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コンサルティング業務の展開と会計士の独立性-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

コンサルティング業務の展開と

会計士の独立性

よし なお

松 本 祥 尚

L

はじめに 現在の公認会計士(以下 CPA)の行動領域は監査や税務業務のみならず,資 本主義経済上の要請からヨリ広範なビジネス・コンサルティング業務へと拡大 してきている。このような情況を反映して CPAの数は安定的に増加し,アメリ カ公認会計士協会(以下 AICPA) なる職業団体は 20万人を越えるメンバーを 有するに至った。しかし,これらコンサルティング業務に関して,監査人の独 立性の意義との関係で,その意義・限界等についての確執が半世紀以上も続い ている。また同時に,コンサノレティング市場では経営相談技術者協会 (Associa -tion of Management Consulting Engineers)と経営相談業務(以下 MS) によ

り名声を確立した会計事務所聞の競争が激化した。特に

1

9

5

0

年代半ばまでに は,監査及び税務に加えてクライアントへのコンサルテイングは,企業からの 逓増的需要に応じる形で戦略的機会と受け取られた。そして①当該競争におけ (1) 会計士の供する経営相談業務に関する用語として,マネジメント・サービス(Manage -ment Service: MS),マネジメント・アドバイザリー・サービス (ManagementAdvisory Service: MAS),マネジメント・コンサルティング・サービス(ManagementConsulting Service: MCS)という異なるものがある。この場合, MSとMASがCPA固有の経営コ ンサルテイングであり, MCSが他の専門コンサルタントをも含めた呼称であるとか,ま たMASが単なる代替案に係る助言に留まるのにたいし,MSはその実行支援まで含むと 解されることもある。しかし,本稿では3つの概念内容に関して区別する必要性を見出せ ないので,何れの名称も同義として扱うことにする。

( 2 ) Previts, Gary J ohn, The Sc

.

o

ρ

e of CPA Services. A Study of the Deve1

.

o

ρ

ment of the Concψt of lndψ,endence a四dtheProfession~s Role in Society(New York: John 羽Tiley& Sons, 1985), p 5

(2)

280 第62巻 第3号

7

8

る批判の的として,監査上の批判的検査判断にさいして監査人の公正不偏性に, 兼業による否定的影響が及んでいるのではないか,と疑義を呈されたり,②

MS

の競争入札にさいして不公正な利益があるのでは, と非難されるのである。 独立性に関する

MS

と監査兼業の一般的主要論点は,森教授によると以下の ように概括できる。 (1) (2)

(

3

)

(I) (2) 兼業肯定論

MS

は経営者への助言であって経営上の意思決定を行うものではないの で,監査機能に必須の独立性を損なうものではない。 当該専門的助雷が意思決定に参画するものであることを認めても, その ことが即, 会計士が経営者として行動することを認めるものではない。つ まり, フォーマルな経営責任・権限は依然として経営者に属するのである から,会計士による助言は権限ではなく意思決定に対する単なる影響力で ある。 独立性は基本的には精神的必構えであるから,

MS

においても何等問題 は生じ得ない。 兼業否定論

MS

が助言に留まるとしても, それを利用するために経営者は専門的助 その観点からすれば助言と意思決定とを区別す 言を求めているのであり, るのは事実に反する。 多くの会社では内部コンサルタントの代りに外部の専門家を利用してい るのであり, その点からすれば経営上のフォーマルな地位にはなくとも事 実上,経営意思決定に参加している。 (3-a) 独立性が精神的心構えの問題であるとしても,意思の強さには個人 差があるので,必ずしも全ての会計士が独立性を保持し得るとは看倣され ない。

(

3

-

b

)

制度監査においては契約関係にない外部利害関係者の監査に対する (3 ) 森安「会計士の独立性とマネジメント・サービスJr監査』第8巻第4号 (1964年)12~15 頁。

(3)

7

9

コンサJレティング業務の展開と会計士の独立性 -281ー 受容司能性が重要であり,いわゆる外観的独立性の侵害可能性は無視でき ない。

(

4

)

l

つ典型的な見解として,非監査業務と監査業務との兼業による独立 性脅威よりも,それ以前に独立性にたいする脅威として重視すべき論点が 既に存在するというものである。つまり,兼業圧力を持ち出すまでもなく, 独立性への最大の脅威は

CPA

が証明機能を行使する場合にある。何故な ら,もし

CPA

とクライアントとの意見を異にしたときには,

MS

や税務に かかわらず

CPA

は定期的な年次報酬を失う可能性に直面するのである。 よって独立性脅威は公正妥当な会計処理方法の代替性にある。 上記のような論争は現在でも繰り返されており,未だ統一的見解には至って いない。そこで本稿では,先ず

MS

なる呼称が定着してきた歴史的経過を検証 し,

MS

実務に関する行為規範たる

WMAS

基準書』の規定を検討することで

MS

の意義及び内容を明らかにし,次に現代企業における経営活動に対するコンサ ルティング活動との絡みで確認した後,既述の論争点(兼業圧力と不公正問題) に関して考察を力口えることにしたい。

1

1

.

.

非監査業務の現況把握 1.初期の職業会計士業務 会計士による非監査業務と監査業務の兼業に伴なうコンフリクトは,何もア メリカ固有のものではない。イギリスにおける会社法規定では,当初監査役被 選資格としては何等の専門知識・技能も有さない素人たる株主監査役が求めら れ,当該監査役を補助するために外部の職業会計士が雇用されていた。このよ うに当時の会計士は,現在では重要な中核的会計士業務である監査に直接携わ

(4) Carey, JohnL.,“The Independence Concept Revised,"The Ohio CPA Joumal

(Spring 1985), pp.. 5-8

(5 ) 詳細については,森寅「英国における監査役の独立性と限定監査報告書一一ー前世紀より 今世紀初頭にかけての英国監査事情一一Jr香川大学経済論叢』第32巻 第3・4・5号

(4)

-282- 第62巻 第3号 80 るのではなく,間接的な関与に留まり,他の種々のサービスを収入の中心とし ていた。イギリス公会計士が職業専門家団体を形成する以前から提供していた 種々の業務の実例として,ブラウン

(R

Brown)は以下のものを掲記する。

(

1

)

差押え財産の管理人及び保全人 (2) 債権受託者に代わる保管人ないし管理人

(

3

)

破産管財人 (4) 清算会社整理及び会社利益の調整にさいしての責任者 (5) 会計帳簿の記帳と決算整理 (6) 未決算勘定の検査と調整 (7) 裁判前における賠償請求目的の計算書・報告書・請求書の作成

(

8

)

長期未済負債及び破産財産からの清算分配金の探索と回収

(

9

)

会計士業務の他の全ての分野 上記リストには監査業務は含まれておらず,その中心的業務内容は破産処理 業務にあったことが見出せる。そして,現在のように監査が破産処理業務に置 き換わり公会計士の最重要業務となるのは, 1880年以後20年間の聞において であった。 一方,アメリカにおける公会計士業務の生成を考慮すると,公益企業の成長 に対応して,監査に対する重要性が認識される。つまり, 19~20 世紀に至る経 済的発展のなかで,代表的公益企業である鉄道会社の会計帳簿作成のような記 帳代行業務や,経営活動の地理的拡大に応じた各地支庖帳簿の検証・監査のよ うな経営者指向監査について,アメリカ公会計士への需要が生起した。また投 ( 6 ) Brown, Richard, A History of Accounting and Aαountants(N ew Y ork: Augus -tus M. KeIley, 1968), pp. 201-202

