基本の継続を大切にして「楽農」をめざす
特集
乳牛の健康が健全な酪農経営を支える
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農
家と
森永
酪農販売を結ぶ
情報
誌
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M'S Kitchen34
編集後記31
ファーマーズ工房20
アメリカ西部地区乾牧草生産地レポート 本誌掲載の記事、写真の無断複写、複製及び転載を禁じます ◎とっても仲の良い3人兄弟!集く んはさすが長男!ジャージー牛、善 信くん、和ちゃんを引っ張っていま した。3人とも毎日牛乳を飲んで元 気いっぱいです! 熊本県・黒木牧場黒木 集
くん(10歳)善信
くん(7歳)和
ちゃん(5歳)27
森永酪農販売配合飼料広告33
『モリちゃん』
を振り返る
創刊60周年企画32
ビタミン・ミネラル剤広告森永VMシリーズ2
新春対談基本の継続を大切にして
「楽農」をめざす
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特集乳牛の健康が
健全な酪農経営を支える
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森永わくわくミルク
モリちゃんの商品紹介 お餅とかぶとベーコンのクリープ雑煮 「森永デーリィシリーズ」使用牧場を訪ねて乳牛の健康を
実感しています。
PART4 「森永デーリィ17」で乳量も乳質も安定 飼料給与に工夫を重ねる 熊本県◎山内秀一牧場 徹底した飼養管理と手づくりカルテで健康維持 滋賀県◎中谷成一牧場 Ⅰ「疾病を減らした長命連産の経営で利益が出る」 Ⅱ(財)森永酪農振興協会経営発表大会データの考証 Ⅲ寄稿「今後の酪農経営の方向」16
牧場レポート しゅう よし のぶ なごみ 新年明けましておめでとうございます。 旧年中、弊社にお寄せいただきましたご厚情に対し心 より御礼申し上げますとともに、本年も倍旧のご高配とお引き立てを賜りますよう お願い申し上げます。 昨年は、4月の宮崎県における口蹄疫の発生に心を痛め、夏には異常な猛暑に 見舞われ、熱中症による廃用牛の増加や生乳生産量の低下など、厳しい経営を 余儀なくされる一年となりました。更には、TPP(環太平洋戦略経済パートナー シップ協定)やFTA(自由貿易協定)等々、貿易自由化問題が、にわかに大き な荒波となって押し寄せてきました。この荒波は、日本全体の命運をも決めか ねない大きな荒波とも言われ、この舵取りは非常に難しく容易に解決できる問題 ではないと思いますが、どのような状況になっても、食料自給率や環境保全の 面からも、我が国農業が生き残っていく活路を見出し、何としても守っていかね ばならないものと考えます。厳しい時代が続き、決して容易なことではありませ んが、お互い、常に前向きな気持ちと姿勢で、この難局を乗り切って行きたい ものです。 弊社は、酪農家の皆様と正に「車の両輪」の関係にある会社であり、酪農なく しては弊社もありません。微力でありますが、少しでも皆様のお役に立てる会社 であるよう、社員一同、誠心誠意努力してまいりますので、引き続き、変わらぬ ご指導ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。新年のご挨拶
2011年1月1日 代表取締役社長 秋田英克 F a r m e r ' s E y e 冬 vo l .3 0 0 2 0 1 1秋田 乳質改善共励会での数々の受 賞、誠におめでとうございます。ま ずは、佐々木さんの乳質改善に取り 組まれる姿勢とご努力に心から敬意 を表したいと思います。本日は、よ ろしくお願いいたします。 佐々木氏 こちらこそ、よろしくお 願いします。 秋田 最初に、佐々木さんの酪農経 営の概要と、酪農に対する考え方な どについておうかがいします。 佐々木氏 我が家の酪農は、昭和 30年に父親(菊美さん)が1頭の 乳牛を導入したことが始まりです が、しばらくの間は、畑作中心の複 合経営でした。昭和 44 年に、私が 就農したのをきっかけに、畜舎を新 築して、乳牛18頭で本格的に酪農 に取り組み、その後、徐々に増頭を 図り、昭和60年には現在の規模の 酪農専業経営となりました。 酪農に対する考え方と言っても、 特にこれといってはありませんが、 自分ができること、やれることは何 でもすぐやる、そしてそれを継続す ることが大切であり、継続すること が必ず成果を生むと考え、どのよう なことがあっても、決して下を向く ことなく、常に前向きに物事を捉え ながらこれまで進んできました。
基本の継続を大切にして
「楽農」をめざす
群馬県生乳販連主催の乳質改善共励会で3年連続して最優秀賞並びに農林水産大臣賞に輝き、 2010年度の関東生乳販連主催の第2回生乳品質改善共励会においても最優秀賞と併せて 関東農政局長賞を受賞された、群馬県沼田市で奥様と二人で酪農経営を営まれている、 弊社搾乳用配合飼料デーリィシリーズの利用者の佐々木潔さんを、弊社代表取締役社長の秋田英克が訪ね、 「高乳質・高乳量を維持されている秘訣や酪農に対する思い」についてお話をうかがった。 佐々木牧場・群馬県沼田市佐々木潔
さん 森永酪農販売株式会社・代表取締役社長秋田英克
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佐々木牧場・群馬県沼田市佐々木潔
さん 森永酪農販売株式会社・ 代表取締役社長秋田英克
改善のバロメーターを持つことで、取り組みが楽になり、好循環を生む
牛舎全景 手前のキング式牛舎 が昭和44年に建設さ れ、後ろの平屋牛舎 が増築部分 牛舎内部 対尻式、41 頭タイス トール牛舎 ◎氏名・住所 佐々木潔/群馬県沼田市利根町 ◎飼養頭数 経産牛:41頭、未経産牛:10頭、育成牛:16頭、合計:67頭 (※平成 22 年 4 月時点) ◎牛舎 対尻式つなぎ牛舎 タイストール41頭 ◎労働人員 佐々木潔さん夫婦 2名 ◎直近(平成21年7月∼平成22年8月実績)の乳量 総乳量:392,288kg、経産牛 1 頭当乳量:9,324kg ◎出荷乳量および乳質実績 CC (万/ml) 8.7 6.4 5.9 BC (万/ml) 1.0 1.0 1.0 LACT (%) 4.51 4.51 4.47 PRT (%) 3.42 3.33 3.37 SNF (%) 8.92 8.89 8.86 FAT (%) 4.06 4.00 4.09 出荷乳量 (㎏) 407,015 425,629 416,111 1∼12月 H19年次 H20年次 H21年次 農場プロフィール 農林水産大臣賞の賞状と盾、最優秀賞の賞状 盾 秋田 佐々木さんは、酪農経営にお いて、やるべきこと、出来ることを 継続して実行し、それを積み重ねる ことが重要と考えておられるという ことですね。 佐々木氏 そうです。ですから、何 も特別なことはしてなく、ただ基本 を大切にして、それを継続すること で、酪農に取り組んできました。 秋田 基本を大切に、そしてできる こと、やるべきことを継続して実行 するということは、簡単なようで、 むしろ一番難しいことだと思います が、それを実践されてきたことが、 素晴らしい乳質を維持され、多くの 表彰を受けられている秘訣の一つで もあると思います。佐々木さんにと っては当然なこととお考えかとは思 いますが、それでも、佐々木さんレ ベルの乳質を安定して維持すること は、大変なご努力をされているもの と敬服しているところです。 乳質改善に対する取り組みについ て、特に力を入れられるようになっ たきっかけか何かあったのでしょう か? 佐々木氏 乳質の中で、乳成分や細 菌数についてはそれほど問題なかっ たのですが、やはり乳房炎対策につ いて課題がありました。 