• 検索結果がありません。

協働型の表現活動の実践をめぐる考察 : 保育士・教員養成課程の学生への意識調査をもとに培われる力に注目して

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "協働型の表現活動の実践をめぐる考察 : 保育士・教員養成課程の学生への意識調査をもとに培われる力に注目して"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

-保育士・教員養成課程の学生への意識調査をもとに培われる力に着目して-斎 藤 竜 夫 とき ぇ 時 得 紀 子 は じめに 我が国の子 どもたちの表現 ・コミュニケーシ ョンカの不足が叫ばれて既 に久 しい。 しか しこの課題 は、将来子 どもたちとかかわる仕事 に携 わろうとす る、保育士 ・教員養成の大 学や短期大学 に学ぶ今 日の学生たちにさえ も見受 け られることが少 な くない とい う現実 を 筆者 らは深刻 に受 け止めている。そ して、急激 に変化す る社会の要請に応 えてい くために は、保育士 をめ ざす幼児教育専攻、あるいは初等 ・中等教育 に携 わることをめ ざす教員養 成課程 の学生が習得す るカリキュラムの改革が喫緊の課題であると考 えている。 本論 ではこの課題解決への手掛か りを探 るべ く、学生が他者 とかかわ り、 自らを表現 し てい くための力 を十分 に蓄 えることがで きるよう支援 してい くために有効 と考 え られる既 存の実践 を例 に挙 げ、 これ らの取 り組みか ら考察 を試みてい く。す なわち、先述 した厳 し い現状 を改善すべ く、子 どもたちの教育 を担 うことをめ ざしている保育士 ・教員養成の大 学及 び短期大学 に学ぶ学生たちを対象 として、彼 らの表現 ・コミュニケーシ ョンカ を培 う ための有効 な教育活動 について模索 してい くものである。具体的には、筆者 らの携 わる大 学 ・短期大学 における既存の表現活動の実践場面の体験 を経 て、 どの ような学 びを得 るこ とがで きたかについての学生-の意識調査 をもとに、その試みの有効性や今後の課選 につ いて論考す るこ、とをめ ざす ものである。

1

.教 員養成 にお ける表現 ・コミュニケー ションカ育成 をめ ざ して (1)表現 ・コミュニケーション活動に関する学生への意識調査か ら 学生の表現 ・コミュニケーシ ョンカの課題 について明 らかにす るため に筆者の時得 は、 表現 にかかわる授 業科 目を受講す る学生 に意識調査 を試みた経緯がある。 時得 は

2

0

0

6

年度 か ら

2

0

0

8

年度 まで、上越教育大学の学部

1

年次生約

1

7

0

名、及 び免許 プログラムの大学 院 坐 (3年 間で初等教育の教員免許 を取得す る課程 の院生)約50名 を対象 として、入学直後 に実施 される、表現 ・コミュニケーシ ョンカ を培 うための授業1)を毎年の4月及 び5月に 担当 して きた。 そ してこれ らの授業 を実施す る前 に受講生 を対象 として、表現や コミュニ ケーシ ョンについて各 自の意識 を尋ねるアンケー ト調査 を実施 した。その質問内容 は、「人 前 で、表現活動 (演奏、調べ た ことの発表 な ど広 い意味 で) をす ることについて

「ボデ ィランゲージ (身振 り、手振 り) をま じえて表現す るこ とについて

「相手 の 目を見 て話

(2)

暁星論叢第60号(2010) をす る こ とについて

な ど、学生 に対 して表現す る こ とにかか わる意識 を

8

項 目につ いて 問 うものであ った。 これ らの問い に、得意、やや得意 、 どち らで もない、やや苦手 、苦手 の

5

つの段 階で回答 を選択 して もらった。 「どち らで もない」とい う消極 的 な回答 も含 め る と、全 ての項 目において、苦手意識 を感 じる者 は実 に半数以上 を占め る結果 となった。 この こ とか ら、学部生 ・院生 ともに教貞養成課程 に在籍 してい なが ら、全 ての項 目にお いて多 くの学生が、 自己 を表現す る ことや、他者 とコ ミュニケー シ ョンを取 るこ とに何 ら かの苦手意識 を抱 いてい る とい う、憂慮すべ き現実が明 らか にな ったのであ る。 以下 は、大学 院免許 プログラム1年次 ・学部1年次 「音 楽

受講生 を対 象 と した、表現 ・コ ミュニケー シ ョン活動 に関す るア ンケー ト調査 について示 す ものであ る。 実施 日免プロ (免許プログラムの略称) :2007年12月3日、学部 :2007年11月29日 対象者-152名 (大学院 ・免プロ院生19名、学部生133名) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 港 得意 徽 やや得意 尊 どちらでもない 韓 やや苦手 嘉苦手 \ ∼ o) ヽ b b

へ も

O' O' O' O'O' O'O' O' 図1.大学院免許プログラム1年次 ・学部1年次 「音楽」受講生 を対象 とした、表現 ・コミュ ニケーション活動に関するアンケー ト結果のグラフ 質問項 目 Question1 Question2 Question3 Question4 question5 Question6 Question7 Question8 ・人前で、表現活動 (演奏、調べたことの発表など広い意味で)をすることについ て自分は ・グループ活動などで、人とコミュニケーションをとることンについて自分は ・言葉をつかって他者に何かを伝えることについて自分は ・ボディランゲージ (身振 り手振 り)をまじえて表現することについて自分は ・相手の目を見て話をすることについて自分は ・相手の気持ちを感 じ取 り取 りながら話をすることについて自分は ・グループ活動などで、人の輪の中に入ってい くことについて自分は ・教育実習などの場で、子 どもたちと積極的にかかわることについて自分は - 2

