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人文地理62巻1号

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I 序 論  (1)研究の背景と課題 ボーン(Bourne1))によ って住宅研究の枠組みが示されて以来,住宅を扱 った地理学的な研究成果が蓄積されてきた2)。日本 における住宅を扱った地理学的研究は,欧米の都 市構造モデルを基盤に,住宅の分布や供給構造を 示そうとしたものから始まった3)。その後,住宅取 得行動と大都市郊外化の関係についての議論が盛 んに行われるようになった4)。これらの議論では, 大都市郊外における戸建住宅の購入が住宅取得行 動の最終目的とされる傾向が強く,マンションと いう住居形態が扱われることは少なかった。しか し,集合住宅での生活が日本でも浸透しマンショ ンが重要な住宅の所有形態となってきたことや, 都市中心部の変容にマンション供給が与える影響 が大きいことなどから,マンションを扱った研究 が盛んに行われるようになってきた。  日本におけるマンションの研究は,マンション の供給構造や,マンションの供給にともなう住民 構成の変化に研究主眼が置かれてきた。香川5)は, 名古屋都心部および大阪30 km 圏におけるマンシ ョンの立地を示し,容積率と価格によってマンシ ョンの供給構造を示した。広島市を扱った由井6)は, 1975∼80年に人口増に転じた広島市の都心から1 ∼2 km の範囲において分譲マンションが多く供 給されたことを明らかにしている。1990年代後半 以降は,全国的にマンション供給が増加したこと によって,人口都心回帰がおきたことが指摘され た7)。公営住宅やマンションなど多様な住宅供給が なされ,家族構成や社会階層の面で多様な世帯が 東京都心部に転入した8)。  マンション居住者に関する初期の研究は,国勢 調査等を用いた居住者特性の分析や人口移動を中

幕張ベイタウンにおけるマンション購入世帯の

現住地選択に関する意思決定過程

久 保 倫 子

Ⅰ 序 論 ⑴ 研究の背景と課題 ⑵ 研究方法 ⑶ 研究対象地域 Ⅱ 幕張ベイタウンにおけるマンション居 住者の特性 ⑴ 居住世帯の世帯特性 ⑵ 居住世帯の就業 ⑶ 居住世帯の居住経験 ⑷ 居住世帯の住み替え行動 ⑸ 親族近居と永住意識 Ⅲ 幕張ベイタウンにおけるマンション購 入世帯の現住地選択過程 ⑴ 転居の決定 ⑵ 転居先の探索 ⑶ 意思決定のパターン Ⅳ マンション開発地区における現住地選 択過程の特性 ⑴ 居住地としての高いステイタス ⑵ 親子近居志向 ⑶ マンション探索の特性 Ⅴ 結 語 キーワード:意思決定,居住地選択,マンション購入世帯,幕張ベイタウン

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心としていた9)。しかしながら,住宅形態別の居住 者特性を明らかにするには,既存の統計データの 制約が大きいこともあり,研究者自らのアンケー ト調査によって居住者の特性を分析しようとした ものが多くなっていった10)。仙台市都心部のマンシ ョン居住者の多くは,仙台市内からの転入者が卓 越し11),永住意識を持つ世帯は20%以下と少数であ った12)。また,札幌市を扱った香川13)は,高齢期にマ ンションに転入する世帯が多いことを示した。  さらに,居住者の特性を踏まえて,マンション 居住者の居住選好や居住地選択に関する研究成果 が得られるようになってきた14)。久保15)は,茨城県水 戸市を事例とし,地方都市の中心部が交通利便性 に優れ,歴史性などの理由から高いステイタスを 有するために,都市中心部のマンションが茨城県 に地縁を有する世帯を引きつけていることを明ら かにした。また,居住地選択に関する意思決定過 程 16) を明らかにすることによって,居住機能からみ た水戸市中心部の特性が示された。  マンション供給と居住者の特性に関しては,数 多くの研究蓄積があり,バブル経済期以降のマン ション供給増加に伴う都市中心部の変化や住民構 成の変化に関する多様な議論がなされた。しかし ながら,大都市圏の居住機能を補完する大都市郊 外においては,マンションを主体とする新開発地 が多数出現しているにも関わらず,これらの地域 が扱われることは少なく,大阪圏の周辺部におけ る富田ほか17)の事例がみられる程度である。  バブル経済期以降の長期的な経済後退や,住宅 開発を推進する政策によって,都心部などの交通 利便性に優れた地域でのマンション開発が進行し た 18) 。これによって,交通利便性の面で都心部に劣 る大都市郊外での住宅開発地は,必ずしも理想的 な選択肢ではなくなっている19)。  大都市郊外における住宅開発は,戸建住宅地区 が中心であり20),そこでのマンションは,大衆的な 住居形態として考えられてきた。しかし,近年で は,幕張新都心のように欧風の街並みをもつ高級 なマンション開発地区が誕生し,大都市郊外にお けるマンションの役割も変化している。  バブル経済期以降のマンション供給増加のなか で,大都市郊外がいかなる役割を果たしているの かを検証することは,大都市圏の居住構造を考え る上で重要な視点である。よって,本研究では, 東京の郊外における新開発地である幕張新都心を 事例として,居住者の特性と居住地選択過程を明 らかにすることを目的とする。さらに,これらを 踏まえ,大都市圏内の居住機能についての考察を 行う。  (2)研究方法 住宅所有の意思決定過程に関し ては,ブラウンとムーア(Brown and Moore21))の 行動論的二段階モデルを基に多くの研究が蓄積さ れている。意思決定の各段階で重視される項目に 関しては, ショート(Short22))およびロブソン (Robson23))にその詳細が示されているため省略す るが,近年の研究成果によって得られた新たな知 見から本研究の分析方法を示す。  地方都市中心部におけるマンション購入世帯の 意思決定過程では,マンションという住宅形態の 決定が全過程に影響し,住宅形態の決定の仕方に よって,意思決定の3つのパターンが示された24)。 これは,マンションのみを探索するパターン,戸 建住宅との比較を行うパターン,住宅情報を得た ことが探索のきっかけとなるパターンである。こ れらのパターンは,マンション購入世帯の意思決 定パターンとして普遍性を有するものであると考 えられるが,地方都市においては,探索地域や住 宅形態の比較対象が限られており,より幅広い選 択肢の中での探索行動に応用可能であるかは疑問 が残る。また,居住地選択において,立地地域よ りも物件そのものの価値が重視される傾向がある ことも報告されている25)。特定の住居を選択するこ とが転居の決定を促すとすれば,順序を追って意 思決定が行われるという行動論的二段階モデルの 普遍性はなくなってしまう。  一方,居住地選択に関する意思決定過程は,住