体細胞数が30万を超えることは 無かったのですが、20万前後を上 下し、なかなか改善出来ないでいま した。 そんな時、海外から講師を招いた 酪農講演会があり、その講演で、乳 房炎は、ただ治療に頼るのでなく予 防することが大切であるということ を知り、そこで学んだことは、自分 でやれば出来ることであり、即日実 行することにしました。 今、振り返れば、そのことが、一 つのきっかけになったのかと思いま す。 秋田 当時、乳質で苦労されていた のは乳房炎だったのですね。 繁殖障害と乳房炎は、酪農家にと って避けては通れない問題であり、 これは経営にも大きく影響を及ぼす 問題でもあると考えています。 佐々木氏 その通りで繁殖はもちろ ん乳房炎も、患ってしまうと経営的 なデメリット部分と併せ精神的な負 担も大きくなります。その酪農講習 会を聞いてから、特に乳房炎対策に 徹底して取り組みました。 秋田 具体的には、どのような取り 組みをされたのですか。 佐々木氏 特別なことではなく全く 基本的なことですが、確実なプレデ ィッピングとポストディッピングの 実施と、前搾り時に於ける異常乳の 発見に留意することです。この前搾 り時の乳汁チェックは、そこしか異 常乳を発見する機会が無いので妥協 せずに徹底的に実施しています。そ
パイプライン 昭和63年に畜産近代 化リースで設 置され 22年間使用されてい るパイプラインミル カー、メンテナンス が行き届いています。 トンネル換気 トンネル換気設備の 換気扇 して、ミルカーのメンテナンスをし っかり実施することです。「経営に プラスになること」「出来ること・ やれること」はなんでもすぐ取り組 む。そして、それを継続していくこ とが大切だと考えています。 秋田 本当に基本に忠実にというこ とですが、正直言ってそれが一番難 しいと思います。佐々木さんのこれ だけの素晴らしい乳質の秘訣は、「基 本に忠実に、出来ること・やれるこ とを継続して行う」ということです ね。 佐々木氏 そうです、当たり前のこ とをするだけですが、特にそのこと を継続することが大事だと思いま す。そして、「良くしよう、良くし 秋田 先ほど、牛舎を見せていただ いた時、パイプラインも見せていた だきましたが、プレートに63年に 畜産近代化リースで導入されたよう に書いてありましたが、さすがにメ ンテナンスが行き届いており、綺麗 に丁寧に管理されていると感心しま した。 佐々木氏 パイプラインミルカーを 設置して約22年なりますが、基本 通りのメンテナンスを継続してしっ かり実施しているだけです。さすが に真空ポンプは一度交換しました。 秋田 佐々木さんは、高乳質に加え、 乳量も 1 頭当り9,000kg 台を維持 されていますが、飼養管理について も少しお話を聞かせて下さい。 佐々木氏 これも、何か特別なこと をしているということはありません が、無理な投資による急激な規模拡 大はしない、先ずは、乳牛を健康に 管理するということを基本にしてい る程度です。 設備は利益を生まないので、でき るだけ無理をしないで、少しずつ、 できる範囲で規模拡大するようにし てきました。増頭も導入はほとんど 行わず、自家育成により少しずつ増 やしてきました。 飼養管理は、特に乳房炎対策を徹 底してからは、乳牛を健康に管理す ることが、経営的にも精神的にも非 たい」という意識を持つことが何に も増して重要だと思っています。 乳房炎対策を徹底してから、体細 胞数は、ほぼ10万以下で安定する ようになりましたが、一度良くする と、その後の管理が非常に楽になり ます。 今は、体細胞数10万を一つの指 標としており、もし10万を上回る ことがあれば、何か問題があるとし て、乳汁チェックやミルカーチェッ ク時に更に気をつけることで、その 原因を容易に見つけ出し、すぐに改 善できるようになりました。体細胞 数20万前後の時は、その原因もい くつかあったりして、原因を見つけ 出して改善することが、あまり簡単 ではなかったのですが、10万を指 標にすることによって、本当に楽に なったような気がします。 秋田 なるほど、自分自身の改善の 指標・バロメーターをしっかり持つ ことで、改善取り組みが非常に楽に なり、良くすることが好循環を生む ということですね。 佐々木氏 そうですね。体細胞数が 改善されて10万以下で安定するよ うになってからは、精神的にも本当 に楽になりました。 食品である牛乳を生産する者とし て、消費者に安全・安心を届けると いう責任感と意識を持つことも重要 だと考えています。 常に楽になるということを感じ、乳 牛を健康に管理するということを優 先に考えています。 秋田 乳牛の健康管理という面で、 もう少し話を聞かせて下さい。 佐々木氏 飼料給与は分離給与です が、牛が気持ちよく腹いっぱい食べ てくれることを基本としています。 以前は、朝夕の搾乳前後と昼の 5 回 に分けて給与していましたが、今は 公職等で外出する機会も多く、朝夕 の搾乳前後に、少し時間を空けて4 回給与としています。 その他は、トンネル換気の導入と 飼槽に御影石を利用していることぐ らいです。
「楽農」は乳牛の健康管理が基本
ありたいとして、会社の基本理念を 「お客様とともに楽農をめざす」会 社として、社員にもその理念をいつ も持って仕事して欲しいと繰り返し ています。 佐々木氏 最終的には、「牛が健康 である」ということが、酪農家を精 神的にも楽にさせてくれると思うん ですよね。そうあることで、毎日牛 舎へ足を運びたくなるような楽しい 現場にしていきたいですね。 秋田 私も、どうすれば「楽農」に なるのかを考えて、行き着いたとこ ろが、先ずは、乳牛の健康が第一だ ということです。本日、佐々木さん のお話をおうかがいして、全く同感 で、意を強くすることが出来ました。 本当にありがとうございます。 いま、世間では、TPP(環太平 洋戦略経済パートナーシップ協定) やFTA(自由貿易協定)等の貿易 自由化に向けた動きや、COP10 (生物多様性条約国会議)のように トンネル換気の導入により、防暑 効果を感じています。さほど、牛舎 の温度は変化しないのですが、空気 の流れを作ることができ、体感温度 も多少なり違いますし、管理する側 も涼しく感じます。 また、飼槽に御影石を採用したの は、飼槽を清潔に保ち、飼料を出来 るだけ喰い込んでくれるよう意識し てのことです。いくら良い飼料設計 をしたとしても、まずそれを乳牛が 食べてくれることが前提ですから ね。 秋田 佐々木さんの経営は、お人柄 そのもののように、堅実で、基本に 忠実な経営で、それが、高乳質・高 乳量の基礎になっているということ ですが、今一度、佐々木さんにとっ ての理想とする酪農、目標とする酪 農についてお聞かせください。 佐々木氏 かねてから、安定した酪 農経営基盤を築き上げることが理想 であり、目標ですね。一番の基本は 牛の健康管理。乳牛の健康が経営的 にも、精神的にも楽で儲かる酪農だ と思います。 秋田 そうですね。まさに「楽農」 を目指していると言うことですね。 私も、森永酪農販売を5年前に創 業する時に、「楽農をサポートする」 会社でありたい、酪農が楽農となる よう、お客様のお役に立てる会社で 環境の多様性問題等の話題が賑わっ ており、また食料需給問題も取り沙 汰されています。いずれも酪農にも 関係することばかりです。世界の食 料問題からすると日本の食料自給率 問題は重要ですし、相反する関税障 壁問題も、日本経済の発展には欠か せないとも考えます。 難しい舵取りで簡単に答えは出ま せんが、ただ一つ思うのは、牛乳を 含め、国産の食料、即ち農業は、環 境保全や食料自給率の面から、何と しても守っていかなければならない ということです。そのためにも、国 産の食料は、たとえ少々高くても買 うという消費行動も望まれるところ ですが、やはり、国産は美味しい、 安全・安心だということをもっとも っと定着させる必要があり、正に 佐々木さんのような経営が求められ てくるものと思います。 最後に、佐々木さんから、全国の 酪農家の皆さんへメッセージをお願 いします。 佐々木氏 酪農家として、美味しく、 安全・安心な牛乳の生産に努力し、 胸を張って、そして声を大きくして、 消費者の皆様に「牛乳を飲んでくだ さい」と言えるよう、酪農家として のプライドを持って、全国の酪農家 の皆さんと一緒に頑張っていきたい と思います。 秋田 本日は、酪農に携わるものと して、大いに感動しながら話を聞く ことができました。 長時間、本当にありがとうござい ました。 左 か ら 古 屋 群 馬 営 業 所 長、秋田、佐々木潔さん、 奥さま
