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14-2 地域がん登録精度向上と活用に関する研究

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主任研究者 大阪府立成人病センター

津 熊 秀 明

研究成果の要旨 1)一定の精度基準を満たす6登録の資料に基づき、1997-99 年診断患者の 5 年相対生存率の全国値を 推計した。全がんで 54.3%、部位別では甲状腺の 92.4%から膵臓の 6.7%に分布した。1993-96 年 値と比較すると、全がん(53.2→54.3)、食道(26.9→31.6)、肝臓(21.2→23.1)、肺(22.5→25.6)、 および前立腺(66.8→75.5)において有意に上昇した。これら5部位では「限局」割合が増加し、 また、進行度別生存率も「限局」と「領域」で改善していた。欧米と比較すると、わが国の生存率 は、食道、胃、肝臓、喉頭、肺で高く、前立腺、精巣、リンパ腫、白血病で低い傾向を認めた。2) Relative survival model を用いて、子宮頚がん患者の5年相対生存率に及ぼす診断時年齢と進行度の寄与度 を解析した。また、生存率の府県格差の分析に応用し、有用な知見を得た。3) 全死亡票との照合に より登録患者の死亡を毎年把握している地域がん登録データを用いて、従来法の Cohort analysis (5年以上過去の症例を対象)や Complete analysis(過去に罹患した症例の重みが大)に比べ、最 近の医療の進歩が反映される Period analysis では、生存率が高くなることを示した。4)浮遊粒子 状物質(SPM)と肺がん罹患率との関連、及び、超低周波電磁波の発生源となる送電線からの距離と リンパ腫との関連を分析し、一定の知見を得た。 研究者名および所属施設 研究者名 所属施設および職名 津熊秀明 大阪府立成人病センター調査部 部長 渋谷大助 宮城県対がん協会がん検診センター 所長 松田 徹 山形がん・生活習慣病センターがん対策部 部長 小越和栄 県立がんセンター新潟病院がん登録室 参与 三上春夫 千葉県がんセンター研究局疫学研究部 部長 味木和喜子 国立がんセンターがん対策情報センター 室長 岡本直幸 神奈川県立がんセンター臨床研究所 部門長 藤田 学 社会保険勝山病院 副院長 田島和雄*1 愛知県がんセンター研究所 所長 川瀬孝和*2 愛知県がんセンター研究所 岸本拓治 鳥取県健康対策協議会 委員長 西 信雄 放射線影響研究所広島腫瘍組織登録 室長 早田 みどり 放射線影響研究所長崎疫学部 副部長 分担研究課題 地域がん登録精度向上と活用に関する研究 宮城県のがん登録の精度向上と活用に関する研究 山形県の主ながんの出生コホート効果 がん登録によるがんの地域特異性に関する研究 地域がん登録の精度向上と利用に関する研究 厚生行政推進に資する地域がん登録情報の利用に関する研究 地域がん登録の有効活用に関する研究 福井県がん登録の精度向上と利用法に関する研究 愛知県地域がん登録の精度向上と活用に関する研究 愛知県地域がん登録の精度向上と活用に関する研究 鳥取県がん登録の精度向上と疫学的利用に関する研究 がんの罹患率・死亡率の地域間格差に関する研究 長崎県がん登録の精度向上と活用に関する研究 *1 平成 19 年 4 月 1 日-平成 19 年 9 月 30 日 *2 平成 19 年 10 月 1 日-平成 20 年 3 月 31 日

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研究報告 1研究目的 がんの制圧を効果的に実施するには、信頼度の高いが ん統計(罹患率、受療状況、生存率、有病数、死亡率な ど)を整備し、これに基づいたがん対策を展開する必要 があるが、わが国ではその基盤となる地域がん登録が、 欧米先進国と比べ貧弱である。登録精度の向上について は、第 3 次対がん総合戦略研究事業「がん罹患・死亡動 向の実態把握の研究」班の中心課題に位置づけられたの で、本研究班では、既に一定水準の登録精度を達成し、 かつ一定水準の精度で予後調査を実現している地域がん 登録に参加を求めて、生 存率の全国値推計を行い、 地域格差の有無とその要 因分析、欧米諸国と比較 を継続する。さらに、地 域がん登録資料を活用し て、地域におけるがん対 策・がん医療を評価する と と も に、コ ホ ー ト研 究・環境発がんモニタリ ング等の研究を継続、発 展させる。これら成果を 広く示し、本邦における がんの予防、医療、行政 の各分野に役立てること が本研究班の目的である。 2 研究方法 (1) 1993-1999 年診断 患者の 5 年後の予後付個 別データを協同調査事務 局(国立がんセンター 地 域がん登録室)に集め、 生存率の全国値を算出す るとともに、年次推移、 地域格差とその要因、欧 米諸国との比較・検討を 行う。5 年相対生存率の 集計対象・算定方法は、 地域がん登録に基づく生 存率国際共同研究である EUROCARE study に準拠し

