近畿大学工学部研究報告 No.43,2oo9年,pp.55‑60 Research Reports of the Faculty of Engineering,
Kinki University No.43 2009, pp.55‑60
メカニカルアロイング法を用いた L aA l 系合金の創製とその水素親和'性
信 木 関 へ 久 慈 俊 郎 付 , 旗 手 稔 *
S y n t h e s i s o f L aA l A l l o y s by Mechanical A l l o y i n g Method and T h e i r Hydrogenation P r o p e r t i e s
Tohru NOBUKI , T o s h i o KUJI and Minoru HATATE
Synopsis
We have demonstrated in our previous repo此 thatthe excess energy created during mechanical alloying (MA) yielded alloying of couples with negative mixing enthalpy and the new temary bcc phase was formed. It was noticed that the important issue there was the structural correlation between the Laves phase and bcc structures. The aims of this study is to s戸thesizeLaAI2 based bcc alloys in structural relation to the Laves phase structure with additive element 玖 and to c1arifシtheabove issue on the structure and hydrogenation. The parent materials used in this study were LaAI2 and V metal powders. The M A was performed under Ar gas atmosphere and the rotation speed is 710 rpm. The ratio of powder to ball weight is 1 : 40.
The results are summarized as follows: 1) We could not synthesis the single bcc phase from 60 hours of MA. After 60 hours of MA, amorphous phase was formed. 2) From the TEM bright image observation, we have confirmed that the alloy is composed by nano size particles such as 20 nm of diameter of crystalline particles. 3) The TDS was used to measure the hydride properties of the synthesized powders. The results showed that hydrogen was not absorbed after hydrogenation treatmen. t
Keywords Mechanical alloying, Laves phase, Aluminum Lanthanum, Mechanical grinding, X‑ray diffraction, Nano crystalline, TEM observation
1. 緒言
メカニカルアロイング法(以下M A法)は,異種粉末を 高エネルギーのボールミルで原子レベルまで混合する方 法であり結晶質あるいは非品質合金粉末が合成できる.
よって,ミリング条件で合成粉末のさらにはその焼結体 の組織や性質を制御できる可能性があり,均一微細な組 織で高温強度あるいは超塑性に優れた金属間化合物の製 造方法として極めて有望である1‑3).
著者らはこのことに着目し, M Aによって加えられる 過剰な機械的エネルギーは,従来合金化不可能とされて きた元素の組み合わせを可能とするとと,合金の組成範 囲を拡げることを可能とするととを明らかにし,また,
女近畿大学工学部機械工学科
H 東 海 大 学 開 発 工 学 部 物 質 化 学 科
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創製粉末の新規機能性の発現を目的として水素吸収特性 について報告してきた rη. すなわち, C14構造ラーベ ス相のCaMg2合金とbcc構造のV元素についてM Aを 行うととにより, bcc構造を有するCaMg2V系合金が創 製でき,本創製合金粉末は,不可逆ながらおよそ 3 mass%の水素を吸収できため.このととは,秋葉ら の'Lavesphase related BCC solid solution9)'や,他報 lO,l1)を裏付ける結果であり,bcc構造合金の創製へのラー ベス相の相関性と合金の新規機能性の発現に期待される 結果である.
そとで本研究では,これまでに合金創製に成功した12)
構造と同型のMgCU2型構造に着目し,既報告めより原子 Department of Mechanical Engineering, Faculty of Engineering, Kinki University.
Department of Materials Chemistry, &hool of High Technology for Human Welfare, Tokai U niversity.
No.43 近畿大学工学部研究報告
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計量を行ったのち,アルゴンガス雰囲気としたグ、ローブ ボックス内で,8U8製ステンレスポットにM Aボーノレ とともに封入し,密閉した.また試料粉末とM Aボール との重量比は,1/40とし, 長1Aボールはポットと同組成 の8U8製を用いた.なお,MAs寺聞は, 60時間までと
し,ポットの回転数は710rpmとした.
2. 2倉jI製試料分析方法
得られた試料粉末の表面性状,粒径の測定には,走査 型電子顕微鏡(8EM) Hitachi FE‑8EM 8‑4000を用 い,構造解析には,粉末 X線回折装置伐RD) Mac 8cience MPX‑3(Cu‑Kα, 40kV‑30mA),熱的安定性評価 には, Arガス雰囲気中での示差走査熱量分析装置ω8C) Rigaku D8C8230を用いた.
