巻 頭 言
論文投稿のすすめ
An encouragement of submission
米 澤 かおり(Kaori YONEZAWA)
* (日本助産学会誌編集委員) 日本助産学会誌の読者の多くは,何らかの形で「研 究」を行ったことがあるのではないかと思います。そ もそも,私たちは,何故研究を行うのでしょうか。本 誌の読者の多くは,助産学が対象とする女性や新生 児,家族へのより良いケアを目指し,対象者を理解 し,助産ケアの根拠を見出し,方法を開発・評価し, より良いケアを記述していくことを目的としていると 思います。助産学の研究を行う際には「よくこう言わ れるけど,本当だろうか」「こうした方が良いと思う けど,果たしてそうだろうか」「お母さんに聞かれた ことに,答えるための根拠がない」「お母さんたちは どんなことに困っているのだろうか」「もっと母子の ためになるケアがあるのではないだろうか」このよう な臨床疑問を解決するために研究を行っていることが 多いと思います。研究を行う過程で,自分の思うよう な研究ができないことも,もちろん多々あります。そ れでも,研究を通じて,自分の疑問への,一定の解を 得ることができるでしょう(もちろん十分な答えでは ないことも多くあります)。それで,自分自身は,あ る程度納得することができるかもしれません。しか し,自分が納得すれば,それでよいのでしょうか。 研究を行う過程では,対象者の方に何らかの負担を お願いし,多くの場合は助成金などの費用を費やし, また研究者自身の多くの時間を費やして研究を行いま す。助産学の研究の多くは「ヒトを対象とした研究」 となります。自分の研究が,社会にどう貢献するのか を考えていくことが,科学者としての基本的責任とな ります。このように考えると,自分の行った研究で得 た知見は,自分だけのものではありません。多くの人 に知ってもらえるように論文を投稿することが重要で す。是非,皆様の研究の知見を発表する場として,助 産学学会誌をご活用いただければと思います。 そうはいっても,論文を投稿しても,投稿すぐに書 式不備を理由とした差し戻しや,多くの査読コメント に圧倒されて論文掲載を諦めたくなる時はきっとある でしょう。まずは,投稿規程をよく読み,チェックリ ストをよく確認して,書式不備を理由とした差し戻し を防ぐこと,また可能な限り周りの人に読んでも らって,投稿前にいろいろな人の意見を聞いてみるこ とをおすすめします。査読者はより良い論文になるよ うなアドバイスをくれているのだ,という気持ちで向 き合うことも大切でしょう。それでも,諦めたく なった時には,研究にご協力くださった対象者の方の 顔を思い浮かべ,とにかく研究をさせていただいた恩 を社会に返すのだという気持ちで一歩一歩進んでいく ことが重要になると思います。 ここから,日本助産学会誌の特徴についてみていき たいと思います。日本助産学会は「助産学に関する知 識・技術の学術的研究」の発表を通して「母親と乳幼 児その家族,さらに女性のライフサイクル各期におけ る健康レベルで受けるケアの水準を向上」させること を活動目的にあげています。そのため,助産学会の学 会誌である本誌には,広く助産学に関する論文が掲載 されることが期待されていると言えます。では,実際 にはどのような研究が掲載されているのでしょうか。 過去 10 年間,25 巻から 34 巻までの 19 冊 176 編を対象 2020年12月26日公開 *東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護科学専攻 母性看護学・助産学分野(Department of Midwifery and Women's Health,Division of Health Sciences & Nursing, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo)
日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 34, No. 2, 131-132, 2020 https:// doi.org /10.3418/ jjam.foreword-34-2
に,掲載された論文を,主に対象者で分類しました。 (著者の独断で分類したことをご容赦ください。図) 全体の3分の 2の論文は,妊娠期・分娩期・産褥期 (授乳支援を含む)・乳幼児の育児期といった周産期 の女性,つまり「母親」を対象とした論文です。(妊娠 期・分娩期・授乳支援を含む産褥期・育児期の各時期 でほぼ同じ割合の論文数があります。)助産師の活躍 の場が,周産期に大きいことを考えると納得のいく結 果かと思います。また,助産師自身や助産師教育に関 する研究も15%ほどあり,これも助産学を担う本誌の 特徴と言えるでしょう。一方で,実は周産期の女性に 関するケアだけではなく,新生児・乳児と周産期の男 性を含めた家族へ,また「女性のライフサイクル各 期」への支援・研究を行っている方も多くいらっしゃ るかと思います。是非,広く助産学に関連する分野の 論文を投稿していただくことを,お待ちしています。 図 132 日本助産学会誌 34巻2号(2020)