( 7 ) Parker, R H,“The Development of the Accountancy Profession in Britain to 1919,"unpublished manuscript (University of Exeter, 1984), p 18, in Previts, G.. J. opci,.tp..18 (8 ) アメリカにおける会計士監査の発展についての詳細は,森賀「米国における監査報告書 の発展(一)に)Jr香川大学経済論叢』第33巻第2

5号 (1960

61年), w会計士監査論(増 補版)J (白桃書房, 1975年)第1・2章,並びに千代田邦夫r公認会計士 あるプロフエツ ショナ Jレ 100 年の闘い ~.J (文理閣, 1987年)第1・2章を参照されたい。

(5)

81 コンサJレティング業務の展開と会計士の独立性 -283 資銀行等による企業統合の時代に入り,被合併会社の経営状態の監査や,金融 機関の要請に応じた企業の担保能力検証を目的とした信用調査ないしは信用監 査への需要が生じてきたのである。 クリーブランド (FA Cleveland)によれば,職業会計士の職域として,経営 コントローノレ全般が考えられ,既述のような監査や調査も投資者ないし債権者 の権利にかかわる利害関係の下でなされるもの,と解される。そしてさらに, 雇用者たる経営者の側では弁護土にたいしてと同様に年間のコンサルティング 報酬によって会計土を雇うようになり,-コンサルティング会計士 J(Consulting Accountant)なる職業が生成したとし,会計士業務と弁護士業務との酷似性が 指摘される。 以上の結果,公会計士に対する役割期待として,イギリスにおける職業会計 士生成当初からコンサノレタント・アドバイザー・監査人といった多様な役割が 混在し,以後においても残存していったと解されるのである。 2.パブリック・セクターとプライベイト・セクターのMSに対する対処 コンサルタントとしての社会的認知 プレヴィッツ (G..J.Previts)によれ ば,第二次世界大戦中イギリスにおいて,空軍の早期警戒レーダー・システム の開発に科学者が参画することによって,通信その他の組織的分析に関する効 果的な調査を可能にした。それが「オペレーションズ・リサーチ」であり,こ の後,産業上に広く利用されることとなる。と同時に,当該新技術は会計助言 サービスに組み込まれ,経営上の指導・勧告業務が公会計サービスのうちの広 い範囲を占めるに至った。さらに,事業家のほうでも,計画・実施を当該技術 の適用により効率化できる可能性を見出し,内部・外部の会計士に統計的・会 計的報告書の形でのサービス提供を期待した。 この事実を反映して,経営者は取引を実施するまえに公会計士に助言を求め ( 9 ) Cleveland, F.A,“The Scope of the Profession of Accountancy," The Journal

0

/

Aaountancy, IV, no..5 (1905), p..52 (10) Previts, G..J, op..at, pp. 72-73

(6)

-284 第62巻 第 3号 82 る傾向を強めて行き,会計経験の長い独立会計士が種々の助言やコンサルティ ング(特に財務に関して)をクライアントに提供できる地位にいることが確認 されたのである。そして,このような建設的・創造的サービスに加え,独立会 計士は財務諸表に依拠する人々にたいし,財務諸表の独立監査人としての十分 な責任をも果たさねばならなくなり,後者に関するかぎり,クライアントへの 忠誠ではなく社会全体にまで自らの業務の誠実性に関する責任が拡大される, と考えられた。 兼業圧力 戦後 CPAに対する周囲からの役割期待が高まるにつれ,当然に 競争相手やそれらを後盾にした議会との車

L

離が生起することになる。 アメリカ会計士協会(当時 AIA) は,大規模事務所で当時開発済であった業 務分野に地方事務所実務を拡張することを目的として, 1953年秋に初めて M S 委員会を開催した。このような積極的対応の過程で問題として提起されたのが, ① CPAは一般にどのような提供可能サービスを有するのか,②当該サービス を提供するためにどんな特別の準備が必要か,③何が会計に関連した経営意思 決定の分野か,④一般に会計サービスと認識されているものと M Sを分離すべ きか否か,ということであった。その解答として, AICPAは CPAの提供する M Sを解説した小冊子を 1957年に用意し,このウェリントン委員会 (We

l

1

in -gton Committee)報告書で以下のような8分野の M Sを掲記した。

(

1

)

全般的経営 (generalmanagement)

(

2

)

財務 (finance) (3) 生産 (production) (4) 販売 (sales)

(

5

)

事務経営 (officemanagement)

(11) Queenan, J ohn w.,“The Public Accountant of Today and Tomorrow," The Accounting Review, XXI, no2 (1946), p.258

(12) Grady, Paul,

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:

ηtte目 C(Jntributionso} Selected Accounting Practitioners, II, ed.., Y. K Zimmerman, Urbana, IL: Center for International Education and Research in Accounting, 1978, p.65, in Previts, G.l, o}うcil,p 74.

(7)

83 コンサルティング業務の展開と会計士の独立性 (6) 購買 (purchasing) (7) 運輸 (trafficand transportation) (8) 人事 (personnel) -285ー しかし,依然として,中止すべき M Sと他の会計実務との境界について会計 士間で同意は存在しなかった。ヒギ、ンズ(TG..Higgins)は,それでも M Sを供 するに当たっての一般的な制限として,意思決定の役割は全て避けるべきであ るということは認識されているとし,職業倫理委員会の質問にたいし,非 CPA との競争にかかわらず、メンバーの専門的活動全てに行為規則が適用されるべき であり,また M Sのみを採り挙げて行為規則以上の体系化を図るのは妥当では ない,と述べている。 一般に公会計士や研究者のなかでは,ブライトン (GD Brighton)のように, 公的監査に限定されない独立性概念の必要性を説き, CPAとしての独立性 (CP A independence)が全てのサービスに適用されるとする見解が多数を占め ていた。そしてこの後, 1969年に至り AICPAでは,全ての CPAがその職業専 門家としての資格や倫理規程・責任と矛盾しない範囲において, M Sを提供でき るように M Sを CPAの正当な機能とすることを協会の目的とする,という決 議案を採択することになるのである。 他方 M Sの普及とともに, SECもM Sを供する CPAの規制に関心を持ち始 め, 1957年の年次報告書で M Sと独立性に関する警告を提起した。そのなかで, 独立性欠知と看倣される理由として,証明機能を担う監査人がクライアントの 経営者を補助することに関心を抱き,経営者ないし所有者の個人的代理人とし て M Sを提供することと,彼等に代わって経営意思決定を行うこととの境界を

(14) Wellington, Roger,“Management Services-A Challenge to the Profession," The Journal of Acωuntancy, XCVII, no. 4 (1957), pp.54-58

(15) Higgins, Thomas G.,“Professional Ethics and Public Opinion," The ]ournal oj Acwuntancy, XCVIII, no 5 (1958), pp. 36-37

(16) Brighton, G.D,“Aid to Management Beyond the Audit," The Aιcounting

Rev切ω,XXX, no.. 3 (1954), p. 589. (17) Previts, G. J,

φ

ci,.tp..94

(8)

-286- 第 62巻 第 3号 84 明確に区別していない,という事実の存在を指摘した。この SECによる警告 への反応として,モス(M.

F

.

.

