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擬似病斑形成変異イネを利用したいもち病抵抗性の発現解析に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

氏      名 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号

学位授与年月日

学位授与の要件

学位論文題 目

学位論文審査委員 う   え   の         ま   こ   と 上  野     誠

博士(農学)

甲 第369 号

平 成17 年  3 月15 日

学位規則第4条第1項該当

擬似病斑形成変異イネを利用したいもち病抵抗性の発現解析 に関する研究 (Studiesontheexpressionofblastresistanceinlesionmimic mutantofriceinfectedwithMbgnqporthegrisea) 栄浩一 浮

瀬谷原

荒尾木

田中秀平  柴田  均

学位論文 の 内 容 の 要 旨

本研究は、擬似病斑形成変異イネ関口朝日の光依存的抵抗性の発現機構を生理学的あるい は分子生物学的に究明したものである。得られた結果は以下のように要約される。 (1)変異イネ(品種:関口朝日)にイネいもち病菌の感染を阻害する抗菌性物質の存在するこ とを発見し、これをインドール系化合物の一つであるトリブタミン(分子量160.1)と同定し た。トリブタミンは、0.15・8.3mg/血の低濃度ではイネいもち病菌胞子の発芽は阻害しなかっ たが、付着器からの侵入菌糸形成は著しく阻害した。0.6mg/血以上の高濃度になると胞子発 芽を阻害した。トリブタミンは、イネいもち病菌を接種した関口朝日では光依存的に形成さ れた関口病斑には著しく蓄積したが、いもち病斑には蓄積しなかった。これらの結果はトリ ブタミンが関口朝日での光依存的な抵抗性発現に重要な役割を持っていることを示唆した。 (2)イネいもち病菌を接種した関口朝日ではトリプトファン脱炭酸酵素(TDC)及びモノアミ ン酸化酵素(MAO)の活性が光依存的に増加した。しかもTDC及びMAO活性の増加は、イネ いもち病菌のイネ体侵入前から見られ、関口病斑形成時に最大となり、その後もこの高活性 は維持された。クローニングしたmc遺伝子の発現を見ると、同じく光依存的に増加した。 イネいもち病菌の胞子発芽液もこれら酵素活性の増加とトリブタミン蓄積を誘導すると共に、 関口病斑形成を誘導した。関口病斑は、MAOの基質となるトリブタミンや6-フェニルエチル アミン処理によっても光依存的に誘導されたが、基質とならないインドールづ-プロピニオン 酸、トリプトファン及び(±)-フェニルエチルアミンでは誘導されなかった。トリブタミンに

(2)

よる関口病斑形成は、MAOの阻害剤(セミカーバザイド及びメタラキシル)や過酸化水素 (H202)消去剤(アスコルビン酸及びカタラーゼ)の存在下では顕著に阻害された。このこ とは関口病斑形成にH202が関与していることを示した。事実、光照射下の接種24時間後の イネいもち病菌付着器直下のイネ細胞では3,3,-Diaminobenzidine(DAB)試薬によりH202生成 を示す陽性反応が観察された。一方、H202も関口病斑形成を光照射下では誘導したが、暗黒 では誘導しなかった。この違いには光条件下では抑制され、暗黒では抑制されなかったカタ ラーゼ活性が関係していた。 (3)イネいもち病菌を接種した関口朝日を光照射下に保つとDNAの断片化やDNase活性の増 加が観察されたが、タンパク合成阻害剤であるシクロへキシシド又は熱処理により関口病斑 形成、トリブタミン蓄積あるいはトリブタミン関連酵素(TDC及びMAO)活性を著しく抑 制したイネ葉ではそれらも観察されなくなった。このような違いは、細胞死の検出試薬であ るエバンスブルーを用いても認められた。即ち、関口病斑では細胞死の誘導を示す強いいエ バンスブルー染色が観察されたがいもち病斑では認められなかった。 (4)関口系変異イネ関口朝日以外の関口コシヒカリ及び関口ササニシキにおける、トリブタミ ン経路の活性化とアポトーシス誘導も光依存的であった。また、Tbminaldeoxynucleotidyl transftraseinediateddUTPllic endlabeling(TUNEL)法や電気泳動法により核のDNA崩壊や DNase活性の増加も光依存的に起こっていた。しかし、シクロへキシシド又は熱処理により トリブタミン経路を抑制すると、DNAの崩壊や断片化あるいはDNase活性も抑制された。 (5)イネいもち病菌を接種した関口朝日を長波長域(550-650nm)の光条件下に保つと著しい トリブタミン経路の活性化が観察されたが、短波長域(200jOOnm)の光条件下では観察され なかった。さらに、長波長域の光条件下の接種葉では著しいカタラーゼ活性の低下とそれに 伴うH202の生成・蓄積が観察された。しかし、短波長域の光条件下では高いカタラーゼ活性 が維持されており、H202の生成・蓄積は見られなかった。 (6)イネいもち病菌に対して抗菌性を示さない濃度のインドール酢酸、トリブタミン及びトリ プトファンをオオムギに処理しておくとイネいもち病菌による病斑形成や侵入菌糸形成が著 しく抑制された。しかも化合物前処理葉ではキチナーゼ、パーオキシダーゼ及びフェニルア ラニンアンモニアリアーゼなどの抵抗性関連酵素の活性も増加した。さらに過酸化水素生成 も観察された。これらの結果はインドール酢酸、トリブタミン及びトリプトファンなどのイ ンドール化合物がplantactivatorとしてイネいもち病菌の防除に利用できる可能性を示した。 以上の結果より、1)関口系変異イネにはトリブタミン経路が存在し、その活性化には長波 長域の可視光が必要である。2)トリブタミン経路の活性化により合成されたトリブタミンは、 MAOにより酸化されH202が生成されるが、可視光下ではカタラーゼによる消去が行われな いためにその蓄積が起こる。3)蓄積したH202はイネ細胞にアポトーシス反応を伴った細胞 死を誘導するが、この細胞死は半括物寄生菌であるイネいもち病菌とイネ細胞の初期共生関 係の成立を阻害するためにイネいもち病菌感染は不成立に終わると考えられた。

