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はどういうものなのか 情報社会化が加速し オムニチャネルという戦略が打たれたことで人々の購買行動はどのように変化したのか オムニチャネル戦略を行っている企業は実際にどのような状況なのかを研究し オムニチャネル戦略を成功させるために必要なことは何かを明らかにする Ⅱ. 背景 1. チャネルの変遷時代の

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オムニチャネル化推進に関する一考察 -セブン&アイ・ホールディングスと無印良品の事例から- 目次 Ⅰ.はじめに Ⅱ.背景 1.チャネルの変遷 2.オムニチャネルとは Ⅲ.先行研究 1.消費者行動とは 2.オムニチャネル実現に向けた消費者行動の変化 (1)消費者行動モデルの変化 (2)社会構造の変化 (3)購買行動の変化 Ⅳ.事例研究 1.セブン&アイ・ホールディングス (1)オムニ7の概要 (2)オムニ7の失敗と方針転換 (3)方針転換後の課題 2.無印良品 (1)MUJI passportの概要 (2)カスタマージャーニー (3)無印良品のアドバンテージ Ⅴ.考察 1.アプリ開発について 2.omniモール開設について Ⅵ.おわりに 参考文献 Ⅰ.はじめに 近年ではスマートフォンが普及し、情報社会化がますます加速している。そんな社会の 中でオムニチャネルという戦略を打つ企業が最近増えている。このオムニチャネル戦略と

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はどういうものなのか、情報社会化が加速し、オムニチャネルという戦略が打たれたこと で人々の購買行動はどのように変化したのか、オムニチャネル戦略を行っている企業は実 際にどのような状況なのかを研究し、オムニチャネル戦略を成功させるために必要なこと は何かを明らかにする。 Ⅱ.背景 1.チャネルの変遷 時代の流れと共にチャネルというものは変遷していったのだが、このチャネルというも のにはどのようなものがあるのか見ていく。チャネルというのは流通経路のことでこのチ ャネルにはオムニチャネル以外に主に3種類ある。それが、シングルチャネルとマルチチ ャネルとクロスチャネルだ。シングルチャネルは、1つの販売チャネルしかないもので店 舗での販売のみ、近年ではネットショップのみの販売を行っている店舗もある。マルチチ ャネルは、複数の販売チャネルを持つもので店舗やネットショップなどのシングルチャネ ルの他にカタログ通販、テレビ通販、チラシ、訪問販売などの複数チャンネルへと展開し ていったものである。クロスチャネルは、顧客との接点を作るポイントが複数存在する販 売チャネルのことで、店舗と EC サイトなどの在庫の管理を統合することで適切な在庫管理 を行っているというものだ。 2.オムニチャネルとは 時代が経つにつれて様々な販売方法ができていることが分かった。次に、オムニチャネ ルとはどのようなものなのかを提示していく。熊倉(2015)は、「オムニチャネルとは、実 店舗とネット店舗の融合により、あらゆる販売チャネルを統合し、シームレスな販売体制 の構築によって、顧客がすべてのチャネルから同じように商品の購入、サービスの提供を 受けられる環境を実現することである。」と定義している 1。次章では、オムニチャネル戦 略が打たれる前の消費者の行動について調べる。 Ⅲ.先行研究 1. 消費者行動とは 消費者行動の代表的な定義を2つみてみる。ブラックウェル(2005)は、消費者行動と 1 熊倉(2015),48 貢

