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形だということが分かることになりますね けり が 連用形接続の助動詞 だということは記憶していたほうがいいのですが それは実際の古文を読んでいく練習を重ねる過程でだんだんと覚えていくもので 丸暗記をするものではありません 記憶できるまでは 文法の教科書を何回でも参照すればそれでよいのです そのために

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Academic year: 2021

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山田 YAMADA 優 MASARU♪古文読解講座 【第 1 講】 突然ですが、古文の勉強を始めませんか。 この講座は無料です(インターネットの通信料金はかかりますけれど)。 テキストは、桐原書店の①『改訂版 実戦演習 基礎古文』と駿台文庫の②『正しく読める 古典文法』③『古文読解教則本』です。 ただ、すぐにテキストを準備する必要はありません。どんな講座か試しに読んでみてから でも遅くはありません。それに、最初のうちはあまり進みませんから、テキストがなくて も講座の内容は理解できます。 さて、この講座では、古文が非常に不得意な人(古文をちょっと見ただけで、なんだか冷 や汗が出てきそうな人)のために、しつこいくらいに丁寧に解説していきます。そして、 前に説明したことでも、また前と同じ言葉で丁寧に説明していきます。そのため、なかな か先に進みません。「どうしてこんなことまで説明するのだろうか」と思うようなことま で、ゆっくりと説明しようと思っています。特に、この講座では「問題の本文の解釈」を 中心に解説していきます。その他の知識については、テキスト①を少しずつ読んで参考に してくださればだいじょうぶです。 さあ、これ以上の前置きや私の自己紹介をする前に、この講座ではどのように古文読解の 学習を進めていくかを、具体的に紹介しましょう。 では、テキスト①の第 1 問の「人生いろいろ」(p.4~p.5)の本文を読解していきましょ う。先ほどいったとおり、なかなか先へ進まないので、当分の間テキストを準備しなくて も大丈夫ですよ。 まず、第 1 行目「唐土に北叟といふ翁ありけり」について。「翁」と「ありけり」の間に、 主語を示す「が」を補って読んだらどうでしょうか。 問題は「ありけり」です。「けり」は助動詞です。助動詞の活用表を丸暗記するのは大変 ですし、する必要もないでしょう。私は 2 年間受験浪人をしたのですが、そのときに通っ ていた駿台高等予備校(現在の駿台予備学校)で教えていただいた桑原岩雄先生は「英作 文の試験はあっても古文作文の試験はないのだから、活用表の丸暗記などする必要がない。 もっと大事なことを先に勉強すべきだ」ということを、しばしばおっしゃっていました。 さて、「けり」は文の最後にありますから、「活用形」は「終止形」です。助動詞は、そ れだけで独立して文の中に存在することはできません。そこで他の単語にくっついて(接 続して)います。ここでは「あり」に接続しています。「ありけり」となっているわけで す。この場合、「あらけり」でも「あるけり」でも「あれけり」でもなく、「ありけり」 という形で接続しています。つまり、どういうことかというと、「けり」という助動詞は、 必ず「ありけり」という形でなければ、「あり」には接続できないということなのです。 そして、この場合の「あり」は、実は「連用形」です(「あり」はどのように活用するか については、この後で説明します)。これが、「けり」という助動詞は「連用形接続の助 動詞」だということの意味です。 そうすると、「けり」が「連用形接続の助動詞」だということをあなたが知っている場合 には(つまり、記憶している場合には)、そのことから、「ありけり」の「あり」が連用

