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はじめに 緩和ケアは がんに伴う体と心の痛みを和らげ 生活やその人らしさを大切にする考え方です がん患者さんや家族は がんと診断されたとき 治療の経過 あるいは再発や転移がわかったときなどのさまざまな場面でつらさやストレスを感じます 緩和ケアでは患者さんと家族が自分らしく過ごせるように 医学的な側面

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Academic year: 2021

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がんと療養

がんの療養と緩和ケア

つらさを和らげてあなたらしく過ごす

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 緩和ケアは、がんに伴う体と心の痛みを和らげ、生活やその 人らしさを大切にする考え方です。  がん患者さんや家族は、がんと診断されたとき、治療の経過、 あるいは再発や転移がわかったときなどのさまざまな場面でつ らさやストレスを感じます。  緩和ケアでは患者さんと家族が自分らしく過ごせるように、 医学的な側面に限らず、いろいろな場面で幅広い対応をしてい きます。  この冊子では、がんの療養と緩和ケアについて、   緩和ケアの考え方   緩和ケアを受けられるとき   緩和ケアを受けられる場所   心と体のつらさを取り除くために心がけていただきたいこと   ご家族に知っておいていただきたいこと  についてまとめています。  必要なときに十分な緩和ケアを受けられるように、この冊子 をぜひ役立ててください。

はじめに

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はじめに 1. がんの療養と緩和ケア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2. 緩和ケアを受ける時期は?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3. 緩和ケアはどこで受けられますか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6  1 緩和ケアチーム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6  2 緩和ケア病棟(ホスピス)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9  3 自宅での緩和ケア(在宅緩和ケア)・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 4. がんの痛みと緩和ケア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 5. 心を支えること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 6. ご家族へ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

目 次

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緩和ケアとは、がんの患者さんの体や心のつらさを和らげ、 生活やその人らしさを大切にする考え方です。 がんの療養中は、痛みや吐き気、食欲低下、息苦しさ、だるさ などの体の不調、気分の落ち込みや絶望感などの心の問題が 患者さんの日常生活を妨げることがあります。これらの問題は がんの療養の経過中、程度の差はあっても多くの患者さんが経 験します。 「がんの治療のことではないから」と相談できずにひとりで抱 え込んでしまったり、「症状だけをなくしても、がんが治るわけ ではないから」「気持ちの持ちようだから」と症状を和らげるこ とに消極的な人もいます。 今までのがん医療の考え方では、「がんを治す」ということに 関心が向けられ、医療機関でも患者さんの「つらさ」に対して十 分な対応ができていませんでした。 しかし、最近では、患者さんがどのように生活していくのかと いう「療養生活の質」も「がんを治す」ことと同じように大切と 考えられるようになってきています。

1. がんの療養と緩和ケア

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患者さんを「がんの患者さん」と病気の側からとらえるので はなく、「患者さんらしさ」を大切にし、身体的・精神的・社会的・ スピリチュアル(霊的)な苦痛について、つらさを和らげる医療 やケアを積極的に行い、患者さんと家族の社会生活を含めて支 える「緩和ケア」の考え方を早い時期から取り入れていくことで、 がんの患者さんと家族の療養生活の質をよりよいものにしてい くことができます。 仕事上の問題 人間関係 経済的な問題 家庭内の問題 相続問題 痛み 息苦しさ だるさ 動けないこと 人生の意味 罪の意識 苦しみの意味 死の恐怖 価値観の変化 死生観に対する悩み 不安 うつ状態 恐れ いらだち 怒り 孤独感 スピリチュアルペイン 社会的苦痛 身体的苦痛 全人的苦痛 (トータルペイン) 精神的苦痛 図 1.全人的苦痛(トータルペイン)をもたらす背景

