【論 文
1
日本 建築 学 会構造系 論 文 報 告 集 第 453 号・
1993 年11月Journal of Struct
.
Constr.
Engng,
AIJ,
No.
453,
Nov.
,
1993地
震
エネ
ル
ギ
ー
入
力
の
時 刻歴
特性
に
関
す
る
基 礎 的 考 察
TIME
HISTORY
OF
EARTH
Ω
UAKE
ENERGY
INPUT
AND
ITS
INTERPRETATION
翠
川
三郎
*,
作
川
孝
一
**Saburoh
MII
)ORIKAWA
andKoichi
SAKUGAWA
Time
histories
of earthquake energy input a【ediscussed
based
on16
strong−
motion recordsdur−
ing the lg87
Chiba−ken−
toho−
oki earthquake,
The
resuitsindicate
that l)the energyinput
per l second shows its maximum 三n the main portion of ground mo 巨on whichis
found
jttst
after thefirst
Swave
arrival withduration
of approximately 20 seconds.
2)the energy iriput is also accumu・
lated
befole
the main p6rtionfor
the short−
period motiQn and after the main portionfor
thelong.
period motion
,
and 3)theS
coda waves contribute to the energy input accumulated after ヒhe
main portion,
KeyworTts :ground motion
,
energ ンinPttt,
timehistory
,
S
cocla :vawe,
伽 1987Chiba・
ken一
励 【トoki ear−
thquake 地 震 勤,
エ ネルギー
入力,
時 刻 歴, S コー
ダ波 , 1987 年千 葉県束方沖地 震1
.
は じめに 地 震 動が構 造 物に与える破 壊 力を 評価す る た め に,
多 くの地 震 動 強さの尺度が提案さ れ て き た。耐 震 規 定では,
1
応 答ス ペ ク トル によ り地 震 動の強さ が設 定さ れる場 合が 多い。
近 年アイソ レー
ター
系の免震構造物に対してはエ ネル ギー
スペ ク トルで地 震 動の強さ を評価し,
そ の応 答 を予 測 し よ う とする考え方が あ る1)。
これ は,
こ の スペ ク トルが構 造 物の 固 有 周 期に支配 され,
それ以外の構 造 特性には.
ほ と ん ど依 存せず,
耐 震 設 計に適し た荷 重 表現 と な る と考え られ る た めであ る2) 。 このエ ネルギー
スペ ク トル は,
地 震 動に より 1 質点系 に投入さ れ る単 位 質 量 当りの地 震エ ネル ギー
入 力E
(T
) の 2倍の平 方 根により定 義さ れ る2!。
E
(T
)は以 下の式 で示すよ うに地 動 加 速 度 シ と1質 点 系の相 対 応 答 速 度 £ の積の累 積 値か ら求まる2 )。
E(T>イ
毎 姻 か・
……・
・
一 ……一 ・
・
…・・
(・) こ こで,
T は 1質 点 系の固有周期,td
は記 録 時 間であ る。 この式か ら,
E (T)の大き さ は地 震 動の記録長 に依 存し,
十分な記 録 長を持つ 地 震 記 録でない と地 震エ ネル ギー
入 力を 正 確 に 評価で き ないおそれの ある こ とが推 測され る。
一
方,
構造物の最大応 答が 生 ずる時 刻は一
般に地 震 動 の終 了時で は ない こと か ら,
全 体の地震エ ネルギー
入力 で最 大 応 答を予 測 する の は間 接 的な方 法で あ り,
最 大 応 答が 発生する時刻付近で の瞬 間 的なエ ネル ギー
入力 増 分 で地 震 動の強さ を 評 価 し よ う と す る考え方も あ る% し か し, どの時 刻の範 囲でこ の瞬間エ ネルギー
を定義すべ きであ るか にっ い て は検 討の余 地が残さ れ ている。
こ れら地 震エ ネル ギー
入力に関連 し た問題を検 討する に は,
まず,
地 震エ ネルギー
入 力が累 積さ れて い く時 刻 歴 特 性を明ら かにす る必 要が あ ろ う。 地震エ ネルギー
入 力の時 刻 歴 特 性に つ いての検 討 例は少ない。
高橋,
秋山S) は 1985 年メキ シコ地 震の 3地 点の記 録の解析か ら記 録.
のある30秒 間 以 内に地 震エ ネル ギー
入 力の ほとんどが 投 入され るとし.
