香 川 大 学 経 済 論 議 第68巻 第 2・3号 1995年11月 307-333
在アジア日系企業の経営実践と
原価管理に関する一考察
-NIES
と
ASEAN
の比較を中心にして一
井 上 信
1 . は じ め に わが国製造企業のグローパル化は, 1985年のプラザ合意による円高,また 最近の急激な円高も加わり,急速に進展してきている。そのため,わが国企業 の海外進出に係わる諸問題,とりわけ日本的な経営システムの国際移転及び日 系企業のローカリゼーションの経営学的な研究は, 1970年代後半から 1995年 の現在まで広範囲に考察され,その実態と問題の所在も明らかになっている。 筆者自身も,これまでにヨーロツパ及びアメリカに進出した日系企業のグロ ーノてル化と管理会計・原価管理の国際移転については関心を持ち研究を続けて きてい2
。しかし,アジア諸国に進出した日系企業の調査研究は残された課題 であった。特にアジア諸国と日本との関係は,歴史的,地理的にもこれまでに も緊密な関係にあり,とりわけ日本企業の海外進出はアジア(東南アジア)か ら始まりアジア(中国)に回帰している現在,大変重要な研究課題であるO そこで,本稿ではアジア諸国に進出している日系企業の経営活動と原価管理 の国際移転の実態とその課題について, NIES諸国と ASEAN諸国に区分し て,その特徴を明らかにすることを意図している。 具体的には,第2節で調査の概要と回答企業の経営規模などの概要を,第 3 (1) 例えば, Bromwich and Inoue (1994), Inoue (1993,-a),井上信← (1993-b),井 上信一 (1994-a),井上信一(1994-b) などがある。 香 川 大 学 経 済 論 叢 第68巻 第2・3号 1995年11月 307-333在アジア日系企業の経営実践と
原価管理に関する一考察
一-NIES
と
ASEAN
の比較を中心にして一
井 上 信
1 . は じ め に わが国製造企業のグローパル化は, 1985年のプラザ合意による円高,また 最近の急激な円高も加わり,急速に進展してきている。そのため,わが国企業 の海外進出に係わる諸問題,とりわけ日本的な経営システムの国際移転及び日 系企業のローカリゼーションの経営学的な研究は, 1970年代後半から 1995年 の現在まで広範囲に考察され,その実態と問題の所在も明らかになっている。 筆者自身も,これまでにヨーロッパ及びアメリカに進出した日系企業のグロ ーノてル化と管理会計・原価管理の国際移転については関心を持ち研究を続けて きている。しかし,アジア諸国に進出した日系企業の調査研究は残された課題 であった。特にアジア諸国と日本との関係は,歴史的,地理的にもこれまでに も緊密な関係にあり,とりわけ日本企業の海外進出はアジア(東南アジア)か ら始まりアジア(中国)に回帰している現在,大変重要な研究課題であるO そこで,本稿ではアジア諸国に進出している日系企業の経営活動と原価管理 の国際移転の実態とその課題について, NIES諸国と ASEAN諸国に区分し て,その特徴を明らかにすることを意図している。 具体的には,第2節で調査の概要と回答企業の経営規模などの概要を,第 3 (1) 例えば, Bromwich and Inoue (1994), Inoue (1993,-a),井上信一 (1993-b),井 上信一 (1994-a),井上信一(1994-b) などがある。-308 香川大学経済論叢 504 節で経営職能のローカル化を,第
4
節で原価構造と原価管理の課題とその方法 について考察する。そのことにより,わが国企業のグローパノレ化により生じて いる,海外子会社における経営実践と原価管理の実態と課題の一端を考察す る。このような考察をつうじて,わが国企業の経営実践及び原価管理実践のう ち,国際的に普遍的なものと,わが国企業に個別・特殊的なものを明らかにし, 今後の日本企業のグローパルな展開及び外国企業への日本的な経営システムの 国際移転について会計学的なアスペクトから示唆を得ることを意図している。2
.
調査方法と回答企業の概要 この節では,本稿の基礎になっている調査の概要と回答企業の経営規模など その概要について述べる。2-1
調査の概要 本稿の基礎になっているアジア地域に進出している日系企業の調査対象は, 東洋経済新報社編~,91海外進出企業総覧』を用いてリストアップした。まず 母集団として, NIES諸国からはシンガポール,韓国,台湾,香港を, ASEAN 諸国としてはタイとマレーシアを調査対象とした。調査対象企業のリストアッ プの基準は, 1)製造企業(製造あるいは生産が<事業内容欄>に記載されて いる)であること, 2)従業員数が100人以上であること,という 2つの条件 を満たしていることである。その結果,調査対象企業数は,NIES諸国が514社 ( そ の 内 訳 は 韓 国151社,台湾219社,香港42社 , シ ン ガ ポ ー ル102社), ASEAN諸国は343社(タイ 195祖,マレーシア148社)の合計857社である。 郵送調査は上述の857社に対して, 1991年8月に開始されその後2回の督 促を含めて1992年の3月末まで行われた。その結果,回答企業は,在アジア 日系企業全体では r回答あり」が181社,回答辞退が5柾,該当せずが5社 そして住所不明でト返却されたものが62社である。その内訳は, NIES諸国の (2 ) 井上信一(1995) は,本稿と同ーの調査に基づくものであり,管理会計(国際振替価 格,海外子会社の業績評価など)的な面を中Jし、に考察したものである。-
-
-
w
-308 香川大学経済論叢 504 節で経営職能のローカル化を,第4
節で原価構造と原価管理の課題とその方法 について考察する。そのことにより,わが国企業のグローパノレ化により生じて いる,海外子会社における経営実践と原価管理の実態と課題の一端を考察す る。このような考察をつうじて,わが国企業の経営実践及び原価管理実践のう ち,国際的に普遍的なものと,わが国企業に個別・特殊的なものを明らかにし, 今後の日本企業のグローパルな展開及び外国企業への日本的な経営システムの 国際移転について会計学的なアスペクトから示唆を得ることを意図している。2
.
調査方法と回答企業の概要 この節では,本稿の基礎になっている調査の概要と回答企業の経営規模など その概要について述べる。2-1
調査の概要 本稿の基礎になっているアジア地域に進出している日系企業の調査対象は, 東洋経済新報社編~,91海外進出企業総覧』を用いてリストアップした。まず 母集団として, NIES諸国からはシンガポール,韓国,台湾,香港を, ASEAN 諸国としてはタイとマレーシアを調査対象とした。調査対象企業のリストアッ プの基準は, 1)製造企業(製造あるいは生産が<事業内容欄>に記載されて いる)であること, 2)従業員数が100人以上であること,という 2つの条件 を満たしていることである。その結果,調査対象企業数は,NIES諸国が514社 ( そ の 内 訳 は 韓 国151社,台湾219社,香港42社 , シ ン ガ ポ ー ル102社), ASEAN諸国は343社(タイ 195祖,マレーシア148社)の合計857社である。 郵送調査は上述の857社に対して, 1991年8月に開始されその後2回の督 促を含めて1992年の3月末まで行われた。その結果,回答企業は,在アジア 日系企業全体では r回答あり」が181社,回答辞退が5柾,該当せずが5社 そして住所不明でト返却されたものが62社である。その内訳は, NIES諸国の (2 ) 井上信一(1995) は,本稿と同ーの調査に基づくものであり,管理会計(国際振替価 格,海外子会社の業績評価など)的な面を中Jし、に考察したものである。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
505 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 309 場合 r回答あり」が100在,回答辞退が2社,該当せずが3社,そして宛先 不明で返送が38社である。またASEAN諸国では r回答あ;」が81社,回 答辞退が3社,該当せずが2社,そして宛先不明が24社である。 以上の結果,アジア全体の回答率は23.1%である。また地域別の回答率は,
NIES諸国では2
1
.