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形だということが分かることになりますね。「けり」が「連用形接続の助動詞」だという ことは記憶していたほうがいいのですが、それは実際の古文を読んでいく練習を重ねる過 程でだんだんと覚えていくもので、丸暗記をするものではありません。記憶できるまでは、 文法の教科書を何回でも参照すればそれでよいのです。そのために文法の教科書があるの だと思ってください。 さて、このように「ありけり」の「あり」は連用形ですが、「あり」の終止形はどのよう な形ですか?「あり」です。文末にあるのに、「あり」です。現代語であれば「ある」で すが……。そうです。学校で習ったことを思い出された人もあるかと思いますが、「あ り」はラ行変格活用の動詞なのですね。それで、「終止形」は「あり」です。つまり、 「あらズ」「ありテ」「あり。」「あるトキ」「あれドモ」「あれ!」と活用します。 ここでは、未然形・連用形・連体形・已然形に接続する語のうち、代表的で覚えやすい語 を接続させた形で表示しています(ちなみに、終止形については、そこで文が終わるから 「。」を付け、命令形については、ドイツ語の命令文には文末に「!」を付けるので、そ のイメージを借りて「!」を付けています)。 動詞の活用についても、ただ活用語尾だけを「ら」「り」「り」「る」「れ」「れ」と丸 暗記するのではなくて、未然形については、未然形に接続する打消の助動詞「ず」を付け た形、連用形については、連用形に接続する接続助詞「て」を付けた形、連体形について は、形式名詞「とき」を付けた形、已然形については、已然形に接続する接続助詞「ど も」を付けた形で、声に出して言ってみる練習をするとよいです。これも、暗記するとい うよりは、声に出して確かめてみるというニュアンスです。確かに現在では使われていな い言葉ですが、これまでの日常生活のどこかで、ほんのきれはしでも耳にしたことがある はずの言葉なので、断片的にではあっても声に出して活用してみることができるはずなの です。つまり、「このような知識は知らず知らずのうちにあなたの DNA の中に組み込ま れている」というような比喩的な表現もできるかと思います。 ところで、助動詞「けり」には「過去」を意味する場合と「詠嘆」を表す場合があると、 学校で習ったことを思い出した人もいるでしょう。テキストの解答の通釈は「過去」を表 す訳となっています。「どうやって区別するのかを覚えるのが大変だ」と思わないでくだ さい。一度にいろいろな事項を理解・記憶することは困難です。ここでは「過去」の意味 なのだと気軽に受け止めて先へ進めば大丈夫です。今の段階では、「過去」と「詠嘆」の 区別の方法を読んだとしても、混乱してむしろ逆効果です。いつか「詠嘆」の意味の実例 に出会ったときに、その区別を学んだほうが効果的です。 ちなみに、「けり」が表す「過去」というのは、「話し手自身は直接経験しておらず、他 人から伝聞した事実」(伝承過去)だということを学んだ人もいるでしょう。ここでも、 そのように解釈してよいでしょう。テキストの通釈は「ありけり」を簡単に「いた」と訳 していますが、これも伝承過去であることを前提としているのでしょう。「伝承過去であ ることをきちんと表現しなければならないのではないか」とみなさんは心配になるかもし れませんね。たしかに「ありけり」を「いたということだ」と訳せば、伝承過去であるこ とが明確になります。ですから、このように訳したほうが正確で親切です。この部分を現 代語訳する問題である場合は、当然そうしたほうがいいのですが、現代語訳する必要はな い場合、つまりどんどん先へ読み進んでいけばよい場合には、このことをあまり気にせず に、「いた」という意味だと処理して先に進めばよいでしょう。「伝承過去」だというこ とまで覚えられないという人は、とりあえず「過去」だということを覚えればよいでしょ う。