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がんの療養と緩和ケア

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緩和ケアを、がんの進行した患者さんに対するケアと誤解し 「まだ緩和ケアを受ける時期ではない」と思い込んでしまう患者 さんや家族は少なくありません。 しかし、本来、緩和ケアは、患者さんの体や心のつらさを和ら げ、生活やその人らしさを大切にする考え方ですから、診断さ れてからの期間や、がんの病状によって緩和ケアを受ける、受 けないを決めるというものではありません。 実際にはほとんどのがんの患者さんは、治療に伴う副作用や これからのことへの不安、痛みなどのつらい症状をできるだけ 少なく過ごしたいと考えているでしょう。 例えば、がんと診断されたときには、ひどく落ち込んだり、落 ち着かなかったり、眠れないこともあるかもしれません。抗が ん剤や放射線治療では食欲がなくなったり、吐き気などの副作 用が起こることもあります。 痛みはがんの早い時期にも、進んだ時期にも見られる症状で す。痛みが強いままではがんの治療もつらく、また生活への影 響も大きくなってしまいます。また、がんが進行した時期に、痛 みや吐き気、食欲不振、だるさ、気分の落ち込み、孤独感などに 対して適切な治療やケアを受けることは、生活を守り、自分らし さを保つことにつながります。 緩和ケアは患者さんのどのような病状であっても、どのよう な時期にも受けることができます。

2. 緩和ケアを受ける時期は?

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がんに対する治療が終了するまで苦痛緩和治療は制限し、治療終了後に緩和ケアを行う がんに対する治療と並行して緩和ケアを行い、状況に合わせて割合を変えていく がんの治療と緩和ケアの関係 (A:これまでの考え方 B:新しい考え方)

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B

がんの経過 がんに対する治療 がんに対する治療 緩和ケア つらさや症状の緩和ケア 図 2.がんの治療と緩和ケアの関係の変化

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緩和ケアを受ける時期は? ●・WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義(2002年) 緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している 患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理 社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確な アセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦し みを予防し、和らげることで、クオリティー・オブ・ライフ (QOL:生活の質)を改善するアプローチである。

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診断直後の不安や落ち込み 緩和ケアチームの心のケアの専門家が担当 医や看護師と協力してサポートします。 治療前からの痛み 担当医や看護師と緩和ケアチームが協力し て治療やアドバイスを行います。がんの治 療の前後にかかわらず十分な鎮痛のために 必要な治療を行います。 放射線や抗がん剤の副作 用(吐き気・嘔お う と吐、食欲不 振、しびれ、口の渇き、口 内炎、下痢など) 担当医や病棟看護師、放射線科医と緩和ケ アチーム、歯科医などが協力して治療やア ドバイスを行います。栄養士が食事の内容 や調理方法などについてアドバイスします。 手術後の痛み 担当医や病棟看護師と麻酔担当医、緩和ケ アチームが協力して治療やアドバイスを行 います。 再発や転移による痛み 入院中、通院中とも担当医や看護師と緩和 ケアチームや緩和ケア病棟の担当医、栄養 士などが協力して治療やアドバイスを行い ます。在宅療養では訪問診療の担当医が訪 問看護師とともに治療やケアを行います。 緩和ケアチームにおける心のケアの専門家 の視点から治療やアドバイスを行うことも あります。 息苦しさ だるさ(倦けんたい怠感) 食欲不振、吐き気・嘔吐 リンパ浮腫 医療費の問題 入院中、通院中とも担当医や看護師とソー シャルワーカーや緩和ケアチームのメン バーが協力してサポートします。在宅療養 では訪問診療の担当医や訪問看護師、ケア マネジャー、市区町村の担当者がサポート します。 転院や自宅での療養につ いての不安 自分の存在や生きる意味 についての悩み 入院中、通院中とも担当医や看護師と心のケアの専門家が担当医や看護師と協力して サポートします。在宅療養では訪問診療の 担当医が訪問看護師などとともにサポート します。 不安や気分の落ち込み 家族の心や気持ちの問題 表 1.がんの療養の経過中の問題と緩和ケア