(3)

4-教員養成課程 に学ぶ学生 ・院生への意識調査のデータに見 られるこうした傾向が年 々顕 著 に見 られる一方で、この現状 を補 うための特別な授業が積極的に増設 されることは検討 されてお らず、多様 な表現活動 を通 じて他の受講生 とかかわ りなが ら活動 を育む といった 演習形式の授業は、現状 において極めて限 られているのが実態 なのである。

(2

)新学習指導要領 と教師に求 め られる幅広い表現活動への指導力 一方、学校教育の現場 において も、新学習指導要領 に掲げ られた小 ・中学校の表現活動 には大 きな拡が りが見 られて きている。 この新 しい動向を受けて、今後教員 をめ ざす学生 に、これまで以上 に幅広い表現活動の指導力の資質が求め られることになるであろう。 折 しも今次の指導要領改訂では、身体表現活動 を広範囲な音楽活動 に導入す る方向の新 たな提言がなされている。平成

21

4

月に小学校学習指導要領 (音楽科)の改訂 と共 に、 〔共通事項〕 とい う新 たな項 目が盛 り込 まれ、表現活動そ して鑑賞活動のいずれに も共通 する内容が明示 された。そ して、 「各学年の

A

表現」及び

B

鑑賞」の指導 に当たって は、音楽 との一体感 を味わい、想像力 を働かせて音楽 とかかわることがで きるよう、指導 のね らいに即 して体 を動かす活動 を取 り入れること」 2)が示 されるな ど、幅広 く体 をつか った表現活動の探究が促 され、身体感覚 を通 した活動が これまで以上に重視 される方向に 転 じていることがわかる。 一方、他教科の動向にも視線 を向けてみると中学校、保健体育科では学習導要領解説書 におけるダンスの項 目で、実 に

1

6

ページにも及 んで多様 な活動 の展 開が提示 された3)。そ して小学校の体育科で も低学年 において

F

表現 リズム遊 び」が新設 された他、高学年 では 「即興的な表現」や、 「音楽に合わせて簡単なステ ップや動 きで踊 ること

などが具 体的に明示 され、音楽 を聴 きとって瞬時に動 きを創 り出す活動が重視 されてお り、創造的 な身体表現 に向けた改革が打 ち出 されてきている4)0 一方、平成

2

3

年度か らの小学校高学年における外国語活動の本格実施 に向け、チ ャンツ などの歌唱活動 と共 に英語での指示内容 を身体の動作で子 どもに応答 させ る トータル ・フ ィジカル ・レスポンスの活用 など、音楽 と身体表現がかかわった学習 も盛んになって きて いる。 昨今の音楽科、図画工作 (美術)科が抱 える時数削減 とい う厳 しい現状 にあ りなが ら、 その一方で充実が見 られる、 これ らの芸術教科以外の教科 ・領域 と連携 した総合表現活動、 外国語活動や体育科 に組み込 まれたダンスの活動 にも身体表現の機会が拡大 している傾向 はむ しろ好機 と捉 えるべ きで、広義の表現活動5)の機会が増 えてい く可能性 を秘 めている。 こうした教育現場の新 しい実践 に備 えた教員養成のためには、今後は音楽や美術、舞踊 などに分化 した授業科 目のみならず、総合的な視座か らの演習が一層求め られていること になるであろう。

(4)

暁星論叢第60号(2010) (3)身体表現 を生 か した実践的な表現活動の必要性、 こうした新 しい動向を受けて、次 に筆者の携わる教員養成系大学の初等教員養成のプロ グラムにおける具体的な実践事例 を取 り上げなが ら、その成果や課題 について論 じてい く。 上越教育大学の 「初等音楽科指導法

の授業は、学部

3

年生対象の必修科 目であ り、前期 に仝15回が組 まれている。受講生170名の うち9割以上が音楽や幼児教育の専門以外の学 生であるため、受講生の音楽技能の開 きが大 きい。 この現状 を踏 まえなが ら、彼 らが卒業 後に教壇 に立 った際、即戦力 となる指導法 をめ ぐって様 々に探究 を重ねて きた。 また、新 潟県では初等教育 に音楽専科制 を取 っていない現状か ら、音楽専門以外 の学生 に も、卒業 後 に活用がで きるための指導力 を蓄 えて もらうことを意識 した授業 を展開 している。 筆者 はこれ まで、現職教員 を対象 とした、小学校の クラス担任が取 り組む音楽科の指導 法 について、教師教育の レヴェルの講習会の指導講師 として も長年携 わって きた。 こうし た経緯か らも、小学校の音楽授業 においては、西洋 クラシック音楽の ピアノ奏法 を始め と す る、高度 な技能が伴 う指導法 をあまね く浸透 させ ることの困難 さにも直面 して きた。実 際、音楽 を専門 としないクラス担任が授業 を行 う際、必ず しも高度 などアノ伴奏 を伴 う指 導でな くとも、子 どもたち とコンタク トを密 に して、身体表現活動 を取 り入れるなど音楽 に感覚 を集中させ た授業 を展開することな どで、多彩 な授業が可能 になる事例 も数多 く参 観 して きた。 教員養成課程の授業 において も\学生が子 どもたちの教室での活動の様子 を映像 などで 視聴 した後、グループによる協働型の学習で、自分たちも身体表現 を試みるといった活動 は、音楽 を専門 としない学生 にとって も取 り組みやす く、かつ有効 な基礎 を育むことが可 能 となる もの と受け止める。 次 にこうした多様 な表現活動の実践事例 について述べ てい く。

