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報道関係者各位 2019 年 1 月 17 日 国立大学法人筑波大学 株式会社 MCBI 認知機能の低下を評価する有効な血液バイオマーカーの発見 認知症発症の前兆を捉える 研究成果のポイント 1. アルツハイマー病など認知症の発症に関わる3 種類のタンパク質の血液中の変化が 軽度認知注障害 (MCI

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1 2019 年 1 月 17 日 報道関係者各位 国立大学法人 筑波大学 株式会社 MCBI

認知機能の低下を評価する有効な血液バイオマーカーの発見

〜認知症発症の前兆を捉える〜

研究成果のポイント

1. アルツハイマー病など認知症の発症に関わる3種類のタンパク質の血液中の変化が、軽度認知 障害(MCI)注1)における脳イメージングの変化と一致し、認知機能の低下の評価に有効なバ イオマーカーとなることを発見しました。 2. 発症前の早い段階から血液中のこれらのタンパク質の量をモニタリングすることにより、効果 的な認知症の予防につながることが期待されます。 研究の背景 2015年の世界の認知症の患者数は4,680万人で、このまま何もしなければ高齢化社会の進行とともにそ の数は20年ごとに倍になり、2030年には7,470万人、2050年には1億3,150万人になるといわれています。 認知症の60-80%はアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)(AD)です。国際的に権威のある Alzheimer's Associationによる報告書2018 Facts and Figuresで、米国では、2017年現在1600万人の家族・介 護者が180億時間を認知症のケアに割いており、そのコストは2,320億ドル(約2兆5千億円)と推計されて います。 ADは、認知症の60-80%を占め、ゆっくりと進む認知障害が特徴です。Aβの脳内での蓄積はADの発症 に関わることが分かっていますが、正常な状態でもAβは常に脳内で産生されており、脳から血液へと排 出されています。ADでは、Aβクリアランスの低下が発症の原因ではないかと考えられています(図1)。 Aβクリアランスには3つのタンパク質(アポリポタンパク質(ApoA-I)、トランスサイレチン(TTR)、 国立大学法人筑波大学 医学医療系 内田和彦准教授、株式会社MCBI 鈴木秀昭研究員らの研究 グループは、アルツハイマー病(AD)等認知症の発症に関わるアミロイドβタンパク質(Aβ)2) の脳内からの排出に働く3つのタンパク質が、早期の認知機能低下を評価するバイオマーカーと して有効であることを見出しました。

ADの発症には、脳内に蓄積された Aβが関わっていることがわかっています。本研究では、 Aβ

クリアランス注3)の低下に関与する3つのタンパク質を血液バイオマーカーとして用い、その臨床

有用性を検討しました。その結果、これらのタンパク質の血中量が、軽度認知障害(MCI)にお ける認知機能低下および脳イメージングの変化と一致することを明らかにしました。

本研究の成果は、2018年12月18日付「Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring」でオンライン公開されました。

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補体タンパク質(C3))が関与しており、これらの量の低下がAβクリアランスの低下につながります(図 2)。 研究内容と成果 本研究ではMCIのバイオマーカーとして、Aβクリアランスに関わるタンパク質ApoA-I、TTR、C3の臨 床有用性を検討しました。273名の被験者を対象に血清中のApoA-I、TTR、C3およびコレステロール量を 測定し、その中でMCIおよびADと診断された63名の被験者を対象にMRIおよびSPECT注4)脳画像を検査 しました。 ApoA-I、TTRおよび、C3の比は、認知機能健常者とMCIとの間で有意に差が見られ、これら3つのタ ンパク質を組み合わせたときの判別精度は約90%でした(図3)。MRI検査による海馬の萎縮は、ApoA-I およびコレステロール(HDL)の量の低下と一致しました。SPECT検査による脳血流量の減少は、C3、 ApoA-I、HDLおよび総コレステロール量と相関しました(図4)。さらに、ADの患者の剖検脳を調べ、 C3タンパク質の有意な変化を明らかにしました。 このことから、これらのタンパク質が認知機能低下を評価する上で、有効なバイオマーカーとなるこ とが明らかとなりました。 今後の展開 認知症の前駆段階である軽度認知障害(MCI)は認知症の発症を予防する潜在的介入のための重要な 機会と考えられます。このため、血液バイオマーカーによって認知機能低下の評価を行うことは、アル ツハイマー病(AD)など認知症の予防において重要であると考えられます。 本研究に用いた3つのタンパク質を対象とする MCI スクリーニング検査は、株式会社 MCBI がすでに 実用化しており、今回の研究で早期 MCI の認知機能低下とそれに伴う脳血流低下や脳萎縮と関連するこ とが明らかになったことで、認知症の予防につながる血液検査として期待されます。 今後、より多くの症例を用いた臨床研究を行うとともに、運動などの予防介入による効果と血液バイ オマーカーの関連性について研究を進める予定です。

