感情に関する学説には,喜び,恐れ,驚き,嫌悪, 怒り,悲しみ等いくつかの基本感情が存在するという 基本感情説と,覚醒次元,快次元等の次元上の一つの ベクトルとして表せるという次元説があり(濱, 2001),それぞれの説に基づいて感情の状態を測定す るための尺度が複数開発されている。基本感情説に基 づく尺度には,Nowlis Mood Adjective Checklist (MACL: Nowlis, 1965),STAI (State-Trait Anxiety Scale:
Spielberger, Gorsuch, & Lushene, 1970; 肥田野・福原・岩 脇・ 曽 我・Spielberger, 2000),POMS(Profile of Mood States: McNair, Lorr, & Droppleman, 1971; 横山・荒記・ 川上・竹下, 1990),多面的感情状態尺度(寺崎・岸本・ 古賀, 1992)等がある。次元説に基づく尺度には, Thayer(1967, 1978a)の AD-ACL(Activation-Deactivation Adjective Check List),その日本語版の GACL(General Arousal Checklist: 畑山・Antonides・松岡・丸山, 1994), Matthews, Jones, & Chamberlain(1990)の UWIST 気分 形容詞チェックリスト(UMACL),その日本語版の JUMACL(白澤・石田・箱田・原口, 1999),Watson, Clark, & Tellegen (1988)の PANAS(Positive and Negative Affect Schedule),日本語版 PANAS(佐藤・安田, 2001) 等がある。 当該尺度がいずれの説に基づくかという観点とは別 に,参加者が回答する時点の心理状態と,過去一定期 間の心理状態のいずれを測定するのか,という点も考
感情・覚醒チェックリストの作成と
信頼性・妥当性の検討
1
織田 弥生
2 東邦大学髙野 ルリ子
株式会社 資生堂阿部 恒之
東北大学菊地 賢一
東邦大学 Development of the Emotion and Arousal Checklist (EACL)Yayoi Oda (Toho University), Ruriko Takano (Shiseido Co., Ltd.), Tsuneyuki Abe (Tohoku University), and Kenichi Kikuchi (Toho University)
We developed the 33-item Emotion and Arousal Checklist (EACL), which consisted of five subscales to assess emotions (Fear, Anger, Sadness, Disgust, and Happiness) and four subscales to assess arousal (Energetic arousal +, Energetic arousal −, Tense arousal +, and Tense arousal −). This checklist was developed to assess psychological state, both at a given moment and during the past week. In Study 1, confirmatory factor analyses identified nine subscales, whose internal consistency was indicated by their reliability. In Study 2, the EACL’s validity was demonstrated by its correlation with the State-Trait Anxiety Inventory, Multiple Mood Scale, General Arousal Checklist, Japanese UWIST Mood Adjective Checklist, and Profile of Mood States. In Study 3, changes caused by tasks that involved either reading emotion-inducing articles or performing a calculation indicated the validity of the EACL for measuring psychological state at a given moment. Further, the test-retest reliability of the EACL for assessing psychological state during the past week was confirmed. These studies confirmed the reliability and the validity of the EACL. Key words: emotion, arousal, checklist, reliability, validity. The Japanese Journal of Psychology
2015, Vol. 85, No. 6, pp. 579–589
J-STAGE Advanced published date: January 15, 2015, doi.org/10.4992/jjpsy.85.13231
Correspondence concerning this article should be sent to: Yayoi Oda, Department of Information Science, Toho University, Miyama, Funabashi 274-8510, Japan (e-mail: [email protected]) 1 本研究の一部は,日本心理学会第 60 回,72 回,75 回,76 回大会で発表された。本研究の一部は旧通商産業省・工業技術 院による産業科学技術研究開発プロジェクトの“人間感覚計測 応用技術”の補助を受けた。 2 研究に貴重なご助言を頂きました,矢冨 直美先生に感謝致 します。