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宅情報や住宅形態によって大きく影響されるが26), 情報伝達手段の発展が居住地選択に関する意思決 定過程を変容させるという予察もなされている27)。 つまり,インターネットを利用することによって, 転居先を探索する期間を短縮することや探索地域 を拡大することが可能となるといった仮説が提示 されている28)。インターネットの利用によって,探 索行動の空間的な制約が解消されるとすれば,居 住地移動行動にも大きな変化がみられると考えら れるため,住宅情報と探索過程の関わりを明らか にすることは,重要な視点である。  本稿では,既往の研究を参照し,以下のように 分析を進める。まず,インタビュー調査によって 得られたデータから,居住地選択の意思決定に影 響すると考えられる居住経験や親族近居,住み替 え行動などの側面から居住者特性を示す。次に, 現住地選択に関する意思決定過程を明らかにする が,各段階で重視される項目の分析に加えて,既 往研究で指摘された項目を検証するため,意思決 定のパターンおよび住宅情報の影響についても示 す。  データ収集のために,幕張ベイタウンに居住す る130世帯に対して,2009年4月から7月にかけ て質問票を用いたインタビュー調査を行った。居 住者からの紹介,幕張ベイタウン自治会連合会お よび幕張ベイタウン内のサークル活動を通じた呼 びかけによって,入居時期やマンションに偏りの ないよう協力者を募り,各1時間程度の対面イン タビュー調査を実施した。このうち,賃貸住宅に 居住する18世帯を除く112世帯からの回答を本研 究の分析に用いる。インタビュー調査では,就業 や世帯構成など居住者特性に関するもの,居住経 験や親族の居住地,住宅所有や永住意識に関する もの,そして現住地選択に関する意思決定過程に ついて世帯主・配偶者がそれぞれ重視した項目や 利用した情報などを尋ねた。  (3)研究対象地域 研究対象地域は,千葉県千 葉市美浜区打瀬1∼3丁目に位置する幕張ベイタ ウンである(第1図)。幕張ベイタウンおよび周辺 一帯は,業務地区と住宅地区を有する幕張新都心 として,千葉県企業庁によって東京湾の埋立地に 開発された。2005年の国勢調査によると,居住人 口は18,427人,居住世帯数は6,526世帯である。  幕張ベイタウンでは,1994年にマンションの分 譲が始まり,1995年に住民の入居が開始された (第1表)。第1期分譲時には,中庭を囲む6階建 て以下の中層マンションが販売された。高級住宅 街区という条件に加えて,抽選倍率が400倍を超 える住戸が存在したことから,第1期入居者は, 狭き門をくぐりぬけて所有権を獲得した高所得者 層であった29)。  2001年以降は,高層および超高層マンションの 供給が主体となり,平均価格は3000万円台まで下 落した。2000年前後には,住宅金融公庫による融 資の拡大や住宅ローンの自由化によって,公庫融 資利用者の住宅購入資金に占める公庫借入金の割 合が高まった時期であること30),さらに住宅ローン 減税などの税優遇政策が実施され,これらを契機 に住宅取得を決断した世帯が相当数あったことな どを鑑みれば,それまでの高所得者層という居住 者特性もこの時期を境に変化したと考えられる。  高層・超高層街区は中層街区の周辺に配置され, 2009年現在,北東の JR 京葉線,東南の花見川, 南西の千葉湾,そして北西の公園緑地を境界とす る幕張ベイタウンの全体がほぼ完成している。 II 幕張ベイタウンにおけるマンション居住者の 特性  ここでは,幕張ベイタウン居住者の現住地選択 過程に影響する居住者特性を示す。  (1)居住世帯の世帯特性 第2表は,インタビ ュー回答世帯の世帯構成別の数を示したものであ る。インタビュー回答世帯の66.1%にあたる74世 帯は,就労期の夫婦と就学子の世帯である。次い で,子が離家した後に夫婦のみで居住する世帯や 就労期の夫婦のみの世帯,就労期の夫婦と就業子

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の世帯が28.5%にあたる32世帯である。なお,夫 婦と就業子世帯の居住地選択は,教育環境等を重 視する夫婦と就学子の世帯とは大きな差異がある ため,夫婦のみ世帯と同類型に分類した。最後に, 単身での居住者世帯は,就労期の4名(男女各2 名)および退職後で夫と死別した女性2名による 6世帯であった。世帯構成や年齢によって居住地 選択には差異がみられることがこれまでの研究で 確認されているため31),ここでは対象とする世帯を 家族世帯,夫婦世帯,単身世帯と区別して分析を 第1図 研究対象地域

Figure 1. Study area * * P P P 幕張メ ッ セ 海浜幕張駅 検見川浜駅 千葉マリ ン ス タ ジア ム 幕張イ ベン ト ホ ールア リ ーナ 0 1km 幕張ベイ タ ウ ン 幕張ベイ タ ウ ン 一般道路 国道14号線 東関東 自動車道 一般道路 国道14号線 東関東 自動車道 一般道路 国道14号線 東関東 自動車道 一般道路 国道14号線 東関東自動車道 緑地 学校 水面 分譲マン ショ ン 賃貸集合住宅 幕張ベイタウン  の境界 マンション建設中 * 駐車場 P ベイタウン・コア   (公民館) 東京湾 千葉湾 新浦安駅 京葉線 総 武 本 線 京 新京 成線 習志野市 船橋市 市川市 浦安市 美浜区 花見川区 市境界 区境界 国道 県道 JR線 その他鉄道 モノレール インターチェンジ ジャンクション 0 4km

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進める。しかしながら,幕張ベイタウン居住者の 大半は家族世帯に属するため,入居時期による居 住者特性の差異を考慮し,必要に応じて2000年ま での入居世帯と2001年以降の入居世帯を別に扱う。  (2)居住世帯の就業 第3表は,世帯主の就業 地および職業を示したものである。インタビュー に回答した112世帯のうち,68世帯(60.7%)は東 京都への通勤世帯,次いで13世帯(11.6%)は千 葉県内に通勤するが,幕張新都心への通勤者は4 世帯(3.6%)と少数であった。東京都へ通勤する 場合は,東京都東部にオフィスが立地している世 帯が大半であり,通勤利便性と沿線のイメージを 考慮し,JR 京葉線沿線での住宅購入が選択され た。  次に,配偶者の就業状況を示した第4表では, 半数が専業主婦と回答している。この調査対象の 場合,配偶者は全て女性である。就業している配 偶者では,パートタイム労働者が27世帯(25.5%) と多いが,自営業者が会社員と並んで多い(各10 世帯,9.4%)。自営業者は,自宅などで料理教室 第1表 幕張ベイタウンにおけるマンションの供給(1994―2006年)

Table 1. Condominium supply in Makuhari Bay Town (19942006)

分譲時期 マンションの 構造 価格(万円) 専有面積(㎡) 総戸数 (賃貸 戸数) 抽選の 最高 倍率 平均 最低 最高 最小 最大 第1期 (1994年) 中層 4772.8 3619.5 7993 58.9 121.34 117(12) 180倍 中層 4971.7 3780 8050 68.48 120.74 132(14) 244倍 中層 51402 3760 7750 58.95 116.91 114(14) 402倍 中層 4737.8 2160 7930 36.21 116.56 110(11) 189倍 中層 5268.2 3839.6 8100.3 69.8 127.51 113(12) 307倍 中層 5113.5 2879 7391 50.35 117.15 118(12) 206倍 第2期 (1995年) 中層 5165.5 3422 7398 56.82 110.18 130(26) − 中層 4981.5 3989.3 6395.2 75.5 99.61 120(24) − 中層 5128.3 3170 10550 54.92 140 190(38) − 中層 5275.4 3548.6 7303.2 59.68 120.04 136(28) − 第3期 (1996年) 中層 4742.2 3470 8490 68.6 118.34 112(12) − 中層 4702.8 3240 9710 70.42 135.37 125(13) − 中層 4734.7 2890 7610 56.92 117.6 115(12) − 第4期 (1998 ―2000年) 高層 4516.3 2790 8920 56.56 139.56 385(29) − 高層 4345.2 2690.7 8181.5 66.98 135.65 385(30) − 超高層 5308.7 3010 13110 60.53 150.81 509(0) − 超高層 5072.8 2700 15450 67.76 173.06 496(0) − 第5期 (2001 ―2006年) 中層 4021.7 2828 7558 72.56 133.31 200(16) − 高層 4312.5 2690 7380 78.67 133.68 390(25) − 高層 4293.5 2890 6656 80.15 148.31 220(0) − 高層 4270.9 3290 7900 77.75 129.77 290(34) − 高層 4561.3 3050 7900 88.52 183.26 366(17) − 超高層 3849.1 2918 6858 81.38 138.5 224(0) − 超高層 3996.7 2970 7280 77.46 134.36 188(0) − 超高層 3627.9 2390 5580 71.64 112.53 383(0) − 超高層 3835.2 2568 7198 72.5 138.27 410(0) − 超高層 3651.9 2600 6100 76.87 129.8 228(0) − 超高層 3664.4 2590 6470 81.1 139.31 184(0) − 注1)中庭を囲むように住棟が配置された5∼6階建てのマンションを中層,タワー状および中庭を 囲む住棟で7∼20階以下のマンションを高層,タワー状および中庭を囲む住棟で21∼40階以下の マンションを超高層と表す。 注2)抽選の最高倍率を示した−はデータがないものを表す。 資料:不動産経済研究所「全国マンション市場動向」および幕張ベイタウン誕生10年記念誌編集委員 会「幕張ベイタウン誕生10年記念誌」により作成。

