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はじめに 学校は 子どもたちにとって教育 学習の場であり 一日の大半を過ごす生活の場でもあります また 地域住民にとっては生涯学習の場 地域コミュニティの拠点としての役割が期待され 地震等の災害時における応急的な避難場所としての機能も求められています 学校には このように子どもたちや学校に関わる人た

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はじめに 学校は、子どもたちにとって教育・学習の場であり、一日の大半を過ごす生活の場でもあります。 また、地域住民にとっては生涯学習の場、地域コミュニティの拠点としての役割が期待され、地震等の 災害時における応急的な避難場所としての機能も求められています。学校には、このように子どもたちや 学校に関わる人たちにとって、安全で安心な施設環境が確保されている必要があります。 近年、学校や通学路における侵入事件等の発生を背景として、子どもたちの安全確保の一層の徹底が求 められています。文部科学省では、平成14 年から学校安全の充実に総合的に取り組む「子ども安心プロ ジェクト」を推進するための一貫した取組を進めており、不審者侵入時の留意事項をまとめた「学校への 不審者侵入時の危機管理マニュアル(平成14 年 12 月)」をはじめ、学校施設の防犯対策の手引き書とし て「学校施設の防犯対策に関する調査研究報告書(平成 16 年 9 月)」を作成し、平成 18 年度には本研究 所と文部科学省が連携し「学校施設の防犯対策に係る点検・改善マニュアル作成の取組に関する調査研究 報告書(平成18 年 6 月)」を取りまとめ、周知したところです。 多くの学校では来校者に対する入校許可証の導入や不審者侵入時の対応マニュアルが作成されるなど、 必要な防犯対策が取られるようになってきましたが、一方で学校現場においては、施設の状況により、日々 の教育、学習、生活面における課題も多く、限られた人員、財源により、実効性のある防犯対策として不審 者侵入防止や、万が一事件が発生した場合に適確に対応するためには、日々の点検や防犯訓練等に継続的 に取組む工夫が必要です。 このような状況の中、国立教育政策研究所文教施設研究センターでは、学校施設の防犯対策を一層推進 するために、文部科学省と連携して、学校施設の防犯対策に積極的に取り組んでいる学校や地方公共団体 の事例に関する調査研究を実施しました。これは、防犯対策に大切な視点を整理し、各事例がどのような 体制で何を優先して実践しているか、その取組について分かりやすく紹介することをねらいとするもので す。 本報告書では、第1章で防犯対策の現状及び文部科学省のこれまでの取組をまとめ、続く第2章で防犯 対策に必要な項目ごとに対策に積極的に取り組んでいる学校や地方公共団体の事例を紹介し、第3章では 第2章で紹介した事例を中心にその取組の背景や位置づけがわかるように各事例の全体概要について紹 介しています。さらに、第4章ではこれまでの調査研究報告書を踏まえながら、今回収集した事例から読 み取れる、学校施設の防犯対策の点検・改善に係る主なポイントについてまとめました。 本報告書が、今後の学校施設の防犯対策のより一層の推進のために、点検・改善の取組のきっかけとな ることを期待するものです。

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学校施設における防犯対策の点検・改善のために

~学校施設の防犯対策に係る点検・改善マニュアル作成の取組に関する調査研究報告書~ 目 次 はじめに 背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 これまでの取組 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 本報告書の活用法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 取組のきっかけと 検討体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 現状の把握、課題の抽出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 マニュアル、 チェックリストの活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 改善措置の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 点検・改善の周知、見直し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 H大学附属小・中学校(北海道) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 K大学附属学校園(高知県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 私立D中学校(京都府) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 志木市立S小学校(埼玉県)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 足立区立S小学校(東京都)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 草津市教育委員会(滋賀県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 京都市G小学校(京都府) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 大阪市立K小学校(大阪府) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 橋本市立S小学校(和歌山県)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 高知市立A小学校(高知県) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 第2章 点検・改善の進め方と 事例の解説 1 2 3 4 5 第1章 安全・安心な学校づく りをめざして 1 2 3 第3章 取組事例 1 10 2 3 4 5 6 7 8 9

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ハード 面のチェックをきっかけとしたソフト 面の充実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 学校施設の安全マッ プづくりの有効性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 小さな取組の積み重ねと 非常時への備え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 既存の危機管理マニュアルやチェックリ スト の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 防犯訓練のプログラムづくりから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 豊かな教育環境の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 地域ぐるみの防犯対策の充実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 ・研究会裁定文、チェックリ スト等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 ・第3章取組事例等問合せ先一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64

参考資料

第4章 事例から読み取れるポイント 2 1 3 4 6 7 5

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第 1 章 安全 ・安 心 な 学 校 づ く り を め ざ し て

背景

近年、学校に不審者が侵入し、子どもたちや教職員の安全を脅かす事件や、通学路で子どもたちに危 害が加えられる事件が大きな問題となっています。 このような状況を背景として、学校における子どもたちの安全確保のために、来校者の入校管理、防 犯訓練の実施をはじめとする運用面での安全対策の充実や、門扉やインターホン、防犯カメラ等の施設・ 設備を整備するなど、各学校や学校設置者において安全管理の取組が進められています。また、保護者 や地域ボランティアやスクールガードリーダー等の協力により学校内外の巡回・警備等が行われるなど、 地域ぐるみで学校の安全対策に取り組んでいる例も多く見られます。 今後も、学校をはじめ、保護者や地域住民、警察等の関係機関・団体等が連携しつつ、学校における 安全対策を一層推進し、より実効性のある取組を継続的に進めることにより、安全・安心な学校づくり をめざしていく必要があります。 ■学校の安全管理の取組状況に関する調査(文部科学省)(平成 18 年 3 月 31 日現在の実績) (文部科学省 HP:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/01/07011602.htm)

第1章 安全・安心な学校づくりをめざして

1 門や塀で囲まれている場合において、学校の敷地内への不審者の侵入防止のための対応※を行って いる学校の割合 87.1% ※・出入口を限定し、登下校時以外は原則として施錠するなどの門の管理 ・登下校時など門を開けている間の教職員やボランティアの立会いによる子どもの安全の見守り ・インターホン、侵入監視のためのセンサーや防犯カメラの設置など門におけるハード面の対策 ・防犯カメラのモニターを意識的にチェックする体制づくり などについて、学校や地域の状況等を踏まえ必要な対応がなされていること 学校の敷地内での不審者の発見・排除のための対応※を行っている学校の割合 84.5% ※・門(敷地入口)から校舎への入口(受付)までの動線が明確になるよう、案内の看板の門(敷地入口)周辺への設置 ・動線を、職員室等から見通しがよく、また、児童生徒が活動するスペースと峻別した位置に設置する工夫 ・教職員、地域のボランティア、警備員等による敷地内の巡回 などについて、学校や地域の状況等を踏まえ必要な対応がなされていること 校舎内への不審者の侵入防止のための対応※をとっている学校の割合 92.3% ※・来校者の誘導、校舎の必要のない出入口の閉鎖など、原則としてすべての来校者の対応を受付に集中する体制 ・受付で教職員や地域のボランティア等が対応して来校者をチェックしたり来校者にリボンや名札等を着用させる体制 ・来校者と応接できるスペースの整備 ・来校者の動線や屋外運動場を見渡せるなど、職員室等の配置の工夫 などについて、学校や地域の状況等を踏まえ必要な対応がなされていること 地域のボランティアによる学校内外の巡回・警備が行われた学校の割合 63.1% 学校の安全管理に関し学校において取り組むべき事項について、点検を実施した学校の割合 90.8% 防犯のマニュアルを活用している学校※の割合 97.5% ※学校独自の「危機管理マニュアル」を作成している学校のほか、文部科学省や教育委員会が作成したマニュアルを活用し ている学校も含む。