慮する必要がある。本論文では,回答している時点の 心理状態を短期的心理状態,一定期間の心理状態を長 期的心理状態と呼ぶ。上記の尺度をこの観点から分類 す る と,STAI の 状 態 不 安, 多 面 的 感 情 状 態 尺 度, GACL,JUMACL,日本語版 PANAS は短期的心理状 態を測定する尺度,POMS は長期的心理状態を測定す る尺度にあたる。 以上のように多様な尺度が作成されているが,既存 の尺度には解決すべきいくつかの問題点がある。一つ 目は,基本感情説に関する日本語の尺度は,STAI の ように単一の感情のみを扱っていたり,POMS や多面 的感情状態尺度のように基本感情と覚醒が整理されず に同尺度内に混在しているために,基本感情を適切に 捉える尺度が存在しなかった点である。 二つ目は,基本感情と覚醒の両方の測定に対応でき る尺度が存在しない点である。基本感情説と次元説は 異なる説として知見が積み重ねられてきたが,近年こ れらの理論を統合した検討がみられることから,感情 を基本感情説と次元説の両面から検討することの重要 性 が 指 摘 さ れ て い る(Mikels, Fredrickson, Larkin, Lindberg, Maglio, & Reuter-Lorenz, 2005)。例えばエネ ルギー覚醒と緊張覚醒は交感神経系の指標と正の相関 が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る が(Matthews et al., 1990),基本感情についても自律神経系の反応特異性 が 報 告 さ れ て い る(Stephens, Christie, & Friedman, 2010)。生理指標と同時に基本感情と覚醒を区別しな がらその両方を測定することにより,生理指標と基本 感情・覚醒の関係を検討可能であると考えられる。ま た感情誘導に広く用いられている写真刺激,IAPS (International Affective Picture System: Lang, Bradley, & Cuthbert, 2008)は覚醒度・快不快の次元の他,基本感 情 に つ い て も 標 準 化 さ れ て お り(Libkuman, Otani, Kern, Viger, & Novak, 2007),基本感情説と次元説の両 面からの検討に活用可能である。しかし海外で作成さ れた感情誘導刺激に対する日本人の反応は異なる場合 があり(野口・佐藤・吉川, 2005),実験操作の確認 のために心理評定を求めるのが望ましい。その際,基 本感情と覚醒を評定するには既存の尺度を併用するこ とになるが,参加者は形式が異なる多くの項目(例え ば多面的感情状態尺度短縮版と JUMACL の併用で 60 項目)に回答しなければならず,特に繰り返し測定で は負担が大きいと考えられる。 三つ目は短期的心理状態・長期的心理状態の両方の 測定に対応しうる尺度がほとんどない点である。スト レスには一過性ストレスと慢性ストレスがあり,それ ぞれ短期的心理状態尺度と長期的心理状態尺度を用い るのが適切であると考えられるが,一過性ストレスと 慢性ストレスが心身に与える影響を比較したい場合, 両方に対応しうる尺度がないため,現状では直接的な 比較は行えない。日本語版 PANAS は現在の気分と 1 ヵ 月の頻度の因子分析の結果,両者ともポジティブ情動, ネガティブ情動の因子を確認しているが,1 ヵ月の頻 度については再検査信頼性や妥当性の検討がなされて いない。1 週間の心理状態を測定する POMS を現在の 心理状態の測定に用いる場合もあるが,現在の心理状 態として回答するには困難な項目も含まれており,短 期的心理状態の測定に適切とはいえないであろう。 以上の問題点を解決するため,本論文では可能な限 り少数の項目で基本感情・覚醒の両者を測定でき,目 的に応じて短期的・長期的心理状態のどちらも同項目 で測定可能な尺度の作成を目的とする。基本感情の種 類と数については,研究者間で一致を見ていない(濱, 2001; Ortony & Turner, 1990)。 濱(2001) に よ れ ば, 多くの研究では喜び,恐れ,驚き,嫌悪,怒り,悲し みの 6 種が基本感情とされる。しかし驚きについては, きわめて一過的な感情であり他の基本情動とは異なる (Izard, 1991 荘厳監訳),様々な感情の一側面であり, 基本感情のいずれかに移行する(Oatley & Johnson-Laird, 1987)など,他の感情と異質なものであるとい う指摘がある。本研究では短期的心理状態と長期的心 理状態の測定を目的とすることから,他の感情とは質 的に異なり,かつ持続性がないと考えられる驚きを除 き,恐怖(Fear),怒り(Anger),悲しみ(Sadness), 嫌悪(Disgust),喜び(Happiness)の五つの基本感情 を仮定する。表記は Oatley & Johnson-Laird(1987)に 準拠する。また覚醒に関しては高覚醒―低覚醒の 1 次 元と捉える考え方もあるが,本尺度ではより詳細に捉 え る た め, 覚 醒 を 2 次 元 に 分 け て 捉 え た Thayer (1978b),Matthews et al. (1990),白澤他(1999)にな らい,エネルギー覚醒と緊張覚醒の二つを仮定し,そ れぞれプラス方向(高覚醒)とマイナス方向(低覚醒) を考えることとする。Russell(1980)は快―不快と覚 醒―眠気の 2 次元上に基本感情を布置した感情の円環 モデルにより両者の関係を示しているが,エネルギー 覚醒と緊張覚醒の 2 次元は Russell の快―不快と覚醒― 恐怖 怒り 嫌悪 悲しみ 喜び 緊張覚醒+ 覚醒 眠気 快 不快 エネルギー覚醒+ エネルギー覚醒− 緊張覚醒− Figure 1. Russell の円環モデルと,緊張覚醒・エネルギー 覚醒および基本感情の関係(Russell & Barrett (1999) を参考 に作成)
眠気の 2 次元と 45 度傾いていると考えられている。 Russell の円環モデルと,エネルギー覚醒・緊張覚醒, および本研究で扱う基本感情の関係を整理したものを Figure 1 に示す。 まず研究 1 では,尺度の作成と信頼性の検討を行う。 研究 2 では,既存の尺度との相関より,妥当性の検討 を行う。研究 3 では,課題負荷に伴う心理状態の変化 による短期的心理状態尺度としての妥当性の検討と, 長期的心理状態尺度としての再検査信頼性を検討す る。 研 究 1 研究 1 では,可能な限り少数の項目で基本感情・覚 醒の両者を測定でき,目的に応じて短期的・長期的心 理状態のどちらも同項目で測定可能な尺度を作成す る。 方 法 参加者 短期的心理状態には大学生 325 名(男性 134 名,女性 188 名,不明 3 名,M = 19.77,SD = 1.21), 長期的心理状態には大学生 343 名(男性 199 名,女性 129 名,不明 15 名,M = 20.32,SD = 1.37)が参加した。 参加者の内 109 名は同一であったが,3 週間の間隔を あけて別の日程で実施した。 