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オープンバンキング時代の到来 近年 様々な産業において業界も跨いだデータのオープン化と それに伴う オープンコマース が進みつつある とりわけ Uber などのデジタルプレーヤーは自社のデータを第三者に提供し オープンコマースで稼ぐ仕組みを構築している 一方 銀行業界は長年 保有する顧客データを自社

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Academic year: 2021

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A.T. Kearney Agenda Vol.8

オープンバンキング時代の

銀行のあり方

銀行業界でも顧客データ等のオープン化の動きが出てき

た。オープン化は、脅威であると同時に、新しい付加価

値や収益モデルを構築する機会でもある。本稿では、オー

プンバンキング時代における銀行の価値提供のあり方

と、成功の要件を探る。

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オープンバンキング時代の到来

近年、様々な産業において業界も跨いだデータのオープン化と、それに伴う「オープンコマース」 が進みつつある。とりわけ、Uberなどのデジタルプレーヤーは自社のデータを第三者に提供し、オー プンコマースで稼ぐ仕組みを構築している。一方、銀行業界は長年、保有する顧客データを自社で 独占し、クローズドコマースの世界でビジネスを展開してきた(図1)。 図1 長年、銀行をはじめとする伝統的企業は、顧客データを自社で独占してきた 出所: A.T. カーニー作成 • 企業は顧客とデータを共有 • 但し、多くの場合は古い、不完全な形式にて提供 (自動的に入手して分析・加工などはできない) 伝統的企業 Customer data 例:銀行、保険、 医療機関など 第三者企業 伝統的企業への 付加価値を提供 することが目的 顧客 • 伝統的企業は一般的に、顧客が 望もうとも、第三者にはデータを 共有しない • 第三者企業は顧客に対しても 付加価値を提供したいと 考えている ところが、銀行業界でも近年「消費者」「競争環境」「規制」「テクノロジー」といった複合的な要 因により、オープン化の動きが出てきた(図2)。 オープン化により、銀行が保有する顧客データに第三者企業がアクセスできるようになり、第三者 企業がそのデータを利用したサービス提供が可能になる。また銀行も、第三者企業と協働で新しい サービスを提供する、新規顧客を開拓するといった可能性が出てくる。こうした「オープンバンキ ング」の流れは不可避で、加速しつつある。今後の銀行経営を検討する際に避けて通れない論点で あるオープンバンキングは、銀行がこれまで独占してきた情報を第三者企業に提供するという点で は、銀行の付加価値の源泉の一部を失うことを意味し、大きな脅威と言える。一方で、第三者企業 を活用しながら自らがマーケットプレイスやプラットフォームを主導することで、新しい付加価値 提供や新しい収益モデルを構築できる可能性、機会もある。(図3) オープンバンキング時代の銀行には機会と脅威の両方を睨んだかじ取りが求められる。

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図2 複合的な要因により、銀行業界でも顧客データをオープンにする動きが出てきている 出所: A.T. カーニー作成 変わりゆく「消費者」の期待 「わかりやすい、便利、安い」に対する期待が より一段と高まっている • 第三者の提供するアプリによって、さまざまな データへのアクセスが容易になってきている デバイス自体の連携が促進 (例:IoT家電など) オープン化を促進する「規制」 • 規制もオープン化の流れを促進 - 欧州のPSD2 - 米国、カナダでも規制改正の流れ - 日本でも銀行のオープンAPI施行が決定 • 消費者団体やITベンダーなどからも銀行が 保有するデータ共有化の要請が高まっている 異業種も含めた「競争環境」の変化 • Fintech等、便利なサービスを、より安価に 提供できるプレーヤーの登場 • アプリ作成者が銀行とAPI連携できる開発 環境を銀行自身が提供したり、アグリゲーター を経由して提供する動きも広がってきている (例:NAB, Citi, COF, BBVA等)

