2.世界の中央銀行
イングランド銀行
民間実業家の出資により設立後、1825年の恐慌を契機に,他の民間銀行が支払準備をイングランド
銀行に預けるようになり、イングランド銀行を中心とする決済システムが確立
1844 年の銀行条例により、イングランド銀行券が強制通用力をもつ法貨としての地位を確立
連邦準備制度
連邦準備制度理事会(FRB)の下、民間銀行の出資による12 の地区連銀が中央銀行業務を実施
欧州中央銀行
欧州中央銀行がユーロ導入国の金融政策を一元的に決定、当該方針の下、各国の中央銀行が中央
銀行業務を遂行
設立年 中央銀行 国(通貨)
1668(世界最古) リクスバンク スウェーデン(クローネ)
1694 イングランド銀行 英国(ポンド)
1882 日本銀行 日本(円)
1913 連邦準備制度 米国(ドル)
1998 欧州中央銀行 ユーロ諸国(ユーロ)
6.日本銀行の業務概要
金融政策 「物価の安定」に向けた政策企画等
信用秩序維持政策 「金融システムの安定」に向けた施策の企画等
(考査、オフサイト・モニタリング、「最後の貸し手」 )
中央銀行としての業務運営・企画 銀行券の発行・流通の管理、国庫・国債事務、
決済システム・市場基盤の整備、システム企画・
開発等
国際金融 国際金融システム安定に向けた取組み、海外
中央銀行等との協調等
調査・研究 国内外の経済・金融市場の分析、日銀短観・
物価指数の作成、経済理論の研究等
情報発信・広報 記者会見、国会向け説明、広く国民に向けた
広報、金融教育等
組織運営に関する業務 経営企画、採用、人材育成、施設管理等
日本銀行
8.日本銀行券の一生
流通高91.2兆円
家計・企業
など
(保有高 82.6兆円)
金融機関
(保有高 8.7兆円)
新札
※図中の計数は2012年中または2012年12月末時点。
※流通高、保有高には貨幣も含む。
損傷した銀行券
の引換
預金引出
預入
鑑査・消却
支払 58兆円 受入 55兆円
国立印刷局
9.通貨の種類
中央銀行通貨 日本銀行当座預金
現金通貨
日本銀行券
貨 幣
民間金融機関預金
預金通貨 当座預金 普通預金
準通貨 定期預金等
マネタリーベース
マネーストック
マネタリーベース・・・ベースマネー、ハイパワード・マネーとも呼ばれる
マネーストック・・・・・通貨量の残高を集計した統計。日本銀行は、M1、
M2、M3、広義流動性の4 種類を作成・公表
10.金融政策の決定
── 会合は毎月1~2回、通常2日間開催。必要に応じ、臨時に開催。
政策委員会の9名の委員が、多数決により、当面の
金融政策の運営方針を決定
26年11月18日
当面の金融政策運営について
日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定
会合において、次回金融政策決定会合までの金
融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決
定した(賛成8、反対1)。
マネタリーベースが、年間約80兆円に相当する
ペースで増加するよう金融市場調節を行う。
13.オペレーション手段
資金供給のためのオペレーション
資金吸収のためのオペレーション
名称 期間 金利 概要
共通担保資金供給 1年以内 入札/0.1% 差入担保を裏付に資金を供給
国債買現先 1年以内 入札 国債を売戻条件付で買入
CP/社債買現先 3ヵ月以内 入札 適格CP/社債を売戻条件付で買入
外貨資金供給 3ヵ月以内 固定 ドル、カナダドル、ポンド、ユーロ、スイスフラン
国庫短期証券買入 買い切り 入札 国庫短期証券を買入
国債買入 買い切り 入札 利付国債を買入
ETF/JREIT買入 買い切り 入札 ETFはTOPIX、日経225、JPX400連動
名称 期間 金利 概要
手形売出 3ヵ月以内 入札 日銀振出手形を売却
国債売現先 6ヵ月以内 入札 国債を買戻条件付で売却
14.相対型金融調節手段
名称 期間 金利 概要
補完貸付制度 1日 0.3%
オペレーションによる金融調節の枠組みを補
完する目的で取引先金融機関からの申込みに
応じて差入担保の範囲内で貸付
補完当座預金制度 ―― 0.1%
法定準備預金を超える金融機関預金に利息を
付すもの
貸出支援基金 4年以内 0.1%
わが国経済の成長基盤強化及び貸出増加に
向けた民間金融機関の取組みを支援
補完貸付・当座預金制度により「量的・質的金融緩和」導入前の
誘導目標である無担保コールオーバーナイト物レートは双方の金
利の間(0.3~0.1%)で変動する=corridor
15.金融システム
企業や家計など経済主体間における、資金やリスク(損失発生
等の可能性)の移転・配分を行うための仕組み全体
多くの金融機関や金融市場、決済システムで構成
・ 都銀
・ 地銀、地銀Ⅱ、信金
・ 証券会社
・ 短資会社 等
・ 短期金融市場 (コール、レポ市場など)
・ 証券市場 (国債、株式市場など)
・ 外国為替市場 等
金融機関 金融市場
日本銀行
決済システム
資金決済システム
証券決済システム
清算機関
取引 取引
決済 決済
決済
17.金融機関が抱える主なリスク
リスクの種類 リスクの内容
信用リスク
与信先(貸出先、保有有価証券の発行体、債務保証先等)の財
務状況の悪化などにより、貸出や有価証券等の資産価値か減
少ないし消失するリスク(典型的には,貸出先の倒産により元利
金の支払いが受けられなくなるリスク)
市場リスク
金利や株価、為替レートの変動等に伴い、有価証券、外国為替
