Ⅰ はじめに 周術期の栄養管理の目的は,手術治療が安全・ 円滑に進みかつ,術後の合併症の予防と死亡率の 低下にある.術前の重度の低栄養や過栄養がある ことで,術後の合併症の発生率や死亡率が高くな る1)~4).すなわち,術前の患者の栄養状態や身体 状況の把握は,患者の予後にも強く影響を与える ことになる.特に,消化器外科の手術患者におい ては,食欲不振,疾患の炎症に伴う体重減少,消 化管の通過障害などが存在し,術前からの栄養不 良に陥っている患者が少なくない. 周術期管理では,術前から多職種で協働して チーム医療を実施することが必要不可欠である. ERAS®プロトコールにおいても,患者の外来受 診から入院,手術,退院までの一連の流れを実施 することにより,達成できる項目が多いことが知 られている5).ERAS®プロトコールは,1 職種で は達成できない項目が多く,まさにチーム医療を 現場で実践する必要性がある.そのなかでも,人 間の生活に欠かすことができない「飲む(Drink-ing)」「食べる(Eating)」という項目を管理でき るものは,管理栄養士であることにほかならな い.周術期チームの一員として管理栄養士の口か らきちんと患者へ説明を実施し,術後の栄養状態
「チーム医療による手術侵襲軽減策とアウトカム」
周術期支援センターで実践する
専従管理栄養士による術前栄養管理の実際
― Skill Mix 型チーム医療による手術侵襲軽減策とアウトカム―
牛込 恵子,谷口 英喜
当院では,2016 年 8 月 1 日より専任医師およびパラメディックより運営される周術期 支援センター(Tobu Hospital Perioperative Support Center:TOPS)を開設した.本稿で は,Skill Mix 型のチーム医療として術前の栄養管理に焦点をあてた,「手術準備外来」に おける管理栄養士の役割を報告する.当外来では,最もよい全身状態で手術が迎えられ るように,入院 2 週間前に外来にて患者の全身アセスメントおよび情報収集,手術に関 してのリスク判定,必要に応じて直接介入を多職種(医師,看護師,薬剤師,管理栄養 士,歯科衛生士)により実施していることが特徴である.いわゆる外来型の NST 活動も 当外来に含まれる.また,当院の周術期管理には,術後回復能力強化プログラム(ERAS®)の概念を取り入れており,術後早期回復を目標に Early Drinking, Eating,
Mobilizing(DREAM)を達成できるようにさまざまな工夫を術前より行っている.
術前栄養管理,ERAS®,栄養介入,外来型 NST,Skill Mix
特 集
社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院周術期支援 センター
〒230-8765 神奈川県横浜市鶴見区下末吉 3-6-1 発表学会:第 25 回日本消化器関連学会(JDDW2017)
を把握し,コーディネートすることが重要である と考える. Ⅱ 術前の栄養管理の実践 1.術前の栄養管理 周術期の栄養療法に関しては多くの科学的根拠 が示され,ヨーロッパ臨床栄養代謝学会(The European Society for Clinical Nutrition and Metab-olism:ESPEN), ア メ リ カ 静 脈 経 腸 栄 養 学 会 (American Society for Parenteral and Enteral Nu- trition:ASPEN),日本静脈経腸栄養学会(Japa-nese Society for Parenteral and Enteral Nutrition:
JSPEN)からガイドラインが公表されている6),7). 術前に中等度から高度の栄養不良があると,創 傷治癒に障害が生じ,免疫能も低下する8).さら に手術侵襲が加わると,感染症などの合併症が発 生しやすい.特に ADL の低下した高齢者では, 術後肺炎や褥瘡発生の危険性が高まる.一方,栄 養状態を改善して手術に臨むことで,術後合併症 (縫合不全等)発生率の低下,創傷治癒の促進, 在院日数の短縮,免疫能の改善等の患者の早期回 復に寄与することが示されている8),9). また,術前の栄養不良患者に対して栄養療法 (介入)の効果が明らかにされている6).特に,2 週間前からの栄養介入により栄養状態を維持・改 善することで周術期の合併症が減少するといわれ ている6).生理的な機能を回復させるためには 4~7 日間,体内蛋白質の回復を目標とした場合 は 7~14 日の栄養介入期間が必要とされている. 術前に化学療法が施行されず,手術を遅らせても 問題なければ,2 週間の栄養療法が実施される. 術前の栄養評価については,栄養スクリーニン グと栄養アセスメントを実施し,患者の術前評価 を行う.