• 検索結果がありません。

3.2 車体構造車体構造は F1 と同じ構造となっておりモノコックに直接エンジン トランスミッションのユニットが取り付けられています フロントサスペンションも F1 のようにモノコックに取り付けられていますがサスペンションが壊れた際に取り外しにくい構造となってしまったため 今後の改善点と木下さんが仰

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "3.2 車体構造車体構造は F1 と同じ構造となっておりモノコックに直接エンジン トランスミッションのユニットが取り付けられています フロントサスペンションも F1 のようにモノコックに取り付けられていますがサスペンションが壊れた際に取り外しにくい構造となってしまったため 今後の改善点と木下さんが仰"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

レース走行における

ハイブリッドシステムの実用性

小山 亮 (神奈川工科大学大学院)

1. はじめに 近年、環境性能、燃費の観点から電気自動車やハイブリッ ド自動車が注目されています。このような流れは自動車レー スの場においてもありSuper GT には 2012 年からプリウス やCR-Z をベースとしたレース車両が参戦し、FIA(世界自動 車連盟)が主催している WEC(FIA 世界耐久選手権)にはアウ ディR18 e-tron クワトロとトヨタ TS030 HYBRID がハイ ブリッドレース車両として参戦しています。 私は2012 年 10 月 12~14 日に行われた WEC 第7戦富 士6 時間耐久レースにおいてプレス向けの Racing Hybrid の説明に参加させていただき、その後、TMG(Toyota Motorsport GmbH)の木下社長とハイブリッドプロジェク トリーダーである村田主査にピット内にて実車を目の前 にして車両の説明をしていただきました。(Fig.1,2) Fig.1 プレス向けのプレゼンテーション Fig.2 ピット内 2. WEC とは WEC のベースとなっている選手権は 1953 年から行われ ていた世界スポーツカー選手権(World Sportscar Championship)です。この世界選手権は、自動車メーカー &マニュファクチャラー主体で行われてきた2 座席スポー ツカーによる耐久レースです。参加車両についても規定が 次々と変化し、GT カーが主役だった時代もあれば、プロ トタイプカーが主役だった時代もあり、シリーズ名称もシ リーズに含まれるレースもさまざまな変遷をたどってき ました。しかし、1991 年に FIA がエンジン規定を変更し たこともあって、次々にメーカーやマニュファクチャラー がシリーズから撤退し、1992 年シーズンを最後に選手権 自体が消滅してしまいました。その後、耐久レースとして 有名なACO(フランス西部自動車クラブ)が主催している ル・マン24 時間レースがスポーツカー、プロトタイプカ ーのレースを盛り立ててきました。(Fig.3,4) Fig.3 1992 年ル・マン 24 時間レース 第2 位でフィニッシュした TS010

顔写真

(2)

Fig.4 1999 年ル・マン 24 時間レース 第2 位でフィニッシュした TS020

そして、2012 年から FIA と ACO が協力して、20 年ぶり にFIA 世界耐久選手権(World Endurance Championship、 通称:WEC)を開催することが決定しました。 富士スピードウェイにおいても1982 年から 1985 年ま では世界耐久選手権として、1986 年から 1988 年まで世界 スポーツプロトタイプカー選手権として世界選手権が開 催されていたため、実に24 年ぶりに富士スピードウェイ に世界選手権が帰ってくることになりました。 3. TS030 HYBRID 3.1 概要 1999 年以来 9 回目のル・マン 24 時間レースへの挑戦と なるトヨタはレーシングハイブリッドを搭載したTS030 でWEC に参戦しています。アウディが前輪にモーターを 搭載しているのに対してTS030 HYBRID はリアのギアボ ックスに搭載されているモーターを使用しエネルギーの 回生/放出を行い、ミッドシップに搭載した3.4L V8 自然 吸気エンジンをアシストするレイアウトになっています。 (Fig. 5,8) Fig.5 TS030 HYBRID 3.2 車体構造 車体構造はF1 と同じ構造となっておりモノコックに直 接エンジン、トランスミッションのユニットが取り付けら れています。フロントサスペンションもF1 のようにモノコ ックに取り付けられていますがサスペンションが壊れた際 に取り外しにくい構造となってしまったため、今後の改善 点と木下さんが仰ってました。レース中にどのようなトラ ブルが発生してもすぐさまレースに復帰できるようにモノ コック以外の部品はすべて交換可能となっています。Fig.6 は走行前にアライメント調整を行っている写真です。 Fig.6 アライメントの計測 3.3 コックピット ステアリングには4 個のロータリースイッチが取り付け られており、一見セッティングの幅は少ないように思えま すがこのスイッチ1つ1つは単独ではなく組み合わせと して使用するため数百通りのセッティングの種類が存在 します。レース中は車両の状態をテレメトリーでピットに 送り、このデータをバックヤードでエンジン班、シャシー 班に分かれたエンジニアが分析しレース状況に合わせた 適切なセッティングを見つけ無線でドライバーに指示を 出します。( Fig.7 ) Fig.7 コックピット