など保有している資産・負債の経済価値が変動し、損失が発生
するリスク(金利リスク、株式リスク、為替リスクなど)
流動性リスク
運用と調達の期間が一致していないため、多額の預金流出など
が生じた場合には、必要な資金を運用の見直しにより迅速に確
保できない、また通常より高金利での資金調達を余儀なくされる
といったリスク
オぺレーショナル
リスク
事務ミス、法令・規則違反、システム障害、自然災害等による業
務継続の困難化などによる損害の発生、顧客・市場からの信認
の低下などのリスク
18.中央銀行業務と金融システム
債権者としての与信管理
日本銀行は、銀行券の流通,決済システムの安定的な運行、各種オペレー
ション、流動性の供給(日中当座貸越)、最後の貸し手機能(後述)、国庫金の
収納・支払い等、取引先金融機関に様々な与信を実施している。
中央銀行業務で得られた情報の活用
日本銀行は、中央銀行業務を通じて得られる知見や問題意識とあわせて活用
することにより、金融システムの安定確保に向けた取り組みを効果的に遂行で
きる。
政府(金融庁、財務省)との緊密な連携
金融庁は、規制・監督当局の立場から、金融機関や金融市場等に関する法令
等の企画・立案や免許付与を含む各種行政措置や検査等を行っている。
財務省は、健全な財政の確保等の観点から、金融機関の破綻処理制度や金
融危機管理に関する企画・立案の役割を担っている。
日本銀行は、金融庁、財務省と適切に連携・協力しながら金融システムの安
定確保に努めている。こうした枠組みは、世界的な金融危機に際しても有効に
機能したものと評価されている。
20.信用秩序維持を目的とした信用供与等
名称 概要 根拠条文
日中当座貸越 日本銀行に差入られている共通担保を担保とする当座
貸越(期間:日中、無利息)
第33条
国債同時決済時
の日中当座貸越
国債と資金を同時に決済する際、取引先から受取る国
債を担保とする日中当座貸越(期間:日中、無利息)
第33条
補完貸付 オペレーションによる金融調節の枠組みを補完する目
的に取引先金融機関からの申込みに応じて貸付(期
間:翌日物、利息:基準貸付利率0.3%)
第33条
最
後
の
貸
し
手
機
能
有担保貸付 個別金融機関に対して機動的、弾力的に実行する有担
保貸付(期間:翌日物、3か月、利息0.3%)
第33条
一時貸付 コンピュータ・システム障害等の偶発的な事由により不
測の一時的な資金不足が生じた金融機関等に対して
資金決済の円滑確保の必要に応じて実行する無担保
貸付(期間:1か月以内、利息:政策委員会が決定)
第37条
特融等 システミック・リスクの顕在化の恐れがある場合、政府
から要請を受けて、担保を徴求しない等の特別な条件
で実行する貸付等
第38条
21.決済システム(資金決済の例)
学生A
仕送りの依頼
Bの預金口座 Aの預金口座
全国銀行データ通信システム
C銀行 D銀行
C銀行の日本銀行 D銀行の日本銀行
計算結果通知
振込依頼
入金通知
- 引落し + 入金
データ送信 データ受信
振替 振替
実家B
22.日本銀行考査と金融庁検査
日本銀行考査 金融庁検査
法的根拠 日本銀行法(第44 条)を根拠と
した考査契約
銀行法(第25 条)等
目的・内容
最後の貸し手機能等の適切な
発揮に備えるため、業務および
財産の状況を調査し、その結果
に基づき助言等を行うこと
金融機関の業務の健全かつ適切
な運営を確保するため、法令等遵
守態勢、各種リスク管理態勢等を
検証し、問題点の指摘やそれに対
する認識を確認すること
適切な実施
を確保する
仕組み
正当な理由なく考査や情報提供
を拒絶した場合、その事実を公
表することがある(日本銀行の
当座預金取引等を解約すること
も妨げない)
検査を妨害、忌避する場合には罰
則が課されることがある
(クレディスイスファィナンシャルプ
ロダクツ銀行、UFJ銀行、日本振
興銀行等)
24.経済物価情勢の展望(26年10月)
26~28年度の中心的な見通し(前年比%)
※ 政策委員見通しの中央値。消費者物価指数(除く生鮮食品)は、消費税率引き上げの影響を除くケース。
見通しの上振れ・下振れ要因
【景気】 ① 輸出動向
② 消費税率引き上げの影響
③ 企業や家計の中長期的な成長期待
④ 財政の中長期的な持続可能性
【物価】 ① 企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向
② マクロ的な需給バランス
③ 物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度
④ 輸入物価の動向
実質GDP成長率 消費者物価指数
26年度
+0.5
+1.2
27年度
+1.5
+1.7
28年度
+1.2
+2.1
30.「量的・質的金融緩和」の波及ルート
量的緩和:マネタリーベースの拡大、質的緩和:長期国債とリスク性資産の拡大
長期国債買入の拡大と年限長期化 ETF・J-REIT買入
イールドカーブ全体
への低下圧力
銀行や投資家の
ポートフォリオ調整
資産価格
への働きかけ
インフレ期待
への働きかけ
消費者物価の上昇
金融環境の改善(借入コスト、銀行信用、株価等)
支出の増加(消費、設備投資、輸出)
需給ギャップの改善 予想インフレ率の上昇
実質金利の低下
ルート②
ルート④
ルート①
ルート③
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