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緩和ケアは、自宅でも入院や通院治療の病院内でも受けるこ とができます。がんの治療中かどうかや、入院・外来、在宅療養 などの場を問わず、いずれの状況でも受けることができます。

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・ 緩和ケアチーム

がん治療と並行して受ける緩和ケアは、主に「緩和ケアチー ム」が担当します。緩和ケアチームは、担当医や病棟の看護師 などと協力して緩和ケアを提供します。 全国のがん診療連携拠点病院には、すべて緩和ケアチーム があります。これらの医療機関では、入院、通院治療を通じて 緩和ケアを受けることができます。がん診療連携拠点病院以 外の医療機関でも、緩和ケアチームが活動しているところがあ ります。 緩和ケアチームは体と心のつらさなどの治療のほか、患者さん の社会生活や家族を含めたサポートを行うために、さまざまな職 種のメンバーが関与しています。担当医や病棟の看護師に加え て、緩和ケアチームの診療を受けることで、担当医が変わること はありません。緩和ケアチームの診療は、担当医から勧められ ることもありますが、患者さんや家族から希望することもできま す。つらい症状が続いている場合には、我慢しないで緩和ケア を受けましょう。 緩和ケアについて話を聞きたい、緩和ケアを受けたいときに は、担当医や看護師に話してみましょう。

3. 緩和ケアはどこで受けられますか?

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緩和ケアはどこで受けられますか?

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表 2.緩和ケアチームにかかわるさまざまな職種と役割 医師 痛みなどの体の症状の緩和を担当する医師と、 精神症状の治療を担当する医師が、担当医と 協力して治療を行います。 看護師 患者さんや家族のケア全般についてのアドバ イスを行います。転院や退院後の療養について の調整も行います。 薬剤師 患者さんや家族に薬物療法のアドバイスや指 導を行います。また、医療者に対して専門的な アドバイスを行います。 ソーシャルワーカー 療養にかかわる助成制度や経済的問題、仕事や 家族などの社会生活、療養先に関するアドバ イスなどを担当します。 心理士 気持ちの問題などについてカウンセリングを 行ったり、心理検査などを行います。家族のケ アも担当します。 栄養士 食べたりのんだりすることにかかわる問題に 対応して食事の内容や食材、調理法についての アドバイスを行います。 リハビリテーション のアドバイスや治療を行います。患者さんの自立を助け、日常生活の維持のため

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●緩和ケア外来 緩和ケア外来は、通院中の患者さんに対して、院内の緩和ケ アチームが行う外来です。入院中に緩和ケアチームの診療を 受けていた患者さんも、退院後引き続き緩和ケア外来で診療を 行います。 がんの治療が一段落しても、痛みやだるさが残ったり、病状 の変化や生活について不安が生じることもあります。緩和ケア 外来を定期的にあるいは必要に応じて受診することで、こうし た苦痛を軽減できます。また緩和ケア外来を行う医療スタッフ が、地域の診療所や訪問看護ステーションと連携して、自宅で の緩和ケアを支援する場合もあります。

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緩和ケアはどこで受けられますか?

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・ 緩和ケア病棟(ホスピス)

緩和ケア病棟はホスピスとも呼ばれています。 緩和ケア病棟に入院できる患者さんとしては、がんの進行に 伴う体や精神的な症状があり、がんを治すことを目標にした治 療(薬物療法、放射線治療や手術など)が困難となったり、ある いはこれらの治療を希望しない方を主な対象としています。施 設によって患者さんの受け入れの基準が異なる場合があります ので、各施設にお尋ねください。 多くの職種がかかわることは緩和ケアチームと変わりません が、宗教家やボランティアなどがチームの一員として参加してい る施設もあります。 緩和ケア病棟と一般の療養病棟の違いには以下のようなも のがあります。 1)・体と心の苦痛緩和に力をそそぐ 病棟で担当する医師や看護師は痛みや呼吸困難など、さま ざまな苦痛を和らげる方法の知識や技術に精通しています。ま た、患者さんや家族の心の問題についても時間をかけて対応が 行われます。 2)・苦痛を伴う検査や処置を少なくしている 点滴や注射などの処置や検査は、つらい症状を和らげるた めに必要最小限にするように配慮されます。医学的な必要性 ばかりを優先するのではなく、患者さんや家族と相談しながら 行います。