2%であり, ASEAN諸国では25.8%と, ASEANの回答 率が4%程度高くなっている。2
-2
回答企業の概要 ここでトは,郵送調査に回答のあったアジア諸国へ進出している日系企業181 社の概要を説明する。 調査票に回答のあった回答者の国籍は,アジア全体では, 85.5% (153社) は日本人からのものであり,ローカノレの人(進出先国の人)からの回答は14.0% (10粧)に過ぎない。(なおそれ以外に「その他」がl社及び回答なしが2社 ある。)また地域別に, NIESとASEANを比べてみると, NIESの場合には ローカルの人よりの回答が若干多くなっている。回答者の職位は,社長からの回答が最も多く 60社(約35%),次いで経理 部長から 53社(約31%),そして取締役(社長を除くすべての取締役)から の回答が43柾(約25%)と,以上で回答全体の約90%以上になり,回答企 業の大部分を占めている。
NIESとASEANの間の地域別の相違は, NIESでは,多い順に経理部長, 取締役以上,そして社長の順であるが, ASEANでは社長,経理部長そして 取締役以上の順になっていることである。 回答企業の生産方式(産業構造:業種)を,生産技術的な特性に従って分類 すると,次のとおりになる。アジアにおける日系企業は,組立生産が65.7% を占め,組立生産中心の産業構造になっている。それに関連して,主にプラス (3 ) 国別の「回答あり」の企業数の内訳は, NIESの場合,シンガポールが 34社,韓国だ26 社,台湾が34社そして香港が 6社の合計 100社である。また ASEANの 場 合 に は 回 答あり」はタイから43社,マレーシアから 38社の合計 81社である。なお調査方法及 び回答企業などの概要につい
τ
は,井上信一 (995) をも参照のこと。 505 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -309 場合 r回答あり」が100社,回答辞退が2社,該当せずが3社,そして宛先 不明で返送が38社である。またASEAN諸国では r回答あり」が81社,回 答辞退が3社,該当せずが2社,そして宛先不明が24社である。 以上の結果,アジア全体の回答率は23.1%である。また地域別の回答率は,NIES諸国では2
1
.
2%であり, ASEAN諸国では25.8%と, ASEANの回答 率が4%程度高くなっている。2
-2
回答企業の概要 ここでは,郵送調査に回答のあったアジア諸国へ進出している日系企業181 社の概要を説明する。 調査票に回答のあった回答者の国籍は,アジア全体では, 85.5% (153社) は日本人からのものであり,ローカノレの人(進出先国の人)からの回答は14.0% (10柾)に過ぎない。(なおそれ以外に「その他」がl社及び回答なしが2社 ある。)また地域別に, NIESとASEANを比べてみると, NIESの場合には ローカルの人よりの回答が若干多くなっている。回答者の職位は,社長からの回答が最も多く 60社(約35%),次いで経理 部長から53社(約31%),そして取締役(社長を除くすべての取締役)から の回答が43社(約25%)と,以上で回答全体の約90%以上になり,回答企 業の大部分を占めている。
NIESとASEANの間の地域別の相違は, NIESでは,多い順に経理部長, 取締役以上,そして社長の11聞であるが, ASEANでは社長,経理部長そして 取締役以上の順になっていることである。 回答企業の生産方式(産業構造:業種)を,生産技術的な特性に従って分類 すると,次のとおりになる。アジアにおける日系企業は,組立生産が65.7% を占め,組立生産中心の産業構造になっている。それに関連して,主にプラス (3 ) 国別の「回答あり」の企業数の内訳は, NIESの場合,シンガポールが 34社,韓国が 26 社,台湾が34社そして香港が 6社の合計 100社である。また ASEANの 場 合 に は 回 答あり」はタイから 43社,マレーシアから 38社の合計 81社である。なお調査方法及 び回答企業などの概要につい
τ
は,井上信一(1995) をも参照のこと。← 310 香川大学経済論叢 506 ティック部品の生産を中心にした化学的進行生産,及び電子部品を中心に機械 的進行生産が,それぞれ13.3%と11.7%を占めている。 ASEANとNIES の聞の地域間の相違は, NIESの日系企業で組立生産の割合が若干(7%)高 くなっていることである。 回答のあった日系製造企業の設立時期は, NIES諸国の場合は 1970年代ま でが71%を占めており,とりわけ1970年代(1970年一1979年)に, 60%近 くの企業が集中的に進出をしていることがわかる。それに対して, ASEAN 諸国の場合には70年代も 26.3%を占めているが, 1986年以降に進出した企 業が47.5%を占めており,進出企業全体の半数近くがこの時期に集中している。 これは, 1970年代には韓国,台湾,シンガポーノレ,香港などのNIES諸国 での現地生産を積極的に展開してきた日本企業が, 1980年代後半にはNIES 諸国の人件費の高騰などもあり,タイ,マレーシア及びインドネシアを中心に したASEAN諸国への工場進出を活発に行ったことを示している。 それではつぎに,回答のあった181社の経営規模などの概要を,表- 1に より考察してみる。 経営規模の指標 資本金(百万円) 表ー 1 回答企業の経営規模 NIES 1,459 ASEAN 4,803 ASIA 2,945 (うち親会社出資比率:%) 82.3 66. 1 75.2 売上高(百万円 9,592 9, 646 9 , 616 (うち輸出比率:%) 65.2 57.4 61. 8 従業員数(人 657 951 i89 (うち日本人数 7.65 12.37 9.