(3)

閂tll

芹tll

LJItyptophan

l←T。。†

Tryptamine† Indole・3っacetaldehyde l Indole-aCeticacid

7千率ソ

MAO†

CatalaseJ Sekiguchilesion Apoptoticresponse DNAfragmentationU DNaseactivityロ

論文審査 の 結果の 要 旨

本研究は、擬似病斑形成変異イネ関口朝日の光依存的抵抗性の発現機構を生理学的あるいは分 子生物学的に究明したものである。得られた結果は以下のように要約される。 (1)変異イネ(品種:関口朝日)にイネいもち病菌の感染を阻害する抗菌性物質の存在すること を発見し、これをインドール系化合物の一つであるトリブタミン(分子量160.1)と同定した。ト リブタミンは、0.15・8.3mg/血の低濃度ではイネいもち病菌胞子の発芽は阻害しなかったが、付着 器からの侵入菌糸形成は著しく阻害した。0.6mg血1以上の高濃度になると胞子発芽を阻害した。 トリブタミンは、イネいもち病菌を接種した関口朝日では光依存的に形成された関口病斑には著 しく蓄積したが、いもち病斑には蓄積しなかった。これらの結果はトリブタミンが関口朝日での

(4)

光依存的な抵抗性発現に重要な役割を持っていることを示唆した。 (2)イネいもち病菌を接種した関口朝日ではトリプトファン脱炭酸酵素(TDC)及びモノアミン 酸化酵素(MAO)の活性が光依存的に増加した。しかもTDC及びMAO活性の増加は、イネいもち 病菌のイネ体侵入前から見られ、関口病斑形成時に最大となり、その後もこの高活性は維持され た。クローニングしたmc遺伝子の発現を見ると、同じく光依存的に増加した。イネいもち病菌 の胞子発芽液もこれら酵素活性の増加とトリブタミン蓄積を誘導すると共に、関口病斑形成を誘 導した。関口病斑は、MAOの基質となるトリブタミンや6-フェニルエチルアミン処理によっても 光依存的に誘導されたが、基質とならないインドール÷プロピニオン酸、トリプトファン及び(±)- フェニルエチルアミンでは誘導されなかった。トリブタミンによる関口病斑形成は、MAOの阻 害剤や過酸化水素消去剤の存在下では顕著に抑制された。このことは、関口病斑形成にH202が関 与していることを示した。事実、光照射下の接種24時間後のイネいもち病菌付着器直下のイネ細 胞では3,3,Diaminobenzidine(DAB)試薬によりH202生成を示す陽性反応が観察された。一方、H202 も関口病斑形成を光照射下では誘導したが、、暗黒では誘導しなかった。この違いには光条件下で は抑制され、暗黒では抑制されなかったカタラーゼ活性が関係していた。 (3)イネいもち病菌を接種した関口朝日を光照射下に保つとDNAの断片化やDNase活性の増加 が観察されたが、タンパク合成阻害剤であるシクロへキシミド又は熱処理により関口病斑形成、 トリブタミン蓄積あるいはトリブタミン関連酵素(TDC及びMAO)活性を著しく抑制したイネ 葉ではそれらも観察されなくなった。このような違いは、細胞死の検出試薬であるエバンスブル ーを用いても認められた。即ち、関口病斑では細胞死の誘導を示す強いエバンスブルー染色が観 察されたがいもち病斑では認められなかった。 (4)関口系変異イネ関口朝日以外の関口コシヒカリ及び関口ササニシキにおける、トリブタミン 経路の活性化とアポトーシス誘導も光依存的であった。また、Tbrminal deoxynucleotidyl transftraseⅦediateddUTPilicendlabeling(TUNEL)法や電気泳動法により核のDNA崩壊やDNase 活性の増加も光依存的に起こっていた。しかし、シクロへキシミド又は熱処理によりトリブタミ ン経路を抑制すると、DNAの崩壊や断片化あるいはDNase活性も抑制された。 (5)イネいもち病菌を接種した関口朝日を長波長域(550-650nm)の光条件下に保つと著しいト リブタミン経路の活性化が観察されたが、短波長域(200・500nm)の光条件下では観察されなかっ た。さらに、長波長域の光条件下の接種葉では著しいカタラーゼ活性の低下とそれに伴うH202 の生成・蓄積が観察された。しかし、短波長域の光条件下では高いカタラーゼ活性が維持されて おり、H202の生成・蓄積は見られなかった。 以上の結果より、1)関口系変異イネにはトリブタミン経路が存在し、その活性化には長波長域 の可視光が必要である。2)トリブタミン経路の活性化により合成されたトリブタミンは、MAOに より酸化されH202が生成されるが、可視光下ではカタラーゼによる消去が行われないためにその 蓄積が起こる。3)蓄積したH202はイネ細胞にアポトーシス反応を伴った細胞死を誘導するが、 この細胞死は半括物寄生菌であるイネいもち病菌とイネ細胞の初期共生関係の成立を阻害するた めにイネいもち病菌感染は不成立に終わると考えられた

(5)

擬似病斑形成変異イネの利用により明らかにされた「光誘導抵抗性」に関する上記の研 究業績は、植物の病害抵抗性機構の解明という植物病理学の重要課題の解明に寄与する新知 見であり、博士(農学)の学位を与えるに十分な価値を持つものと判定した。

参照

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