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3 参考図

図 1. アルツハイマー病の病態

アミロイドβ(Aβ)は AD 発症の 20 年以上前から蓄積され、それを防ぐ Aβ クリアランスが重要である。 本研究では、MCI を早期 MCI と後期 MCI とわけて解析したところ、早期 MCI で血液マーカーの変化が あることがわかった。

図 2. Aβ クリアランスに働く3つのタンパク質

アポリポタンパク質 ApoA-I 、トランスサイレチン TTR、補体タンパク質 C3 が、Aβ を排除するように 働く。ApoA-I は炎症を、TTR は Aβ の凝集や神経毒性を抑制する役割がある。

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図 3. 早期 MCI における血液バイオマーカーの変化

図中、NDC: 正常、EMCI: 早期 MCI、LMCI: 後期 MCI、nC3: 非活性型 C3、aC3: 活性型 C3、Triple-marker: ApoA-I, TTR, C3 の組み合わせ、を示す。早期 MCI の段階で血液バイオマーカーが低下している。 出典:Lui S et al, Alzheimer Dement (Amst) Published online Dec 18 (2018)

NDC Pre-MCI MCI 0 1 2 3 4 n C 3 ( Un it /  L ) NDC Pre-MCI MCI 0 100 200 300 R at io of a C 3 / n C 3 NDC Pre-MCI MCI -0.25 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 Tr ip le -m ar ke r NDC EMCI LMCI NDC EMCI LMCI P = 0.02771 P = 0.00226 P = 3.9E-04 P = 0.01417 NDC EMCI LMCI P = 0.12914

nC3

aC3/nC3

Triple-maker

P = 0.01714 NDC Pre-MCI MCI 50 100 150 200 250 Ap oA 1 C on c e n tr at ion ( m g/ d L ) NDC EMCI LMCI P = 0.05368 P = 0.01667

ApoA-I

C on cen tr atio n (m g /dL ) NDC Pre-MCI MCI 60 80 100 120 140 aC 3 C on c e n tr at ion ( m g/ d L ) NDC EMCI LMCI P = 0.7376

aC3

C on cen tr atio n (m g /dL ) NDC Pre-MCI MCI 10 20 30 40 50 TT R C on c e n tr at ion ( m g/ d L ) NDC EMCI LMCI P = 0.17131

TTR

C on cen tr atio n (m g /dL ) C on cen tr atio n (un it /m L) V al ue R atio

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5

図4 脳 SPECT による脳血流の低下と血液バイオマーカーの関係

図中、SPECT A: 正常、SPECT B: 軽微な脳血流低下、SPECT C: 脳流低下、nC3: 非活性型 C3、aC3: 活 性型 C3、Triple-marker: ApoA-I, TTR, C3 の組み合わせ、を示す。脳血流が低下すると血液マーカーが低下 することがわかる。

出典:Lui S et al, Alzheimer Dement (Amst) Published online Dec 18 (2018) SPECT A SPECT B SPECT C

0 10 20 30 40 50 TT R C on c e n tr at ion ( m g/ d L )

SPECT A SPECT B SPECT C 0 50 100 150 200 250 300 R at io of a C 3 / n C 3

SPECT A SPECT B SPECT C 0 1 2 3 4 nC 3 (Un it /  L )

SPECT A SPECT B SPECT C -0.25 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 Tr ip le -m ar ke r