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や絵画教室,音楽教室等を主宰しており,フリー ランスの音楽家や司会業者等として活躍している 例もある。  (3)居住世帯の居住経験 第2図は,家族世帯 の世帯主の居住経験を示したものである。世帯主 の多くは,全国各地で出生しており,親の住宅購 入までに千葉県内や大都市郊外,地方都市などへ 転居している。  居住者の多くは,親世帯が大都市郊外に住宅を 購入した経験をもつ。インタビューにおいては, 親の転勤に随伴した転居経験が多く,現住地が人 生で最長期間居住していると答える例があった。 また,親もしくは祖父母の代からいわゆる“転勤 族”であったり,親世帯が第二次世界大戦後の引 き揚げ者であったりする居住経験をもつことから, 自身の故郷といえる場所がなかったと語る例があ った。  幕張ベイタウン居住者の世帯主は,進学時に東 京大都市圏内,次いで札幌市や広島市などの広域 中心都市やその他の地方都市へ転居した。東京大 都市圏で就業した者は,東京都内や千葉市などの 社宅や寮に居住している。また,採用後すぐに地 方都市や海外へ転居した世帯も多い。  結婚時に東京大都市圏に集中しているものの, その後も転勤による転居回数が多く,家族世帯の うち出生時からの転居回数が10回以上であったの は18世帯(24.3%), 海外転勤経験者は13世帯 (17.6%)に上る。大半の世帯は,最初の住宅取得 時に幕張ベイタウンに移動しているが,二度目の 住宅取得時にベイタウンに移動したり,ベイタウ ン内で住み替えたりする例も確認された。  (4)居住世帯の住み替え行動 幕張ベイタウン 居住者の前住地および前住地の住居形態を示した 第5表をみると,千葉市内からの移動が33世帯 (29.5 %),次いでその他千葉県内から移動したも のが29世帯(25.9 %)であった。結婚時までに千 葉県内に移動していた世帯が,住宅取得時に幕張 ベイタウンへ転居した傾向が強い。東京都内や神 第2表 幕張ベイタウン居住者の世帯構成(2009年)

Table 2. Household structure of the residents

sur-veyed (2009)

類 型 世帯構成 初期入居 後期入居 小 計(%) 家族世帯

{A} 夫婦と就学子 {A33―1} {A41―2} (66.1)74 夫婦世帯 {B} 夫婦 4 3 32 (28.5) 子離家後 11 6 夫婦と就業子 6 2 単身世帯 {C} 就労期退職後 21 21 (5.4)6 小 計 (%) (50.9) 57 (49.1) 55 (100)112 注1)初期入居は1995∼2000年に入居した世帯,後期入居は 2001年∼2009年に入居した世帯を表す。

注2){A}{B}{C}および{A―1}{A―2}は,世帯類型の略称 を表す。

資料:インタビュー調査により作成。

第3表 幕張ベイタウンにおける世帯主の就業特性 (2009年)

Table 3. Occupations of the heads of households

surveyed (2009) 就業地 会社員 定年退職者 その他 小計(%) 東京都 62 6 68(60.7) 幕張新都心 3 1 4(3.6) その他千葉県 10 3 13(11.6) その他 1 15 11 27(24.1) 小 計 76 15 21 112 (%) (67.9) (13.4) (18.7) (100) 注1)会社員は,会社役員を含む。 注2)その他の11世帯には,単身赴任のために千葉県外に居 住する7世帯を含む。 資料:インタビュー調査により作成。 第4表 幕張ベイタウンにおける配偶者の就業特性 (2009年)

Table 4. Occupations of the wives surveyed (2009)

専業 主婦 パートタイム 会社員 自営業者 その他 小 計(%) 自宅 53 1 5 (55.7)59 海浜幕張 駅周辺 14 1 1 (15.1)16 その他 千葉市 7 1 2 3 (12.2)13 東京都 1 6 (6.6)7 その他 4 2 2 3 (10.4)11 小 計 (%) (50) 53 (25.5) 27 (9.4) 10 (9.4) 10 (5.7) 6 (100)106 注)会社員は,会社役員を含む。 資料:インタビュー調査により作成。

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奈川県内から転居した世帯は合わせて19世帯であ る。その他国内からの移動者も含め,千葉市に土 地勘がなくて幕張ベイタウンに居住している世帯 は,新開発地の真新しさや,欧風の街並み,居住 者の所得や教育レベルの高さを評価したことから, 距離が遠くても転入している。さらに,雑誌やテ レビなどの情報によって幕張ベイタウンに対する 良好な地域イメージを形成していた世帯も含まれ る。  幕張ベイタウン内で住み替えた世帯が21世帯で, 全体の18.8%を占めている。ベイタウン内の賃貸 住宅に居住し,その後分譲マンションへ移るもの が14世帯,所有住宅間での移動が7世帯である。 ベイタウン内で転居経験がある世帯の特性を第6 表に示した。  賃貸住宅から所有住宅へ転居した世帯では,幕 第2図 幕張ベイタウン居住者の家族世帯(世帯主)の居住経験

Figure 2. Lifepaths of the households who belong to Family Type among the residents surveyed

注)BT は幕張ベイタウン,CC は幕張ベイタウンを除く千葉市,CP は千葉市を除く千葉県,TC は東京都区部,TS は首都圏周辺部,NOC は名古屋・大阪圏の中心都市,NOS は名古屋・大阪圏周辺部,LC は地方圏の県庁所在都市, LS はその他日本国内,OS は日本国外を表す。 資料:インタビュー調査により作成。

BT

CC

CP

TC

TS

OS

NOC

NOS

LC

LS

80 50 20 5 1 80 50 20 5 1 20 10 5 1 20 10 5 1 居住世帯数 移動数 出生時  親の 住宅購入 進学時 就職時 結婚時 住宅購入 1 回目 住宅購入 2 回目