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は「人々が製品やサービスを取得し、消費し、処分する際に従事する諸活動」と定義して いる2。また、アメリカマーケティング協会は、消費者行動とは「人々の生活における交換 という側面をつかさどる、感情と認知、行動、そして環境によるダイナミックな相互作用 である」としている3。ブラックウェルの定義は、消費者行動が購買行動と使用行動から成 り立っていることを表している。また、アメリカマーケティング協会の定義は、消費者行 動には外的な行動だけではなく、心理的側面が含まれていることを示している。消費者は 何かものを買うときに、使用する場所や時間、使用方法を考える。また、日用品では商品 を使い切ったり、残りが少なくなった際に、次の購買行動が生まれる。これらのケースか ら購買行動は使用行動に大きく影響されることがわかる。逆のケースも考えられる。メー カーが実施するプロモーションに魅かれて商品をまとめ買いし、その商品の消費を促進す るような場合は、購買行動が使用行動に影響したといえる4。消費者行動とは、購買行動と 使用行動が密接に結びつき、相互に影響しあっているものである。 2.オムニチャネル実現に向けた消費者行動の変化 (1)消費者行動モデルの変化 従来の消費者行動モデルで一般的とされてきたものが、実店舗中心である AIDMA モデル である。AIDMA モデルとは、商品の存在を知り(Attention)、興味を持ち(Interest)、欲 しいと思うようになり(Desire)、記憶にとどめ(Memory)、購買行動を起こす(Action) という購買プロセスである 5。しかし、オムニチャネル化社会では、AISAS モデルでの検討 が必要になってくる。AISAS モデルとは、商品の存在を知り(Attention)、興味を持ち (Interest)、検索して(Search)、購買行動(Action)を起こした後、共有する(Share) という流れをたどる6。これらを比較すると、Attention、Interest、Action はどちらにも 含まれている。AISAS モデルの特徴は、AIDMA モデルにはない検索(Search)と共有(Share) である。AISAS モデルでは、顧客への一方向のコミュニケーションではなく、双方向のコミ ュニケーションをとることができる。この双方向のコミュニケーションにより、顧客一人 一人に合った商品、サービスの提供と SNS を活用した情報提供、共有ができるということ になる。 (2)社会構造の変化 現代の社会構造の変化は著しい。人口減少、少子高齢化は国内市場の縮小をまねいてい 2 守口・竹村(2012),3 貢 3 同上,3 貢 4 同上,4 貢 5 熊倉(2015),55 貢 6 同上,55 貢

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る。これから日本企業は、新規需要の創造やイノベーションにより、内需の縮小を抑えて いかなければならない。その鍵となる戦略のひとつがオムニチャネルである。ICT の発達に 伴い、インターネットが非常に普及している。2018 年には携帯保有者の4人に3人がスマ ートフォン保有者になると予想されている7。インターネットやスマートフォンの普及によ り、消費者はネットを使い、商品に興味を持ったり、情報を得たり、購入したりと実店舗 に行かなくても、商品が手に入ることになった。従来の消費者は実店舗に行き、自分の目 で商品を確かめないと、情報を得ることができなかった。しかし、現代はスマートフォン ひとつで商品を検索し、口コミなどから情報を得て、実店舗へ足をはこんだり、そのまま ネットで購入することができる。これは消費者と企業の間の時間、空間の制約を大きく克 服したといえる。実店舗とネット、すなわちリアルとバーチャルを融合させることはオム ニチャネルにおいて非常に重要なことである。 (3)購買行動の変化 従来の消費購買は、需要が供給を上回る少品種大量消費であった。ひとつの商品カテゴ リーの品数が少なく、ほとんどの人がそのひとつの商品を使うため、大量生産しても売れ るということになる。しかし現代においては、ひとつの商品カテゴリーに対して、複数の 商品がたくさん存在しており、消費者一人一人のニーズは違っている。主流であった少品 種大量消費から多品種少量消費に変化しているのだ。少品種大量消費では、生産すること だけを考え、企業が提供する商品・サービスは顧客ニーズではなく、企業の思いだけが基 準となっていた。それでも商品は売れたのである。企業が商品、サービスを創造し、テレ ビ CM、新聞広告などのマス広告を実施して、売り場を確保していれば、ものは売れた8。し かし、多品種少量消費では、顧客の趣味趣向の違いによって購入するものが異なる。また、 ICT 技術の発展から、テレビ、新聞広告だけではなく、SNS を通じた口コミや評判が顧客の 消費購買行動に大きな影響を与えている。顧客一人一人に対する細分化されたニーズを、 企業は考えなければ商品は売れないのである。熊倉(2015)は、「企業は、顧客の消費購買 行動の変化を的確にとらえ、蓄積、分析し、あらゆるチャネルを活用して顧客が希望する 一歩先をいく商品、サービスの提供を行っていかなければならない」と述べている9。まさ にオムニチャネル戦略の内容である。本章では、オムニチャネル実現に向けた消費者行動 の変化を3つの視点から説明した。次章では、オムニチャネル戦略を実際に使っているセ ブン&アイ・ホールディングスの事例を説明する。 7 熊倉(2015),58 貢 8 同上,61 貢 9 同上,61 貢