労働人数 規模 牧場成績 3人 フリーストール牛舎で分離給与 搾乳牛 : 48頭(内8頭乾乳) 育成牛 : 2頭 26kg/頭・日(8,000∼9,000kg/頭) 平均産次数4.7産 更新率5∼6%/年 1産次当たりの搾乳日数320日 平均授精回数2回 初回種付け搾乳日数45日 初産月齢24∼25か月 牧 場 D A T A 上田 乳代と個体販売の両立により、牧場経営の利益 体系に弾力性を持たせ、メリットを出せた牧場の一例で す。周産期病を始め、乳房炎や蹄病、繁殖障害による 治療を年間でトータル1∼2頭まで減少させ、産次数を 上げておられます。まず、今の経営体系にされたきっか けは何だったのでしょうか。 Hさん 生産費や個体販売などの収支バランスを様々な角 度から試算したら、搾乳牛が2∼3産で廃用になってしま う11,000kg/ 頭牛群の経営より、5産まで搾る8,500kg/ 頭牛群の経営の方が利益の出る結果となった。そしてそ れは試算だけではなく、実際両方の経営を経験して出し た結論でもあるんだ。想定通りの経営になったよ。 上田 それは生涯乳量を重視されたということですね。 Hさん そう。その為には健康に飼って疾病を少なくし たいという考えを優先させたんだ。その結果、個体販売 にも出せる牛が増えて収入が増えたしね。もちろん獣医 さんを、最近あまり呼んでないのも出た結果の一つだよ。 上田 治療経費や時間的拘束も軽減されたわけですね。 疾病の少なさには驚きですが、平均産次数の高さも牧場 成績として着目したいところです。H牧場の特長とも言え る、敷料に砂を使う事が寄与していると思うのですが。 Hさん 牛舎で地面(土)を踏ませた状態を再現させたい という理由で使っているよ。その結果、蹄病もほとんど 発生しなくなった。気をつけなければならないのは、牛 床の後肢部分に窪みが出来ると水はけが悪くなり乳房 炎に罹りやすくなることで、窪みができる前に砂を補充 することがポイント。砂を、前肢部分に補充すると、牛 が自分で後肢部に掻きだして均してくれるよ。 上田 肢体 のハイジーンスコアから見ても、カウコン フォートへの力の入れ方が伺えます。餌寄せの時間に牛 舎内へ立入っても、牛が騒がないのはもちろん、あまり 牛床から起きて飼槽に近づいてこないですね。 Hさん それは、たくさん食べてリラックスしているサインだと 判断している。この時、体毛の毛立ちでも調子を判断しているよ。
特 集
弊社は、「健康な乳牛つくり」と「健康な乳牛の飼養管理」を飼料販売の基本コンセプトとしています。 今号では、「健康な乳牛の飼養管理」に関する考え方や見方と、酪農現場のルポ記事を掲載しました。 酪農経営の方針や方向については、様々な考え方や見方がありますが、厳しい経営環境が続く中、 お客様の酪農経営の検討に少しでもご参考になれば幸いです。乳牛の健康が
健全な酪農経営を支える
Ⅰ
酪農現場ルポ 北海道/ H 牧場
「疾病を減らした
長命連産の経営で利益が出る」
別海営業所上田 英登
図 1 酪農利益の構造 上田 飼料給与面でのポイントは糖蜜散布による乾物 摂取量を上げる事ですね。 Hさん お湯で希釈した液 糖蜜を3 回 /日、飼槽のラッ プサイレージの上にかけている。 上田 食い込ませるためには労力を惜しまれていません ね。その食い込ませるチモシーのラップサイレージの作 り方、使い方のこだわりも教えて下さい。 Hさん 刈り取りのタイミングの見極めを重要視してい る。光合成による栄養価を期待して、降雨とその後の晴 天の継続日数、牧草の成長具合をみて今年も収穫した。 予乾は乾燥気味を目指しているね。あと搾乳牛と乾乳牛 には必ず1番草を給与している。 上田 産次を重ねる毎に乳汁中の体細胞数や疾病発生 率が高まるジレンマも生じると思いますが。 Hさん 確かに乳汁中の体細胞数は 20 万/ml 前後と高く なってはくるけど、想定内ではある。疾病牛は治療費と いう投資額と廃用牛にした時の売却額を比較して、淘汰 と更新の是非を決定している。その見極めの決断が容 易ではないんだよ。 上田 牧場経営に利益を生む為、健康に牛を飼う手法を選択 された例として紹介させて頂きますが、最後に一言お願いします。 Hさん 労働力と耕作面積に応じた規模の経営で問題 ないし、結局、管理する人間が動いていないとすべての 面で良くならないと思う。 昔、酪農家の方々から「繁殖障害と乳房炎が無ければ 酪農ほど儲かる農業は無い」と聞かされてきた。酪農に 携わる人達が、乳牛の健康状態が経営に大きな影響を及 ぼすと感じていても、何がどの程度影響しているかを明 確に言える人は少ないと思う。酪農経営における利益の 構造は、図1に示すとおり利益(事業利益・所得)=売上 高(乳代・個体販売等)−変動費(自給飼料・購入飼料等) 良好なハイジーンスコア 敷料に砂を利用したストールで牛もリラックス 乳価 × 乳量 個体販売 その他 飼料費等 原価償却等 売 上 高 変 動 費 固 定 費 限 界 利 益 差 引 利 益
Ⅱ
(財)森永酪農振興協会
経営発表大会データの考証
営業部 獣医師池田裕一
はじめに
表 1 発表者の経営概況 全国 19 戸 平 均 西日本 4 戸 平 均 東日本 8 戸 平 均 北海道 7 戸 平 均 項 目 75 63 63 95 0.473 0.466 0.546 0.409 3 3 3 3 398,583 315,770 376,174 471,515 8,839 7,880 9,471 8,666 3.92 3.95 3.81 4.03 8.71 8.64 8.70 8.76 17.3 17.6 18.1 16.4 2.4 4.6 3.0 0.4 2.1 2.0 2.0 2.2 13.6 13.6 13.8 13.3 33,657,494 29,620,377 34,078,085 35,483,743 396,243 314,301 374,805 467,567 85.85 93.90 90.92 75.89 64.73 67.88 74.99 51.21 21.12 26.02 15.93 24.68 2,499,329 1,470,230 1,346,487 4,447,778 33.1 32.3 40.6 25.0 13,442,249 12,147,473 11,965,006 15,870,398 37.4 39.1 33.2 41.4 188,421 147,000 205,413 192,671 飼養頭数 濃厚飼料 / 乳量 労働力(人) 生産乳量(kg) 経産牛1頭当り乳量(kg) 乳脂率(%) 無脂乳固形分率(%) 体細胞数(万個/ ml) 細菌数(万個/ ml) 平均種付回数(回) 分娩間隔(月数) 総乳代(販売分) 出荷乳量 乳代単価(円) 生乳1kg 当り生産費(円) 乳代単価 ー 生産原価 個体販売代金(円) 乳飼比(%) 酪農部門所得(円) 所得率(%) 濃厚飼料購入量(粕類・TMRを含む) 規 模 乳 量 乳 質 繁殖状況 経営分析 −固定費(償却費等)の算式になっているが、乳牛の健 康が酪農経営にどのように影響するのだろうか。 