栄養スクリーニング・アセスメントにつ いては,周術期管理にかかわる項目を選定して実 施する必要がある. 2.術前の栄養スクリーニング 栄養スクリーニングとは,患者の栄養リスクを 抽出し,栄養療法を行うか否かの判断を行う目的 で実施する方法である.スクリーニングを行う場 合には,適切なツールを用いることが重要であ る.ツールの選択方法としては,効果的であるこ と,非侵襲的であること,安価であること,簡便 な方法で自己評価が行えることの基準を満たす必 要性がある. 周術期の術前にかかわる栄養スクリーニング ツール は,MUST(Malnutrition Screening Tool),NRS-2002(Nutritional Risk Score), MNA®(mini nutritional assessment)が代表的な ものである. 各 ツール に 特 徴 が あ る が,BMI や 体 重 減 少 率,摂食量の急激な減少等を評価しているツール が多い.簡便なツールであるため,どの職種が質 問を実施しても,スコア化できる特徴がある. 3.術前の栄養アセスメント 栄養アセスメントは栄養状態を評価するため, ①身体計測(anthropometric method)評価,② 臨床診査(血液検査)評価,③嚥下機能評価から 総合的に行う. 身体計測の評価としては,身長,体重,体組成 (筋肉量・体脂肪量・体内水分量),握力の計測を 実施する.術前のアセスメントで重要なことは, 術前の患者が手術侵襲に耐えうる身体であるか否 かの判定である.したがって,体重や BMI より も,筋肉量と筋力を計測し異化に対する余力をア セスメントし,客観的な指標を用いる.当院では 現在,術前の栄養アセスメントを特定の科(消化 器外科・呼吸器外科・泌尿器科・婦人科・口腔外 科)の全患者に実施している. 体組成を計測することは,身体を構成する体水 分量,筋肉量(たんぱく質量),ミネラル,体脂 肪量を把握することで,手術に耐えうる身体かど うかを把握することが簡便にできる.計測方法は 手と足から微量の電流を流すインピーダンス法で 計測するため,ペースメーカーを埋め込んでいる 者,妊娠中女性,立位が 1 分程度保持不能の場合
は計測不可となる.
手術侵襲による異化亢進に耐えうるには,身体 を構成する筋肉量(lean body mass,除脂肪体 重)が不可欠である.特に,体内で炎症性のサイ トカインが生産された場合や,高度な侵襲が体内 に加わる場合は,食欲不振が起きる.さらに,安 静時のエネルギー代謝が亢進され,全身の筋たん ぱく質の異化が合成よりも亢進する.その結果, 各種の身体機能の低下と筋たんぱく質の異化が亢 進する.また,筋肉量の減少は,骨格筋や心筋の 筋肉量の減少,アルブミンなどの内臓たんぱく質 の減少,免疫能の障害を起こすといわれている. 近年,65 歳以上の高齢者におけるサルコペニ ア(Sarcopenia)が周術期消化器がん患者におい ておのおの独立した予後不良因子となることが, 先行研究で報告されている.サルコペニアとは, 骨格筋・筋肉(Sarco)が減少(penia)している ことをさし,診断基準は握力と体組成,歩行速度 でカットオフ値をもとに検出できる.筋肉量の評 価 に は,Asian Working Group of Sarcopenia (AWGS)の基準値を用いサルコペニアの検出を 行うとよい10).AWGS の基準は,アジア人を基 準に作成されているが,日本人の基準値は現在な いため,体型や遺伝子の構造が似ている種族の基 準を用いることが一般的である.AWGS のサル コペニアのアルゴリズムを図 1 に示す.サルコ ペ ニ ア の 検 出 に は, 握 力(右 左 4 回 計 測 平 均 値),または歩行速度,体内筋肉量の計測が必須 となる. 術前にサルコペニアがある場合は,周術期の合 併症が増加することがわかっている.サルコペニ アがある消化器がん患者では,術後合併症の発症 率,再発率,術後の死亡率が増加する.また,サ ルコペニアがある胃切除患者の大規模コホート研 究によると重症の術後合併症が発生するリスクが 3倍になる11)ことや,サルコペニアによる死亡 リスクは,肝臓がんで 3.19 倍,膵臓がんで 1.63 倍,大腸がんで 1.85 倍,大腸がんの肝転移で 2.69倍に増加する12). 4.術前栄養介入 術前栄養指導と ONS 介入 - 当院で実施している術前の栄養介入方法を一例 として掲載する.術前に栄養介入が必要と判断す る基準は,表 1 にあるように管理栄養士が問
図 1 サルコペニア基準値(AWGS:Asian Working Group of Sarcopenia) DAX法(Dual Energy X-ray Absorptiometry):二種類の異なる波長の X 線を全身 に照射し,その透過率の差から身体組成を計測する方法.骨密度の計測に使用さ れる.