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Ⅳ.事例研究 1.セブン&アイ・ホールディングス (1)オムニ7の概要 セブン&アイ・ホールディングスは 2013 年の夏に開催された経営戦略会議において、オ ムニチャネルを第2の創業と位置づけ、オムニチャネルを「小売業の最終形」とし10、オム ニチャネル化を進める方針を示した。その後、2015 年 11 月 1 日にセブン&アイ・ホールデ ィングスのオムニチャネルサービス「オムニ7」の運用を開始し、パソコンやスマートフ ォンから商品を注文し、自宅や店頭で受け取り可能となった。 セブン&アイ・ホールディングスは、グループ企業である強みを生かし、オムニ7に会 員登録すると、セブンネットショッピング、西武・そごうの e.デパート、イトーヨーカド ー ネット通販、アカチャンホンポ ネット通販、ロフトネットストア、セブン-イレブン のお食事お届けサービス セブンミール、イトーヨーカドーネットスーパー、デニーズ出前 サービス、セブン旅ネットの旅行予約サービスの約 180 万点の商品を購入することが可能 となるシステムを構築した11。オムニ7で当日午前7時までに商品を注文すると、当日中に 顧客が指定した最寄りのセブン-イレブンに商品が届くようになっている。同社のオムニ チャネルの強みは、国内小売業売上第2位であるグループ企業であることによる取り扱い 品目の多さと、受け取り可能店舗数の多さである。グループ企業であることにより、あら ゆるカテゴリーの商品を1つの WEB サイトより購入することが可能であるため、あらゆる 顧客のニーズに対応することが可能である。また、最寄りのセブン-イレブンなどのグル ープ店舗約 19000 店で商品の受け取りや返品が無料で行うことができるため、商品の受け 取り、返品に関する利便性は非常に高いと言える。さらに、受け取り、返品の際に顧客が 実店舗に来店する機会が自然と発生するため、実店舗での購買機会を増加させる効果も現 れる。 オムニ7導入初年度の 2015 年度のセブン&アイ・ホールディングスの EC 売上は 854 億 円となっており、2018 年度までに約 1800 億円を IT・物流に投じ、目標 600 万点、EC 売上 高1兆円を目指すとした。しかしながら、2016 年度の同社の EC 売上は 976 億円であり、当 初掲げていた目標達成からは大きく乖離した結果となった。その結果を受け、2016 年 10 月 に開催された同社の取締役会後に開かれた記者会見において、社長の井坂隆一は、これま でのオムニチャネル化は失敗に終わったと述べていた12 10 角井(2015) 11 オムニ7, http://www.omni7.jp/general/static/help11/ 12 日経ビジネス(2016)

