歩行の視覚運動制御
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(2) 歩行の視覚運動制御. 637. 図 1 歩行を知覚的に調整する 2 つの様式(文献 1) ,p. 152,図 3-1-3 より許可を得て転載). 突回避行動をとる必要がある。具体的には,通過直前での体幹. 要因で起こっていないかを明らかにできる。視覚情報は,遠方. の回旋や,速度の減速,または隙間の中心を正確に通るといっ. の情報を知覚して予見的に歩行を微調整するために役立ってい. た行動が有益である。このうち体幹回旋については,隙間の幅. る。高齢者や脳卒中片麻痺者においては,下向き歩行によって. が肩幅の 1.3 倍よりも狭いときに,体幹を回旋しはじめること. 遠方の環境情報を獲得していないケースや,隙間通過時に最適. がわかっている. 6). 。すなわち,隙間幅に関する視覚情報は,身. な回避行動の選択が難しいケースがあることがわかった。. 体幅を物差しとした相対値に瞬時に変換され,安全な歩行を実 現させている。. 謝辞:本稿で紹介した研究の一部は,科学研究機補助金(若手. 荷物やカバンをもって歩く場合,隙間通過に必要な幅は, “身. 研究 A, 24680068)の助成を受けた。. 体+モノ”の幅であるため,身体幅に基づく相対値の知覚は キャリブレーションされなければならない。しかしこうした場 面でもそのキャリブレーションは歩行中に瞬時になされ,隙間 幅が“身体+モノ”の幅の相対値として処理され,最適な肩回 旋行動が実現されている 7)。 本研究室では最近,高齢者を対象とした隙間通過行動の研究 を行い,「身体に関する感覚入力情報が変化しても,環境に即 した最適な歩行パターンを選択できる能力」について検討した (未発表資料)。実験では,狭い隙間を通過する際の接触頻度や 体幹回旋行動について測定した。その結果,認知症の疑いがな く,歩行機能も高い高齢者の場合,環境に即した歩行パターン を適応的に選択できることがわかった。ただし,「隙間を通り 抜ける際に,できるだけ体幹を回旋しない」という空間的な制 約を与えた場合,たとえ歩行機能が正常であっても,接触頻度 が若齢者よりも有意に高くなった。この傾向は特に,歩行機能 が低いほど顕著であった。. 結びに代えて 歩行の制御について知覚・認知的にアプローチすることで, 歩行の障害が「必要な情報の欠如」 ,「情報処理効率の低下」 , または「知覚情報を運動情報に変換する過程のエラー」などの. 文 献 1) 樋口貴広,建内宏重:姿勢と歩行─協調からひも解く.三輪書店, 東京,2015. 2) Higuchi T, Yoshida H: Gaze behavior during adaptive locomotion. In: Stewart LC (ed): Eye movement ̶ developmental perspectives, dysfunctions and disorders in humans. Nova Science, New York, 2013, pp. 111‒127. 3) 吉田啓晃,中山恭秀,他:脳卒中片麻痺患者の足元を遮蔽した場 合の歩行能力変化─歩行中の視覚−運動制御に関する研究.臨床 理学療法研究.2011; 28: 51‒55. 4) Yamada M, Higuchi T, et al.: Multitarget stepping program in combination with a standardized multicomponent exercise program can prevent falls in community-dwelling older adults ̶ A randomized, controlled trial. J Am Geriatr Soc. 2011; 61: 1669‒ 1675. 5) Yamada M, Higuchi T, et al.: Maladaptive turning and gaze behavior induces impaired stepping on multiple footfall targets during gait in older individuals who are at high risk of falling. Arch Gerontol Geriatr. 2011; 54: e102‒e108. 6) Warren WHJ, Whang S: Visual guidance of walking through apertures: body-scaled information for affordances. J Exp Psychol Hum Percept Perform. 1987; 13: 371‒383. 7) Higuchi T, Cinelli ME, et al.: Locomotion through apertures when wider space for locomotion is necessary: adaptation to artificially altered bodily states. Exp Brain Res. 2006; 175: 50‒59..
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