て い る。
しか し,
用い た記 録の数 が 限ら れ て お り, こ れ らの記 録は必 ずしもP波 初 動か ら振 幅が 十 分に小さ く な るまでの地 震 動のすべ ての部 分 を含ん で い る とは限らな い。
本 研 究で は,
P波 初 動か ら振 幅 が 小 さく な る ま で の十 分な記 録 長を持つ 記 録 を用い て, 地震 エ ネル ギー
入 力の時 刻 歴 特 性につ い て基 礎 的な検 討 を行 い,
そ の解 釈 を試み た。
・
Assoc
,
Prof.
,
Depし,
of Built Environment,
Interdisciptinary GraduateSchool of Science and Eng
.
,
Tokyo Instiitute of Technology.
,
Dr
.
Eng.
Graduate
Stude
皿t,
Dept.
of Bui且t Envlronihent,
InterdlsciplinaryGraduate School ef Science and Eng
.
,
Tokyo Institute of Technology馬
* 東 京工業 大 学.
総 理工社 会 開 発工学 専 攻 助 教授・
博 士 (工 学 ) * * 東 京工業 大 学総 理工社 会 開 発工学 専 攻 大学 院生一
57
一
2.
用い た強 震記録一
般に,
強震計は振 幅が あ る レベ ル になっ て か ら作動 す る た め, 従 来の アナロ グ式 強 震 計で は P波 初 動が欠け て しま う。
また,
地 震 動の尾 部は振 幅が比 較 的 小さい た め分 解 能が高い装 置でないと 正確な情 報が得られな い。
そ こ で,
遅 延 装 置を有す る高 分 解 能の最 新の デ ジ タル式 強 震 計でない と完全 な記録 は得ら れず,P
波初動か ら振 幅 が 十 分に小 さ く な る まで の十 分 な 記 録 長 を 持つ 強 震 記 録は以 前に は ほと ん ど得られ てい なか っ た。 1987年 千 葉 県 東 方 沖 地 震 (M=6.7
)で は,
地 震観測 が比 較 的 密な首 都 圏 周 辺で発生 し た こと か ら,
ア ナログ 式 強 震 計の みな らデ ジ タル式 強 震 計に よっ ても多数の記 録 が 得ら れた4 )。
これらの内,P
波初動よ り得ら れ てい て十 分と考えられる記 録 長を持つ 記録 が16
地 点で得 ら れており,
本 研 究で はこれ ら16
記録 を解析に用い た。
これ ら の記 録の記録長は226− 400
秒で,
300 秒 前 後の もの が 大 部 分で ある。
弾塑 性 系の地 震エ ネルギー
入力は減衰 定 数10% 程 度 の 1質 点 弾 性 系の地 震エ ネルギー
入力で代表さ れ るこ と2}か ら,
上述の 16記 録の 水平 2方 向 成 分に よ る減 衰 定 数 10%の 1質 点 弾 性 系のエ ネルギー
入力E (T) を周 期0.
1秒から 3秒まで の 51周 期に対 して計 算 し た,
本研 究で は,
以 下,
記録の全 継続時間に対し て 得ら れ たエ ネルギー
入 力 を 全エ ネル ギーE
(T
),
記 録 開 始か ら あ る時 刻t
までのエ ネルギー
入力を 時刻 tでの累積エネル ギーE
,(T ,
t),
時刻 tか ら その 1秒後 まで の 1秒 間に累 積 す るエ ネルギー
入力 を時 刻t
での瞬 間エ ネルギー
∬(T
,t
) と呼ぶ。 こ の地 震は,
図一
1の四角で示す よ うに,
深さ約25km
に あ る長 さ約20
km ,
幅 約25km
の 断 層 面の 縦ずれ に よる もの で, M=
6.
7の 中 規 模 地 震で あ(
卩
O固
ψ
丶 謹 O)
.
UU く 図一
11987 年 千葉県東 方沖地震の 震 央,
断層 面の位 置およ び 強 震 観 測 点の位 置 る5 }。
用い た記 録が得られた地 点 を図一
1に示す。
震 源 か らの距 離 (断 層 面か らの 最短 距 離 )は 1地 点 を除け ば 50〜
90km に分布す る。
観 測 点の地 盤 種 別は,
1
種 地 盤 が1地 点,
皿種 地 盤が 3地 点で,
残り はn
種地盤 であ る。
記 録の最 大 加 速 度は 20〜
150 cm /s2,
最大速 度は 1〜
ユ5 cm /s に分 布す る。 これ らの 記 録は 地震 計の特 性 補正 を 施さ れ た後にノイズ成分 を除 去す る た めに周期CI
.