n
取締役の構成(人 6.81 7.69 7.21 (うち日本人数 4.54 5 . 02 4.76 勤続年数(管理職)(年 8.63 7 . 69 8.22 (般職)(年 4.65 4 . 67 4.66 年間従業員採用比率(%) 27.1 23. 7 25.60*) n=100 (NIES), n=81 (ASEAN), n=181(ASIA) 0 (いずれも平均値である)。
なお資本金及び売上高の円換算は,調査時点での為替レートで円建に換算して 計算した。
国
『
塁
悪
← 310 香川大学経済論叢 506 ティック部品の生産を中心にした化学的進行生産,及び電子部品を中心に機械 的進行生産が,それぞれ13.3%と11.7%を占めている。 ASEANとNIES の聞の地域間の相違は, NIESの日系企業で組立生産の割合が若干(7%)高 くなっていることである。 回答のあった日系製造企業の設立時期は, NIES諸国の場合は1970年代ま でが71%を占めており,とりわけ1970年代(1970年一1979年)に, 60%近 くの企業が集中的に進出をしていることがわかる。それに対して, ASEAN 諸国の場合には70年代も 26.3%を占めているが, 1986年以降に進出した企 業が47.5%を占めており,進出企業全体の半数近くがこの時期に集中している。 これは, 1970年代には韓国,台湾,シンガポーノレ,香港などのNIES諸国 での現地生産を積極的に展開してきた日本企業が, 1980年代後半にはNIES 諸国の人件費の高騰などもあり,タイ,マレーシア及びインドネシアを中心に したASEAN諸国への工場進出を活発に行ったことを示している。 それではつぎに,回答のあった181社の経営規模などの概要を,表- 1に より考察してみる。 経営規模の指標 資本金(百万円) 表ー 1 回答企業の経営規模 NIES 1,459 ASEAN 4,803 ASIA 2,945 (うち親会社出資比率:%) 82.3 66. 1 75.2 売上高(百万円 9,592 9, 646 9 , 616 (うち輸出比率:%) 65.2 57.4 61. 8 従業員数(人 657 951 i89 (うち日本人数 7.65 12.37 9.n
取締役の構成(人 6.81 7.69 7.21 (うち日本人数 4.54 5 . 02 4.76 勤続年数(管理職)(年 8.63 7 . 69 8.22 (一般職)(年 4.65 4 . 67 4.66 年間従業員採用比率(%) 27.1 23. 7 25.60*) n=100 (NIES)
,
n=81 (ASEAN),
n=181(ASIA) 0 (いずれも平均値である)。なお資本金及び売上高の円換算は,調査時点での為替レートで円建に換算して 計算した。
507 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -311 経営規模のうち,まず資本金については, ASEANでは1社平均が約48億 円であり, NIESでは約15億円と,資本金規模はASEANがNIESの3倍以 上になっている。上述の資本金のうち,日本の親会社の出資比率は, NIESで 82.3%であるが, ASEANでは66.1%と日本の親会社の出資比率が低くなっ ており, ASEANの場合に現地企業との合弁企業の比率が高いことが理解で きる。 次に売上高は, NIESでは約96億円, ASEANでは約97億円と,両者の売 上高はほぼ同じである。また売上高のうちの輸出比率は, NIESで65.2%, ASEANでは57.4%と,両地域とも輸出比率は高く,輸出基地としての役割 を果たしていることが窺える。
従業員数は, NIESでは657人であり, ASEANでは789人と, ASEANの
1社当たりの従業員数がNIESの場合と比べて約1.2倍弱と, ASEANの方 が従業員規模はやや大きくなっている。従業員のうち,日本人派遣者の割合で あるが, NIESでは1社平均7.65人であり, ASEANでは12.37人となって いる。全体の従業員数に占める比率は, NIESが1.16%で, ASEANが1.30% と, ASEANでの日本人比率が若干多くなっている。これは, ASEANの日 系企業は,ローカノレ化の過程にある企業が多く,それだけ社長,経理部長,人 事部長の何れの場合も,日本人が占めている比率が高くなっていることを示し ている。その理由は,日本の親企業の技術,経営ソフトウエアなどが国際移転 の途上にあるため,それだけ日本人によるサポート体制が必要なためであると 思われるO 次に日系企業の取締役の人数は, NIESでは6.81人であり, ASEANでは 7.69人になっている。これは,上記の従業員数の場合と同様に, ASEANの 経営規模が大きいため,それだけ取締役会の構成人数も多くなっているためと 思われる。また日本人取締役の人数は,それぞれNIESで4.54人であり, ASEANでは5.02人と,何れの地域でも日本人が取締役ポストの約2/3を占 (4 ) 例えば,井上信一(1995)の73-74ページを参照のこと。 507 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -311 経営規模のうち,まず資本金については, ASEANでは1社平均が約48億 円であり, NIESでは約15億円と,資本金規模はASEANがNIESの3倍以 上になっている。上述の資本金のうち,日本の親会社の出資比率は, NIESで 82.3%であるが, ASEANでは66.1%と日本の親会社の出資比率が低くなっ ており, ASEANの場合に現地企業との合弁企業の比率が高いことが理解で きる。 次に売上高は, NIESでは約96億円, ASEANでは約97億円と,両者の売 上高はほぼ同じである。また売上高のうちの輸出比率は, NIESで65.2%, ASEANでは57.4%と,両地域とも輸出比率は高く,輸出基地としての役割 を果たしていることが窺える。
従業員数は, NIESでは657人であり, ASEANでは789人と, ASEANの
1社当たりの従業員数がNIESの場合と比べて約1.2倍弱と, ASEANの方 が従業員規模はやや大きくなっている。従業員のうち,日本人派遣者の割合で あるが, NIESでは1柾平均7.65人であり, ASEANでは12.37人となって いる。全体の従業員数に占める比率は, NIESが1.16%で, ASEANが1.30% と , ASEANでの日本人比率が若干多くなっている。これは, ASEANの日 系企業は,ローカル化の過程にある企業が多く,それだけ社長,経理部長,人 事部長の何れの場合も,日本人が占めている比率が高くなっていることを示し ている。その理由は,日本の親企業の技術,経営ソフトウエアなどが国際移転 の途上にあるため,それだけ日本人によるサポート体制が必要なためであると 思われるO 次に日系企業の取締役の人数は, NIESでは6.81人であり, ASEANでは 7.69人になっている。これは,上記の従業員数の場合と同様に, ASEANの 経営規模が大きいため,それだけ取締役会の構成人数も多くなっているためと 思われる。また日本人取締役の人数は,それぞれNIESで4.54人であり, ASEANでは5.02人と,何れの地域でも日本人が取締役ポストの約2/3を占 (4 ) 例えば,井上信一(1995)の73-74ページを参照のこと。
可
ぃ
;
i
j
i
s
508 このように取締役に占める日本人の比率が相対的に高いのが,何れ の地域に進出した日系企業の場合にもいえる特徴である。なお在英日系企業の 香川大学経済論叢 -312 めている。 場合などと比べると,現地企業との合弁形態による日系企業の設立も多いの ローカノレの取締役の比率が幾分高くなっている。 で, の勤続年数をみてみる。 (管理職と 般従業員) それではつぎに,従業員N
I
E
S
の 場 合 がASEAN
で7
.
6
9
年と,N
I
E
S
で8
.
6
3
年, 管理職の場合は, それぞれの地域への日系企業のASEAN
に比べてl
年近く長くなっており, 進出期間の長短の相違にほぼ比例しているようである。N
I
E
S
とASEAN
の間でほとんど差異がなく,両者 一般従業員の場合は, ともほぼ5
年弱でよく似た数字になっている。それは従業員の年間採用比率(年 間従業員採用者数/年間従業員平均在籍者数)が,N
I
E
S
で2
7
.
1
%
,ASEAN
で2
3
.