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3)・患者さんや家族がくつろげるデイルームがある 多くの緩和ケア病棟には、季節の行事や音楽を楽しんだり、 面会の方とくつろげるデイルームがあります。ベッドからの移 動が難しい患者さんの場合でも、病棟の医師やスタッフが協力 して、少しでも日常生活の中での楽しみや、変化を感じられるよ うに工夫しています。 4)・面会時間の制限が少ない 家族や大切な方々が面会できるように、面会時間の制限が ない施設が多くあります。ペットと面会できる施設もあります。 面会の条件などは、患者さんの状態や施設ごとの基準もありま すので、各病棟のスタッフにお尋ねください。 5)・患者さんの家族が過ごしやすい設備がある 病室は個室が多く、家族が患者さんのそばで宿泊できるソ ファーベッドなどを備えている施設があります。また、家族が 休息するための家族室、患者さんや家族のために簡単な料理が できるキッチン、家族が入浴できる設備がある施設もあります。

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緩和ケアはどこで受けられますか?

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●緩和ケア病棟を探すには 担当医や看護師、病院のソーシャルワーカーにご相談くださ い。がん診療連携拠点病院の「相談支援センター」や「医療連携 室」などの部門では緩和ケア病棟の情報を探すことができます。 インターネットで緩和ケア病棟を探す場合は、国立がん研 究センターがん対策情報センターのホームページ「がん情報 サービス」から、病院を探す→緩和ケア病棟のある病院の情報 (http://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/fTopKanwa? OpenForm)をご覧ください。 緩和ケア病棟を探す場合には、患者さんご本人が今後どのよ うに過ごしたいかを考えながら、担当医や看護師などからアド バイスしてもらうとよいでしょう。

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・ 自宅での緩和ケア(在宅緩和ケア)

緩和ケアに関連する治療の多くは、自宅でも入院中と同じよ うに行うことができます。 多くの患者さんにとって、自宅は安心できリラックスすること ができる療養環境です。体の状態が安定していれば、自宅での 療養は難しいことではありません。病院で受けている治療を 自宅で継続することは難しいと誤解されていることがあります が、緩和ケアで行われる治療のほとんどは、病院でも自宅でも 同じように行うことができます。のみ薬による治療ばかりでな く、注射による治療のためのポンプや、点滴などの処置が必要 な場合でも、自宅での継続もできるようになってきています。 自宅での緩和ケアでは、在宅療養についての専門的な知識を

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持った訪問診療医(かかりつけ医)や訪問看護師、薬剤師、ホー ムヘルパーが協力してサポート態勢を整えます。また、今まで 受診や通院したことがない初診の患者さんであっても、在宅療 養支援診療所などでは十分な診療体制で対応することができ ます。 自宅に戻れば生活のペースは患者さんや家族に合わせたも のになります。訪問診療医や訪問看護師は、患者さんの生活 のペースを守りながら緩和ケアを提供します。自宅だけでなく、 介護施設やグループハウスなど、さまざまな場所で在宅緩和ケ アを受けられることもあります。 自宅での緩和ケアを選択したからといって、病院とのつなが りが完全になくなってしまうわけではありません。訪問診療医 を通じて病院の担当医や緩和ケアチームとの連携を継続し、必 要に応じて治療やアドバイスを受けることができます。 安心して自宅で緩和ケアを受けるためには、訪問診療医や訪 問看護師などと、療養の目的や希望について十分に話し合い、 患者さんと家族の不安を少なくしておくことが大切です。

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緩和ケアはどこで受けられますか?