Moss)は企業の意思決定プロセスを 3段階に分け ることによって解消し得ると説色①問題決定,②代替的行動案の発見,Q:企 業の利益目標達成行動案の選択,に区分した。そして,独立 CPAは意思決定の 前2段階において経営者を補助し得,またすべきであるが,行動段階である選 択行動に関しては経営者の責任の下に成されるべきである,と解説したのであ る。 兼業管理への端緒

6

0

年代の黄金時代 (go-goyears)の大量の新株発行と企 業の登録業務を経験し, CPAも社会的地位の高い職業専門家として認められる ようになった情況の下で,今日の各会計事務所による MS・監査業務専門化の基 礎となった代表的見解が提示されることになる。マウツ=シャラフ

(RK

Mautz & H. A.Sharaf)によると, CPA監査人という見地からすると M Sの提 供は監査人の独立性を侵害する恐れがあり,故に監査機能は会計事務所におい ては他のサービスと分けて管理されるように勧告したのである。このような思 考は, MSが社会的に普及・定着してきたことを受けて,この後 M Sと監査業 務との兼業による独立性侵害可能性を知可にして管理して行くか, という独立 性管理の問題点へ MS提供可能性の論点から移行したと考えられる。 このマウツ等による独立性の観点から兼業管理を志向した見解を受け,以後 においては,正規の業務である監査のために用いられる伝統的な技術とは別個 の M S固有の技術にたいして,適切な教育訓練・監督・検閲を如何に行って行 くか,が主要論点となった。当該論点についての調査が 74 年 ~76 年にわたり,

サマーニナイト

(

EL

Summers

&

K

E.. Night)を中心に実施され, wMASに 関する知識体系と試験.D(MAS Body of Knowledge and Examination:以下 (18) “SEC Comments on Independence with Respect to CPAs," The Journal

0

/

Ac

-ωntancy, CIV, no.4 (1958), p..77

(19) Moss, Morton F..,“Management Services and the CP A Examination," The Acwunting Revieω, XXXVII, no..3 (1962), p.. 733.

(20) Mautz, R K and HusseinA Sharaf, The Philosophy

0

/

Auditing(Florida: AAA,

1961), pp.218-225 近津弘治監訳・関西監査研究会訳『監査理論の構造J(中央経済社,

(9)

85 コンサルティング業務の展開と会計士の独立性 -287-MASBOKE~ として体系化された。そのなかで, MSに関する統一的知識体系 が実際にも存在し,当該知識に基づいた資格認定試験の実施可能性が以下の目 的と調査結果として明示されたのである。 (1) 成長過程にある専門職業で使われている知識の明確化 経営者に対する技術的助言の範囲は極めて多様に上っており,CPA試験 に合格した資格保有者のMS提供者としての適格性を確認するために MSに関する知識の一覧表を提示した。 (2) MSに関する職業専門家の資格認定試験を実施するための知識の基礎が あるか否かの決定 MSに専門化した職業専門家資格認定試験の作成・実施可能性について の研究の結果,作成・実施は可能であるが,当該適正能力判定のためには 非常に広範かつ深遠な知識が求められるので,試験費用が大変高額に上る。 今日までAICPAは当該資格認定試験を未実施である。 (3) MSと会計の専門職業に対する威信の付与 MASBOKE研究の結果,会計の専門職業のなかのMS専門家が実際に は非常によく訓練され,自らのクライアントを熟知し,クライアント支援 の際にも自己能力を誇張しないよう注意していることが判った。また,ク ライアントの方でも自らの期待に支払報酬が見合っていると考えている。 (4) MS実務の優秀さの宣伝 ヨリ多くの職業専門家が自らの仕事について知れば知るほど,ますます その仕事に誇りをもち,かつますます高度の水準を維持するようになる。 したがって,MASBOKEでは,今迄よく知られていなかった同僚の仕事全 体と関与の仕方に関する相互の意思疎通を可能にするため,MS知識・参考 資料等を利用できるよう認識させた。

(21) Summers, Edward L and Kenneth E..Knight,“The AICP A Studies MAS in CP A Firms," The ]ournal

0

/

Aμountan肌 CXXXIX,no. 3 (1975), pp. 56-64..

(22) 日本公認会計士協会・東京会経営委員会訳『職業会計人のマネジメントサービス入門』

(10)

-288ー 第62巻 第3号 86

(

5

)

会計教育への寄与

MASBOKEは, MSに関与し実際に提供するために必要な知識を決定 することで,大学教育における M S関連コースの設置を促進する。 このMASBOKEによる MS知識の体系化と並行して, AICPAは69年及び

74 年に WMAS に関する意見書~ (Statements on Management Advisory Ser -vices)を採択・公布し, MS実務の管理原則と専門的サービス提供のための適格 性要素を検証する際の指針を実務家に提供した。そこにおいては,主として以 下のような要素を規定していた。 (1)

8

規定からなる実施基準 (2) 独立会計事務所による MSの性質

(

3

)

MSにおいて期待される適格性 (4) MS提供における CPAの役割 自主規制への結実 上述のようなプライベイト・セクターのMSに対する積 極的対応にたいし,議会の側では

7

3

年のウォーターゲート事件を契機に,企業 にたいする取締機関であるSEC等に「企業の会計責任」を明確にするよう求 め,各種委員会や聴閉会を76年から83年にわたって開催した。この時期の政 府の態度にたいし,マーフィ(T.Murphy)は「政府及び議会による圧力の目的 は簡単である。彼等は既存のシステムを崩壊させたい,即ち企業と職業専門家 の統括をプライベイト・セクターからパブ'リック・セクターへと移行させたい のである」と評している。そのために職業会計士の最大の弱点である独立性が 格好の標的にされ,当該問題点が明示的に表れる業務範囲に焦点が当てられた のである。プレヴィッツによると,彼等は監査人たる CPAの独立性を叩くと同 時に,CPAのいう社会的便益志向のサービスにたいし疑問を呈し,それがCPA とクライアントの私的便益のために遂行されていることを立証しようとした。 また70年代末になると,広範なMS市場を確保するために各事務所はヨリ

(23) AICP A, StatemenおonManagement AdvisoηServiαs (New York: AICPA, 1974)十

(24) Murphy, Thomas,“Address to Partners of Deloitte, Haskins+Sel1s at Annual Meeting," The Week in Review(September15, 1978), p.. 3, in Previts, G J, op ci,..t

(11)

8

7

コンサlレティング業務の展開と会計土の独立性 -289-一層の力を M Sに注いだ。このような攻撃的活動にたいし非CPAコンサルタ ントは脅威を感じ,その排斥のために弱点を模索し始めた。そしてその結果, 彼等は監査人が被監査会社から監査契約と抱き合わせでトコンサルティング契約 を獲るのは「不公正」であると主張し, M S市場における CPAの活動が制約さ れれば市場はヨリ公正化する,と指摘するに至った。この主張が,パブリック・ セクターによる職業専門家への介入を正当化し,助長したと解され,パブリツ ク・セクター主導のメトカーブ委員会(Metcalf[Senate] Subcommittee)の77 年の勧告では,企業の内部統制改善に必要な一定のシステム分析や税務以外の 非監査業務を被監査会社に提供することを禁じるよう,即ち会計に直接関連す る領域の業務に限定するように求めたのである。 しかし,当該勧告にたいし公共監視委員会(Public Oversight Board:以下 POB)は, 79年に拒否する意向を表明した。この背景には,当時POB委員長で あったマックロイ (McCloy)による以下の見解がある。つまり i当該過酷な措 置[メトカーブ委員会報告]はクライアントから,自らが明らかに有用である と看倣すサービスを奪うのみならず,多くのCPA事務所,殊に小規模事務所に とっては,収入を大幅に減少させることになる」と同時に i一定のサービスを 禁止すべきか否かを決定する際には,当該サービスから得られる潜在的便益を 考慮し,監査人の客観性にたいする潜在的侵害,或は顕在的侵害に対応して, それらを調節する必要がある」という主張である。 上記のような委員会勧告を前提にしたパブリツク・セクターの対応が, SEC (25) Previts, G