7
%
と,総従業員数の約1
/
4
を毎年採用しており,従って論理的にはほ ぽ4年ですべての従業員が入れ替わっていることになる。 3.経営実践のローカル化 いわゆる日本的経営の実践レベノレ,経営職能のインサイダー化, ここでは, のインサイダー化の指標によ アジアに進出した日系企業の経営活動のローカル化の特徴とその課題を考 研究開発職能及び製造準備(原材料の調達機能) り, 察する。 日本的経営実践 3-1 日本的経営といわれる活動を,具体的な経営実践から検討する場合,表-2
p
r
a
c
-にある1
2
の活動は一般によく日本的経営実践(Ja
p
a
n
e
s
e management
t
i
c
e
s
:
JMP)の内容を構成するものと考えられている。 アジアに進出した日系企業 において積極的に導入されているのは,制服(カンパニー・スーツ)の着用(ア いわゆる日本的経営といわれる経営実践のうち, 例えば,井上信一Cl994-a)の4ページを参照のこと。 (5 ) -312 香川大学経済論叢 508 めている。このように取締役に占める日本人の比率が相対的に高いのが,何れ の地域に進出した日系企業の場合にもいえる特徴である。なお在英日系企業の 場合などと比べると,現地企業との合弁形態による日系企業の設立も多いの で,ローカノレの取締役の比率が幾分高くなっている。 それではつぎに,従業員(管理職と一般従業員)の勤続年数をみてみる。 管理職の場合は, NIESで8.63年, ASEANで7.69年と, NIESの 場 合 がASEANに比べて l年近く長くなっており,それぞれの地域への日系企業の 進出期間の長短の相違にほぼ比例しているようである。 一般従業員の場合は, NIESとASEANの間でほとんど差異がなく,両者 ともほぼ5年弱でよく似た数字になっている。それは従業員の年間採用比率(年 間従業員採用者数/年間従業員平均在籍者数)が, NIESで27.1%,ASEAN で23.7%と,総従業員数の約1/4を毎年採用しており,従って論理的にはほ ぼ4年ですべての従業員が入れ替わっていることになる。 3.経営実践のローカル化 ここでは,いわゆる日本的経営の実践レベノレ,経営職能のインサイダー化, 研究開発職能及び製造準備(原材料の調達機能)のインサイダー化の指標によ り,アジアに進出した日系企業の経営活動のローカル化の特徴とその課題を考 察する。 3-1 日本的経営実践 日本的経営といわれる活動を,具体的な経営実践から検討する場合,表
-2
にある 12の活動は一般によく日本的経営実践(Ja
p
a
n
e
s
e management p
r
a
c
-t
i
c
e
s
:
JMP)の内容を構成するものと考えられている。 いわゆる日本的経営といわれる経営実践のうち,アジアに進出した日系企業 において積極的に導入されているのは,制服(カンパニー・スーツ)の着用(ア (5 ) 例えば,井上信一(l994-a)の4ページを参照のこと。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
509 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -313-ジ ア 全 体 で4.84::以下同様), 食 堂 , 駐 車 場 , ロ ッ カ ー な ど 会 社 の 施 設 を 企 業 の 構 成 員 が 平 等 に 利 用 で き る 平 等 主 義 (4.43), 日 本 語 で い ず れ も Sで 始 ま る 5S運 動 ( 掃 除 , 整 理 , 整 頓 , 清 潔 , 蝶 : :4.08)が 1位 か ら3位 を 占 め , 何 れも
4
点 台 で あ り ア ジ ア の 日 系 企 業 で も 広 く 理 解 さ れ て お り , ほ ぽ 定 着 し て き ている。 3点 台 ( あ る 程 度 実 施 さ れ て い る ) に あ る 日 本 的 経 営 の 実 践 は , 大 部 屋 主 義 (3.66:: 4位), ノ ー ・ レ イ オ フ (3.56:: 5イ立), QCサークノレ(3.51: 6位), 経 営 ・ 会 計 情 報 を 出 来 る だ け 現 場 の 従 業 員 と 共 有 す る ( 現 場 に 経 営 ・ 会 計 情 報 を フ ィ ー ド パ ッ ク す る ) 現 場 主 義 (3.47: 7位 ) な ど は , あ る 程 度 ま で 理 解 されて来ている様子である。 表-2 日本的経営実践日本的経営 NIES ASEAN ASIA 1) 制服の着用 4.81 (1) 4.87 (1) 4.84 (1) 2) 平等主義 4.63 (2) 4.20 (2) 4.. 43 (2) 3) 5 S運動 4.10 (3) 4.06 (3) 4.. 08 (3) 4) 大部屋主義 3.63 (5) 3.. 70 (4) 3.66 (4) 5) ノー・レイオフ 3.. 68 (4) 3.. 42 (5) 3.56 (5) 6) QCサークノレ 3.59 (6) 3.42 (5) 3.51 (6) 7) 現場主義 3..56 (7) 3.35 (7) 3.47 (7) 8) 年功賃金制度 3.. 29 (8) 3.. 08 (8) 3.19 (8) 9) 集団的意志、決定 2.97 (10) 2.95 (9) 2.96 (9) 10)年功昇進制度 3.. 07 (9) 2.. 80 (ll) 2.95(10) 11)多能工の養成 2.85 (11) 2.. 92 (10) 2.88(1l) 12)ジョブ・ローテーション 2.61 (12) 2.65 (12) 2.63 (12) *) n
=
98 (NIES), n=
80 (ASEAN), n=
178 (ASIA)。表中の得点は, 1点→全く 実施していなし), " 3点→ある程度知包している, 5点→積極的に実施している, として合計点を集計し,回答企業数で割って l社あたりの平均値を計算した。 (6 ) 欧米系の企業では,取締役,部長などは,それぞれステイタス・シンボルとして個室 をもっているのが通例である(個室主義:個人主義と呼ばれる)。それに対して,日本 企業及び概して海外の日系企業(とりわけ製造企業)では,各部門(購買部(あるいは 課:以下同様),販売部,経理部,人事部)などが部門長をも含めて,←つのフロア(場 合によれば区画)でオ プンエンドに情報のやり取り(あるいはフェイス・ツー・ 7エ イスのコミョニケーション)を行うのが通常のスタイルになっている。一般にこのよう なスタイルを,大部屋主義と呼ばれている。 509 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -313-ジ ア 全 体 で4.84::以下同様), 食 堂 , 駐 車 場 , ロ ッ カ ー な ど 会 社 の 施 設 を 企 業 の 構 成 員 が 平 等 に 利 用 で き る 平 等 主 義 (4.43), 日 本 語 で い ず れ も Sで 始 ま る 5S運 動 ( 掃 除 , 整 理 , 整 頓 , 清 潔 , 蝶 : :4.08)が 1位 か ら3位 を 占 め , 何 れも4
点 台 で あ り ア ジ ア の 日 系 企 業 で も 広 く 理 解 さ れ て お り , ほ ぽ 定 着 し て き ている。 3点 台 ( あ る 程 度 実 施 さ れ て い る ) に あ る 日 本 的 経 営 の 実 践 は , 大 部 屋 主 義 (3.66:: 4位), ノ ー ・ レ イ オ フ (3.56:: 5位), QCサークノレ(3.51: 6位 入 経 営 ・ 会 計 情 報 を 出 来 る だ け 現 場 の 従 業 員 と 共 有 す る ( 現 場 に 経 営 ・ 会 計 情 報 を フ ィ ー ド パ ッ ク す る ) 現 場 主 義 (3.47: 7位 ) な ど は , あ る 程 度 ま で 理 解 されて来ている様子である。 表-2 日本的経営実践日本的経営 NIES ASEAN ASIA 1) 制服の着用 4.81 (1) 4.87 (1) 4.84 (1) 2) 平等主義 4.63 (2) 4.20 (2) 4.. 43 (2) 3) 5 S運動 4.10 (3) 4.06 (3) 4.. 08 (3) 4) 大部屋主義 3.63 (5) 3.. 70 (4) 3.66 (4) 5) ノー・レイオフ 3.. 68 (4) 3.. 42 (5) 3.56 (5) 6) QCサークノレ 3.59 (6) 3.42 (5) 3.51 (6) 7) 現場主義 3..56 (7) 3.35 (7) 3.47 (7) 8) 年功賃金制度 3.. 29 (8) 3.. 08 (8) 3.19 (8) 9) 集団的意志、決定 2.97 (10) 2.95 (9) 2.96 (9) 10)年功昇進制度 3.. 07 (9) 2.. 80 (ll) 2.95(10) 11)多能工の養成 2.85 (11) 2.. 92 (10) 2.88(1l) 12)ジョブ・ローテーション 2.61 (12) 2.65 (12) 2.63 (12) *) n
=
98 (NIES), n=