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いかがでしたか?このような手順で講座の解説を進めていきます。やっと文が 1 個終わっ ただけですが、このような勉強方法についてどんな印象をお持ちですか?興味を持たれた 方は、次の【第 2 講】をお読みください。私がこのような講座を始めたのはなぜなのかを、 少々お話しましょう。 【第 2 講】 実は、私が大学で専攻したのは「法律学」であって、日本の古典文学や国語学の専門的知 識があるわけではありません(一般教育科目の「国語学」は履修しましたが)。したがっ て、古文解釈の実力は、このブログをご覧いただいている皆さんとそれほど変わりはない のではないかと考えております。 そのような私が、なぜ、わざわざブログまで立ち上げて、古文読解講座を開講しようと決 心したのでしょうか。実は、最近、高校生 4 人に古文を別々に教えることになりました。 4 人を指導していて、高校生が、現在でも、「まず古文単語や古典文法を暗記してからで なければ、古文読解練習には進めない」というような「一種の迷信」にとらわれて、暗記 ばかりに時間をとられ、なかなか古文読解練習にとりかかれないという状況にあるという 事実を知りました。 私が大学受験をした 30 年以上前においても、古文のよくできる生徒は上記のような考え 方はしていませんでした。実際の古文の文章を、文脈を整理しながら読んでいく過程で、 その読解に役立つ「古典文法の知識」や「古文単語の知識」を身につけていったのです。 これは、「古文がよくできるからそのような学習ができたのだ」というより、「そのよう に学習したから古文がよくできるようになったのだ」といったほうが正確だと思います。 既にその当時から、私の通っていた駿台高等予備校(現在の駿台予備学校)では、古典文 法や古文単語の丸暗記などしないように、口をすっぱくして戒めていたほどです。 それなのに、今でも丸暗記の手法が指導されていることに、私は驚き、そして、少々失望 しました。そこで、この高校生 4 人にはきちんとした方法で古文読解練習をしてほしいと 考え、先ほど少し紹介した方法で勉強するように指導しています。4 人とも要領をつかみ 始めていて、最近では自分の力で適切な解釈をすることが少しできるようになりました。 「やはり、この方法は効果がある方法なのだ」と確認できて、少しうれしくなりました。 しかし、上記のような「一種の迷信」にとらわれている高校生がまだまだ多いという事実 は変わらず、それに対する私の釈然としない気持ちは消えません。そこで、「普通のおじ さん」であることをも顧みず、このブログを立ち上げることにしたのです。 この講座の目的は、古文が非常に不得意な人(古文をちょっと見ただけで、なんだか冷や 汗が出てきそうな人)が、①桐原書店の『改訂版 実戦演習 基礎古文』の本文を着実に読 みこなせるようになることです。そのために、駿台文庫の②『正しく読める古典文法』と ③『古文読解教則本』を参考書として、どの箇所を参照したら参考になるかをいちいち指 示して、どのような手順で知識を確認したらよいかを明示します。いつも同じ手順を同じ 言葉で解説するようにします。そうすることによって、少しずつ動詞や助動詞の接続や活 用を自分で調べることができるようにします。 ①『改訂版 実戦演習 基礎古文』自体は、コンパクトにまとまっていて、有用な知識も多 く紹介されている良書だと思います。問題は、古文の非常に不得意な人(古文をちょっと 見ただけで、なんだか冷や汗が出てきそうな人)に、この本を読み通す元気を付けてあげ

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られるかどうかなのです。その役割を、この講座が、僭越にも、買って出たというわけで す。 このような解説を読んでも分からないところがあるという人は、私に直接メール・手紙で 相談してください。ただ、このブログを読んでくださる人は未成年の方が多いと思われる ので、メールアドレスや住所などの個人情報を私に開示するかどうかについては、保護者 の方と十分相談してください。実は、私は、開業はしていませんが、行政書士の資格を もっています。行政書士試験には「個人情報の保護に関する法律」「行政機関の保有する 個人情報の保護に関する法律」についての問題が必ず出題されます。つまり、行政書士は 個人情報の保護に努力する立場にあるのです。したがって、大学の法学部で法律学を専攻 し、行政書士試験に合格した私は、個人情報の保護の重要性を十分理解しておりますので、 ご安心ください。 以上のような手順による解説が退屈だと思う人には、この講座は易しすぎるので、自分で 他のもっと程度の高い教材を見つけて、それを学習してください。この講座の終了間際に は、受講生みんなが「この講座の解説はいつも同じで退屈だ」と思うようになっていれば、 この講座の目的は達成されたことになるわけです。 さあ、「話はわかった、やってみる」という人は、次の【第 3 講】へ進みましょう。 【第 3 講】 さて、次の文に進みましょう。「かしこく強き馬をなむ持ちたりける」の部分ですね。 「かしこく」は「連用形」であると、テキストの解説に書いてあります。何の「連用形」 なのでしょう。「かしこし」の「連用形」です。実は、「かしこし」というのは「形容 詞」です。そこで、「かしこく」が形容詞「かしこし」の「連用形」だということがわか らなかった人は、「形容詞の活用表を暗記しなければ」と思ってしまうかもしれませんね。 しかし、文法の教科書に載っている「形容詞の活用表」を丸暗記しなければ、この文を解 釈できないわけではありません。それよりも、むしろ、「かしこく」という語を見たら、 即座に、これが形容詞「かしこし」の連用形であり、次の「強き」を修飾している(強め ている)ということがわかるようになる勉強法のほうが合理的なのです。実は、古文がよ く読める人は、活用表を暗記し、その記憶をいちいちたどって古文を読んでいるわけでは ありません。言い換えると、「活用形」が順番にならんでいる表を頭の中で「検索」して、 適切な「活用形」をその都度ひっぱり出しているわけではありません(もちろん、脳の中 では「検索」というプロセスが進行しているのかもしれませんが)。そうではなくて、 「かしこく」という語を見たら、その断片的なイメージによって、ほとんど瞬間的に「活 用形」がわかるのです。むしろ、「活用形」「連用形」といったことばも頭に浮かばない といったほうが適切かもしれません。 「そんな雲をつかむような話は信用できない」と思われた人も多いでしょう。そこで、少 し説明をしますね。「かしこく」が形容詞「かしこし」の連用形であるという知識は習得 しなければなりません。しかし、その習得の目的は、「古文を古文のままで読めるように なること」であって、「活用表を暗記して呪文のように唱えることができるようになるこ と」自体ではありません(当然ですけれど)。したがって、「かしこく」が形容詞「かし こし」の連用形であることを形容詞の活用表で確認するという手順を踏みさえすれば、活 用表を暗記する必要はないのです。「忘れたらどうするんだ」という声が聞こえてきそう です。「忘れたら、また形容詞の活用表を参照すればよい」というのが、その疑問に対す る答えです。「また忘れたら?」「また参照する」「また忘れたら?」「また参照する」 ……この繰り返しです。「それじゃあ、いつまでたっても覚えられないじゃあないか」と