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第 1 章 安全 ・安 心 な 学 校 づ く り を め ざ し て

これまでの取組

1.緊急時の危機管理 文部科学省では、安全で安心できる学校の確立を目指し、平成 14 年から学校安全の充実に総合的 に取り組む「子ども安心プロジェクト」を推進してきています。 平成 14 年には、不審者侵入などの事態が起きた場合の共通的な留意事項をまとめた「学校への不 審者侵入時の危機管理マニュアル」(平成 14 年 12 月)を作成し、周知を図ってきました。現在、 多くの学校において、このマニュアルを参考に不審者侵入時の対応フローや日常の点検用チェック リスト等が作成され、運用されています。 ■学校における不審者への緊急対応例「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル(文部科学省)より」 このほか、学校や通学路で子どもたちを見守る学校安全ボランティア(スクールガード)を養成・研 修したり、防犯の専門家や警察官OBなどを地域学校安全指導員(スクールガード・リーダー)として 委嘱し、各学校の警備のポイントや改善点等を指導したりするなどの取組により、地域ぐるみで登下校 時を含めた学校における子どもの安全を見守る体制が整備されてきています。 ※通学路を含めた学校における子どもの安全確保に関する様々な通知や刊行物等については、 文部科学省HP:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/12/05120900.htmにまとめて 紹介しています。 2.学校施設の防犯対策 文部科学省では、施設面においても、学校施設の防犯対策のための施設整備に要する経費を補助 するとともに、「子ども安心プロジェクト」の一環として、様々な施策を推進しています。 学校施設の防犯対策を進める際の基本的な考え方や、学校設置者が具体的な防犯対策を計画・設 2

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第 1 章 安全 ・安 心 な 学 校 づ く り を め ざ し て 計する際の留意点、推進方策など、学校施設の防犯対策の在り方を総合的に提言した「学校施設の 防犯対策について」(平成 14 年 11 月)を策定するとともに、「学校施設整備指針」を改訂(平成 15 年 8 月、平成 16 年 1 月)し、学校施設の防犯対策に関する規定の充実を図っています。 また、「学校施設整備指針」における防犯対策に関する規定について分かりやすく解説した手引書 として「学校施設の防犯対策に関する調査研究報告書」(平成 16 年 9 月)を作成し、周知を図って います。 この手引書では、学校施設の防犯対策における基本的考え方として、施設の現状について点検・ 評価を行い、必要な予防措置を計画的に講じることの重要性を示すとともに、学校設置者をはじめ とする学校関係者が協力し、必要に応じ保護者、地域の関係機関・団体、建築や防犯に関する専門 家等の協力の下に、これらの対策を実施することが有効であることが指摘されています。 ■全体的な防犯計画概念図「学校施設の防犯対策に関する調査研究報告書(文部科学省)より」 3.学校施設の防犯対策に係る点検・改善マニュアル これまでの調査研究報告書等において、既存学校施設の防犯対策を推進するための点検・改善の 重要性が指摘されており、防犯対策のチェックリストやマニュアル等に基づいた定期的な点検や防 犯訓練等を実施し、改善すべき点は早急に対応するといった、実効性のある検証システムの確立を 求めています。 このため、平成 18 年 6 月に、文部科学省と国立教育政策研究所が連携し、学校施設の防犯対策の 点検・改善を実施する際の視点や手順、留意事項等を紹介した「学校施設の防犯対策に係る点検・ 改善マニュアル作成の取組に関する調査研究報告書」(以下「点検・改善マニュアル」という。)を 取りまとめたところです。 この報告書では、学校施設の防犯対策の点検・改善に取り組む場合の主な項目と手順について提 示しています。(次頁参照)

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第 1 章 安全 ・安 心 な 学 校 づ く り を め ざ し て 学校施設の防犯対策に係る点検・改善のフローチャート

本報告書の活用法

学校施設の防犯対策に関する取組を一層推進するためには、各学校や学校設置者が、これまでの取 組を再点検し、より実効性のある取組を積極的かつ継続的に推進していくことが望まれます。 本報告書は、これまでの調査研究報告書等を踏まえながら、防犯対策の点検・改善に積極的に取り 組んでいる学校や地方公共団体の事例について分かりやすく解説し、紹介するものです。 報告書の構成としては 第1章で、背景やこれまでの取組、 第2章で、防犯対策の点検・改善に積極的に取り組んでいる事例について、前項の点検・改善フ ローチャートを踏まえ、①取組のきっかけと検討体制、②現状の把握、課題の抽出、③マニュア ル、チェックリストの活用、④改善措置の実施、⑤点検・改善の周知、見直しの5つの視点に分 けて紹介し、(下図イメージ参照) 第3章では、第2章で紹介した事例の特徴や地域的な背景などが分 かるように、取組全体の概要について紹介しています。 さらに、第4章ではこれまでの調査研究報告書を踏まえながら、 今回収集した事例から読み取れる、学校施設の防犯対策の点検・ 改善の取組に係る主なポイントについて記載しました。 本報告書は、各学校や学校設置者のこれまでの取組内容に応じて、参考 にしていただけるよう、事例や視点について分かりやすく紹介しています。 学校施設における防犯対策の点検・改善に取り組む際のヒントとして 活用されることを期待しています。 ① 検討体制の設置 教職員等の学校関係者による検討体制(組織) を設置する。 ② 現状の把握、問題点の抽出 既存の学校施設の防犯に関する現状を把握 し、問題点を抽出する。 ③ 点検・改善マニュアルの作成 防犯対策を確実にかつ継続的に実行するため に、点検・改善のためのマニュアル、チェック リストを作成する。 ④ 改善措置の実施 すぐにできる問題点の改善措置、及び改善計 画を策定をする。 ⑤ 点検・改善マニュアルの周知、見直し 防犯対策を着実に実行するために関係者に 周知し、点検や防犯訓練の結果等に応じ、必要 な改善・見直しを行う。 防犯訓練等による 改善・見直し ②現状の把握、問題点の抽出 ・図面等による点検 ・「守り方」の設定 ・問題点の抽出 ①検討体制の設置 ⑤点検・改善マニュアルの 周知、見直し ④改善措置の実施 ③点検・改善マニュアルの作成 ・マニュアル、チェックリストの作成 増築・解体等状況の 変化による再点検 防犯訓練等による 改善・見直し ②現状の把握、問題点の抽出 ・図面等による点検 ・「守り方」の設定 ・問題点の抽出 ①検討体制の設置 ⑤点検・改善マニュアルの 周知、見直し ④改善措置の実施 ③点検・改善マニュアルの作成 ・マニュアル、チェックリストの作成 増築・解体等状況の 変化による再点検 3 ①取組のきっかけと検討体制 ②現状の把握、課題の抽出 ③マニュアル、チェックリストの活用 ④改善措置の実施 ⑤点検改善の周知、見直し ①取組のきっかけと検討体制 ②現状の把握、課題の抽出 ③マニュアル、チェックリストの活用 ④改善措置の実施 ⑤点検改善の周知、見直し ■学校施設点検・改善の5つの視点