1
秒 以 下の成分 と 周 期3
秒 以一
ヒの成分 が除 去され てい る もの で ある%3.
地 震エ ネル ギー
入 力 の 時刻歴一
例と して,
n
種地 盤 上のA
地 点で の加 速 度 時 刻 歴, 速度 時刻歴,
各周期で の累積エ ネル ギー
の時 刻 歴お よび 瞬 間エ ネル ギー
の 時 刻 歴 を 図一
2に示す。
累 積エ ネル ギー
お よ び瞬間エ ネル ギー
は全エ ネルギー
で基 準 化さ れ てい る。
なお,
本 研 究で は,
20秒の時 刻がS
波初 動部 に対 応す る よ う に各 記 録の 時刻 を そ ろ えてあ る。
時刻 歴の 2乗振 幅の 累 積 が その全パ ワー
の 5%に達 してか ら95
% に達す る ま での時 間 を 継 続 時 間∈1とす る と,
図一
2の矢 印の範 囲で示 す よ うに,
こ の記 録の継 続 】00o一
!00100(
り円
U丶
=
UV●
昌凵
,
0一
1005055口
0一
5D尸
コ
O 10 0 評 O 臣
団
国 O 凵 N コ 薹閣
O = 口.
2 0 ← 呂凵
;凵
儖
O鴇
一
囗.
O到
〔e〕 加 速 度 時刻 歴 ]OM 6e Com 3 【b} 速 度 時 刻 歴 Co叩・
3 {c[累蹟エネ ル ギー
の 時 刻歴 T 0 20 40 BO 90 100 麕20 140 160 190 TIMECS} 〔d[瞬 間工 ネ ル ギー
の時 刧 歴 図一
2 A地 点での地 震 動の時 刻 歴一
58
一
.
oa.
5005 01
0 > σ 匡 国 Z 国 ロ ロ
う q 』 軌 」 ≦
.
O ト、
ロ ロセ
う 既 」 軌 〉 σ 匡 川 2 山 00
5
00 囗 −
囗
01 0 山 を 」 ⊃ Σ ⊃ OQ く 丁
;
0.1S
・
.
・
覧゜
触゜
T冨
0.
2S
●
日
日
6
、
T=
0.
5S
T・
t.
Qs
r
1.
囗 o.
s0001o.
50001 口.
5 ロ ロ ロ ー 口.
50 囗 01 丁;
0.
1S 囗 T・Ol2S T=
0.
5S
唱
o
日
弯日
T=
1.
OS ・
q囘
u日
囲o 龕 o
.
0D.
5O口
01o.
5DOO ー o.
5 早:目 o.
50001T=0.1s
囗
T=0.
2S
丁30.
5S
T=
1.
Oso
¶ 日
鼬T;2.
OS
o.
50001 o.
5・
卩
日
晶 T=
2.
OS
囗
♂ P 恥、
細 口 0ロ
U1
.
ロ
SO3言
T00
5 0 − 0日
o.
5T=
3.
Os 0.
5o.
0 0 ±9 20 コ0 ◎0 50 80 7囗 eo gO teollel201eod 昏OtsOt6a DISTAHCE (【H >0 501L IUPE 1 ロ $OIし τ「PE 2
司
SOIL IYPE 3〔b} 時 刻50秒 〔S波 初 動 時 よ り3e秒 後 )
巳
0
.
Oa しe zo ユロ 弓0 50 60 ?a ea se lao」しalzqLloL 喝Ol501 巳o DI5τAHCE 〔【Hj
o $OIL τTPE t O SO「L T「PE 2
燭
SO[L 下Y尸E 3〔a〕 時刻20秒 〔S波 初動 時 )
o
.
oO IO 20 30 ら0 5a 60 7 口 eo gD IOOItO12e
:
301冊;50160 DISτA障CE 【【図,0 selLT マPE l ロ 50[しITPE
2
囘
50「LTTFE
3
(c} 時刻80秒 {S波 初 動 時 よ り60秒 後} 図
一
3 16地 点で の地 震z ネルギー
入 力の累 積の過 程 時 間は加 速 度 時 刻 歴を用いた場合に は約30
秒と なるが,
速度
時 亥1」歴の場 合に は約130秒 と なる。
この こ と は,
加 速 度 振 幅を支 配す る短周期 成分に比べ て速 度 振 幅を支配 す る比較 的長周期の成分の継 続 時 間は かなり長く,
周 期 に よっ て地 震動の継 続 時間は大き く変 化するこ と を示 唆 して い る。
累 積エネル ギー
の時 刻 歴につ いて は,
周期0.