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思われた人もいるでしょう。でも、「覚える」ということの具体的な中味は何ですか?そ れは、結局、「かしこく」という語を見たら「かしこし」の「連用形」だということが 「分かる」ようになるということでしょう。何度も活用表を参照していれば必ず「分か る」ようになります。「分かる」ようになれば、覚える必要はないでしょう?私は、皆さ んに「分かる」ようになっていただきたいのです。 そういうわけで、形容詞の活用表を見てみると、形容詞の活用語尾が「く」であるのは、 「連用形」ですね(「未然形」については、同様に「く」であるとする考え方と、未然形 は存在しないとする考え方とがあります)。ここでは、「ク活用」と「シク活用」の区別 については、話が複雑になるので、割愛します。 「連用形」というのは「用言に連なる形」ということです。ここでも、「かしこく」は 「強き」という形容詞(形容詞は用言です。用言とは「活用する自立語」のことですが、 「自立語」の意味については、ここでは説明を省略します)に続いています。そして、 「強き」という形容詞の内容を修飾(説明)しています。テキストの本冊の 5 ページの 「実戦ゼミ」の最後、また、別冊の解説・解答書の 2 ページ上段にあるように、ここでは 「非常に」という意味で、「強き」を強めています。 実は、形だけからいうと、「かしこく強き」の部分には、これとは異なった解釈の可能性 が少しあるのですが、ここではそれには触れません。「何だ!」と思われるかもしれませ んね。少々複雑であるため、説明をさしひかえたほうがよいのではないかと考えたのです。 「それじゃあ、なぜわざわざ言ったんだ?」ということになりますが、「教える人は自分 の知っていることを何でもどんどん説明したくなる傾向がある」ということを、皆さんに あらかじめ申し上げておこうと思ったからなのです。教える人は、少々細かい知識でも、 「知っていたほうがいいのではないか」と思って、ついつい説明したくなるのです。しか し、教わる生徒の頭の中に一定のおおざっぱな「地図」「マップ」ができるまでは、あま り細かいこと、複雑なことを説明しすぎると、教わる生徒はかえって混乱してしまうし、 勉強する興味を失ってしまう傾向にあります。そこで、丁寧に説明したいのは山々なので すが、そこにはある一定の節度が要求されるのです。この講座を読んでくださる皆さんが、 関心を持ちながら勉強を進められるように、適度な節度を保って、説明を続けていけるよ うに十分注意して進めて行こうと思っています。 さて、「かしこく強き馬を」の部分はどこに続いているのですか?「持ちたりける」です ね。「なむ」は(  )に入れておきましょう。つまり、簡略化して示せば、「馬を」 「持つ」ということになります。このように、なるべく広い範囲を見渡して、文のつなが り、意味のつながりを捉えることは大切なことです。ところで、「持ちたりける」の「け る」は、先ほどの「けり」の「連体形」です(これが「連体形」であることは、ここでは 形容詞の活用表を参照して確認すればよいでしょう)。文の最後にあるのに「連体形」で あるのはなぜでしょう?それは、先ほどの「なむ」があるからです。「なむ」の品詞は助 詞であり、助詞の中では「係助詞」に分類されます。「係助詞」には「係り結びの法則」 というものがあって、文の終わりが「終止形」ではなく、(「なむ」の場合は)「連体 形」になるのです。「なむ」には「話題の焦点を指示する」という働きがあり、ここでは、 持っていたのは紛れもなく「かしこく強き馬」なのだということをはっきり示しているの です。このような場合に文末が通常の「終止形」ではなく、「連体形」になっていれば、 「話題の焦点を指示する」という働きがはっきりとわかりますね。 これで「ける」は助動詞「けり」の連体形だということがわかりました。では、「ける」 の上の「たり」の活用形は何でしょうか。ここでは、「たり」も助動詞なのではないかと、 一応推測して調べるわけですね。【第 1 講】で「けり」は「連用形接続の助動詞」だとい