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

取組のきっかけと検討体制

複合施設としての改築をきっかけとした

防犯対策の検討

●志木市立S小学校 校舎の改築にあたって、市立図書館及び公民館 と複合化する計画が立てられた。 設計時に大阪教育大学附属池田小学校での事件 が発生し、複合化の方針は堅持しつつ一層の防犯 対策を講じることとなった。 複合施設の特性上、不特定多数の人が利用する 市立図書館と学校の安全を両立するために、敷地 内に地域住民の目を持ち込むことによる安全対策 の工夫をするとともに、防犯カメラの設置等を進 めることとした。 複合施設の効果的な管理運営を行うために、小 学校、市立図書館、公民館の関係者の他に、施設 利用者や地域住民等の代表者による「管理運営委 員会」を設置している。 この委員会は、当初は運営管理の調整が目的で あったが、防犯対策の必要性から内容が拡充され、 地震・火災対策に加え、防犯対策も含めた運用を 担っている。 検討体制に地域住民や施設利用者が参画するこ とで、市民ボランティアの校内巡回や地域との連 携がよりスムーズに行われている。 これからも図書館、公民館利用者と児童との交 流をできるだけ増やし、地域との連携を充実させ ていくこととしている。 ・学校概要(P24)参照

第2章

点検・改善の進め方と事例解説

1 ここでは、学校施設の防犯対策の点検・改善を進める際の参考となるよう、防犯対策に積極的な取組を 行っている学校や学校設置者の事例について、対策に必要な視点ごとに取組内容を紹介します。 ■関係者による検討体制づくり 防犯対策を検討する場合は、教職員、児童生徒、保護者、地域住 民、教育委員会等の学校関係者に加え、建築計画や防犯の専門家等 から広く意見を聴取することはバランスの取れた防犯対策を実施する 上で有効である。 (H18「点検・改善マニュアル」より) ■管理運営委員会のメンバー(抜粋) 学校、公民館の長 小学校校区町内会の代表 子ども会の代表 公民館利用者の会の代表 PTAの代表 ■小学校、市立図書館・公民館の出入り口 ■事例から読み取れるポイント(研究会コメント) 検討体制に多くの関係者が参画することで、避難誘導、侵入者への 対応、警察や関係機関への緊急連絡等に関する体制づくり、施設の点 検・防犯訓練のマニュアル整備等の充実が図れる。 防犯対策の検討体制に、施設利用者、保護者、地域住民が参画す ることにより、日常の気配りや学校内外の巡回等のつながりができること で地域による監視の目を取り入れることが可能となる。 ①取組のきっかけと検討体制 ②現状の把握、課題の抽出 ③マニュアル、チェックリストの活用 ④改善措置の実施 ⑤点検改善の周知、見直し

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

外部の有識者を含めた検討体制

●H大学附属小・中学校 学校侵入事件の発生をきっかけとして平成 13 年度に防犯対策を図ったが、5 年が経過し各地で 新たな事件も発生していることから、現行のマニ ュアルの再点検を行った。 防犯対策に関する点検・改善のため、これまでの 防犯対策に関する提言を参考にしつつ、広く専門 的意見を聴取するために学校関係者に加え、積極 的に外部有識者を検討メンバーに招聘している。 外部メンバーである弁護士、警察、警備会社及 び建築の専門家の多彩なメンバーから、犯罪の現 状や対策のポイントが聞くことができ、短期間に 効果的なマニュアルの点検・改善が図れた。 今回の防犯対策の点検・改善の内容は、今後、 大学の他の附属学校の防犯対策を充実するために、 防犯マニュアル作成の手本とすることとしている。 専門家の指摘は普段の平穏な学校活動をチェッ クする効果があり、今後も継続を念頭としている。 ・学校概要(P15)・類似例(P18)参照

校長のリーダーシップによる防犯対策

●高知市立A小学校 本校は、校長の強力なリーダーシップにより、 児童の安全を確保するために、さまざま取組を実 施している。 ■これまでの防犯対策 小学校侵入事件をきっかけに、学校側から退職 教職員で組織する「高知市教育シニアネットワー ク」のメンバーに学校内外の巡回をお願いした。 その後、住民を加えた学校パトロール隊が結成 された。正門近くに「学校パトロール隊詰所」が 設置され、メンバーが参加できる時間にいつでも 学校に来て、校内や周辺の児童の様子を巡回し、 気がついた事を日誌に記入しており、定期的に学 校側が確認している。 学校における危機管理マニュアルを作成してい るが、ページ数も多く手軽に見られないため、校 長の発案で「身近に置けて、意識づけができるも の」として、危機管理マニュアルの重要事項をイ ラスト化するとともに、分かりやすいポスターを 作成し、関係者に配布している。 防犯に関する意識の向上を図るために教職員や 児童を対象とした講演会や防犯学習会を開催して いる。 ■効果 学校現場での長である校長がアイデアを発信す ることで、必要な防犯対策を効果的に実施するこ とが可能となった。 本校の取組はモデルケースとして地域の公立学 校の防犯対策のレベルアップにつながっている。 ・学校概要(P40)参照 ■学校パトロール隊詰所 ■検討体制メンバー(抜粋) (外部) 弁護士、警察、市教育委員会管理課 警備会社、設計事務所 PTA会長 (学校関係者) 大学事務局総務部長、施設課長 大学附属小・中学校各校長、副校長、教員代表 大学附属幼稚園長 ■校舎外観

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

現状の把握、課題の抽出

学校の施設安全マップづくりから

●K大学附属学校園 この学校園は、大学附属学校で、大学キャンパ ス内に位置する特別支援学校と、別団地に幼稚園、 小学校、中学校が併設する形態となっている。 これまで防犯対策を各校個別に行っていたが、 全校統一の防犯マニュアルを作成するために、学 校関係者や外部の専門家等による検討会を設置し た。 防犯に関する現状を把握するために、敷地建物 配置図を使って、検討体制メンバー全員で現地を 歩き、問題点について図面に描き込み、また、写 真記録を行った。 現状の把握は、不審者侵入防止の観点から、第 一次警戒ラインである門、囲障の状況、見通しに ついて確認を行った。 幼稚園、小・中学校が併設する敷地内を関係者が 一緒に点検することは、これまで実施されていな かった。今回の点検で敷地の状況、防犯上の弱点等 が把握でき、また、緊急時の避難経路の設定や連 携に役立つことがわかった。 ・学校概要(P18)・類似例(P15,P21,P34)参照 2 ■現状の把握と課題の抽出 防犯対策を検討する上で、校内及び周辺環境の現状を把握し、課 題を抽出することが重要である。 その際、学校配置図等に気がついたことを記入する「学校施設安全 マップ」づくりが有効である。 (H18「点検・改善マニュアル」より) ■問題点を敷地配置図に書き込み写真で記録 ■検討体制メンバー(抜粋) (学校関係者) 教育学部教授 附属特別支援学校、幼稚園、小・中学校の副校長 同 PTA会長 (外部) 高知市立A小学校長 高知県警察本部地域安全対策推進室長 防犯セキュリティーアドバイザー ■事例から読み取れるポイント(研究会コメント) 校内配置図等に不審者の侵入防止上不備な箇所や、避難経路、防 犯設備の位置等を図面に描き込み、視覚的に捉えることができる学校 施設安全マップづくりは、防犯対策を総合的に理解する上で効果的で ある。 学校施設安全マップづくりは教職員、児童生徒、保護者、周辺住民 等が参加して実施することにより、多角的観点で点検し、関係者の共 通理解を深める上で有効である。 ①取組のきっかけと検討体制 ②現状の把握、課題の抽出 ③マニュアル、チェックリストの活用 ④改善措置の実施 ⑤点検改善の周知、見直し 附属小学校車道フェンス (人が容易に通過できる)