BIA法(Bioelectrical Impedance Analysis):人体に微弱な電気を通すことで電気 抵抗を利用し,除脂肪と体脂肪の割合を算出する方法.
診,身体計測,食事摂取量の聞き取り,臨床検査 値(COUNT,PNI),嚥下状態を加味し,総合的 に栄養状態を判定する.患者の栄養状態が,重 度・中等度の栄養不良,低栄養と判断された場合 に術前の栄養介入を実施する13).多職種によるカ ンファランスを行い,栄養介入を行う,いわゆる 外来型の NST を実施している. 当院では外来型の NST を Skill Mix 型のチーム 医療で実行し,つぎの 2 種類の栄養介入を実施し ている.1 つ目は管理栄養士による外来栄養指導 を受け,現在の食生活の是正(エネルギー強化, たんぱく質強化,欠食週間の是正,間食の摂取方 法,糖尿病等の既往病歴準じた指導等)し,通常 食の摂取を強化(food fortification)させる.2 つ 目は,経口的に栄養摂取でき,食事でのエネル ギー摂取が困難で,早急に栄養摂取の必要性があ る場合には,経口的な栄養補充製剤(oral nutri-tion supplements:ONS)を摂取させる. 術前に管理栄養士が外来にて栄養介入すること には,科学的にも意義があり,患者の予後にも影 響するため,今後多くの病院での実施が望まれる 体制であるといえる. Ⅲ 当院における術前栄養管理の実際とアウトカム 1.手術準備外来における栄養不良者の実態と ONSによる栄養介入の実際 1)対象 2017 年 2~9 月に,済生会横浜市東部病院 周 術期支援センター手術準備外来を受診した 927 名 (男 性 592 名, 女 性 335 名, 年 齢 65.1±16.0 歳 (最小 1 歳,最大 95 歳))の待機的予定患者を対 象とした.対象診療科は,消化器外科,呼吸器外 科,口腔外科,泌尿器科,婦人科の 5 診療科であ る. 2)方法 本研究は,後ろ向き観察研究である.対象者に は,外来受診時に管理栄養士により問診,身体計 測, 食 事 摂 取 状 況, 嚥 下 障 害 ス ク リーニ ン グ (EAT-10),CONUT スコア,PNI スコア評価を 実施し,その総合評価により管理栄養士による術 前栄養評価を行った.栄養評価をカルテに記載 し,その状況を分析した.また,手術準備外来受 診時に,医師,管理栄養士が栄養不良者もしくは サルコペニアの症例に対して ONS を提案した症 例について,診療科ごとの ONS 介入頻度,ONS の種類を分析した. 3)結果 栄養不良者は,全体の 11.4%であった.各診療 科の結果を比較すると,消化器外科患者の栄養不 良者が 17.8%と多く,ついで呼吸器外科 8.0%, 泌尿器科 7.6%であった(図 2).消化器外科の患 者は,癌による体重減少,食事の喫食量の減少, CONUTスコアの高得点,PNI 低値などが要因と なっていた. 927 例中栄養介入を実施した患者は,104 例で あった.104 例の内訳は,図 3 に示したように, 消化器外科が 71%と最も多かった.処方してい る ONS の 種 類 は, エ ン シュア H®(ア ボット ジャパン:日本)が 48%を占めている.サルコ ペニアの改善を図るために,分枝鎖アミノ酸やロ イシンを強化したゼリーを摂取させる場合も多い ことが特徴的である.また,消化器外科で腸管の 閉塞を伴う場合,医師から絶食の指示が出ている 時は,低残渣・低脂肪であるエレンタール®(EA ファーマ:日本)を処方する.すべての栄養剤に 関しては,管理栄養士から飲み方の注意点につい てパンフレットを用いて説明している. 表 1 当院における術前栄養介入の基準 1)1 週間から 6ヵ月以内に大幅な体重減少がある 2)生化学検査値 Alb.3.5 以下 3)合併症による栄養状態悪化 (例:糖尿病血糖コントロール,腎臓病,高血圧, 肝機能障害,貧血,極度の肥満(BMI≧35)等) 4)PNI≦40 5)飲酒量が極度に多く,禁酒の必要性がある 6) 強制的な栄養介入・栄養指導の必要性があると医師 と管理栄養士が判断した場合 ①外来栄養指導 OR ②外来栄養介入 (栄養指導+ONS 処方)