80 (ASEAN), n=
178 (ASIA)。表中の得点は, 1点→全く 実施していなし), " 3点→ある程度知包している, 5点→積極的に実施している, として合計点、を集計し,回答企業数ても割ーってl社あたりの平均値を計算した。 (6 ) 欧米系の企業、では,取締役,部長などは,それぞれステイタス・シンボルとして個室 をもっているのが通例である(個室主義:個人主義と呼ばれる)。それに対して,日本 企業及び概して海外の日系企業(とりわけ製造企業)では,各部門(購買部(あるいは 課:以下同様),販売部,経理部,人事部)などが部門長をも含めて,←つのフロア(場 合によれば区画)でオ プンエンドに情報のやり取り(あるいはフェイス・ツー・ 7エ イスのコミ zニケーション)を行うのが通常のスタイルになっている。一般にこのよう なスタイルを,大部屋主義と呼ばれている。-314 香川大学経済論叢 510 しかし,日本的人事制度と密接な関係のある年功賃金制度 (3.19:: 8位), 年功昇進制度 (2.95: 10位)は,個人主義的な色彩の強い在英日系企業(年 功賃金制度::1.53,年功昇進制度::1.60)などに比べると,アジアの日系企業 では相対的に受容されているが,-ある程度導入」という段階に留まコている ケースが多いようである。また日本的意思決定方式と言われるコンセンサスを 重視する集団的意思決定(ミドルアップあるいはボトムアップと呼ばれてい る)(2.96:: 9位),日本的な生産管理方式である一人の作業者が幾つものジョ ブをこなすことの出来る多能主の養成 (2.88: 1: 1位),ジョブ・ローテーショ ン (2.63: 1:2位)などは,まだ一部℃実践されているに過ぎず,より一層受 容されるためには,当該地域の経済,社会,文化などとのハイブリッド化が必 要であり,今後に残された課題も多くみられる。 NIESとASEANにおける日本的経営実践の浸透の傾向(導入の順位)は, いずれの地域でも,ほぽ同じオーダーになっている。ただその受け入れられて いるレベル(スコア)は,全体的にはASEANよりも NIESの場合が幾分高 くなっているようである(なお,制服の着用と,大部屋主義,多能工の養成, ジョブ・ローテーションは幾分ASEANの場合が高い)。 3 - 2 経営職能のインサイダー化 ここでは,経営職能のインサイダー化を,過程的視点と時間的視点の二つに 区分して,アジアの日系企業におけるその特徴を分析してみたい。 1)経営職能のインサイダー化:過程的視点 購買,生産,販売,人事,財務,研究開発などにおける様々な意思決定を行 う際に,日本の親会社が本社中心に行っているか,それとも意思決定権限がロ ーカノレの海外子会社に委譲されているかどうかは,海外子会社の経営職能のロ ーカル化を考える際に,非常に重要な経営指標である。ここでは,購買,生産, 販売,人事,財務,研究開発などの経営職能のインサイダー化,すなわち経営 職能のローカル化のレベルを,表
-3
により一瞥する。 アジア全体での日系企業のローカル化の特徴をまず述べてみる。最もローカ -314 香川大学経済論叢 510 しかし,日本的人事制度と密接な関係のある年功賃金制度 (3.19:: 8位), 年功昇進制度 (2.95: 10位)は,個人主義的な色彩の強い在英日系企業(年 功賃金制度::1.53,年功昇進制度::1.60)などに比べると,アジアの日系企業 では相対的に受容されているが,-ある程度導入」という段階に留まコている ケースが多いようである。また日本的意思決定方式と言われるコンセンサスを 重視する集団的意思決定(ミドルアップあるいはボトムアップと呼ばれてい る)(2.96:: 9位),日本的な生産管理方式である一人の作業者が幾つものジョ ブをこなすことの出来る多能主の養成 (2.88: 1: 1位),ジョブ・ローテーショ ン (2.63: 1:2位)などは,まだ一部℃実践されているに過ぎず,より一層受 容されるためには,当該地域の経済,社会,文化などとのハイブリッド化が必 要であり,今後に残された課題も多くみられる。 NIESとASEANにおける日本的経営実践の浸透の傾向(導入の順位)は, いずれの地域でも,ほぽ同じオーダーになっている。ただその受け入れられて いるレベル(スコア)は,全体的にはASEANよりも NIESの場合が幾分高 くなっているようである(なお,制服の着用と,大部屋主義,多能工の養成, ジョブ・ローテーションは幾分ASEANの場合が高い)。 3 - 2 経営職能のインサイダー化 ここでは,経営職能のインサイダー化を,過程的視点と時間的視点の二つに 区分して,アジアの日系企業におけるその特徴を分析してみたい。 1)経営職能のインサイダー化:過程的視点 購買,生産,販売,人事,財務,研究開発などにおける様々な意思決定を行 う際に,日本の親会社が本社中心に行っているか,それとも意思決定権限がロ ーカノレの海外子会社に委譲されているかどうかは,海外子会社の経営職能のロ ーカル化を考える際に,非常に重要な経営指標である。ここでは,購買,生産, 販売,人事,財務,研究開発などの経営職能のインサイダー化,すなわち経営 職能のローカル化のレベルを,表-3
により一瞥する。 アジア全体での日系企業のローカル化の特徴をまず述べてみる。最もローカOLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
511 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -315-lレイじが進んでいる経営活動は,ローカ1レの職員(特に一般従業員)の人事活動 であり
4
.
9
3
点と,ほとんどすべての機能(採用,教育,人事考課など)がロ ーカルになされていることが理解できる。つぎにローカル化のレベルが高い活 動は,製造活動で4.54点,財務活動(運転資金の調達及び運用)は4.52点と, ローカル化のレベルが高くなっている。製造活動のローカル化は,日系企業の 海外進出の直接的な目的であり,その特徴をよく表している。と同時に,企業 の財務,とりわけ運転資金の調達及びその運用は,大部分を現地の銀行あるい は現地に進出した日系銀行からなされており,ほぽローカノレに資金調達などの 意思決定を行っているといえる。 また原材料,部品などの調達職能,すなわち購買活動も4
.
3
0
点と,日系企 業のアジア進出の大きな目的である。 NIESとASEANを合わせたアジア全 体からそれぞれの地域の特性を考慮した国際分業が行われ,アジア各国から原 表-3 経営職能のインサイダー化:過程的視点経営職能 NIES ASEAN ASIA 1) 人事活動(ローカルズ) 4.92 (1) 4.94 (1) 4.93 (1) 2) 製造活動 4.46 (3) 4.. 65 (2) 4.. 54 (2) 3) 財務活動(運転資金) 久54 (2) 4.49 (3) 4.52 (3) 4) 購買活動 4.33 (4) 4.27 (4) 4.30 (4) 5) 財務活動(設備投資資金) 4.. 02 (5) 3.95 (5) 3.. 99 (5) 6) 企業文化・価値観の形成 3.79 (6) 3.. 87 (6) 3.83 (6) 7) アフターサービス活動 3.76 (7) 3.61 (7) 3.69 (7) 8) 販売活動 3.44 (8) 3.36 (8) 3.41 (8) 9) マーケテイング活動 3.38 (9) 3.23 (9) 3.31 (9) 10) 製品企画活動 2.69 (10) 2.30 (10) 2.. 52 (10) 11) 設計活動 2.69 (11) 2.. 15(11) 2.46 (J 1) 12) 人事活動(日本人) 2.26 (12) 2.48 (12) 2.36 (12) 13)研究開発活動 2. 15 (13) 2.01 (l3) 2.. 09 (13) *) n
=
100 (NIES), nニ80(ASEAN), n=
180 (ASIA)o '日本の親会社が全面的 に経営職能を分担・決定 3点→両者の中間 5点〉全面的に現地 子会在が分担・決定しているJ,として回答して貰い, それぞれの項目毎に合計 点を出し, 回答企業数、で割って社当たりの平均点をだした。( )の中は重 要性の順位を示している。 511 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -315-lレイじが進んでいる経営活動は,ローカ1レの職員(特に一般従業員)の人事活動 であり4
.
9
3
点と,ほとんどすべての機能(採用,教育,人事考課など)がロ ーカルになされていることが理解できる。つぎにローカル化のレベルが高い活 動は,製造活動で4.54点,財務活動(運転資金の調達及び運用)は4.52点と, ローカル化のレベルが高くなっている。製造活動のローカル化は,日系企業の 海外進出の直接的な目的であり,その特徴をよく表している。と同時に,企業 の財務,とりわけ運転資金の調達及びその運用は,大部分を現地の銀行あるい は現地に進出した日系銀行からなされており,ほぽローカノレに資金調達などの 意思決定を行っているといえる。 また原材料,部品などの調達職能,すなわち購買活動も4
.