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

マニュアルの作成を機会として点検内容を

精査

●私立D中学校 ■マニュアル作成のための点検 本校ではこれまで、学校施設の防犯対策に関す る点検・改善は、日常の学校運営の中で気がつい たことに対応する形をとっていた。 学校施設の防犯対策の強化を目指して、文部科 学省委嘱事業の認定を受け、防犯マニュアルを検 討・作成することとした。 検討体制は、学内の防災防火対策委員会(常設) を母体に、学内の専門的立場の人間と警備会社職 員を加えて組織した。 マニュアル作成のための学校施設の点検は施設 担当職員が行い、検討会において内容を精査した。 評価方法は、門・出入り口、囲障、階段などの 計 15 箇所を3段階で評価し、改善を要する箇所に ついて、今後の対応策を具体的に記述した。 点検結果を配置図に記載し、一覧性の高い資料 とした。 ■マニュアル運用開始後の定期点検の強化 マニュアル作成に取り組んだことにより、年2 回実施している学校説明会(受験希望者対象)前 に全教職員で実施する一斉点検の際に、防犯に関 する項目を付加することに繋がった。 教職員以外に警備員、清掃業者、管理員が学内 に常駐しており、防犯の視点を加えて業務を行う よう指導していくこととしている。 また、中学校が大学敷地内にあるため、大学の 危機管理委員会と連携して総合的に対応できるよ うにしている。 ・学校概要(P21)参照

ハード・ソフト両面の点検把握

●H大附属小・中学校 ■ハード面の検証 学内配置図を活用して、検討体制メンバー全員 で施設視察を実施し、校舎内外の防犯施設の配置 がわかる防犯施設地図を作成した。 点検のポイントとしては、児童生徒の活動範囲、 来訪者の動線、防犯カメラ・教員等の目が届く範 囲について確認し、来訪者のチェック体制や防犯 カメラ・教員等の目が届きにくい死角があること を共通理解できた。 ■防犯施設地図(動線と死角など) ■ソフト面の検証 ハード面と併せて正門警備員や玄関事務室窓口 の対応、玄関出入口の管理方法、来校者・保護者 の ID カードの着用、保護者の巡回協力などソフト 面の対策についても現状確認を行った。その結果、 警備員体制や事務室の配置、出窓の仕様状況等か ら生じる空白の時間について課題が抽出できた。 ・学校概要(P18)参照 私立D中学校のチェックリスト 等事例 1)点検・改善チェックリスト 作成例 点検者:○○ 現場での評価 A: 行っている  B:概ね行っ ている C:行っていない 対策後の評価 ○:問題ない △:概ね問題ない ×:問題あり 具体的点検項目 評価 具体的な対策等 対策後の評価 1 出入り のチェ ッ クを行っているか 2 門の高さや形状は十分か 1 鉄柵は設置しているか 2 門衛所から の見通し はいいか 3 来訪の際は必ず受付に立ち寄るよ う表示しているか 1 鉄柵は車輌が一旦停止でき るよう に設置さ れているか 2 門衛所から の見通し はいいか ③ 中学校南面入口中央 確認場所 ① 中学正門 ② 中学校南面入口 西側 ■点検・改善チェックリスト(資料参照 P51) ■玄関先事務室窓口 (将来的に は、来校者 の確認を容易にするた め、校舎から出た位置 に出窓式に配置する予 定)

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

マニュアル、チェックリストの活用

インターネットWebを活用したチェックリスト

■H大学附属小・中学校 児童生徒の安全確保のために防犯施設・設備を 有効に機能させるためには、日常あるいは定期的 な点検が不可欠である。 本校では、全教職員のパソコンがインターネッ トでつながっている利便性を活用してWeb 上の チェックシートによる点検ができるように工夫し ている。 ■ネット上のチェックリスト一覧(資料参照 P47) ■ネットによるチェック体制(資料参照 P48) 点検項目は重要度に応じて週点検と月・通年点 検に分類し、さらに点検者の負担を考慮し、項目 内容は要点がわかるように施設・設備名、担当者、 点検実施日、評価、管理者確認、対応済みの有無 などが簡潔に整理されている。 点検結果は、学内防犯責任者から校長・副校長 に報告されるシステムとなっている。 点検結果は、学校だよりやPTA役員会等で公 表されている。 チェックリストのWeb化は、点検結果の集約 に効果があるとともに、防犯体制の現状を誰もが いつでも把握できることにより、防犯意識の向上 につながっている。 ・学校概要(P15)参照 3 ■マニュアル、チェックリストの活用 実効性のある防犯対策を継続的に実施するためにはマニュアルや チェックリストの活用が効果的である。 (H18「点検・改善マニュアル」より」 ■事例から読み取れるポイント(研究会コメント) 防犯対策にスムーズに取り組むためには、例えばすでに整備されて いる地震、防災、生活等の危機管理マニュアルに、防犯対策を追加・ 拡充することも効果的である。 防犯対策を継続的に行うためには、学校関係者等の共通理解に基 づき教職員等への負担を考慮して、点検時期や役割を設定すること が大切である。 点検期 施設・設備名 担当者 最新点検実施日 評価 管理者確認 対応済 1 週 防犯カメ ラ ○○ 2 週 モニターTV ○○ 3 月 正門 □□ 4 月 インターホン ○○ 5 月 案内表示 △△ 6 月 玄関 △△ 7 月 受付 ×× 8 週 校内放送システム ◇◇ 9 週 各教室 ▽▽ 10 週 特別教室 ◎◎ 11 月 教室連絡電話 ▽▽ 12 月 囲障 ◇◇ 13 月 裏玄関 ◇◇ 14 月 駐車場 ◎◎ 15 月 外灯照明 ×× 16 週 1階施錠 □□ 17 月 裏門 ○○ 18 月 防犯ベル △△ 19 月 一斉配信システム ×× 20 週 避難口表示 ○○ 防犯に関する学校施設・設備等チェックリスト総覧 施設・設備名をクリックすると、 それぞれのチェックシートへリン クする。(次ページ参照) 点検月日、評価は、それぞれの チェックシート に書き込まれたも のが、この表にリ ンクし 自動的 に記さ れる。 管理者がネットワークを通して、 点 検・評価を確認し たら、この欄に○ を。 また、 改善が求められたものに対 し て処置が済んだら「済」を。 点検内容の詳細は、施設設備各々 のシートに。このリスト総覧は、 できる だけ簡潔なものにする。 ①取組のきっかけと検討体制 ②現状の把握、課題の抽出 ③マニュアル、チェックリストの活用 ④改善措置の実施 ⑤点検改善の周知、見直し

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

子どもの安全を守る危機管理マニュアル

の充実

●高知市立A小学校 平成 15 年度に、これまで別々に作成していた学 校における安全に関する危機管理(いじめ他)マ ニュアルを「学校の危機管理」として取りまとめ た。その後文部科学省通知を参考に「不審者編」 を充実させ、教職員や関係機関に配布しており、 これらを毎年度更新している。 「学校の危機管理」の構成は次のとおり学校で 起きると思われる事象を網羅している。 「不審者編」では、非常時の対応フローチャー トをはじめ、教職員の役割分担、防犯訓練の要領 等を記載している。 これまであった危機管理マニュアルに「不審者 編」を追補することにより、教職員への周知がス ムーズに図られた。 ■不審者侵入フローチャート(資料参照P54) ・学校概要(P18)参照

