロゲン光源と赤外線パワーLED の強度比較 (ハロゲン光源の出力は 7W, LED は電流約 900mA で駆動) 図からわかるように、中心波長850nm の LED の強度はハロゲン光源よりも大きく、 逆に 940nm の LED の強度はハロゲン光源よりも小さかった。よって外光下での測定で は、940nm の LED は、複数の素子の LED を直列に接続するなどして高強度化する必要 がある。 第4 章 4.2 で、インタラクタンス法により連続でスペクトルを測定して得られた糖度の ばらつきは、平均値に対して±5%程度であった。これを±2~3%程度に抑えるには、約 2~2.5 倍の光源強度か、それに相当するフレーム積算処理が必要である。いま、LED の 強度をハロゲン光源の強度の2~2.5 倍程度にするには、多灯の LED を用いればよい。ま た、LED をパルス駆動させる場合、発光時間が極めて短いので CW の時の倍以上の電流 を流すことが可能である。よってLED 照明により、許容されるばらつきの範囲内で糖度 を推定することは十分可能だと考えられる。
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5.3. ヒートシンクの効果と LED の強度の安定性
LED を発光させたとき、光に変換されなかったエネルギーは熱となって素子内に蓄積 される。この熱によって発光に寄与しない再結合が多く起こり、光強度が低下する。ま た、温度上昇によって半導体の禁制帯幅が変化するので、中心波長が変化してしまう。 電力の大きいパワーLED の場合は特に熱による影響が大きい。よって LED を安定的に 発光させるためには、ヒートシンクなどを用いて放熱しなければならない。今回はLED にヒートシンクを取り付けて発光させ,LED の強度が安定するかどうか調べた。ヒート シンクはアルミ製のものを用いた。測定系は 5.2 の測定系と同じである.中心波長 940nm,850nm の二種類の LED について,スペクトルの時間変化を測定した。ヒートシ ンクを実装していないLED は 4 分間、実装している LED は 10 分間、スペクトルを 30 秒おきに測定した。 図 2.3-1:実装した赤外線パワーLED(ヒートシンクに固定後)39 図 5.3-2: LED の強度の時間変化(ヒートシンクなしの場合) 図5.3-3:LED の強度の時間変化(ヒートシンクありの場合) 940nm,850nm の両方とも,ヒートシンクを取り付けていない場合は光強度が時間とと もに減衰した。また、中心波長も時間が経過するにつれて長波長側にシフトした。 一方、LED をヒートシンクに取り付けた場合は,強度がほぼ一定に保たれた。また、 中心波長のシフトもほとんど起こらなかった。この結果から,ヒートシンクによって適 切に放熱が行われ,LED の強度が安定したと推測される。
40
第
6 章 結論
本論文では、外光下で糖度を非接触かつ二次元可視化する糖度推定機器の開発を目的 として、その実現に必要な要素技術の確立に取り組んだ。目指す機器に求められる要求 として、今回検討したのは以下の二点である (1) 照射、受光プローブを非接触にしたときの、果実の糖度推定の可能性 (2) 外光下での糖度推定に用いる LED スポット照明の有用性 (1)について、非接触測定で桃の拡散反射スペクトルを測定し、インタラクタンス法で 得られたスペクトルを基準としてスペクトルが重なるかどうか調べた。また、得られた スペクトルから重回帰分析を用いて糖度推定を行い、SN 比の低下が糖度推定にどの程度 影響を与えるのか調べた。 その結果、非接触測定については、受光部及び照射部のいずれかのプローブのみ桃に 密着させた場合にインタラクタンス法とスペクトルの概形が重なった。しかし、照射部 と受光部を両方非接触とした場合は重ならなかった。そこで平凸レンズでコリメータか ら出射した平行光を集光し、再度スペクトルを測定した。その結果、集光する前よりも スペクトルの概形はインタラクタンス法で測定したスペクトルに近づいたが、完全には 重ならなかった。これは、光学系で発生した迷光が果実表面にあたって直接反射し、受 光されたためだと考えられる。よって、今後、迷光が発生しない有限光学系を用いてス ペクトルを測定することで、照射部、受光部両方非接触とした場合でもインタラクタン ス法によるものと同様のスペクトルが得られると考えられる。 