酪農経営の売上高は乳代と個体販売でほぼ 100%にな るので、牛がたくさんエサを食べて、十分に消化して、 たくさん泌乳して、たくさん子牛を産むことが目標であり、 そのために“ 乳牛が健康 ”であることが不可欠になる。 乳牛では、栄養分の使い方の優先順位が、(生命維持) >(成長)>(泌乳)>(繁殖)と言われていることから、最 終的には繁殖成績が健康状態の総合的バロメーターと考 えられる。繁殖成績の代表的な数値として把握できる分 娩間隔と耐用年数を尺度にして利益の増減を考察してみ よう。 財団法人森永酪農振興協会では、全国の優秀な酪農 家を紹介する目的で経営発表大会を開催してきた。そこ で、平成9年から13 年の家族経営発表者の経営成績を 検証して見てみよう。なお、この発表における乳牛原価 償却期間は初産分娩後6年であるが、税制が平成 20 年 度から4年に短縮されていることを了承願いたい。 表 1では、発 表 者 の 全 戸 平 均値を見ると体細胞数は17.3 万 なので乳房の健康状 態は良好 と判断でき、分娩間隔は13.6 ヵ 月なので繁殖状態も良好と判断 できる。 この健康レベルの結果として経 産牛1頭当たり乳量が 8,839kg になっている。 乳価と飼料単価は現在と異なる にしても所得は1千万円以上で 立派な経営と言える。 分娩間隔 13.6 ヵ月の中身につ いて見てみよう。 例えば、分娩間隔は初産分娩 がカウントされないので、初産 牛の除籍・廃用が多くても分娩 間隔が 13.6 ヵ月になる可能性が ある。 そこで経産牛の産次別頭数を見 ることで信憑性を確認してみよ う。 産次別頭数の増減は規模拡大による増頭や生産調整の 影響を受けることも想定しなければならないが、表2で 初産頭数と2産頭数に大きな差が無い事から初産での除 籍・廃用が少ないことが判断できる。 地域別に注目すると、北海道では初産・2産・5産の淘 汰率が高く、西日本では3産以降の淘汰率が高くなって おり暑熱の影響も想定される。 全体としては2産以上の淘汰率が高くなっているので繁殖 障害や乳房炎の影響が考えられる。 次に全国規模の乳検データと発表者の産次別構成比を 比較して見よう。表 3 から乳検データの全国初産牛割合 が 30.9%に対して発表者は 24.2%であり、5産では乳検 データ12.8%に対して発表者は 21.9%であることから、 発表者は全国平均に比べて乳牛を健康的に管理し連産性 を高めていると言える。 表 2 で発表者合計の産次別頭数を見ると2・4・5産 で除籍・廃用が多くなっているが、仮に初産から3産ま 乳牛の健康が健全な酪農経営を支える
1
過去の実績を検証する
2
連産性が高まると
後継牛への投資が少なくなる
で除籍・廃用が無い場合の産次別頭数モデル(表 4)と 比較してみよう。 経産牛頭数が同じ 45 頭として、モデルでは初産が2頭少 なくなっている。 「……たら」「……れば」との批判を覚悟で単純に言えば、 北海道では毎年初妊牛2頭の販売(45万×2頭=90万円) が可能になり、府県では毎年初妊牛2頭の導入(50万円 ×2頭=100万円)が節約できる事になる。 つまり、後継牛への投資が少なくなると言うことであり、 90 万円と100 万円の平均 95 万円を発表者平均生産乳量 398.5トンで割ると2.38 円/kgになり、1kg当たり生乳 生産費を2.38 円低減出来る事になる。 表 5は 2007年 9月の乳検資料から分娩経過月数ごとの 1日乳量を初産牛と経産牛に分けて北海道と都府県と全 国に集計したものである。 表下段の発表者推定値は乳検データを基にして月別に乳 量を比例配分したものであり、牛群構成を初産 25%・経 産牛75%とした牛群乳量を示した。 北海道 7 戸 合計 19 戸 西日本 4 戸 東日本 8 戸 頭数 淘汰率(%) 頭数 淘汰率(%) 頭数 淘汰率(%) 頭数 1戸平均 淘汰率(%) 94 16.0 73 ー 6.8 40 2.5 207 10.9 5.5 79 27.8 78 34.6 39 2.6 196 10.3 25.2 57 3.5 51 7.8 38 52.6 146 7.7 18.2 55 7.3 47 27.7 18 38.9 120 6.3 19.0 51 68.6 34 32.4 11 36.4 96 5.1 52.9 16 ー 50.0 23 34.8 7 14.3 46 2.4 0.0 24 15 6 45 2.4 376 321 159 856 45.1 70 58 34 162 18.6 18.1 21.4 18.9 初 産 2 産 3 産 4 産 5 産 6 産 7産以上 合 計 淘汰頭数 平均淘汰率 表 2 発表者の産次構成 北海道 発表者 推測値 全 国 都府県 初産 経産 初産 経産 初産 経産 初産 経産 初産 25%・経産 75% 27.6 36.0 27.4 35.0 27.5 35.8 25.1 32.6 30.7 30.1 38.8 30.6 38.5 30.3 38.7 27.6 35.3 33.4 29.5 37.2 30.5 37.5 29.9 37.3 27.2 34.0 32.3 28.4 34.7 29.8 35.3 29.0 34.9 26.4 31.8 30.5 27.4 32.5 28.8 33.1 28.0 32.7 25.5 29.8 28.7 26.6 30.5 28.7 27.0 25.0 23.1 19.7 9,996 27.9 31.0 27.0 30.7 29.1 28.9 27.2 27.0 25.2 25.1 23.3 23.2 19.3 19.6 10,035 10,017 24.6 28.0 27.1 25.7 24.2 22.7 21.2 18.1 8,839 25.7 27.0 26.3 24.0 26.3 24.8 26.1 25.4 23.1 24.6 1 月数 2 3 4 5 6 7 8 23.7 25.1 24.3 22.1 22.9 9 22.7 24.0 23.3 21.2 21.1 10 20.4 20.9 20.7 18.9 17.9 11 8,607 8,943 8,751 7,974 9,128 合 計 表 5 分娩後月数別1日乳量(2007 年 9月乳検) 発表者 乳 検 北海道 都府県 全 国 北海道 都府県 全 国 25.0 23.5 24.2 29.5 32.7 30.9 21.0 24.4 22.9 25.1 27.3 26.0 15.2 18.5 17.1 19.0 18.9 18.9 14.6 13.5 14.0 11.9 10.7 11.4 24.2 20.0 21.9 14.4 10.3 12.8 100.0 99.9 100.1 99.9 99.9 100.0 2.8 2.6 2.5 2.9 2.9 2.4 初 産 2 産 3 産 4 産 5 産 合 計 平均淘汰率 表 3 発表者と乳検データの産次別構成比(%) 発表者 19 戸 頭数 1戸平均 モデル頭数 207 10.9 8 196 10.3 8 146 7.7 8 120 6.3 7 96 5.1 6 初 産 2 産 3 産 4 産 5 産 46 2.4 5 6 産 45 2.4 3 7産以上 856 45.1 45 合 計 表 4 産次構成モデル
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1日1頭当たり乳量が変る
分娩間隔の違いで