安全点検表の作成

●橋本市立S小学校 学校施設・設備に関する点検は、「安全点検表」 に基づいて行っている。学校敷地内の教室、廊下 又はベランダ等の校内施設の各室・部位ごとに担 当者を定めて、毎学期「施設・設備の安全点検日」 に一斉点検を行っている。 安全点検表は、建具や釘の出っ張りなどの子ど もたちの生活上の安全点検を行うためのリストと、 不審者侵入防止等防犯点検を行うためのリストで 構成されている。その他に防犯機器の動作状況や 防犯器具の配置場所の確認等を行っている。 また、点検項目ごとに点検結果を記入する欄が あるほか、不具合があった場合に改善点を記す欄 が設けられている。不具合については必要事項を 記入の上、施設管理者(教頭)・事務職員に伝達し ている。 職員で対応できない場合は、教育委員会に修繕 等の依頼書を申請し、改善を図っている。 ・学校概要(P37) ・類似例(P15,P18,21)参照 ■安全点検表(資料参照P52) 1.いじめ、2.不登校、3.指導困難学級、4.体罰 5.人権侵害事例、6.教職員・学校への苦情 7.公文書紛失、8.けが、9.事故(実験中等) 10.万引き・家出・エスケープ等、11.火災 12.地震、13.風水害、14.不審者、15.その他

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

改善措置の実施

早急な改善と予算計画化への対応

●H大学附属小・中学校 検討委員会による視察、定期点検及び防犯訓 練・避難訓練の検証により抽出された課題を、 ① 直ちに改善が可能な緊急改善 ② 施設整備として経費を要し実施に検討が必要 な予算措置 に分類し、防犯施設地図に記録している。 直ちに改善できる緊急改善の主な内容は、 ① 囲障への表示:数カ所ある門扉付近に侵入に 対し心理的抑止を促す表示の貼り付け ② カメラ作動表示:校内の適当な箇所に心理的 抑止効果のための「防犯カメラ作動中」の表示 物の貼り付け ③ 来校者の確認強化:保護者のIDカード着用 義務依頼、警備員の来校者への声かけ入校確認 経費面等から改善に検討が必要な予算措置の主 な内容は、 ① 事務室の出窓化:来校者受付窓口となる事務 室を改修し、出窓方式で来校者を確認 ② 赤色センサーライト:校内の死角となる箇所 に心理的抑止効果のためのセンサーライトを設 置 「予算措置」が必要な改善項目については、学 内の学校施設委員会において改善案の妥当性及び 予算面について検討を行う。 応急的な巡回等の運用面による対応をとること により、危機管理の意識の向上に役立っている。 ・学校概要(P15)参照 ■事例から読み取れるポイント(研究会コメント) 防犯に関する課題の早急な改善が困難な場合は、巡回等の運用による対応や短期・中期の改善計画の 検討が大切である。 改善計画はその内容により、学校レベルで実施可能な比較的軽微な改善と、設置者レベルの比較的規模 の大きな改善に区分して検討することが大切である。 4 ■学校の状況に対応した改善措置 防犯上の課題については、ソフト・ハード両面から、早急に改善す ることが重要である。 直ちに改善できないものについては、改善計画を策定し、ソフト面 での取組も含めた応急的な代替措置を講じることが重要である。 改善措置は学校の状況に応じ、耐震改修等、様々な施設整備機 会を捉えて対応することが大切である。 (H18「点検・改善マニュアル」より) ■緊急改善、予算措置を記載した防犯施設地図 ①取組のきっかけと検討体制 ②現状の把握、課題の抽出 ③マニュアル、チェックリストの活用 ④改善措置の実施 ⑤点検改善の周知、見直し

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

予算執行までの迅速な意思決定

●私立D中学校 ■日常点検 施設設備の点検は特に決まった様式はないが、 日常において教職員が気づいた際に総務主任及び 施設担当職員へ連絡し、状況を確認して改善方法 を検討することとしている。 教職員以外にも、警備員、清掃業者、管理員、 父母の会事務局が常駐しており、巡回記録や日報 等の業務上の連絡に加えて修繕が必要な箇所につ いては事務所に連絡が集まる仕組みとなっている。 ■迅速な意思決定が可能な組織と権限 法人には、大学を中心として、中学校 校、高 等学校 校、中高一貫校 校と つの大学附属校 園がある。各校は財務的に独立し、校長が財政責 任者として予算を執行している。 当該部署に情報が集約されれば、週1回開催さ れている教職員会議や防火防災対策委員会、危機 管理委員会等、当該部署の承認を受けて即改善策 が実施できる。 小規模な修繕程度であれば、総務主任の判断で、 例えば、フェンスの修繕等は早ければ翌日には修 繕できるなど、迅速な対応が可能となっている。 これは、組織の規模が小さく、また、予算を手 元に持っている私立学校の特色といえる。 ただし、大規模な修繕や改善策の実施(教室の 配置転換や建物の構造に関係するものなど)は教 職員会議における審議が必要となっており、意思 決定には一定の時間が必要となる。 ・学校概要(P21)参照

避難訓練を通じた点検・改善に向けた学校と

設置者との連携

●足立区立S小学校 ■避難訓練を通じた点検 本校では、「火災・地震時や不審者侵入時におけ る緊急マニュアル」により、毎月、避難訓練及び 安全点検を実施し、年に1回は、避難訓練を地域 に公開している。 また、毎月の安全点検では、校舎・校庭の各室・ ごとに担当教職員を定めチェックリストにより安 全点検を行い、不具合があれば施設管理者である 副校長に報告することとしている。 ■学校と設置者の連携 安全点検による不具合については、一定範囲(50 万円以下)であれば、学校の判断により緊急的な 改善を実施できる。 また、緊急改善で対応できないものについては、 学校から区教育委員会の担当者に相談することと しており、各校担当者によるワンストップサービ スによって、学校と設置者の間の意思疎通が確保 されている。 ■区内全域での計画的な改善 足立区では、区内全校を対象に優先的防犯対策 として、東京都における防犯カメラ設置の補助制 度創設を踏まえ、区教育政策課において特別枠予 算を確保し、次のような改善対策を平成 17 年度か ら段階的に実施することとしている。 ① 防犯カメラの設置 ② オートロック施錠、モニター付きインターホン ③ 門・塀の 1.5mまでのかさ上げ ・学校概要(P26)参照 ■毎月実施している避難訓練(児童は机の下) ■応急補修されたフェンス