手続き まず質問項目の作成を行うため,既存の尺 度や分類語彙表(国立国語研究所, 1983)等から用語 を収集し,難解な用語,態度・行動・性格・評価と思 われる用語,複雑な感情と思われる用語は除外した。 平易な言葉で内的状態を直接表現している用語を選ぶ ことを心がけ,仮定した基本感情・覚醒を網羅するよ うに 45 の用語を選択した。この 45 語について予備調 査を実施した。企業の就労者 82 名に対して最近スト レスだと感じた具体的な出来事を想起し,その時の気 持ちを“0: 全く感じない”─“3: 非常に感じる”の 4 件法で回答するよう求めた。基本感情・覚醒,それぞ れの用語について因子分析を行い,因子負荷量と語の 多様性を考慮して感情語 20 語,覚醒語 13 語,合計 33 語を選定した。この 33 語を用いて調査を実施した。 短期的心理状態,長期的心理状態とも授業時に配布回 収を行った。33 の用語をランダムに配した質問紙(語 順は 3 種類準備)を用い,短期的心理状態については, “あなたの今のお気持ちについてお尋ねします。以下 に示したような言葉は,今のあなたの気持ちの状態に どれくらい当てはまりますか? 0: 全く感じない─ 3: 非常に感じるとして,当てはまる程度の数字に○をつ けてください”と教示し,4 件法で回答を求めた(1 と 2 には凡例を付さなかった)。長期的心理状態につ いては,“あなたのここ 1 週間のお気持ちについてお 尋ねします。以下に示したような言葉は,ここ 1 週間 のあなたの気持ちの状態にどれくらい当てはまります か? 0: 全くあてはまらない─ 3: 非常にあてはまると して,当てはまる程度の数字に○をつけてください” と教示し,4 件法で回答を求めた(1 と 2 には凡例を 付さなかった)。 解析 感情語と覚醒語に対して,それぞれ因子間相 関を仮定した確認的因子分析を行った(Amos 5 使用)。 仮説に従い,感情語については恐怖,怒り,悲しみ, 嫌悪,喜びの 5 因子を,覚醒語についてはエネルギー 覚醒+,エネルギー覚醒-,緊張覚醒+,緊張覚醒- の 4 因子を仮定した。潜在変数の分散を 1 に固定し, 母数の推定には最尤法を用いた。 結果と考察 感情語の短期的心理状態・長期的心理状態の確認的 因子分析の結果を Table 1 に,因子間相関を Table 2 に 示した3。適合度指標の値は,短期的心理状態が χ2 (160) = 465.071 (p < .01),GFI = .878,AGFI = .839,CFI = .911,RMSEA = .077, 長 期 的 心 理 状 態 が χ2 (160) = 363.371 (p < .01),GFI = .908,AGFI = .879,CFI = .941,RMSEA = .061 であった。α係数はどの尺度も .7 をこえていた。 覚醒語の短期的心理状態・長期的心理状態の確認的 因子分析の結果を Table 3 に,因子間相関を Table 4 に 示した4。適合度指標の値は,短期的心理状態が χ2(59) = 139.047 (p < .01),GFI = .940,AGFI = .907,CFI = .941,RMSEA = .065, 長 期 的 心 理 状 態 が χ2 (59) = 151.583 (p < .01),GFI = .938,AGFI = .904,CFI = .936,RMSEA = .068 であった。α係数は長期的心理状 態の緊張覚醒+(α = .688),を除いて .7 をこえていた。 感情語と覚醒語の尺度得点(該当項目の平均値)の 相関係数を Table 5 に示した。Figure 1 と比較すると, 悲しみ,嫌悪,喜びと覚醒の間には概ね Russell の円 環モデルと類似の関係がみられたが,恐怖,怒りは円 環モデルと比較してエネルギー覚醒がマイナス方向に 大きい傾向にあった。この結果のみから断言はできな いが,状況や文化・言語等によっては円環モデルと合 致しない場合もあると考えられる。 以上の結果から短期的心理状態,長期的心理状態と も確認的因子分析の適合度指標の値は充分に高いと判 断し,両者が同じ因子構造であることを確認できたと 考える。また各尺度のα係数は長期的心理状態の緊張 覚醒+でやや低い値を示したが,それ以外の尺度は全 3 因子 5 の因子名については“快”も検討したが,一般的に 基本感情説では“喜び”が用いられることから,次元説との混 乱を避け,本研究でも“喜び”を採用した。 4 “落ち着いた”の否定表現である“落ち着かない”を緊張覚 醒+に採用したのは,語の選定にあたり内的状態をできるだけ 直接表現している用語を選ぶことを心がけた結果である。否定 表現を用いるのはあまり適切ではないかもしれないが,信頼性・ 妥当性の検討結果から,使用に耐えるものであると考えている。
て .7 をこえており,尺度の信頼性も確認できたと考 える。この結果から,比較的少数の項目で基本感情・ 覚醒の両者を測定でき,教示の変更により短期的・長 期的心理状態のどちらも同じ項目で測定可能な尺度を 作成できたと考える。本尺度を感情・覚醒チェックリ スト(Emotion and Arousal Checklist: EACL)と命名し, 以降は EACL と表記する。 研 究 2 研究 2 では,研究 1 において作成した EACL と既 存の尺度との同時測定により,EACL の妥当性の検討 を行う。 Table 1 感情語の確認的因子分析の結果 項目 因子負荷量(標準化推定値) 短期的心理状態(n = 325) 長期的心理状態(n = 343) 因子 1: 恐怖 (α = .838) (α = .800) おびえている .84 .71 不安な .66 .65 びくびくしている .84 .78 こわい .80 .71 因子 2: 怒り (α = .863) (α = .875) 腹がたっている .79 .81 いらいらしている .82 .80 不機嫌な .78 .83 気が立っている .76 .75 因子 3: 悲しみ (α = .785) (α = .793) 落ち込んでいる .74 .76 気が滅入った .59 .69 ふさいでいる .75 .76 悲しい .73 .62 因子 4: 嫌悪 (α = .850) (α = .836) 不快な .84 .81 嫌悪感がある .74 .72 嫌な .80 .78 うんざりした .69 .71 因子 5: 喜び (α = .781) (α = .823) 楽しい .64 .78 さわやかな .74 .67 快い .73 .76 満ち足りた .63 .73 Table 2 感情語の因子間相関 因子 1: 恐怖 因子 2: 怒り 因子 3: 悲しみ 因子 4: 嫌悪 因子 5: 喜び 因子 1: 恐怖 .55 .66 .62 –.05 因子 2: 怒り .50 .78 .86 –.17 因子 3: 悲しみ .70 .71 .80 –.19 因子 4: 嫌悪 .62 .88 .88 –.31 因子 5: 喜び –.24 –.16 –.46 –.29 注) 右上 : 短期的心理状態,左下 : 長期的心理状態。
