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言 語 学 習 ポートフォリオとはどのようなものか 世 界 で 活 躍 できる 人 材 ための 英 語 教 育 といったスローガンを, 最 近 よく 耳 にします しかし, 学 校 の 授 業 の 現 状 はいかがでしょうか 学 習 者 にとっては 定 期 試 験 や 受 験 のため の 一 教 科

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Academic year: 2021

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My Learning Mate 活用の手引き

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言語学習ポートフォリオとはどのようなものか 「世界で活躍できる人材ための英語教育」といったスローガンを,最近よく耳にします。 しかし,学校の授業の現状はいかがでしょうか。学習者にとっては定期試験や受験のため の一教科で,自分のニーズに合ったコミュニケーション・ツールとしての言語学習である と意識されていないのではないでしょうか。本来,学校の英語学習もそれぞれの生徒のニ ーズや適性に還元できるものにすべきで,そこから学習の継続性も生まれるはずです。さ らに,指導する教員も,学習者の個人的な継続性に対してそれほど注意を払って来ません でした。言い換えれば,学習者個人の将来のために,自分に適した学習を追求するという, 自律的な学習意識を育成する視点が十分ではありませんでした。 現在,文科省によって,各中学高等学校でCAN-DO リストの形式で達成目標を作成し, 達成度を検証することが求められています。CAN-DO リストの形式で達成目標を作成する ことは,「言語の働き」という観点から達成目標を可視化し,教師が生徒と共有できるので, 従来の文法訳読式の授業を変える可能性があります。しかし,現時点では,CAN-DO リス トの作成とそれを活用した指導はまだ一般化しているとは言えません。CAN-DO リスト自 体は,基本的には達成目標のリストにすぎません。重要なことは,生徒がCAN-DO リスト を活用して,自分のニーズに合った学習を確立することにあります。日本における CAN-DO リ ス ト 導 入 の モ デ ル と な っ てい る ヨ ー ロ ッ パ 言 語共 通 参 照 枠 (Common European Framework of Reference for Languages,略称 CEFR)には,その個人の学習 記録のツールとして開発されたポートフォリオがあります。これは,欧州評議会が開発し たEuropean Language Portfolio という言語学習ポートフォリオで,CEFR の自律的な言 語学習を支援する個人用ツールとして実践されています。このような個人ツールを使用し て,自分の言語学習を記録し,生涯学習的な観点から,その学習内容を自分自身で振り返 ることができます。つまり自律的な学習者になる支援ができるのです。さらに,言語学習 ポートフォリオは,言語学習の共通目標を通じて,学習者と教師をつなぐことができます。 また,教師にとっては担当者同士の連携を促進するツールになります。 生徒との連携 教師同士の連携 学習者 教師 ポートフォリオ (共通目標) 同僚 同僚 ポートフォリオ (共通目標)

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MY LEARNING MATE の開発 上記の観点から,自律的な学習を継続することを支援する言語学習ポートフォリオの活 用が有効であると考え,高校生用のポートフォリオ,MY LEARNING MATE(以下,MLM) の開発に取り組みました。MLM の一番の目的は,学習者の英語学習への意識を変え,そ の結果,意欲を向上させることにあります。表現活動を中心にした学習と,その後の自己 評価活動を通じて,自分自身との対話を促進します。具体的には,自分の英語学習へのニ ーズや学習目標を確かめ,それをふまえて,取り組んだ結果を自己評価することによって, 自分に適した学習サイクルの確立を目指すことにあります。 MLM の構成の大枠は以下の通りです。 ・ 自分の興味や卒業後の進路から自分の英語学習へのニーズを考える項目 ・ CAN-DO リストによる自己評価の項目 「自分の興味や卒業後の進路から自分の英語学習へのニーズを考える項目に関しては, 「自分の木」というページで,「パティシエになるために留学したい」といった,将来実現 したい目標を木の枝の中に記入し,さらに,それを実現するための日々の努力を「料理に 関する英語表現を学ぶ」といった内容で根の部分に記入する取り組みを行います。 CAN-DO リストは一般的に,特定の教材に連動していませんが,MLM は教科書ベース で,学習者が単元毎に目標とされた言語の働きをどれだけ習得したか評価できるように設 定されています。最終的には,短期目標として各単元の学習に取り得組むことで,長期目 標である年間の目標として実際の英語力の伸張につながることに気づかせることを目指し ています。 MY LEARNING MATE の実践結果 MLM の開発にあたり,試用版を使った取り組みを行いました。蒲田女子高校の先生方 の協力を得て,同校の1学年全体で取り取り組むことができました。その結果,学習者と 指導者に関して2つの成果が確認されました。まず,学習者に関する成果としては,言語 学習ポートフォリオの自己評価活動や,英語学習と自分のニーズを定期的に考える機会を 持つことで,英語学習に対する意識が深まり,意欲の向上が見られました。また,指導者 側の成果として,CAN-DO リストの目標設定に沿った言語活動中心の授業を実施するため に,これまで取り組んできた授業の検証と改善,さらにそれに沿った評価方法の開発に取 り組むなどの変化が見られました。 この取り組みで最も印象的だったのは,今回一緒に取り組んだ先生方の意識や指導方法 の変化です。例えば,1学期間の取り組みの後のミーティングで,ある先生から以下のコ メントがありました。「指導の優先順位が変わりました。昨年は文構造の理解が最も大切だ と思っていたけれど,今年は使うことを前提とした指導がそれよりも大切だと思うように なりました。もちろん,文構造の理解も大切ですが,複雑な構造のものは,もっと詳しい ことを表現したいと思ったときに必要な学習をすればいいと思います。今は,学んだこと