J

, .0ρcit, p..123 このように議会がCPAにたいし批判的・攻撃的態度を採った背景には,聴閉会におけ る証人発言が多分に影響していると考えられる。というのも,最初の聴開会で証言を行っ たのが職業専門家に対する批判家として著名なブリロフ(AJ Briloのであったためで ある九

*

Olson, Wallace E, The Accounting Profession, Years oj Trial 1969-1980 (New

Y ork: AICP A, 1982), p.. 37 (26) Previts, G.J, opcit, p.. 126

(27) メトカーフ報告書に関しては,千代田,前掲『公認会計士』第8章を参照されたい。

(28) “POB Issues Report on Scope of Services,"TheJournal

0

1

AccountanωCXLVII,

(12)

290- 第62巻 第 3号 88

による会計連続通牒(AccountingSeries Release:以下ASR)非250 (78年6

月)と ASR非264 (79年6月)の発効であり,プライベイト・セクターによる 対応がピア・レビュゼ及び拘束力をもっ新たな行為規範たる WMAS基準書』

(Statements on Standards for Management Advisory Services:以下

SSMAS)等を中心とした非監査業務に関する自主規制システムの構築である。

SECはASR非250において, CPAによる非監査業務の提供情況に関する株 主への情報開示を志向し,ASR非264では,MS関係者である独立会計士と監査 委員会・取締役・経営者に対する啓蒙と注意喚起を目的としていた。しかし, 両通牒は81年8月のASR非296により撤回されることになる。この背景には, CPAからの根強い抵抗もさることながら,非監査業務が監査人の独立性を侵害 していることを明示する客観的証拠はなく, SECとしても非監査業務禁止・直 接的規制という立場を採るのではなく, AICPA側の自主規制を尊重しようと する基本的立場があった,と解される。

ASR撤 回 を 受 け る 形 でAICPAは81"-'82年に行為規範としてのSSMAS

を公表し,この基準書をもって職業専門家の自主規制をパブリック・セクター による規制の代用とするように試行したのである。このSSMASは WMAS実 務の定義と基準s非(1:Definitions and Standards for MAS Practice)を中心

として, ~MAS エンゲージメント ß非(2: MAS Engagements) wMASコンサル

(29) 当該会計連続適燥の形成過程については,千代田,前掲『公認会計士』第11章を参照 されたい。 (30) ピア・レビューに関しては,森資「会計士の自主規制JW企業会計』第34巻 第2号(1982 年), '米国におげる会計士の自主規制システムについてJI香川大学経済学部研究年報』 21 (1982年), '米国会計士の自主規制システムの重層性についてJ l'香川大学経済論叢』 第55巻 第I号 (1982年)がある。 (31) 非監査業務開示規制の概略については,盛田良久rアメリカ証取法会計J(中央経済社, 1987年)第11章を参照されたい。 (32) Previts, G.,,J., 0ριit, p,,145 これ以降も,非拘束のSMASはSSMAS適用上の参考資料として存続される。 (33) AICP A, Statement on Standards for Management Advisory Services no, 1, Definitions and Standards for MAS Practice(December1981)

(34) AICP A, Statement on Standards for Management Advisory Services no" 2, MAS Engagements(November1982)

(13)

8

9

コンサノレティング業務の展開と会計士の独立性 291-テーション~非(3:MAS Consultations)という 3つの意見書からなり,行為規 則の下に強制される。これらは M S実務を 'MASエンゲージメント」と 'MAS コンサ/レテーション」なる

2

つの形態に大別し,行為規則

2

0

1

の下に強制され る両業務共通の一般基準 (generalstandards)と,行為規則

2

0

4

の下に強制され るそれぞれの技術基準 (technicalstandards)を内容とした「基本宣言トリオ」 (trio of fundamental pronouncements)と評言されている。

I

I

I

"

MAS基準書の概要 SSMASの最大の特徴は, M S実務を公式かつ体系的助言である MASエン ゲージメントと,非公式かつ非体系的助言たる MASコンサルテーションに大 別したことにある。特に後者の MASコンサルテーションに関しては,本基準書 公表前には非公式助言として一般的 M S実務とは区別され,本業と別建にして は把えられていなかった業務であり,その理由を考察するためには M S各々の 定義・性質等を考慮する必要があると考える。故に,以下においては SSMASに おける規定を紹介することにしたい。 1. M Sの意義 もともと M Sの意義としては,前意見書である SMASにおいて「独立会計事 務所による MASとは,職業専門家的助言(コンサノレティング)の機能」とされ, 「その主たる目的は,当該組織目標を達成するためにクライアントによる潜在 能力・資源の利用を改善すること」にあった。本基準書 SSMASでも同様に, 「クライアントが自らの目標達成のために,その能力と資源の利用を改善する

(35) AICPA, Statement on Standards for Management Advisory Services no..3, MAS Consultations (N ovember 1982)

(36) News Report,“AICP A issues exposure draft of two proposed SSMASs,"The ]ournal of Aaountancy, CLIII, no.5(1982), p. 10.

(37) AICPA,“Tentative Description of the Nature of Management Advisory Services by Independent Accounting Firms,"Statements on Management Advisory Services,

(14)

-292- 第62巻 第3号

9

0

のを援助することを主要目的として,助言?と技術的支援を提供する経営相談機 能

(

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非(

1

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と定義されている。 この一般的

MS

の1形態である

MAS

エンゲージメントとは「調査ないし設 計において分析的アプローチとプロセスが適用される

MAS

の形態J非(

1:

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r

a

引のである。そして,クライアントの目標設定・事実発見・機会ないし問題 定義・代替案の評価・提案活動の策定・結果のコミュニケーション・実行・フォ ロ一一アップに関する活動の組み合わせに充てられる付随的業務以上のものを 含んでいる。つまり,

MAS

エンゲージメントは,クライアントによる自己目標 達成を支援するための結論及び勧告の開発にとって,必要なクライアントの事 業・営業成果・財政状態・システムと手続・その他の事柄に関して,適切な情 報を収集し分析することを,その性質として一般に含んでいるのである(非

2

:

p

a

r

a

.

.

3

)

。前回

7

4

年の

SMAS

1

が,

MS

の提供に関して分析的アプローチ及び プロセスを適用することを求めてい(定点を勘案すると,従前の

MS

としてこの

MAS

エンゲージメントを仮定していたと理解できる。

MAS

エンゲージメントの提供に当たって適用される分析的アプローチ・プ ロセスとは,

SMAS

1

によると,①関連事実と事情の掌握・②目標探索と確 認・③問題点ないし改善機会の規定・④実行可能解決案の評価と決定・⑤調査 結果の提示と勧告,という一連の過程を意味しており,クライアントによる当 該勧告案の着手決定に続き,

CPA

はさらに実効化のプロセスを支援一-<D望ま しい結果を完遂するための計画化と行動日程の予定・②実効化にさいしての助 言と技術的支援の提供一ーすることが可能となる。この分析的アプローチにつ いて,先の

MASBOKE

のなかで以下のような連続的段階として詳述している。 (1) 事実の確認・…既存のクライアントの情況をレビューし文書化する。この 既存の情況には,関連する意思決定変数・各変数の相互関係・実際に行わ れている手続を含んでいる。

(

2

)

目標と制約条件の確認…問題解決案ないしは新システムが満足させるべ (38) AICPA,“

T

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D

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,"

p

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.