た。(2) 新しい解析手法である Relative survival model を用いて、罹患時年齢によるがん過剰死亡の影響、さら には、生存率の地域格差の有無と要因を分析する。(3) 最 新のがん医療の成果が反映されるよう、生存率計測に Period analysis を導入し、従来法と比較する。 (4) 地 理情報システムを用いて、浮遊粒子状物質(SPM)と肺が ん罹患率との関連、及び、超低周波電磁波の発生源とな る送電線からの距離とリンパ腫との関連を分析する。 以下の 4 名が協力研究者として参加した。井岡亜希子、 伊藤ゆり、野村悦子(大阪府立成人病センター)、大野ゆ う子(大阪大学大学院医学系研究科)。 表1.地域がん登録による5年生存率の日米欧比較 部位 米国SEER EUROCARE4 1996-2003 1995-99 全年齢 年齢調整 全年齢 年齢調整 全部位 49.8 49.0 54.3 53.3 64.9 51.9 口腔・咽頭 49.8 48.5 52.9 51.6 59.1 - 食道 29.3 28.2 31.6 30.6 15.6 12.3 胃 58.2 57.6 62.1 61.4 24.3 24.1 結腸 64.8 64.7 68.9 68.7 63.5 53.9 直腸および肛門 62.4 61.8 65.2 64.7 65.0 53.5 肝および肝内胆管 19.7 18.8 23.1 22.0 10.8 8.6 胆のうおよび肝外胆管 17.3 19.5 20.2 22.1 15.1胆のう 14.1 18.6肝外胆管 膵臓 5.6 6.2 6.7 7.2 5.0 5.5 喉頭 73.8 72.6 76.1 75.2 62.9 63.1 気管、気管支および肺 22.4 22.9 25.6 25.8 15.0 12.6 乳房(女) 84.2 84.3 85.5 86.1 88.6 81.1 子宮頸 68.5 67.9 71.5 70.6 71.6 66.5 子宮体 74.3 66.7 76.8 69.9 83.9 78.3 卵巣 46.3 36.2 52.0 41.3 44.9 41.6 前立腺 71.5 66.0 75.5 69.7 98.1 77.0 精巣 89.8 84.4 92.0 88.4 98.4 93.8 膀胱 72.5 74.1 76.5 77.5 79.5 65.8 甲状腺 90.9 89.8 92.4 91.2 93.9 86.5 リンパ腫 45.3 41.4 49.9 45.6 66.8 - 多発性骨髄腫 24.7 26.5 29.8 30.7 33.7 34.4 白血病 29.0 18.0 32.9 20.6 49.6 - 口唇 78.4 71.6 82.0 73.7 89.9 93.1 舌 61.5 58.6 64.7 61.9 56.9 45.4 口腔 54.7 54.6 57.1 56.8 51.8口腔底 48.5 59.1その他の 口腔 大唾液腺 57.5 53.8 59.3 55.5 74.3 64.6 中咽頭 37.9 36.4 41.2 39.4 61.0扁桃 48.2 36.9中咽頭 鼻咽頭 43.9 45.8 46.4 47.8 58.5 50.2 下咽頭 28.0 28.8 31.1 31.9 29.6 25.5 ホジキン病 65.7 70.8 68.3 71.8 84.9 83.0 非ホジキンリンパ腫 44.5 41.3 49.1 45.5 63.4 54.6 急性リンパ性白血病 45.9 23.9 50.0 25.3 64.0 30.0 急性骨髄性白血病 23.2 15.0 26.6 17.1 21.2 19.0 慢性骨髄性白血病 38.8 29.6 44.0 32.5 47.5 39.5 解 析対象1:DCO、先行がんあり 、上皮内 がん、および年齢不詳 および100歳以上 を除外 、大腸の 粘膜がん含まない 解 析対象2:解析対象1 から補充 届出患 者(がん 死亡からの確認調査で 登録され た患者 )を除外