新たな「テクノロジー」の登場 • 新たなチャネルやデータ保有形式の登場 (IoTを前提とした銀行サービスの提供も可能) • 新たな開発手法(例:アジャイル等)と インフラ(リアルタイム24時間決済等)により、 商品やサービスの開発スピードが加速 オープン バンキング 図3 銀行モデルの変革と付加価値のシフト 伝統的銀行モデル 商品開発・提供チャネル・ 顧客インターフェース (銀行が保有) インフラ(銀行が保有) 顧客 厳格に規制 • 銀行が両方のレイヤーを保有 • 銀行が付加価値を有する オープンバンキングモデル マーケットプレイス型 商品開発・提供チャネル・ 顧客インターフェース (銀行と外部連携先が保有) インフラ(銀行が保有) 顧客 厳格に規制 • 顧客インターフェースは銀行と 外部連携先で共有 • 銀行は外部連携先が提供する サービスを選別して、コストを下げ るか、自らの提供するサービス、 商品の価値を高めることに主眼 プラットフォーム型 商品開発・提供チャネル・ 顧客インターフェース (外部連携先が主) インフラ(銀行が保有) 顧客 厳格に規制 • 基本的に顧客インターフェースは 外部連携先が主体になる • 外部連携先は銀行のインフラ上に 新たな商品・サービスを開発 • プラットフォームに競争力があり、 銀行は運営費・広告費等を稼ぐ

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オープンバンキング時代の価値提供のあり方

銀行が取り扱う情報は具体的に何かを整理したい。従来の銀行は、主に顧客の基本プロファイル(個 人であれば、氏名、生年月日、住所、勤務先、年収など)と大量の金融取引履歴(入出金、借入、 返済など)を保有していた。これに、店頭や渉外担当者が入手した情報を組み合わせて、与信判断 や各種提案を行うのが伝統的な銀行のあり方だった。近年は、これらの情報をより有効に活用すべ く、EBM(Event based marketing)に取り組み、適切なタイミングで適切な提案ができる事例も出 つつある。とは言え、銀行内にある情報だけでは、運用や借入ニーズを事前に把握するとしてもど うしても限界があった オープンバンキング化が進むと、例えば顧客のオンライン/オフラインのアクティビティ情報を入 手できる可能性がある。こうした情報を使うと、従来とは全く違うアプローチのマーケティングや 付加価値提供ができるようになる。例えば、SNS上でのつながりや評判などの膨大なデータを活用 し、信用力が低い法人・個人に対する融資や、「あなたであればこの条件でこの金額まで融資できる」 と事前に条件提示する形でのセールスなども可能になる。 図4 「はじめての住宅購入」に関わるエコシステムの例 出所: A.T. カーニー作成 新しく家を買いたいが 何をすればいい? 認知 • 土地家屋の立地や 大きさなど、家族や 知り合いに聞く • ネットで不動産の 大きさ、立地、条件など を検索。ネット上で意見 を求める • 不動産業者のリストを 入手 夢に見たマイホームは どこにあるのか? 評価 • 不動産業者に薦めら れた物件を内覧 • 立地、一軒家/マンション などの形態を決める • 金融機関への申込、 借入可能額を確認、 資金調達計画を検討 • 建築業者に費用を確認 夢のマイホームを 見つけた! 購入 • 借入先の金融機関を 選択、手続きを行う • 借入れに必要な書類を 確認、入手 • 法律関係書類の委託 手続きを行う 夢のマイホームを ついに手に入れた! 所有 • 詳細設計、建築に着手 • 家具の調達、配置 • 引越し事業者のリスト を入手、選定、手配 一般的 な 活動 関連 す る 事業者 口コミ インターネット(不動産専門家/個人ブログなど) 不動産業者 金融機関 FinTech 建築業者 建築業者 法律の専門家 家具販売/引越業者 顧客の重大イベントを 丸ごとサポートする エコシステムを形成