これを基にして分娩間隔が1ヵ月延長した場合と、1ヵ月 短縮した場合の1日当たり乳量を試算したものが表 6 であ る。 初産牛25%・経産牛75%の牛群の仮説条件ではあるが、 平均分娩間隔が1ヵ月延長すると1日1頭当たり1.0kgの 減少になり、乳価 90 円で計算すると1年間で1kg×90 円 ×365日×45 頭=1,478,250 円の減収になる。これは1k g当たり生産費に換算すると約 3.6 円の経費増加に相当す る。 逆に1ヵ月短縮すると1日1頭当たり0.8kgの増加にな り、乳価 90 円で計算すると1年間で 0.8kg×90 円×365 日×45 頭=1,182,600 円の増収になる。これは1kg当た り生産費に換算すると約 3.2 円の経費低減に相当する。 経産牛 45 頭・初産牛率約 25%の牛群において分娩間 隔が 14 ヵ月から13 ヵ月に短縮されたとすると、1年間の 産子数は約3頭増える計算(45×12/13−45×12/14=約 3) になり、個体販売頭数が増えるだけでなく、遺伝改良の スピードアップにも繋がり将来の利益を増やすことに繋が る。 表 7は 2008 年の年型別乳量乳検データであるが、2 年型(初産)の乳量を下回るのは8年型だけなので出来る 限り長命連産にする事が経営に有利なことが分かる。 ここでは不幸にして初産で廃用になると、どれだけの 損害になるか試算してみよう。 初妊牛 50万円、乳価を 90 円、乳飼比 40%、で試算する と初産で終わってしまうと48,000 円の赤字になる。 しかし、実際には人件費や施設・機械の償却費を加えた 金額が赤字になる。 更に、この牛がもしも7産目まで飼育できたならば、2 産から7産までの利益 300万円(50万円×6産)が見込ま れるので、長期的に見れば大変な損害になる。初産・2 産を無事に管理する為には育成も大事である。 酪農経営の大きな損失に乳房炎がある。 乳房炎による廃棄乳は直接目に触れるので誰でも分かる 表 6 分娩間隔の短縮と延長の影響(経産牛 8797kg、分娩間隔 13ヵ月モデル) 発表者 推測値 初産 経産 初産 25%・経産 75% 24.9 32.5 30.6 27.5 35.1 33.2 27.1 33.8 32.2 26.3 31.6 30.3 25.4 29.7 28.6 24.5 27.8 26.2 24.5 22.8 21.0 27.0 23.8 25.6 23.0 24.1 22.0 22.6 21.1 21.1 17.8 18.8 18.0 14.6 16.5 15.1 26.4 23.5 25.7 9,521 8,466 9,257 1 月数 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 合 計 1日乳量 発表者 推測値 初産 経産 初産 25%・経産 75% 25.1 32.5 30.6 27.6 35.1 33.2 27.2 33.8 32.2 26.4 31.6 30.3 25.5 29.7 28.6 24.6 27.8 26.2 24.5 22.8 21.0 27.0 24.0 25.7 23.1 24.1 22.1 22.6 21.2 21.1 17.8 18.9 18.1 27.5 24.2 26.7 9,083 7,971 8,805 発表者 推測値 初産 経産 初産 25%・経産 75% 24.9 32.5 30.6 27.5 35.1 33.2 27.1 33.8 32.3 26.3 31.6 30.3 25.4 29.7 28.6 24.5 27.8 26.2 24.5 22.8 21.0 27.0 23.8 25.6 23.0 24.1 22.0 22.6 21.1 21.1 19.7 24.7 27.5 8,550 7,404 8,262 30日延長 基本形 30日短縮 2 年型 3 年型 4 年型 5 年型 6 年型 7 年型 8,255 9,454 9,781 9,772 9,561 9,315 8,564 9,636 9,923 9,916 9,795 9,609 8,369 9,522 9,831 9,820 9,638 9,404 8 年型 8,818 9,232 8,927 2 ∼ 8 年平均 9,450 9,685 9,524 北海道 都府県 全国 表 7 年型別検定成績の平均乳量 13万以下 14∼28 29∼57 58∼133 134∼226 0 5 7 10 12 0 135 万円 189 万円 270 万円 324 万円 0 4.5 円 6.3 円 9.0 円 10.8 円 推定 損失率 (%) 1kg 当り の 生産費増 バルク乳体 細胞数 (万 /ml) 乳代損失額の 試算 (年間 300トン ・乳価 90 円) 表 9 バルク乳体細胞数と推定乳量損失 a 乳量 b 乳価 c 乳代(a×b) d 乳飼比 e 飼料代(b×d) f 初任牛金額 g 差引金額(c-e-f) 注 1)初産牛乳量は乳検データ2 年型、経産牛は3 ∼ 8 年型平均。 注 2)経産牛は4 年の原価償却期間を過ぎたもの。 8,369 90 753,210 40% 301,284 500,000 ー 48,074 9,524 90 857,160 40% 342,864 0 514,296 初産牛 経産牛 表 8 初産の損害 乳牛の健康が健全な酪農経営を支える
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初産でつぶすと被害甚大
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乳房炎の損害
損害だが、潜在性乳房炎による損害の大きさに注意しな ければならない。 バルク乳の体細胞数と推定損失乳量から乳価 90 円で損 失金額を計算すると表 9になる。 体細胞数 30万以上はペナルティーが科せられるだけでは 済まされない大きな損失が潜んでいる。
図 2 のAとBは 家 畜 改 良 事 業 団のLIJA News No116 に掲載している乳量の季節変化を北海道と都府県で比較 したものである。 これによると北海道は夏至から冬至まで直線的に減少し ているが、都府県は 8月を最小にV字型に減少している。 仮に北海道と同じように直線的減少と比較すると6月から 12月まで毎日1kg以上の損失になる。 但し、北海道と西南暖地を同じ土俵で暑熱対策の評価 はできないので、乳検の検定成績表には、北海道の2 産、 4∼ 6月分娩、搾乳日数 120日を基準にして補正した標 準乳量が示されており、標準乳量が大きく変化しなけれ ば地域にあった暑熱対策がなされていると評価している。 暑熱対策を含めたカウコンフォートを高めることが、乳 牛の健康を維持するための大きな要素であり、酪農業で のエコロジーとエコノミーの両立になると考える。 26.0 26.5 27.0 27.5 28.0 28.5 29.0 29.5 30.0(kg) 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 夏 至 至冬 春分娩頭数が多い ことや日長時間等に よる乳量の減少 : 平成 17 年 : 平成 18 年 : 平成 19 年 26.0 26.5 27.0 27.5 28.0 28.5 29.0 29.5 30.0(kg) 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 夏 至 至冬 : 平成 17 年 : 平成 18 年 : 平成 19 年 夏 期 の 暑 熱による 乳量の減少 図 2-A 北海道における乳量の季節変化 乳用牛群能力検定成績のまとめ − 平成 19 年度 − 図 2-B 都府県における乳量の季節変化 乳用牛群能力検定成績のまとめ − 平成 19 年度 −
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暑熱によるダメージ