(3)

3.4 ハイブリッドシステム

THS-R ( Toyota Hybrid System – Racing ) とは市販車 に搭載されているTHS-Ⅱ(Toyota Hybrid System -Ⅱ)を ベースとして構築したモータースポーツ用のハイブリッ ドシステムです。市販車に搭載されているTHS-Ⅱのシス テムは以下の4つの特徴があります。 ①アイドルストップ ②EV 走行 ③電気CVT (エンジンの高効率運転) ④回生 この4つの特徴のうち①~③の機能はレース走行におい ては使用されないためTHS-R は回生機能(エネルギーアシ スト&エネルギー回収)に特化させ、システムの軽量化を図 るために動力分割機構と発電機を廃止しています。 また、レースでは市販車の60 倍ものエネルギーを回生 しなくてはいけないため、市販車の電池とMGU (Motor Generator Unit ) を使用してしまうとブレーキング時の エネルギーの大部分を熱として捨ててしまうことになり ます。そのため、THS-R では 2 次電池ではなくキャパシ タを採用しMGU の出力も向上させています。冷却性能に ついても高負荷連続運転でハイブリッド機能を維持する ために向上させています。 また、MGU を使用してエンジンを始動させるためセル モーターは搭載されていません。 Fig.8 ギアボックスに組み込まれたモーター (トヨタ・レーシングホームページより) (1)協調回生制御 ブレーキング時はエネルギーを回収するために回生を 行いますが回生と同時に油圧ブレーキ、ギアチェンジも行 わなくてはいけません。これらのコンポーネント間を協調 させるために千分の一秒オーダーで制御を行っています。 これはギアボックスがマニュアルのため、シフトダウン時 にモーターの制動力を弱めないとドグリングが噛み合っ たままになってしまいシフトダウンができません。そのた め、この制御のタイミングが合わないとリアがロックして しまいコースアウトしてしまいます。この制御はエンジン のシミュレータで数々のテストを行ってはいたが実際に はうまくいかず非常に苦労したと仰っていました。 また、一般的にはブレーキディスクをある一定の温度に 保つために冷却しなくてはいけませんが回生制動を行う ことで想像以上にブレーキディスクの温度が上がらず、ブ レーキの開発者を困らせたそうです。(Fig.9) Fig.9 回生を行っているリアブレーキディスクは黒いまま (プレス資料より) (2)高電圧の安全性 THS-R で使用している MGU は 700[V]の高電圧を採用 しているため感電することは大事故につながります。その ため、様々な安全対策がとられています。 まず、システム全体としてはインバータとキャパシタは 一番頑丈なモノコックの中に納めています。しかし、モー ターはギアボックス内にあるためモノコックからギアボ ックスまで高電圧配線を伸ばさなくてはいけません。ここ で考えられる最悪の事故の状況はモノコックからギアボ ックスが分離してしまい高電圧配線が露出してしまう状 況です。このような事故時の安全性を確保するために直流 はモノコック内だけで使用し、事故の際に断線する可能性 のあるモノコックからギアボックスまでは交流となるよ うにしています。