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

点検・改善の周知、見直し

危機管理のポイントをポスターで周知

●高知市立A小学校 本校では、これまで個別に作成していた学校に おける危機管理(いじめ、不登校、怪我、火災ほ か)マニュアルに防犯対策を加えた「学校の危機 管理マニュアル」を作成し、毎年度更新している。 マニュアルは危機管理に関する考え方や緊急時 の対応手順等を掲載しているが、ページ数も多く 手軽に見られない難点がある。そのため「身近に 置けて、意識づけができるもの」として、学校施 設等の安全点検を含めて、危機管理マニュアルの 重要事項をイラスト化した分かりやすいポスター を作成し配布している。 ポスターは教師用、児童用、保護者用の 3 種類が あり、保護者用では「子どもたちの安全と安心の ためにお願いしたいこと」、児童用では「学校のな かでいつも注意すること」といった見出しで具体 的なアドバイスを行っている。 身近な場所に貼っておくことで、日頃から緊急 時の行動を意識づける効果がある。 分かりやすく児童にも好評で、他校からも問い 合わせが多い。 ・学校概要(P40)参照 5 ■児童用ポスター(資料参照 P56) ■教職員用ポスター(資料参照P55) ■事例から読み取れるポイント(研究会コメント) 防犯対策はマニュアル作成も大切であるが、「いざ」という緊急時に適切に対応する必要がある。日頃か ら防犯内容を分かりやすく周知するための訓練やポイントを分かりやすく示したポスター等の作成も効果的で ある。 学校における防犯対策の充実は、自治体や周辺住民等と連携を図ることで、校内および通学路の巡回パ トロール等による安全対策につながる。 ■防犯訓練等による周知、見直し 防犯対策の点検・改善の取組の内容は、防犯訓練やマニュアル等 により教職員、児童生徒、保護者、周辺住民等に周知することが重要 である。 日常点検や防犯訓練により明らかになった防犯上の不具合や課題 については、改善・見直しにつなげるとともに、必要に応じ、点検内容の 見直しを行うことが重要である。 (H18「点検・改善マニュアル」より) 「学校環境安全点検表をきちんと決まった日に複数の目で チェックする。マンネリは最大の敵。」 ①取組のきっかけと検討体制 ②現状の把握、課題の抽出 ③マニュアル、チェックリストの活用 ④改善措置の実施 ⑤点検改善の周知、見直し

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第 2 章 点検 ・改 善 の 進 め 方 と 事 例 解 説

防犯訓練によるマニュアルの見直し

●志木市立S小学校 小学校、市立図書館及び公民館の複合施設であ り、施設の性格上、不特定多数の人が出入りする ため、年3回(防火、防災、防犯)の訓練を実施し、 児童を含め学校関係者への周知の充実を図ってい る。 防犯訓練は3施設共通の「危機管理マニュアル (事件・事故、火災、地震)」に示された、緊急時の 対応フローに基づき、毎回不審者の侵入パターン を変えて実施しており、必要に応じて課題につい て改善・見直しを図っている。 各訓練を関係者に周知することにより、PTA 主催による「子どもを守る防犯セミナー」や市民 ボランティアによる校内巡回の実施など、防犯意 識の向上や保護者との連携に繋がっている。 ・学校概要(P24)参照

コミュニティニュースを通した地域活動

への周知

●京都市立G小学校 京都市では、保護者や地域住民による防犯活動 が活発であり、全ての学区で保護者や地域住民に よる見守り活動やパトロール等の地域ぐるみの防 犯対策が行われている。 本校では、そうした取組を広報に掲載し、保護 者等に配布することにより、保護者や地域の防犯 に対する意識の向上を図っている。 また、文部科学省のコミュニティスクール(学 校運営協議会制度)の指定を受けており、学校運 営協議会の下に「地域コミュニティ委員会」を設 けて、子どもの安全を守る活動を年間の活動テー マに置いて検討を進めている。 検討に当たっては、自治連合会、少年補導委員 会をはじめ地域団体や保護者、ボランティアが積 極的に参画している。 定期的に広報誌「コミュニティだより」を保護 者や地域に配布することにより、地域ぐるみの活 動の一層の推進に取り組んでいる。 ■広報誌「コミュニティだより」 ・学校概要(P31) ・類似例(P15)参照 ■各訓練の内容一覧 ■職員室におかれた防犯訓練で使用するさすまた

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第3 章 取組 事例 ●学校概要

H大学附属小・中学校(北海道)

規模 周辺状況・特徴 H大学附属小・中学校は、田園地帯が広がる札幌 市北端のH大学メ インキャンパス内にある。 H大学附属小・中学校の児童・生徒は、札幌市全 域から通学している。

取組のきっかけ

学校侵入事件をきっかけとして平成 13 年度に ハード、ソフト両面から防犯対策の充実に努めて きた。5 年が経過し、各地で新たな事件も発生し ていることから、現行マニュアルの再点検を行っ ている。 本校の防犯対策の一層の充実に向けて、平成 18 年 6 月に文部科学省等が作成した「学校施設の防 犯対策に関する点検・改善マニュアル作成に関す る調査研究報告書」や文部科学省の「防犯マニュ アル作成に関する支援事業」を活用して、実効性 のある防犯マニュアルを作成することとした。そ れにより、他の同大学附属学校の防犯マニュアル 作成の手本となることを目的としている。 ほと んど の児童生徒は 、 バス・地下鉄・JR・市 電を 利用し て通学し ている。最寄りの駅から は、 本校専用バス が 運行されている。 その他の大学附属幼稚園、小学校、中学校、特別 支援学校は、他のキャンパス内に位置している。

検討体制の設置

点検・改善マニュアル作成の検討体制として、 メンバーを学部内だけでなく、外部の専門家、有 識者を積極的に加えて(計 14 人)構成した。 ■主な検討体制メ ンバー ●学校関係者 ・H大学事務局総務部長、施設課長 ・H大学附属札幌小中学校校長、副校長、教員代表 ・H大学各附属副校園長 ●外部 ・弁護士 ~司法の立場から、学校の危機管理と責任~ ・警察 ~警察の立場から、学校の防犯対策全体~ ・市教育委員会 ~市教委の立場から、市立校の防犯対策~ ・警備会社 ~警備の立場から、学校警備・防犯対策~ ・設計事務所 ~設計の立場から、学校施設の防犯対策~ ・PTA会長 ~保護者の立場から学校防犯対策への願い~

第3章 取組事例

ここでは、第2章で点検・改善の視点ごとに紹介した各事例について、全体的な取組の概要・特徴や地 域的な背景などが分かるようにまとめることにより、取組の意義や位置づけを明らかにします。 1 ■小・中学校正門 学校 学級数 児童等数 教職員数 小学校 12 478 小・特別支援学級 3 24 22 中学校 9 374 中・特別支援学級 3 24 21 合 計 27 900 43

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第3 章 取組 事例 ■検討会議 検討会議は、効率的な検討がなされるようにテー マを定め約3ヶ月の期間に4回の会議を実施した。 第1回:学校施設視察と問題点の指摘 第2回:点検・改善マニュアル案の検討 (含:施設の問題点の解消) 第3回:マニュアル案検討、視察報告 (含:改善箇所の決定) 第4回:マニュアル案の最終検討

現状の把握と課題の抽出

■現状の把握 防犯施設地図の活用 初回に校舎内外の防犯施設の配置がわかる防犯 施設地図をあらかじめ用意し、検討体制メンバー 全員で施設を視察し、現状把握を行なった。 ■防犯施設地図 ソフト面の対策の検証 不審者の侵入をいかに防ぐかをテーマに、正門 警備員や玄関先事務室窓口の対応、玄関出入口の 管理方法、来校者・保護者のIDカードの着用、 保護者の巡回協力など、ソフト面の対策について 現状確認と検証を行なった。 保護者連絡網の検証 迅速かつ正確な情報伝達を行うため、携帯電話 による保護者の一斉連絡網について検証を行って いる。 防犯訓練の検証 年1回実施する防犯訓練では、不審者の侵入は どこからでも発生するという想定のもと、教職員 と児童・生徒間で約束された「緊急放送秘密ワー ド」を合図に訓練を実施し、併せて検証を行なっ ている。 ■課題の抽出 動線と死角 防犯施設地図に、児童生徒の活動範囲と来訪者 の動線、防犯カメラ・教員等の目が届く範囲につ いて描き確認した。その結果、来訪者のチェック 体制や防犯カメラ・教員等の目が届きにくい死角 の問題点が発見された。 空白の時間 正門警備員の体制、事務室の配置及び出窓の仕 様、全校集会などの運営の状況等から生じる空白 の時間についての課題が見出された。 改善点をさぐる 検討会議では、問題とされた防犯施設・体制の ■防犯カメラ設置の表示(侵入防止の抑止力となる) ■防犯施設地図(動線と死角)