終わりに
「厳しい環境下での酪農経営の方向」を、本誌 に書いたのは平成 19 年7月であり、すでに3年 以上が経過した。「厳しい環境が出現する」という内容に 反響が多く、各地から講演の依頼があり、多くの酪農家 の皆さんと意見交換できた。実際には、翌年の平成 20 年後半に生産資材が高騰し、最も厳しい環境が出現した。 その対策として重点を置いたのは、「健康な乳牛が健 康な経営を作る」という提案である。 ここで触れたいのは、酪農の置かれた環境のことでは なく、その環境の中に置かれた酪農経営の方向の検討で ある。「厳しい環境」とは、基本的には今も変わっていな いと認識している。 酪農経営を考える場合、生産技術の優劣を論じること ではない。にもかかわらず、これまで多く見られる酪農 の改善提案は、個別の生産指標を、指導者という立場の 人たちが高い場所から評点を与えた結果を経営方針とし て唱える傾向がある。「酪農経営の間違い」などと題する 論評はその典型である。酪農経営者は、生産指標の全 てを改善するわけではない。経営の改善に効果の大きい 生産指標を選択しなければならない。経営に影響の少な い指標の改善は意味がないばかりか、そこに生産資産を 投じることは、経営の判断を誤ることになる。 実際の酪農経営では、何を優先順位として選択するか という判断が、その経営の結果に現れる。酪農生産指 標を用いた経営モデルを作り、その効果を測定してみた ので、経営判断の素材として、参考にしていただきたい。 私は、「経済環境を見極めた生産の合理性」が、酪農 の経営方針にあると考えている。また、個々の現実の経 営で行われている、他から見れば不合理なことでも、過 去に必ず何らかの経験の結果が根拠にある。それだけ に、経営の方向を修正することは難しいことであることも 理解しているつもりである。 過去 20 年の酪農経営の方向は、個体乳量の 上昇を唯一の目標としてきたように見える。その 結果、確かに産乳量は伸びたが、周産期事故の増加と 乳牛の短命化が進行してきた。更に、穀物飼料の給与量 の増加は、コストの上昇を伴い、穀物相場に大きく左右 される経営となってきた。これらの要因は計数化が難し いために、「間違いだらけ」と定性的に指摘されると、そ れを検証できない。ここでは、計数化できる要因だけを 選んで検討することをお断りしておく。 このためのいくつかの前提条件から述べる。農林水産 省大臣官房統計部では平成 20 年度の牛乳生産費を平成 21年12月に公表している。これが最新のものであるが、 生産コストは、81.91円になっている。調査は、平成 20 年4月から平成 21年3月までの1年間の 496 経営体の集 計であるとしている。平均搾乳牛頭数は45.3 頭である。 生産費から計算すると1頭1年間9,129kgを生産している。 売 上 高は 7,573,979 円になって いる。1頭 当たり、 167,196 円の労働費が得られることになる。法人経営でな い限り、営業利益と労働費を区別しても意味がないので、 同一のものとして扱う。 牛舎の償却費などは、稼働率や乳牛頭数によって異な る。また、乳牛償却費は償却年数によって異なるが、こ こでは 97,964 円である。そこで、変化する飼料費・乳牛 償却費・労働費などを除くと、残る生産経費は 145,689 円である。これを365日で割ると1頭当たり399円となる。 これは、生産経費が最も高い平成 20 年度の集計である。 しかし、この部分は、高騰したままであるからこれを生 産経費として用いた。そして、他の条件が変動した場合 の生産コストを試算した。 乳牛の生産に関する指標は、北海道について は北海道酪農検定協会が、府県については畜産
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乳牛の健康が健全な酪農経営を支える「今後の酪農経営の方向」
成熟した酪農経営は「産乳量を維持しながらコストの低減を図る」
極めて厳しい方向となる可能性が高い
− 経営モデルを用いたコストシミュレーションの結果 −
畜産コンサルタント瀬野豊彦
Ⅲ
寄 稿
①北海道 ②府県 ①と②の平均 428 443 436 197 217 207 153 168 161 66 63 65 94 93 94 2.4 2.5 2.5 37 42 40 2.8 2.6 2.7 3.6 3.2 3.4 25 26 26 9,063 9,249 9,831 分娩間隔 搾乳日数 空胎日数 乾乳日数 受精日数初回 受精回数 初回受精率 産次数 除籍産次数 初分娩月齢 305 日乳量年間 表 1 北海道と府県の牛群検定平均値 ①(社)北海道酪農検定協会:平成 21 年 8月∼平成 22 年 8月13か月移動平均 ②(社)家畜改良事業団:平成 21 年 7月∼平成 22 年 7月13か月移動平均 改良事業団が検定月ごとと年計の指標を公表している。 北海道酪農検定協会の集計は平成 21年8月∼ 22 年8月 の間の13 か月の移動平均値である。畜産改良事業団の 集計は平成 21年7月∼ 22 年7月の間の13 か月の移動平 均値である。 北海道と府県は、乳価を除いてあまり大きな差はない。 平均搾乳日数は、府県が 20日長く217日で、北海道が 197日である。空胎日数は府県が 15日長く、分娩間隔を 空胎日数と妊娠期間 280日で算出すると、北海道433日 と府県448日になる。平均経産牛頭数は、北海道70.5頭、 府県 41.3 頭と経営規模の差がある。乳成分の乳脂率は 北海道 4.03、府県 3.89、蛋白質率は北海道 3.28、府県 3.28、無脂固形分率は北海道8.78、府県8.73となっており、 大きな差はない。 コストシミュレーションの方法は、Woodの公 式で基準乳量 305日の産乳モデル作り、サミット 乳量日を分娩後 40日に固定した。その推定式を空胎日数 に 280日を加えたものを分娩間隔として、乾乳日数 65日 を差し引いたものを泌乳期間とした。実際には、泌乳期 間中の事故が起きると泌乳が停止するが、そのことは考 慮していない。 初産の乳量は平均乳量の 8.9% 減であり、2産は4.3% 増、3産以上は5%増であるが産次によって産乳量を変 えなかった。府県でも同じである。 乾物摂取量(DMI)は、「日本飼料標準 2006」の泌乳 安定期の2産以上のDMI 推定式を用いたので、泌乳初 期のDMI 補正係 数 で補正してある。その基 準とした DMIに 0.87 で割った量を飼料原物として求め、基準の 9,000kg のDMI で算出した原物量の 60%を配合飼料、 40%を粗飼料に分配した。配合飼料の割合は、乳量が 低い場合は減量し、乳量が多い場合は増量した。 乳量は、泌乳期間の累積を求めたあとに、年間の乳量 に換算した。また、過去は、乳牛の平均産次数が集計さ れているが、乳牛の償却コストを産出するためであるから、 除籍牛平均産次数を用いた。除籍の平均産次数は、北 海道は 3.6 産(5年 11か月)、府県は 3.2 産(5年 9 か月) である。 北海道の初産牛の生産原価を450,000 円、配 合飼料を52 円、粗飼料の平均単価を30 円と仮 定したが、個別の経営では購入粗飼料も加わることとな るため高くなる経営もある。北海道の生産原価は、69 円 /kgとなった。依然として厳しい環境にあるといえる。 一般に言われていることと異なり、分娩間隔の短縮は コストの低減に比較的影響が少ないという試算となった。 実際には、分娩間隔が短縮すれば産次数が増えることと なり、高泌乳期のコストが低減するが、試算では分娩間 隔だけを独立した要因としての試算をしているために産次 数が変わらないので、あまり影響を受けない試算となっ た。 433日で除籍産次が 3.6 産ということは、乾乳期間を加 えて、初産後の生存日数が 1,559日となる。 府県では、初産牛の生産原価を500,000 円とした。外 部導入が多いことからである。配合飼料を52 円、粗飼 料の平均単価を48 円としたが、個別の経営では自給粗 飼料も加わることとなる。府県の生産原価は 81円となっ た。これは、労働費を除いた農水省の平成 22 年度の統 計とほぼ同水準の原価となった。 試算のクラス分けを、統計的な分布に従って 行う方が正確かもしれないが、わかりやすいよう に、ここでは任意の値を設定した。コストシミュレーショ ンの結果は、表 2に数字として示した。 産乳量の上昇がコストに与える影響が最も大きかった。 次に除籍産次、分娩間隔が影響を与えた。 現 在の 平均 乳 量 が 9,000kg から10,000kg、11,000kg に上昇するという仮定が成立すると、生産コストの低下が