(4)

次にキャパシタについては3 軸の加速度センサーが取り 付けられ、そのセンサーが30[G]以上を検出すると電流を 遮断するようになっており、ケース自体もドライバーが生 存不可能な60[G]まで耐えられるように設計されています。 また、キャパシタの隣には安全プラグが取り付けられてお りこのプラグをはずすことでキャパシタからの電流を遮 断することができます。ピット内にはこの安全プラグを取 り付けるとLED が点灯し安全を知らせるシステムが構築 されており、作業時には必ず安全プラグを車両から取り外 し、先ほど説明した位置にプラグを取り付けることを徹底 していると村田さんは仰っていました。(Fig.10,11) Fig.10 キャパシタの隣にある安全プラグ Fig.11 質問をする執筆者 4.決勝 予選でトップタイムを出したトヨタ・レーシングはポー ルポジションからのスタートでした。危なげなくオープニ ングラップを走行し、1 位を順調に快走していました。し かし、2 位を走行していたアウディが燃費重視に対し TS030 は加速性能重視なため、6 時間走行するためには TS030 はアウディよりも 1 回多くピットインしなくては ならず、ピットイン1 回分のタイムマージンを稼いでおか なくてはいけませんでした。2 位のアウディとの差を広げ られない状況が続き、そのまま終盤に入ってしまいました。 ここでトヨタ・レーシングは3 名のドライバーのうち最も ラップタイムが速かった中嶋一貴選手にファイナルステ ィントを託し猛プッシュしました。その結果、必要であっ た2 位のアウディとの差をつくることができ、トヨタ・レ ーシングは母国GP で優勝することができました。 (Fig.12~16) Fig.12 ホームストレートを走行する TS030 Fig.13 ピットウォールスタンドとリーダーズボード Fig.14 グランドスタンドで旗を振り応援する観客

(5)

Fig.15 フィニッシュ時のラップ数 Fig.16 表彰台 (トヨタ・レーシングホームページより) 5. おわりに 一般的にハイブリッド車両といわれると一番に頭に浮 かぶのは燃費がいいのかということだと思います。確かに レース走行をする上で燃費を向上させなくてはいけない 場面も存在するとは思いますがレースに参戦している以 上、勝つことを目標とすると思います。そのため、ハイブ リッド車両ではモーターによるアシストを行うことでど れだけタイムを縮められるかが重要となってくると思い ます。村田さんは回生して得たエネルギーをコーナーの立 ち上がりで使用する際に加速度を固定すればその分エン ジンが絞れるので燃費が向上しますし、加速度を固定せず エンジンにそのままモーターの馬力を追加すれば加速度 が向上すると仰ってました。これはハイブリッド車両にし たことでセッティングの幅が増えたということだと思い ます。以上のような背景を知った上でハイブリッドレース 車両が参戦しているレースをみればより楽しめると思い ます。 Fig.17 集合写真 謝辞 予選を明日に控えた練習走行の合間の大変お忙しい中 ピット内にて、たくさんの貴重なお話をしていただいた、 木下さん、村田さんをはじめとしたトヨタ・レーシングの スタッフの皆様、トヨタ自動車モータースポーツ部の皆様、 FSW の関係者の皆様に心より御礼申し上げます。 参考URL トヨタ・レーシング http://ms.toyota.co.jp/jp/wec/index.html TMG http://www.toyota-motorsport.com/en/ WEC公式ページ http://www.fiawec.com/

参照

関連したドキュメント

と歌を歌いながら止まっています。電気きかん車が、おけしようを

存在が軽視されてきたことについては、さまざまな理由が考えられる。何よりも『君主論』に彼の名は全く登場しない。もう一つ

当社グループにおきましては、コロナ禍において取り組んでまいりましたコスト削減を継続するとともに、収益

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

巣造りから雛が生まれるころの大事な時 期は、深い雪に被われて人が入っていけ

単に,南北を指す磁石くらいはあったのではないかと思

・毎回、色々なことを考えて改善していくこめっこスタッフのみなさん本当にありがとうございます。続けていくことに意味