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はしたが出産していない ) 既婚出産 ( 結婚し出産もした ) の 3 つを比較することになる 図 は 未婚期雇用就業経験者の 現在時点の結婚と出産経験の有無を示している あくまで現時点の状態であるため 若いコーホートほど これから結婚 出産する可能性があることを考慮しながら 結果を読

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3 章 初職勤務先の雇用環境と出産選択

1 はじめに 女性の雇用就業率と年齢の関係において、今日でも、いわゆる「M 字」型構造は維持され ているが、若い世代ほどM 字の底は浅くなっている。しかし、それは出産しても退職しない 比率が上昇したからではなく、出産しないで労働市場に留まる比率が上昇しているからであ る。そして、出産しない女性が増えたのは、未婚率の上昇によるところが大きい。 こうした状況は、少子化との関連で問題とされてきたが、仕事と育児の両立においても看 過できない問題である。<仕事か育児か>の二者択一において、出産をとらずに仕事を続け る女性が増えていることを意味するからだ。 この問題に対し、本章では、未婚期の雇用環境に着目して、出産するか否かの選択を規定 する要因を明らかにしたい。未婚期の勤務先として、本章では対象者が最初に雇用された勤 務先(初職勤務先)に焦点を当てる。「仕事と生活調査」では、対象者が経験したすべての勤 務先の入職年月と退職年月を知ることができるが、勤続・離転職状況は個人によって様々で ある。また初職開始後の結婚・出産時期も個人によって様々である。こうした多様なライフ コースの分岐点となる時点を一律に特定することは難しい。しかし、初職は、結婚・出産の 有無、離転職の有無にかかわらず、ほぼ全ての対象者が共通して経験している。まずは初職 の雇用環境を比較することで、出産を促進・阻害する雇用環境を明らかにする手がかりとし たい。 女性の就業継続にとって、男女雇用機会均等法施行が大きな時代の転換点となっているこ とを踏まえて、本章でも、均等法施行前に初職を開始したコーホートと、均等法施行以後に 初職を開始したコーホートを比較する。分析対象において、「1950~60 年生」は前者の世代 に相当し、「1961~71 年生」は後者の世代に相当する。 分析対象は、未婚期に雇用就業経験のある女性とする。具体的には、雇用就業経験のある 未婚女性と初婚前に雇用就業経験のある既婚女性である1。結婚・出産経験の有無は、現時点 の状態とする2 2 未婚期雇用就業経験者の結婚・出産経験 はじめに、未婚期に雇用就業経験のある女性の結婚と出産経験の有無を確認しよう。分析 対象には、未婚の出産経験者が2 件含まれているが、分析に堪え得る数ではないため、出産 経験者はすべて既婚者とする。したがって、「未婚」(結婚していない)、「既婚未出産」(結婚 1 結婚前に出産したケースも少数あるが、これについては出産前の雇用就業経験とする。 2 30 歳以上で結婚・出産した層にはコーホート間の差があるものの、どのコーホートにおいても大多数が 30 歳 までに結婚・出産している傾向は共通しているため、本章では、現時点の経験の有無と分析する。雇用環境が結 婚や出産の時期(年齢)に及ぼす影響については、別の機会に改めて明らかにしたい。

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はしたが出産していない)、「既婚出産」(結婚し出産もした)の3 つを比較することになる。 図 3.2.1.は、未婚期雇用就業経験者の、現在時点の結婚と出産経験の有無を示している。 あくまで現時点の状態であるため、若いコーホートほど、これから結婚・出産する可能性が あることを考慮しながら、結果を読むことにしたい。 まず指摘できることとして、ここでも「1961~75 年生」の未婚率が高い。しかし、「既婚 未出産」の比率は、コーホート間でほとんど変わっていない。「DINKS」と呼ばれるような、 子どもを持たない夫婦が増加している傾向は、この図からは確認されない。若いコーホート においても、結婚すれば大半は少なくとも1 人は出産しており、結婚するか否かが、出産経 験するか否かの大きな分岐点になっているのである。 こうした未婚化の要因として、たびたび指摘されるのが女性の高学歴化である。そこで、 図3.2.2.で、学歴別に結婚と出産経験の有無を見てみよう。 「1950~60 年生」から見よう。このコーホートは、高学歴層の未婚率が高いことがわか る。「大学・大学院」は、サンプルは小さいものの、未婚率が 11.9%と他の学歴に比べて著 しく高く、「既婚出産」の比率は低い。未婚者同様、出産していない「既婚未出産」の比率は、 図3.2.1. 未婚期雇用就業経験者における結婚・出産経験の有無 (コーホート別) 17.9 5.3 6.7 90.5 75.3 4.2 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1950-60年生(N=451) 1961-75年生(N=608) 未婚 既婚未出産 既婚出産 図3.2.2. 結婚・出産経験の有無(学歴・コーホート別) 11.9 16.6 18.8 19.2 6.9 6.3 7.7 91.6 90.4 85.7 76.5 74.9 73.1 2.8 3.8 2.4 5.6 5.7 0% 20% 40% 60% 80% 100% 中学・高校 (N=249) 専門・短大・高専 (N=157) 大学・大学院 (N=42) 中学・高校 (N=289) 専門・短大・高専 (N=239) 大学・大学院 (N=78) 1950-60年生 1961-75年生 未婚 既婚未出産 既婚出産