(

4

)授業の導入における身体表現活動 「音楽遊びの実践事例 か ら」 先述の ように 「初等音楽科指導法

の授業 は、学部

3

年生約170名 を対象 に必修科 目と して開講 されているが、この受講生 を85名ずつ

2

クラスに分 け、各々全15回を前期 に実施 している。 また、免許プログラムの大学院生 は、

3

年間で初等教員免許 に必要 とされる単 位 を取得す るため、在籍中のいずれかの学年の前期 に 「初等音楽科指導法」を受講 してい る。 現行では、筆者 を含む音楽科教育の2名の教員で学部生 と院生 を担当 している。 筆者 は学部生及 び院生対象の各々の 「初等音楽科指導法」の授業では、大教室の机 を全 て取 り払 った空間で約85名 を10名前後のグループに分け、授業の初回か らの3回にこうし た身体表現活動 を全面的に取 り入れている。具体的には、多様 な音楽遊 びを取 り入れた活 動 を応用 しなが ら、音楽の基本的な要素であるリズム、音の強弱、テンポなどを体得 させ る諸活動 を積極的 に組み込 んでいる。 、 グループ毎 に協働で取 り組む活動事例のひとつである、身体表現活動 の具体的な活動 を

-2

6

(5)

-記 した講義用資料 の一部 を次 の 「参考資料

1」

に掲 げ る。 この 「参考資料

1」

に抜粋 した 活動 は、先述 の 「初等音 楽科指導 法」 以外 において も筆 者 が実施 してお り、従 って学部

3

年生 は学部 1年生 の前期 において も、 こ う した身体表現 活動 を体験 してい る。 この講義 は、学部 1年生 及 び大学 院 (免許 プ ログラム生 ) を対 象 と した、 ブ リッジ科 目 「音 楽

」(

前期全

1

5

回) と称 され、毎年

4

月 に発行 され る、 「上越教 育大学学生 の ための音 楽」 とい う、手作 りの教 科書 を もとに展 開 され る。平 成23年度 の教 科書 の作成 に当 た った の は、上越教 育大学 の音 楽担 当の7名 の教 員 であ る。本稿 で は この教 科書 か ら、時得 が担 当 した 「音 楽 あそ び

」(

p

p

.

4

7

-4

8

.

)

の箇 所 よ り以下 に抜 粋 す る。 参考 資料 1 イギ リスの作 曲家 トレヴァ一 ・ウ ィシ ャー トに よる さま ざまな音 あそぴ ∼身体表現活動 を取 り入 れた拍感 の体得 をめ ざす試 み∼ ボーイスカウ トやガールスカウ トの合宿など、幅広いシー ンで活用 されてお り、ゲーム感覚で互 いの距離を近づけ、自己紹介をし合 うことができる活動です。 出典 : 「音あそびするものよっていで 1巻、2巻」 トレヴァ一 ・ウイシヤー ト著、 音楽之友社 1998. (坪能由紀子 ・若尾裕 共訳) 本学図書館 にもあ ります。 a)ハロー ・ゲーム ・リーダーに合わせて一斉に、手拍子を3柏、膝上で も3柏の リズム動作 を繰 り返 します。膝上 の 3拍の間に、さまざまなことばを組み込んで、ノンス トップで繋げて行 きます。ゲームのヴ ァリエーション ・自分の名前 (たろう、はなこ)好物の食べ もの、行 ってみたい所や国、好 き なアニメ番組 b)手拍子 まわし ・手拍子を輪の中の順に出来る限 り速 く、 ドミノ倒 しのようにまわすゲームです。 ゲームのヴァリエーション ・右方向に手拍子 をまわす一方で、左 まわ りには足で トンと床 を突 く動作を組み込むなど、異なる動作 を時間差で逆方向に伝 えてい く。 ・目を閉 じて、手拍子 まわ しを試み、その時間差を比べる。 どんな発見があるだろう? C)音のパーキング ・時間空間の中に、グループメンバーの空気 を読みなが ら、短 く、鋭い手拍子 を即座 に埋め込 ん で行 きます。 しか し、同時に他の誰か も全 く同 じタイミングで手をたたいたならば、ダブルパ ーキングで 「アウ ト!」。両者 (あるいは三者) ともゲームから脱落です。 d)指揮者ゲーム ・各自がいろいろな音色 (高い声、低い声、太い声、細い声 etc.)を担当 し、、自分 らしい特色ある 声で、指揮者のア ドリブによる指揮 に従って即興で創作 していきます。まるでオーケス トラの さまざまな楽器を各 自が担当するように、参加者全員の声による即興ヴォイス ・アンサ ンブル=, 体の各部位 を楽器に見立てたボディ ・インス トウルメン トによる即興演奏 などを自在に展開す ることが可能です。 これ までの受講生 を観察 して きた経緯 か ら、4月初旬 には ぎこちな く接 してい た学生 同 士 も、授 業 を重 ね るに連 れ て徐 々に互 いの距離 を縮 め なが ら、創作 す るプ ロセ ス を通 じて 他者 あ るい は 自らと向 き合 い、互 い に学 び合 い なが ら多彩 な コ ミュニ ケ ー シ ョン活動 を展