またさらに詳細な粉末の構造解析には, Gaイオンを 用 い た 集 束 イ オ ン ピ ー ム 装 置(FIB) Hitachi FB‑2000Aにて試料を 100~ 150 nmに薄片化加工し たのち,加速電圧を 200kVとし, 透過型電子顕微鏡 (TEM) Hitachi FE‑TEM HF‑2200TUおよび走査透 過型電子顕微鏡(8TEM) Hitachi HF‑221Oを用いて分 析を行った また,粉末の微小領域での元素分析には,
エネノレギ一分散型 X線 元 素 分 析 装 置(EDX)Noran Instruments Vantageを使用した.
なお,創製合金の水素との親和性評価については,昇 温脱離装置(TD8) Anelva M‑100QAを用いて四極子イ オン管による測定から,常温から 5000Cまでの昇温時の 水素スベクトルのイオン量,水素分圧などを観察した.
また, TD8測定時の昇温速度は10oC/minとした.
サイズ比が大きい組み合わせとなる,LaAb合金とbcc‑V の組成粉末のM Aを試み,倉Ij製粉末とその得られる組織 形態について詳細に調査を行い,合金性状におよぽす M A時間の影響について比較検討し, さらに水素との親 和性についても明らかにすることを目的とした
2. 実験装置および方法 2.1試料合成方法
原料粉末は,高純度化学(株)より購入した,純度が3N,
粒径は100μm以下のLaAb合金および高純度化学(株) 製の純度2N,粒径75μm以下の純V粉末である この 原料粉末の8EM写真をFig.1に示し,XRDよる粉末の 回折ノ号ターンをFig.2に示した.
合金の合成に用いたメカニカノレアロイング装置は, Fig. 3に示すように, (株)日新技研製の高効率振動型ボ ールミノレ装置・スーパーミスニ NEV‑8号を用いた.そ のM A条件は,目標組成となるよう LaAb‑V合金を種々
SEM micrographs of inilial powders Fig.1
3 実験結果および考察
Fig.4に,60時間までのM Aによって得られた粉末の 8EMによる観察写真を示す.同国より得られた粉末は,
40時間のM Aにより良好に粉砕が進んでおり,粉末は 粉砕された微粉末の集合体として存在していることがわ
‑ ‑
N ︒
︒
N
‑
o V(コ伺)メ岩ωC@一
E‑
80
円門的
︒
N唱75 50 55 70
211 / deg
XRD pattems of inilial powders
65 60 45
40 35 30 25
Fig.2
‑.D a ・
SEM micrographs of LaAI2‑V mixtures prepared by mechanical alloying for various lime
Fig.4 General view of Ihe mechanical alloying machine
Fig.3
メカニカルアロイング法を用いたLaAl系合金の創製とその水素親和性 57
した場合の XRD測定結果について示した.同図より,
LaAh合金を
MG
した場合,回折ピークは大きくブロー ドニングし, 20時間以上のMG
により,回折パターン はハローなピークを示すことがわかるすなわち,Fig.5 の結果はM Aにより LaAh相が非品質化し,添加したV の回折ピークが現れたものと理解できるそこで, M Aを20および60時間行った試料について のEDXによる元素分析を行った.その結果をそれぞれ Fig. 7および8に示す.Fig. 7のM Aを20時間行った もの,およびFig.8の60時間行ったものともに,粉末 試料の元素マッピングには大きな濃淡の差は認められず,
側 目したV は良好にナノサイズにまで粉砕され,試料内 かる.
MA
を60時間行ったものは, 40時間のMA
を行ったものと比較すると,粉末粒径には大きな違いが見ら れておらず,粉末の表面状態は同様であるといえる.