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6
平均分娩間隔 平均 415 425 435 445 455 65.2 65.4 65.6 65.9 66.1 平均除籍産次数 平均 3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 67.2 66.4 65.6 65.0 64.4 平均 306 日乳量 平均 7,000 8,000 9,000 10,000 11,000 77.1 70.8 65.6 61.8 58.5 北海道 (単位:円 /kg) 平均分娩間隔 平均 425 435 445 455 465 80.5 80.6 80.9 81.1 81.4 平均除籍産次数 平均 2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 83.3 82.0 80.9 79.8 78.9 平均 306 日乳量 平均 7,000 8,000 9,000 10,000 11,000 96.9 88.2 80.9 75.2 70.5 府 県 (単位:円 /kg) 表 2 コストシミュレーションの結果 6000 7000 8000 9000 10000 kg 西暦 西暦 西暦 1985 87 89 91 93 95 97 99 2001 03 05 07 08 1985 87 89 91 93 95 97 99 2001 03 05 07 08 1985 87 89 91 93 95 97 99 2001 03 05 07 08 図 1 平均乳量の変化 : 北海道 : 府県 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 平均産次数 図 2 平均産次数の推移 : 北海道 : 府県 370 390 410 430 450 380 400 420 440 日 数 図 3 分娩間隔の推移 : 北海道 : 府県 4000 5000 6000 7000 8000 9000 10000 乳 量 395 400 405 410 415 420 425 430 435 分娩間隔 図 4 分娩間隔と乳量の関係(北海道) Y=45.539×−10811 R2=0.8545 乳牛の健康が健全な酪農経営を支える
概 要 実現できる。これは、個別の経営では産乳量を上昇させる ことは可能であるかも知れないが、全国の酪農家の集計結 果である平均産乳量が年を追って上昇する可能性は低い。 その理由は、乳牛の改良を基礎とした産乳能力の増加 は、限界が見えてきているからである。例えば、北海道 の平均産乳量は 2005 年に 9,000kg 台に到達した後、次 第に下降している。 もし、遺伝的に高い水準に達した場合、Woodの泌乳 曲線が、上昇部で平坦な曲線として現れる。将来、その 方向を乳牛がたどるとしたら、乳期の後半の乳量が低下し なくなり、分娩間隔の長さは影響しなくなるかもしれない。 現在は、乳量の上昇が起きないと言う条件、つまり産 乳量の増加が停滞しているのだから、他の二要因である 平均除籍産次、平均分娩間隔の影響だけを評価しなけ ればならない。このため、「繁殖成績の改善と乳牛の長 命化の方向が重要である」と考えられる。 北海道で、特に道東で始まった自給飼料の生産と配合 飼料依存の低減経営の方向性転換は、乳量を低下するこ とで事故の低減を選択した動きと見ている。 この乳量のシミュレーション結果を見ると、乳量の低下 ではコストが急激に上昇することから、選択の幅は著しく 狭い。つまり、乳量は低下させることはできない。このま まの産乳量の水準を維持しながらコストの低減を計る方 向に動かざるを得ない。その意味では、酪農経営の方向 は極めて厳しい方向を選択するといえる。これまでのよう に、規模の拡大や産乳量の拡大で乗り切れる可能性が 少なく、コストの低減を図る方向が限定されるからである。 だから、「酪農経営の間違い」を正すことだけで経営の改 善はできない。 しかし、まだ、乳牛に関係する研究者の多くは、酪農 家の技術は欠点が多いのだから、問題は改善できると考 えている。疑問があるので、話し合ってみたが、どのよ うな問題も研究者が科学的に解決することは可能だと、 科学を非科学的に信仰していることに気づいた。実際に は、これら要因が複雑に組み合わされて、結果としての 経営が変化する。 酪農は科学ではなく現実の経営である。総合的な生産 コストの低減が、合理的な経営を作ると理解されると思 う。 これまでの年次推移を図1に平均乳量、図2に平均産 次数、図 3に分娩間隔を示した。 参考のために、図 4に暦年の平均 305日乳量の推移と 平均分娩間隔の関係を回帰しておいた。その結果は、北 海道でも府県でもほぼ同じ結果であった。回帰式は、平 均分娩間隔が1日伸びると、305日乳量は46.5kg 増加す ることになる。つまり、これまでの経過は平均分娩間隔 を22日間増加することに犠牲を払って、乳量を1,000kg 増加できたといえる。 このように、乳量の増加は分娩間隔が伸びることと同時 に起きている。だから、平均産次数を伸ばし、平均分娩 間隔を短縮し、平均乳量を伸ばすことを同時に実現するこ とは、現実の経営では困難であるともいえる。平均乳量 を伸ばすことを停滞させて、他の方向を求める経営が出 現するという成熟した酪農経営の時代に入ると言えよう。
イ ベ ント
紹 介
秋晴れの10月10 日、牛乳乳製品の消費拡大を目指して「第 24 回徳島牛乳まつり」(徳島県酪農業協同組合・Jミルク徳島 主催)が徳島市藍場町の藍場浜公園で開催されました。牛乳 無料配布やすだち牛乳の試飲、米粉パンのミルクトースト試食、 バター手作り体験、「牛乳飲みっぷりコンテスト」、骨密度測定、 牛乳乳製品の展示即売などが各ブースで行われ、大いににぎわ いました。「徳島牛乳まつり」のご報告
レポーター◎徳島営業所 花岡良洋
◎祭事名称 :「第24回徳島牛乳まつり」 ◎開催日時 : 2010年10月10日(日) ◎開催場所 : 徳島市藍場浜公園 ◎開催時間 :10:00∼16:00 ◎来場者数 :1万2000人 会場入口 市長挨拶「森永デーリィシリーズ」
使用牧場を訪ねて
「森永デーリィ17」で
乳量も乳質も安定
飼料給与に工夫を重ねる
熊本県山内秀一牧場
牧場主名 山内 秀一 労働人数 2人 (秀一さん・香代さんご夫婦) 規模 搾乳牛 : 27頭 乾乳牛 : 4頭 育成牛 : 6頭 繁殖和牛 : 8頭 生乳生産量 平均日量864kg 2010年7月現在 レポーター/熊本営業所 野田貞治 F a r m P r o f i l e 左は秀一さん、右は三男の瑛斗(あきと)くん C A S E 1 牧 場 レ ポ ー ト乳牛の健康を
実感しています。