方 法 使用質問紙 研究 1 で作成した EACL と,以下の 質問紙を用いた。現在の心理状態を測定する質問紙と して,(a) 新版 STAI 検査用紙(実務教育出版)の状 態不安 20 項目,(b) 多面的感情状態尺度短縮版(寺崎・ 古賀・岸本,1991)の 40 項目・8 尺度(抑鬱・不安, 敵意,倦怠,活動的快,非活動的快,親和,集中,驚 愕),(c) GACL(畑山他,1994)の 20 項目・4 尺度(GA: 全般的活性,DS: 脱活性―睡眠,HA: 高活性,GD: 全 般的脱活性),(d) JUMACL(トーヨーフィジカル) の 20 項目・2 尺度(TA: 緊張覚醒度,EA: エネルギー 覚醒度)の 4 種を用いた。過去 1 週間の心理状態を測 定する質問紙として,(e) POMS 短縮版(金子書房) Table 3 覚醒語の確認的因子分析の結果 項目 因子負荷量(標準化推定値) 短期的心理状態(n = 325) 長期的心理状態(n = 343) 因子 1: エネルギー覚醒+ (α = .764) (α = .791) 気力に満ちた .61 .75 活動的な .76 .71 機敏な .63 .48 エネルギッシュな .80 .83 因子 2: エネルギー覚醒- (α = .816) (α = .794) 無気力な .79 .79 気分ののらない .75 .75 生気がない .78 .71 因子 3: 緊張覚醒+ (α = .709) (α = .688) 緊張した .58 .58 落ち着かない .73 .68 気が休まらない .70 .70 因子 4: 緊張覚醒- (α = .734) (α = .763) ゆったりした .65 .64 落ち着いた .69 .77 くつろいだ .75 .75 Table 4 覚醒語の因子間相関 因子 1: エネルギー覚醒+ 因子 2: エネルギー覚醒- 因子 3: 緊張覚醒+ 因子 4: 緊張覚醒- 因子 1: エネルギー覚醒+ –.30 .15 .21 因子 2: エネルギー覚醒- –.58 .40 –.17 因子 3: 緊張覚醒+ .27 .44 –.36 因子 4: 緊張覚醒- .39 –.14 –.39 右上 : 短期的心理状態,左下 : 長期的心理状態 Table 5 感情尺度得点と覚醒尺度得点の相関係数 短期的心理状態 長期的心理状態 恐怖 怒り 悲しみ 嫌悪 喜び 恐怖 怒り 悲しみ 嫌悪 喜び エネルギー覚醒+ .09 .04 –.02 –.07 .73 –.04 –.03 –.17 –.11 .68 エネルギー覚醒- .31 .50 .61 .58 –.33 .42 .41 .68 .62 –.45 緊張覚醒+ .63 .47 .49 .58 –.06 .54 .43 .53 .47 –.09 緊張覚醒- –.19 –.13 –.15 –.23 .49 –.15 –.19 –.19 –.20 .45
の 30 項目・6 尺度(T-A: 緊張―不安,D: 抑うつ―落ち 込み,A-H: 怒り―敵意,V: 活気,F: 疲労,C: 混乱) を用いた。 参加者 全て大学生であった。(a) STAI には 128 名(男性 21 名,女性 106 名,不明 1 名,M = 19.96, SD = 0.78),(b) 多面的感情状態尺度短縮版には 172 名(男性 65 名,女性 106 名,不明 1 名,M = 19.90, SD = 1.14),(c) GACL には 208 名(男性 142 名,女 性 66 名,M = 20.8,SD = 1.69),(d) JUMACL に は 146 名(男性 55 名,女性 91 名,M = 19.79,SD = 1.03), (e) POMS には 156 名(男性 62 名,女性 94 名,M = 19.69,SD = .914)が参加した。 手続き 授業時に配布回収を行った。短期的心理状 態に関しては,EACL を用いて“今の気持ち”につい て 4 件法で回答を求め,同時に STAI,多面的感情状 態尺度短縮版,GACL,JUMACL の内いずれか 1 種類 に記入を求めた。長期的心理状態に関しては,EACL を用いて“ここ 1 週間の気持ち”について 4 件法で回 答を求めた。同時に POMS 短縮版に記入を求めた。 解析 EACL からは 9 尺度の得点(該当項目の平均 点),STAI からは状態不安尺度得点(質問紙の計算方 法による),多面的感情状態尺度短縮版からは 8 尺度 の得点(該当項目の平均点),GACL からは 4 尺度の 得点(該当項目の平均点),JUMACL からは 2 尺度の 得点(質問紙の計算方法による),POMS からは 6 尺 度の得点(質問紙の計算方法による)を求めた。 EACL と既存の質問紙の各尺度得点との間でピアソン の積率相関係数を算出した。 Table 6 EACL の各尺度得点と既存の質問紙の尺度得点の相関係数 EACL 恐怖 怒り 悲しみ 嫌悪 喜び エネルギ ー覚醒+ エネルギー覚醒- 覚醒+緊張 覚醒-緊張 STAI 状態不安尺度(n = 128) .67 .60 .71 .67 –.64 –.40 .51 .70 –.66 多面的感情状態尺度 (n = 172) 抑鬱・不安 .72 .57 .81 .65 –.32 –.04 .56 .62 –.28 敵意 .60 .78 .58 .71 –.17 .04 .41 .47 –.26 倦怠 .36 .50 .57 .62 –.39 –.31 .77 .29 –.23 活動的快 –.09 –.21 –.27 –.31 .83 .82 –.51 –.02 .41 非活動的快 –.20 –.34 –.30 –.31 .43 .23 –.19 –.24 .75 親和 .16 –.02 .07 –.04 .45 .51 –.14 .20 .21 集中 .30 .23 .28 .33 .16 .23 .15 .25 .20 驚愕 .76 .48 .59 .50 .10 .30 .28 .59 –.09 GACL (n = 208) GA(全般的活性) .08 .01 –.18 –.13 .73 .86 –.37 .04 .23 DS(脱活性‐睡眠) .33 .47 .54 .58 –.40 –.35 .62 .39 –.21 HA(高活性) .74 .64 .56 .56 .05 .20 .37 .75 –.24 GD(全般的脱活性) –.11 –.18 –.12 –.19 .43 .19 –.08 –.24 .78 JUMACL (n = 146) TA(緊張覚醒度) .73 .76 .68 .74 –.38 –.09 .43 .79 –.65 EA(エネルギー覚醒度) –.42 –.46 –.63 –.56 .73 .73 –.77 –.38 .35 POMS (n = 156) T-A(緊張‐不安) .70 .50 .55 .60 –.25 .11 .30 .70 –.36 D(抑うつ‐落ち込み) .58 .49 .79 .59 –.43 –.26 .61 .38 –.18 A-H(怒り‐敵意) .26 .75 .40 .61 –.24 –.01 .28 .30 –.28 V(活気) –.15 –.25 –.44 –.27 .74 .80 –.51 .02 .11 F(疲労) .40 .58 .54 .64 –.35 –.17 .56 .43 –.27 C(混乱) .63 .51 .62 .55 –.29 –.12 .49 .51 –.20 注) 太字は対応すると考えられる尺度。