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で何ができるかの方が大切です」。また,日々の指導においては,「MLM に沿って授業展 開をしていくと,生徒が英語で活動する時間が大幅に増えた。これにより,発表・ペア活 動に使いやすいように教材のプリントの工夫を考えるようになった」とコメントしていま す。 MLM の構成自体については後述しますが,特に複雑なものではありません。MLM を使 った取り組みで最も重要な点は,「MLM をどのように使うか」にあります。MLM を使っ た学習活動は基本的にコミュニケーションを重視したものになるので,指導方法と評価の 準備をする必要があります。また,同僚とその方針についてよく話し合って,共通理解を 深める必要があります。以下の各項目に具体的な説明があるので,それを参考にそれぞれ の学校の実態に合わせて,準備をして下さい。 MY LEARNING MATE の各項目とそのねらい 1. 授業で役立つ英語表現集 授業中に使う英語表現集です。先生に質問したり,指示を求めるときに使います。 MLM では「生徒になるべくたくさんの英語を使わせる」ことを目指しているので, 生徒が使える教室英語として,年度の最初に確認させます。 2. 私の英語学習プロフィール 生徒の英語学習の目的と適した学習スタイルを確認します。中学時代など,これ までの英語学習を振り返り,生徒自身が自分の外国語学習のスタイルを確認します。 3. 英語学習の目標と自己評価 この 1 年間の英語学習の達成目標です。4 月の授業開始時と各学期終了後に確認 します。「5. 学びの記録」の各単元の学習の蓄積がこの年間の目標を達成につながる ことを確認させます。 4. 未来の自分と英語学習,自分の木 この項目を利用して,生徒は「自分のニーズに適した英語学習」を考えます。こ れまで,本来,生徒自身の進路と外国語の学習は密接な関係があるはずですが,こ れまでこの点に関しては,「進路」と「学科の学習」としてそれぞれ別なものとして, 取り組まれてきました。特に「自分の木」は自分の将来やそれに向けた取り組みを 考えるものです。将来つきたい職業や,自分の人間的な成長と英語学習を関連させ て,自分のニーズに適した英語学習を 1 本の木のイメージで考えます。幹や枝には 自分の「進路,人間的成長,英語学習に関する希望」を記入し,根にはそれらの「希 望を実現するための努力」を記入します。「努力」は「希望を実現するための栄養」 と考える訳です。また,これらの根を妨げる要素として,石ころのイメージで具体

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的な「不安」も記入します。実際に利用した生徒の例を掲載してあるので,それを 使って書き方を確認して下さい。また,年度の当初に最初の記入を行いますが,学 期の終わりなど定期的に,「3. 英語学習の目標と自己評価」の確認する際に,英語学 習の成果の確認と同時に見直す作業に取り組むようにしましょう。 5. 学びの記録 MLM の中心的な取り組みとなります。教科書の各単元の学習の前に目標を確認 して,終了後に生徒自身の達成度を自己評価します。重要な点は,学習後だけでな く,必ず学習前にその単元の目標を確認させ,その目標を意識して学習活動に取り 組ませることにあります。例えば,Lesson4 では,「ラーメン」という日本人の国民 食的な食材を取り上げますが,その学習目標として「自分の好きな料理や食べたい ものについて述べることができる」という Can-Do の記述があります。この単元の 最後には自分の表現活動として,「自分の好きな料理や食べたいものについて述べる」 活動を行うことを意識して,活用できる英語表現や文法項目などを学ぶわけです。 そして,単元終了後には,実際にその表現活動に取り組んだ結果を自己評価するわ けです。 6. これからの課題 この冊子を使ってみて,自分の将来と英語学習について気づいたことを記入させ ます。年間の学習を通じて気づいたことを記録させることで,学習の継続につなげ ます。 MLM を使った取り組みの準備 MLM を使用する際に必要な準備について説明します。 1. 学習目標としての Can-Do リストの確認