消化器外科の患者に対しては,手術にかかわら ず,栄養不良者がおよそ 5 人に 1 人いる結果とな るため,術前の管理栄養士による介入が必須であ ると考える. 2.術前の診療科別 サルコペニアの発生頻度 1)対象 ①と同様. 2)方法 対象者は,外来受診時に管理栄養士により体組 成(In Body770),握力(左右 4 回計測実施の平 均値)を計測した.体組成については,インピー ダンス法により算出した四肢の除脂肪軟部組織量 (kg) を 身 長(m) の 二 乗 で 除 し た 数 値,SMI (skeletal muscleindex:骨格筋量指数)を用いた. サルコペニアの評価は,AWGS の基準値に準 じて管理栄養士が判定した.サルコペニアの有無 を電子カルテに記載し,その状況を分析した. 3)結果 手術準備外来の受診者の全体のサルコペニア発 生率は 18.7%であった(図 4).診療科別にみる と,消化器外科 56%,泌尿器科 32%,呼吸器外 科 6%,口腔外科 5%,婦人科 1%であった.消 化器外科に一番サルコペニアが多い結果となっ 出現率 ( %) 0 7.6 2.3 8 17.8 11.4 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 図 2 手術準備外来における各診療科別栄養不良者 71% 9% 15% 3% 2% 栄養介入の割合 消化器外科 呼吸器外科 泌尿器科 婦人科 口腔外科 48% 15% 23% 4%2% 2% 2% 1% 1% 2% ONSの種類 エンシェアH メイバランス リハタイムゼリー アップリード ラコール エレンタール エンシュア エネーボ ロイシンケア その他 図 3 栄養介入症例の内訳(N=104)
た.すなわち,身体の筋肉量が減少している患者 が多く,体たんぱく質が足りていない患者が多い と推測される.なお,患者の SMI と握力との相 関関係をみてみると,強い正の相関関係があるこ とが明らかとなった(図 5). また,サルコペニアの疑いの有無と在院日数を 比較したところ,サルコペニアの疑いが「ある」 患者は,「なし」にくらべて約 2 日間在院日数が 長くなる傾向があった(図 6). 3.手術準備外来が発足してからの DREAM 達成 に向けての達成度の成果 1)対象 当院の周術期支援センターが発足してからの DREAM(早期飲水摂取:Early Drinking, 早期経 口 摂 取:Eating, 早 期 リ ハ ビ リ テーション: Mobilizing)達成率をみるために,周術期支援セ ンター発足前後の症例を比較した.症例は,消化 器外科の胃・大腸の手術を実施した患者とし,介 入前群(2016 年 3~5 月実施手術)39 名(男性 25名,女性 14 名,年齢中央値 71 歳)と介入後 群(2017 年 3~5 月 実 施 手 術 )50 名(男 性 30 名,女性 20 名,年齢中央値 72 歳)の DREAM 達成率を比較した. 2)方法 本研究は,後ろ向き観察研究である.対象者を 1.5 16.9 21.4 14.7 23.4 18.7 0 5 10 15 20 25 出現率 (%) 図 4 診療科別サルコペニア発生頻度 y = 0.0999x + 4.2161 R² = 0.4942 r=0.70 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 0 10 20 30 40 50 60 SMI (kg/m2) 握力(kg) 図 5 SMI と握力の相関関係
症例に応じて期間ごとにリストアップし,電子カ ルテおよび温度板より情報を収集した.術後の DREAMの定義は,術後のクリニカルパスに準じ たものとし,早期飲水摂取は 1POD の朝から, 早期経口摂取は 1POD の昼から,早期リハビリ テーションは 1POD の朝からという基準で達成 率を比較・検討した. 3)結果 術後の早期飲水(Drinking)については,介入 前 90%であったが介入後には 96%と高い確率で 飲水を開始できる傾向がみられた(P=0.0963). 早期経口摂取(Eating)は,介入前 72%が介入 後 76%に変化した(P=0.6820).早期リハビリ テーション(Mobilizing)は,介入前 85%が介入 後 92%と高い確率で開始できる傾向がみられた (P=0.1208).3 項目すべての DREAM を達成し たのは,介入前は 59%に過ぎなかったものの, 介入後は 68%とクリニカルパスに準ずるものの 割合が増える傾向にあった(P=0.1862).(図 7) 症例数が少なかったため,統計学的有意差はみ られなかった.しかし,すべての項目において周 術期支援センター開設後の介入後群がクリニカル 0 2 4 6 8 10 12 14 16 サルコペニアあり(N=170) サルコペニアなし(N=746) 在 院 日 数( 日) 図 6 サルコペニア疑い患者の在院日数 % 90 72 85 59 96 76 92 68 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