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「大学・大学院」の方が「中学・高校」、「専門・短大・高専」に比べて低い。「大学・大学院」 の「既婚出産」が低いのは、高い未婚率の結果であると言える。その一方で、「中学・高校」 と「専門・短大・高専」の比較においては、「未婚」、「既婚未出産」、「既婚出産」の何れにつ いても学歴間の差はない。ここには、学歴と結婚・出産経験の有無は関係がないようである。 「大学・大学院」卒であるか否かによって、結婚・出産するか否かに差が生じる点では、女 性の高学歴化を未婚化・少子化の要因とする議論はあてはまっていると言える。 これに対して、「1961~75 年生」は、「大学・大学院」と他の学歴との結婚・出産経験の 差がなくなっている。「中学・高校」、「短大・専門・高専」、「大学・大学院」を比較すると、 「未婚」、「既婚未出産」、「既婚出産」の何れの比率においても、学歴間の差はほとんどない。 「女性の高学歴化による未婚化・少子化」は、この世代にはあてはまっていないようである。 では、雇用環境と結婚・出産経験の関係はどうだろうか。以下では、初職勤務先に焦点を 当てて分析を進めたい3 3 初職属性からみた結婚・出産経験 「仕事と生活調査」では、初職属性について、雇用形態(従業上の地位)、職種(仕事内容)、 業種(事業内容)、企業規模、育児休業制度の有無を知ることができる。これらの要因と、現 時点の結婚・出産経験の関係を見ることにしよう。 雇用形態から見る。図 3.3.1.は、最初の勤務先に雇用された時の雇用形態について、正規 雇用と非正規雇用の比率をコーホート別に示している4。非正規雇用には、パート・アルバイ ト、臨時雇い、契約社員、派遣社員が含まれる。 二つのコーホートを比べると、「1961~75 年生」の方が、「非正規雇用」の比率が高い。 このコーホートが初職を開始した時代は、「フリーター」が拡大した時代と重なる。そうした 時代状況の影響が、この図に反映されていると見ることができる。 そして、重要なのは、「1961~75 年生」においては、結婚・出産経験の有無が初職の雇用 形態によって異なっていることである。図 3.3.2.は、各コーホートの初職勤務先の雇用形態 3 本章の分析対象となる初職は、雇用における従業先であるため、初職が自営業・家族従業員・内職等の非雇用 就業である場合は、その後に最初に雇用された勤務先を分析対象とする。 4 サンプルの中には、最初非正規従業員として雇われた後に、正規従業員となったものもあるが、ここではあく まで雇用され始めたときの雇用形態としている。 図3.3.1. 初職勤務先の雇用形態(コーホート別) 91.1 87.5 8.9 12.5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1950-60年生 (N=451) 1961-75年生 (N=608) 正規雇用 非正規雇用

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別に結婚・出産経験の有無を示している。 「1955~60 年生」は、「正規雇用」と「非正規雇用」の間に、「未婚」・「既婚未出産」・「既 婚出産」の差がほとんどない。これに対して、「1961~75 年生」では、雇用形態による差が 生じている。「1961~75 年生」は、雇用形態にかかわらず、前の世代より「未婚」の比率が 高く、「既婚出産」の比率は低い。これに加えて、「1961~75 年生」の「正規雇用」と「非 正規雇用」を比較すると、「非正規雇用」の未婚率が高い。その分、既婚出産率も「非正規雇 用」の方が低くなっている。もちろん、この世代では、今後結婚・出産する可能性のある未 婚者も少なくない。しかし、「正規雇用」に比べて「非正規雇用」の結婚や出産が遅れている ことは確かである。若年雇用の非正規化が未婚化・少子化を進めているとの指摘は、永瀬伸 子(2002)や酒井正・樋口美雄(2005)もしているが、ここでも同様のことが示唆される5 次に、職種を見よう。図3.3.3.は最初の勤務先で就いた職種をコーホート別に示している。 サンプルが極端に少ない職種は「その他」として一括りにした。 「1950~60 年生」に比べて「1961~75 年生」では、「営業・販売職」の比率が上昇する 一方、「技能工・労務職」は低下している。こうした多少の差はあるが、どちらのコーホート でも「事務職」の比率が圧倒的に高く、「専門・技術職」が17.0%、「営業・販売職」、「サー ビス職」、「技能工・労務職」がそれぞれ10%程度という構成は共通している。コーホート間 でサンプルの職種構成の構造に大きな違いはないと言える。 5 酒井・樋口(2005)は、バブル経済崩壊後に、こうした影響がいっそう強くなっているとしている。 図3.3.2. 結婚・出産経験の有無 (初職勤務先雇用形態・コーホート別) 7.5 15.8 32.9 7.0 90.8 87.5 77.3 61.8 3.9 5.4 5.0 5.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 正規雇用(N=411) 非正規雇用(N=40) 正規雇用(N=532) 非正規雇用(N=76) 1950-60年生 1961-75年生 未婚 既婚未出産 既婚出産 図3.3.3. 初職勤務先の職種(コーホート別) 17.0 17.0 48.3 50.9 8.5 11.4 8.9 9.1 15.4 10.6 1.8 1.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1950-60年生(N=447) 1961-75年生(N=605) 専門・技術 事務 営業・販売 サービス 技能工・労務 その他