SEER: SEER Cancer Statistics Review, 1975-2004, All Races

http://seer.cancer.gov/csr/1975_2004/results_single/sect_01_table.04_2pgs.pdf EUROCARE4: Lancet Oncol 2007:8:773-783

解析対象1 解析対象2

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3 研究成果 (1) 生存率協同調査: 10 登録 が 1993-1999 年診断患者の 5 年後 の予後付個別データを提出した。 この内、登録精度が一定水準を満 たし、信頼できる予後把握の精度 を達成した 6 登録(宮城、山形、 新潟、福井、大阪、長崎)の 49.2 万件のデータに基づき、全国値を算出した。 表2. 子宮頸がんの5年生存率-診断時年齢の影響、相対生存率モデルによる解析-

RER 95% CI RER 95% CI RER 95% CI RER 95% CI Age

30-54 years old 1.00 (ref) 1.00 (ref) 1.00 (ref) 1.00 (ref) 55-64 years old 1.58 1.43-1.74 1.57 1.42-1.73 1.15 1.05-1.28 1.03 0.93-1.14 65+ years old 2.51 2.30-2.73 2.49 2.28-2.72 1.65 1.50-1.81 1.24 1.13-1.37 (1/df) Deviance ‡ 4.06 1.88 1.81 1.48

Model 1:無調整、Model 2:診断年調整、Model 3:+進行度調整、Model 4:+治療法調整 Model 1 Model 2 Model 3 Model 4

1993-96 年診断患者と 1997-99 年診断患者の5年相対 生存率の推移を部位別に比較した。全部位では、1993-96 年診断例が 53%に対し、1997-99 年診断例では 54%で 1 ポ イント有意に向上した。前立腺、食道、肺、肝でも有意 向上した。生存率改善の要因は、診断時のがんの拡がり が限局の割合が増加するとともに、食道、肝、肺では限 局、肺、前立腺では領域の患者で、それぞれ生存率が有 意に向上した。 表 1 に、日本の 1997-99 年診断例の5年相対生存率と 欧米との比較表を提示しました。日本の成績では、集計 対象に死亡票に基づく遡り例を含む場合(解析対象 1) と除く場合(解析対象 2)を示した。前者は国際比較に、 後者は国内の地域差を分析するのに適している。また、 日本の成績には、全年齢でのそのままの生存率と年齢調 整した値とを提示した。年齢調整には、EU の生存率共同 調 査 EUROCARE-4 で 使 わ れ た International Cancer Survival Standard を用いた。相対生存率では、加齢に 伴い増大するバックグランドの死亡確率は補正されます が、高齢のがん患者では、がんによる死亡確率も一般に 低下するので、年齢構成の異なる患者集団間での生存率 比較には、罹患率や死亡率と同じく年齢調整する必要が あり、今回始めて実施した。年齢調整により日本のがん 患者の生存率は若干低下した。食道、胃、肝、喉頭、肺 では日本の生存率が高く、口腔・咽頭、子宮体、卵巣、 前立腺、精巣、リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病では低 かった。リンパ腫・白血病の各病型毎に比べても低値で あった。 (2) 相対生存率モデルを用いた分析 大阪府がん登録に基づき、高齢の子宮頸がん 患者で5年相対生存率が低い要因を分析した (表 2)。診断時のがんの拡がり、外科手術の有 無、発見の経緯を調整しなかった場合の子宮頸 がんによる過剰死亡リスクは、30-54 歳の患者 に比べ、65 歳以上では 2.51 倍であったが、こ れらの共変量を全て調整すると 1.24 倍と、差が縮小した。 従来の比例ハザードモデルでは、年齢によるバックグラ ウンドの死亡確率の違いを排除できなかったので、年齢 による死亡リスク比では両者が混在していたが、このモ デルを使うことで、高齢者における子宮頸がんの予後不 良因子が、先の3変数を考慮してもなお若干残り、高齢 者では同じ治療でも制約が出てくる為と推測した。 同じく相対生存率モデルを用いて、6府県での生存率 差を吟味し、大阪府の胃、肺、乳房の各がん患者の過剰 死亡リスクの要因とその影響の大きさを数量化した。 (3) Period analysis の導入の結果 図 1 に、集計対象を 5 年プールして 5 年生存率を算出 することを想定して、Period analysis と従来法の違い を示した。従来の cohort analysis では、1991 年から 1995 年診断までのケースについて診断から 5 年目で予後調査 を実施し、青のひし形で示す領域のデータを使って 5 年 生存率を計算する。一方、Period 法では、1991 年から 2000 年診断例のデータを使うが、赤のひし形の領域のデ ータを使って 5 年生存率を計算する。診断時期の異なる 全症例の予後調査を毎年積み上げていく必要があるが、 period 法では最新の医療が反映される結果となる。 complete analysis では緑の破線で囲む領域データを用 いて計算する。 試みに長崎県がん登録のデータを用いて計算した女性 肺がんの 5 年生存率は、cohort 法では 24.9%であったが、 period 法では 30.1%であった。 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 1991 0/1 1/2 2/3 3/4 4/5 5/6 6/7 7/8 8/9 9/10 1992 0/1 1/2 2/3 3/4 4/5 5/6 6/7 7/8 8/9 1993 0/1 1/2 2/3 3/4 4/5 5/6 6/7 7/8 1994 0/1 1/2 2/3 3/4 4/5 5/6 6/7 1995 0/1 1/2 2/3 3/4 4/5 5/6 1996 0/1 1/2 2/3 3/4 4/5 1997 0/1 1/2 2/3 3/4 1998 0/1 1/2 2/3 1999 0/1 1/2 2000 0/1 図1.5年生存率の算出、集計対象を5年間poolする場合、3つの方法 予後調査年 診 断 年