Fig. 5に,試料のXRD測定結果について示す.同図 より, M A時間を長くすると, LaAl合金およびVの回 折ピークは大きくブロード ニンクoしている.また,同図 中
MA
を60時間行った試料( ω
で、は,試料の回折ピーク 位置に違いが見られるが,ピークより算出された格子定 数はbcc.Vのそれと大きく違わないことがわかった.す なわち,本結果より,本創製試料粉末は,合金化に伴う 明瞭な回折ピークが認められないことから,合金化が達 成されていないと考察されるこのM Aを60時間行った試料粉末についてのDSC測 定を行った結果,
MA
による格子ひずみの解放にともな う,発熱のピークは認められなかった.またM Aを10 から40時間行った他の試料で、も同様の結果を示し,MA
により発生した過剰エネルギーは,試料粉末に有効に導 入されていないことがわかった.
Fig. 6は,ラーベス相であるLaAl2合金のみを10,20, 40および60時間のメカニカノレグ、ラインデイング
( M G )
EDX elemental mapping images of LaAI2‑V mixture after 20 hours of mechanical al1oying.
(a)Al̲Ka, (b)V一Ka,(c) La̲La, (d) ZC Fig.7
(コ伺)メ岩
ωE ω# c ‑
50 55 2
e /
degXRD pattems of LaAI2‑V mixture prepared by mechar羽 田l al10ying for various time
(a) 10h, (b) 20h, (c) 40h, (d) 60h
80 75 70 60 65
40 45 35 30
1
I(b)τ
25 Fig.5
EDX elemental mapping images of LaAI2‑V mixture after 60 hours of mechanical al10ying
(a)Al̲Ka, (b) V一Ka,(c) ZC, (d) La̲La Fig.8
80 50 55
2
e
/deg.XRDpa仕emsof LaAl2 al10y prepared by mechanical grinding for various time.
(a) 10h, (b) 20h, (c) 40h, (d) 60h
75 70 60 65
40 45 35 30 25 Fig.6
58 近畿大学工学部研究報告 NO.43
部に一様に分布していると考察される また,得られた EDXスペクトラムより定量化した粉末組成は,合金の目 標組成にほぼ等しく,観察箇所およびM A時間によって 大きな違いは認められなかった.
さらに,より詳細な試料粉末の組織,性状を明らかに する目的で,本試料へのSTEM像観察およびTEM観察 を実施した
日g.9は, M Aを20時間行った試料をFIBにより薄 片化したあとに観察したTEM透過像である.試料周囲 は, Pt‑Pd膜と, FIB加工時のGaイオンに起因する白 色の組織が観察されるが,粉末試料は,M A時の塑性流 動に起因する濃淡のついた積層状の組織が観察され,ま た,球状の黒色の点がまばらに存在している.この黒色 の点は, TEMlEDXによる微小元素分析より,耐日した Vと同定された.すなわち添加を行ったVは, M Aによ り直径20nm程度に粉砕され,母相のLaAl相に均等に 分布しているものと考えられる.
Fig. 10には, M Aを60時間まで、行った試料のTEM 透過像を示した.なお観察方法は, Fig.9に示した方法
と同様とした同図の車邸設は,上述のFig.9に示したよ
Fig. 9 STEM micrograph of LaAb‑V mixture after 20 hours of mechanical alloying
Fig. 10 STEM micrograph of LaAlrV mixture after 60 hours of mechanical alloying
うな塑性流動組織は観察されないものの, 日g.9で見ら れたように,母相中に球状の黒点が観察されるが,その 大きさはM Aを20時間行ったものよりもやや小さい傾 向にあり,その分布する面積割合は高い.これは, M A 時間を長くすることにより 添加したVがナノサイズに まで良好に粉砕され,均等分散したためと考えられる.
なお, Fig.9および10から得られたこれらの知見は,上 述のFig.5の結果を裏付けることがわかる.
Fig.11には,これらの創製粉末についての格子像およ び回折像観察結果について示す.同図(a)に示した格子像 観察写真より,結晶化した球形の組織とその周囲の非晶 質相を観察でき,同図中に示した回折像観察からも,ハ ローな回折ノfターンとナノサイズ化したbcc構造の回折 像が確認でき,これより非品質化し
L
aAl合金相中に結 晶化したナノサイズのVが分散していることが確認でき る.他方, M Aを60時間行ったもの(b)でも,同様の組 織が観察でき,ナノサイズ化したVの結晶子サイズは同 図(a)に示した20時間のものと比較して小さいものの,格子像観察,回折像観察より,総じて非品質化したLaAl 相中に結晶化したbcc‑Vが分布した車郎裁であることが明
らかとなった.