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(2)オムニ7の失敗と方針転換 同社のオムニチャネル化の失敗の要因として、井阪はネット通販システム構築への過剰 な集中、不特定多数の顧客に向けたアプローチを行っていたという2点を指摘した。 1点目のネット通販システム構築への集中に関しては、ネット通販サービス大手の楽天 や Amazon 等が林立するレッドオーシャンであったことが失敗の要因であり、同社と楽天や Amazon との大きな違いは実店舗の有無であるが、同社は実店舗の顧客資産を活用すること ができていなかったと言われている13。大瀬良(2017)によると、オンラインで商品を注文 し、店頭で商品を受け取る顧客は、実店舗において非計画購買を行う傾向にある14が、同社 はシステム構築に傾倒するあまり、実店舗における非計画購買を誘発させることに失敗し ている。2点目の不特定多数の顧客に向けたアプローチに関しては、顧客ではなく商品を 軸にオムニチャネル化を推進していたため、ネット通販の閲覧履歴や購買履歴と実店舗で の購買履歴のデータをオムニ7における情報提供に活用できていなかった。前章でも述べ たように顧客一人一人に対する細分化されたニーズを、企業は考えなければ商品は売れな い。そのため、顧客ニーズを軸にオムニチャネル化を推進できなかったため、失敗に終わ ったと言える。 オムニチャネル化推進の失敗を発表した直後の同社の中期経営計画において、オムニチ ャネル戦略の再定義が行われた。その中では、グループ共通の ID により顧客を繋げ、全チ ャネルでサービスの質を追求することと、LTV(顧客生涯価値)を活かした販促、きめ細や かなパーソナル販促を実施すると発表された。それと同時に具体的な施策として、セブン アプリ(仮称)の開発を発表した。新アプリでは、グループ各社共通のポイントプログラ ムに入会してもらうことで、個々の消費者の趣味・嗜好にあった提案が可能となるという。 LTV に関しては、アカチャンホンポを利用していた家庭に対し、積極的にアプローチを行う ことで、アカチャンホンポ利用終了後はグループ内の他社を利用してもらうように働きか けることで、全てのライフステージ、ライフシーンにコミットし、LTV の最大化を図るとし た15 (3)方針転換後の課題 オムニチャネル化の方針を転換したセブン&アイ・ホールディングスであるが、2018 年 度までに EC 売上高1兆円を突破するためには、解決すべき課題が残存している。1点目は、 新アプリ開発の難航である。2016 年 10 月に新アプリの計画を発表したが、未だに新アプリ 13 日経ビジネス(2016) 14 大瀬良(2017),134 貢 15 セブン&アイ・ホールディングス, https://www.7andi.com/dbps_data/_template_/_user_/_SITE_/localhost/_res/ir/library/ks /pdf/2016_1007ks02.pdf

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はリリースされていない。新アプリの開発が難航している理由としては、ビッグデータの 収集と統合が不十分であることが挙げられる。大瀬良(2017)は、オムニチャネル化にお けるオンライン受け取りを展開するためには、オンライン店舗と実店舗の顧客データの統 合が必要不可欠である16と述べているが、これを実現するために必要不可欠なツールがポイ ントカードである。同社で使用されている共通のカードが nanaco である。nanaco とは、株 式会社セブン・カードサービスが運営するポイントカード機能を兼ね備えた電子マネーの システムのことである。nanaco では、セブン&アイ・ホールディングスが運営する店舗の みならず、グループ外の nanaco 加盟店でもポイントの加算や利用が可能であり17、また、 オムニ 7 ともアカウントを共有させることができるため、ビッグデータの集積と、オンラ イン店舗と実店舗の間の顧客データの統合が可能となっている。しかしながら、株式会社 ドゥ・ハウス(2016)の研究によると、nanaco カードの普及率は、T ポイントカード、Ponta カード、楽天スーパーポイントカードに次ぐ4位となっている18 (図表1 ポイントカード所持率) 出所:株式会社ドゥ・ハウス「現在所持しているポイントカード」 https://www.dohouse.co.jp/news/research/20160804/ 16 大瀬良(2017),142 貢 17 nanaco カード,https://www.nanaco-net.jp/about/nanacocard/ 18 株式会社ドゥ・ハウス,https://www.dohouse.co.jp/news/research/20160804/