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ところが、図3.3.4.に示すように、結婚・出産経験の有無は、何れの職種においても「1950 ~60 年生」より「1961~75 年生」の未婚率が高く、「既婚出産」の比率は低い。未婚化・晩 婚化は職種を問わず進んでいるといえる。これに加えて、「1961~75 年生」の中でも、未婚 率の高い職種も見られる。サンプルが少ない職種があることに注意しなければならないが、 概ね次のような傾向を読み取ることができる。 まず「1950~60 年生」について職種間で比較すると、「サービス職」を除くほとんどの職 種で「未婚」の比率は5%未満であり、約 90%が「既婚出産」である。サンプルが少ない職 種もあるため、値に多少の差はあるが、実質的にはほとんど差がないと言える。 これに対して、「1961~75 年生」において、「技能工・労務職」は、他の職種に比べて、「未 婚」の比率が高く「既婚出産」の比率が低い。未婚化が進むこの世代のなかでも、「技能工・ 労務職」は結婚も出産もしていない傾向があるのである。 次に業種について見よう。図 3.3.5.は、最初の勤務先の業種をコーホート別に示したもの である。病院、学校、保育所に勤務する看護士、教師、保育士は、「義務教育諸学校の女子教 職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律」(1975 年) により、早くから育児休業制度の法的適用を受けていた。この点を考慮し、「医療・教育・社 会保険・社会福祉」は他のサービス業と区別して単独のカテゴリとした。 二つのコーホートを比べると、「卸売・小売業・飲食店」、「運輸・通信業」、「公務」の比 率に多少の違いがあるものの、何れの業種の比率も差は小さく、構造的に大きな違いはない。 図3.3.4. 結婚・出産経験の有無 (初職勤務先職種・コーホート別) 4.6 7.5 12.6 19.2 10.1 21.8 26.6 6.6 7.5 8.7 6.8 5.8 10.1 5.5 9.4 90.8 91.2 94.7 85.0 88.4 80.6 75.0 79.7 72.7 64.1 2.6 2.6 2.9 2.6 4.2 0% 20% 40% 60% 80% 100% 専門・技術職(N=76) 事務職(N=216) 営業・販売職(N=38) サービス職(N=40) 技能工・労務職(N=69) 専門・技術職(N=103) 事務職(N=308) 営業・販売職(N=69) サービス職(N=55) 技能工・労務職(N=64) 1950-60年生 1961-75年生 未婚 既婚未出産 既婚出産

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しかし、結婚・出産経験には、コーホート間の差がある。業種を問わず若いコーホートほ ど結婚も出産もしていない。図3.3.6.にその結果を示そう。 「1955~60 年生」では、どの業種でも「未婚」の比率は 5%程度であり、「既婚出産」の 比率が90%程度である。その一方で、「1961~75 年生」においては、どの業種でも未婚率が 前の世代よりも高い。「既婚出産」の比率についても明らかな差は見られない。サンプルが少 図3.3.5. 初職勤務先の業種(コーホート別) 22.1 20.9 18.5 21.5 17.6 22.5 14.3 14.2 9.6 10.9 4.7 4.9 8.3 6.3 1.5 2.2 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1950-60年生 (N=448) 1961-75年生 (N=604) 医療・教育・ 社会保険・社会福祉 製造 卸売・小売・飲食 サービス 金融・保険 運輸・ 通信 その他 公務 図3.3.6. 結婚・出産経験の有無 (初職勤務先業種・コーホート別) 5.1 23.1 16.9 17.7 14.0 19.8 18.2 6.0 6.3 6.1 7.0 8.1 11.1 95.5 93.7 91.6 89.1 88.9 88.4 76.9 77.9 76.9 77.9 69.0 77.3 4.7 4.7 5.1 2.4 4.5 1.3 5.1 5.4 4.5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 公務(N=22) 卸売・小売業・飲食店(N=21) 医療・教育・ 社会保険・社会福祉(N=64) サービス業(N=43) 製造業(N=79) 金融・保険業(N=83) 公務(N=13) 卸売・小売業・飲食店(N=136) 医療・教育・ 社会保険・社会福祉(N=130) サービス業(N=86) 製造業(N=126) 金融・保険業(N=66) 1950-60年生 1961-75年生 未婚 既婚出産 既婚未出産

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ないカテゴリがあるため、若干の差は表れているものの、業種を問わず未婚化が進んでいる と言える。 初職勤務先属性の最後として、企業規模について見ることにしよう。初職勤務先の企業規 模の構成は、図 3.3.7.が示すように、コーホート間で違いはない。また、図 3.3.8.が示すよ うに、企業規模を問わず「1950~60 年生」に比べて、「1961~75 年生」の方が未婚率は高 く、「既婚出産」の比率は低い。しかし、図3.3.8.において、もう一つ指摘したいのは、同じ 「1961~75 年生」でも企業規模により、結婚・出産状況に違いがあることである。 「1955~60 年生」においては、企業規模にかかわりなく、未婚率は低く、約 90%が結婚 し出産もしている。これに比べると、「1961~75 年生」においては、どの企業規模でも、未 婚率が上昇し、既婚出産の比率は低下している。しかし、「1961~75 年生」のコーホート内 図3.3.7. 初職勤務先の企業規模(コーホート別) 25.2 23.3 15.7 17.4 16.4 20.1 14.2 13.9 28.5 25.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1950-60年生 (N=445) 1961-75年生 (N=597) 30人未満 30~99人 100~299人 300~999人 1000人以上・官公庁 図 3.3.8. 結婚・出産経験の有無 (初職勤務先企業規模・コーホート別) 5.7 6.8 23.7 18.3 18.3 14.5 13.2 5.5 8.7 7.9 5.8 12.0 93.8 92.9 87.7 92.1 86.6 68.3 76.9 75.8 73.5 81.5 1.8 3.2 4.7 5.3 4.8 4.8 1.4 4.5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 30人未満(N=112) 30-99人(N=70) 100-299人(N=73) 300-999人(N=63) 1000人以上・官公庁(N=127) 30人未満(N=139) 30-99人(N=104) 100-299人(N=120) 300-999人(N=83) 1000人以上・官公庁(N=151) 1950-60年生 1961-75年生 未婚 既婚未出産 既婚出産

