下肢や体幹の支持性が低下した患者の自立を促す車 椅子移乗動作
著者 月田 佳寿美, 鈴木 美栄子, 酒井 明子, 松葉 ひと み, 寺下 智章
雑誌名 福井大学医学部研究雑誌
巻 12
号 1.2
ページ 15‑23
発行年 2011‑12
URL http://hdl.handle.net/10098/5109
下肢 や体 幹の支持 性が低 下した患者 の 自立を促す車椅 子移乗 動作
月 田 佳 寿 美,鈴 木 美 栄 子,酒 井 明 子,松 葉 ひ とみ ※1,寺 下 智 章 ※2 看護 学科 臨床 看護 学講座
Wheelchair Transfer Method Promoting Independence of Patients with Decreased Leg and
Trunk Support
TSUKIDA, Kazumi, SUZUKI, Mieko, SAKAI, Akiko, MATSUBA, Hitominl, TERASHITA, Tomoaki2
Department of Clinical Nursing, School of Nursing, Faculty of Medical Sciences, University of Fukui
Abstract :
Wheelchair transfer was conducted twice for 8 patients in the convalescent ward of a general hospital by 22 nursing students (Stage 1) and 8 helpers (Stage 2), once using the regular method (Method 1) and once using a method incorporating independence-promoting transfer assistance (Method 2). Ease of transfer and changes in patient actions for each stage and method were clarified by questionnaire and behavior observation.
1. Transfer time was longer for Method 2 in both Stages 1 and 2 due to increased calls for helper assistance and pre-transfer explanations.
2. With regard to transfer-related subjective scores (TSS), in Stage 1, positive evaluations were given by both patients and nursing students for Method 2 and significant differences were observed compared to Method 1 for four questionnaire items among nursing students (p <0.05). In Stage 2, no differences were observed for both patients and helpers. Possible reasons for the positive evaluation for Method 2 in Stage 1 include feelings of stability due to decreased transfer distance and the sense that the patient was the principal actor in the transfer. Scores in Stage 2 did not change significantly as Methods 1 and 2 were the same for many subjects.
3. Implementing independence-promoting patient assistance increased calls for helper assistance and was linked to feelings of stability during transfer. However, it is unclear how the strength to move was elicited from patients.
Key Words : Wheelchair, Lifting, TSS, Independence, Action observation
N4iliAA13'7Ef144-*7P±
月 田佳 寿 美,鈴 木 美 栄 子,酒 井 明子,松 葉 ひ とみ,寺 下智 章
1.は じめ に
移 乗 動 作 の 研 究 は,介 助 者 の 足 位 置 や 車 椅 子 とベ ッ ドの設 置 角 度 の 違 い に よ る介 助 者 の腰 部 負 担 に着 目 し た も の が多 い。2000年 以 降 は,二 次 元 ・三 次 元 動 作 解 析 に よ る研 究 が増 え て お り,中 村 ら1)は 動 作 解 析 に基 づ く新 しい 移 乗 方 法 を 開発 して い る。 しか し,こ れ ま で の先 行 研 究 は,介 助 者 の 身 体 の使 い方 を 工 夫 して, い か に 楽 に 患 者 を移 乗 させ るか とい う こ とに 主 眼 が あ
り,患 者 の 自立 に は あ ま り目が 向 け られ て い な い と感 じた。 患 者 の 持 て る力 を利 用 す る こ とは看 護 の 基 本 で あ る が,車 椅 子 移 乗 の研 究 につ い て は,患 者 の 持 て る 力 を 引 き 出す とい う視 点 の研 究 は少 な い。