結果と考察 EACL の 9 尺度の得点と,各質問紙の尺度得点の相 関係数を Table 6 に示した。Guilford & Ruchter (1956, p. 145)に則り,絶対値 .7 以上を“高い相関”と考え, この値以上の相関がある尺度には十分な対応があると みなした。Table 6 より,EACL と既存質問紙中で対 応すると考えられる尺度の相関係数(太字で表記)は 概ね絶対値 .7 以上であることから,EACL の妥当性 が示されたと考える。 GACL,JUMACL,POMS の覚醒系の尺度と,EACL の感情系の尺度の複数に高い相関がみられた。エネル ギー覚醒と快,緊張覚醒と不快の関連は先行研究にお い て 指 摘 さ れ て お り(Matthews et al., 1990; Thayer, 1978a),Figure 1 から考えても矛盾しない結果である と考える。 以上のように,既存質問紙との比較から EACL の 妥当性が確認されたと考える。しかし多面的感情状態 尺度の親和尺度,集中尺度,POMS の F(疲労)と C(混 乱)は EACL のいずれの尺度とも .33 ─ .64 の相関し かなかった。よってこれらの尺度で表される心理状態 は EACL で十分網羅されていないと考えられる。こ れらの測定に際しては目的に応じた質問紙の使い分け が必要であると考える。 研 究 3 研究 3 では,EACL の短期的心理状態尺度としての 妥当性と,長期的心理状態尺度としての再検査信頼性 を検討する。短期的心理状態については課題(感情 5 尺度については 5 種類の感情を喚起させる文章を読む 課題,覚醒 4 尺度については計算課題)による各尺度 の変化により妥当性を検討する。感情を喚起させる文 章により,感情 5 尺度のうち該当する尺度の得点が上 昇することが予測される。短時間の計算課題について は GACL の GA・HA 得点の上昇,DS・GD 得点の低 下が報告されており (笠原・五十嵐・倉内・長野・小林, 2008),本研究においても緊張覚醒とエネルギー覚醒 の上昇が予測される。またこれらの課題について,他 の尺度の変化についても検討する。長期的心理状態尺 度については,約 1 時間の間隔で 2 回検査を行い,再 検査信頼性を検討する。 方 法 使用質問紙 研究 1 で作成した EACL。 参加者 (a) 感情喚起文章課題は大学生 75 名(男 性 33 名,女性 40 名,不明 2 名,M = 20.32,SD = 1.23) を5種類の文章に15名ずつランダムに割りつけた。(b) 計算課題は大学生 78 名(男性 29 名,女性 49 名,M = 20.08,SD = .07)。(c) 再検査信頼性は(a),(b)と 同じ大学生 153 名(男性 62 名,女性 89 名,不明 2 名, M = 20.20,SD = 1.15)。 課題 (a) 感情喚起文章課題は,5 種類の感情を喚 起するため,ニュース等の文章を適宜改訂し,A4 用 紙 1 枚程度の文章を作成した。作成したのは恐怖文章 (1979 年に京都府で発生し,主婦 2 名が被害者となっ た未解決殺人事件“長岡京殺人事件”についての解説 と,被害者が助けを求めて書いたメモの説明),怒り 文章(官僚が自らのブログに 2011 年の東日本大震災 の被災地に関して“もともと滅んでいた”等の不適切 な書き込みをしていたニュース),悲しみ文章(1985 年に起きた日航ジャンボ機墜落事故の犠牲者の遺族の 手記),嫌悪文章(蝉の幼虫や成虫を調理して出すイ ベントの体験レポート),喜び文章(サッカー日本女 子代表 2011 年ワールドカップ優勝のニュース)の 5 種である。(b)計算課題は,百ます計算(縦 10 ×横 10 のますの左と上に数字を並べ,交差する箇所に指 定された計算方法の答えを記入する)を 5 分間行った。 本研究では左に 1 から 10,上に 2 桁の数字をランダ ムに配したものを三つ準備した。課題実施時には加算 を,左上から右に向かって順番にできるだけ早く正確 に計算するよう求めた。 手続き 授業時に配布回収を行った。EACL は合計 2 回実施した。まず授業開始時に EACL に回答を求め た(1 回目)。始めに“今の気持ち,次に“ここ 1 週 間の気持ち”についてそれぞれ 4 件法で回答し,記入 後に質問紙を回収した。約 1 時間の授業実施後,感情 喚起文章課題の参加者は 5 種類のいずれかの文章を読 み,計算課題の参加者は百ます計算を 5 分間行った。 両群とも課題の直後に EACL を用いて“今の気持ち” と“ここ 1 週間の気持ち”に回答した(2 回目)。 解 析 1. 短期的心理状態尺度の妥当性の解析のため,“今の 気持ち”の回答について 9 尺度の得点(該当項目の平 均値)を算出した。感情喚起文章課題については,ま ず感情 5 尺度の得点について,文章の種類(5 種)を 被験者間要因,測定(1 回目・2 回目)を被験者内要因 とした 5 × 2 の 2 要因の分散分析を実施した。交互作 用が有意となった場合には各文章の前後の変化を検討 する下位検定(1 要因分散分析)を行った。覚醒 4 尺 度についても同様に文章の種類(5)×測定(2)の 2 要因の分散分析を実施し下位検定を行った5。計算課題 についてはまず覚醒 4 尺度の得点,次に感情 5 尺度の 5 尺度×文章×測定の 3 要因分散分析の結果 2 次の交互作用 が有意となり,2 要因の単純交互作用検定を実施した。さらに交 互作用が有意であったため,各要因の各水準における単純主効 果検定を実施した。いずれの分析からも同様の結論が得られた ため,紙面の制約により本文には各尺度における文章×測定の 分析結果のみ掲載した。