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における相対的な差においては、「30 人未満」の未婚率が相対的に高い一方で、「1000 人以 上・官公庁」の未婚率は相対的に低い。既婚出産の比率も、「30 人未満」は相対的に低いが、 「1000 人以上・官公庁」は相対的に高い。 このように、初職属性と結婚・出産経験には一定の関係が見られる。ただし、これらの分 析結果については、育児休業制度の有無を考慮する必要がある。初職開始時期や初職属性に よって、勤務先に育児休業制度の規定がある比率は異なるからだ。 例えば、看護士・保育士・教師等、一部の専門職は、1975 年成立の「義務教育諸学校の女 子教職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律」により、 早い時期から育児休業制度の適用を受けていた。その一方で、有期雇用労働者は 1992 年の 育児休業法施行後も、2005 年 4 月の改正育児・介護休業法施行までは、育児休業制度の対 象外であった。企業規模との関係では、今田・池田(2004)などで指摘されているように、 今日でも、企業規模が大きいほど、育児休業制度の規定がある比率は高い。 ここで見られた、初職属性と結婚・出産経験との関係には、育児休業制度の効果が含まれ ている可能性がある。そこで、次に初職勤務先における育児休業制度の有無と結婚・出産経 験の関係を分析することにしよう。 4 初職勤務先の育児休業制度と結婚・出産経験 「仕事と生活調査」では、未婚期の勤務先について、育児休業制度の有無を知ることがで きる。ここで示す育児休業制度の有無は、あくまでも、個人対象の調査結果であり、正確な 導入状況は事業所調査である「女性雇用管理基本調査」(厚生労働省)に依らなければならな いが、育児休業制度が普及しつつある様子が個人の回答からもうかがえる。 図3.4.1.は、初職勤務先における育児休業制度の有無をコーホート別に示している6 育児休業制度が「あった」とする比率を「1950~60 年生」と「1961~75 年生」で比較す ると、「1950~60 年生」よりも「1961~75 年生」の方が高い。前者のコーホートは、均等 法施行前に初職を開始した世代であるのに対して、後者は均等法施行以後に初職を開始した 世代である。また、分析対象の最も若い層では、育児休業法施行後に初職を開始した者も含 まれている。そうした時代状況が、ここでの結果に反映されていると言える。 こうした育児休業制度の有無と、結婚・出産経験の関係を明らかにすることが、ここでの 6 勤務先が現在まで一度も変わっていないサンプルについては、現在の勤務先に入った当時の状況としている。 図3.4.1. 初職勤務先における育児休業制度の有無(コーホート別) 23.3 29.1 39.2 27.1 37.5 43.8 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1950-60年生(N=451) 1961-75年生(N=608) あった なかった わからない

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主要な課題であるが、その前に、既にみた初職属性(雇用形態、職種、業種、企業規模)と 育児休業制度の関係を見ることにしよう。結果を先に言えば、「1961~75 年生」は、その前 の世代に比べて、育児休業制度が「あった」とする層の職種、業種、企業規模が多様化して いる。育児休業制度が普及しつつあった様子が、こうした結果からもうかがえるのである。 雇用形態との関係から見よう。図 3.4.2.は、各コーホートの初職勤務先における育児休業 制度の有無を、雇用形態別に示したものである。 「1950~60 年生」においては、雇用形態による育児休業制度の有無に差はない。これに 対して、「1961~75 年生」では、「正規雇用」の方が「あった」とする比率が高い。コーホ ート間で比較すると、「正規雇用」については、「1961~75 年生」の方が「1950~60 年生」 の「正規雇用」と比べても育児休業制度が「あった」とする比率は高い。しかしながら、「非 図3.4.2. 初職勤務先における育児休業制度の有無 (雇用形態・コーホート別) 23.1 25.0 30.8 17.1 38.4 47.5 24.8 43.4 38.4 27.5 44.4 39.5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 正規雇用(N=411) 非正規雇用(N=40) 正規雇用(N=532) 非正規雇用(N=76) あった なかった わからない 1961-75年生 1950-60年生 図3.4.3. 初職勤務先における育児休業制度の有無 (職種・コーホート別) 40.8 22.2 28.9 10.0 13.0 36.9 31.2 31.9 7.3 21.9 30.3 40.3 34.2 57.5 39.1 31.1 26.3 23.2 36.4 23.4 28.9 37.5 36.8 32.5 47.8 32.0 42.5 44.9 56.4 54.7 0% 20% 40% 60% 80% 100% 専門・技術職(N=76) 事務職(N=216) 営業・販売職(N=38) サービス職(N=40) 技能工・労務職(N=69) 専門・技術職(N=103) 事務職(N=308) 営業・販売職(N=69) サービス職(N=55) 技能工・労務職(N=64) あった なかった わからない 1961-75年生 1950-60年生