「健康な乳牛のために」を目的に開発された搾乳用配合飼料「森永デーリィシリーズ」。 健康な乳牛管理による健康な酪農経営をめざす酪農家を、森永酪農販売(株)の担当者が訪問しました。 山内秀一牧場は、熊本市の南に位 置する各種農業が盛んな上益城郡嘉 島町で、酪農を中心として稲作、畑 作を営む。父の義照さん夫婦が酪農 を始め、2代目の秀一さんが 1988 年 に就農した。当初、秀一さんの奥様 は育児のため、ご両親と秀一さんの 3人体制で酪農を営んでおり、2006 年から奥様も酪農に従事するように なった。そのタイミングで、ご両親 は稲作、畑作部門に専念し、酪農部 門は秀 一さんご夫 婦の2人体 制と なった。秀一さんは、酪農以外にも ご 両親と一緒に稲作(3ha)、畑作 (小麦5ha、大豆2ha)部門にも従事 しているため、労働力を考えて、最 盛 期は 生 乳 生 産 量 1,100kg /日で あった酪農部門を縮小し、和牛繁殖 を導入してきた。現 在の肉牛部門 は、繁殖和牛を8頭飼養し、和牛育 成は4か月齢未満、F1育成は2か月 齢未満で出荷している。 秀一さんの就農当時は、単味飼料 (メイズ、大 豆、ビート、大 豆 粕、 綿実、フスマ、ルーサンP)で自家 配合していた。近年の穀類価格の高 騰を受け、配合飼料を使用し始めた が、秀一さんが求める特徴のある配 合飼料が見つからないため、大きな 疾病による事故は起きにくいだろう と、自家配合と似たビート入りの配合 飼料を採用した。ところが、切り替 え当初から乳量・乳質の低下、暑熱 時の繁殖障害などに悩まされた。 そこで、その頃すでに周辺の酪農 家から実績を聞いていた「森永デー リィ 17」を、2009 年10月から採用し切り替え後は
夏場でも
乳量増加を実感
4
4
飼料給与方法の
さまざまな工夫が
繁殖管理の自信に
た。切り替え後間もなく、乳量・乳 質とも改善が見られたが、朝晩が涼 しくなって牛の体力が回復してくる時 期でもあったため、気候によるもの だろうと感じていた。しかし、昨年 は例年よりも厳しい猛暑となり、熊 本県内の酪農家で乳量・乳質の低 下、事故牛が続出している中、山内 牧場では乳量・乳質とも安定した生 乳を生産している(グラフ参照)。自 家配合を給与していた頃を含めて、 夏場に個体平均乳量が 30kg以上を 維持したのは、2010 年が初めてだと いう。乳量が増えても乳成分は安定 していることに驚くとともに、飼料効 率が良くなったと分析している。夏場 の乳脂肪率低下に関しては、個体乳 量の増加と乳成分(乳蛋白質率、無 脂固形分率、MUN)の安定から考え て乳牛は健康な状態であり、生理的 にやむを得ない範 囲と分析してい る。また、搾乳前の乳房の張り方な ど、具体的な変化も感じられる。 しかし、2009 年春に経産牛(4 産) を乾乳する際、配合飼料の給与を中 止した直後に起立不能で廃用になっ てしまったことがある。そのことで特 に3∼4産以上の経産牛へのミネラル 給与に関しては、要求量だけでなく 吸収率も考えて泌乳期間の給与量を 強化する必要性を感じた。以来、こ 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 3.10 3.20 3.30 3.40 3.50 3.60 3.70 3.80 3.90 4.00 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8.10 8.20 8.30 8.40 8.50 8.60 8.70 8.80 8.90 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 2.8 2.9 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 ■ 山内牧場の乳量・乳質の変化(2009年8月∼2010年7月) 個体乳量 バ ル グ乳 乳脂肪率 バ ル グ乳 無脂固形分率 バ ル グ乳 乳蛋 白 質 率 バ ル グ 乳 M U N 夕方の搾乳前の搾乳牛。乳房の張りが変わってきた。粗飼料はバライティー豊富に、新鮮なものを細やかに 給与することで乾物摂取量を最大にすることを心掛け ている。 暑熱対策として落葉高樹木と遮光幕を利用した牛舎。 のような事故はなく、分娩前後の状 態も良いという。問題の原因がどこ にあるかを常に追究し、改善策を求 める秀一さんならではの「デーリィシ リーズ使用時の注意点」をご指摘い ただいた。 山内牧場の牛舎での作業は、午 前中が6時半から9時頃、午後は17 時半から20 時頃であり、搾乳はそれ ぞれ1時間程度である。配合飼料給 与は搾乳の前後の4回、暑熱時には 昼も入れた5回。これは、乾物摂取 量の落ち込みとルーメンアシドーシス 予防を考えた給与法である。給与順 序はオーツヘイ→ルーサンヘイ→ビー トパルプ→配合 飼料「森永デーリィ 17」→搾乳(搾乳時に自給飼料)→配 合飼料「森永デーリィ17」だ。 自給飼料生産はイタリアンサイレー ジ 6.5ha(2番草まで)、緑川河川敷 のヒエを中心とした野草サイレージ 3.5ha(2番草まで)、稲ワラ 4.5haで あり、堆肥はほぼ全てを圃場に還元 する。 自給飼料の給与に関しては非常に 慎重に考えており、給与割合を増や し過ぎないようにしている。理由は、 以下の二つだ。 ❶年によって品質のバラつきが非常 に大きく、水分・嗜好性・栄養価も 異なること ❷粗飼料のバラエティーを増やすこと で牛に飽きがこないようにすること いずれも乾物摂取量を最大にする ことを考えた給与法である。このよう に反芻動物の特性を理解した基本的 な飼養管理と「森永デーリィ 17」が適 合した結果が、山内牧場の乳牛の変 化に現れている。 山内牧場の繁殖管理はF1が8割、 和牛受精卵 2割が基本であり、ホ ルスタインの種付けは行わない。そ のため、搾乳牛の更新は初妊牛を導 入している。F1 生産は酪農家だけが 可能な分野であり、その特権を最大 限に生かすべきだと考えている。F1 の市場価格は、出荷頭数、ホルスタ インの種付け増加傾向から考えて、 今後も安定した市場価格が期待でき ると自信を持っている。また、奥様 が哺乳するようになって、増体が非 常に良くなり販売額が安定してきてお り、繁殖管理への自信を強めている。 秀一さんは、今後の経営目標とし
徹底した飼養管理と
手づくりカルテで
健康維持
滋賀県中谷成一牧場
牧場主名 中谷 成一 労働人数 2人 (成一さん・勝美さんご夫婦) 規模 搾乳牛 : 40頭 乾乳牛 : 0頭 未経産牛 : 30頭 生乳生産量 平均日量1,000kg 2010年10月現在 レポーター/関西支店 岡本貴衣 F a r m P r o f i l e C A S E 2 中谷成一さんは、琵琶湖の南部、 三重県に接する滋賀県甲賀市で、奥 様の勝 美さんとご夫婦で酪農を営 む。2002 年頃までは個体 乳量を追 求しており、疾病に悩まされる時期 が 続いた。その経験から、現在は 乳量重視ではなく、牛の健康維持、 長命連産に重点を置いた飼養管理を 実践している。結果として、平均産 次数は 3.5 産となっている。繁殖成 績が向上したため、搾乳頭数と同じ くらいの育成牛が育っており、現在粗飼料優先の給与で
分娩前の事故も
予防できる
て、「搾乳部門は現在の規模で維持 しつつ、和牛繁殖部門をもう少し大 きくしていきたい」と語る。 自身の経営や労働力の状況を謙虚 に受け止めながら今後の展望をしっ かり持っていることが、現在の山内 牧場の経営につながっている。B4版の個体カルテ。 牛舎は換気がよく、床 もきれいに掃除され、つ ねに 乾 いていている。 牛体も清潔であること がわかる。 牛舎の壁いっぱいにつくられたカレンダーの検診日の 場所にカルテを入れて個体を管理する。 左が奥様の勝美さん、右が成一さん。