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(4) 地理情報システムを用いた環境発がんモニタリング 三上らは、地理情報システムを用いて浮遊粒子状物質 (SPM)と肺がん罹患との関連、及び、超低周波電磁波の 発生源となる送電線からの距離とリンパ腫との関連を分 析した。前者については、千葉県内一市の SPM 濃度分布 (大気汚染常時測定局の 2000 年度報告書より)と 1975 ‐2001 年肺がん罹患との関連を分析し、SPM 濃度の階級 毎に抽出された肺がん罹患の実測数(O)と期待罹患数(E)、 及び両者の比(O/E)を算出した。低濃度及び中濃度関心領 域の O/E 比は 1.0 前後であったが、高濃度関心領域では 男性 1.33、女性 1.54 と肺がん罹患リスクが高い傾向が あり、統計学的にも有意であった。後者については、送 電線からの各距離圏の E を、500m圏の罹患率から計算し、 さらに人口密度の補正を行った上で、O/E を求めた。そ の結果、25m 圏で O/E 比は 2.67、50m圏 1.55、150m圏 1.02 と、送電線 25m圏で統計学的に有意なリンパ腫罹患 リスクを認めた。なお、白血病では関連が見られなかっ た。これらから俄かに超低周波電磁場とリンパ腫発生を 結びつけるのは早計であるが、今後さらに広域での調査 と、分析方法の妥当性の検討が必要と考えた。 (5) その他の個別研究 渋谷・西野は、宮城県の政令指定都市・仙台市では、 県内他地域と比較して、結腸、直腸、乳腺、前立腺等の がん年齢調整罹患率が高いことから、その要因を宮城地 域のコホート研究のデータを用いて分析した。しかし本 コホートで収集した既知要因だけでは地域差を十分説明 できず、さらに検討が必要と判断した。 松田・柴田らは、山形県がん対策推進計画で 2008 年か らの 10 年以内に 75 歳以下の年齢調整死亡率 20%減少が 目標の一つになることから、2018 年に 75 歳に達する 1940 年生まれ以降の主要部位別がん罹患と死亡について、年 齢・出生年代別解析を行なった。男女の結腸、女性の肺、 乳腺において罹患率が急増しているのに、死亡率の減少 傾向が明らかでなく、10 年後の死亡率減少のためには、 大腸、肺、乳がんの二次予防と標準的治療普及が効率的 と結論した。 小越は、新潟市の胃がん内視鏡検診受診者(8,118 名) と直接 X 線検診受診者(20,058 名)、及びそれ以外の非 受診者の 3 群について、その後 3 年間の胃・食道がん罹 患と死亡を把握し、検診の精度と有効性について予備評 価を行なった。その結果、発見率や偽陰性率で内視鏡検 診が直接 X 線検診より優れ、胃がん年齢調整死亡率では 両群間に差がなかったが、検診非受診群とは大差が見ら れた。観察期間を延長するなどして、内視鏡検診の評価 を継続する。 岡本は、メッシュ法を用いてがん罹患率と経済格差と の関連性を分析した。神奈川県の1Km メッシュ別年齢階 級別人口と罹患数より年齢調整罹患率を算出し、年収別 世帯数推計値との関連性を解析した。全がん罹患におい て年収が 700 万円以下で正の相関、700 万以上で負の相 関、ジニ係数と正の相関が示され、年収の低いメッシュ 地域とジニ係数の高いメッシュ地域に全がん罹患率が高 い結果が得られた。