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張ベイタウンの計画や景観を気に入ったが,千葉 市に土地勘がないため,住宅を購入して居住する ことが不安であったため,賃貸住宅に居住し,そ の後に分譲マンションを購入するか決定しようと する世帯(A―2,B1世帯)がみられた。また,結 婚や子の誕生などのライフイベントで近隣市町村 から幕張ベイタウン内の賃貸住宅へ転入した世帯 が,子の成長などで永住住意欲が増し,幕張ベイ タウン内での持家取得に向かう例(A―5,A6,A7,A8,A9世帯)も多い。海外勤務からの帰国 の際や,転勤による転居予定がある世帯(A―10, A―11,A12,A13世帯)は,子が学校で容易に馴 染める環境を求めていた。幕張ベイタウンには転 勤による転居経験者や帰国子女が多く居住すると いう評判を知人や不動産業者から得たため,幕張 ベイタウンに入居した。  所有住宅間で転居した世帯は,幕張ベイタウン を気に入って入居していた。そして,世帯の成長 や前住居に問題があった際に,幕張ベイタウン内 の新築マンションへ転居していた。  また,ベイタウン内の住み替えによって生じた 中古マンションを含めると,幕張ベイタウンにお ける住宅の選択肢は,価格や立地,間取りなど多 岐にわたる。A―14世帯は,海外勤務からの帰国 の際に,海外勤務になる以前に居住していたマン ションをリフォームして居住することを予定して いた。幕張ベイタウンでは,ベイタウン内での買 い替え需要が多いことから,中古マンションの広 告が頻繁に配布される。このような広告を見るう ちに,希望通りの間取りや設備のものを発見し, 買い替えを決意した。幕張ベイタウン内で住み替 える世帯は,幕張ベイタウンでの人間関係や街並 みなどを高く評価しているため,幕張ベイタウン 内の別住居へ転居することによって世帯の成長に 対応しようとしている。  (5)親族近居と永住意識 幕張ベイタウン居住 者の近居親族の居住地を示した第7表によると, 親・兄弟姉妹・子の世帯のうち,幕張ベイタウン に居住しているものは26世帯(14.6%)であった。 両親を呼び寄せて近居している世帯が多いが,特 に配偶者の両親との近居が多い32)。また,幕張ベイ タウン内で近居している親族の住居形態は,中古 住宅を購入して居住する配偶者の両親が6世帯と 最多であり,呼び寄せ需要の受け皿として中古マ ンションが機能している。  2000年に幕張ベイタウンでマンションを購入し た D 世帯の事例を示す。D 世帯の配偶者の両親 は,2008年より幕張ベイタウン内の同じマンショ ンの階下に居住している。配偶者の父親は,浜松 市で生まれ,就業後には国内外への転勤を繰り返 した。東京本社と市原市への通勤が基本であった ことから,千葉市稲毛区にて分譲マンションを購 入した。住宅購入後も国内外の転勤を繰り返した が,現在は定年退職している。D 世帯の階下の 住居が売却されることになり,その情報を得た両 親は,前住居の設備や高齢期の健康面などへの不 安から娘との近居を決意した。両親は,元来千葉 市に血縁がなく土地勘もなかったが,就業上の都 第5表 幕張ベイタウン居住者の前住地と前住地 の住居形態

Table 5. Previous residences of the residents

sur-veyed 社宅寮 賃貸住宅 所有住宅 小 計(%) 戸建住宅 集合住宅 幕張ベイ タウン 14 7 (18.8)21 千葉市 9 10 1 13 (29.5)33 千葉県 6 15 2 6 (25.9)29 東京都 6 6 1 (11.6)13 神奈川県 2 2 1 1 (5.3)6 日本国内 3 3 2 (7.1)8 日本国外 2 (1.8)2 小 計 (%) (25) 28 (44.6) 50 (4.5) 5 (25.9) 29 (100)112 注1)千葉市は幕張ベイタウンを除く,千葉県は千葉市を除 く,また日本国内は千葉県および東京都,神奈川県を除 く範囲を表す。 資料:インタビュー調査により作成。

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合によって千葉市で住宅購入した。千葉市内に趣 味の拠点をもつようになったが,前住地や前住居 自体への愛着は強くなく,転居することに対する 心理的な抵抗が少なかった。幕張ベイタウンに転 居してから約半年後に前住居は売却されている。 この他にも呼び寄せで中古マンションを購入した 世帯のうち,千葉市美浜区・稲毛区・花見川区の 分譲マンションや公団住宅などから親世帯が転居 した場合,比較的速やかに前住居が売却されてお り,中古住宅市場が盛況であったことが親世帯の 転入を容易にしたことがわかる。  第3図は,居住者の永住意識を示したものであ る。永住意識をもって居住している世帯は全体で 47世帯(42.0%)にのぼる。また,幕張ベイタウ ン内での転居を希望する8世帯を含めると,約半 数にあたる55世帯(49.1%)は幕張ベイタウンへ の永住意識をもっている。世帯類型別にみると, 初期に入居した家族世帯では現住居への永住意識 をもつ世帯よりも未定とする世帯が多く,子の離 家後の転居や幕張ベイタウン内での転居を希望す る世帯も永住予定者の半数程度にのぼる。後期に 入居した家族世帯では,現住居への永住意識が高 い。これに次いで,子の進学先が都内などになれ ば転居したいと答える世帯が多い。夫婦世帯では, 第6表 幕張ベイタウン内での転居経験世帯の特性

Table 6. Characteristics of those moving within Makuhari Bay Town and their experience

世帯 番号 世帯構成 幕張ベイタウンへの入居時 移動 1回目 移動 2回目 所有 状況 入居年 転居理由および条件 処分状況 所有状況 入居年 転居理由 所有状況 入居年 A―1 52 50 15 賃貸 1997 幕張ベイタウンを気にいったため − 分譲 1999 住宅所有意欲 A―2 42 41 15 13 賃貸 2000  幕張ベイタウンを気にいったが,土地勘がなく不安があったため − 分譲 2003 子の成長のため A―3 49 44 20 (―) 18 (―) 賃貸 2000 前住地への不満のため − 分譲 2003 前住居への不満のため A―4 47 49 15 10 賃貸 2001 家賃の上限が13∼14万円 / 月 − 分譲 2003 子の成長のため A―5 44 36 10 6 賃貸 1997 結婚のため − 分譲 2003 子の成長のため A―6 38 38 7 (―) 1 (―) 賃貸 1997 結婚のため − 分譲 2003 住宅所有意欲 A―7 33 32 4 0 賃貸 2002 結婚のため − 分譲 2007 住宅所有意欲 A―8 42 41 7 3 賃貸 1997 結婚のため − 分譲 2002 住宅所有意欲 分譲 2007 A―9 44 39 14 12 9 賃貸 2002 子の成長のため − 分譲 2006 子の成長のため A―10 51 46 21 18 15 賃貸 2001 (転勤による転居予定のため) 転勤世帯が多い地域のため − 分譲 2006 子の成長のため A―11 49 45 19 15 賃貸 1998 転勤のため − 中古購入 2002 住宅所有意欲 A―12 41 37 6 1 賃貸 2005 海外転勤からの帰国のため − 分譲 2006 住宅所有意欲 A―13 46 46 14 12 賃貸 2002 海外転勤からの帰国のため − 分譲 2005 子の成長のため A―14 49 46 20 19 13 分譲 1997 住宅所有意欲 売却 中古購入 2008帰国後に現住居を海外転勤からの 気に入ったため A―15 42 42 13 分譲 1997 住宅所有意欲 売却 分譲 2001 前住居への不満のため A―16 44 40 16 13 分譲 1996 幕張ベイタウンを気にいったため 賃貸 分譲 2006 子の成長のため A―17 47 42 18 12 分譲 1999 幕張ベイタウンを気にいったため 売却 分譲 1999 前住居への不満のため A―18 46 45 18 13 分譲 1997 幕張ベイタウンを気に入ったため(第1期抽選に落選) 賃貸 分譲 2007 現住居の間取りを気に入ったため B―1 69 65 賃貸 1995 幕張ベイタウンを気に入ったため − 分譲 − 退職のため B―2 48 45 賃貸 2005 社宅の年限のため − 中古購入 2009 住宅所有意欲 B―3 36 43 分譲 親の住宅購入のため − 分譲 2005 独立のため 注1)所有状況において,分譲とは新規に分譲されたマンションを購入したことを,中古購入は中古住宅を購入したことを表す。 注2)世帯構成において,(M)は男性を,(F)は女性を,(−)は不明を表す。また,世帯主はすべて男性,配偶者は女性であっ たため省略した。 注3)処分状況において,−は賃貸住宅や親が所有する住宅に居住していた世帯を表す。 資料:インタビュー調査により作成。

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世帯主の定年退職後に転居予定とする世帯や未定 とする世帯もいるものの,現住居への永住意識が 強い。単身者は,終の住処として居住した女性を 除くと,転居希望をもっている。  幕張ベイタウンでは,中学校への進学時に東京 都内や千葉県内の私立中学を受験する生徒が多く, 子の中学や高校進学を機により通学利便性の高い 地域へ転出する世帯がいる。また,幕張ベイタウ ンの開発後に開発された横浜みなとみらい地区や 豊洲などの沿岸地区へ転出する世帯も多い。  転居予定と回答した世帯では,転居先の住居形 態としてマンションの可能性が高いとしている世 帯が大半であり,マンションからの転居先として もマンションを志向する傾向が強い。 III 幕張ベイタウンにおけるマンション購入世 帯の現住地選択過程  次に,これまでに示した居住者特性を踏まえ, 第7表 幕張ベイタウン居住者の近居親族の居住地 (2009年)