得点について 1 回目・2 回目の間で t 検定を行った6。 2. 長期的心理状態尺度の再検査信頼性に関しては, 感情喚起文章課題,計算課題で測定した“今”と“こ こ 1 週間”の気持ちについて,9 尺度の得点(該当項 目の平均値)を算出し,1 回目と 2 回目の間でピアソ ンの積率相関係数を算出した。 結果と考察 1. 短期的心理状態尺度の妥当性について,感情喚起 文章課題の 1 回目と 2 回目の感情 5 尺度の得点の変化 6 尺度×測定の 2 要因分散分析の結果交互作用が有意となり, 各尺度における測定の単純主効果検定を行った。紙面の制約に より本文には下位検定の結果のみ掲載した。 と 2 要因分散分析の結果を Table 7 に示した。分散分 析の結果,5 尺度全てに文章×測定の交互作用が見ら れた。下位検定の結果,喜び以外の各尺度得点は,対 応する感情喚起文章によりいずれも有意に上昇してい た。喜び得点に有意な上昇が見られなかったのは,課 題前の得点が高いことで天井効果が生じたためと考え られる。よって感情 5 尺度は目的とする感情を測定し ていると考えられる。各文章の読後(2 回目)には目 的とする尺度以外の得点の変化も見られた。基本感情 は単独で生起することが少ないと考えられていること から(福井, 1990),本実験においても目的以外の様々 な感情が同時に喚起されたためと考えられる。また再 検査信頼性と測定タイミングを合わせるために,1 回 目と 2 回目の測定の間に約 1 時間の授業を行っている Table 7 感情喚起文章課題の各尺度の平均値(標準偏差)と分散分析の結果 尺度 分散分析の結果 測定 (n = 15)恐怖文章 (n = 15)怒り文章 悲しみ文章(n = 15) (n = 15)嫌悪文章 (n = 15)喜び文章 文章の 主効果 F (4, 70) 測定の 主効果 F (1, 70) 交互 作用 F (4, 70) 恐怖 2.707 * 3.854 6.458 ** 1 0.65 0.75 0.53 0.47 0.55 (0.74) (0.81) (0.82) (0.70) (0.61) ** * * 2 1.40 0.68 0.63 1.02 0.07 (0.75) (0.75) (0.63) (0.92) (0.26) 怒り 3.203 * 8.945 ** 8.073 ** 1 0.50 0.62 0.58 0.28 0.75 (0.62) (0.68) (0.84) (0.46) (0.81) ** * 2 0.70 1.83 0.52 0.68 0.40 (0.71) (1.03) (0.94) (0.82) (0.66) 悲しみ 3.375 * 4.099 * 6.051 ** 1 1.03 1.05 0.57 0.85 0.77 (0.92) (0.83) (0.59) (0.80) (0.73) ** ** 2 1.32 1.25 1.47 0.97 0.22 (0.59) (0.80) (0.59) (0.73) (0.35) 嫌悪 3.401 * 26.085 ** 7.968 ** 1 0.78 0.73 0.53 0.65 0.88 (0.65) (0.62) (0.78) (0.65) (0.80) ** ** * ** * 2 1.42 1.93 0.98 1.72 0.33 (0.56) (1.17) (0.90) (1.00) (0.56) 喜び 9.939 ** 35.888 ** 8.368 ** 1 1.05 0.92 0.77 0.95 1.13 (0.70) (0.66) (0.49) (0.61) (0.61) ** ** ** ** 2 0.37 0.12 0.07 0.33 1.57 (0.48) (0.28) (0.11) (0.53) (0.82) * p < .05. ** p < .01 注) 交互作用が有意な場合は測定(1回目・2 回目)で下位検定を実施。
ことから,この間に他の感情が喚起されていた可能性 も考えられる。課題の直前直後に測定を行うことによ り,より厳密な検討が可能になると考える。 感情喚起文章課題の 1 回目と 2 回目の覚醒 4 尺度の 得点の変化と 2 要因分散分析の結果を Table 8 に示し た。分散分析の結果,緊張覚醒+以外の尺度に文章× 測定の交互作用が見られた。下位検定の結果,エネル ギー覚醒+得点は恐怖文章,怒り文章,悲しみ文章で 有意に低下,エネルギー覚醒-得点は快文章で有意に 低下,緊張覚醒-得点は快文章以外の全ての文章で有 意に低下した。Figure 1 に示した Russel の円環モデル と文章による変化を比較すると,怒り,悲しみ,喜び 文章は概ね円環モデルに沿った変化をしているが,嫌 悪文章でエネルギー覚醒が低下しない,恐怖文章でエ ネルギー覚醒が低下する等,必ずしも円環モデルと合 致していない部分もある。研究1の考察でも述べたよ うに,刺激・状況・文化・言語等によっては必ずしも 円環モデルと合致しない可能性が考えられ,例えば“エ ネルギー覚醒・緊張覚醒ともプラス”を意図して選択 した“恐怖”刺激が,実際には意図とは異なる覚醒状 態を生起させる可能性がある。これは実験操作の確認 として感情と覚醒の両方を測定する事の重要性を示唆 するものと考える。 計算課題の 1 回目と 2 回目の各尺度の得点の変化と t 検定の結果を Table 9 に示した。計算課題によりエネ ルギー覚醒+得点,緊張覚醒+得点が有意に上昇し, エネルギー覚醒-得点,緊張覚醒-得点は有意に低下 した。この結果は,先行研究の計算課題よる変化(笠 原他,2008)と比較しても妥当な結果と考えられる。 感情尺度については恐怖得点と悲しみ得点の有意な低 下がみられたのみで,ほとんど変化しなかったことか ら,計算課題は主に覚醒に働きかけるものであること が分かる。 以上,感情喚起文章と計算課題の結果より,短期的 心理状態尺度としての妥当性が確認できたと考える。 2. 長期的心理状態尺度の再検査信頼性の解析の結果, “今の気持ち”の 1 回目と 2 回目の相関係数は,恐怖 が .37,怒りが .37,悲しみが .40,嫌悪が .32,喜びが .44, エネルギー覚醒+が .51,エネルギー覚醒-が .45,緊 張覚醒+が .19,緊張覚醒-が .18 と,いずれも低かった。 