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がんに伴う体の痛みのほとんどは、鎮痛薬を適切に使うこと で治すことができます。痛みを和らげるために必要な量は、痛 みの原因や、強さ、鎮痛薬に対する反応の個人差などによって 異なります。そのため、それぞれの患者さんにとって十分に痛 みを止めることができる量を、患者さんに鎮痛薬の効果を尋ね ながら痛みによる生活への影響がなくなる量まで調節していき ます。 強い痛みがあることで、必要な検査や治療が受けられなくな ることもあります。在宅療養中の患者さんでは、せっかくの自 宅での生活がつらいものになってしまいます。なるべく早いう ちに相談して十分な痛みの治療を受けられるようにしていくこ とが大切です。

4. がんの痛みと緩和ケア

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医療用麻薬の誤解をなくしましょう

がんの痛みの治療法は、WHO 方式がん疼痛治療法と呼ば れ、世界的に、最も効果的で安全な治療法とされています。こ の方法では痛みの強さに従って段階的に鎮痛薬を使います。 強い痛みにはモルヒネなどの医療用麻薬が使われます。 モルヒネなどの医療用麻薬に対して、「中毒」「命が縮む」「最 後の手段」といった誤ったイメージを持たれていることがあるか もしれません。しかし、世界における20年以上の経験から、が んの痛みの治療には、モルヒネなどの医療用麻薬による鎮痛 治療が最も効果的であり、誤解されているような副作用は認め られないことが明らかになっています。 医療用麻薬の一般的な副作用としては、吐き気・嘔吐、眠気 や便秘などがあります。多くの副作用は予防や治療ができるの で、安心して痛みの治療を受けていただくことができます。

痛みは我慢しないで、自分で伝えましょう

痛みを長い間我慢すると、夜眠れなくなったり食欲がなく なったり、体の動きが制限され、気分がふさぎがちになり、生活 に大きな影響を及ぼします。がんの痛みは軽いうちに治療を始 めれば、短期間に十分な鎮痛が得られるものがほとんどです。 痛みの治療を早い時期から始めるためには、自分の痛みの症 状を医療者に十分に伝えることが大切です。

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がんの痛みと緩和ケア

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本当の痛みの状態は、患者さんにしかわかりませんので、具 体的な表現をすることが重要です。「いつから」「どこが」「ど のようなときに」「どんなふうに」「どのくらい」痛むのかを、言 葉にして表現することで、患者さんにしかわからない痛みを医 療者も共有することができます。これらの情報についてメモを つくって医師や看護師に見てもらうことも大変参考になります。 また、痛みが影響している日常生活を伝えておくと、治療の目 標がより明確になります。例えば、痛みで眠れなかったが、治療 したら眠れるようになった、などわかりやすい出来事を話す方 がよいでしょう。 痛みの治療についての情報は、受診中の医療機関で尋ねる か、地域のがん診療連携拠点病院の「相談支援センター」でも 入手できます。また、国立がん研究センターがん対策情報セ ンターのホームページ「がん情報サービス」から、がんとつき 合う→さまざまな症状への対応→痛み( http://ganjoho.jp/ public/support/condition/pain.html)をご覧ください。

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表 3.痛みを伝えるときの大切な点 時 期 ていはよいけれど、時々急に痛くなるのか、など。痛みは1日中あるか、どんなときに痛いのか、たい 場 所 どこが痛いのか、1ヵ所か広い範囲なのか、痛む場 所はいつも同じなのか、など。 感じ方 鋭い痛みか鈍い痛みか、ビリビリ、ジンジン、ズキ ズキ、しびれた感じ、ヒリヒリ、キリキリ、しめ付 けられる感じ、など。 日常生活への 影響 トイレやお風呂のときつらい、眠れない、食べられ ない、体が動かせないのが困る、座っているのもつ らい、何も手につかない、など。 痛みの程度 イメージできる最も強い痛みを「10 点」、まったく 痛みのない状態を「0点」とすると、今回の痛みは 何点ぐらいか、など。 ●痛みを顔で表すときの例  痛みの治療を受けるとき、日々「痛み」の変化を 記録しておくと役に立つことがあります。 0 ~ 2 4 6 8 10 痛み止めの効果 「途中で切れる」果を感じない」など。「全体に少し和らいだ」「ほとんど効