臨床 場 面 で も,介 助 者 が 患 者 の体 重 を 大 腿 前 面 で 受 け て,持 ち 上 げ て移 乗 す る方 法 が と られ て い る こ とが あ り,介 助 者 の 負 担 が 大 き く,患 者 の力 も活 か せ て い な い よ うに 感 じる こ とが あ った 。 ま た,初 め て の 患 者 を移 乗 す る場 面 で は,患 者 の 自立 度 が 分 か らな い た め, で き る部 分 を見 逃 し,援 助 しす ぎ て しま うこ とが あ る。
患 者 が 自分 で 行 お う とす るの を待 つ 時 間 的 な 余 裕 が な い,患 者 自身 が 介 助 者 に依 存 してお り,自 分 で は動 こ う と しな い な ど,介 助 者 が 必 要 以 上 に介 助 して しま う とい うこ とも あ る。
そ の よ うな こ とか ら,患 者 の 自立 を促 す 援 助 の ポイ ン トを 文 献1‑6)を 参 考 に考 え た。 ポ イ ン トは,「 患 者 は十 分 な 前 傾 姿 勢 を と り,重 心 を坐 骨 か ら(健 側)下 肢 に移 動 し,足 部 に 体 重 を感 じ る こ と」 「介 助 者 は患 者 の動 作 を誘 導 す る た め,コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン を とる こ と」 の2点 で あ る。 移 乗 動 作 は,患 者 と介 助 者 の相 互 作 用 で あ り,介 助 者 主体 の 移 乗 で は な く,患 者 の 身 体 の状 態 を 介 助 者 が感 じな が ら移 乗 す る こ とが 必 要 だ と 考 え た。 そ の た め に は コ ミ ュニ ケー シ ョ ン も重 要 で あ る。 こ こで の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン とは,言 葉 と動 作 で 次 に行 う運 動 を誘 導 し,患 者 の 内 力 を 引 き 出 す こ とや, 患 者 の 表 情 や 身 体 に触 れ た感 覚 か ら患 者 に フ ィー ドバ ックす る コ ミュニ ケ ー シ ョ ン を含 む も の で あ る。 これ らの ポ イ ン トは,患 者 の 状 態 い か ん に 関 わ らず,多 く の 患者 に 実 施 可 能 な援 助 で あ る。 これ らの 援 助 を実 施 す る こ とで,患 者 の動 こ うとす るカ は どの よ うに 引 き 出 され るの か,動 作 は どの よ うに変 化 す るの か を ア ン ケー トと行 動 観 察 か ら明 らか に した い と考 え た。
1.用 語 の 定 義
【患 者 の 自立 】
本 研 究 で は,患 者 が 自分 で で き る こ とを 自 ら の意 思 あ る い は 介 助 者 の声 か け に よ り行 う こ と,ま た 行 お う
とす る こ と とす る。
皿.研 究 目的
本 研 究 の 目的 は,研 究者 らが 考 え る患 者 の 自立 を促 す 援 助 の ポ イ ン ト,つ ま り 「患 者 は十 分 な 前傾 姿 勢 を と り,重 心 を坐 骨 か ら(健 側)下 肢 に移 動 し,足 部 に 体 重 を感 じ る こ と」 「介 助 者 は患 者 の 動 作 を誘 導 す る た め,コ ミュ ニ ケー シ ョン を とる こ と」 の2点 を実 施 す る こ とで,患 者 の動 こ うとす るカ は どの よ うに 引 き 出 され るの か,動 作 は どの よ うに変 化 す るの か を 明 ら か にす る こ とで あ る。
研 究 は,健 康 な看 護 学 生 を対 象 と した 第 一 段 階 と, 療 養 型 病 床 群 に入 院 す る 患 者 と介 助 者 を 対 象 と した第 二 段 階 で 実 施 す る。 対 象 者 が 普 段 行 っ て い る方 法(方 法1)と,自 立 を促 す ポ イ ン トを 取 り入 れ た方 法(方 法 2)で,ベ ッ ド上 端 座 位 か ら車 椅 子 着 座 ま で の動 作 を行 い,ア ンケ ー トと行 動 観 察 か ら次 の こ とを 明 らか にす る。
1.患 者 と介 助 者 の移 乗 動 作 主観 得 点(TransferSubject Score以 下TSSと す る;本 研 究 で は一 部 改変)7)か ら, 方 法1と2の 移 乗 しや す さ,安 心 感,身 体 負 担 感 な ど の違 い を 明 らか にす る。
2.患 者 と介 助 者 へ の ア ンケ ー トか ら,方 法1と2の 動 作 の違 い や 介 助 へ の思 い の違 い を 明 らか にす る。
3.行 動 観 察 か ら,方 法1と2の 介 助 者 の言 動 と患 者 の 動 こ う とす る力 や 動 作 の違 い を 明 らか にす る。
W.研 究 方 法 く 第 一 段 階>
1.対 象
健 康 な 看 護 学 生22名
2.デ ー タ 収 集 期 間,デ ー タ 収 集 場 所 平 成21年12.月,A大 学 看 護 学 科 棟 実 習 室 3.患 者 設 定
対 象 者 は2人 ず つ ペ ア に な っ て も ら い,患 者 役 と介 助 者 役 を 決 め て も ら っ た 。 患 者 の 設 定 は 右 片 麻 痺 と し, 患 側 手 首 と足 首 に そ れ ぞ れ1.Okg,2.2kgの 重 り を,肘
一16一
関節 と膝 関 節 に はサ ポ ー タ ー を装 着 した。 重 り とサ ポ ー タ ー は ,イ ンスタン トシニア(山 崎教 育システ ム株 式 会 社 製)を 使 用 した。 健 側 は上 肢 ・下 肢 と も健 康 時 の 半 分 位 の 力 が 入 り,移 乗 はFIM(Functional IndependenceMeasure,以 下FIMと す る)3点(中 等 度 介 助 が必 要 な状 態)と 説 明 した。
4.調 査 方 法 1)デ ー タ収集 方 法
ベ ッ ド上 端 座 位 か ら車椅 子 へ の着 座 ま で の 動 作 を, 方 法1と 方 法2の2種 類 の方 法 で1回 ず つ 実 施 して も