また、糖度推定については、スペクトルでみると違いがないように見えても、糖度を 実際に推定すると大きな違いがあった。インタラクタンス法で測定したスペクトルでは 推定した糖度のばらつきが±5%以内に収まらなかった。製品に求められる糖度の推定精 度については、±2~3%と考えているため、糖度の正確な推定には SN 比の向上が必要 だということが分かった。 (2)について、屋外での果実の分光画像撮影に備えて、LED 照明の電流-電圧特性、強度 及びヒートシンクの効果を調査した。電流-電圧特性から、使用にあたって必要な制限抵 抗の値を求めた。また、ヒートシンクが光強度の安定に有用であることが分かった。さ らに、CW で点灯させた LED の光強度をハロゲン光源の強度と比較すると、1 個の素子 だけでは強度が不足しているものの、複数の素子を配列したり、パルス点灯させること によって強度を2~2.5 倍にまで上げることは可能だと分かった。41
謝辞
本研究を進めるにあたり、熱心にご指導,ご助言いただいた山田博仁教授に深く感謝い たします。 また、本研究の指導教員である大寺康夫准教授からは、研究内容への助言や、論文、 スライドの添削など、貴重な時間を割いて多くのご指導をいただきました。深く感謝い たします。 北智洋准教授からは、研究を進めるうえでの多くの有益なアドバイスをいただきまし た。深く感謝いたします。 測定試料を提供くださいました福島県桑折町・平井農園の方々に感謝申しあげます。 八鍬信康氏、増子航氏、佐藤光氏、滝田真央氏には研究生活全般にわたり大変お世話 になりました。心より感謝申し上げます。 関東大樹氏、武井翔太郎氏、千葉湧人氏、鄢何傑氏、高原氏、劉呈艶氏とは、研究室 の同期として切磋琢磨しあい、多くの励ましをいただきました。心から感謝申し上げま す。 同じ研究グループである于济瑶氏、森下友貴氏、大町拓海氏からは、本研究を進める にあたり多くの有益な助言をいただき、研究の進め方やスライドの作成等まで親身にな ってご指導いただきました。心より感謝申し上げます。 最後に、これまで大学生活を支えてくれた家族に心から感謝いたします。 以上のように、本研究は多くの方々のご指導、ご協力のもとに行われました。本論文 を結ぶにあたり諸氏に改めて厚く御礼申し上げます。42
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43 (1980). [20] 森下友貴, 浅野孝介, 大町拓海, 大寺康夫, 山田博仁, 「果物の近赤外分光計測にお ける数値シミュレーション」, 電子情報通信学会エレクトロニクスシミュレーション 研究会 EST2016-115, 2017 年 1 月 19 日, 伊勢市/電子情報通信学会技術報告 116(387) 235-239 (2017). [21] 石村貞夫,「すぐわかる多変量解析」, 東京図書, 1992.
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外部発表
[1] Y. Morishita, T. Omachi, K .Asano, Y .Ohtera and H .Yamada, 「 Study on non-destructive measurement of sugar content of peach fruit utilizing photonic crystal-type NIR spectroscopic camera」, Japan, China and Korea Workshop 2016, 16-11, 2016 年 11 月 1 日, 仙台市 [2] 大町拓海, 森下友貴, 浅野孝介, 大寺康夫, 山田博仁, 「フォトニック結晶搭載型マルチ スペクトルカメラによる農産物の品質計測の試み」, OPE2016-99, 2016 年 11 月 24 日, 仙台市/電子情報通信学会技術報告 116(325), 7-10 (2016). [3] 森下友貴, 浅野孝介, 大町拓海, 大寺康夫, 山田博仁, 果物の近赤外分光計測における 数値シミュレーション,” 電子情報通信学会エレクトロニクスシミュレーション研究会 EST2016-115, 2017 年 1 月 19 日, 伊勢市/電子情報通信学会技術報告 116(387) 235-239 (2017).