(6)

暁星論叢第60号(2010) 開 している様子 が うかが える。 全

1

5

回の授業 を通 じて、活動 の導 入時 には、音楽づ くりの 活動 の一環 としての 「音楽遊 び」 と遷 した身体表現活動 を取 り入れて実施 してい る。 これ らの諸活動 はいずれ も協働 で グループ毎 に取 り組 むス タイルの身体表現活動 であ り、 続いて展 開 される音楽学習 に向けた集中力 を高 める 目的 をもった、「アイスプ レイキ ング

の 目的 も兼ねてい る。 これ らの活動 をグループ毎 に協働で取 り組 むことを継続 しなが ら、 学生 たちは、秋の小 学校教育実習等 に向けて様 々な表現の力 を獲得 してい くのであ る。

(5

)身体表現活動の実践的授業 を体験 した学生の意識変化 次 に、学部3年 生 「初等音 楽科指導法」学生 (各 クラス85名 計170名が受講) に よる 受講6)後の 『振 り返 りカー ド』か ら得 られた感想 を読 み取 るこ とで、身体表現活動 の実践 か ら得 た学生の学 びについての考察 を試みてい く。学生か ら得 られた これ らの回答 は実 に 多岐 に及ぶ内容 であったため、次 の

2

つの視点か ら記述 を分類 して示す ものであ る。

(a

)主 として身体表現活動 ・コ ミュニケーシ ョンに関す ること ・身体表現 とイメージを結 び付 けることの難 しさを感 じた ものの、実際 にや ってみ る と簡 単であることが わか った。 ・実際 に表現 してみることで、 どの ような音 を入 れるかによってイメージが全 く変 わる。 子供 に身近 な もの と音楽 を結 び付 けて考 えるこ との面 白さを発見 した。 ・自分の想像 や気持 ちを体 で表現す ることは、初 めは大変か もしれないが、 とて も大切 な 活動 に繋が る。 ・始めは 「恥ずか しい」 と思 った動作 も、気がつ けば笑顔でや っている ことに気づ いた ・体全部 を使 って活動す ることが コミュニケー シ ョンカ を培 うことに繋が ることを身 をも って体験す るこ とがで きた。 この体験 を将来、教育 に生か してい きたい。 ・答 えが一つではない こと、 自分 の感 じた ままに表現 してみ る ことの楽 しさを感 じた。 ・受講者 自身が考 え、 自分の欲 しい音や表 したい ことを見つ けるプロセスは楽 しい。 ・上手 、下手 、良い、悪い、で きた、で きない、 に とらわれな くて よい。 ・表現 の工夫 で、考 える場面が多 く、既成 曲をただたんに演奏す る活動 よ り、楽 しさが得 られた。 人に よって感 じ方や表現の仕方 は全 く違 う。 こう した感 じ方の違いは とて も大切 に して い きたい。 ・子供たちに も、 この表現 の授業で学 んだ ような、 自由でのびのび とした音楽 を経験 して もらいたい。 ・日頃、会話 を しなか った人 とこの活動 を通 して話す きっか けになった。 きっ と子供 に と って も同 じだ と思 う. ' ・大学生が これだけ無邪気 に活動で きるのだか ら、子供 は もっ と楽 しく感 じるのではない - 28

(7)

-か。 ・客観的に他者の様子 を見 ることで、 この人はこう表現するんだ、 こんな表現方法 もある ことを発見 した。 ・自分 自身 も動 きや リズムを考 える活動 を行 うことで、 どの ように表現す るか、伝 えるか を考 える重要性 を学んだ。 (b)主 としてカリキュラムの構成や音楽 と身体表現、他者 とのかかわ りなどについて ・音楽の活動 に 「身体表現

「言語の活動」などを組み合わせている授業は初めて。子供の 活動の流れ としてはこの方がいいのではないか。教科関連の学習の意義 を感 じた。 ・身体表現活動 に 「考 える活動

を組み合わせていることが驚 き。 リズムや動 きについて、 「こだわ りをも

つ」

ことの大切 さを学 んだ。 ・子供には、まずみんなで演奏す るとい うことより、表現 してみる楽 しさを味わえるよう にで きたらいい と思 った。 ・ 「音楽 を楽 しむ」 ことは、個人の体験 だけでな くグルt-プ皆の体験で もあるべ き。 ・音楽教育では誰で もが創造的に音楽 に取 り組める雰囲気づ くりが大切 だ。 ・自分で身体表現 を作 ってみて、楽 しい活動 に 「どんな音楽的内容 を盛 り込 むか」が大切 だ と感 じた。 ・指導者は教示す るのではな く、子供の中か ら出て きた ものを受けて返す ことが大切だ と 気付いた。 ・創作作品の発表 などでは、集中力が大切だ と感 じた。いやがお うにも協力 し合 う必要が あ り、初めは互いに照れなが らの参加であったが、気がついたらグループに強い団結力 が生 まれていた。 こうした学生の感想のか らは、仲 間 と共に身体表現の発想 を得 ることの難 しさと同時に、 実際に動いてみると思いの他、簡単 にで きた という意見が交錯 している。 また、学習の活 動計画 を組み立てることの難 しさや、身体表現 により、子供の発想力 ・考 える力 を培 う意 義への気付 きなどが培 われていることがわかる。その一方で、互いの表現 を認め合 って、 自らも自由に表現 を探求す る喜びを感 じている様子や、 この体験 を元 に教育現場で子供た ちにも同様 に楽 しさを体験 させてや りたい、 とい う熱意や思いなども育 まれている。