DRinking EAting Mobilizing DREAM 介入前 介入後
図 7 周術期支援センター介入前後の DREAM(食べる,飲む,動く)達 成率
パスどおりに達成している症例が多くなってい た.今後は症例数を増やしてさらなる検討を進め たい. Ⅳ 周術期チームで実践する意義―管理栄養士の 役割を中心に― 周術期の管理には,ERAS®の概念にもあるよ うに,Skill Mix 型でチーム医療を実践する必要 性がある.当院では,2016 年 4 月 1 日より周術 期支援センター準備室を開設し,同年 8 月 1 日よ り周術期支援センターの設置を行った.支援セン ターには,外来診療部門を設置し,術前 2 週間に 待機的予定患者が受診する「手術準備外来」を設 けた.手術準備外来には,麻酔科医(1 名・専 任),外来看護師(2 名),手術室看護師(1 名), 薬剤師(2 名),管理栄養士(2 名,うち 1 名専 任),歯科衛生士(1 名),メディカルアシスタン ト(1 名)が常駐している.外来では,各職種が 術前に必要な情報収集,リスク評価,ミニカン ファランスを経て,入院時・術後の情報提供を実 施するカウンセリングへとつなげている.このミ ニカンファランスには外来型の NST も含まれる. 管理栄養士は,術前の患者の栄養状態の把握を するとともに,患者の食生活状況(食物アレル ギーの有無,食生活,サプリメント摂取の有無, 飲酒習慣,嚥下状態,生活状況,調理担当者等) や生活背景(介護度,ADL)を入院前に得ること ができる.さらに,術前の身体状況から術前経口 補水療法の適応の判断を麻酔科医とともに評価し ている.それらの情報はすべて電子カルテを通じ て病棟の管理栄養士やほかのコメディカルスタッ フに伝達している.情報提供の面では,入院時の 絶飲食時間の説明,術前経口補水療法の方法,術 後の飲水開始時間,食事開始時間をクリニカルパ スや日記(当院で配布している小冊子)をもとに カウンセリングを実施している. ミニカンファランスでは,多職種と情報交換を している.たとえば,看護師とは,食事面(介助 の有無,義歯の有無),サルコペニア(体内の筋 力不足,特に下半身の場合は転倒リスクにつなが る恐れあり),食物アレルギー,飲酒習慣(術後 せん妄のリスク)に関する情報を共有する.薬剤 師とは,サプリメント(おもに EPA,DHA の休 薬は必須),手術に際し休薬がある場合には術前 に脱水にならないように水分量の適切なアドバイ スを管理栄養士からも実施するなどの打ち合わせ を行っている.歯科衛生士とは,食事に関する点 で義歯の有無,口腔内の咀嚼等の問題点について の情報を共有している. 多くの職種と情報を共有することで,患者個々 の手術に関するリスク評価をすることができ,患 者を多角的にみることができる.管理栄養士の視 点では,患者の身体評価をするとともに,術後早 期回復を図るために「食べる(Eating)」「飲む (Drinking)」という Key Word から情報提供がで
きることが強みといえる. Ⅴ まとめ 当院での取り組みの結果から,Skill Mix 型の チーム医療により,ERAS®プロトコールの達成 も可能となり,さらには手術侵襲軽減策にもつな がる可能性が示唆された.特に,消化器外科では 栄養不良者の割合が多く,術前に管理栄養士が関 与し,栄養介入をすることで,栄養状態や身体状 況を悪化させないように整えることが期待でき る.さらに,サルコペニアを有する患者について は,術後の在院日数も長くなることが推測される ことから,術前のサルコペニアの栄養面,身体面 双方をフォローし,体たんぱく質を維持するため の指導を管理栄養士が実施する必要性があると考 える. 周術期チームのなかに管理栄養士を加えること により,患者の身体評価や,栄養・食事面での指 導を充実させ,術前・術後の食生活に関するさま ざまな提案や栄養管理の可能性をひろげることが できる.特に,患者への術前の栄養管理は,当 チームの成果により手術侵襲軽減策や在院日数の 短縮効果にもつながる可能性が示唆されている.
是非,管理栄養士も周術期チームの即戦力として 加えてほしい. 本特集における「当院における術前栄養管理の 実際とアウトカム」は,第 25 回日本消化器関連 学会 JDDW2017 のメディカルスタッフプログラ ム(2017 年 10 月 14 日)にて報告したものを 1 部含むものである. 文献
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