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うことを確認しました。したがって、「たり」も「連用形」であるはずです。そこで、助 動詞の活用の一覧表を広げて、連用形の欄を右端から左へずっと調べていってください。 そうすると、「たり」が見つかりますね。ただ、困ったことに「連用形」が「たり」であ る助動詞は 2 種類あります。完了の助動詞「たり」と断定の助動詞「たり」です。今回の 「たり」がどちらなのかは、「たり」の部分だけをじっと見ていても判断することはでき ません。どちらも顔つきは全く同じ「たり」なのですから。それでは、何を基準にしたら よいでしょうか。助動詞の活用の一覧表の中を見回すと、「助動詞がどのような語に接続 するか」を示した欄があるでしょう。そこを見ると、完了の助動詞「たり」は「連用形」 (場合によっては「動詞の連用形」とはっきり書いてあるかも知れません)に接続するの に対して、断定の助動詞「たり」は「体言」(名詞のことだと考えてよいでしょう)に接 続すると書いてあるはずです。そうすると、今回の本文の「たり」がどんな品詞(単語の 種類)に接続しているかを、さらに調べなければなりません。ここでは、「持ちたり」と なっていますから、「持ち」に接続しています。「持ち」の品詞は何ですか?この「持 ち」は、「持たズ」「持ちテ」「持つ。」「持つトキ」「持てドモ」「持て!」と活用す る動詞です。そして、「持ち」は「持つ」の連用形だということも確認できます。「持ち テ」という接続も可能だし、「持ちタリ」という接続も可能だということですね。した がって、問題の「たり」は断定の助動詞「たり」ではなくて、完了の助動詞「たり」であ ることが分かります。 さらに、助動詞の活用の一覧表には各助動詞の「意味」についての簡単な説明が書いてあ るものもあるでしょう。完了の助動詞「たり」の「意味」には、大別して、①完了(…て しまった。…た。)と②存続(…ている。…てある。)がありますが、ここでは「ある一 定の期間その馬を飼っている、所有している」のですから、②「存続」の「意味」だと考 えるのが適切でしょう。 このように順序だてて考えていけば、助動詞の活用の一覧表だけを用いて、これだけのこ とを知ることができるのです。したがって、この一覧表を十分に使いこなすことができる ようになれば、相当に古文の読解ができるようになります。いちいち助動詞の活用の一覧 表を丁寧に調べていくうちに、だんだんと一覧表を見なくても、独力で以上のような分析 をすることができるようになっていくのです。 さて、これらの知識を総動員して、「かしこく強き馬をなむ持ちたりける」の部分全体を 現代語訳するとどうなるでしょうか。「非常に強い馬を持っていた(そうだ)」というよ うに訳せばよいでしょう。ここで、「強き馬」の部分について、少し補足しておきます。 「強き」は「馬」に係っていますから、「連体形」です。「A が B に係っている」という のは、「A が B に(意味の上で)続いている」ということだと考えておけばよいでしょう。 「連体形」の活用語尾が「き」である「強き」の品詞は何でしょうか?形容詞です。助動 詞の中にも、「連体形」の活用語尾の最後が「き」であるものがありますが、これらの活 用の型は「形容詞型」ですね。形容詞の活用表は複雑で、暗記するとすれば、なかなか大 変です。しかし、私たちが古典文法を学習する目的は、古文を原文で読めるようになるこ とです。したがって、「強き馬」の「強き」が「馬」を修飾していること、現代語で訳せ ば、「強い馬」となることが分かればよいのです。形容詞の活用表を「く」「から」 「く」「かり」「し」「○」「き」「かる」「けれ」「○」「○」「かれ」などと暗記す る必要はないのです。特に、「く」→「から」というように横に暗記していくやり方は、 理論を無視したもので、受け入れられるものではありません。『古文読解教則本』(駿台 文庫)の p.6~p.7 で、高橋正治先生は、「本来の形容詞と、補助活用は別々に記憶する。 学問は質の違うものを分類することから始まる」「質の違うものは分けて扱わなければな らないのである」とおっしゃっています。また、存在しない活用形の部分(上記の「○」