(

6

)求め られる表現活動にかかわる実践的な演習科 目の充実 「初等音楽科指導法」におけるこうした身体表現活動の実践 によって、学生はバーバル 及びノンバーバルコミュニケーシ ョンの両方 を活発 に駆使 しなが ら、思考 ・判断す る様子 が見 られ、音楽的な表現 を深めてい く様子が観察 された。 また、協働型の表現活動か ら、 協調性 ・社会性が培 われてお り、例 えば他者 との コラボレーシ ョンによって、相手の考 え

(8)

暁星論叢 第60号(2010) を取 り入れ るな ど互 いの よい部分 を認 め合お うとす る相互理解 に向 けた活動 の様 子 が、授 業 を通 じた学生へ のパ フ ォーマ ンス評価か らも認 め られた。 しか しなが ら、 これ らの単発 的 な活動 では教 師 と して教 育現場 において、臨機応変 に活用す る力 の獲得 に到達 す るには、 なお不十分 であ り、長期 的 に継続 して これ らの実践 に取 り組 む必要性 が ある とい う課題 も 生 じた。 それ に もかか わ らず 、現行 の カ リキュ ラムで は、学部4年次 には学年 を通 じた必 修の表現活動 にかか わ る科 目は全 く開講 されてい ない。す なわ ち、学年全員 を対 象 と した

3

年次前期 の本授 業以 降、卒業 までの必修及 び選択科 目において、表現活動 の機 会 は一切 与 え られてい ないのであ る。 この課題解決 に向 けて模索す る中で、新潟 中央短期 大学 (以下、 「中央短大」 と記 す) における創作 ミュージ カルの実践が クローズ ア ップ され るので ある。 この取 り組 み は、全 学体制 で地域 とかかわ りなが ら長年 に渡 って取 り組 んで きた点 で も優 れてお り、かつ、全 国的 に も稀有 な実践 であ る と捉 える。 この創作 ミュー ジカルの実践 の有効性 につ いて次項 において取 り上 げてい きたい。 こう した協働 型の創作 ミュー ジカルに取 り組 む伝 統 は、上越教育大学音楽 コー スにおい て も

2

0

年以上 に亘 って継続 して取 り組 まれてい る。 毎年 、年度末 の

2

月に卒業 を目前 に控 えた音楽 コース学部

4

年生 の

1

0

名前 後の出演者 に よって大学 内の講堂 で上演 され る、小規 模 な取 り組みであ る。一方 、中央短大 は、全学 に及ぶ大掛 か りな取 り組 みで、かつ全学生 が地域 の子 どもた ち と共 に取 り組 む とい う本格 的 な試み とい う点で、規模 におい て も大 き く異 なる。 こう した意味 で も、同 じ教 員養成機 関 とい う視座 か ら見 て も、中央短 大 の特色 ある実践 の成果 をひ もと くことは、多 くの示唆 が得 られ る もの と考 える。

2

.新潟中央短期大学 ミュージカル

-27

年間の取

り組みの成果-(1

)全 員参加 ・一人一役 で役割意識 を高 め る 中央短大の ミュー ジカルは表現活動指導法 の授 業 の一環 と して、学生が主体 とな り、学 内が総力 をあげて取 り組 んで きた

。1

9

8

6(

昭和

6

1

)

年か ら続 く伝統行事 である。 この ミュー ジカルの実践 は、今年 で第

26

回 目の上演 を迎 えた

。2

0

0

3(

平成

1

5

)

年 には、文部科学省 よ り 「特色 あ る大学教 育支援 プログラム」に も採択 され てお り、地域貢献 とい う観 点か ら も、 県 内外 か らの高 い評価 を得 て既 に久 しい。 実践 に当た っては、

2

年生 が

1

年生 に在学 中か ら取 り組 み を開始 し、翌年 の

2

年生 とな った5月 に市 内の加茂文化会館 を会場 に上演 される伝統 となってい る04月 に入学 したば か りの

1

年生 も活動 に取 り組 んで、 「リズム体操

や 「ぬい ぐるみ シ ョー

な どに出演す る。 ミュー ジカルの上 演 は、学生約

1

6

0

名、地域 の子 ど もた ち

4

0-6

0

名 の総 勢 約

2

0

0-2

2

0

名 もの規模 で行 われ、来場 者 は、午前 と午後 の

2

回の公演 で

1

8

0

0

名 を超 える。 この本番 をめ ざ して学生 たちは、教員の助力 を得 なが ら脚本 、音楽、美術 な どを手分 け -

(9)

30-して担当 してい く。 支援 に携 わる教員は常勤の教員 に加 えて、特別指導講師 による発声法 の個人 レッスンや全体 の演 出指導 な どの協力 を得 ているため、合わせ て 7名の指導者がか かわる。 筆者の斎藤 は、毎 回の演 目に使用 されるオ リジナル曲を作 曲す る他、学生が練習 時 に活用で きるように、歌唱練習、 ダンス練習のための