Table 7. Places of residence of the family members

who live close to the residents surveyed (2009) 親 兄弟・姉妹 子 小 計(%) 世帯主 配偶者 世帯主 配偶者 幕張ベイタ ウン 4 8 4 5 5 (14.6)26 千葉市 6 13 7 5 6 (20.8)37 千葉県 15 15 10 6 8 (30.3)54 東京都 10 6 5 2 7 (16.9)30 関東地方 8 8 4 5 6 (17.4)31 小 計 (%) (24.2) 43 (28.1) 50 (16.8) 30 (12.9) 23 (18) 32 (100)178 注1)複数回答による。 注2)千葉市は幕張ベイタウンを除く,千葉県は千葉市を除 く,また日本国内は千葉県および東京都,神奈川県を除 く範囲を表す。 資料:インタビュー調査により作成。 第3図 幕張ベイタウン居住者の現住居への永住 意識(2009年)

Figure 3. Residential intentions of the residents

surveyed (2009) 注)世帯構成において,家族世帯(初期入居)は,1995∼ 2000年に入居した世帯を表し,家族世帯(後期入居)は 2001∼2009年までに現住居に入居した家族世帯を表す。 資料:インタビュー調査により作成。 第4図 幕張ベイタウン居住者の転居のきっかけ

Figure 4. Reasons for deciding to move of the

resi-dents surveyed 注)世帯構成は,第3図と同様である。 資料:インタビュー調査により作成。 0 10 30 50 ( 世帯数) 永住意識有 子の離家後転居 子の進学時転居 親との同居等有 幕張ベイタウン 内で転居希望 定年退職後転居 転居希望有 未定・不明 家族世帯 ( 初期入居) 家族世帯 ( 後期入居) 夫婦世帯 単身世帯 世帯構成 住宅購入意欲 前住地への 不満等 社宅の年齢  制限等 幕張ベイタウン を気に入った 転勤 退職 結婚 子の成長 子の離家 親からの 独立 親族との 死別 その他 住宅購入資金  や金利優遇 0 10 20 35 ( 世帯数) 家族世帯 ( 初期入居) 家族世帯 ( 後期入居) 夫婦世帯 単身世帯 世帯構成

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具体的に居住地選択に関する意思決定過程を示す。  (1)転居の決定 幕張ベイタウン居住者の転居 のきっかけを第4図に示した。初期入居の家族世 帯では,住宅所有意欲の高まりや,幕張ベイタウ ンの計画や街並みを気に入って居住希望をもつよ うになったことなどを転居のきかっけとして挙げ る世帯が目立つ。また,住宅金融公庫の金利が低 下したことによって住宅所有意欲がわいたとする 世帯,結婚や子の成長というライフイベントを契 機とする世帯がその後に続く。一方,後期入居の 家族世帯では,子の成長を挙げる世帯が多数とな り,次いで社宅等の年齢制限や転勤など転居を推 進する外部的要因によって住宅所有するようにな っている。  入居時期によるこれらの差異は,以下のような 要因による。初期の入居者は,高所得者層で新開 発地への強い関心から移り住んだ世帯が多数であ った。初期入居者は,文化施設や運動公園の新設 を行政に嘆願したり33),開発計画に関わった建築家 や学者ら34)とともに街のソフト面の形成35)に尽力した りするなど,幕張ベイタウンへの強い愛着を,生 活利便性や生活の質の向上という形で昇華させて きた36)。一方で,入居時期が2001年以降になると, 幕張ベイタウン内の諸施設やコミュニティ組織, サークル活動などが一定水準にまで達し37),生活利 便性が確保された。千葉市内の周辺地区とは一線 を画す高級街区としての居住環境に加え,住宅価 格が下落したため,周辺地域に居住する住宅購入 予備世帯にとって好ましい選択肢となった。後期 に入居した世帯は,これらの条件によって,幕張 ベイタウンのマンションを他地域のマンションよ りも高く評価して転居したものが多く,初期入居 者よりも街への思い入れが希薄である。  夫婦世帯は,前住地への不満のほか退職などの ライフイベントによって転居を決定していた。単 身世帯は転居を決めたきっかけとして,前住地へ の不満,親からの独立,親族との死別を挙げてい る。  (2)転居先の探索 第8表は,幕張ベイタウン 居住者の転居先の探索地域と,探索地域別の住居 形態を示したものである。探索地域は,幕張ベイ タウン内が圧倒的に多いものの,浦安市が競合先 として挙げられた。浦安市の場合は,新浦安駅周 辺の新築マンションと比較をしたものが大半であ る。新浦安駅周辺の新築マンションと比較した世 帯は,分譲時期による影響を強く受けていた。す 第8表 幕張ベイタウン居住者の転居先の探索地域

Table 8. Searching areas for moving among the residents surveyed

探索地域 マンション 戸建住宅 新 築 中 古 賃 貸 新 築 中 古 A―1 A―2 B C A―1 A―2 B C A―1 A―2 B C A―1 A―2 B C A―1 A―2 B C 幕張ベイタウン内 41 38 23 5 1 8 3 1 1 2 浦安市 10 12 5 1 1 2 1 京葉線の周辺駅 14 5 3 2 1 2 1 2 2 1 武蔵野線総武線 9 7 4 1 1 1 1 4 1 その他の千葉県内 6 4 4 3 3 4 1 東京都 7 4 7 3 1 1 1 2 3 1 神奈川県 5 8 2 1 1 1 3 1 1 その他 1 2 1 小 計 93 80 48 12 4 12 5 2 1 2 2 1 8 6 17 0 3 2 0 1 注1)複数回答による。 注2)武蔵野線・総武線は,千葉県内の各沿線駅の周辺で探索したものを表す。京葉線の周辺駅は,検見川浜駅・稲毛海岸駅・新 習志野駅など,海浜幕張駅の周辺3駅程度の駅周辺で探索したものを表す。 注3)世帯構成は,A―1は1995∼2000年に入居した家族世帯,A―2は2001年以降に入居した家族世帯,B は夫婦世帯,C は単身世 帯を表す。 資料:インタビュー調査により作成。