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では、どんな情報をどのように集めたら良いのだろうか? A.T. カーニーでは、顧客の人生において 金融サービス利用に繋がりやすい「住宅購入」「退職」「子供の進学」などの「重大イベント」に注 目し、これに伴うニーズを一気通貫でサポートするエコシステムを構築することが有効ではないか と考えている。 例えば、「住宅購入」というイベントを考えてみよう。特に初めての住宅購入の場合は、お金の問 題もさることながら、物件・業者探し、物件の比較検討、登記、家具の調達、引越など、多くのこ とに悩むだろう。こうした悩み・ニーズに対して、一気通貫でサポートする外部連携の仕組(エコ システム)をということである(図4)。具体的には、「はじめての住宅購入者」をサポートするア プリなどが考えられる。 こうした仕組みを銀行主導で作ることで、銀行は住宅購入の初期検討段階から、個人情報はもちろ ん、家族構成、近い将来のライフイベント、住まいに求める条件、資産状況など様々な情報が得る ことができる。そしてこの情報を活用すれば、適切なタイミングでの住宅ローン提案をはじめ、子 供の進学を見据えた教育資金作りといった住宅ローン以外の金融サービスも提案可能だろう。さら には、住宅、家具、引越などの事業者からの広告収入、マーケティング情報提供手数料、送客手数 料などの非金融収益も狙うことができる(図5) 図5 エコシステムを銀行主導で作ることで、銀行は非金融領域からの収益も狙うことができる 出所: A.T. カーニー作成 銀行が取得可能な顧客情報 • 個人情報以外の属性 - 家族構成 - 住まいに求める要件 - 近い将来のライフイベント   (結婚、出産、引退など) • 個人情報 - 氏名 - 住所 - 電話番号 - メールアドレス - 予算(年収) • 顧客が探している候補物件の概要 - 住所 - 広さ・間取り - エージェント • 資産状況 - 総資産(金融・ 非金融) - 他行との取引状況 - その他の金融ニーズ(保険等) 収益獲得機会 中期の金融収益 (家族口座、時期を得た 金融サービスの提案) 短期の金融収益 (住宅ローン、保険等) 広告収入 (例:家具販売業者) 中長期 非金融収益 マーケティング情報提供 (例:住宅事業者、小売) 送客手数料 (例:引越、家具)

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これは、銀行にとってはビジネスモデルの大きな変革であるが、他産業の例を見れば分かるように、 オープンバンキング時代に銀行が既存の領域(図6の「銀行1.0」)に留まることは「座して死を待つ」 ことになりかねない。もちろん、多くの銀行は危機感を持ち、デジタル技術を活用した改革に取り 組んでいるが、既存の商品・サービスの枠内でのプロセス改善に留まっているケースがほとんどだ (同「銀行1.5」)。デジタルプレーヤーはじめとする新たな競合に対抗しつつ、利益を確保するため には、「銀行2.0」や「銀行3.0」に進化することが不可欠だろう。(図6) 図6 銀行が今後も利益を確しつづけるには、「銀行2.0」「銀行3.0」に進化していく必要がある 出所: A.T. カーニー作成 金融事業 既存の商品・サービスの提供 価値やビジネスモデルの延長 法人向け • 外為 • M&A • 事業承継 • 経営管理支援 • 融資 • ビジネスマッチング 個人向け • 外為 • 資産運用(投信) • 個人・住宅ローン • ATM • 保険代理 • 指静脈認証活用 • 預金 • 為替 法人向け •地方創生ファンド • Tablue等を活用した経営管理 システム提供 •デジタル金融ダッシュボード 個人向け •住宅ローンのWEB完結サービス • AIを活用した審査モデル構築 •対面・非対面でのロボアドバイザー 機能導入 法人・個人向け •顧客DB・CCを活用した店舗への 送客枠組み •ロボティクス・オペレーションの導入 今までに無い 提供価値やビジネスモデル 法人向け •クラウド会計のデータを活用した 新たな融資商品 •システム販売 •データマーケティング •クラウドファウンディング •自営業者・小規模事業者向け シェアドオフィス・システム提供 個人向け •仮想通貨 •非銀行ネットによる決済 •スマートバンク •仮想通貨 •電子マネー •商品力強化 •金融教育(非伝統) •家計簿 法人・個人向け •ブロックチェーンの実証実験 非金融事業 法人向け •データ販売 •広告 •受託業務 •データ販売 •人材派遣 •保管 •業務委託 •サービスマッチング •メディア 個人向け •不動産 •小売 •育児 •家事・買い物代行 •飲食 •冠婚葬祭 •教育 •建築・不動産 •医療 •交通機関・物流 •配車・レンタカー •宿泊 •出版 •宅配受取 •通信・電力・ガス •農業 •旅行・観光 法人・個人向け •ブロックチェーンの実証実験 既存 業務 延長 業務

銀行

1.0

銀行

1.5

銀行

2.0

銀行

3.0

(7)

現時点では、銀行法上の制約もあり、わが国での「銀行3.0」の事例は極めて限定的である。ただ、 銀行法改正の動きを俯瞰すると、これまでは非金融事業者の金融事業参入をサポートする規制緩和 が行われてきたが、銀行をはじめとする金融事業者が非金融事業を営むことへの制約は残ったまま であった。近年はこうしたアンバランスな状況に対する金融業界の反発もあり、金融事業者の非金 融事業参入の規制緩和が徐々に進みつつある、というのが世界的な潮流である。日本も早晩、同じ ことが起こる可能性が高い。銀行3.0にいつでも移行できる体制を作っておくことは有効だろう。