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第3 章 取組 事例 各事項について改善点をさぐるため、①現状、② 有効性、③問題点、④対策の手順により、検討を 行った。

マニュアル・チェックリストの活用

■マニュアル 本校の防犯対策の一層の充実に向けて、文部科 学省等が作成した「学校施設の防犯対策に関する 点検・改善マニュアル作成に関する調査研究報告 書」の手順や留意点を参考に、本校の現状と防犯 対策を踏まえて、効果的で実効性のある防犯マニ ュアルを作成することとした。併せてこれを、他 の附属学校の防犯マニュアル作成の手本となるこ とを意図した。 ■チェックリ スト 防犯施設を定期点検するためのチェックリスト を、点検の重要度に応じて、週点検と月・通年点 検に分類して作成した。点検は、各防犯施設の防 犯責任者が実施し、その点検結果については、学 校だよりやPTA役員会等で公表している。 このチェックリストはインターネットのWeb を活用し、担当者、点検実施日、評価、改善内容、 現状写真をアップしている。点検結果の集約が便 利になるばかりでなく、全教職員が防犯体制の全 体状況をいつでも把握でき、職員の防犯意識と実 効性の向上に役立っている。

改善措置の実施

防犯施設・体制の改善措置については、定期点 検や年1回ある防犯訓練・避難訓練の検証結果か ら抽出された課題を、①緊急に改善すべきもの(緊 急改善)、②改善を検討するもの(予算措置)に分 類している。これを防犯施設地図に記録すること により、わかりやすく問題点を提起し、学内の学 校施設小委員会で安全面から改善案を作成する。 学校施設委員会で、改善案に対する予算面からの 検討を加え、改善措置を計画的に実施している。

点検・改善の取組の周知、見直し

■点検・改善の取組の周知 防犯対策の周知は、学校だよりや学校教育説明 会の場を利用している。それとともに、本校ホー ムページ上の「附属小学校ニュース」でタイムリ ーに伝えている。この附属小学校ニュースは、毎 日更新しており、学校関係者に好評である。また、 学校だよりはホームページ上でも確認することが できる。 ■点検・改善の取組の見直し 定期点検や年に各1回の防犯訓練・避難訓練の 検証の評価を行っている。そこで把握された問題 点の改善措置について、防犯マニュアル等に反映 することで、防犯対策の見直しを行なうこととし ている。

今後の課題

今後も継続的に防犯施設や防犯体制を改善・整 備し、更に実効性の高いものにしていくことを課 題としている。そのため、引き続き保護者を含む 外部の専門家、有識者の意見の聴取や、学外の機 関・組織等との連携協力を推進する。 ■チェックリストのネット化 ■研究会コメント 防犯に関する 点検・改善マニュアルを作成し 、実 際に運用するこ とを通して、教職員、児童生徒の防 犯意識は、大きく向上している。 インターネットを活用した、防犯施設の定期点検 集約体制が効果的に運用さ れ、全教職員がいつで も定期点検等の評価の進行が一目で確認できる な ど、継続的な防犯意識の堅持につながっている。

(22)

第3 章 取組 事例 ●学校概要

K 大学附属学校園(高知県)

規模 周辺状況・特徴 特別支援学校は、大学のメ インキャンパス内に位 置し、他の幼稚園、小学校、中学校は、高知市中心 部よりの住宅地にある別キャンパスに一団を形成し ている。

取組のきっかけ

学校を発生場所とする事件の増加を背景に、子 どもたちの安全の確保と施設の安全管理の一層の 徹底が求められている。本附属学校園においても、 これまでの不審者侵入時の対応マニュアルの整備 と防犯訓練を含めた防犯対策の一層の点検・改善 が求められている。 K大学附属学校園の園児、児童・生徒は、高知県内の 広範囲から通学している。 幼稚園、小学校(高知市内から 通学) 中学校(公共交通機関使用 1 時間以内から 通学) 特別支援学校(県内通学可能範囲から通学) ■小学校正門 これまで、施設面の視点からは、定期的な点検 を実施していなかったため、文部科学省の「防犯 マニュアル作成に関する支援事業」を活用し、全 附属学校園共通の防犯対策の点検、改善を行うこ ととした。

検討体制の設置

本事業の実施体制を整えるにあたり、学校関係 者として附属学校の副校園長、PTA会長、大学 教職員等に加え、外部専門家として学校の防犯対 策に積極的に取り組んでいる公立学校の校長、高 知県警察地域安全対策推進室長、防犯セキュリテ ィーアドバイザーを委員とした。 また、本大学の教育学部の学生が、地域の防犯 ボランティア活動として組織的にパトロールを行 っている学生の代表からも意見をもらっている。 2 ■附属特別支援学校のある大学メインキャンパス 学校 学級数 児童等数 教職員数 特別支援学校 9 60 27 幼稚園 5 158 7 小学校 21 737 33 中学校 12 471 23 合 計 47 1,426 90

(23)

第3 章 取組 事例 ■主な検討体制メ ンバー ●学校関係者 教育学部教授 附属特別支援学校、幼稚園、小・中学校の 副校園長 同附属学校園のPTA会長等 学生ボランティア代表 ●外部 公立小学校長(高知市立A小学校長) 高知県警察本部地域安全対策推進室長 防犯セキュリティーアドバイザー ■学生の防犯ボランティ ア活動を紹介する新聞記事

現状の把握と課題の抽出

防犯に関する現状把握は、敷地配置図を使い、 検討体制メンバー全員で計2回実施した。 今回、初めて幼稚園、小・中学校が併設する敷地 を関係者が一緒に点検したことにより、敷地の状 況、防犯上の弱点等が把握でき、また、緊急時の避 難経路の設定や連携に役立つことが分かった。 ■K 大学附属幼稚園・小・中学校が同居する敷地 不審者侵入防止の観点から、警戒ラインである 門・囲障の状況、見通しについて確認し、各附属 学校園の状況に応じた点検を行った。 課題については図面に書き込むとともに、写真 を撮り記録した。 ■問題点を敷地配置図に書き込み写真で記録

マニュアル・チェックリストの活用

マニュアル作成は各附属学校園の状況に応じた 内容となるように留意するとともに、各学校園の 連携についても重視している。 定期点検のためのチェックリストは、毎日の巡 回時用と、毎月1回の部屋毎の点検用を作成し、 担当者が管理者に結果を報告することとしている。 ■部屋毎の定期点検用チェッ ク リスト(毎月) 資料参照(P50) 附属小学校車道フェンス2 (人が容易に通過できる)

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第3 章 取組 事例 これまでも定期点検は行われていたが、定まっ た様式はなかった。統一チェックリストでチェッ ク項目が整理されたことは点検上有効である。 ■不審者侵入時対応マニュアル 資料参照(P49)