1秒では,
S波 初動以前のP
波 部分で既に全エ ネルギー
の約30 % が累 積している。
周期が長く な る につ れ て,
S波 初 動 以 前でのエ ネルギ;の 累 積は小さ くなる。
また,
周 期 が 長 く な るにつ れ て,S
波 初 動 以 後のエ ネルギー
の累 積は緩 慢と な る。
瞬 間エネル ギー
につ い て は, その最 大となる時 刻はS
波初動から約 ユ0
秒 間の 限られ た時 間 帯に発 生し,
瞬 間 エ ネル ギー
の最 大 値は全工 ネルギー
の 0.
1〜
O.
2の値を 示す。
それ以 後で の瞬 間エネル ギー
は比 較 的 小さいが,
長 周 期で は時 間が か な り経過 し て も瞬 閻エ ネル ギー
の値 は十 分に は小さ く なっ ていない。
この よ う な傾向は, 他の記 録につ い て も同 様に認め ら れ る。
図一
3は,
16記 録に対し て,
各 周 期の累 積エ ネル ギー
が 各 時 刻で全エ ネルギー
の何%にま で 達 し てい る か を 示した もの であ る。
図で は 全エ ネル ギー
に対す る割 合 と震 源か らの距 離の関 係を 地 盤種別ご とに記号を変え て 示し てあ る。S
波初 動時に は 周期O.1
秒で全エ ネルギー
の 10−
25 %が累 積して いる が,
周期0.5
秒 以 上で は無 視で き る。
S
波 初 動か ら30
秒 後で,
周 期0.
5
秒以 下で は全エ ネル ギー
の 80%以.
上 が累積し てい る が,
周期 1 1.
00 5 05 7 5
2 0
0 0 > σ
田
Z 田 」 ≦PF
こ6
匡 田 面畠
を 」 ⊇500
く 0.
口0 0−
ロ 10 10 PERIOD 【s) 図一
4 全エ ネルギー
に対 する累積エ ネル ギー
の平 均 的な 時 間変 化 秒 以上で はま だ十 分に はエ ネル ギー
が 累積して いない。
S
波初 動か ら60秒 後で も 周期2
秒以上ではエ ネル ギー
の累積は十 分で は な い。 エ ネル ギー
の累 積の仕 方 と震 源か らの距 離との間に は 明確な関 係は み ら れ ない。 地 盤 種 別の影 響につ い ては、
1
種 地 盤で長 周 期ではエ ネル ギー
が速く累 積す る傾 向が み ら れる が, そ れ以 外で は 明 瞭 な 違い はみ ら れ ない。
そ こ で,
ユ6記 録につ い て,
全エ ネル ギー
で基 準 化 し た累一
59
一
0
.
3 2 ー ロ ロ 〉 σ 匡 口 Z 山 」 〈 一 bF 丶 〉 σ 匡 田 Z 山 ト Z く ド ω 乙 G.
OtO]
]oo PER印
DD
(s) 図一
5 全エ ネルギー
に対す る最 大 瞬 間エネルギー
の平 均値と標 準 偏 差 積エ ネル ギー
の時 刻 歴の平 均値を求め,
そ の平 均 的な特 性を検討 した。 図一
4に各 時刻での 基 準 化し た累 積エ ネ ルギー
と周 期の関 係を示す。 図中の数 字が時 刻を示 し,
20
秒 がS
波 初 動 時に 対 応す る。
周 期 0.
1秒で はS
波初 動 以 前に全エ ネル ギー
の約 20 %が 既に累積され て い る。 全エ ネルギー
の 90%が累 積 する時 間 を読み取ると, 周 期O.
2
秒 以 下で はS
波 初 動か ら約20秒 後で ある の に 対して,
周期 0.