3
0
点と,日系企 業のアジア進出の大きな目的である。 NIESとASEANを合わせたアジア全 体からそれぞれの地域の特性を考慮した国際分業が行われ,アジア各国から原 表-3 経営職能のインサイダー化:過程的視点経営職能 NIES ASEAN ASIA 1) 人事活動(ローカルズ) 4.92 (1) 4.94 (1) 4.93 (1) 2) 製造活動 4.46 (3) 4.. 65 (2) 4.. 54 (2) 3) 財務活動(運転資金) 久54 (2) 4.49 (3) 4.52 (3) 4) 購買活動 4.33 (4) 4.27 (4) 4.30 (4) 5) 財務活動(設備投資資金) 4.. 02 (5) 3.95 (5) 3.. 99 (5) 6) 企業文化・価値観の形成 3.79 (6) 3.. 87 (6) 3.83 (6) 7) アフターサービス活動 3.76 (7) 3.61 (7) 3.69 (7) 8) 販売活動 3.44 (8) 3.36 (8) 3.41 (8) 9) マーケテイング活動 3.38 (9) 3.23 (9) 3.31 (9) 10) 製品企画活動 2.69 (10) 2.30 (10) 2.. 52 (10) 11) 設計活動 2.69 (11) 2.. 15(11) 2.46 (J 1) 12) 人事活動(日本人) 2.26 (12) 2.48 (12) 2.36 (12) 13)研究開発活動 2. 15 (13) 2.01 (l3) 2.. 09 (13) *) n
=
100 (NIES), nニ80(ASEAN), n=
180 (ASIA)o '日本の親会社が全面的 に経営職能を分担・決定 3点→両者の中間 5点〉全面的に現地 子会在が分担・決定しているJ,として回答して貰い, それぞれの項目毎に合計 点を出し, 回答企業数、で割って社当たりの平均点をだした。( )の中は重 要性の順位を示している。-316 香川大学経済論叢 512 材料及び部品を調達しており,それだけローカノレ化のレベルも高くなっている と思われるO た だ い ま だ 日 本 の 親 会 社 か ら の 原 材 料 や 部 品 の 調 達 比 率 が
3
6
.
1
6
%
(アジア全体で)を占めており, それが意思決定のローカノレ化のレベ ノレにも大きな影響を与えていると思われる。 「ある程度」海外子会担でローカ/レに意思決定がなされている経営職能は, 財務活動(設備投資資金)で3
.
9
9
点,企業文化・価値観の形成で3
.
8
3
点,ア ブタサービス活動3
.
6
9
点,販売活動で3
.
4
1
点及びマーケティング活動3
.
3
1
点などである。いずれの活動も 3点台にあり,ある程度はローカノレ化されてい るが,今後ともローカ/レ化を進める必要のある経営職能である。 最もローカル化のレベルが低く,従ってローカル化が進んでいなく今後にそ れが期待されている経営職能は,R&D
活動と日本人派遣者の人事職能のこつ である。R&D
活動(研究開発::2
.
0
9
,製品企画::2
.
5
2
,設計機能:2
.
4
6
)
は, 経営資源、の分散が最も困難な職能であり,ローカJレ化がたいへん難しい職能で ある。それでも,企業の生産,販売機能のローカノレ化につれて,消費者に直結 する製品企画及びそれに合わせて製品の部分的な設計変更などを行う詳細設計 は,原材料,部品の現地調達の増大と共に,ローカ/レに行う必要性が増大して きている。また最近の急激な円高などにより,国内工場で使用する部品の海外 からの調達の増大や,日本企業の海外生産のシフトにより,製品企画や詳細設 計を中心にR&D
機能もアジア諸国に移転している企業が多くなっている。た だ,基本設計や研究開発という機能は,グローパル・シナジー効果によるメリ ットもあるが,同時に日本企業そのもののグローパノレな戦略との関係があり, 日本の親企業とアジアでの日系企業間でのR&D
職能の棲み分けの再検討が要 請されるので,日本企業にとっては今後に残された課題である。 地域別には,R&D
職能のローカノレ化は,N
I
E
S
の方がASEAN
よりも若干 数字が高くなっており,N
I
E
S
地域でのR&D
のローカル化がより進展してい る。それは,N
I
E
S
地域の技術水準や教育水準などがASEAN
の場合よりも 高く,日系企業にとってR&D
機能をローカル化するインフラ・ストラクチャ ーとインセンティブがより整備・充実しているためである。 -316 香川大学経済論叢 512 材料及び部品を調達しており,それだけローカノレ化のレベルも高くなっている と思われるO た だ い ま だ 日 本 の 親 会 社 か ら の 原 材 料 や 部 品 の 調 達 比 率 が3
6
.
1
6
%
(アジア全体で)を占めており, それが意思決定のローカノレ化のレベ ノレにも大きな影響を与えていると思われる。 「ある程度」海外子会担でローカ/レに意思決定がなされている経営職能は, 財務活動(設備投資資金)で3
.
9
9
点,企業文化・価値観の形成で3
.
8
3
点,ア ブタサービス活動3
.
6
9
点,販売活動で3
.
4
1
点及びマーケティング活動3
.
3
1
点などである。いずれの活動も 3点台にあり,ある程度はローカノレ化されてい るが,今後ともローカ/レ化を進める必要のある経営職能である。 最もローカル化のレベルが低く,従ってローカル化が進んでいなく今後にそ れが期待されている経営職能は,R&D
活動と日本人派遣者の人事職能のこつ である。R&D
活動(研究開発::2
.
0
9
,製品企画::2
.
5
2
,設計機能:2
.
4
6
)
は, 経営資源、の分散が最も困難な職能であり,ローカJレ化がたいへん難しい職能で ある。それでも,企業の生産,販売機能のローカノレ化につれて,消費者に直結 する製品企画及びそれに合わせて製品の部分的な設計変更などを行う詳細設計 は,原材料,部品の現地調達の増大と共に,ローカ/レに行う必要性が増大して きている。また最近の急激な円高などにより,国内工場で使用する部品の海外 からの調達の増大や,日本企業の海外生産のシフトにより,製品企画や詳細設 計を中心にR&D
機能もアジア諸国に移転している企業が多くなっている。た だ,基本設計や研究開発という機能は,グローパル・シナジー効果によるメリ ットもあるが,同時に日本企業そのもののグローパノレな戦略との関係があり, 日本の親企業とアジアでの日系企業間でのR&D
職能の棲み分けの再検討が要 請されるので,日本企業にとっては今後に残された課題である。 地域別には,R&D
職能のローカノレ化は,N
I
E
S
の方がASEAN
よりも若干 数字が高くなっており,N
I
E
S
地域でのR&D
のローカル化がより進展してい る。それは,N
I
E
S
地域の技術水準や教育水準などがASEAN
の場合よりも 高く,日系企業にとってR&D
機能をローカル化するインフラ・ストラクチャ ーとインセンティブがより整備・充実しているためである。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
513 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 ク ' ' マ , A 9 d 経営活動のうちローカノレ化が進展していないもう一つの活動は,日本人の人 事活動である。日本からの派遣者の人事(日本人の人事)は,日本の親会社が 中心にグローノてノレな視点、から決定している経営職能であり,すべての経営職能 の中で最もインサイダー化のレベノレが低い
(
2
.