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正規雇用」であった層をコーホート間で比較すると、サンプルは少ないものの、「1950~60 年生」に比べて「1961~75 年生」の方が、「あった」とする比率が低い。この層においては 「なかった」とする比率にコーホート間の差はなく、「わからない」の比率が「1961~75 年 生」で高くなっている。 こうした非正規雇用労働者の回答には、育児休業法施行後も、有期雇用労働者は長らく育 児休業制度の対象外とされてきたことが関係していると思われる。非正規雇用の場合、例え 実際は制度があったとしても、自身には無関係であることが多かった。「1961~75 年生」の 非正規雇用においては、そうした制度への関心がいっそう低かったと考えられるのである。 次に職種との関係を見よう。図 3.4.3.は、各コーホートの初職勤務先における育児休業制 度の有無を職種別に示したものである。 「1950~60 年生」は、専門・技術職において、「あった」とする比率が顕著に高い。看護 士・保育士・教師等、一部の専門職は、早い時期から育児休業制度の適用を受けていた。そ うした時代的背景が、回答にも反映されていると言える。これに対して、「1961~75 年生」 は、「あった」とする比率について、職種間の差がなくなりつつある。とりわけ「事務職」、 「技能工・労務職」において「あった」とする比率が前の世代より高くなっており、「専門・ 技術職」との差が縮小している。「1961~75 年生」の方が、多くの職種の初職勤務先に育児 休業制度が浸透しつつあったことがうかがえる。ただし、「1961~75 年生」の中で比較する と、サンプルは少ないものの、「サービス職」と「技能工・労務職」は、育児休業制度が「あ った」とする比率が他の職種より低いことにも留意したい。この世代の結婚・出産経験の有 無において、「技能工・労務職」は、他の職種よりも既婚出産の比率が低いが、ここには育児 休業制度が勤務先にないことが影響している可能性があるのだ。これについては、後に育児 休業制度の有無をコントロールして職種の影響を分析した結果を示したい。 業種との関係においても、若いコーホートほど、育児休業制度が普及しつつあった様子を うかがうことができる。図 3.4.4.は、業種別に各コーホートの初職勤務先の育児休業制度制 度の有無を示している。一業種のサンプルは少ないが、次のような傾向が読み取れる。 「1950~60 年生」においては、看護士・保育士・教師の勤務先である「医療・教育・社 会保険・社会福祉」において「あった」とする比率が高い。また、「運輸・通信業」、「公務」、 「金融・保険業」においても「あった」とする比率が高い。これに対して、「卸売・小売業・ 飲食店」、「製造業」、「サービス業」においては、「あった」とする比率が相対的に低い。これ に対して、「1961~75 年生」は、「製造業」においても比率が上昇している。また、「金融・ 保険業」は「医療・教育・社会保険・社会福祉」よりも「あった」とする比率が高い。 初職属性の最後になるが、企業規模との関係においても、育児休業制度普及の様子をうか がうことができる。図 3.4.5.は、各コーホートの最初の勤務先における育児休業制度の有無 を企業規模別に示している。 「1950~60 年生」は、「1000 人以上・官公庁」において「あった」とする比率が顕著に

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高い。逆に「30 人未満」は顕著に低いが、「30~99 人」、「100~299 人」、「300~999 人」の 間には差がない。これに対して、「1961~75 年生」は、依然として「1000 人以上・官公庁」 において「あった」とする比率が高く、規模による差は残っているものの、「100~299 人」 「300~999 人」の「あった」とする比率も高い。育児休業制度の規定のある企業が、大企 業や公的機関から中小企業にも広がりつつあった様子がこの結果からもうかがえる。 ただし、「1961~75 年生」の中で比較すると、育児休業制度が「あった」とする比率は「1000 人以上・官公庁」が依然として高いことにも留意したい。この世代の結婚・出産経験の有無 において、「1000 人以上・官公庁」は既婚出産の比率が高かったが、ここには、勤務先に育 児休業制度があることが影響している可能性があるのだ。これについては、後に、育児休業 制度の有無をコントロールして、企業規模の影響を分析した結果を示すことにしたい。 このように、初職属性と育児休業制度との関係においては、若いコーホートほど、育児休 業制度が普及している実態がうかがえる。それにもかかわらず、未婚率が上昇し、既婚出産 図3.4.4. 初職勤務先における育児休業制度の有無 (業種・コーホート別) 39.8 33.3 31.8 30.2 19.0 18.2 12.5 36.2 11.1 46.2 47.0 19.9 29.4 19.8 33.7 28.6 50.0 25.6 40.5 42.4 45.3 26.9 22.2 30.8 16.7 36.0 17.5 37.2 26.5 38.1 18.2 44.2 40.5 39.4 42.2 36.9 66.7 23.1 36.4 44.1 53.2 43.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 医療・教育・ 社会保険・社会福祉(N=83) 運輸・通信業(N=21) 公務(N=22) 金融・保険業(N=43) 卸売・小売業・飲食店(N=79) 製造業(N=99) サービス業(N=64) 医療・教育・ 社会保険・社会福祉(N=130) 運輸・通信業(N=9) 公務(N=13) 金融・保険業(N=66) 卸売・小売業・飲食店(N=136) 製造業(N=126) サービス業(N=86) あった なかった わからない 1961-75年生 1950-60年生