5 秒で約30
秒,
周期 1秒で約 60秒 後,
周期 3 秒で約 130 秒後と, 周期が長 く な る と ともにエ ネ ルギー
が累積す るの に必要な時 間が 長 く な る。 これ ら の ことは,P
波 部 分の欠け た記 録お よび地 震 動の尾 部の欠 け た記録では,
それ ぞれ短周期お よび長周期で地震エ ネ ルギー
入力を過小評 価す る お そ れの あ ること を示 唆して いる。
16記 録に対 して,
瞬 間エ ネルギー
の 最 大 値を全エ ネ ルギー
で基準化 し た もの の平均 値と標 準偏差を図一5
に 示す。
瞬 間エ ネル ギー
は平 均 的に は全エ ネル ギー
の 10〜
15%の 値 を示 し,
周 期 0.
5秒 以 上で は周 期と と もに や や減 少 する傾 向が み ら れ る。 瞬 間エ ネルギー
の最 大 値 が み ら れ る時 刻を 図一6
に示す。
最大値が み ら れ る時 刻 はS
波 初 動から10秒 以 内に集 中す る傾 向がみ ら れ,
周 期 1秒 以 下で はS
波 初 動か ら20秒 以 内で最 大 値が発 生 し てい る。
周 期1
秒 以上で は,
か な り遅れて最 大 値が発 生す る場 合も あ る が,
そ の割合は小さい。
4.
考 察 エ ネルギー
入力スペ ク トル は平 滑 化さ れ たフー
リエ 加 速度ス ペ ク トル と等 価である こと が知られ て いる7 }。
こ の ことは (1)式に示 すように地 震エ ネル ギー
入力 が 地一
・
一
・
60
−・
一
90。
0匝
嵳
日D’
° 70.
0 60.
0 50.
口 40.
口 30.
口 20.
010i
loe PERK)
D
(s》 図一6
最 大 瞬 間エ ネルギー
の発 生 時 刻 づ Tinle tstp
tc 図一
7 地 震 動の包 絡 線の模 式 図 動 加 速度と その フ ィ ル ター
波の 1種で ある相 対 応 答 速 度 の積の積 分に よ り求 まり, その フー
リエ 積 分との類 似 性 か らも類 推で きる。そこ で,
あ る周 期で の瞬 間エ ネルギー
はその周 期 成 分の フ ィ ル ター
波 形の 2 乗振 幅に,
累積エ ネル ギー
はその累 積 値に,
それぞれ相 当す るもの と考え,
以 下の考 察 を進め る。 地 震 動の継 続 時 間は,
震 源で の断 層 運 動の 継 続 時 間ts
, 震源か ら観 測 点にやっ て く る最 も速い地 震 波 と 最 も 遅い地 震 波の到 達 時 刻の時 間 差に よる継 続 時 間tp,
お よび媒 体の不 均一
な構 造によっ て生 ずる散 乱 波の継 続 時 間t
,の和で近 似でき る G ] 。 これ ら3つ の継 続 時 間と関 連 して地 震 動の 包絡 波形 は 図一7
の よ うに模 式 化でき る。
tsと らに対 応する部 分が主 要 動 部 分に,
t,
に対 応する 部 分が地 震 動の尾 部すな わ ちS コー
ダ波 部 分に対 応す る。S
コー
ダ波と は,
震 源か ら発 生し たS
波が地 球 内 部 の不均一
な構造に よっ て散乱さ れ て 発生す るもの と考え ら れて い るB〕。
t.
g は断 層長 さL と破 壊 伝播 速 度 V,に より以下の式 で近似で き る。
ts
;L
/V
π・
・
・
・
・
・
・
…
噛
曁
・
・
一・
・
・
・
・
・
…
tt・
・
tS・
…
tt・
…
.
・
・
(2)L
(km
)と地 震規模M
に は以下の平均 的な関 係が ある9]。
109L =0.
5
M − 1.
88・
・
・
・
・
・
…
9・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
.
・
・
(3
)Vn
は 地震に よ ら ず お お む ね一・
定で,3km
/s前後の 値をと る
。
結 局,ts
(秒)IS
M
をパ ラメー
タ と し た以 下の 式 で概 算で き る。
109ts
=0,
5
M − 2.
36・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
《4 )tp
は最も速い地震 波お よび 最も遅い地震波の伝 搬 速 度Vmex
お よびVmi.
と震 源 距 離X
か ら以 下の 式で示さ れ る6}。
t
ρ=
(ユ/Vmin− 1
/レ x)X …
マ
’
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
(5
) 浅い地 震に対す る比較的 近 距離での観測 点の場 合には,
Vm。
x の値と して は地 殻 下 部 でのS
波 速 度 3.