らっ た。 は じめ に方 法1を 実 施 した後,介 助 者 に は患 者 の 自立 を 促 す た め の援 助 の ポ イ ン トを ま と めた 「自 立 を促 す 援 助 技 術 の説 明 書 」 を読 ん で も らい,方 法2 を実 施 した。方 法1に つ い て は,「 普 段 や っ てい る方 法 で実 施 して 下 さい」 と説 明 し,方 法2に つ い て は,「 自 立 を促 す 援 助 の ポ イ ン トを 取 り入 れ て 実 施 し て 下 さ い 」 と説 明 した 。 それ ぞ れ の 方 法 で移 乗 を 実 施 す る た び に,患 者 役 ・介 助 者 役 と も に 自記 式 ア ンケ ー トに答 え て も らっ た 。 移 乗 の様 子 は,患 者 ・介 助 者 と も に全 身 の動 き と表 情 が見 れ る よ う患 者 役 の背 面 側(カ メ ラ
①)と 介 助 者 の背 面 側(カ メ ラ②)の2方 向 か ら ビデ オ カ メ ラ で撮 影 した。
2)「 自立 を促 す 援 助 技 術 の説 明書 」 につ い て
自立 を促 す た め の援 助 の ポ イ ン トを ま とめ た もの で, 研 究 者 らが 作 成 した も の で あ る 。 「患 者 は 十 分 な 前 傾 姿勢 を と り,重 心 を坐 骨 か ら(健 側)下 肢 に 移 動 し, 足 部 に体 重 を感 じる こ と」 「介 助 者 は,患 者 の動 作 を誘 導 す る た め コ ミュ ニ ケー シ ョン を とる こ と」 の2点 を 示 した上 で,さ らに詳 細 な ポイ ン トを記 載 した。
・患 者 は ベ ッ ドに浅 く腰 か け,体 は車椅 子を背 にす る よ うに 斜 め 向 き と しま す 。 足 部 は フ ッ トレス ト に 引 っ か か らな い よ う座 面 の近 くに置 き ます 。
・患者 は 腰 を浮 かす 前 に 体 幹 を十 分 に 前傾 させ ,重 心 を 前 方 に 移 動 します 。 体 重 は,踵 で は な く足 先 に乗 っ て い る こ とを確 認 します 。
・患 者 の 身 体 に触 れ る とき は ,指 先 を広 げ,手 掌全 体 で包 み 込 む よ うに触 れ,患 者 の 両腋 窩 ま た は腰 部 を 支 え ま す 。 手 は,相 手 の 筋 緊 張や 支 持 面 を ど の よ うに 感 じて い る か な ど を感 じ取 る セ ンサ ー の 役 割 を果 た します 。
・患者 の 上 肢 を看 護 師 の 首 に巻 きつ け る こ とは ,前
屈 姿勢 を 困 難 に し,患 者 を依 存 的 にす るた め行 い ませ ん。 患 者 の片 側 上 肢 は 車 椅 子 の ア ー ム レ ス ト を握 っ て も らい ます 。
・看 護 師 は ,言 葉 と動 作で次 に行 う運動 を誘 導 した り,車 椅 子 の 位 置 を教 え た り して,患 者 の 内力 を 引 き 出 します 。
・移 動 は ,患 者 に主導権 を与 えます。患者 が 自分 の 力 で動 き始 め る の を待 ち ま す 。 あ る い は 自分 で 動 き始 め る よ う声 を か け て か ら介 助 を始 め ま す 。 介 助 は患 者 のペ ー ス に合 わせ て,ゆ っ く り行 い ま す。
慌 て て患 者 を動 か さな い よ うに しま し ょ う。
3)調 査 項 目 (1)行 動観 察
参 加 観 察 と ビデ オ の 画 像 か ら,患 者 ・介 助 者 の行 動 と患 者 の 動 こ う とす る 力 や 動 作 を あ りの ま ま 記 述 した 。
(2)ア ンケ ー ト
対 象 者 の属 性,移 乗 動 作 主 観 得 点(TSSを 一 部 改 変), 患 者 の移 乗 の 満 足 感,移 乗 動 作 につ い て,ひ や っ と し た体 験 の有 無,普 段 の 方 法 との違 い に つ い て 質 問 した。
TSSは 水 戸 ら7)が 開発 した 移 乗 に関 す る評 価 尺 度 で, 得 点 が 低 い ほ ど肯 定 的 で あ る こ と を示 す 。 「安 定 感 」
「安 心 感 」 「移 乗 の しや す さ」 「麻 痺 足 保 護 感 」 「身 体 負 担 感 」 の5項 目を7段 階 で評 価 す る も の で,本 研 究 で は 「不 安 感 」 を加 え た6項 目で評 価 を行 っ た。 患 者 の移 乗 の満 足 感 は,「 お お い に満 足 」か ら 「お お い に不 満 足 」 の7段 階 で評 価 した。 移 乗 動 作 につ い て は,患 者 に は 「どの よ うに動 こ うと思 っ た か,動 い た か 」 「介 助 者 の援 助 とそ れ に対 して 行 お う と思 っ た こ と」 を, 介 助 者 に は 「ど の よ うに 介 助 しよ う と思 っ た か,介 助
した か 」 「患 者 の 反 応 と そ れ に対 して 行 お う と思 っ た こ と,行 っ た こ と」 を 自由記 述 で 回答 して も らっ た。
5.分 析 方 法
行 動 観 察 の結 果 は 内容 分 析 を行 っ た。ア ンケ ー トは, 単 純 集 計 を行 い,TSSは 方 法1と 方 法2で ウイ ル コ ク ス ン の符 号 付 順 位 和 検 定,自 由記 述 は 内容 分析 を行 っ た。
統 計 処 理 に は,IBMSPSSStatistics19を 使 用 した。
<第 二 段 階>
1.対 象
A県 内 の療 養 型 病 床 群 に入 院 す る患 者8名 と介 助 者 8名
2.デ ー タ 収集 期 間,デ ー タ 収集 場 所
月 田佳 寿 美,鈴 木 美 栄 子,酒 井 明子,松 葉 ひ とみ,寺 下智 章
平 成22年2月,療 養 型 病 床 群 の 一 室 3.調 査 方 法
第 一 段 階 に 同 じ 4.分 析 方 法
第 一 段 階 に 同 じ
V.倫 理 的配 慮