P = 0.06093

P = 0.652

P = 0.00939

P = 0.00239

SPECT A SPECT B SPECT C

SPECT A SPECT B SPECT C

SPECT A SPECT B SPECT C

P = 0.34098

P = 8.7E-04

P = 0.03181

P = 0.01468

SPECT A SPECT B SPECT C

nC3

aC3/nC3

TTR

Triple-maker

SPECT A SPECT B SPECT C 50 100 150 200 250 Ap oA 1 C on c e n tr at ion ( m g/ d L )

P = 0.00664

P = 0.00296 P = 0.00231

SPECT A SPECT B SPECT C

ApoA-I

C

on

cen

tr

atio

n

(

g

/m

l)

SPECT A SPECT B SPECT C 60 80 100 120 140 aC 3 C on ce nt ra ti on ( m g/ dL )

P = 0.04283

P = 0.02468

P = 0.02209

SPECT A SPECT B SPECT C

aC3

C

on

cen

tr

atio

n

(

g

/m

l)

C

on

cen

tr

atio

n

(

g

/m

l)

C

on

cen

tr

atio

n

(un

it

/

L)

V

al

ue

R

atio

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用語解説

注1) 軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)

MCI は、アルツハイマー病など認知症の前駆状態です。MCI は病気ではなく状態です。物忘れは目立 つものの、日常生活に支障はありません。MCI の約 40%が 4 年後にアルツハイマー病などの認知症を発 症するといわれています。

注2) アミロイドβタンパク質(Aβ)

Aβ 沈着(老人斑)がアルツハイマー病の病理的病変です。Aβ は神経細胞毒性を示し、Aβ の産生およ び蓄積の異常がアルツハイマー病の発症に深く関係しているといわれています。アルツハイマー病など 認知症は、中年期以降の生活習慣の改善により予防できることが分かってきました。発症から 20 年以上 前からAβ が脳内に蓄積しはじめ、臨床症状がでる前の段階であるプレクリニカル期での介入・治療が期 待されています。そのためには、Aβ の蓄積に関わる「バイオマーカー」が重要です。 注3) Aβ クリアランス アルツハイマー病では、Aβ が脳内に蓄積しはじめるのは、主に脳から血液やリンパ液への Aβ の排出、 すなわちAβ クリアランスの能力が落ちてくるからと考えられています。最近の研究では、脳内における Aβ の産生は正常な生体反応と考えられており、産生を促進する原因や Aβ クリアランスについての研究 が盛んに行われつつあります。 注4) SPECT

脳血流シンチグラフィである Single photon emission computed tomography(単一光子放射断層撮影)の略。 アルツハイマー病などの認知症では、脳と特定の領域の血流が低下することが知られており、臨床診断 の補助として日常診療に使われています。

掲載論文

【題 名】 Serum levels of proteins involved in amyloid-β clearance are related to cognitive decline and neuroimaging changes in mild cognitive impairment

(血液中のアミロイドβクリアランスに働くタンパク質は、MCI において認知機能低下と脳イ メージングと相関する) 【著者名】 劉 珊1、内田 和彦(国立大学法人 筑波大学 医学医療系) 鈴木 秀昭、伊藤 ひとみ、是永 龍巳、目野 浩二(株式会社 MCBI 研究開発本部) 赤津 裕康2(医療法人さわらび会 福祉村病院) 1現在の所属:株式会社 MCBI 研究開発本部 2現在の所属:公立大学法人 名古屋市立大学医学部

【掲載誌】 Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring DOI:j.dadm.2018.11.003

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7 問合わせ先 内田 和彦(うちだ かずひこ) 筑波大学 医学医療系 准教授 〒305-8572 茨城県つくば市天王台 1-1-1 E-mail: kazuhiko.uchida@cbiri.org Tel: 029-853-3060 鈴木 秀昭・伊藤 ひとみ 株式会社 MCBI つくば検査センター 〒300-3261 茨城県つくば市花畑 2-15-2 TEL: 029-899-4431

図 1.  アルツハイマー病の病態
図 3.  早期 MCI における血液バイオマーカーの変化

参照

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