BGM

のデモテープを別途制作す るな ど、バ ックア ップに専念 して上演 を支 えている。 また、斎藤 はこうした ミュージカル 活動が、学生 に音楽的 な表現力 といった芸術面の学びをもた らす以上 に、実 に様 々な意識 の変容 をもた らしている と実感 して きた。例 えば、学生一人ひとりが持つ潜在能力の掘 り 起 こし、制作過程 における計画性 ・コミュニケーシ ョン能力、 トライ精神 な どの獲得 な ど の面か らも、大 きな効果 をあげていると捉 えている。 また、この取 り組みでは、 「自ら考 え、答 えを出す」をモ ッ トー としていることに加 え、制作過程 における特徴 として、 「学 生が全員参加」であることを掲 げている。 す なわち全員が参加意識、役割意識 を持つため に、役者 をや りなが ら舞台裏の仕事 もこなす、基本的 には 「学生の手作 り」の手法 を取 っ ているのである。 そのために、中央短大 ミュージカルは他の団体の ミュージカルよ りもは るかに制作過程 における準備段階や話 し合い に多 くの時間をかけている。 実例 を挙 げたい。 ミュージカルの役柄決定 には台本 をもとにオーデ ィシ ョンが行 われる が、審査員である教員、学生 は結果発表 に多 くの時間をかける。それはオーデ ィシ ョンを 受 けた学生それぞれに様 々な長所があるのに役柄が限 られているためでだが、その場合で も審査す る側 はそれ らの学生たちのために台本 に変更 を加 えてまで も新 たな役柄 を作 るこ とが多い。た とえ望 んだ役柄 に選 ばれなか った学生で も、参加意識 を損 なうことのない よ うにす るための一つの工夫である。 またこの ように して役柄が決定 した後は、 まずその役柄 ごとに練習 をす ることになるが、 その段階において も話 し合いに多 くの時間をかけている.た とえば台本上のある場面 にお いて群舞がある とす る と、その場面の制作 に関わる学生 は、出演者、総監督 、振付 、音響 、 大道具 など,の学生 である。総監督や音響 に携 わる学生 は台本全体 あるいは ミュー ジカル全 体 を把握 している必要があ り、そ うした視点か ら台本上の場面 にアプローチす ることがで きる。 しか しその他 の学生、特 にその場面の出演者は、その場面 に注力す ることによって 局所的な視点 にな りがちであ り、出演場面の限 られた学生 ほ どその場面 にかける意気込み が大 きくなることによって、その傾 向は強い。 この ようなことは、教貞主導のあるいは教 員の強い リーダーシップの もとでは起 こ りえないが、学生主体の、 また全員参加型の こう した活動では避 け られない ことであ り、必要 なことだ と筆者の斎藤 は捉 えている。 この よ うな場合で も学生 たちは総監督 を中心 に話 し合いを重 ね、 自分 たちで 「答 えを出 し」てい き、その中で学生たちは、全体の中での自己表現、チーム としての表現、あるいは他者の 表現 を自発的に学 んでい くと考 えられるのである。 筆者の斎藤が担当 して きたこれ までの経験 か ら、本番 につ なが る ミュージカルを作 る過

(10)

暁星論叢第60号 (2010) 程 で学生 たちは、 さまざまな挫折や葛藤 を繰 り返 しなが ら新 しい意識 に目覚めた り、時に は意見 をぶつけ合 った りしなが らミュージカル制作 に取 り組 んで きている。 そ して、それ らを経験す ることによって成長 してい き、その成長の仕上げが見事 に本番の上演へ と導か れることを体験 して きた。つ ま り、結果 としての ミュージカル上演 は もちろん重要 なこと だが、それに も増 してそ こへ至 るまでの道程 にこそ意味があ り、中央短大 ミュージカルに 関わる教員 はその ような制作過程 における計画性 ・コミュニケーシ ョン能力の獲得や、参 加意識、役割意識 を学生が持つ ことによって他者 と協働す る力 を育 むことにこそ 目標 を置 くべ きである と斎藤 は考 えるのである。 毎年、上演後の学生たちは、 ミュージカルを作 るプロセスで得 た コミュニケー シ ョン能 力、 自主性、問題 を解決す る力 を身に着 け、総合的な表現能力 に もが高 ま りが認 め られる。 そ して、全 ての学生が何 らかのキ ャス トとして舞台 に立 ち、制作 ス タッフとして も参加 す るため、全学生が何 らかのセ リフや ダンスな どを担当す る と同時 に、大道具、小道具や 衣装 な どの制作 といった さまざまな役割分担が生 じることとな り、一人一人の学生 に参加 意識の高揚が見 られるな ど、他者 と協働す る力が よ り育 まれて きている と捉 えている。 各 自が役割意識 を持つ ことで、前向 きに活動 に取 り組めるようになるとい う成果 は、上 越教育大学附属 中学校 において、今年で15回目の伝統 を迎 える、生徒 による創作 ミュージ カルの上演おいて も同様 の成果が見 られた7).一人一役 は、同中学校 において7年前 か ら 採用 された新 しいアプローチで もあ り、中央短大の実践共々、大 きな改革 を もた らした。