文 書 と 口頭 で 対 象 者 に説 明 を行 い,同 意 書 に署 名 を い た だ い た 。 研 究 へ の参 加 は 自 由意 思 で あ り,い つ で も と りや め る こ とが で き る こ と,撮 影 した 画 像 や ア ン ケー トは,個 人 が 特 定 され る よ うな 扱 い を しな い こ と, 研 究結 果 が ま とま っ た 時 点 で 破 棄 す る こ と,安 全 に は 十 分 に 配 慮 して 行 う こ とな ど を約 束 した。 第 二 段 階 の デ ー タ 収集 は,対 象 施 設 の 所 属 長,看 護 師 長 の 許 可 を 得 て行 い,対 象 者 の疲 労 や 苦 痛 の有 無 な ど体 調 をみ な が ら実施 した 。 なお,本 研 究 は,福 井 大 学 医 学 部 倫 理 審 査 委 員 会 の承 認 を得 て行 っ た。
ず り は,方 法2で 少 な い 。 こ れ は 患 者 自身 の 下 肢 へ の 注 意 が 増 す た め で あ る 。
4.方 法2で は,介 助 者 の 働 き か け に よ り,患 者 の 動 こ う とす る 力 や 動 作 が み られ る 。
皿.結 果 く 第 一 段 階>
1.対 象 者 の 属 性
対 象 者22名 中,1名 の み 男 性 で あ っ た 。 平 均 年 齢 は 22.4±3.6歳,身 長 は 患 者 役155.8±8.7cm,介 助 者 役 161.7±5.5cmだ っ た 。
2.方 法1と 方 法2の 違 い
移 乗 時 間 は,方 法1は17.18±7.65秒,方 法2は30.18
±11.66秒 だ っ た(表1)。 患 者 の 身 体 と車 椅 子 の 接 触 は,い ず れ も な か っ た 。 患 者 の 移 乗 の 満 足 感 は,方 法1 は4.82±1.54点,方 法2は5.64±1.21点 で,方 法2 で 満 足 感 が 高 か っ た 。
VI.仮 説
1.移 乗 時 間 は 方 法2で 長 い 。 こ れ は 介 助 者 の 声 か け, 動 作 の 誘 導,患 者 の 反 応 を 待 つ な ど の 行 動 が 増 え る た め で あ る 。
2.TSSは 患 者,介 助 者 と も に 方 法2で 低 い 。 こ れ は 方 法2の 方 が,安 全 ・安 楽 に 移 乗 で き る た め で あ る 。 3.移 乗 中 の 患 者 の 身 体 と車 椅 子 の ぶ つ か りや 足 の ひ き
表1移 乗 の 違 い く第 一 段 階 〉
移 乗時間 患者の身体 と 車椅 子の接触
患者 の満足感
方 法1(n=11) 17.18±7.65秒
な し
4.82±1.54点
方 法2(n=11) 30.18±11.66手 少
な し
5.64±1.21点
表2TSS得 点 く 第 一 段 階 〉
占
患 者 (n=11)
介助者祠
方 法1
方 法2
方 法1
方 法2
安定感
3.09±2.07
2.09±1.14
4.10±1.66*
2.30±0.48*
安心感
3.36±1.96
2.09±1.14
4.10±1.54*
2.70±1.16*
移 乗 し や す さ
3.55±1.92
2.00±1.18
3.70±1.64
2.50±0.85
麻痺足 保護感
3.55±1.51
2.64±1.12
3.90±1.60*
2.90±0.74*
身体 負担 感
4.36±1.63
3.91±1.45
4.30±1.06
3.80±2.04
不安感
4.18±2.09
3.09±1.14
4.90±0.88*
3.50±1.35*
TSS合 計 点
22.09±9.42
15.82±5.34
25.00±6.52*
17.70±5.29*
ウ イル コ クス ンの 符 号 付 順 位 和 検 定*p〈0.05
一18一
表3 ア ンケ ー ト結 果 く第 一 段 階 〉 (患 者n=11,介 助 者n=11)
介 助 者 が 自 立 を 促 す た め に 行 った こ と
自立 を 促 す た め に 行 っ た 内 容
移 乗 の しや す さ に 違 い は あ った か
違 い の 内 容
患者介助者
方 法1
あ り7名,な し1名,記 入 な し3名
健 側 を使 うよ う促 す(3),肩 の 後 ろで 腕 を組 ん で も ら う(1),ど こ ま で で き るか 見 て か ら 力 を 加 え る(1),な るべ く 自分 の 力 で して も ら う(1)
方法2
あ り8名,な し1名,記 入 な し2名
健 側 を使 う よ う促 す(3),左 手 で ア ー ム レス ト に つ か ま る(D,立 ち 上が り時 の前 傾(1),な
るべ く自分 で す る よ う声 か け(4),肩 の 後 ろで 腕 を組 ん で も ら う(1)
患者9名,介 助 者5名 が あ っ た と答 え た 。
移 乗 の 主体 が介 助 者 で は な く患 者 だ っ た(2),自 分 の 位 置 や 車 椅 子 の ま で の 距 離 を 考 え る こ とで, 力 が 入 りや す くな っ た(1),動 作 距 離 が 短 く安定 感 が あ っ た(1)
アー ム レス トを持 っ て も ら うこ と で,負 担 が 軽 減 した(1),前 傾 に な って 自分 で 立 って も ら う こ と で,腰 の 負担 が軽 減 した(D,患 者 と車 椅 子 の距 離 が 近 くな り,や りやす か っ た(D
TSS得 点 は,患 者 ・介 助 者 と も に 「安 定 感 」 「安 心 感 」
「移 乗 しや す さ 」 「麻 痺 足 保 護 感 」 「身 体 負 担 感 」 「不 安 感 」 す べ て の 項 目 で 方 法2が 低 く,肯 定 的 な 評 価 で あ っ た(表2)。 方 法1と 方 法2で ウイ ル コ ク ス ン の 符 号 付 順 位 和 検 定 を 行 っ た と こ ろ,介 助 者 の 「安 定 感 」
「安 心 感 」 「麻 痺 足 保 護 感 」 「不 安 感 」 「合 計 点 」 で 有 意 差 が あ り(p〈0.05),方 法2で 有 意 に 評 価 が 高 か っ た 。 患 者 は,方 法1と 方 法2で 有 意 差 は な か っ た 。
介 助 者 が 自 立 を 促 す た め に 行 っ た こ と は,方 法1は7 名,方 法2は8名 が 「あ り」 と 答 え た(表3)。 内 容 は,