8km
/sが 対 応す る で あ ろ う。Vmi
. の値と して は,S
波 速 度3km
/s 程 度の地 殻の最 上 層で反 射 屈 折 を 繰り返す波 を考え る と,
2.
5km /s程 度の値が想 定で き る10〕。
結局,
(5
)式 よ り,t
ρ(秒 〉は以 下の よ うに距St
X
(km )か ら換 算で き る。 tρ=
(1/2.
5−
1/3.
8)X=
O.
14丿r・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
《6) この式の係 数は加 速 度 強 震 記 録の統 計 解析か ら得 られた 結果 と も ほ ぼ一
致す る6〕。
t,
につ いて は,
地 震 動の終 了 を どの振 幅 レ ベ ル で定 義する か に依 存する ため, 簡単な関係式を与え ること は 困 難で あるが,S
コー
ダ波 部 分での振 幅の減衰の 仕方は 1次 散 乱 理 論か ら簡 単な式が導ける。
発 震 時か ら経過時 間te
で の 周 期T秒のS
コー
ダ 波のエ ネルギー
密度Ec
(T
,te
)は, 不 均一
な構 造での地 震 波の1
次散 乱の み を 考え ると, 以 下の式で表 現でき る 山。
Ec(T, te}=
Wo(T)Ci
(τ)exp (−
2πte
/QcT
)t; z・
・
・
・
…
一鹽
『
『
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
−7r・
7・
…
(7
) こ こ で,
既(T
)は震 源ス ペ ク トル,
C。(T)は散 乱の 強 さ を 表 す 量 であ る。
Qc
は 粘 性 減衰を表す量で あ り, 多くの場合S
波の粘性減衰量Qs
と同一
視さ れて い るs }。
解 析に用い られ た記 録は,M =6.
7
で,
ほ と ん ど がX
=
50−
90km である の で,
(4)式にM
≡ 6.
7を,
(6) 式に X=
70km を代入す る と,
t。
お よ び t,は共に約 10 秒と な り,
両 者 を 合わ せ た主 要 動 部 分の継 続 時 間は約 20秒とな る。
瞬 間エ ネルギー
が最 大とな る時 刻は, ほ とん どの場 合, こ の主 要 動 部 分に対 応し てい る。
エ ネル ギー
の累 積は,
短 周 期で は こ の主 要 動 部 分で か な りの割 合が累 積され て い るが,
周 期が長く な るにつ れて,
そ れ 以 降の S コー
ダ波 部 分で の寄 与が大き く な り, 周期 1 秒 以 上で はS コー
ダ波 部 分の寄 与は全エ ネルギー
の約半分 を占め て い る ことに な る。 地 震 波のエ ネルギー
が その振幅の 2乗に比例するとす れば, 前 述のE
、(T
,te
)は瞬間エ ネル ギー
の 時 刻歴 に 対 応 する。
(7)式に よれ ばEc
(熟 te)は発 震 時か らの 経 過 時 間と ともに減 衰す る の で,
発 震 時が 0 となる よ う に地 震 記 録の 時 刻を合わ せ 直して,
16記 録の瞬 間エ ネ ルギー
の時刻歴 の相 乗平 均を計算し,
瞬 間エ ネルギー
の つ 減衰の仕方を検討した。 図一
8 に結果を示す。
16記 録の ほ と ん ど は発 震 時か ら25
秒 前 後でS
波 初 動が到 着 して ユ ヒ ヨな 旧
一
10、
10一
田一
旧 > q 匡 山 Z 凵 」 《 ド ◎ ト、
〉 σ堕
山 ト 7 莚 』°
の 7冨
]oi
1『 loi 1a4 10 【O LAPSE TIME (s) 図一
8 発震 時か ら の 経 過 時 刻 と瞬間エ ネルギー
の平均 的な関 係 お り, これ に前述の tsと tpの値を 足 す と発 震 時か ら約 50秒 以 降がS
コー
ダ波 部 分 と考え られ る。
S
コー
ダ波 部 分 以 前では,
瞬 間エ ネルギー
の時 刻 歴の 形 状は周 期が短くな る につ れて鋭さ を やや増すよ うに も みえ る が,
周 期に よ らず比較 的 類 似の 形 状を示して い る。 し か し,S
コー
ダ波 部分 で は 周期に よっ て瞬間エ ネル ギー
の減衰の 度 合い が 大 き く異なっ て い る。 瞬 問エ ネル ギー
は,
周 期 O.