4. (39) Ibid

(15)

9

1

コンサルティング業務の展開と会計士の独立性 -293-きクライアントの目標・条件・制約条件・慣行・法律・情報・統制・業務 活動における要件を決定する。 (3) 第一次解決案・勧告・システムの開発ぃ経済的効果分析と比較が可能な ように,十分詳細に

1

つまたは複数のアプローチを創出する。 (4) 問題の解決案・勧告・システムの選択ぃクライアントの目標に適うよう なアプローチを決定し,経営者が承認し,実行できるようにそれを詳細に 作成する。この段階は,フローチャート・帳票の様式・マニュアル・計画・ 研修資料のような必要とされる文書の作成並びに必要とされる業務活動或 は事務及び管理的手続を含む。 (5) 選択された解決案の導入…勧告またはシステムを実効化する。これには, 従業員の研修・実施の監督・達成された結果の評価を含む(そして,もし 必要とあらば再設計或は再分析が行われる)。 以上のような段階的な分析的アプローチの重要な利点は,人的・組織的・技 術的・環境的諸要素を特定のクライアントの利益に寄与するように統合するこ とができる,という点にある。 他方,

MAS

コンサノレテーションとは「クライアントについて,環境について, 関連する技術的事柄について,及び関係者共通の意図についての既存の個人的 知識に,完全にではないが大部分基づいた

MAS

の形態J(非

1

:

para..4)である。 これは一般的に,短期的な形で実務家によって供される助言ないし情報から構 成され,多くは口頭によってクライアントに伝えられる。つまり,

MAS

コンサ ノレテーションは,財務諸表の監査・レビュー・編纂,税務,

MAS

エンゲージメ ントのような他の職業専門家業務の遂行とともに生じ得,電話や非ビジネス・ セツティング,クライアント・

CPA

間の定期的会合において偶然に生起する, という 1つの性質を有しているのである(非 3:par

a

.

.3)。 また

2

つめの性質として,

MAS

コンサルテーションは,考慮中の技術的事 柄,即ちクライアントによる質問が該当するクライアントの財務的・事業的・

(40) Summers, Edward L.and Kenneth K Knight, Management Advisory Servicesby

(16)

-294- 第62巻 第3号

9

2

個人的事柄の局面,に関する実務家の既存の個人的知識に一般的に基づいて成 されることが挙げられる(再3:para.4)。 この具体例として SSMASでは,明示的勧告,行動案ないし質問の方法に関 する暗示的指針,選択案の限定的分析,代替的行動案の長所・短所の限定的分 析,の形での助言,並びに特定の事柄に関する限定的・技術的リサーチの形で の事実発見を挙げている(非3:para.,5)。 ここで注意すべきは,監査・レビュー・税務業務遂行中における観察の直接 的結果として供される勧告やコメントは, SSMASの意図した M Sではないと いう

t

舗の意味である。この背景として考えられることは, 80年代以降も更な る発展を維持するために,ビッグ8同士でクライアントを交換しお互いにパイ の食い合いをしているような,飽和状態にある監査市場が市場機会として不十 分となり,小企業向サービス (smallbusiness service)市場を新たなビジネス機 会としてビッグ8が把え始めた事実が見出せる。当該サービスにおいては, CPAは記帳代行から監査・税務・ MSと幅広い業務をクリーブランドがかつて 指摘したような,いわゆる経営顧問契約として一括して締結している。そして, そのサービス提供の過程においてクライアントからの質問に答える形で非公式 に成される助言・勧告が, MASコンサノレテーションの典型であるという理解で ある。もちろん,通常の監査や税務・MASエンゲージメントにおいて,クライ アントからの質問に答える形で供される助言・勧告も MASコンサルテーショ ンの適用と把えられる。したがって,MASコンサノレテーションの原則的プロセ スは,①CPAによる他業務遂行中における観察・②クライアントからの質問・ ③CPAによる解答,というように解され,それはクライアントからの質問を介 したCPAによる観察の間接的結果ということができる(図III-l参照)。短言 すれば,監査業務上の指導性に基づき観察の直接的結果として供される助言・ (41) AICPA, SSMAS no" 1, footnote3

(42) Stevens, Mark, The Big Eight(New York: Macmillan Publishing Co" 1981), pp

154-155 明日山俊秀・信達郎共訳『ビッグ・エイト~知られざる会計帝国~J (日本経済

(17)

93 コ ン サ ル テ ィ ン グ 業 務 の 展 開 と 会 計 士 の 独 立 性 -295-勧告は

SSMAS

に言う

MS

には含まれない

(MAS

コンサJレテーションには当 たらない)ということになる。 [図1II-1 MASコンサルテーションと監査における指導性のプロセス的相違] 一 昨 艇 の 問 中 質 示 行 の 提 遂 ら 案 ) ン 務 か 答 果 ヨ業 1 ← 卜 │ + 解 結 シ る ン る 察 一 よ ア よ 観 テ に イ に ( ル 凶 ラ 貼 サ C ク C ン ① ② ③ コ 向 、 u 川 附 監査における指導性 a:監査人による監査業務遂行中の観察

③ 監 査 人 に よ る 助 言 勧 告 (観察結果)

2

.

一般基準 以下の一般基準は,

AICPA

行為規則

2

0

1

の下に

MAS

エンゲージメントと

MAS

コンサルテーションの両方に適用される。

(

1

)

職業専門家的適格性

(

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p

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)

メンバーは,自己ないし事務所が職業専門家的適格性を備えて完遂した と合理的に期待できる契約のみを引き受けるべきである(非

1

:p

a

r

a

.

.

5

)

。特 に

MAS

エンゲージメント遂行にさいして,職業専門家的適格性は,①クラ イアントのニーズを確認し定義する,②適切な人員を選出し監督する,③ 当該エンゲージメントに分析的アプロ}チとプロセスを的確に適用する, ④考慮中の技術的問題点に関する知識を適用する,⑤勧告のコミュニケー ション,⑥要求に応じて勧告の実効化を支援する,能力からなる(再

2

:

p

a

r

a

.

.

6

)

(

2

)

職業専門家的正当注意義務

(

D

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l

c

a

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)

メンバーは,契約の遂行にさいし職業専門家的正当注意義務を果たさね ばならない(非

1

:p

a

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a

.

.

5

)

。特に,

MAS

コンサルテーションにおいて,①供 与された助言が明確に伝達され,②供された助言及び方法にその限定条件 に照らして過度に依存させないように,注意を払う必要がある(非

3

:p

a

r

a

.