「健 側 を 使 う よ う促 す 」 が い ず れ も3名 で 多 か っ た 。 方 法2で は,「 な る べ く 自 分 で す る よ う声 か け 」 が4名
と多 か っ た 。 ま た 方 法1に 比 べ て,「 左 手 で ア ー ム レ ス トに つ か ま る 」 「立 ち 上 が り時 の 前 傾 」 な ど具 体 的 な 援 助 が み られ た 。 方 法1と 方 法2で,移 乗 の しや す さ に 違 い は あ っ た か と い う質 問 に,患 者9名,介 助 者5名 が 「あ っ た 」 と答 え た 。 違 い の 内 容 は,患 者 で は 「移 乗 の 主 体 が 介 助 者 で は な く患 者 だ っ た 」2名,「 動 作 距 離 が 短 く,安 定 感 が あ っ た 」1名 な ど で あ っ た 。 介 助 者 で は,「 ア ー ム レ ス トを 持 っ て も ら う こ と で,負 担 が 軽 減 し た 」1名,「 前 傾 に な り 自分 で 立 っ て も ら う こ と で 腰 の 負 担 が 軽 減 し た 」1名 な ど で あ っ た 。
行 動 観 察 の 結 果,方 法1で は み ら れ ず 方 法2で み ら れ た 介 助 者 の 行 動 が3つ あ っ た 。 「な る べ く 自分 で や っ て 下 さ い 。(で き な い と こ ろ は 介 助 しま す)」 の 声 か け5 名,「 左 足(健 側)に 力 入 れ て ね 」 の 声 か け6名,「 左 手(健 側)で 遠 い 方 の ア ー ム レ ス トに つ か ま っ て も ら
う」6名 で あ っ た 。 「両 上 肢 を 介 助 者 の 首 に ま わ し て も ら う」 は 方 法1で8名,方 法2で3名 に み られ,共 通 し た 行 動 で あ っ た 。
〈 第 二 段 階>
1.対 象 者 の 属 性
患 者 は,男 性2名,女 性6名 で,年 齢 は69〜90歳(平 均 年 齢83.3±6.8歳)で あ っ た(表4)。 両 変 形 性 膝 関 節 症,腰 部 脊 柱 管 狭 窄 症 な ど 運 動 器 疾 患 が 多 く,下 肢 の 支 持 性 は 麻 痺 の た め 左 下 肢 な し1名,両 下 肢 あ り
(MMT2〜4)7名 で あ っ た 。
介 助 者 は,男 性1名,女 性7名 で,年 齢 は21〜45歳 (平 均 年 齢31.4±8.2歳)で あ っ た 。 職 種 は 全 員 ヘ ル パ ー で,経 験 年 数 は1〜12年(平 均5年1ヶ .月±2年 10ヶ 月),全 介 助 で の 車 椅 子 移 乗 回 数 は4〜15回/日(平 均8。5±3。6回/日)で あ っ た 。
2.方 法1と 方 法2の 違 い
移 乗 時 間 は,方 法1は14.00±5.68秒,方 法2は19.63
±8.55秒 だ っ た(表5)。 患 者 の 身 体 と車 椅 子 の 接 触 は, い ず れ も な か っ た 。 患 者 の 移 乗 の 満 足 感 は,方 法1は 6.00±1.41点,方 法2は6.25±1.04点 で,方 法2で 満 足 感 が 高 か っ た 。
TSS得 点 は,患 者 ・介 助 者 と も に 方 法1と2で 明 ら か な 違 い は み られ な か っ た(表6)。
介 助 者 が 自立 を 促 す た め に 行 っ た こ と は,方 法1は6 名,方 法2は4名 が 「あ り」 と 答 え た(表7)。 内 容 は 方 法1・2と も に 声 か け に 関 す る こ と が 多 か っ た 。 方 法 1は,「 動 作 を 細 か く声 か け す る 」1名,「 動 作 前 後 の 声
月 田佳 寿 美,鈴 木 美 栄 子,酒 井 明子,松 葉 ひ とみ,寺 下智 章
か け に よ る 不 安 の 軽 減 」1名,「 次 に 行 う こ と を 声 か け す る こ と で 患 者 に 心 構 え を し て も ら う」1名 な ど で あ っ た 。方 法2は,「 声 か け 」3名,「 動 作 を 細 か く声 か け す る 」1名,「 健 側 の 筋 力 を使 用 」1名,「 し ば ら く待 っ て で き な い よ う な ら介 助 す る 」1名 な ど で あ っ た 。 方 法1
と方 法2で,移 乗 の しや す さ に 違 い は あ っ た か と い う 質 問 に,介 助 者1名 の み が 「あ っ た 」 と答 え た 。 意 見
と し て,力 の 流 れ を 活 用 し て 患 者 の 自 立 を 促 す こ と は 効 果 が あ る が,タ イ ミ ン グ や バ ラ ン ス が つ か め な い と 全 介 助 時 よ り介 助 者 へ の 負 担 が 増 え る 可 能 性 が あ る と い う こ と が あ っ た 。
行 動 観 察 の 結 果,方 法1と2で 移 乗 の や り方 が 変 わ ら な か っ た ケ ー ス が5例 と多 か っ た 。 そ の 内 訳 は,も と も と患 者 の 自 立 度 が 高 か っ た2例,患 者 が 拒 否 し た1 例,四 肢 の 不 全 麻 痺 で 支 持 性 が 弱 く,方 法2が 十 分 実 施 で き な か っ た1例 で あ っ た 。 研 究 者 が 示 し た 自立 を 促 す ポ イ ン トの 一 つ で あ る 「ベ ッ ド端 へ の 移 動 」 を 行 っ た ペ ア が1例 あ っ た が,患 者 と介 助 者 の 移 乗 の しや す さ に 違 い は な か っ た 。 ま た 方 法1で は 全 介 助 だ っ た が,方 法2で は 見 守 り の み で 移 乗 した 例 が1例 あ っ た 。
表4対 象 者 の 属 性 く 第 二 段 階 〉
患 者 (n=8)
介助者醐
年 齢,性 別
疾患 名
運動麻痺
下肢 の支持生
身長
体重
年 齢,性 別
経験 年数 全 介 助 で の 移 乗 回数(日) 身長
69〜90歳(平 均83.3±6.8歳), 男 性2名,女 性6名
両 変形 性 膝 関節 症,腰 部脊 柱 管狭 窄症,頚 椎 症 性 脊 髄 症,人 工股 関 節 置 換 術 後
四 肢不 全 麻痺2名,左 片 麻 痺1名, な し5名