ユーO.2
秒で は t;T に,
周 期O.
5秒で は t;s’
s に,
周 期1秒では ‘;4’
5 に,
周 期2
秒で は t;3 に,
周 期 3秒で は 診;2’
S にお お む ね比 例し て減 衰し て い る。
この こ と は,S
コー
ダ波 部 分での 振 幅の 減 衰の度 合い の 周 期に よ る 違いが累 積エ ネルギー
の時 刻歴特性に周 期 依 存 性 を 与えて い ること を示 して い る。
な お,
震 源 距 離 が lookm
程 度 以 内で の微 小 地 震のS
コー
ダ波の観 測結 果121は,
周 期 1秒 以 下で 2乗 振 幅が t;5〜
.
tE4で減 衰す る こ とを示 し て お り,
今 回の結 果とほ ぼ一
致す る。
(7
.
〉式の経 過時間te
に関する項に着 目し,
両 辺の対 数をと る と, (7 )式は以 下の よ うにな る。10g
Ec
(T,
te)=−
2109 te− 2.
7/QcTte
十C
………・
…・
・
…
(8
) こ こで,C
は地 震 規 模 や 媒 体で の散 乱の度合い に よ る一
61
一
ゴ ーo
一
詔
−o.
直 〉墮
田 」 < ヒ 9 ト、
> 0些
四 ト Z話
1° 、。lrf Z LAPSE TMAE〔s〕 図
一
9 】968年の八戸 港 湾の記録の 発 震 時か ら の経 過 時 刻と瞬 間エ ネルギー
の関 係 定 数で あ る。 地殻のQs
値に は不 明の部 分も あ る が, 佐 藤に よ る 理論 的な値8}は,
周 期 0.
2秒 で約 400, 周 期 0.
5秒で 約200, 周期 1秒で 約 150,
周 期 3秒で約200 と周 波 数 依 存 性 を示 し, こ れ は観 測 記 録か ら得られ た値 ともよ く対 応し て い る。 これ を (8)式に代入 して,
t。 が 50−
70 秒で の E。(T,
t。)の見か けの減衰を求め る と,
周 期0.
2秒で 置;6’
5 に,
周 期0.
5秒で 診;‘ に,
周 期 1秒 で t;‘に,
周 期 3秒で t;”.
5 に お お む ね比 例して減 衰 す る ことに な り,
図一
8に示し た観 測 結 果とよ く一
致す る。 こ こ で用いた記 録に み ら れるS
コー
ダ波 部 分で の瞬 間 エ ネルギー
の減 衰の度 合い は,
理 論 的にも裏 付 け られ,
他の観 測 結 果とも整 合する ことか ら,一
般 性を有する結 果と考えられる。 そこ で,
この結 果を利 用し て,
限られ た記 録長 を持つ 記録の記 録 終了後の欠 落 部分のエ ネル ギー
を 推 測 して み る。
1968年 十 勝 沖 地 震 (M =
7.
9)の 八 戸 港 湾で の記 録1呂1 を例にとっ て,
そ の手 順を以 下に示 す。 この記録の絶対 時刻が不 明の た め,
こ の記録の主要動 部 分の始 ま りの時 刻 が 長 宗14 切 顕著な位 相の時刻に対 応 す る もの と し て, 記録 開始 時の絶対時 刻 を決め た。
こ の 顕 著な位 相 を 生じ た震 源は 八戸の 約70
km
東で生 じ,
その後断 層の破壊 は北 北西方 向に約 30秒間伝 播しkls
)。
この震 源の発 震 時か らの経 過時間とこ の記 録の卓越 周期 で あ る周期2.
6
秒で の瞬間エ ネル ギー
の 関 係を求め る と,
図一
9の よ うにな る。
この記録の主要動部は発震時 か ら約 20 秒 後に始まる14)。
こ の 記 録の tsお よ び tρは それ ぞれ約 30秒およ び 10〜
20秒と考え られ る の で,
発 震 時か ら約70秒 以 降がS コー
ダ波の部 分と考え られる。 前 述の結 果 か ら対 数 軸 上での 減 衰の傾 き を一
2.