(2

) ミュー ジカル上演後の学生への意識調査 か ら さまざまな改革 を例年盛 り込みなが ら、中央短期大学の ミュージカルは既 に昨年 までの 通算25回の上演 を達成 して きている。次 に掲 げるは、2010年度、第25回の上演 「ぼ くはス サ ノオ」に取 り組 んだ、2年生96名 (女子82名、男子14名) を対象 とした、 ミュージカル 上演後の学生への意識調査 か ら得 られた ものである。 本論では学生-の全7項 目の質問の 中か ら次の4項 目に焦点 を絞 って、記述 された回答 をまとめた ものである。

(a

) ミュージカルに取 り組んで良か った こと ・自分が希望 した役 ではなか ったが、 ミュージカルを楽 しむことがで きて よか った。 ・当初 は ミュージカルに参加 した くない と考 えていたが、オーデ ィシ ョンを受 け、仲間 と 競 い合い、骨 で力 を合わせ、成長で きた と感 じている。 ミュージカルを完成 させ たこと で 自信がつ き、他 の ことも頑張 りたい とい う気持 ちになった。 ・当初、他の演 目に取 り組みたかった とい う思い もあったが、結局、何 の演 目をやるかで はな く、誰 とどう創 り上 げるかが大切 なのだ と気付 いた。 (b)ミュージカルに取 り組 んだ後の反省点 ・ダンスが練習 までに作 れず、みんなに迷惑 をかけて しまった。 - 3

(11)

2-・練習の組み立て方 を工夫する必要があった。 ・練習の時間配分 も工夫す る必要がある。 ・役 によって全 く練習の必要がない役 もあった。 ・係活動や役割の活動 などもっと計画的にやればよかった。 ・自分の出番ではない時、ほかの人の演技 をちゃんと見てお くべ きだった。 ・作品の中に学生の意見 をもう少 し取 り入れるべ きだった。 ・定刻 に集 まらない人が多 く、開始時間が遅れた り、予定 を変更 した りした。 もし、練習内容が事前 に示 されていれば、遅れずに集合する人 も多かった と思 う。 (C)一年生 に受け継いで もらいたい事柄 ・パー ト練習 をおろそかにせず、皆で協力 して楽 しく練習取 り組んで欲 しい。 団結力は 大切。 ・ミュージカルの最後 に歌 う 「再び会える日」を歌 って欲 しい。毎年歌い継いでいる曲で あ り、次の年 も聴 きに来 ようと思 う観客 もいるはず。ぜ ひ大 きな声で胸 を張 って歌 って 欲 しい。 ・一人で完成 させ るものではないか ら、皆で意見 を出 し合って取 り組んで欲 しい。 ・すでにこの短大の 「伝統の ミュージカル」。一年生全員団結 して、いい思い出になるよう な ミュージカルに して もらいたい。 ・何か不満があった ら総監督や先生 に相談 して、仲間 との仲 を大切 に して欲 しい。 ・ヒップホップ系の ダンスを取 り入れて、格好いい踊 りを披露 して欲 しい. ・皆のやる気 を出すためにも、本番 までのカウン トダウンを作 ったほうがいい と思 う。 ・メイク係では早めに行動 し、先生方 と何回 も意見 を出 し合って欲 しい。 ・仲間 と協力 して恥ずか しさを無 くして表現すること。 ・最後の手拍子、本番前の円陣 を受 け継いでほ しい。 ・早 く大道具の準備 を終わ らせ、役柄の練習に取 り組む。 ・もめごとも必ずあると思 うが、 しっか りと話 し合い、周 りの仲間 と協力 して、創 り上げ て欲 しい。 ・リズム体操、 リズム拍手、そ して ミュージカルに対する熱意。 ・皆で ダンスをして活動 に入ること。 i ・計画性 を持 ・係活動 は本番が近付 くにつれ忙 しくなるので、早めに進め全体 に連絡する ことも大切。 ′ (d)ミュージカルを制作 し、何 を学び、何が見 えて きたか 自分の役 (キャス ト) を作 り上げる過程で ・役 にな りきるのが とて も難 しいことを学んだ。 ・人前で歌 う、踊 る、セ リフを言 うことを通 して、客観的に自分の表現 を見直す ことの大

(12)

暁星論叢第60号(2010) 切 さを学んだ。 ・ミュージカルは個人で作 るものではな く、皆で力 を合わせて作 るものだか らこそ、人の 意見 を聞 くことが大切だと思 った。 ・普段の練習 とやる気が大切だと思 った。制作過程では普段のその人の人柄が とて もよく 出て くるものだと感 じた。私はバ レエを踊 る役であったが、踊ることだけが役割ではな く、ステージ上では常 に役 にな りきって しっか り参加することが大切 だと学んだ。 制作方 (スタッフ)の経験か ら ・子 ども係 を担当 した。 自分たちで想定 していたことと、子 どもたちと実際に一緒 に活動 してみて違 うことがた くさんあった。子 どもにどう伝 えたら分かって もらえるのか、 ど う伝 えたら集中するのかなど、子 ども係 を通 して少 し分かった。 子 どもたちと曲を作 り上げた達成感はとて もいい ものだった。 ・子 どもたちの振 り付 けを担当 した。 どの くらい踊れるレベルなのかわか らなかったため、 事前 に学校 との先生 と打 ち合わせ を念入 りに してお くべ きだったと思 う。 ・メイク係 を担当 した。メイクは役の雰囲気、その人の顔立ちによって も作 り方が違い、 自分たちの考え方や、一方的な理由で作 ってはいけない と感 じた。陰で支えるスタッフ、 一年生、先生方、地域の方々などの協力があ り、文化会館 という演 じる場があってこそ 完 成するのだと改めて感 じた。