左 下 肢 な し(麻 痺)1名,両 下 肢 あ り(MMT2〜4)7名
140〜170cm(平 均151.5±10.5cm)
35.7〜57.6kg(平 均47.5±8.4kg)
21〜45歳(平 均31.4±8.2歳), 男 性1名,女 性7名
1〜12年(平 均5年1ケ 月 ±2年 10ヶ 月)
4〜15回/日(平 均8.5±3.6回/
日)
150〜170cm(平 均161.6±6.6Gm)
表5移 乗 の 違 い く第 二 段 階 〉
移 乗時間 患者 の身体 と 車椅子 の接触 患者 の満足感
方 法1(n=8) 14.00±5.68禾 少
な し
6.00±1.41点
方 法2(n=8) 19.63±8.55禾 少
な し
6.25±1.04点
表6TSS得 点 く 第 二 段 階 〉
占
患 者 (n=8)
介助者膚
方 法1
方 法2
方 法1
方 法2
安 定感
2.13±2.42
1.88±2.48
2.57±1.72
2.25±1.28
安心感
1.00±0.00
1.25±0.46
3.13±1.96
2.63±0.74
移 乗 し や す さ
1.75±1.40
1.88±0.99
2.63±1.60
2.88±1.13
麻痺足 保護感
2.75±2.66
3.88±2.90
3.13±1.81
3.13±1.36
身体 負担 感
2.29±2.22
2.50±2.33
4.13±2.17
4.63±2.13
不安感
3.25±2.71
2.57±2.70
3.63±2.13
3.88±1.64
TSS合 計 点
14.00±9.18
13.86±10.07
18.71±9.21
19.38±6.05
ウ イル コ クス ンの 符 号 付 順 位 和 検 定 で 有 意 差 な し
一20一
表7ア ンケ ー ト結 果 く 第 二 段 階 〉 (患 者n=8,介 助 者n=8)
介 助 者 が 自立 を 促 す た め に 行 った こ と
自立 を 促 す た め に 行 った 内 容
移 乗 の しや す さに 違 い は あ っ た か
方 法1
あ り6名,な し1名,記 入 な し1名
動 作 を細 か く声 か けす る(1),動 作 前 後 の 声 か け に よ る不 安 の 軽 減(1),次 に 行 う こ と を声 か けす る こ と で患 者 に心 構 え を して も ら う(D
方 法2
あ り4名,な し1名,記 入 な し3名
声 か け(3),動 作 を細 か く声 か けす る(1),健 側 の 筋 力 を使 用(1),し ば ら く待 って で きな い よ うな ら介 助 す る(1)
患 者0名,介 助 者1名 が あ っ た と答 えた 。
皿.考 察
第 一 段 階 で は,仮 説 の通 り方 法2で 移 乗 時 間 が延 長 して い た 。 これ は,移 乗 前 の 説 明や,そ の都 度 の 声 か け が増 え た た め と考 え る。 介 助 者 の ア ン ケ ー トか ら, 方 法2で は 「左 手 で ア ー ム レス トに つ か ま る よ う促 す 」
「立 ち 上 が り時 に前 傾 姿 勢 を と らせ る 」 な どの 援 助 が み られ,「 な るべ く 自分 で す る よ う声 か け」す る こ とも 増 え て い た 。 撮 影 した ビデ オ 画 像 を分 析 した 行 動 観 察 の結 果 か らも,方 法1で はみ られ な か っ た援 助 と して そ れ ら の援 助 が み られ た 。 「な る べ く 自分 で や っ て 下 さい。(で き な い と こ ろ は介 助 しま す)」 とい う声 か け は,ア ンケ ー トで は 方 法1・2と もに み られ た が,実 際 の行 動 と して観 察 され た の は方 法2の み で あ っ た。 看 護 学 生 は 車 椅 子 移 乗 介 助 に あた り,普 段 か ら患 者 の 自 立 を意 識 して い る が,実 際 の 行 動 や 援 助 に 結 び つ い て い な い可 能 性 が あ る。 方 法2で 具 体 的 な援 助 の ポイ ン トを示 した こ とで,自 立 に 向 け た 援 助 の 方 法 が わ か り, 実 施 で き た と考 え る。 しか し,声 か け が抽 象 的 で あ る こ とや,患 者 の安 全 ・安 楽 の確 認 不 足 が あ っ た 。 「な る べ く 自分 で や っ て 下 さい 。(で き な い と こ ろ は介 助 し ます)」 の声 か けが よ く され て い た が,患 者 は 自分 で何 が で き るか 分 か らな い場 合 が あ る の で,具 体 的 な 動 作 を示 して,内 力 を 引 き 出 す 必 要 が あ る と考 え る。 そ れ が 患 者 の 自立 に っ な が り,「 で き な い と こ ろ は介 助 し ます 」 とい う声 か け は,患 者 に保 証 や 安 心 を 与 え る と 考 え る。 「左 足(健 側)に 力 入 れ て ね 」 の声 か け は6名 が 実施 して い た 。 健 側 に 力 を入 れ る こ と,つ ま 先 に重 心 を移 す こ と を繰 り返 し説 明 して い る が,ど の く らい 力 が入 るの か 確 認 して い る介 助 者 は い な か っ た 。 ま た 声 を か け な が ら足 に触 れ て い た の は2名 で あ っ た。 患 者 に理 解 力 が あ り,下 肢 へ の 力 の入 り具 合 を 確 認 した り,立 ち 上 が りや 立 位 を保 持 で き る か ど うか 判 断 が で