5と 固定 し,S
コー
ダ波部分で の瞬間エ ネル ギー1
(T
,te
)の減 衰 曲 線 を 求めると,
以 下の式が得られ る。 lo9[1(T,te
)/E
(T)]=
2.
18−
2.
510g te・
・
・
…
(9} こ の瞬 間エ ネルギー
の減 衰の仕 方が地 震 動の終 了 時ま で同 様に継 続すると仮 定 すれ ば,
∬(T,
t。)を記 録 終 了 時か ら。。まで の時 刻の積 分する ことに より,
図一
9の網 目部 分に対 応す る記 録 終 了 後の欠 落 部 分のエ ネルギー
一
62
一
AE
(T
)が推 定で きる。 こ の場 合に はAE
(T
)はE
(T
) の約 8%と求まる。
他の周期につ いて も △E
(1’
)は同 程 度な い し それ 以 下で,
こ の記 録の場 合に は記 録 終了後 の欠 落 部 分の寄 与は小さい も のと推 定さ れ る。
前述の よ うに,
瞬間エ ネル ギー
が比 較 的 小さい地 震 動 の尾部の 欠 落 が 構 造 物の最大応 答の評 価の面か ら大き な 問 題に な る場合は少ないか も しれ ない。
しか し,
主 要 動 部 分の一
部が欠けてい る記 録が用い られ る可 能 性も あ る の で,
(4)およ び (6)式か ら主 要 動 部の継続時 間 を 概 算し, 記 録 長が こ れと同 程 度ない し短い場 合には, 上 述の よ うな手 順で AE (T) を 評 価 し,
用い た記 録に よ り全 体の地震エネル ギー
入 力 が 十分に評 価さ れて い る か どう か確 認し て お くこと も意 義のあ るこ と と考え ら れ る。 また,
本 研 究で は取り扱っ て いないが,
震 源が非 常に 浅く,
観 測点が厚い堆 積 地 盤 上にあれ ば,S
コー
ダ波に 加え て表面 波成分の寄 与も無 視で き な く なるもの と考え られ る の で,
AE (T)の推 定に は表 面 波 成 分の振 幅の 評 価 も別 途 必 要と な ろう。
5.
結 論 1987年 千 葉 県 東 方 沖 地 震の 際に得 られ たP波 初 動か ら地 震 勤の尾 部まで の十 分な記 録 長 を 持っ た 16の強震 記録 を用いて, 地 震 動の水 平 動 成 分の地 震エ ネルギー
入 力の時 刻 歴の特 性を検 討し,
以 下の結 論 を得た。
1) 地 震エ ネルギー
入力の時 刻 歴の特 性は周 期に よっ て 大き く異な る。 周 期0.
2秒 以 下ではS
波 初 動 以 前の P波 部分で の寄与が,
周期1秒以上では主 要動 以降のS
コー
ダ波 部分で の寄 与が無 視で きな い。
2) 1秒 間 当り の地 震エ ネル ギー
入力である瞬間エ ネル ギー
が最 大と な る時 刻は ほ と ん どの場 合 主 要 動 部 分に限 ら れ,
そ の最 大 値は平 均 的に は総エ ネル ギー
入 力の 10−
15 %であ る 。 3) 長 周 期でS
コー
ダ波 部 分で の地 震エ ネル ギー
人 力が 比 較 的 大き くな る の はS
コー
ダ波 部 分の振 幅の減 衰の度 合いが長 周 期で小さ い た め である。 こ の ことは, 伝 播経 路で の地 震 波の簡 単な散 乱 理 論により物 理 的に説 明で き る。
謝 辞 本 研 究で用いた強 震 記 録は,
鹿 島建設,
熊 谷 組,
港 湾 技 術研究 所,
竹 中工 務 店,
柬 京 工 業 大 学,
西 松 建設,
フ ジ タ,
防 災科 学 技 術 研 究 所,
三菱 地 所,
早 稲田大学の各 機 関 (五十 音 順 )に より観 測さ れた もの である。 記し て 謝 意を表す る次 第で あ る。 参考 文 献 1> 日本 建 築 学 会:免 震 構 造 設 計 指 針,
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一
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作川孝一・
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最 大 速 度に みられ る 地 盤特性の評価,
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桐野康則:フー
リエ 振 幅スペ ク ト ル の平 滑 化によ る地 震 入 力エ ネルギー
の評 価 日本 建 築 学 会構 造 系 論 文 報 告 集,
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