これらの結果は,既報13,14)の様に, C14ラーベス相を 有する CaMg2合金のみをメカニカルク守ラインディング (MG)を行った結果とよく一致している.Fig. 12は,そ のCaMg2合金を2,10および60時間のメカニカルグラ インデインク、、を行った場合の格子像と回折像について示 したものである.同図より, 2および10時間のM Gで は,スポット的な回折点や大きな結晶子の格子像が確認 できるが, 60時間のM Gにより回折リングはハローと なり,明瞭な格子像が確認されないことがわかる.つま り,本LaAl合金系においても,メカニカルアロイング を行うことで発生した過剰エネノレギーは,母相のアモル フアス化15,16)を誘発すると考察される
以上の結果より,Laves相を有するLaAl合金と bcc‑V とをM Aを行い,合金化を達成する半経験的事象を実証 しようと試みたが, Laves相が非品質化してしまい,bcc 構造合金の合成にまでは至らなかった このことは,合 金化を試みたこれら元素の原子サイズ比に起因するもの と考察される.すなわち, C14ラーベス相を用いて合金 化が達成できた
C
aMg2‑V系合金の場合と,本研究の場 合とでは,既報17,1ωのように構成元素の原子サイズ比が 大きく違い, bcc‑V中にLaおよびAlが固溶されなかっ た結果, bcc構造合金を得ることが出来なかったと考察される
つぎに,60時間のメカニカノレアロイングにより創製を 試みた試料粉末についての水素との親和性について検討 した結果についてFig.13に示す.水素との活性化処理 後,6000Cにておよそ2MPaの水素雰囲気に100時間晒 し,脱気後 TDSにより昇混時の水素放出スベクトルを 測定した.
メカニカルアロイング法を用いたLaAl系合金の創製とその水素親和性
( b )
10nm
Fig. 11 Latlice and dif什actionimages of LaAlrV mixtures after (a) 20 and (b) 60 hours of mechanical alloying.
Fig. 12 Latlice and diffraction images of CaMg2 alloy prepared by mechanical grinding for various time (a) 2h, (b) 10h, (c) 60h
59
Fig.13より本試料粉末は,昇温とともに,水素分圧お よび水素イオン電流は大きく変化せず,水素の放出は確 認できなかった よって本創製試料粉末は,水素との親 和性が乏しいものと考察される.この理由としては,倉JI
製合金がメカニカルアロイング処理により非品質化した ため,良好に水素との親和性を示さなかったものと考察 される.
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4.5
4.5 4
‑a 70 FX
¥a
d﹄ヨ
ω倒︒﹄且一
gt
悶a
5 5 5 3 3 2 2 1 1 0< 3.5
o
、x
、C. ,.. 2.5
t ii: 2
3
0' 5 1.5
0.5 H一→ 10.5 50 100 150 200 250
∞
350 400 450 500 550Temperature, T jOC
Fig. 13 TDS spectrum during the heating from R.T. for a mechani剖Iyalloyed LaAI:z‑V mixture for 60h
4. 結言
繰り返しの塑性加工法であるメカニカルアロイング (MA)法を用いて, MgCU2型のLaves相であるLaAl2合 金と bcc‑Vとの合成を試み, Laves phase related BCC solid solutionの半経験則の実証を目的として,得られる 粉末の性状と,倉IJ製粉末の水素との親和性を検討した結 果,以下の結論が得られた.
1. LaAl2‑Vのメカニカルアロイング(MA)処理により,
合金の構造は非品質化し, bcc構造合金の合成は困 難である.
2. LaAl相のメカニカルグ、ラインディング(MG)処理は 非品質相の発現を誘起する.
3. 創製粉末試料は,良好な水素との親和性は認められ ない.
4. 3元系 BCC固溶体合金を合成する場合, Laves相 構成原子サイズ比にある制限の存在が予想される.
謝辞
本研究は, (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO 技術開発機構)r水素安全利用等基盤技術開発(水素に関する共 通基盤技術開発一高容量水素吸蔵合金と貯蔵タンクの開発」よ
り委託を受けて実施した.
また,本試料分析についてご協力いただきました,東海大学 未来科学共同研究センター技術共同管理室技師宮本泰男 氏に深謝し、たします.
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