き る場 合 は よい が,思 わ ぬ 転 倒 につ な が る可 能 性 が あ る の で,注 意 が 必 要 で あ る。 「左 手(健 側)で 遠 い方 の アー ム レス トにつ か ま っ て も ら う」 こ とは6名 が実 施 して い た。 こ うす る こ とで 健 側 上 肢 の力 が 活 か され, ま た 自然 と前 傾 姿 勢 を と る こ とに な る。 姿 勢 バ ラ ン ス が変 わ るた め,患 者 は 不 安 を伴 うこ と も考 え られ,声 か け が 必 要 と考 え る。 姿 勢 バ ラ ン ス の変 化 に 注 意 を 向 け,声 か け を して い た介 助 者 は い な か っ た の で,転 倒 や 患 者 の 不 安 へ の配 慮 が 必 要 と感 じた。 声 か け につ い て は,具 体 的 な動 作 を示 した り,患 者 の 内 力 を 引 き 出 す 上 で 重 要 で あ る が,抽 象 的 な 声 か け に な らな い よ う にす る こ と と,患 者 の 状 態 をそ の都 度 確 認 しな が ら, そ の 時 々 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが 大 切 で あ る と考 え る。
ま た行 動 観 察 で は,方 法1・2と もに 「患 者 の 両上 肢 を 介 助 者 の 首 に回 して も ら う」 方 法 がみ られ た 。 両 上 肢 を介 助 者 の 首 に 回す こ とで,健 側 上 肢 の 力 は 活 か され な くな り,患 者 は身 体 を 介 助 者 に預 け る こ と に な る。
患 者 は 車椅 子 の方 を 見 な くな る の で,内 力 を引 き 出す こ とが で きな い 。 よ っ て 患 者 の 自立 を促 す 上 で,両 上 肢 を介 助 者 の 首 に 回 して も ら うこ とは,適 切 な 介 助 と は な らない と考 え る。
TSS得 点 は,患 者 ・介 助 者 と もにす べ て の項 目で,方 法2が 肯 定 的 な評 価 で あ っ た。 介 助 者 で は 「安 定 感 」 な ど4項 目で有 意 差 がみ られ た。 患 者 の移 乗 の満 足 感 も,方 法2で 評 価 が高 か っ た。 これ らは,ア ン ケー ト の結 果 か ら,方 法2で は,患 者 は移 乗 の主 体 が介 助 者 で は な く患 者 だ と感 じた こ と,車 椅 子 に 対 して 平 行 に 端 座 位 を と る こ とで移 動 距 離 が 短 縮 し,安 定感 が あ っ た と感 じた こ と,介 助 者 で は ア ー ム レス トを持 っ て も ら う こ と,車 椅 子 に対 して 平 行 に端 座 位 を と る こ と, 前 傾 姿 勢 に な る こ とで,介 助 者 の腰 の負 担 が 軽 減 した
と感 じた こ とが,評 価 にっ な が っ た と考 え る。
月 田佳 寿 美,鈴 木 美 栄 子,酒 井 明子,松 葉 ひ とみ,寺 下智 章
今 回 提 案 した 患 者 の 自立 を促 す 援 助 の ポ イ ン トは, 患 者 の 理解 力 や 身 体 能 力 が あれ ば活 用 可 能 で,患 者 ・ 介 助 者 の 移 乗 の 満 足 感 や 負 担 の 軽 減 に つ な が る と考 え る。 た だ し,実 際 に麻 痺 の あ る患 者 で は,具 体 的 な行 動 を示 す こ と,理 解 力 や 上 肢 ・下 肢 の支 持 性 をそ の都 度 確 認 す る こ と,姿 勢 バ ラ ンス の 変 化 に 注 意 す る こ と, 不 安 の軽 減 を 図 る こ とに注 意 が必 要 で あ る。
第 二段 階 で は,方 法2で 移 乗 時 間 が延 長 し,患 者 の 満 足 感 も高 か っ た が,TSS得 点 に違 い はみ られ な か っ た。
ア ン ケー トで は,方 法2で 介 助 者 が行 っ た こ と と して, 声 か け が 増 え,健 側 の筋 力 を使 用 す る,し ば ら く待 つ な どの 回 答 が 得 られ た。 移 乗 の しや す さに 違 い は あ っ た か とい う質 問 に,「 あ っ た 」 と答 え た の は介 助 者1名 の み で あ っ た 。 行 動 観 察 の 結 果 か ら,患 者 の 自立 を促 す 援 助 の ポ イ ン トの一 つ で あ る 「ベ ッ ド端 へ の 移 動 」 を実 施 した事 例 や,方 法1で は全 介 助 で あ っ た が,方 法2で は見 守 りのみ で移 乗 した事 例 が あ っ た。 しか し それ らの 方 法 の 違 いや,実 施 してみ て の感 想 は ア ン ケ ー トか らは 明 らか で な か っ た。 そ れ ら方 法 の 違 い が み られ た事 例 が あ っ た一 方 で,方 法1と2で や り方 が変 わ らな か っ た事 例 も5例 と多 か っ た。 第 二 段 階 の対 象 は療 養 型 病 床 群 に入 院 中 の 高 齢 の患 者 で あ り,患 者 の 理 解 力 や 普 段 と違 うや り方 へ の 戸 惑 い が,結 果 に影 響 した と も考 え られ る。 第 一 段 階 の考 察 で も述 べ た よ う に,今 回 提 案 した患 者 の 自立 を促 す 援 助 の ポ イ ン トで あ る 「患 者 は 十 分 な前 傾 姿 勢 を と り,重 心 を 坐 骨 か ら (健側)下 肢 に移 動 し,足 部 に 体 重 を感 じ る こ と」 「介 助 者 は 患 者 の 動 作 を誘 導 す るた め,コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン を とる こ と」 の2点 は,患 者 の理 解 力 や 身 体 能 力 が あ る程 度 あ り,転 倒 防止 や 患 者 の不 安 へ の 配 慮 が され れ ば活 用 可 能 と考 え る。 特 に,移 乗 介 助 を 長 く受 け て い る 患者 で は,方 法 を 変 え る に は十 分 な説 明 と,安 全 の保 証 が必 要 で あ る。
今 回 の研 究 結 果 か ら,今 回 提 案 した 自立 を 促 す 援 助 の ポ イ ン トを実 施 す る に は,患 者 の理 解 力 や 身 体 能 力 が影 響 す る とい うこ とが 分 か った の で,対 象 の 条 件 を 変 え な が ら,ど の よ うな 対 象 に実 施 可能 で あ るの か 検 討 して い き た い 。 ま た,患 者 の 自立 を促 す た め に は, コ ミュ ニ ケ ー シ ョン と安 全 を保 証 す る こ とが 大 事 で あ る と感 じた の で,患 者 の 内 力 を 引 き 出す よ うな コ ミュ ニ ケー シ ョン につ い て考 え て い き た い。