これより経済格差ががん罹患の差に 繋がることが示唆されたが、部位別解析では逆の関係も みられ、今後さらに解析を進める。 藤田・服部らは、福井県の4二次医療圏毎に全部位を 含む 14 部位別に 5 年相対生存率を診断年により 3 期にわ け算出し、動向を分析した。生存率は、丹南地域を除い て改善傾向にあった。丹南地域で改善傾向が見られなか ったのは、個人情報保護の観点から生存確認調査を拒否 した市が存在した為と推測された。部位別には胃、直腸、 肺の生存率は改善していたが、子宮では悪化していた。 結腸では中期に改善したが、後期に横ばいとなった。今 後進展度を考慮して地域差の要因を分析する。 川瀬は、愛知県がん登録で集積しているがん罹患者の 生活習慣のデータを用いて、飲酒ががん患者の予後に及 ぼす影響を分析した。その結果、性・年齢・進行度・喫 煙状況を調整した飲酒者の非飲酒者に対するハザード比 が低い傾向を認めた。この傾向は、性、年齢、進展度に よる層別化解析でも一貫して認められ、飲酒が予後に良 好な影響を与える可能性が示唆された。今後がん腫によ る差異等も検討する。 岸本・岡本(幹)は、鳥取県がん登録資料を用いて、 単発がん患者と多重がん患者の生命予後を、第1がん罹 患日を起点として比較した。その結果、単発がん患者に 比べ多重がん患者(全部位)の実測生存率が 10 年目まで は高い傾向を示した。多重がん患者では、第 2 がん以降 が発生するまで生存していることが前提となるので、今 後、第 2 がんを起点とした生存率とあわせて評価する。 西らは、地域レベルの社会経済状態に関する標準的な 指標を開発するため、メッシュ統計を用いて社会経済指 標の相関を検討した。今後、地域メッシュ単位で社会経 済状態を反映する日本独自の指数を作成するとともに、 地域類型化も行い、がんの死亡率や罹患率の関連を部位 毎に検討する。 早田は、長崎市がん登録データに基づき、1973 年から 2003 年までの子宮頚部浸潤がん、上皮内がん、高度異型

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の罹患動向を分析した。その結果、高度異型を含む全体 の罹患数は 90 年代以降増加したが、増加に貢献していた のは高度異型のみで、浸潤がん、上皮内がんは減少傾向 にあった。検診発見割合を含め、年齢階級別に分析した 結果、がん検診の普及により、上皮内がん或は高度異型 の段階で診断される症例が多くなり、浸潤がんの増加に 歯止めがかかっている状況が明らかとなった。しかし 25 -34 歳では近年浸潤がんの増加傾向が認められ、若年者 に的を絞った対策の必要性が示唆された。 4 倫理面への配慮 各登録では、国際がん登録協議会 IACR の新ガイドライ ンに沿って地域がん登録全国協議会が 2005 年 9 月に策定 した「地域がん登録における機密保持に関するガイドラ イン」に従い、個人情報の保護に努めた。各個研究におい ては「疫学研究に関する個人情報ガイドライン」等に沿っ て必要な倫理手続きのもと適正に実施した。 研究成果の刊行発表 外国語論文

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