3
6
点)職能の1
つである。日 本人派遣者の人事は,日本的な人事制度の中でト行われており,大概は日本の親 会社の人事部門が人事権限を保持しており,日本人の派遣あるいは交代の場合 も,海外子会社の日本人社長と協議の上で日本本社の人事部が行っているケー スが多い。 地域別に,全体的に経営職能のローカノレ化の順位とレベルを検討してみよう。 経営職能のインサイダー化,すなわちローカノレ化の順序については, NIESと ASEANともほぼ同じようなステップを踏んでいる。しかしローカノレ化の現在 のレベノレについては, NIESの方がASEANの場合よりも若干高く(なお製 造職能だけは逆転),それだけNIESの場合,ローカル化がより進展している。2
)経営職能のインサイダー化:時間的視点 経営職能を,時間的な観点から分類すると i使用者要求事項の把握から製 品企画書を作成するまでの段階J (製品企画段階), i製品企画書に基づいて達 成すべき機能,日程,原価の条件下、で具体的な製品基本計画図を作成するまで の段階J (基本設計段階), i基本設計図に基づ、いて具体的に達成すべき機能, (7) 欧米の日系企業の場合に比べて,アジアに進出した日系企業の経営職能のローカル化 の特徴は,次の点にある。 ) 販売活動のインサイダー化のレベルが低い。これは輸出比率が高いことが影響しi
いるのであろうか。あるいは,同じグル プの独立の販売会社あるいは日本本社が-};5 号│き取り,輸出する体制になっているのが原因でなかろうかと思われる。 b) a)との関連で,アジアの日系製造企業は,進出先国での販売活動が比較的少ないた め喝アフター・サービス機能も,欧米など他の地域と比べるとローカル化が余り進んで い示ぃ。アアタ サービスは,市場(販売)に付随する機能であるので,輸出がアジア 平均でや%もあり,その必要性が相対的に低いのがその理由であると思われる。またマ ーケティング活動も3点台である。 ) アジア地域は,日本との距離的な近接性ーということもあり,日本と東アジア間での 国際分業体制があノり,日本の国内工場と役割分担が補完関係にある。ただローカル化の トレンドについては,販売活動とアフターサービス活動,マーケティング活動を除外す れば,在英日系企業の場合とほぼ同じ傾向にある。 513 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -317-経営活動のうちローカノレ化が進展していないもう一つの活動は,日本人の人 事活動である。日本からの派遣者の人事(日本人の人事)は,日本の親会社が 中心にグローパルな視点、から決定している経営職能であり,すべての経営職能 の中で最もインサイグ、一化のレベノレが低い (2.36点)職能の1つである。日 本人派遣者の人事は,日本的な人事制度の中で行われており,大概は日本の親 会社の人事部門が人事権限を保持しており,日本人の派遣あるいは交代の場合 も,海外子会社の日本人社長と協議の上で日本本社の人事部が行っているケー スが多い。 地域別に,全体的に経営職能のローカル化の順位とレベルを検討してみよう。 経営職能のインサイダー化,すなわちローカノレ化の順序については, NIESと ASEANともほぼ同じようなステップを踏んでいる。しかしロ}カノレ化の現在 のレベノレについては, NIESの方がASEANの場合よりも若干高く(なお製 造職能だけは逆転),それだけNIESの場合,ローカル化がより進展している。 2 )経営職能のインサイダー化:時間的視点 経営職能を,時間的な観点から分類すると i使用者要求事項の把握から製 品企画書を作成するまでの段階J(製品企画段階), i製品企画書に基づいて達 成すべき機能,日程,原価の条件下?具体的な製品基本計画図を作成するまで の段階J (基本設計段階), i基本設計図に基づいて具体的に達成すべき機能, (7) 欧米の日系企業の場合に比べて,アジアに進出した日系企業の経営職能のローカル化 の特徴は,次の点にある。 a) 販売活動のインサイ夕、一化のレベルが低い。これは輸出比率が高いことが影響して いるのであろうか。あるいは,同じグループの独立の販売会社あるいは日本本社が一括 号│き取り,輸出する体制になっているのが原因でなかろうかと思われる。 b) a)との関連で,アジアの日系製造企業は,進出先国での販売活動が比較的少ないた め,アフター・サービス機能も,欧米など他の地域と比べるとローカル化が余り進んで いなし当。アブタ サービスは,市場(販売)に付随する機能℃あるので,輸出がアジア 平均で61%もあり,その必要性が相対的に低いのがその理由-cあると思われるO またマ ーケティング活動も3点台である。 c) アジア地域は,日本との距離的な近接性ということもあり,日本と東アジア間での 国際分業体制があり,日本の国内工場と役割分担が補完関係にある。ただローカル化の トレンドについては,販売活動とアフターサービス活動,マーケティング活動を除外す れば,在英日系企業の場合とほぼ同じ傾向にある。318 香川大学経済論叢 514 日程,原価の条件下で製作図など製造仕様書を作成するまでの段階J (詳細設 計段階), I製造仕様書に基づいて,製造準備(工程設計,内外作決定,型,冶 工具製作,資材調達等)が完了するまでの段階J(製造準備段階),及び「製造 を開始してから製品が完成するまでの段階J(製造段階)の5つに区分される。 ここでは,上記のそれぞれの段階の職能がどの程度アジアに進出した日系企業 において行われている(ローカル化されている)か,表
-4
により考察するO 表-4 経営機能のローカル化・時間的視点 経 営 機 能 NIES ASEAN ASIA製品企画段階 2.35 2.03 2.20
基本設計段階 2.44 1.77 2.14
詳細設計段階 3" 03 2.29 2. 70
製造準備段階 4.53 4" 15 4.36
製 造 段 階 4.88 1.88 4.88
*) n=89 (NIES), n=76 (ASEAN), nニ174(ASIA)。 表 の 数 字 は 点 → 当 地 で は 全 然 行 わ れ て い な い 3点〉 ある程度当地て、行われている 5点〉ほぽ完全に当地 で実施,として数字を記入して貰い,合計点を出し,回答企 業数、で割って1社平均の数字を出した。 アジア全体では,基本設計が2.14で,最もローカノレ化が遅れている機能で あり,製品企画段階も 2.20とほぼ同じレベルにあるといえる。また詳細設計 段階は,上記
2
つの経営機能と比較すると若干ローカル化のレベルは高く2
.7
0
であるが,いまだ日本の親会社で行われている比率が高いのが実態である。 他方,製造準備段階は,4
.
3
6
と大部分がアジアの日系企業で行われている ことがわかる。また製造段階は4
.
8
8
であり,ローカル化は大部分完了してい ると現地サイドでは認識しているようである。次にNIESとASEANの場合を比較してみると,全体的にはNIESに進出
した日系企業がASEANに進出している日系企業に比べると,経営職能のロ ーカノレ化のレベルは何れの段階においても(製造段階は同じレベルにあるが) 高くなっている。とりわけ基本設計及び詳細設計を含めた,設計段階のローカ 318 香川大学経済論叢 514 日程,原価の条件下で製作図など製造仕様書を作成するまで、の段階J (詳細設 計段階), I製造仕様書に基づいて,製造準備(工程設計,内外作決定,型,冶 工具製作,資材調達等)が完了するまでの段階J(製造準備段階),及び「製造 を開始してから製品が完成するまで、の段階J(製造段階)の5つに区分される。 ここでは,上記のそれぞれの段階の職能がどの程度アジアに進出した日系企業 において行われている(ローカル化されている)か,表
-4
により考察するO 表-4 経営機能のローカル化・時間的視点 経 営 機 能 NIES ASEAN ASIA製品企画段階 2.35 2.03 2.20 基本設計段階 2.44 1.77 2.14 詳細設計段階 3" 03 2.29 2. 70 製造準備段階 4.53 4,,15 4.36 製 造 段 階 4.88 1.88 4.88 *) n=89 (NIES), n=76 (ASEAN), nニ174(ASIA)。 表 の 数 字 は 点 → 当 地 で は 全 然 行 わ れ て い な い 3点→ ある程度当地で行われている 5点〉ほぽ完全に当地 で実施,として数字を記入して貰い,合計点を出し,回答企 業数、で割って1社平均の数字を出した。 アジア全体では,基本設計が2.14で,最もローカノレ化が遅れている機能で あり,製品企画段階も 2.20とほぼ同じレベルにあるといえる。また詳細設計 段階は,上記
2
つの経営機能と比較すると若干ローカル化のレベルは高く2
.7
0
であるが,いまだ日本の親会社で行われている比率が高いのが実態である。 他方,製造準備段階は,4
.