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なわち,幕張ベイタウンの分譲の時期には,新浦 安駅から徒歩20分程度に位置するマンションが分 譲されていた。価格帯も,幕張ベイタウンと同等 または割高であったことなどから,新浦安駅周辺 の新築マンションは選択されなかった。  JR 京葉線沿線や武蔵野線,総武線等の沿線で の探索も行われた。一方で,東京都や神奈川県な どとも比較している世帯もおり,探索範囲は比較 的広範囲に及んでいる。  探索した住宅の住居形態をみると,現住居の住 居形態と同じ住居形態を対象として探索をする世 帯が大半であった。新築のマンションに入居した 世帯の多くが,新築のマンションを中心に探索し ていた。中古マンションへの居住者は,中古マン ションを探索の対象としていた。  また,探索地域と住居形態の関係をみると,戸 建住宅を探索した世帯は,幕張ベイタウンの周辺 よりもその外縁の千葉県内で探索しており,佐倉 市や八千代市,柏市のほか,千葉市内では緑区な どを挙げている。戸建住宅を探索した世帯には, 探索時期が1993∼1995年と土地価格が非常に高い 時期にあたるものもあった。千葉県内では1991年 に公示地価がピークを示し,その後に下落してい たとはいえ,現在と比較するとはるかに高価な時 期であった。子が離家した後の夫婦世帯には,千 葉市緑区の高級住宅の抽選に申し込んだものの落 選し,その帰路に立ち寄った幕張ベイタウンを気 に入り契約した例もあった。  次に,探索地域の選定理由を示した第9表をみ ると,住宅の立地する周辺地区の計画や景観,建 て込み具合などを重視した世帯が世帯構成を問わ ず多い。また,幕張ベイタウン内には,マンショ ンしか供給されないため,日照権問題での住民ト ラブルを回避できると考えた世帯がみられた。幕 張ベイタウンにおいては,街全体の地区計画が明 確であったため,居住者は周辺の土地利用を予測 しやすく,マンションの周辺環境や,窓からの眺 望を考慮して選択していた。  世帯主の通勤利便性や交通利便性という点では, 総武線沿線等と比較して,京葉線は電車の本数や 最終電車の時刻に不満はあるものの,混雑が少な いことを評価している世帯が多い。出身地が遠方 である世帯や転勤・出張の多い世帯は,成田空港 や羽田空港,東京駅への近接性を評価した。  子育ての環境や子の教育環境を重視している世 帯は,幕張ベイタウンを高く評価した。それは, 公立小学校の評判や私立中学への進学率の高さな どから判断して,幕張ベイタウンは教育熱心な世 帯が多い地区とみなされたからである。また,公 園が多いことや歩道が広いこと,幕張ベイタウン 内は道路が石畳のため自家用車のスピードが抑え られることなどから,子を安心して遊ばせられる 環境であるという回答があった。  探索地域の選定では,両親への近接を重視する 世帯が37世帯おり,特に配偶者の両親との近接を 求める世帯が22世帯と多数を占めた。新興住宅地 志向と答えた世帯は,夫婦あるいはいずれかが大 都市郊外の新興住宅地にしか居住したことがない ため,新興住宅地しか居住地として想定できなか ったと答えた世帯である。  転居経験が多く,故郷を持たない世帯の場合, 第9表 幕張ベイタウン居住者の索地域の設定理由

Table 9. Reasons for choosing search areas for

moving among the residents surveyed

主な選択理由 A―1 A―2 B C 都市計画(景観,インフラ整備等) 30 31 12 4 世帯主の通勤利便性 23 17 14 3 交通利便性 11 10 10 2 前住地への近接 5 5 子の教育環境(公立の学区等) 11 43 子育ての環境(歩道や公園等) 9 21 両親・親族への近接(世帯主) 4 5 3 3 両親・親族への近接(配偶者) 10 11 1 居住者や地域の活気 7 7 3 海への近接や自然環境 2 10 13 2 新興住宅地志向 2 3 注1)複数回答による。 注2)世帯構成は,A―1は1995∼2000年に入居した家族世帯, A―2は2001年以降に入居した家族世帯,B は夫婦世帯, C は単身世帯を表す。 資料:インタビュー調査により作成。

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埋め立て地における新開発で全員が「よそ者」と いう環境が重要な地域選択要因になっている。例 えば,E 世帯の親世帯は海外からの引き揚げ者で ある。親世帯は転勤の多い職業であり,転勤にと もなう転居を繰り返した。世帯主はベイタウンに 居住するまで15回を超える転居を経験しており, 自身を「根なし草」であると評した。幕張ベイタ ウンは,全員が「よそ者」であるために E 世帯 にとって居心地がよい場所である。世帯主の妹夫 婦も幕張ベイタウン内に居住しており,親世帯は E 世帯が幕張ベイタウンに居住する前に千葉市内 に転居していた。幕張ベイタウンが E 世帯やそ の親族にとっての「ふるさと」となっている。  特定の住居を選択する段階では,価格や間取り, 日当たり,小学校区,前面の土地利用や眺望など が判断基準となった。初期入居世帯の場合,抽選 に当選することが困難であったため,自身が申し 込んだ抽選に外れ,キャンセル物件の中から抽選 のない住居を選択した世帯もみられた。このよう な世帯は,幕張ベイタウン内に居住することを, 特定の住居の条件よりも重要視していた。  一方で,間取りなどが気に入ったために,土地 勘のない幕張ベイタウンに転入した例もみられた。 単身の F 世帯(女性)は,現住地への転居以前は 神奈川県藤沢市の実家に居住しており,母親の死 亡を機に独立を決意した。当初は,東京都内を中 心に住宅の探索をしていたが,間取りや広さにお いて気に入る物件に出会えなかった。不動産会社 の会員用情報誌で取り上げられていた幕張ベイタ ウンの物件で,気に入った間取りを見つけたため, モデルルームを見学し,購入した。幕張ベイタウ ンにおいては,単身向けの住居の供給は限られて いるが,東京都内等で供給される物件と比較して, 広さや内部の間取り,デザインの面で多様であっ たことが高く評価された。  (3)意思決定のパターン 第5図は,幕張ベイ タウン居住者の現住地選択に関する意思決定のパ ターンを示したものである。ベイタウン限定探索 とは,幕張ベイタウンを気に入っていたり,開発 計画の時点から興味をもっていたりした世帯が, 幕張ベイタウン内のマンションに限定して探索し たものである。後期入居の家族世帯では,多くの 世帯がこのパターンを示したが,これは幕張ベイ タウンの賃貸マンションや所有マンションに居住 していた世帯の住み替えも含まれるためである。 また,夫婦世帯の約半数もこのパターンであった が,これは前住地が千葉市内など近隣である世帯 が,不動産業者などの情報で幕張ベイタウンを知 り興味をもって転居してきた場合や,広告や新聞 記事などで取り上げられる幕張ベイタウンに興味 を持ち現地へ足を運んだ場合である。  マンション限定探索とは,マンションに限定し て情報収集などの探索行動をとった世帯であり, 第5図 幕張ベイタウン居住者の意思決定パターン

Figure 5. Decisionmaking patterns of the resi-dents surveyed 注1)マンション限定探索はマンションに限定して探索を行 ったものを表す。 は,現住所の周辺のマンションで探 索を行い, は,特定の場所を東京大都市圏内で選定し て探索を行った。 注2)即決型は,たまたまモデルルームなどに立ち寄ったこ とがきっかけとなり,マンション購入を決意し住居の決 定までを行った。 注3)比較探索は,戸建住宅などの他の住居形態との比較を 行って現住居を選択したもので, および は注1と同 様である。 注4)世帯構成は,第3図と同様である。 資料:インタビュー調査により作成。 幕張ベイタウン  限定探索 マンション 限定探索 (A) マンション 限定探索 (B) 即決型 比較探索  (B) 比較探索  (A) 0 10 30 50 家族世帯 ( 初期入居) 家族世帯 ( 後期入居) 夫婦世帯 単身世帯 世帯構成

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特に幕張ベイタウンおよびその周辺でのみ探索し たものを とし,探索範囲が広範囲であり,特定 のスポット(特定の住宅地開発やランドマーク)を 数か所回り探索したものを とした。居住地選択 においては,選択者が多くの情報を持ち認識して いる地域と,現実の探索地域には強いつながりが あるとされている38)。しかし,マンション限定探索 の意思決定パターンをとる世帯は,過去に居住 した経験がなく,親族や友人も居住していない地 域であっても,メディア情報などで取り上げられ る知名度のある住宅地に探索地域を設定している。 東京都内,横浜などで探索したが価格面や周辺環 境が条件に合わず,探索範囲を千葉県内に広げた G 世帯の事例を示す。世帯主は,東京都内や横浜 市と比較して,知名度や地域イメージの点で千葉 県内の住宅地は劣ると判断していた。新浦安駅周 辺や幕張ベイタウンは,東京大都市圏内でも知名 度がある地域であったため,探索地域に加えたと している。新浦安駅周辺と幕張ベイタウンという 組み合わせのスポット探索は多くみられた。  即決型とは,転居を決定していない世帯が,余 暇を兼ねてモデルルーム見学などをした際に,特 定の住居を気に入り転居を決定したものである。 初期入居の家族世帯と夫婦世帯,少数ではあるが 後期入居の家族世帯にみられた。これらの世帯は, 周辺から散歩などを兼ねてモデルルームを見学し た世帯と,幕張新都心内の施設などを利用した際 に偶然モデルルームに立ち寄り決定した世帯に分 かれる。このような世帯は,潜在的な住宅需要者 であったが,早急に転居の必要はないものの,何 かしらの住宅ニーズを持っていた。  1990年代後半以降のマンション供給増加で,新 聞広告等での情報が氾濫しており,転居を決定し ていない世帯であっても住宅情報に触れる機会が 多かった。そのため,「冷やかし半分」でのモデ ルルームの見学は,一種の余暇活動のように行わ れていた。高齢の夫婦であるH 世帯は,千葉市 内に居住していた。海岸線の散歩を兼ねて幕張ベ イタウン周辺に立ち寄り,モデルルームを見学し た。前住地では設備面で不安があり将来的なリフ ォームを計画していたが,早急に転居しなければ ならない理由はなかった。H 世帯の世帯主は園 芸の趣味があるため,園芸ができる広いベランダ 第6図 幕張ベイタウン居住者の転居先の探索方法