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率が低下しているのはなぜか。滋野・大日(1998)が指摘したように、未婚期の勤務先の育 児休業制度は結婚選択に効果がないのだろうか。図 3.4.6.に、各コーホートの現時点の結婚 と出産経験の有無を、最初の勤務先における育児休業制度の有無別に示そう。 結果を先に述べれば、「1961~75 年生」においても、初職勤務先の育児休業制度があった 層は、「1950~60 年生」と同程度の比率で結婚し出産もしている。しかし、育児休業制度が なかった層においては、「1961~75 年生」の方が、未婚率が著しく高く、既婚出産の比率は 著しく低い。育児休業制度の有無は、均等法施行以後に初職を開始した「1961~75 年生」 の結婚や出産に影響することを示しているのである。 「1950~60 年生」においては、育児休業制度の有無にかかわりなく、約 90%が「既婚出 産」(結婚し出産もしている)である。「1961~75 年生」においても、育児休業制度が「あ 図3.4.6. 結婚と出産経験の有無 (初職勤務先育児休業制度有無・コーホート別) 7.3 23.0 7.6 88.6 92.7 87.6 72.1 3.4 3.8 5.1 4.8 4.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% あった(N=105) なかった(N=177) あった(N=177) なかった(N=165) 1950-60年生 1961-75年生 未婚 既婚未出産 既婚出産 図3.4.5. 初職勤務先における育児休業制度の有無 (企業規模・コーホート別) 8.9 21.4 23.3 22.2 37.8 8.6 8.7 34.2 38.6 54.3 57.1 44.3 35.6 41.3 22.8 45.3 33.7 22.5 18.1 15.2 33.9 34.3 41.1 36.5 39.4 46.0 57.7 43.3 43.4 30.5 0% 20% 40% 60% 80% 100% 30人未満(N=112) 30-99人(N=70) 100-299人(N=73) 300-999人(N=63) 1000人以上・官公庁(N=127) 30人未満(N=139) 30-99人(N=104) 100-299人(N=120) 300-999人(N=83) 1000人以上・官公庁(N=151) あった なかった わからない 1961-75年生 1950-60年生

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った」とする層は、「1950~60 年生」と同じく約 90%が「既婚出産」である。これに対して、 「1961~75 年生」で育児休業制度が「なかった」とする層は、「未婚」が 23.0%と著しく高 く、その分「既婚出産」の比率が低くなっている。若い世代においては、育児休業制度が最 初の勤務先にあるほど、その後、結婚し出産もしているのである。もちろん「1961~75 年 生」の未婚者には、これから結婚・出産する可能性が高い者もいる。しかし、少なくとも、 初職の勤務先に育児休業制度があれば、これから結婚・出産する層よりも、早く結婚や出産 をするとは言える。 こうした分析結果から、若い世代ほど、仕事と育児の両立支援策が、出産するか否かを分 かつ大きな規定要因になっていると言える。今日、出産を回避して仕事を続ける女性が、出 産できるために、個々の企業は育児休業制度の規定を設けることが重要なのである。 5 結婚・出産経験に対する初職の効果 ここまでクロス集計により、学歴、初職の雇用形態、職種、業種、企業規模、そして育児 休業制度の有無との関係から、現時点の未既婚及び出産経験の有無の状況をコーホート別に 明らかにしてきた。こうした属性をコントロールしても、総じて「1950~60 年生」に比べ て「1961~75 年生」は未婚率が高く、既婚出産率が低い。 しかし、コーホート内においては属性によって結婚・出産経験に差があることも明らかと なった。その結果は、次のように要約できる。 ① 学歴との関係において、「1950~60 年生」は、「大学・大学院」卒において未婚率が高く、 既婚出産の比率は低かったが、「1961~75 年生」では学歴による差はない。 ② 正規雇用・非正規雇用による差は、「1950~60 年生」では見られなかったが、「1961~75 年生」では、正規雇用の方が未婚率は低く、既婚出産の比率は高い。 ③ 職種別の差も「1950~60 年生」では見られなかったが、「1961~75 年生」は「技能工・ 労務職」の未婚率が他の職種に比べて高く、既婚出産の比率が高い。 ④ 業種による結婚・出産経験の有無の差は、「1950~60 年生」においても「1961~75 年生」 においても、ほとんどみられない。 ⑤ 企業規模別の差も、「1950~60 年生」は見られなかったが、「1961~75 年生」において は、「30 人未満」の未婚率が高く、既婚出産の比率が低い一方で、「1000 人以上・官公庁」 の未婚率は低く、既婚出産の比率は高い。 ⑥ 育児休業制度との関係においては、「1950~60 年生」は、育児休業制度の有無による差 は見られなかったが、「1961~75 年生」は育児休業制度が「あった」とする方が未婚率 は低く、既婚出産率が高い。 要するに、「1950~60 年生」においては、学歴が結婚・出産をするか否かを分かつ要因で あり、初職属性による差はない。これに対して、「1961~75 年生」では、初職属性により、 結婚・出産をするか否かに差が生じている。

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しかし、職種・業種・企業規模・育児休業制度の有無が、相互に関係し合っていることに 注意したい。そこで、相互に属性をコントロールしても、クロス集計で見られた差が、結婚・ 出産経験の有無に影響しているのか、多変量解析を用いて分析してみよう。 結婚と出産は本来別々のイベントであるが、既にみたように、既婚者の大半は出産してい る。また、ここでの問題は仕事と育児の両立であり、結婚だけでなく出産もできる雇用環境 を明らかにすることが目的である。そこで、分析では、結婚も出産もしないか、結婚も出産 もするか、未婚と既婚出産を分かつ要因を明らかにしたい。 分析方法はロジスティック回帰分析を用いることにする。ロジスティック回帰分析は、あ る事象が起こる確率を予測するために開発された方法であり、次のような式として表される。 log(P/1-P)=b0+b1X1+b2X2+・・・・・・・bnXn (1) Pは事象が発生する確率。ここでの課題で言うと結婚し出産する確率である。ロジスティ ック回帰分析は、結婚も出産もしない確率(1-P)に対する、結婚し出産する確率Pの比 率、つまり見込み(P/1-P)を、X1, X2……Xn 等の説明変数で予測する。(1)式はこの 見込みを対数の形で定式化したものである。 表3.5.1.は、出産経験の有無の分岐を予測するロジットモデルにより推計した結果である。 被説明変数は既婚出産である場合に1、未婚である場合に 0 としている。説明変数の効果が プラスであるほど既婚出産の確率が高くなり、マイナスであるほど未婚の確率が高くなる。 説明変数には、コーホート、学歴、雇用形態、職種、業種、企業規模、育児休業制度の有 無を投入している。コーホートについては、最年長の「1950~55 年生」、職種については、 最も多数を占める「事務職」、業種についても、多数を占める「製造業」、企業規模は最も小 さい「30 人未満」、育児休業制度の有無は「なかった」を基準カテゴリとし、それと比較し たときの各カテゴリの効果を算出している。 また、クロス集計結果が示していたように、結婚・出産経験の有無に対する属性の効果は、 コーホートによって異なることが予想される。そこで、分析対象サンプル全体(全コーホー ト、以下「全体」と略す)に関する分析に加えて、分析対象を「1950~60 年生」と「1961 ~75 年生」に限定した分析も行っている。 全体の分析結果から見よう。まず指摘すべきことは、学歴や初職属性をコントロールして も、若いコーホートほど、結婚していないことである。「1950~55 年生」に比べて、「1961 ~65 年生」、「1966~70 年生」、「1971~75 年生」は、有意にマイナスである。先のクロス 集計において均等法以後の世代とした3 つのコーホートにおいて、結婚も出産もしない比率 が高まっているのである。 若いコーホートほど、まだ結婚や出産というライフイベントを迎えていない比率は高いた め、この結果は、結婚や出産を「しない」ではなく、「まだしていない」と見る方が正確であ る。しかし、未婚化・晩婚化・晩産化が、学歴や初職属性を問わず進行していることは、こ こでの分析結果でも示されている。