3
6
と大部分がアジアの日系企業で行われている ことがわかる。また製造段階は4
.
8
8
であり,ローカル化は大部分完了してい ると現地サイドでは認識しているようである。次に NIESとASEANの場合を比較してみると,全体的にはNIESに進出
した日系企業がASEANに進出している日系企業に比べると,経営職能のロ ーカノレ化のレベルは何れの段階においても(製造段階は同じレベルにあるが) 高くなっている。とりわけ基本設計及び詳細設計を含めた,設計段階のローカ
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -319 lレイじに顕著な相違がみられる。この理由としては,進出先国の技術及び技術者 などのインフラストラクチャーの整備と進出時期が関係しているためと思われる。 3 - 3 研究開発職能のローカル化 ここでは,研究開発活動がどの程度アジアの現地子会社で行われているか, 研究開発職能のローカノレ化について検討する。すなわち,狭義の研究開発,製 品企画及び設計職能という,広義の研究開発職能に含まれる経営職能が,日本 の親会社からどの程度アジアの日系企業に国際移転されているかを検討する。 同時に,それらの職能を担当している技術者の人数の検討を通じて,
R&D
活 動の海外子会社へのローカ/レ化をみてみる。 1)研究開発(広義)職能のローカル化 まず、ここで,研究開発活動(広義)といっているのは,本来の研究開発活動 である狭義のR&D
(狭義),製品企画活動及び設計活動全般(基本設計及び 詳細設計を含む)のすべてを含む活動を指す。原価企画活動の国際移転の際に 典型的にみられるように,研究開発のローカル化は,経営活動のうちでも最も ローカJレ化が困難な活動である。同時に,進出先国からの技術の国際移転の要 請と相まって,ローカル化を最も切望されている経営活動でもある。以下順次, アジア諸国の日系企業でのR&D
活動のローカノレ化の実態を検討するO a) 全体的なR&D
部門 狭義のR&D
,製品企画あるいは設計部門のいずれか(複数ある場合を含む) の部門がアジアに進出した日系企業にある比率は,表 5のとおりである。 表 -5 R&D機能(広義)のローカル化 R&D音11門 NIES ASEAN ASIA有る 59(59.6%) 29(36.7%) 88(49.44%) 無い 40(40.4 ) 50(63.3 ) 90(50.56 ) N 99 79 178 515 在アジア日系企業の経営実践と原価管理に関する一考察 -319 lレイじに顕著な相違がみられる。この理由としては,進出先国の技術及び技術者 などのインフラストラクチャーの整備と進出時期が関係しているためと思われる。 3 - 3 研究開発職能のローカル化 ここでは,研究開発活動がどの程度アジアの現地子会社で行われているか, 研究開発職能のローカノレ化について検討ーする。すなわち,狭義の研究開発,製 品企画及び設計職能という,広義の研究開発職能に含まれる経営職能が,日本 の親会社からどの程度アジアの日系企業に国際移転されているかを検討する。 同時に,それらの職能を担当している技術者の人数の検討を通じて, R&D活 動の海外子会社へのローカ/レ化をみてみる。 1)研究開発(広義)職能のローカル化 まず、ここで,研究開発活動(広義)といっているのは,本来の研究開発活動 である狭義のR&D(狭義),製品企画活動及び設計活動全般(基本設計及び 詳細設計を含む)のすべてを含む活動を指す。原価企画活動の国際移転の際に 典型的にみられるように,研究開発のローカル化は,経営活動のうちでも最も ローカル化が困難な活動である。同時に,進出先国からの技術の国際移転の要 請と相まって,ローカル化を最も切望されている経営活動でもある。以下順次, アジア諸国の日系企業でのR&D活動のローカノレ化の実態を検討するO a) 全体的なR&D部門 狭義のR&D,製品企画あるいは設計部門のいずれか(複数ある場合を含む) の部門がアジアに進出した日系企業にある比率は,表 5のとおりである。 表 -5 R&D機能(広義)のローカル化 R&D部門 NIES ASEAN ASIA
有る 59(59.6%) 29(36.7%) 88(49.44%) 無い 40(40.4 ) 50(63.3 ) 90(50.56 )
-320 香川大学経済論叢 516
マ 一
r i
l l
表からもわかるとおり,アジア全体では,何れかのR&D
部門があるのは8
0
祖(
4
9
.
4
4
%
)
である。その内訳は,NTES
では5
9
社(
5
9
.
6
%
)
であるが, 逆にASEAN
では2
9
担(
3
6
.
7
%
)
と,NIES
の場合がASEAN
と比べると,R&D
のローカル化が遥かに進展していることが理解できる。 b) 研究開発部門(狭義)次に,本来の研究開発活動である狭義の
R&D
活動が日系企業で行われてい るのは,アジア全体で4
6
柾(
2
5
.
4
%
)
である。その内訳は,NIES
で2
9
社(
2
9
%
)
あるが,ASEAN
ではl7社(
2
1
%
)
と,NIES
におけるR&D
部門のローカJレ化がより進行していることが理解できる。 c) 製品企画部門 次に狭義の
R&D
活動に続いて,ローカノレ市場における消費者ニーズを充分 に理解し,それに見合った製品をアジア諸国で製造することは,非常に重要で ある。そのために,積極的な役割を果たすのが製品企画活動である。 アジアにおける,製品企画活動のローカル化は,どのように行われているの であろうか。製品企画部門を現地にもっている日系企業は,アジア地域全体で3
1
社(17
.
1
%
)
であり,その内訳はNIES
で1
7
社(
1
7
.
0
%
)
,ASEAN
で1
4
社(17
.
3
%
)
になっており,その比率はほぼ同じである。その理由は,製品企 画活動は何れにしろ消費市場でどのような製品ニーズがあるか,製品の市場性 を探る上で,どうしても不可欠な活動であるが,1
7
%
程度であり必ずしもロ ーカル化が高いとはいえない。 d) 設 計 部 門 最後に,設計(基本設計と詳細(応用)設計を含む)部門のローカノレ化のレ ベルをみてみる。アジア全体では,6
5
社(
3
5
.
9
%
)
の企業がすでに設計部門 をローカルの子会社に持っている。地域別には,N
I
E
S
で4
2
社(
4
2
.
0
%
)
,ASEAN
で2
3
社(
1
2
.
7
%
)
と,NIES
において,ローカルに設計部門を持っ ている企業の割合が圧倒的に多くなっている。逆に,ASEAN
ではいまだ実 際のものづくりである製造活動が中心であり,設計活動をローカル化している 企業は,日系企業の一部に過ぎないことが理解できる。 -320 香川大学経済論叢 516 表からもわかるとおり,アジア全体では,何れかのR&D
部門があるのは8
0
社(
4
9
.
4
4
%
)
である。その内訳は,NTES
では5
9
社(
5
9
.
6
%
)
であるが, 逆にASEAN
では2
9
柾(
3
6
.
7
%
)
と,NIES
の場合がASEAN
と比べると,R&D
のローカル化が遥かに進展していることが理解できる。 b) 研究開発部門(狭義)次に,本来の研究開発活動である狭義の
R&D
活動が日系企業で行われてい るのは,アジア全体で4
6
柾(
2
5
.
4
%
)
である。その内訳は,NIES
で2
9
社(
2
9
%
)
あるが,ASEAN
ではl7社(
2
1
%
)
と,NIES
におけるR&D
部門のローカJレ化がより進行していることが理解できる。 c) 製品企画部門 次に狭義の