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図表1からも分かるように、nanaco の所持率は 40%未満であるため、過半数の顧客のデ ータを確保できておらず、そのため、顧客データの統合は限定的であり、ポイントカード を利用していない顧客のデータの適切な確保が不十分であると言える。 2点目は、omni モールの開設である。2017 年 9 月の同社のニュースリリースにおいて、 オムニ7内でオンラインモール omni モールを 2017 年 11 月に開設することが発表された。 omni モールでは、グループ外の企業が参画することで、オムニ7内の取扱商品が増加する。 現段階は、家具、スポーツ用品、体験ギフト、オーダーメイドフラワーなどの商品の拡充 と、ハイブランド品の委託販売&買取りやふるさと納税のサービスが利用可能になる予定 である。今後も参画企業を募り、オムニ7の取扱商品、サービスを拡充させる予定であり、 19オムニ7での購入の幅がさらに広がる見込みである。しかし、omni モールにこそ課題が存 在する。それは、Amazon や楽天のような大手 EC サイトとの差別化である。オムニ7の取扱 商品を増加させ、2018 年度の目標である 600 万点の取り扱いを達成したとしても、取扱商 品数が 2 億を超える Amazon や、1 億 9000 万を超える楽天には遠く及ばない。そのため、omni モールを含め、オムニ7の EC サイト上での位置づけを明確にし、差別化を図る必要性があ ると言える。 本章では、セブン&アイ・ホールディングスのオムニチャネル化とその課題について論 じた。次章では、オムニチャネル化を早期から推進し、成功を収めた無印良品の事例を説 明する。 2.無印良品 (1)MUJI passport の概要 無印良品が以前から取り入れている戦略のチャネルとして、実店舗・EC サイト・SNS が ある。そして、さらなる販売機会を増やす戦略として 2013 年 5 月から MUJI passport とい うアプリを導入した。このアプリでは、店頭から EC サイト、SNS といった複数のチャネル を1つに統合したポイントやマイルサービスを中核とする。チェックインでのポイント提 供、最寄り店舗の一覧、店舗ごとの在庫検索など、リアルの店舗への集客を強く意識して いる特徴を持つ。そしてこのデータをもとに消費者の行動であるカスタマージャーニーを 辿ることができるようになり、購入者の消費プロセスに寄り添い、顧客時間の分析が可能 になった。 19 Omni モール , http://www.7andi.com/dbps_data/_material_/_files/000/000/002/802/20170919omni.pdf

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(2)無印良品のカスタマージャーニー (図表2 図表2の流れが無印良品のカスタマージャーニーである。消費者は最初にアプリ上で商 品の存在を知るところからスタートする。その後アプリが備える、店舗チェックイン、MUJI マイル取得・確認、クーポン獲得、店舗の在庫確認・検索などの機能を使い、購入の決断 へと進む。実際に店舗に赴き、レジでアプリを提示するとマイルが溜まり、そのマイルに 応じて ショッピングポイントが付与される。また、フェイスブックやツイッターなどの SNS と連携を行い、購入後のクチコミからポイントを増やすこともできるため、本アプリ外 にもクチコミが広がるという2次的な波及効果が期待できる。ここでは消費プロセスに寄 り添い、顧客時間を分析している。顧客時間とは商品を買ってから使うまでの流れであり、 情報収集&検討、購入、使用&拡散の3つのフェーズに大きく分けられる。従来のように 購入地点だけに注目するのではなく、購入後にも消費者とふれあい、ブランド体験を通し て絆を深めることがアプリを通した良品計画のオムニチャネル戦略である。多くのポイン ト獲得手段により顧客との接点を増やし顧客時間に入り込むことで顧客エンゲージメント を高めることに成功し、消費者と時間を共有するソーシャルマーケティングに取り組んで いる。利用者の生活に占める無印良品との接触時間を増やすことで商品の興味や購買意欲 を刺激し続け、店舗へ誘導する。それまで主流であったチラシを減らしネットへシフトチ ェンジし、ネットストアの売り上げ向上にこだわるよりもネットでコミュニケーションを 通して実店舗へ送客することを重視する戦略である。このような試みから顧客の利便性と 購買体験の質を高めることに努力を続けている。 (3)無印良品のアドバンテージ 無印良品がオムニチャネル経営で他社に先行できているのは、マスター統合のアドバン