Figure 6. Search methods for new housing among

the residents surveyed

注1)新聞広告等は新聞記事・新聞広告・ポスティング広告 を含む。住宅情報誌は,不動産業者が発行する会員登録 者向けの住宅情報誌を含む。 注2)探索期間は,探索開始から入居までの期間を表す。 注3)意思決定パターンは,第5図と同様であり, は,現 住所の周辺のマンションや戸建住宅との間で探索を行い, は,特定の場所を東京大都市圏内で選定して探索を行 ったものを表す。 資料:インタビュー調査により作成。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 意思決定パターン 幕張ベイタウン 限定探索 マンション 限定探索 (A) マンション 限定探索 (B) 比較探索 (A) 比較探索 (B) 即決型 35 30 25 20 15 10 5 0 探索期間 1 年未満 1 〜 2 年 2 年以上 探索期間 意思決定パターン モデル ルーム 見学 新聞 不動産 インター 住宅 知人 ネット 等の 紹介 情報 誌 業者の 情報 広告 等

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のある住居に出会ったことで,転居を即断した。 配偶者も気に入ったため,転居と住居の購入を決 定した。  最後に,比較探索とは,戸建住宅と比較して探 索する世帯であり,周辺地域での探索を とし, スポットの探索を とした。幕張ベイタウンのみ の探索もスポット探索の一種であると考えられる ため,全世帯の約6割が,スポット探索のパター ンをとった。  第6図は,幕張ベイタウン居住者の探索方法と, 探索期間および意思決定パターンの関わりを示し たものである。ほぼ全世帯がモデルルームの見学 もしくは現地視察を行っており,このことは意思 決定のパターンおよび探索期間に関係なく,重要 な探索方法であるといえる。新聞広告や新聞記事, ポスティング広告についても同様である。周辺探 索を行う世帯にとっては,不動産業者からの情報 および住宅情報誌などでの評価が重要視されてい る。地域を知っている世帯が探索するため,限ら れた地域の中でより条件に合った住宅を探索する ためのチャンネルを広げることが目的である。住 宅情報誌を利用している世帯では,比較的探索期 間が長く,探索期間が2年以上におよぶ世帯の割 合が高まる。  インターネットを利用している世帯では,スポ ット探索を行った世帯が多数を占める。過去に居 住したことがなく,馴染みのない地域を探索する 際の基本的な情報源としてインターネットは利用 されていた。具体的には,小学校区の評判に関す る掲示板をみたとする世帯が多い。また,インタ ーネット上の掲示板において,住民に住み心地や 街の様子を尋ねた世帯もおり,掲示板上での交流 がベイタウンを選択する上で重要であったという。  先行研究における予察と比較すると,インター ネットの利用は探索期間の短縮にはあまり効果を 発揮していない。また,過去に居住したことのな い地域であっても,インターネットを通じて情報 を得て転居している世帯が多くみられたことは, 予察と合致していた。インターネットを利用して の探索を行った世帯は,2000年以降の入居者に限 定されている。また,具体的な物件情報の探索や 絞り込みという目的でのインターネット利用は限 定的であり,モデルルーム見学や新聞広告・記事 などの情報源の補助的な役割を果たしている。 IV マンション開発地区における現住地選択過 程の特性  (1)居住地としての高いステイタス 久保39)は, バブル経済期以降の地方都市中心部におけるマン ション購入世帯の現住地選択の特性として,地方 都市中心部のもつ高いステイタスと高級マンショ ンという条件が重要であったことを示した。地方 都市の中心部においては,歴史性や地形条件,教 育環境などが地方都市周辺地域に居住する転居予 定者にとって,ステイタスを形成する要因となっ た。  一方で,幕張ベイタウンにおいては,歴史性や 地形条件ではなく,地域に歴史がない埋立地にお ける新開発地であることが,大都市郊外に居住し てきた世帯に評価された。また,住宅価格が高価 であったことから,高級なマンション地区として 評価された。転居予定者の個人的背景によって, 評価される項目は異なるが,場所のもつ特性と高 級感が開発地のステイタスを高め,競争力のある 住宅地となっている。  (2)親子近居志向 幕張ベイタウン居住者の親 世帯は,幕張ベイタウン内やその周辺に移り住む 傾向がある。特に,配偶者の両親との近居傾向が 強く,これらの呼び寄せ移動が中古や賃貸住宅の 需要の一部を支えている。親世帯は,通勤距離と の関係から,血縁や土地勘のない地域で住宅を購 入した。そこで居住する中で形成された人間関係 に対して愛着を持っているとしても,「土地」や 「家屋」に対する愛着を強く有していたわけでは なかった。そのため,前住地および子の居住地に 近接した地域への転居に対する抵抗感が少なく,

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親族で幕張ベイタウン内に集住していた。  中澤ほか40)では,大都市郊外の住宅団地居住者の 将来的な居住に対する意向で,子の元へ転居して の同居を希望する世帯よりも,住宅を増築するな どして子世帯を呼び寄せたいと希望する世帯が多 いことが示された。戸建住宅居住者を主とする住 宅団地では,土地家屋を処分するためのコストが かかることや不動産の流通性が低いという点で, 転居が相対的に困難であると思われる。幕張ベイ タウン居住者の親世帯は,千葉市内のマンション や公団住宅などからの転居者が多いこともあり, 大都市郊外の戸建住宅地区とは異なった傾向が確 認された。  (3)マンション探索の特性 幕張ベイタウン居 住者の意思決定パターンは,マンションという住 居形態の特性と幕張ベイタウンというステイタス の高い住宅地という二つの要素によって,既存モ デルのパターンとは必ずしも一致しなかった。つ まり,「転居の決定→転居先の探索」という図式 が成り立たない例が確認された。  しかしながら,住み替え行動や,所有住宅の購 入を即決するという図式は,戸建住宅の購入に関 しても同じように当てはまるとは限らない。戸建 住宅の購入と比較して,幕張ベイタウンにおける マンション購入世帯は,意思決定がスムーズに行 われやすい条件を有していたと考えられるためで ある。マンションは,比較的定まった住居モデル が提示されており,それらの中から購入者のニー ズに合うものを選択することになる。また,流動 性がある住居形態であり,幕張ベイタウンは資産 価値の面でも,中古や賃貸としての需要が見込め るため,有利であろう。  探索方法と意思決定パターンの関係においては, 情報技術の発展は,地域の情報を得ることに利用 され,スポット探索型の世帯に有益な情報を提供 した。今後住宅地間の競合が激しくなるなどして スポット探索が増加していけば,インターネット が情報源として重要視されていくと考えられる。 V 結 語  本研究は,大都市郊外におけるマンションによ る新開発地を代表する幕張ベイタウンを事例とし て,居住者の特性と現住地選択に関する意思決定 過程を明らかにした。最後に,大都市郊外におけ る新開発地が大都市圏内の居住機能にどのように 関わっているのかについて考察し,本研究のまと めとしたい。  大都市郊外におけるバブル経済期以降の住宅開 発地は,大都市郊外に居住経験を持つ世帯の新た な受け皿としての機能を有している。大都市郊外 に居住経験を持つ世帯がすべて大都市郊外を志向 するわけではないが,大都市郊外で育った世帯が 住宅を取得しようとする際に,親族と近接し,自 身と似た価値観を持つ居住者が集まる地域を選好 する傾向があることが確認できた。  さらに,初期の住宅価格の高さや開発計画の真 新しさを評価した世帯が大都市圏の広範囲から転 入したことによって,高いステイタスを有する住 宅地として認識されるようになった。  東京都心部などにおいては,単身女性や夫婦共 働き世帯,中高年の富裕層などが主たるマンショ ン居住者であった41)。江東区などの東京湾沿岸の新 開発地においては核家族世帯向けのマンションが 供給されたとはいえ,一般の核家族世帯が志向す る住宅や居住環境は東京都区部では限られた選択 肢であった。こうした中で,大都市郊外の新開発 地は,東京大都市圏に居住する核家族世帯への良 好な居住環境を提供した。大都市郊外は大都市圏 の居住機能を支えていることに変わりはないが, 大都市郊外での住宅取得者の居住経験は郊外化の 時代とは異なる。つまり,非大都市圏出身者が大 都市圏内で住宅を取得しようとしたのが郊外化の 時代であったのに対し,現在は大都市圏内で生ま れ育った者が大都市圏内の住宅開発地を選別し購 入している。住宅開発地の選別の際には,世帯構 成や年収によって,購入可能な住宅が供給されて