Table 8 感情喚起文章課題の各尺度の平均値(標準偏差)と分散分析の結果 尺度 分散分析の結果 測定 (n = 15)恐怖文章 (n = 15)怒り文章 悲しみ文章(n = 15) (n = 15)嫌悪文章 (n = 15)喜び文章 文章の 主効果 F (4, 70) 測定の 主効果 F (1, 70) 交互 作用 F (4, 70) エネルギー 覚醒+ 5.474 ** 25.225 ** 3.166 * 1 1.00 0.68 0.65 0.62 1.05 (0.76) (0.62) (0.41) (0.49) (0.54) ** * ** 2 0.40 0.35 0.03 0.43 1.07 (0.45) (0.44) (0.09) (0.48) (0.77) エネルギー 覚醒- 2.010 2.204 3.526 * 1 1.02 1.31 0.96 1.24 1.33 (0.81) (0.82) (0.82) (0.79) (0.89) ** 2 1.04 1.20 1.16 1.24 0.56 (0.49) (0.65) (0.81) (0.61) (0.61) 緊張覚醒+ 1.563 .563 1.404 1 1.20 1.20 0.89 1.02 1.09 (0.61) (0.64) (0.73) (0.81) (0.73) 2 1.33 1.18 0.80 1.13 0.60 (0.7) (0.76) (0.69) (0.92) (0.64) 緊張覚醒- 1.624 73.318 ** 5.824 ** 1 1.60 1.40 1.73 1.64 1.33 (0.92) (0.92) (0.76) (0.53) (0.76) ** ** ** ** 2 0.51 0.29 0.40 0.64 1.42 (0.78) (0.43) (0.54) (0.56) (0.96) * p < .05. ** p < .01 注) 交互作用が有意な場合は測定(1回目・2 回目)で下位検定を実施。
“ここ 1 週間の気持ち”の 1 回目と 2 回目の相関係数は, 恐怖が .78,怒りが .81 悲しみが .75,嫌悪が .75,喜び が .77,エネルギー覚醒+が .77,エネルギー覚醒- が .75,緊張覚醒+が .73,緊張覚醒-が .71 と,いず れも高かった。いずれの尺度も相関係数の値は“週” の方が“今”よりも高くなっていた。2 回の測定間に 課題を実施し,同時に測定した“今の気持ち”が変化 したにもかかわらず,“ここ 1 週間の気持ち”について は安定した回答が得られており,長期的心理状態尺度 の再検査信頼性が確認できたと考える7。 総 合 考 察 本論文では可能な限り少数の項目で基本感情・覚醒 の両者を測定でき,目的に応じて短期的・長期的心理 状態のどちらも同項目で測定が可能な尺度を作成する ことを目的とした。研究 1 ─研究 3 から,33 項目と いう比較的少数の項目で,感情 5 尺度・覚醒 4 尺度に より基本感情・覚醒を測定可能な EACL を作成する ことができた。また教示の変更により“今”と“ここ 1 週間”の両方の心理状態の測定に用いることが可能 7 ただし測定間隔が1時間と短い為,参加者が前の回答を記 憶していたり,実験者の意図をくんだ可能性があることも考慮 する必要があるであろう。 であることが確認できた。 本尺度の長期的心理状態尺度については,日常生活 のストレスが高い人においてネガティブな心理状態を 示す尺度得点が高いことが報告されており(織田・高 野 , 2009),ここからも EACL の長期的心理状態尺度 としての妥当性が確認されていると考える。 エネルギー覚醒と緊張覚醒は,交感神経系の指標と 正の相関があることが報告されている(Matthews et al., 1990)。本研究においては生理指標との関連を検討 しなかったが,JUMACL の各尺度と相関が高いこと から,同様の結果が得られるものと予測される。また 序文で述べたように,基本感情についても自律神経系 の 反 応 特 異 性 が 報 告 さ れ て お り(Stephens et al., 2010),EACL で基本感情と覚醒を測定することによ り,生理指標と基本感情・覚醒の関係を検討できる可 能性があると考える。 以上のように基本感情と覚醒を同時にとらえ,短期 的・長期的心理状態の両方を測定可能な EACL は, 生理指標と基本感情・覚醒の関係の検討,感情誘導実 験の操作確認,一過性ストレスと慢性ストレスの関連 の検討等,多くの場面で活用可能であると考える。 EACL は 33 項目での実施を前提として作成してお り,感情のみ,覚醒のみの実施での検討を行っていな い。利便性を考えれば,今後は感情のみ,覚醒のみ, また単一の尺度のみの実施においても信頼性・妥当性 のある結果が得られるかを検討することも必要となる と考える。 引 用 文 献 福井 康之 (1990).感情の心理学 川島書店 (Fukui, Y.) Guilford, J. P., & Ruchter, B. (1956). Fundamental statis-tics in psychology and education. 3rd ed. New York: McGraw-Hill Book Company. 濱 治 世(2001). 感 情・ 情 緒( 情 動 ) と は 何 か 濱 治世・鈴木 直人・濱 保久(編)感情心理学 への招待―感情・情緒へのアプローチ― サ イエンス社 pp. 1–62. (Hama, H.) 畑 山 俊 輝・Antonides, G.・ 松 岡 和 生・ 丸 山 欣 哉 (1994).アラウザルチェックリストから見た顔の マッサージの心理的緊張低減効果 応用心理学研 究, 19, 11–19.
(Hatayama, T., Antonides, G., Matsuoka, K., & Maruyama, K. (1994). An examination by an arousal checklist (GACL) on psychological effect of facial massage. Japanese Journal of Applied Psychology, 19, 11–19.) 肥田野 直・福原 真知子・岩脇 三良・曽我 祥子・ Spielberger, C. D.(2000).新版 STAI マニュアル 実務教育出版 (Hidano, T., Fukuhara, M., Iwawaki, S., Soga, S., & Table 9 計算課題前後の各尺度の平均値(標準偏差)と t 検定の結果(n = 78) 得点 1回目 2 回目 t 値(df = 77) 恐怖 0.59 0.28 4.83 ** (0.64) (0.40) 怒り 0.39 0.52 1.69 (0.50) (0.56) 悲しみ 0.70 0.51 2.89 ** (0.66) (0.55) 嫌悪 0.54 0.54 0.00 (0.60) (0.64) 喜び 1.13 1.06 0.81 (0.69) (0.79) エネルギー覚醒+ 0.95 1.18 2.89 ** (0.67) (0.80) エネルギー覚醒- 1.01 0.73 3.08 ** (0.85) (0.72) 緊張覚醒+ 1.01 1.49 4.24 ** (0.72) (0.75) 緊張覚醒- 1.53 0.80 6.55 ** (0.75) (0.82) * p < .05. ** p < .01
Spielberder, C. D.)