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そのほか、全体の分析結果においては、学歴が低いほど、正規雇用であるほど、育児休業 制度があるほど、結婚も出産もしていることが示されている。それぞれの効果について、コ ーホート別の分析結果も見ながら、詳細に検討しよう。 学歴の効果から検討しよう。前章で見たように、調査対象の学歴は、「1950~55 年生」か ら「1956~65 年生」にかけて高学歴化していたが、その後は一段落している。つまり、年 長のコーホートにおける高学歴化が、ここでの学歴の効果に反映されていると考えられる。 そして、分析対象を「1950~60 年生」と「1961~75 年生」に限定した結果を見ると、「1950 ~60 年生」の分析結果においてのみ、学歴の有意な効果が示されている。 「1950~60 年生」においては、学歴が高いほど結婚も出産もしていない。クロス集計結 果でも、「大学・大学院」卒であるほど、未婚率が高く、既婚出産の比率が高かった。しかし、 「1961~75 年生」については、学歴の有意な効果は見られない。クロス集計結果にも表れ ていたが、このコーホートにおいては、結婚・出産経験の有無に学歴による差はない。つま り、女性の高学歴化が未婚化・少子化の要因とする指摘は、「1950~60 年生」にはあてはま 被説明変数 分析対象

Exp (効果) Exp (効果) Exp (効果)

コーホート(vs.1950-55年生) 1956-60年生 -.508 .602 1961-65年生 -1.110* .330 1966-70年生 -1.918** .147 1971-75年生 -2.534** .079 学歴(教育年数) -.162* .851 -.462* .630 -.100 .905 雇用形態(正規=1、非正規=0) .769* 2.158 1.096 2.992 .793* 2.210 職種(vs.事務職) 専門・技術職 .755 2.127 .399 1.490 .718 2.050 営業・販売職 .634 1.886 .619 1.857 .656 1.927 サービス職 .019 1.019 -.535 .586 .087 1.091 技能工・労務職 -.110 .896 .127 1.136 -.195 .823 その他 .421 1.524 -.838 .433 19.826 407557222.439 業種(vs.製造業) 運輸・通信業 .090 1.094 -.440 .644 .882 2.415 卸売・小売業・飲食店 .237 1.268 .185 1.203 .273 1.314 金融・保険業 .031 1.031 .917 2.501 -.134 .875 医療・教育・社会保険・社会福祉 -.044 .957 1.291 3.638 -.047 .954 サービス業 .445 1.560 .696 2.006 .519 1.681 公務 .858 2.359 18.943 168585088.261 .251 1.285 その他 .072 1.075 .909 2.482 -.152 .859 企業規模(vs.30人未満) 30-99人 .104 1.110 -1.602 .202 .347 1.415 100-299人 -.086 .917 -1.340 .262 .118 1.125 300-999人 .194 1.214 -1.204 .300 .315 1.370 1000人以上・官公庁 -.092 .912 -1.419 .242 .354 1.425 育児休業制度(vs.なかった) あった 1.259** 3.522 -.021 .979 1.334** 3.794 わからない -.004 .996 -.201 .818 .016 1.016 定数 4.327** 75.746 8.952** 7720.675 1.330 3.782 chi-square -2 loglikelihood N ** 1%水準で有意  * 5%水準で有意 961 412 549 表3.5.1.結婚・出産経験に対する初職の効果(ロジスティック回帰分析) 115.942** 20.017 45.830** 611.608 127.889 484.223 効果 効果 効果 結婚・出産経験の有無(未婚=0、既婚出産=1) 全体 1950-60年生 1961-75年生