(18)

-296- 第62巻 第3号

9

4

7)

(

3

)

計画と監督

(

P

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r

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n

)

メンバーは契約の履行を十分に計画し監督すべきである(非

1

:p

a

r

a

5

)

。特に

MAS

実 務 家 は , ク ラ イ ア ン ト と の 相 互 理 解 と

SSMAS

及 び

AICPA

行為規則に規定された職業基準に従って,当該業務が遂行されて いるとの合理的保証を供する形で

MAS

エンゲージメントを計画し監督す べし(非

2

:p

a

r

a

8

)

。 計画に関しては,エンゲージメントの遂行・監督・統制・完遂に至るよ うプランを策定し,その遂行中,必要に応じて修正されるべきであり,そ の計画化にはエンゲージメント目標達成に必要なアプローチと職務の考察 を含むべきである(非

2

:p

a

r

a

1

0

)

。 監督に際しては,適切なスキルと経験のある十分な数のスタップを業務 遂行に利用可能であるよう決定し,文書管理の水準と経験に基づく参与ス タップ監督の必要量,及び割当任務の複雑性とその期間に関して,職業専 門家的判断を行使すべきである。そして,割当人員を監督し,遂行業務の 質と完全性を評価し,当該エンゲージメントを成功裡に完遂する責任を負 うのに適格な個人によって,エンゲージメントは指揮される必要がある(非

2

:

p

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.

.

9

1

1

-

1

2

)

MAS

コンサノレテーションにおける計画の性質と範囲は,関与する質問 と実体

(

e

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)

の複雑性によって異なり,通常は専ら以下のステップから なる精神的プロセスである(非

3

:p

a

r

a

.

.

8

)

。 ① クライアントにより求められる質問とサービスの性質の理解 ② 質問の実体及び原因に関する知識の考察 ③ 当該質問に答えるために採られるべきステップの決定 さらに,スタップが利用される場合の監督はその資格と経験による。

(

4

)

十分で適切なデータ

(

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)

メンバーは契約にかかわる結論ないし勧告の合理的基礎を提供するよう に十分なデータを得るべし(非

1

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.

5

)

(19)

9

5

コンサJレティング業務の展開と会計士の独立性

-297-MAS

実務家はクライアントとの相互理解に一貫した形で,

MAS

エン ゲージメントを完遂するために十分で適切なデータを入手しなければなら ない。その入手方法は,インタビュー・観察・クライアント文書のレビュー・ リサーチ・計算・分析による。またその情報の質と量は各エンゲージメン トの範囲と事情により異なり,通常は考案される行動案を分析するのに十 分な情報から構成される。この十分で適切なデータが結論や勧告を支持す る情報となる(非

2

:p

a

r

a

.

1

3

)

MAS

実務家は,

MAS

エンゲージメントの目標を充足する結論ないし勧 告を開発するために求められる情報の質と量を決定するために,職業専門 家的判断を行使する必要がある。その判断行使の際には,エンゲージメン トの目標・性質・範囲,データ収集のコスト対付加データの便益,エンゲー ジメント結果の計画的利用と,関連する事情を考慮するとともに,データ の源泉・信頼性・完全性,及びその限界を,結論と勧告を形成しレビュー する際に考察すべきである(再

2

:p

a

r

a

1

4

)

MAS

コンサルテーションにおいて,

MAS

実務家は自らが立証せず確認 していない情報をクライアントから供される。このような場合には,供す る助言が立証未済のクライアント情報の正確性と完全性によることを知ら せねばならない(非

3

:p

a

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.

.

9

)

。また供される情報が問題の事柄にとって適 切か否か,クライアントへの最後的解答

(

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)

の基礎を形 成するのに十分か否か,を考慮する必要がある。そして,もし実務家はそ の目的にとって十分で適切な情報を入手していないなら,限定的解答

(

q

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p

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e

)

を供し得るか否か,戒は,更なる調査と分析なしには 解答が供し得ないか否か,を考察しなければならない(非

3

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.

.

1

0

)

(

5

)

予測

(

F

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)

メンバーは予測の達成可能性を請け合ったとの信念に導くような形で, 将来予測を自己の名の下に供するべきでない(非

1

:p

a

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a

5

)

(20)

-298ー 第62巻 第3号

9

6

3.技術基準

AICPA行 為 規 則204の下にMASエンゲージメント及びMASコンサル テーションに強制される技術基準は,以下の如くである。 MASエンゲージメン卜 (1) MAS実務家の役割(Roleof MAS practitioner) MASエンゲージメント遂行に際し,MAS実務家は経営者の役割を果た したり,自らの客観性を損なうかもしれない地位に就くべきではない(非

1:

para..6)。 MASエンゲージメントにおける実務家の役割の特性は,客観的アドバ イザーであるということにあり,その遂行にさいして,実務家は経営者の 役割を担うべきではない。故に,当該実務家により供される種々の助言サー ビスと,全ての経営意思決定を下すクライアント固有の責任に関し,関係 者全ての役割と責任がクライアントとの相互理解にさいして明確に規定さ れる必要がある(非2:para..15)。 またMASエンゲージメントは,エンゲージメント上の発見事項・結論・ 勧告・その他結果のレビュー及び承認を供することによって,行動を必要 とする事柄に関する意思決定を経営者ができるよう構築されるべきであ る。特にエンゲージメント中に勧告された行動案を実効化するには経営者 により権限委譲される必要がある(者2:para. 16)。 (2) クライアントとの相互理解(Understandingwith client) 口頭ないし書面による相互理解は,遂行される MASエンゲージメント の性質・範囲・限界に関してクライアントとともに達せられるべし(#

1

:

para“6)

適切な相互理解に達するためには,以下の事柄を考慮することになるは 2: para..17)

① エンゲージメント目標 ② 遂行されるべきサービスの性質

(21)

9

7

コンサルティング業務の展開と会計士の独立性 -299-③ エンゲージメントの範囲(もしあれば,取り組むべきクライアント事 業分野と限界ないし条件も含む) ④

MAS

実務家・クライアント・他のエンゲージメント関係者の各自の役 割・責任・関係 ⑤ 予想されるエンゲージメント・アプローチ,遂行されるべき主要職務 と活動(もし必要なら,利用されるべき手法も含) ⑥ エンゲージメント進行情況と結果のコミュニケーションされる方法 ⑦ 業務スケジューlレ ⑧ 報酬の取り決め クライアントからの秘守要求等がある以外は,原則として相互理解は 文書によって明確にされるが,当該文書の性質と範囲を決定するために は職業専門家的判断が行使される(非

2:

p

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.

1

8

-

1

9

)

(

3

)

クライアントの便益

(

C

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)

MAS

エンゲージメントに着手する前に,

MAS

実務家はクライアントが 達成したがっている有形・無形の達成可能便益に関する相互理解を得るべ し(再

2

:p

a

r

a

.

.

2

1

)

。その際,クライアントが得るはずの潜在的便益は

MAS

エンゲージメントにおける主要な考慮事項であるから,客観的に評価され るべきである。また最終的結果の成就可能性は,勧告の実効化にさいし, その有効性・変更可能性・不確実性に取り組むクライアント経営者の能力 に依存することになるので,それら成就可能性に対する制約条件

(

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a

-t

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)

を通知すべし(非

2

:p

a

r

a

2

2

)

。 さらに,

MAS

エンゲージメントの申出と提供にさいし,その結果は明示 的にも暗示的にも保証されるべきではないし,もし当該潜在的便益が定量 化できる場合には,量化可能な

(

q

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)

結果の見積りとして提示さ れるとともに,はっきりと見積りであることが認められ,当該見積りに対 する支持が開示されるべきである(非

2

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.

.