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テージがあるからだ。オムニチャネルという言葉が存在しなかった 2010 年頃から、商品・ 価格・店舗・物流・顧客など各種マスターの順次一本化を進め、このことがオムニチャネ ル化を加速させた。単に戦略への試みへの時期が早かっただけではない。無印良品では扱 う商品はすべて MUJI というプライベートブランドである。プライベートブランドでは、独 自の商品を扱っており、ナショナルブランドよりも物流や在庫管理へのアプローチにタス クが少ない。商品や価格のマスターが統一できれば世界の売れ筋や死筋を単品ごとに管理 することが可能になり、その成果として在庫データを1時間おきに拠点や店舗から収集し、 アプリやネットストアの在庫検索を提供している。こうしてリアルタイムに近い在庫の状 況を知らせることで精度の高い情報を発信し続けている。このことから自社で流通をコン トロールできるプライベートブランドだけを扱う無印はいち早く、オムニチャネルを戦略 化することができた。そしてオムニチャネル戦略の中で、無印良品は今後も事業拡大を続 けている。 Ⅴ. 考察 前章と前々章ではセブン&アイ・ホールディングスと無印良品の事例を見てきた。本章 ではセブン&アイ・ホールディングスで現在残る課題に対してどのような改善方法がある のかを、無印良品の事例を元に論じていく。 4章を振り返ってみると、セブン&アイ・ホールディングスは中長期計画において、オム ニチャネルを再定義した後、2つの施策を行った。セブンアプリ(仮称)の開発と omni モー ルの開設である。しかし、アプリ開発に関しては顧客データの統合は限定的であり、ポイ ントカードを利用していない顧客のデータの適切な確保が不十分であるという課題があっ た。omni モール開設においては、omni モールを含め、オムニ7の EC サイト上での位置づ けを明確にし、差別化を図る必要性があるという課題があった。この2つの課題に対し、 消費者行動の観点から解決策を考えていく。 1.アプリ開発について 顧客データを既存のリソースから構築するだけではなく、アプリケーションによって顧客 データを集める方法もある。MUJI passport の事例を着目すると、消費者行動に合わせたマ ーケティングと顧客データの収集が巧みに行われていることが分かる。3章で扱った AISAS モデルに当てはめてみると、MUJI passport のおすすめ商品を定期的に通知することで顧客 は商品の存在を知り(Attention)、アプリ内のいいね機能によって割引価格を提示するこ とで興味を持たせ(Interest)、アプリ内の商品詳細ページを提示し(Search)、購買行動 (Action)を起こした後、アプリ内の商品クチコミに対してコメントすることで共有する

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(Share)という流れがある。これによって、顧客の好み、購入時間帯、購買後の商品満足 度など様々なデータを得ることが出来る。必ずしも既存のデータの活用にこだわり過ぎる のではなく、消費者行動に密着したアプリ開発に対して注力する必要があるのだ。こうし て得たデータを構築することで、一人一人に合わせたマーケティング活動を行うことが出 来るのである。つまり、今後の顧客データを収集の効率化のために、顧客視点に立ち 消費行動に合わせたシーンで活用できるアプリ開発が重要となってくる。 2.omni モール開設について EC サイトと実店舗との大きな違いはその品揃えにある。実店舗では購買することが出来 ない商品をその EC サイトで調べること(検索)することで簡単に商品が手に入るのである。 このロングテールによって様々な商品を販売することで、その EC サイトは信頼を勝ち得、 ブランドを確立することが出来る。また、在庫不足によって購買機会を逃す事がなく、売 上を確保することが出来るのである。しかし、こうした視点から見ると、オムニ7が 2018 年度までに約 600 万品目の品揃えを目指しているのに対し、Amazon は2億点、楽天は 1 億 9000 万点の商品を取り扱っている。こうした同じ市場の中で競走するためには差別化をす ることが急務となる。セブン&アイ・ホールディングスの強みは実店舗の圧倒的数と自社 ブランドのクオリティの高さである。前節で述べた通り、データ構築を作り上げることで、 一人一人に合わせたプライベートブランド商品の紹介や、地域周辺の顧客データに合わせ て実店舗の在庫管理をすることが可能となる。つまり、Amazon や楽天とは異なる一人一人 の顧客に向き合ったオンラインとオフラインを連携した顧客視点から生まれるサービスを 提供することが出来るのである。 上記の2つの課題に対する解決案の共通することは「顧客視点」である。オムニチャネ ル化を推進していく上で顧客の消費者行動に合わせたシステム構築をどのように進めてい くのかが重要であることが確認できた。 Ⅵ.おわりに 本研究では、オムニチャネル化推進について、消費者行動モデルの視座とセブン&アイ・ ホールディングスと無印良品の事例を通して考察を行った。その結果、オムニチャネル化 における顧客視点、つまり消費者行動起点のシステム構築の重要性が示された。本研究の 意義は、企業のオムニチャネル化推進の施策への貢献があげられる。消費者行動に合った データ収集とシステム構築はオムニチャネル化を進めていく上での一助となる。本研究の 課題として、システム構築を進めていく上での具体的プロセスを明らかにすることができ なかった点である。オムニチャネルという概念が登場してから日は浅いものの、システム