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がんの痛みと緩和ケア

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患者さんと家族の心を支えることは、緩和ケアが担う大きな 役割です。 患者さんは“がん”と疑われたとき、病名や再発や転移を知っ たときなど、さまざまな場面で心に負担がかかります。その代 表的なものが「不安」と「落ち込み」です。これらは多くの人に 見られ、直ちに問題になるというわけではありません。通常は 数日から2 週間程度で、困難を乗り越えて適応しようとする力 が働き出します。しかし、それ以上たってもつらさが回復しな いで、日常生活に支障が出るようなら、心のケアなどの対処が 必要です。この状態が長く続くことは、患者さんの生活の質を 低下させるだけでなく、がんの療養への取り組みにも悪い影響 を与えたり、家族のストレスを高めることにもつながります。

患者さんの家族と心の問題

家族の誰かががんにかかることは、ほかの家族の心にもさま ざまな影響を及ぼします。家族も、患者さんが“がん”と疑われ たときや、病名や再発や転移を知ったときなど、さまざまな場面 で心に負担がかかります。患者さんの治療がうまく進めば家族 も元気になりますが、治療経過が芳しくないと家族も気持ちが 沈みがちになります。

5. 心を支えること

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患者さんばかりでなく家族の心にも強く影響することを理解 し、負担感が強いと感じたら、躊ちゅうちょ躇しないで家族の方も心のケ アを受けてください。 ●心のケアの基本は「カウンセリング」です カウンセリングは、心の専門家と不安や落ち込みについて話 していくことが中心になります。言葉にすることで気持ちが楽 になり、整理がついたという経験は、多くの方が持っているので はないでしょうか。また、がんと心の状態についての理解を深 めることで、心配やつらい気持ちが和らぐこともあります。 心のケアは、精神腫瘍科や心療内科、緩和ケアチームなどの 医師のほか、心理士、心の問題を専門に扱う看護師、ソーシャル ワーカーなどにも相談できます。 相談については、各地域のがん診療連携拠点病院にある相 談支援センターでも対応してもらえます。

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心を支えること

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患者さんが必要なときに十分な緩和ケアを受けるためには、 緩和ケアに対する家族の正しい理解が大切です。家族に「緩和 ケアは末期がんのためだけのもの」「痛いのは病気だから仕方 ない」などの誤解があると、患者さんにとって緩和ケアを十分 に受けることができなくなり、痛みなどに苦しむ時間を過ごす ことになってしまうこともあります。一方、緩和ケアは患者さん だけでなく、家族に対しても行われます。患者さんをどう支え ていったらいいのか悩んだり、社会的、経済的な問題が生じた りすることもあるかもしれません。がんの治療を専門にしてい る多くの医師や看護師は、緩和ケアの必要性を十分に理解して いますので、痛みの治療や心の不安などのことで、緩和ケアにつ いて積極的に相談してください。   患者さんが自宅で緩和ケアを受ける場合は、訪問診療医や訪 問看護師などが家族と協力しながらケアを行います。この場 合、介護をする家族の負担を軽減できるような態勢を整えてお くことも大切です。家族の気分転換や息抜きができる時間をつ くれるように友人や親せきなどの協力が得られると、在宅療養 への不安が軽くなります。また介護保険のサービスなども上手 に利用しましょう。介護者が疲れる前に心身を充電できるよう な態勢づくりについても、訪問診療医や地域の緩和ケア病棟、 あるいは地域のがん診療連携拠点病院の相談支援センターな どにご相談ください。