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いる地域が限定されるため,核家族世帯は大都市 郊外の住宅地を選択せざるを得ない。しかし, 1990年代後半以降の地価の下落によって,東京都 心部に通勤する核家族世帯が購入可能な住宅開発 地は郊外化の時代よりも都心部に近接した。都心 部から近郊にかけてマンションを主体とした新開 発が増加したことによって,マンションの価格や 間取りによって世帯が再配置されたと考えられ, それによって大都市圏内における世帯構成や社会 階層によるすみ分けが顕著になったといえる。  一方地方都市においては,単身世帯や夫婦世帯, 中高年夫婦世帯がマンションを永住的な所有形態 として受容しているものの,核家族世帯は戸建意 識が根強く,実家継承や転勤による転居予定者な どがおり,必ずしも永住形態として機能している わけではない。地縁・血縁を有する世帯が地方都 市の中心部での利便性,ステイタス性を志向して 居住している。  マンション居住者特性の差異,つまりマンショ ン市場の差異は,都市の特性を如実に表す一つの 指標である。既存研究および本研究によって,日 本におけるマンション供給の代表的な地域である 大都市圏の都心部,大都市郊外,地方都市におけ る事例が蓄積され,現代のマンション需要に対し て一定の普遍性を有する特性が示された。今後は, 現代における重要な居住形態となったマンション の特性を示す上でも,住宅探索者の居住地選択に 関してより深く個人的背景を踏まえた研究蓄積が 行われることが重要となろう。また,マンション の増加にともなう大都市圏の居住地構造の変容に 関する多様な議論も待たれる。これらは,今後の 課題としたい。  [付記] 幕張ベイタウンでの調査にあたり,地理科 学会員で幕張ベイタウン居住者の田中敏嗣様にご尽力 いただきました。幕張ベイタウン自治会連合会の方々, テニスサークルの方々をはじめ,多くの居住者の皆様 には貴重な時間を割いて調査にご協力いただきました。 広島大学の由井義通先生,東京大学の荒井良雄先生を はじめとする人文地理勉強会の皆様には,本研究に対 して大変貴重なご意見をいただきました。筑波大学の 田林 明先生をはじめとする諸先生方および院生の 方々には終始ご指導いただきました。ここに記して御 礼申し上げます。本研究には,日本学術振興会の科学 研究費補助金(21・338)を利用した。 (筑波大学・院生,日本学術振興会特別研究員) 注 1) Bourne, L. S., Winston & Son, 1981. 2) 由井義通『地理学におけるハウジング研究』大明堂, 1999。 3) ⑴木内信蔵『都市地理学研究』古今書院,1951。⑵ 田辺健一『都市の地域構造』大明堂,1971。⑶尾藤章 雄「持家住宅分布からみた東京大都市圏の地域構造」 地理学評論58A―9, 1985, 559576頁。 4) ⑴川口太郎「郊外世帯の居住移動に関する分析― 玉県川越市における事例―」地理学評論 70A2, 1997, 108―118頁。⑵谷 謙二「大都市郊外住民の居住経歴 に関する分析―高蔵寺ニュータウン戸建住宅居住者の 事例―」地理学評論70A5, 1997, 263286頁。 5) ⑴香川貴志「高層住宅の立地にともなう都心周辺部 の変化―大阪市西区におけるケーススタディー」地理 学評論 61A―4, 1988, 350368頁。⑵香川貴志「名古屋 市における中高層住宅の立地特性」地理科学 45―1, 1990. 1―19頁。⑶香川貴志「大阪30 km 圏における民 間分譲中高層住宅の供給構造」 地理学評論66A―11, 1993, 683―702頁。 6) ⑴由井義通「広島市における中高層集合住宅の開発 とその居住者の特性」人文地理 38―1, 1986, 5677頁。 ⑵由井義通「広島市における中高層集合住宅居住者の 住居移動」地理学評論60A―12, 1987, 775―794頁。 7) 矢部直人「1990年代後半の東京都心における人口回 帰現象―港区における住民アンケート調査の分析を中 心にして―」人文地理553, 2003,277292頁。 8) 宮澤 仁・阿部 隆「1990年代後半の東京都心部に おける人口回復と住民構成の変化―国勢調査小地域集 計結果の分析から―」 地理学評論7813, 2005, 893― 912頁。 9) 代表的なものは,前掲6) ⑴ , ⑵。 10) 欧米におけるマンション居住者特性の研究は,セン サスの分析によるものが主である。例えば,Preston, V., Who lives in condominiums and cooperatives ? : an empirical investigation of housing tenure ,

82― 1, 1991, pp. 2―14. 11) 榊原彰子・松岡恵悟・宮澤 仁「仙台都心部におけ る分譲マンション居住者の特性と都心居住の志向性」 季刊地理学55―2, 2003, 87―106頁。 12) 広瀬智範「マンション開発に伴う仙台旧市街地の地 域変貌―青葉区五橋二丁目地区を事例に」季刊地理 学52―2, 2000, 118130頁。 13) 香川貴志「札幌市中央区における分譲マンション供 給の特徴―バブル期前後の比較考察を中心として

Figure 1. Study area
Table 1. Condominium supply in Makuhari Bay Town (1994 ― 2006)
Table  2. Household  structure  of  the  residents  sur- sur-veyed (2009) 類 型 世帯構成 初期入居 後期入居 小 計 (%) 家族世帯 {A} 夫婦と就学子 33{A― 1} 41{A― 2} 74 (66.1) 夫婦世帯 {B} 夫婦 4 3 (28.5)32子離家後116 夫婦と就業子 6 2 単身世帯 {C} 就労期 2 2 6 (5.4) 退職後 1 1 小 計 (%)  57 (50.9)  55  (49.1)  112
Figure 2. Life ― paths of the households who belong to  Family Type  among the residents surveyed 注)BT は幕張ベイタウン,CC は幕張ベイタウンを除く千葉市,CP は千葉市を除く千葉県,TC は東京都区部,TS は首都圏周辺部,NOC は名古屋・大阪圏の中心都市,NOS は名古屋・大阪圏周辺部,LC は地方圏の県庁所在都市, LS はその他日本国内,OS は日本国外を表す。 資料:インタビュー調査により作成
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参照

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