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構築における詳細なデータを示す必要があった。データ収集やシステム構築におけるコス トや工程などオムニチャネル推進を行う上で必要な要素について研究を深めていきたい。 ■参考文献 ・朝永久見雄(2013)『セブン&アイ HLDGS.9 兆円企業の秘密-世界最強オムニチャネルへ の挑戦』 日本経済新聞出版社。 ・大瀬良伸(2017)「オムニチャネル戦略としてのオンライン注文店頭受け取りの可能性」,

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東洋大学編『経営論集』,第 89 号,pp131-144。 ・角井亮一(2015)『オムニチャネル戦略』 日経文庫。 ・川又英紀・小林暢子(2015)「無印良品 最強のオムニチャネル経営」日経情報ストラテ ジー編『日経 BP Next ICT 選書』 日経 BP 社。 ・熊倉雅仁(2015)「購買プロセスの変革とオムニチャネルシステム構築の理論的考察:購 買行動の変革とオムニチャネル化社会の到来への予見」, 高千穂大学高千穂学会編『高千 穂論叢』,第 50 巻第 2 号,pp47-73。 ・西田安慶・城田吉孝(2011)『マーケティング戦略論』 学文社。 ・藤村広平・井上理(2016)「本当のオムニチャネル」,『日経ビジネス』2016 年 11 月 28 日 号,pp26-43 ・松浦由美子(2014)『O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!』 平凡社。 ・守口剛・竹村和久(2012)『消費者行動論 購買心理からニューロマーケティングまで』 八 千代出版。 ・オムニ7 http://www.omni7.jp/general/static/help11/ (最終アクセス日 2017 年 10 月 6 日) ・ 株 式 会 社 セ ブ ン & ア イ ・ ホ ー ル デ ィ ン グ ス ニ ュ ー ス リ リ ー ス http://www.7andi.com/dbps_data/_material_/_files/000/000/002/802/20170919omni.pd f (最終アクセス日 2017 年 10 月 6 日) ・株式会社セブン&アイ・ホールディングス「100 日プラン=中期経営計画」 https://www.7andi.com/dbps_data/_template_/_user_/_SITE_/localhost/_res/ir/libra ry/ks/pdf/2016_1007ks02.pdf (最終アクセス日 2017 年 10 月 6 日) ・株式会社ドゥ・ハウス 「ポイントカードに関する調査結果を発表」 https://www.dohouse.co.jp/news/research/20160804/ (最終アクセス日 2017 年 10 月 5 日) ・nanaco https://www.nanaco-net.jp/about/nanacocard/ (最終アクセス日 2017 年 10 月 6 日) ・「MUJI passport」は、なぜアクティブ率が高いのか? http://marketing-base.jp/hot/3699 (最終アクセス日 2017 年 6 月 26 日)

・Module Apps https://moduleapps.com/mobile-marketing/mujipassport130902/ (最終ア クセス日 2017 年 6 月 26 日)

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