更新日:2008/05/08 調査部: 坂本茂樹
パプアニューギニア:
PNG LNG プロジェクト(ExxonMobil 主導)が進展
(関係企業 HP、Platts、Gas Matters) 2008 年 3~4 月にかけて ExxonMobil が主導する PNG LNG プロジェクト(液化能力:630 万トン/ 年)に進展があり、同プロジェクトはFEED 移行に向かって前進した。 プロジェクト・メンバーは2008 年 3 月半ばに、上流事業(ガス生産)から中流事業(ガスのパイプライン 輸送、液化)におけるパートナー間の権利・義務を定める共同操業契約(JOA1)に調印した。続いて4 月 中旬、オペレーターのExxonMobilとパプアニューギニア(以下、PNG)政府はそれぞれ、2008 年 1 月 以降両者が協議をしていたLNGプロジェクトの財務条件(fiscal terms)に関してほぼ合意したことを明 らかにした。 コンソーシアムは、5 月にもPNG政府との間でLNG事業に適用するガス契約(Gas Agreement)を締 結し、その後にFEED2作業(基本設計)を実施する予定である。PNG LNGプロジェクト実現に対して、 一歩近づいたことになる。 1. パートナー間JOAの締結- (1) パートナー間 JOA の締結(2008 年 3 月) ExxonMobil をオペレーターとする PNG LNG プロジェクト・パートナーは、2008 年3 月14 日、パー トナー間JOA に調印したことを発表した。パートナーとその権益は、次の通りである: ExxonMobil (オペレーター) 41.6% Oil Search 34.1% Santos 17.7% AGL 3.6% 日本パプアニューギニア石油 1.8% ランドオーナー権益 1.2% 合 計 100%1 Joint Operating Agreement
2 Front End Engineering and Design
ExxonMobil 社は、この JOA 締結によって、次段階への移行(FEED フェーズ)に対する重要な条件 の一つをクリアできたとしている。政府との財務条件(fiscal terms)等が正式に合意された後、PNG 政 府の参加権益が定まるものと見られる(石油ガス上流事業では最大で22.5%だが、本 LNG プロジェクト の適用比率は未詳)。2007 年に設立された国営石油会社(Petromin)が事業参加する可能性が高い。 (2) LNG プロジェクトの財務条件(fiscal terms)に関して PNG 政府とほぼ合意 PNG の Somare 首相と ExxonMobil 社はそれぞれ、2008 年4月 17 日に、LNG プロジェクトの財 務条件(fiscal terms)に関してほぼ合意したことを明らかにした。合意内容は公開されていない。原料
ガス供給の規模、ガス田から液化基地(首都ポートモレスビー近郊のKonebada Petroleum Park)まで
のパイプライン(700km)規模等はまだ交渉中である。これらの項目を含めて、2008 年 5 月には最終合
意できる見通しと言われ、FEED 移行が可能となる。
図1 PNG LNG プロジェクト概念図(ガス田、パイプライン、液化設備)
2. PNG-LNGプロジェクト概要 (1) 事業概要、タイミング
コンソーシアムとPNG 政府との財務条件が正式に合意された後、FEED に移行して正式にマーケテ
ィング活動を開始する。開発作業が順調に進むと仮定して、次の事業スケジュールが考えられる: 2008 年 5~6 月 FEED 移行
2009 年末 最終投資決定(FID、Final Investment Decision)、設備建設開始 2013 年末~2014 年 生産開始 第1 フェーズ(2008~14 年)の投資額として 100~110 億米ドルを見込んでいる。ガス田開発等上流 分野投資が50 億米ドル、液化設備建設が 50~60 億米ドルと想定される。 PNG は日本、韓国など東アジア市場に地理的に近いため、LNG 販売先は東アジア市場が有望視さ れる。またコンソーシアムは米国市場へのLNG 供給も視野に入れている。 (2) 原料ガス供給 PNG- LNG プロジェクトに原料ガスを供給するのは、次の油ガス田群である(図 1 参照)。 ・ 新規開発ガス田: Hides、Angore、Juha(オペレーター:ExxonMobil) ・ 既存油田随伴ガス: Kutubu、Agogo、Gobe、Moran(オペレーター:Oil Search) ガスは、Hides ガス田に建設されるガス処理設備で処理され、ポートモレスビー近郊の液化基地に輸 送される。 (3) LNG 事業採算性 オペレーターのExxonMobil がアジア太平洋地域で手がける主要な LNG 案件は、PNG- LNG と西 豪州Gorgon案件である。PNG- LNGはExxonMobilのオペレーター事業であり、同社はPNG- LNG プロジェクトの優先順位が高いことを繰り返し言及している。 PNG- LNG に原料ガスを供給する油ガス田は PNG 内陸の高地山岳地帯にあるため、開発作業やパ イプライン建設の高コストが懸念された。しかし、次のような要因から、西豪州沖合の新規LNG 案件と比 べて遜色ない事業採算水準を達成できると考えられる。 ・ ガス田開発: Kutubu、Agogo 等既存油田随伴ガスを使用する場合、既存設備を利用可能であっ て、新たな投資を抑えることができる。また掘削費はおしなべて高額とはいえ、豪州沖合深海掘削と - - 3
同程度か、若干下回る水準と見られる。 ・ ガス性状: ガスは適度の液分を含んでいるため、コンデンセート販売の収益を期待できる。また CO2 含有量が低く、良質である。 ・ 事業実施の財務条件(Fiscal Terms): PNG の上流事業財務条件は、周辺の LNG 生産国(東南 アジア、豪州)の中で最も投資家に有利な条件である。LNG 事業の最終的な財務条件は未詳であ るが、上流事業と同様に有位性のある可能性が高い。 3. その他 (1) 今後の PNG LNG プロジェクトの課題・見通し 農業(パーム油、コーヒー)、鉱業(原油、金、銅)以外にめぼしい産業の無い PNG 経済にとって、 PNG LNG プロジェクトの波及効果は大きく、石油ガス輸出額は 4 倍、GDP は 2 倍になると想定されて おり、プロジェクトへの期待は大きい。 PNG は総じて政治的に安定している。しかし、今後、険しい山岳地帯でのガス田開発、ガス・パイプラ イン敷設に加え、ハイランドの各部族との土地使用に関する交渉など、LNG 事業実現までに対処すべ き課題も多い。 (2) Oil Search の中東資産売却
PNG を主要事業地域とする Oil Search は、Kutubu 地域など既存石油生産が減退しており、今後は
全資産価値の中でPNG LNGの占める比率が上昇していく。しかしLNG投資額の負担が大きいため、
同社は経営資源をPNG LNG プロジェクトに集中させるために、中東・北アフリカ資産(イエメン、エジプ
ト、チュニジア等)の処分を決め、2008 年 4 月に実施した。
4. Liquid Niugini Gas(InterOil主導)の事業状況
PNGにおけるもう 1 件のLNG案件Liquid Niugini Gas3は、InterOilがガス田(Elk、Antelope)
評価作業を続けている。LNG事業実施に向けてまだ十分なガス埋蔵量の確認がなされていないた め、評価作業の成果が期待される。InterOil は 2008 年 5 月初旬、評価井Elk-4 掘削で相当量のガ ス、石油が発見されたと発表した。詳細の続報が待たれる。 3 InterOil、Merrill Lynch、スイスPacific LNGが 1/3 ずつを出資するLNG共同事業会社。ポートモレスビ ー近郊に1,000 万トン/年(500 万トン/年*2 トレーン)の液化基地建設を計画中。
西豪州沖合のLNG 案件の進展が思わしくない状況下で、相対的に PNG の新規 LNG 案件への 期待が高まっている。PNG のガス埋蔵量は西豪州の膨大な埋蔵量には遥かに及ばず、地勢の峻厳 な内陸ハイランドの開発作業が難しいなどの難点がある。しかし、PNG 政府が LNG 事業実施を 全面的に支援しており、液化基地サイトは既に定まり、労働者移入に障害はないなどの利点を持つ。 アジア市場のLNG 需給がなお厳しいと見られる 2013~14 年に生産開始を計画している PNG の LNG 案件の行方に期待がかかる。 - - 5