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の部分)は無視してよいという趣旨のこともおっしゃっています。今回の本文の「強き 馬」の「強き」が形容詞「強し」の連体形であること、「強き馬」の意味が「強い馬」で あることが分かることが重要なのです。活用表を丸暗記しなくても、「強き馬」という記 述を見たら、即座に上記のことが脳裏に浮かべば、それで目的を達するのですから。この ような自然な頭脳の使い方をしたほうがよいと思います。 【第 4 講】 いやあ、なかなか進みませんね。私が事前に予想していた以上に進みません。皆さんに申 し上げたいことは山ほどあるのですけれど……。本当は、皆さん一人一人の机のわきに付 きっきりで付いていて、皆さんの応答をチェックしながら、話し言葉で説明できれば、 もっと速く詳しく、皆さん一人一人の状況に合わせて説明ができるんですが。しかし、着 実に進んでいくことに越したことありません。元気を出していきましょう。 次は、「これを人にも貸し、我も使ひつつ、世を渡るたよりにしけるほどに」の部分を扱 います。「これ」というのは「かしこく強き馬」ですね。ここで注目すべきなのは「つ つ」です。「つつ」というと、現代語では「…しながら」という意味のことが多いですね。 「つつ」の品詞は「助詞」であり、もっと詳しくいうと「接続助詞」です。みなさんの文 法の教科書の助詞の一覧表の中から、「接続助詞」の「つつ」を捜してください。「つ つ」の意味・用法として、確かに、「2 つの動作の並行」を示す場合(つまり「…しなが ら」という意味の場合)もあります。しかし、それ以外に、「動作の反復」を示す場合 (つまり「繰り返し…しては」という意味の場合)もあるのです。有名な「竹取物語」に、 「竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり」という部分があります。これは、「竹を取っ ては何かに使い、竹を取っては何かに使い、というのを繰り返した」という意味です。今 回の本文では、「使ひつつ」ですから、「使っては…し、使っては…し、を繰り返した」 という意味になります。この「…し」の中味が「世を渡るたよりにしける」です。「世を 渡るたより」というのは、テキスト①の解説・解答書 p.3 の通釈にあるように「生計を立 てる手段」という意味です。では、「しける」の部分はどのように解釈しますか?「け る」は、既に 2 度登場している過去の助動詞「けり」ではないでしょうか?助動詞の活用 の一覧表を捜してみますと、助動詞「けり」の「連体形」が「ける」です。なぜ「連体 形」なのかというと、形式名詞「ほど」と接続しているからです。「形式名詞」であって も「体言」ですから、それとつながるには「連体形」になる必要があるのです。ところで、 「形式名詞」というのは名詞としての実質的な意味を失っています。その具体的な内容は、 形式名詞の上の連体修飾語が示しています。今回の本文では、「世を渡るたよりにしけ る」の部分が「ほど」の具体的な内容を示しているわけです。「ほど」というのは「あい だ」「うち」という意味ですから、「世を渡るたよりにしけるほどに」というのは「生計 を立てる手段にしているうちに」という意味になりますね。 ところで、「しけるほどに」の部分の「し」については、まだ検討が済んでいません。 「しける」となっていますから、「し」は「連用形」でなければなりませんね。過去の助 動詞「けり」は「連用形接続の助動詞」であるからです。そうすると、「し」は「連用 形」です。実は、「し」は「動詞」です。そして、「して」「しけり」「したり」などの 接続が可能だということですね(「て」も「けり」も「たり」も「連用形」に接続しま す)。先ほど「世を渡るたよりにしけるほどに」の部分の現代語訳が「生計を立てる手段 にしているうちに」だということを示してあるので、「し」が現代語でいえば「する」と いう意味の動詞だということに気がついた人もいらっしゃるかもしれませんね。そうです。 「し」は動詞「す」の「連用形」です。この「す」はどのように活用するのでしょうか?

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活用してみましょう。「せズ」「しテ」「す。」「するトキ」「すれドモ」「せよ!」と なります。この活用の形は「サ行変格活用」です。サ行変格活用の動詞は「す」「おは す」の 2 語しかありません。

参照

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