2

3

)

(

4

)

結果のコミュニケーション

(Communicationo

f

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)

MAS

エンゲージメントの主要発見事項・結論・勧告・その他の結果は,

(22)

-300- 第62巻 第3号 98 当該結果が基づく重要な事実及び仮定を含み,意思決定においてクライア ントを支援するのに必要な限界(limita ti ons)・限定条件(qualifications)・制 約条件とともに,口頭ないし書面でクライアントにコミュニケーションさ れるべし(非1:para..6,非2:para.24)。 クライアントの専心と意思決定を促し,結果と経過を絶えず、通知するた めにも,長期ないし複雑なエンゲージメントにおいては中間的コミュニ ケーションが望ましい(再2:para..25)。 クライアントへの最終的報告書は,主として以下のような要因に左右さ れる(非2:para..26)。 ① クライアントとの相互理解 ② エンゲージメント結果がその経過に応じてクライアントに供される程 度 ③ エンゲージメント結果の計画的利用 ④ 潜在的要素に対する感度と重要性 ⑤ エンゲージメントに関する公式記録の必要性

MAS

コンサルテーション (1)

MAS

実務家の役割

MAS

コンサノレテーションの遂行において,

MAS

実務家は経営者の役割 を担うべきでないし,その客観性を損なうかもしれない如何なる地位にも 就くべきでない(非3:para..11)。 実務家はコンサルテーションにおいては,意思決定に直面した経営者に 勧告を供する全般的ビジネス・アドバイザーとして機能する。また実務家 は,以下のようなクライアントによる誤解の可能性を最小化するように誓 約し,そう努めるべし(非3:para..12)。 ① 必要な意思決定に関する責任を負った。 ② 自らの勧告を通じて,クライアントの得ょうとする明示的・暗示的便 益を保証した。 ③ 全ての適切な情報に対する十分な考察に当該助言が基づいた。

(23)

i

l

9

9

コンサlレティング業務の展開と会計土の独立性 -301 (2) クライアントの相互理解と結果のコミュニケーション コンサルテーションにおいては,クライアントの質問・関係者聞の相互 理解・実務家の解答は,しばしば同一の会話のなかで生じるので,実務家・ クライアント・ないし両者は,実際にはコミュニケーションされていない 事柄についての知識と理解を他の関係者も有すると想定するかもしれな い。故に,実務家は当該誤解の可能性を認識し防止するために,以下の事 柄に注意を払い合理的ステップを採るべし(再

3

:p

a

r

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.

.

1

3

)

。 ① 要求される助言の特定の,ないしは全般的な性質 ② 供される助言の財務的かつ事業的重要性 ③ 情報の限界・不確実性・不完全性 ④ 質問・助言,ないし実務家の解答に付加される必要条件

(

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i

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)

・ 限定条件の複雑性 最後に,コンサノレテーションにおけるクライアントとのコミュニケー ションの性質と形式(口頭か文書か)は,職業専門家的判断による(非3:

p

a

r

a

.

1

4

)

以上の

SSMAS

規定の体系化を試行したものが〔図

I

I

I

-2)

である。 【図IlI-2 MAS基準害の休系] MASコンサJレテーション MASエンゲージメント ,

a.6) い れ 悶a5)

1

i

t蹴 基 準 備 規 則20叩 下 に 醐11

I

--%l-騨(行為親日J2I01の 下 に 酬 )

i

蜘 基 準 備 棚J2I04の 下 に 酬 )

l

① 峨 械 の 側 側 糊F開 通 路 性

i

① 峨 務 制 鯛 │ (純白P町 田15-16) I 書(2:阿 部 ・6-7) 仰:paras..1ト12) ,②クライアン卜との相互理解 同珊業専門家的正当注意義務 l②クライアントとの相互浬解

i

(松岡描 1,1~~....

I

"

"

J

将 : 阿a.η │ ( 除 問 国1J.l3) l③クライアントの便益 IC主計画と監督 l③クライアン卜の便益 │ 陥 阿 国.21-23) (#2:p町 描8-1幻(紛:胆ra.8) 倫3:阿 国.11)

l

鋪果のコミュニケーション 伊十分で適切なデータ

i

鋪果のコミュニケーション

i

(#2・ 岡 田24-26) 1 (椛:附加13-14)附 : 阿 部9-10) 帥3:開 祖11.14) 晴 予 測

i

L一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一」

4

.

独立性関連規定の背景

SMAS

では,

8

つの実施基準の冒頭「個人的性格J

(

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)

(24)

-302- 第 62巻 第 3号 100 の項目の下に 'MASの遂行にさいし,実務家は誠実性と客観性をもって行動 し,精神的心構えにおいて独立でなければならない」と規定していたにもかか わらず, SSMASのどの規定にも「独立性J(independence) ,独立的J(indepen -dent)なる要請が成されていない。しかし当該規定に代わり,本 SSMASでは, 各技術基準の 'MAS実務家の役割」の項で「客観性」と「客観的アドバイザー」 としての役割充足要請に留めている。この理由としては,当時のシャンク (JK Shank)のような主張が考えられる。つまり,独立性に関する論点が「重要性」 や「適正性」と同様に徹底的に調査することが人間の能力では不可能であり, 厳密に定義できないものであるため,少なくとも今日までは研究の枠を超えて きた,と呈するものである。短言すれば,独立性概念の内容が極めて暖昧であ るために, MAS実務家の役割要件として「独立(性)Jではなく「客観(性)J を用いたと解される。 そこで, SMASの解釈によると,誠実性」とは,実務家による発見事項の陳 述及び勧告が意図的に査曲されたり間違えて報告されないことを保証する高度 の個人的性格である。また「客観性」とは,偏向を避け,レビューに関する全 ての事柄について公平な心構えを保持する能力である。ここに誠実性・客観性 (行為規則 102)と独立性(行為規則 101)という 3つの概念が提示され,監査 業務には同規則 101と 102の両規則が適用されるが, M S実務には 101は適用 されず,同 102が適用されるよう現行規則では意図されている。 従前,ケアリー

(

1

L Carey)は,独立性概念(特に実質的独立性)について 「職業専門的独立性J(professinal independence)と「監査上の独立性J(audit

(43) AICPA, Stat,仰1entson Manage押1entAdvisoη Services, pp.3-4.

(44) Shank, John K,“Independence: Accusations in Search of an Issue,"“The Aμounting Establishment" in Per;担pective,Proceedings of the Arthur Y oung Profes -sors' Roundtable(1978)(Chicago: Arthur Y oung & Company, 1979), p..64

(45) AICPA, StatemenおonManagement Advisory Services, p 4

(46) AICPA, AICPA Professional Standards (vo.lB).. Accounting and Review Services,

Ethics sylaωs, Intemational Aωounting, Intemational Auditing, Management Advisory Services, Quality Control, T<αx Practice, sec. ET 102.01(Chicago: Com-merce Clearing House, June1, 1984), p.4421

(25)

1

0

1

コンサルティング業務の展開と会計士の独立性 -303 independence)に分化させた。そして前者が,従属的でないという意味で,それ は全ての職業専門家に認められる誠実性の一面であり,社会の全ての職業専門 家が有すべき本質とした。また後者は,監査において用いられる狭義に,無意 識であっても

CPA

の監査人としての客観性を損なう関係を避けることであ り,職業監査人固有の本質として規定していた。換言すれば,

CPA

が監査人と しての職務を遂行するためには,クライアントに従属的でない上に,客観性と 不偏性を有する必要がある。非従属ということは,

CPA

が自己をクライアント にたいして独立独行で他者に従属的でないようにする精神の状態であり,また 客観性・不偏性ということは,財務諸表への意見表明にさいし,たとえ無意識 であってもその判断を歪めるかもしれない私利(個人的利益)から自由である べきこと,であると理解されるのである。 第三者との関係を重視すべき制度監査と,当該関係が保持されない