6. ご家族へ

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ご家族へ

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がんの冊子 がんと療養シリーズ(5種) がんの療養と緩和ケア、がんと心、がん治療と口内炎、 がん治療とリンパ浮腫、 もしも、がんと言われたら 各種がんシリーズ(34種)  小児がんシリーズ(11種) 社会とがんシリーズ(3種) 相談支援センターにご相談ください、家族ががんになったとき、 身近な人ががんになったとき 患者必携 がんになったら手にとるガイド*     別冊 『わたしの療養手帳』 患者さんのしおり(『がんになったら手にとるガイド』概要版) もしも、がんが再発したら* 国立がん研究センターがん対策情報センター作成の冊子 全ての冊子は、がん情報サービスのホームページで、実際のページを閲覧したり、印刷したりすることが できます。また、全国のがん診療連携拠点病院の相談支援センターでご覧いただけます。*の付いた冊子 は、書店などで購入できます。そのほかの冊子は、相談支援センターで入手できます。詳しくは相談支援 センターにお問い合わせください。 がんの情報を、インターネットで調べたいとき 近くのがん診療連携拠点病院や相談支援センターをさがしたいとき がん情報サービス http://ganjoho.jp/ 携帯電話でも見てみたいとき がん情報サービス 携帯版 http://ganjoho.jp/m/(携帯電話専用アドレス) がんの冊子 がんと療養シリーズ がんの療養と緩和ケア 編集・発行 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター 印刷・製本 図書印刷株式会社 2010 年 3 月 第 1 版第 1 刷 発行 2012 年 3 月 第 2 版第 1 刷 発行

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国立がん研究センター 「相談支援センター」について 相談支援センターは、がんに関する質問や相談にお応え します。がんの診断や治療についてもっと知りたいとき、 不安でたまらないとき、いっしょに考え、情報をさがすお 手伝いをします。窓口は全国の「がん診療連携拠点病院」 にあります。その病院にかかっていてもいなくても、無料 で相談できます。 全国のがん診療連携拠点病院は、「がん情報サー ビス 携帯版─病院を探す」で参照できます。 相談支援センターで相談された内容が、ご本人の 了解なしに、患者さんの担当医をはじめ、ほかの 方に伝わることはありません。どうぞ安心してご 相談ください。 あなたの地域の相談支援センター がんと療養

がんの療養と

緩和ケア

より詳しい情報はホームページをご覧ください 204 国立がん研究センター がん対策情報センター

表 2.緩和ケアチームにかかわるさまざまな職種と役割 医師 痛みなどの体の症状の緩和を担当する医師と、精神症状の治療を担当する医師が、担当医と 協力して治療を行います。 看護師 患者さんや家族のケア全般についてのアドバ イスを行います。転院や退院後の療養について の調整も行います。 薬剤師 患者さんや家族に薬物療法のアドバイスや指 導を行います。また、医療者に対して専門的な アドバイスを行います。 ソーシャルワーカー 療養にかかわる助成制度や経済的問題、仕事や家族などの社会生活、療養先に関するアドバ イ
表 3.痛みを伝えるときの大切な点 時 期 痛みは1日中あるか、どんなときに痛いのか、たい ていはよいけれど、時々急に痛くなるのか、など。 場 所 どこが痛いのか、1ヵ所か広い範囲なのか、痛む場 所はいつも同じなのか、など。 感じ方 鋭い痛みか鈍い痛みか、ビリビリ、ジンジン、ズキズキ、しびれた感じ、ヒリヒリ、キリキリ、しめ付 けられる感じ、など。 日常生活への 影響 トイレやお風呂のときつらい、眠れない、食べられない、体が動かせないのが困る、座っているのもつ らい、何も手につかない、など。 痛みの程度

参照

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