変革の実現のために

新しい提供価値やビジネスモデルへの変革は、単純にデジタルプレーヤーや重大イベントに関連す る事業者と提携すれば実現できるわけではない。様々な成功例・失敗例を元に検討した結果、A.T. カーニーは以下の3つが成功要件であると考えている。 1つ目は、推進組織のミッション、役割と推進に向けた権限の明確化である。銀行に限らないこと だが、「世の中がデジタルとかFintechとか言っているからうちも何か考えよう」という曖昧なミッ ションのもと推進組織が組成され、いろいろ試行錯誤しているうちに短期での成果を求められ、小 粒な取組でお茶を濁したり、やがて取り組みが雲散霧消したり、というパターンが多い。 2つ目は、顧客基点で考えるカルチャー ・風土である。銀行業界はこれまで、どちらかというと自 行基点でプロダクトアウト的な発想が強かったが、前述のエコシステムを作って顧客を呼び込むた めには、顧客基点で考えることが求められる。これは、従来の銀行の考え方の大きな転換を伴うも のであり、カルチャー ・風土に踏み込んだ改革が必要だろう 3つ目は、新しいビジネスインフラの構築である。オープンバンキングは「デジタル化された世界」 が前提である。ともすれば、従来型のオペレーションやIT基盤を優先しがちであるが、デジタルを 所与とした基本インフラ構築やR&Dの強化が不可欠である こうした要件を満たしつつ、ビジネスモデルの進化に取り組む銀行が、オープンバンキング時代の 新たな勝者となるだろう。

Author Profile

Hiroshi Nakamura 中村 宏(A.T. カーニー プリンシパル) hiroshi.nakamura@atkearney.com 東京大学経済学部卒。富士銀行(現みずほ銀行)を経てA.T. カーニー入社。消費 財、不動産、金融、サービスを中心に、全社/事業戦略、営業・マーケティング戦 略、業務改革、調達戦略を支援。「最強の業務改革」「最強のコスト削減」(いずれ も東洋経済新報社)執筆担当

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A.T.カーニーは、40ヶ国以上に拠点を有する世界有数のグローバルな経営コンサルティ ングファームです。1926年の創業以来、世界の有力企業・組織の信頼されるアドバイ ザーであり続けています。A.T.カーニーはパートナーシップ制度を採っており、顧客の 最重要課題に対して短期的な成果をもたらすと共に持続的な成長を支援することをお 約束します。詳しくはWebサイトをご覧下さい。www.atkearney.com アメリカ アジア ・ パシフィック ヨーロッパ 中東 ・ アフリカ アトランタ ボゴタ ボストン カルガリー シカゴ ダラス デトロイト ヒューストン メキシコシティ ニューヨーク サンフランシスコ サンパウロ トロント ワシントンDC バンコク 北京 ブリスベン 香港 ジャカルタ クアラルンプール メルボルン ムンバイ ニューデリー パース ソウル 上海 シンガポール シドニー 東京 アブダビ ドーハ ドバイヨハネスブルグ リヤド

A.T. Kearney Korea LLC は大韓民国において A.T. Kearney の名のもと業務を行っている別法人です。

A.T. Kearney はインド共和国においては、英国法に基づいて設立された法人組織 A.T. Kearney Limited の支店として 業務を行っています。

本稿の無断複製 ・ 転載 ・ 引用は固くお断りいたします。 © 2017, A.T. Kearney, Inc. All rights reserved

本稿の表紙に記されているのは、当社の社名にもなっている創業者 Andrew Thomas Kearney (アンドリュー ・トーマス・ カーニー)の署名で、カーニーが培い、我々が継承している、すべての 行いにおいて �本質的な正しさ� を保証することを意味しています。 アムステルダム ベルリン ブリュッセル ブカレスト コペンハーゲン デュッセルドルフ フランクフルト イスタンブール リスボン リブリヤナ ロンドン マドリード ミラノ モスクワ ミュンヘン オスロ パリ プラハ ローマ ストックホルム シュトゥットガルト ウィーン ワルシャワ チューリッヒ

参照

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