MS

とで 独立性に関する規定の設け方を変えることは,

MS

と監査が本質的に異なって いるのであるから当然であろう。

MAS

実務家として

CPA

が機能する場合に は,ケアリーによっても

SMAS

によっても誠実性(職業専門的独立性)が要請 されるが,ケアリーに従えば客観性は求められることはないのにたいし,

SMAS

SSMAS

では客観性が求められている。したがって,ケアリ一等の客 観性に対する理解と

SMAS

SSMAS

における理解が異なっていることが判 る。誠実性については,両者において同様の理解が成されているとしても,ケ アリー等が客観性をもって監査固有の独立性概念として規定しようとしたのに たいし,

SMAS

SSMAS

では客観性のヨリ一般的な意味,即ち辞書的意味(個 人の主観的恋意性の排除)或はケアリーの言う職業専門的独立性(独立性の第

1

タイプ)の

1

種(独立独行)に引き下げて理解していると考えられるのであ る。現状において,このような語棄に関して統一的理解に至っていないために,

(47) Carey, John L, Professional Ethic:s

0

/

CetすがedPublic Accountants(N ew Y ork : AIA, 1956), p. 49

(48) Schlute, Authur A, Jr..,“CPA's Independence Affeted by Management Services," The New York Certified Public Accoun抑止 XXXVII,no 1 (1967), p..34

(26)

-304- 62巻 第3 102 自らを理解してもらおうとする職業専門家の努力一

-PR

問題・法的責任問題 一一ーは妨害されてしまっている, と評される。 上記語葉的不統ーにより,敢えて「誠実性Jr客観'性Jr独立'性」なる用語を 用いないならば,

MS

はビジネス・アドバイザーとしてのコンサノレティング契約 に基づく機能であるから,他の一般的職業専門家と同じく自らの専門的判断を 行使するに当たり,自己のクライアントの利益を保護するために独立独行で他 者に従属的でなければ,独立であるということができる。そして,独立である 情況の判定にさいし,クライアント経営者による意思決定に関与するか否か, を基準にする 1(1)(2)の見解が提示される。この意思決定関与の有無を検証する ことによって 1①で挙げた公正不偏性(実質的独立性)に対する兼業圧力の 存在を検証することができる。 IV"意思決定過程とコンサノレティング業務 1.経営戦略の形成・展開と意思決定 今日,企業の外部環境要因は複雑に影響し合い,その変化は劇的で,不確実 かっ予測困難な情況にある。当該情況下では,企業は現状を分析しそれに即応 するという受身的対応では成長の機会を失うばかりか,その存続さえも脅かさ れかねない。そこで,現状投影的でなく将来指向的に進むべき目標を設定し, 自社の内部環境要因の強味・弱味を評価して進み得る方向を明確にする必要が あり,両者を経営戦略として積極的に具現して行く必要がある。ここにいう経 営戦略の形成とは r企業環境の中で当該企業の存続・成長を可能にすると考え られる企業の行動領域(domain)を主体的に探索・選択し,それに対応して,企 (50) Carey, J L,“The Independence Concept Revised,"p,,5 このような各CPA間・CPAと外界の聞での技術的用語の混乱は,何も独立性概念だけ ではない。その例としてケアリーは r艶査J(audit)が「立証J(verify)を 意 味 し 証 明 」 (certify)が「保証J(guarantee)を意味し得る事実を挙げる。またCPAは,財務諸表を「検 査J(examine)し,それについて「意見を表明するJ(express an opinion),というよう に述べるが,素人にとってこの文言は現実に行われていることを表面的に示唆している に過ぎない,ということを指摘する。

(27)

1

0

3

コンサルティング業務の展開と会計士の独立性 305-業の諸資源を重点的に開発・配分し,企業の存続・成長を志向する経営(的) 行動」といわれる。また,このような戦略形成の過程は「環境と組織一企業全 体とのありうべき相互関係,すなわち,組織一企業が環境との存続可能な相互 関係について,その基本型を探索し,評価し,選択すること」というように, 戦略的意思決定の過程として把えられる。 さらに,企業の経営とは種々の決定すべき問題に直面し,逐次的にそれを解 消して行く過程であれ「意思決定の連続の過程」といえる。そして,この意思 決定の意義としては,一般的に「一定の目的を達成するためにいくつかの代替 的手段のなかから

1

つまたは少数のものを実行のために選択する人間の合理的 な行動」と解され,意思決定は単純に選択ともいわれる」。とすれば,経営戦 略の形成・展開は意思決定プロセス(厳密には,意思決定=選択に至る過程) の積み重ねであると理解できるのである。そのプロセスは,以下の(図IV-

l

]

のようになる。

2

.

一般的コンサルティング過程

SMAS

SSMAS

の所で先に検討したように,

'MS

は職業専門家的助言(コ ンサルティング)の機能」ないしは「マネジメント・コンサルティングP機能」 とされ,その目的は,クライアントの直面する当面の危急的問題を解決するた めに潜在的資源や能力の活用を促すと同時に,将来発生し得る同様の問題点を 予期し解決する組織能力を増進するという

2

点にある。したがって,以下にお いては,

MS

がコンサルティング業務の一形態であるという認識にたって,一般 的コンサルティング過程に関する見解を紹介しつつ考察を加えることにする。 大規模企業は,組織的サブ・ユニット間で特定分野の専門的技術・知識を共 有する内部コンサルタント・スタッフを開発している。しかしコルブ=フロー (51) 岡本康夫・若杉敬明編『技術革新と企業行動.J (東京大学出版会, 1985年)19頁。 (52) 岡本康夫「経営戦略論の諸側面と全体像J"組織科学』第16巻第3号 (1982年)69頁。 (53) 占部都美『企業の意思決定論〈現代経営学金集〉第3巻J(白桃書房, 1985年)3頁。 (54) 上掲脅, 3頁。

(28)

306- 第62巻 第3号 104 [図IV-1 意思決定寸芸択プロセスとMSの関係] 意思決定一選択プロセス 「一一一一一一一一一一一一一一一一一一寸 目 標 の 設 定

1-1

代 替 案 の 探 究

←斗│

情報(開決定前提)の提供

[

E

選 択 し 一 一 一

-

m

i

-

-

一一一一一一一一一」 │ │ 実 行

I

+一一一一一-~実削減(特別の権限委譲

し一一一一一一一一一一一一一一一一」 M S 結 果 の 予 想 . . 圃 園 田 目 白 高 山 ‘ 圃 圃 圃 ー ー ー [出所:西田耕三『企業行動科学の基礎(現代経蛍学全集〉第21巻JJ (白桃書房、 1985年) 323頁を参照に作成した。〕

マン(0.

A

Kolb

&

A

L Frohman)によると,多くの当該コンサルタントによ る職務が不適切で,それ故時間的にも金銭的にも評価に値しない情況が頻繁に 見られるために,内部コンサルタントが役立たずの支援者に過ぎないという一 般的感情がある。この理由として,一定の意思決定前提を共有した企業構成員 の認知能力の限界(限られた手段しか考慮できないという情報収集能力の限界

(55) Kolb, David A.and Alan L. Frohman, ‘'An Organization Development Approach to Consulting,"Sloan Management Revi仰, XII, no.. 1 (1970), p.51

参照

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