改善措置の実施

改善措置については、緊急性、対応可能性の高 い順に第1次~第3次改善に分けて計画している。 改善計画の主な内容は、不審者侵入に直結する ような囲障の破れの改善は第一次改善、視認性の 確保のために行うすりガラスを透明ガラスへの交 換は経費がともなうことから段階的な第二次改善 としている。 今回の点検活動で分かった、樹木による見通し が妨げられている点について解消するために、保 護者ボランティアによる枝払い剪定作業を実施し ている。

点検・改善の取組の周知、見直し

防犯マニュアルは附属学校園の教職員に配布す るとともに、今後は内容を分かりやすく解説した 印刷物等を作成し、児童生徒、保護者等にも配布・ 周知し、防犯意識の向上を図ることとしている。

今後の課題

今回の検討は、防犯に限ったマニュアル作成で あったが、今後はその他の災害、防災、安全管理、 生活(いじめ、不登校)のほか、心のケアやマス コミ対策等の対応マニュアルの課題についても検 討していくこととしている。 ■保護者ボランティアにより枝払い・剪定された樹木 ■研究会コメ ント 防犯の点検・改善事業に参画すること により、教 職員等の学校関係者に防犯対策の必要性や視点 について相互理解が深まっている。 マニュアルが整備され、今後は教職員、園児、児 童生徒への日常点検、防犯訓練、防犯教育等を通 し た継続的で円滑な防犯対策の推進が必要であ る。

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第3 章 取組 事例 ●学校概要

私立D中学校(京都府)

規模 周辺状況・特徴 京都市の北側に位置し、店舗、寺社、住宅が密集 している地域にある。 地下鉄線の出口から徒歩2分にあり、多くの生徒が 鉄道を利用し て通学し ている。通学範囲は京都市 内だけではなく、他府県から通学し ている生徒もい る。 大学と隣接して設置されており、大学構内を通って 学校にアクセスする。 キャンパス内に計5件の国指定重要文化財があり、 うち2件が中学校施設のため、一般見学者が校地 内に入ること がある。

取組のきっかけ

中学校職員が「学校安全対策セミナー」に参加 し小学校侵入事件の概要を聞いたところ、学校施 設の安全対策の必要性を痛感し、今回の文部科学 省の「防犯マニュアル作成に関する支援事業」に 応募することとした。 これまで、事件・事故が発生していなかったこ ともあり、教職員の防犯に対する意識は希薄だっ た。その状態を危惧し、防犯マニュアルの作成に 関わることにより、防犯の意識づけのきっかけに したいと考えた。

検討体制の設置

中学校内にある「防火防災対策委員会(常設、 定数6名)」を母体として、学校法人関係者2名、 建築士2名、父母の会(PTA)1名、警備会社1名 を加えた「防犯対策点検・改善マニュアル作成委 員会」を組織した。 中学校敷地は、大学敷地と隣接し、大学構内を 通ってアクセスすることから、大学事務部と施 別敷地にある高等学校と の移転統合計画が進 んでいるため、設備投資は極力抑えつつ効果的 な防犯対策の検討を進めている。 設部の代表が加わって検討した。 建築・設備面については、法人内の建築士と学 内の建築士資格保持者、警備会社職員が加わって 検討した。

現状の把握と課題の抽出

これまで防犯対策に関する施設設備の定期的な 点検は実施していなかったが、小規模な防犯施設 等の修繕であれば、事務長や総務主任の判断で、 学 級 数 24 学級 児 童 数 909 人 教職員数 83 人 ■大学キャンパス守衛室(左奥に中学校がある) 3 ■中学校入り口

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第3 章 取組 事例 翌日には修繕するなど迅速な対応が可能な体制を とっている。 各教職員の気がついた事項は、即時に施設担当 職員に連絡することとし、また学校説明会前に全 教職員で校内をチェックして、不備な点について 改善を行っている。 日常点検としては、警備員による毎日の施錠管 理報告書と休日1時間毎の巡回日誌で確認してい る。 今回のマニュアル作成においては、施設担当職 員が防犯の視点で全体をチェックし、校内委員と 建築士が個別に確認した上で、最終的に委員会に おいて防犯上の問題点等の確認を行った。 施設のチェックに先立って、既に防犯対策の点 検・改善に取り組んでいる他の小学校を視察し、 学校関係者から施設の防犯対策について意見を聞 いて参考にした。 施設設備のチェックは施設担当職員が行い、文 部科学省通知のチェックリストを参考に学校側で 実態に沿ったものに加工した。 点検によって明らかになった課題についてはキ ャンパスマップに書き込み、写真付き報告書を作 成し、関係者間の情報の共有化を図った。 ■課題箇所記載するためのキャンパスマップ(課題記載前) 門や出入り口等、計 15 箇所について複数の点検 項目を設定し、評価を三段階で記載した。評価が 低い項目について具体的な対策を記述し、その内 容を更に三段階で評価するチェックリストとなっ ている。評価できない(現時点で対策が講じられ ない)項目については、いつ整備を実施するのか 目標を記載している。

防犯対策、点検方法の検討

学校の歴史と伝統を重視し、自由でオープンな 環境の中で自立した生徒を育てるという校風から、 敷地を閉鎖せずに防犯対策を強化できる方法を検 討した。 中学校敷地四周は交通量の多い大通り、大学の 目抜き通り、大学内の人通りの多い通路、高い塀 (隣地は寺社への参道)となっており、透過性の 高いフェンスや生垣で領域性を確保すれば、乗り 越えることへの心理的な抑制と周囲の目を期待で きる。 大学構内から中学校敷地へのアクセスルートを 絞ることで対策が取りやすいようにした。 上記敷地条件を加味して設備の導入等の防犯対 策を検討した。 私立D 中学校のチェ ッ クリ スト 等事例 1)点検・ 改善チェ ッ クリ スト 作成例 点検者: ○○ 現場での評価  A : 行っている  B: 概ね行っている  C : 行っていない 対策後の評価  ○: 問題ない  △: 概ね問題ない  ×: 問題あり 具体的点検項目 評価 具体的な対策等 対策後の評価 1 出入り のチェ ッ クを行っているか 2 門の高さ や形状は十分か 1 鉄柵は設置し ているか 2 門衛所から の見通し はいいか 3 来訪の際は必ず受付に立ち寄るよう 表示しているか 1 鉄柵は車輌が一旦停止でき るよう に設置されているか 2 門衛所から の見通し はいいか 1 鉄柵は外部の人が簡単に入れないよう な対 策をと っているか 2 門衛所から の見通し はいいか 1 内線電話が確保でき ているか 2 休日の非常時の際の連絡体制は整っ ている か 3 受付窓口はカ ーテン や掲示物で視線を 妨げ ら れていないか 4 安全管理マニュ アルは設置さ れているか 5 防犯カメ ラは正常に作動し ているか 6 防犯カメ ラ設置の看板( 札) を適切な場所に設置し ているか 7 来訪者に受付をするよう に表示さ れているか 8 名札は確認の上手渡すよう にし ているか 1 破損・ 隙間は生じ ていないか 2 パーテーショ ンはフェ ンスの役割を果たし て いるか 3 十分な高さ や形状を確保し ているか 4 清掃が適切に行われている か 5 防犯カメ ラは正常に作動し ているか ⑤ 門衛所 ⑥ 裏門 ③ 中学校南面入口中央 ④ 中学校南面入口 東側 確認場所 ① 中学正門 ② 中学校南面入口西側 ■問題点抽出のためのチェックリスト 資料参照(P52)

参照

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