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るが、「1961~75 年生」にはあてはまらなくなっているのである。 ここで学歴以上に注目したいのは、初職勤務先の雇用形態と育児休業制度の有無の効果で ある。これらの要因は、未婚化・晩婚化が進んでいる「1961~75 年生」において、結婚・ 出産に有意な効果があるからだ。また、この世代について、クロス集計結果では、職種や企 業規模による結婚・出産経験の差も示されていたが、他の要因をコントロールすると職種、 業種、企業規模の有意な効果はない。これらの初職属性に表れていた結婚・出産経験の有無 は、雇用形態や育児休業制度の有無が影響していたと考えることができる。 雇用形態については、全体の分析結果において、正規雇用ほど結婚も出産もしていること が示されている。コーホート別の分析結果においても、「1961~75 年生」のみ雇用形態の有 意な効果がある。同じ「1961~75 年生」でも、非正規雇用ほど結婚していないのである。 非正規雇用の比率は、「1950~60 年生」よりも「1961~75 年生」の方が高いことを踏まえ るならば、初職における非正規雇用の拡大が、若い世代の未婚化に拍車をかけている見るこ とができるのである。今日の少子化対策において、若年層の就労を支援し、「フリーター」や 「ニート」を減らすことが具体的施策の一つとされている。ここでの分析結果は、そうした 若年層の雇用安定化が、結婚も出産もできるための重要な支援策であることを示唆している。 育児休業制度については、「1950~60 年生」に比べて、均等法施行以後に初職を開始した 「1961~75 年生」の方が、育児休業制度が勤務先にあった比率は高かった。そして、ここ での分析結果によれば、コーホートをコントロールしても、育児休業制度があった方が、結 婚も出産もしている。そして、コーホート別の分析結果においても、「1961~75 年生」にお いては、初職勤務先に育児休業制度があるほど、結婚も出産もしていることが示されている。 「1950~60 年生」については、クロス集計結果でも差はなかったが、育児休業制度の有 意な効果はない。この世代では、育児休業制度の有無にかかわらず、出産していたと言える。 これに対して、「1961~75 年生」においては、育児休業制度があるほど出産している。 こうした育児休業制度の効果から、とりわけ若年世代においては、育児休業制度が勤務先 になく、仕事と育児を両立できないために、出産を回避する女性が少なくないことがうかが える。育児休業制度は、出産女性の就業継続支援策の柱とされてきたが、出産を可能にする 支援策としても、個々の企業が育児休業制度の規定を設けることが必要なのである。 6 まとめ 未婚期の雇用環境が結婚・出産選択に及ぼす影響を明らかにするため、初職勤務先と出産 選択の関係を分析した。分析に当たり、仕事と育児の両立支援制度が出産選択に及ぼした影 響を考慮し、均等法施行前に初職を開始した「1950~60 年生」と均等法施行以後に初職を 開始した「1961~75 年生」を比較した。分析結果は次のように要約することができる。 ① 「1950~60 年生」に比べて、「1961~70 年生」は学歴や初職属性にかかわらず、未婚率 が高く、出産している比率は低い。

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② 結婚・出産選択の規定要因は、コーホートによって異なる。「1950~60 年生」は、学歴 が低いほど出産しているが、初職属性と結婚・出産の関係は見られない。これに対して、 「1961~75 年生」は、学歴による差はなく、初職の雇用形態が正規雇用であるほど、初 職勤務先に育児休業制度があるほど出産している。 均等法施行前に初職を開始した世代である「1950~60 年生」においては、学歴が低いほ ど出産している。しかし、均等法施行以後の世代である「1961~75 年生」においては、学 歴による差はない。女性の高学歴化を未婚化の要因とする議論は、「1950~60 年生」にはあ てはまっていたが、「1961~75 年生」にはあてはまらなくなっている。 「1961~75 年生」においては、学歴に代わって、初職の雇用形態と育児休業制度の有無 が出産に影響している。雇用形態と出産との関係は、先行研究で指摘されていたが、本章の 分析結果でも「1961~75 年生」は、非正規雇用であるほど、未婚であることが示された。 初職が非正規雇用である比率は「1955~60 年生」よりも「1961~75 年生」の方が高い。そ うした非正規雇用の拡大が、未婚化に拍車をかけている実態がうかがえるのである。 そして、本章の分析結果において、最も強調したいのは、「1961~75 年生」において、初 職勤務先に育児休業制度があるほど結婚し出産もしていることである。クロス集計結果によ れば、「1961~75 年生」でも、勤務先に育児休業制度があった層に占める出産者の比率は 「1950~60 年生」と変わっていない。勤務先に育児休業制度があり、出産後に就業継続で きる見込みが高ければ、今日でも、前の世代と同じように結婚も出産もすると言える。 こうした分析結果から、女性労働者の出産にとって、次の支援策の重要性が示唆される。 まず、育児休業制度の効果から、各企業が育児休業制度の規定を設ける必要がある。これ まで、育児休業制度は出産女性の就業継続支援策の柱とされてきたが、出産を回避してきた 女性が出産できるためにも、各企業は育児休業制度の規定を設ける必要があるのだ。 ところが、これまで育児休業制度の普及が進んできたにもかかわらず、大きな流れとして は、未婚化の進行に歯止めがかかっていない。育児休業制度に加えて、さらなる支援策が必 要である。本章の分析結果における雇用形態の効果から示唆されるのは、若年雇用の安定化 の重要性である。「子ども・子育て応援プラン」では、少子化対策の一つとして、「若者の就 労支援の充実」を挙げ、フリーターを減らすことが課題とされている。就業形態の多様化が 進む中で、正規雇用こそ是とすることには議論の余地があるが、安定的な就業機会の提供が、 結婚・出産の選択にとって重要な支援策であることが、分析結果から示唆される。 本章では、未婚期雇用就業と出産の関係に焦点を当てたが、仕事と育児の両立においては、 単に出産するだけでなく、出産して就業継続することが重要である。前章の分析結果によれ ば、今日でも、出産しても就業継続する女性は増えていない。出産を選択した女性が、育児 休業法施行以後も、なぜ退職してしまうのか、この点を次章以後の分析で明らかにしたい。

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