Izard, C. E. (1991). The psychology of emotions. New York: Plenum. (イザード, C. E. 荘厳 舜哉(監訳)(1996).感情 心理学 ナカニシヤ出版) 笠原 佑夏・五十嵐 恵仁・倉内 香織里・長野 祐一郎・ 小林 剛史(2008).足浴のリラクセーション効果 に関する検討 文京学院大学人間学部研究紀要, 10, 297–307. (Kasahara, Y., Igarashi, K., Kurauchi, K., Nagano, Y., & Kobayashi, T.) 国立国語研究所(1983).分類語彙表 秀英出版 (National Institute for Japanese Language and
Linguistics) Lang, P. J., Bradley, M. M., & Cuthbert, B. N. (2008). International Affective Picture System (IAPS): Affective ratings of pictures and instruction manual. Technical Report A-8. University of Florida, Gainesville, FL. Libkuman, T. M., Otani, H., Kern, R., Viger, S. G., & Novak, N. (2007). Multidimensional normative ratings for the International Affective Picture System. Behavior Research Methods, 39, 326–334.
Matthews, G., Jones, D. M., & Chamberlain, A. G. (1990). Refining the measurement of mood: The UWIST Mood Adjective Checklist. British Journal of Psychology, 81, 17–42.
McNair, D. M., Lorr, M., & Droppleman, L. F. (1971). Manual for the profile of mood states. San Diego, CA: Educational and Industrial Testing Services.
Mikels, J. A., Fredrickson, B. L., Larkin, G. R., Lindberg, C. M., Maglio, S. J., & Reuter-Lorenz, P. A. (2005). Emotional category data on images from the International Affective Picture System. Behavior Research Methods, 37, 626–630. 野口 素子・佐藤 弥・吉川 左紀子(2005).情動喚起 刺激としての映像―日本人被験者による評定実 験― 電子情報通信学会技術研究報告, 104, 1–6. (Noguchi, M., Sato, W., & Yoshikawa, S. (2005). Films as emotion-eliciting stimuli: The ratings by Japanese subjects. Technical Report of IEICE, 104, 1–6.) Nowlis, V. (1965). Research with the Mood Adjective
Check List. In S. S. Tomkins & C. E. Izard (Eds.), Affect, cognition, and personality. New York: Springer. pp. 352–389.
Oatley, K., & Johnson-Laird, P. N. (1987). Towards a cogni-tive theory of emotions. Cognition & Emotion, 1, 29– 50. 織田 弥生・高野 ルリ子(2009).短期的・長期的心 理状態を測定可能な情動・覚醒質問紙の作成(2) ―妥当性の検討― 日本心理学会第 73 回大 会発表論文集, 972. (Oda, Y., & Takano, R. (2009). An examination of the validity of the Emotion and Arousal Questionnaire devel-oped to measure short-term and long-term psychological states. Proceedings of the 73rd Annual Convention of the Japanese Psychology Association, 972.)
Ortony, A., & Turner, T. J. (1990). What’s basic about basic emotions? Psychological Review, 97, 315–331.
Russell, J. A. (1980). A circumplex model of affect. Journal of Personality and Social Psychology, 39, 1161–1178. Russell, J. A., & Barrett, L. F. (1999). Core affect, prototyp- ical emotional episodes, and other things called emo-tion: Dissecting the elephant. Journal of Personality and Social Psychology, 76, 805–819.
佐藤 德・安田 朝子(2001).日本語版 PANAS の作 成 性格心理学研究, 9, 138–139.
(Sato, A., & Yasuda, A. (2001). Development of the Japanese version of Positive and Negative Affect Schedule (PANAS) scales. Japanese Journal of Personality, 9, 138–139.) 白澤 早苗・石田 多由美・箱田 裕司・原口 雅浩 (1999).記憶検索に及ぼすエネルギー覚醒の効果 基礎心理学研究, 17, 93–99. (Shirasawa, S., Ishida, T., Hakoda, Y., & Haraguchi, M. (1999). The effects of energetic arousal on memory search. Japanese Journal of Psychonomic Science, 17, 93–99.)
Spielberger, C. D., Gorsuch, R. L., & Lushene, R. E. (1970). Manual for the State-Trait Anxiety Inventory. Palo Alto, CA: Consulting Psychology Press.
Stephens, C. L., Christie, I. C., & Friedman, B. H. (2010). Autonomic specificity of basic emotions: Evidence from pattern classification and cluster analysis. Biological Psychology, 84, 463–473. 寺崎 正治・岸本 陽一・古賀 愛人(1992).多面的感 情状態尺度の作成 心理学研究, 62, 350–356. (Terasaki, M., Kishimoto, Y., & Koga, A. (1992). Construction of a multiple mood scale. Japanese Journal of Psychology, 62, 350–356.) 寺崎 正治・古賀 愛人・岸本 陽一(1991).多面的感 情状態尺度・短縮版の作成 日本心理学会第 55 回大会発表論文集, 435. (Terasaki, M., Koga, A., & Kishimoto, Y.) Thayer, R. E. (1967). Measurement of activation through self-report. Psychological Reports, 20, 663–678. Thayer, R. E. (1978a). Factor analytic and reliability studies on the Activation-Deactivation Adjective Check List. Psychological Reports, 42, 747–756. Thayer, R. E. (1978b). Toward a psychological theory of multidimensional activation (arousal). Motivation and Emotion, 2, 1–34. Watson, D., Clark, L. A., & Tellegen, A. (1988). Development and validation of brief measures of positive and negative affect: The PANAS scales. Journal of Personality and Social Psychology, 54, 1063–1070.
横山 和仁・荒記 俊一・川上 憲人・竹下 達也(1990). POMS(感情プロフィール検査)日本語版の作成 と信頼性および妥当性の検討 日本公衆衛生雑 誌, 37, 913–918.
(Yokoyama, K., Araki, S., Kawakami, N., & Takeshita, T. (1990). Production of the Japanese edi-tion of Profile of Mood States (POMS): Assessment of reliability and validity. Japanese Journal of Public Health, 37, 913–918.)