皿.結 論
看 護 学 生22名 と療 養 型 病 床 群 に入 院 す る患 者8名, 介 助 者8名 を対 象 に,研 究 者 らが提 案 す る患 者 の 自立 を促 す 移 乗 介 助 の ポ イ ン トを実 施 す る こ とで,患 者 の 動 こ う とす る力 は どの よ うに 引 き 出 され るの か,動 作 は どの よ うに変 化 す る の か をア ン ケー トと行 動 観 察 か
ら明 らか に した。
1.移 乗 時 間 は,看 護 学 生 を 対 象 と した 第 一 段 階,療 養 型 病 床 群 に 入 院 す る 患者 と介 助 者 を対 象 と した 第 二 段 階 とも に,普 段 の方 法(方 法1)と,自 立 を促 す ポイ ン トを取 り入 れ た方 法(方 法2)で,方 法2で 長 か っ た。
これ は移 乗 前 の説 明や,そ の 都 度 の声 か け が 増 え た た め で あ っ た。
2.TSS得 点 は,第 一 段 階 で は患 者 ・介 助 者 とも に方 法 2で 肯 定 的 な 評 価 で あ り,介 助 者 で は4つ の項 目で有 意 差 がみ られ た(p〈0.05)。 第 二 段 階 で は,患 者 ・介 助 者 と もに違 い が み られ な か っ た 。 第 一 段 階 で は,方 法2 で移 乗 の 主 体 が 患 者 で あ る と感 じた こ と,移 動 距 離 が 短 くな り安 定 感 が あ っ た こ と,介 助 者 の負 担 が 軽 減 し た こ とが 肯 定 的 な評 価 に つ な が っ た と考 え る。 第 二 段 階 で は,移 乗 の方 法 が 変 わ らな か っ た対 象 者 が 多 か っ た た め,得 点 の変 化 につ な が らな か っ た と考 え る。
3.患 者 の 身 体 と車 椅 子 の 接 触 は,今 回 の調 査 で はみ ら れ な か っ た。
4.患 者 の 自立 を促 す 援 助 の ポイ ン トを実 施 す る こ とで, 介 助 者 の 声 か け が増 え,移 乗 の 安 定 感 に つ な が る こ と が分 か っ た 。 しか し,患 者 の 動 こ う とす る力 が ど の よ
うに 引 き 出 され る の か は 明 らか で な か っ た。
謝 辞
本 研 究 の 対 象 者 と して ご協 力 い た だ き ま した 皆 様, な らび に 対 象 施 設 の ス タ ッ フの 皆 様 に深 く感 謝 い た し ます 。
引 用 ・参 考 文 献
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2.藤 井 誉 行:?が わ か る 知 っ と く ナ ッ トク 運 動 学4.移 動 の 介 助 〜 誘 導 〜,リ ハ ビ リナ ー ス,1(4),87,2008.
3,山 崎 祐 輔,萩 野 浩:病 棟 ナ ー ス に し て ほ し い 整 形 外 科 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 起 居 動 作 ④ ベ ッ ド上 端 座 位 か ら 車 椅
一22一
子 へ の トラ ン ス フ ァ ー,整 形 外 科 看 護,13(10),4‑8,2008.
4フ ラ ン ク ・ハ ッ チ 他:キ ネ ス テ テ ィ ク 健 康 増 進 と 人 の 動 き そ し て そ の 介 助 へ の 応 用,日 総 研,2004.
5細 江 さ よ 子:ベ ッ ドサ イ ドか ら は じ め る や さ し い 介 助 技 術 介 護 職 ・コ メ デ ィ カ ル ・ ご 家 族 の た め に,金 原 出 版, 2007.
6杉 優 子 他:患 者 さ ん が 安 心 で き る トラ ン ス フ ァ ー の ワ ザ
<介 助 ・誘 導 の ワ ザ と コ ツ5>移 乗 動 作,リ ハ ビ リナ ー ス, 1(1),34‑44.2008。
7水 戸 優 子:片 麻 痺 患 者 へ の 車 椅 子 移 乗 介 助 技 術 に お け る 看 護 者 の 足 位 置 に つ い て の 生 体 力 学 的 分 析 一 基 礎 的 研 究 一,神 奈 川 県 立 保 健 福 祉 大 学 誌,1(1),7‑18,2004.
8伊 丹 君 和 他:片 麻 痺 模 擬 患 者 へ の 車 椅 子 移 乗 援 助 に 関 す る 研 究 一 患 者 の 安 全 ・安 楽 ・ 自 立 お よ び 看 護 者 の 腰 痛 予 防 を 考 慮 し て 一,人 間 看 護 学 研 究,3,19‑28,2004.
9水 戸 優 子:片 麻 痺 患 者 へ の 車 椅 子 移 乗 介 助 技 術 に お け る 看 護 師 の 足 位 置 に 関 す る 臨 床 研 究,神 奈 川 県 立 保 健 福 祉 大 学 誌,3(1),39‑48,2006.
10住 居 広 士 他:移 乗 介 護 に お け る ベ ッ ドか ら の 車 椅 子 設 定 角 度 の バ イ オ メ カ ニ ク ス 解 析,広 島 県 立 保 健 福 祉 大 学 誌 人 間 と科 学,5(1),97‑107,2005.
11盛 永 ゆ か 他:椅 子 か ら の 立 ち 上 が り動 作 に つ い て 一 座 面 角 度 に よ る 相 違 一,理 学 療 法 福 岡,15,57‑60,2002.
12高 柳 智 子:車 椅 子 移 乗 動 作 に お け る 移 乗 方 向 ・配 置 角 度 の 検 討 一 片 麻 痺 体 験 装 具 に よ る 基 礎 実 験 を 行 な っ て 一, 第35回 看 護 総 合,255‑257,2004.
13本 名 靖 他:腰 痛 を 防 止 す る 新 しい 移 乗 介 助 技 術 の 開 発 に 関 す る 研 究,東 海 大 学 健 康 科 学 部 紀 要,9,19‑28,2003.