MLM は,東京書籍のコミュニケーション英語の教科書,All Aboard! Communication EnglishⅠに準拠して作られています。各単元の Can-Do リストの記述は,この教科書 を取り組む際に考えられる学習目標を掲げてあります。特に,題材に関連したコミュニ ケーション活動を重視した目標となっています。しかし,これらの目標は必ずしも全て そのまま使う必要はなく,それぞれの担当の教師がその学校に実態に合わせて,取捨選 択して使うことができます。また,追加することもできます。重要な点は,担当者同士 で事前に共通の目標として,確認してから生徒に提示するという点になります。 2. 学習目標に沿った授業計画 前述したように,MLM は,題材に関連したコミュニケーション活動を重視した学習 目標を掲げてあります。そのため,授業もその目標を実現する方向で実践する必要があ ります。例えば,Lesson6 の “Funny Picture from the Edo Period”では,江戸の浮世

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絵師に関するスピーチが題材となっています。MLM の Can-Do リストには,コミュニ ケーション活動として,次のような記述があります。 ・ 写真や絵を描写することができる。 ・ 自分の好きな絵や写真についてスピーチを行うことができる。 上記の目標を達成するために,例えば次のような取り組みを行うこともできます。 ・ ハンドアウトを使って,教師が用意した絵や写真の特徴から,思いつく英語表現 を引き出す ・ グループで好きな絵を話し合わせる。 留意点として以下の要点が考えられます。 ・ グループごとにスクリーンに投影するか,絵のコピーを持って紹介する。 ・ Lesson 6 で学習した受動態の文章を必ず入れるようにして,使えるようにする。 発表以外のグループには「発表を聞き,その発表にもう1 文加える」などの課題 を与える。 ・ 教科書の表現5~7文でその絵を紹介する。

この手引きに実践例として,All Aboard! Communication EnglishⅠ全科の指導例を掲 載しておきますので,参考にして下さい。 3. 学習目標に沿った評価方法の確認 授業で題材に関連したコミュニケーション活動を行った場合,その学習の成果を評価す る必要があります。つまり,語彙や文法事項の知識を問うテストだけでなく,学習活動の 結果,どのような言語の働きを身に付けることができたのかを問うパフォーマンス・テス トを実施する必要があります。例えば,蒲田女子高校の実践例を以下に示します。 ・ パフォーマンス・テストはペアで行う。このテストは平常点の10 点分になるため,テ スト会場は別室を用意し,録画したものを担当者全員で評価する ・ 生徒たちがパフォーマンス・テストの評価基準を理解できるようにするため,上級生が 会話している映像を各クラスに見せ,評価をさせる。教師はコメントせず,生徒間で意 見を出し合い,テストのときに使用する評価シートに記入させる。 ・ 1 学期のテストでは,授業で学習した疑問文やその答え方が定着しているかを確認する ことを目指した。疑問文の書いてあるカードを5 枚机上に裏返して置いておき,ペアの 一人がその中の1 枚をめくり,書いてある疑問文から 1 分間会話を続けるという方法で 実施した。(会話が続かなくなったら残りのカードを何枚でもめくることができる) 重要なことは,MLM の自己評価の結果をそのまま成績に反映させてはいけません。も し,自己評価の結果を学期や年間の成績に反映させると,生徒はきちんとした自己評価で はなく,「ウソ」を書くようになってしまうからです。ポートフォリオのCan-Do の記述に 沿った目標の評価は,それに関連した学習結果から行わなくてはいけません。

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最後に 言語学習ポートフォリオを導入することは,生徒を引率して山登りを行うことに似てい ます。CAN-DO リストの作成だけでは,行程表作りという計画段階にとどまります。しか し,ポートフォリオを使った取り組みでは,一人一人の生徒に配布して授業実践をするこ とで,生徒と一緒に目指す山登りを始めることになります。生徒が遭難しないように,引 率者は連携を密にして指導計画という行程表を検討しながら,協力し合って目標に向かっ て行かなければなりません。言語学習ポートフォリオの実践では,生徒との連携はもちろ んですが,同僚と密に意見交換をしながら,互いに効果的な授業のアイデアを交換し合う などの連携が大切なポイントとなります。

参照

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