(3

)意識調査から読み取れる学生に培 われた多様 な力 通常の授業時間内における表現活動であれば、遅刻や欠席は自己責任 として、自らが反 省することにとどまるが、協働型の制作では他者にかける迷惑 について も実勢に受け止め ることがで きるようになるといった、学生の意識の変容が見 られることは興味深い。 また、 「一年生に受け継いで もらいたい事柄

及び、 「ミュージカルを制作 し、何 を学 び、何が見えてきたか

という項 目への学生の記述か らは、仲間が団結 して表現活動 にま い進することの重要性への気付 きが多 く読み取れる。 さらには、運営面 において も、スム ースな運びがで きるように、失敗を次 に生か して欲 しい とい う心遣い も少な くない。加 え て、中央短大の伝統 とな り、先輩か ら引 き継がれて きたセ レモニーを後輩 にも受け継いで 欲 しい という強い思いや願いが伝わって くる。 今 日の学校教育 において強 く求め られている表現 ・コミュニケーションカ育成 をめざす 時、協働 して学びを生み出す8)、いわば協働型の表現活動 を体験 した学生たちの意識変化 の記述等か らも、実に幅広い気付 きをもたらしていることが読み取れる。 また、学生が協 働の表現活動の過程で関係 を育みなが ら、表現することの楽 しさを共有 し、互いの表現 を 高めてい く様子 もうかがえる。 こうした姿か らも協働型の表現活動 によって、音楽表現の微妙なニュアンスにも配慮 し -3

(13)

4-なが ら互いに主張 し合った り、譲 り合 った りする創作活動 に取 り組む過程 を経て、音楽的 な感性 と同時に協調性、社会性 をも培 っているもの と捉 えられる。今次学習指導要領の改 訂 を機 に学校教育現場 において、 「他者 とかかわって共に創 る活動」が提唱 される中で、 学生たちによるグループ活動 は、彼 らが協働する機会 をもた らす ことにおいて極めて有効 な取 り組みであると考 えられることか らも、改めてこうした取 り組みの意義 と共 に教員養 成 におけるカリキュラムの充実が望 まれる。 これ らの学生の意識の高 ま りは、上演後の感想 を記述す るために配布 されたB4サ イズ の紙面一杯の記述で埋 めつ くされているケースが大半 を占めている。 この多様 な意識が 日 常の学 びの視点にも拡 げ られ、その他の関連する授業科 目において も、 ミュージカルの学 びの成果が もたらす学生の学習意欲が、ダイレク トに及んでいる次の例 にも注 目したい。 筆者である斎藤の担当す るゼ ミの2009(平成21)年度の卒表論文 には、 F魅せ る歌∼ ミュ ージカルソング

』、あるいは、 『保育者 に求め られる 「歌唱指導

と 「ピアノ伴奏

』と遺 した研究課題 に取 り組 んだ学生の論文があ り、 ミュージカル実践の学びが研究に活用 され、 記述 されているのである。 ミュージカル実践 を経た学生が、その体験 を踏 まえて課題意識 を高め、彼 らの卒業論文の研究 に もたらす成果 についての考察 について も筆者 らは今後の 研究課題 として取 り組んでい きたい。

総括 と今後の展望

冒頭で も述べたように筆者 らは、音楽 を主 とした表現活動 に携 わ りなが ら、他者 とかか わることを苦手 とする学生が増 えて きていることに大 きな課題 を感 じて きた。その一方で、 音楽 を専門 としない多数の教員が保育あるいは、初等教育 に携 わっている現状等 を鑑みる ならば、教員の音楽技能の差異 にかかわらず創造的な学習 に取 り組むことがで きる、大学 ・短期大学 における表現活動のカリキュラム改善 も、並行 してはか られていかねばならな いだろう。 筆者の時得は、芸術教育 カリキュラムの 日米比較研究 を継続 して きた経緯か ら、米国の 教貞養成機関において、我が国の小学校 における 「音楽づ くり

や、中学校 における 「創 作」の活動の領域 に相当す る、子供の創造性 を育むための多彩 な教師教育のための実践が 積極的に育 まれていることに着 目 して きた9)10)。翻 って今 日の我が国の保育士 ・初等 中等 教育の教員養成機関の多 くが、 ともすれば 「歌唱」のための指導や、 ピアノ練習 に代表 さ れる 「器楽

指導のための カリキュラムに偏 る傾向があるのではないだろうか。今後、我 が国の保育機関や教員養成機関における、各活動の偏 りをバ ランスの取 れた ものに改善 し てい くためにも、中央短大が ミュージカル実践 を核 として継続 して取 り組んで きた、創造 的かつ総合的な、協働型の表現活動のカリキ与ラム開発が、全 国 レヴェルで模索 され、実 践 されてい くことが望 まれ よう。

(14)

暁星論叢 第60号(2010) 本実践 に携わって きた筆者 らは、学生の 自主的な創作表現活動で培 われる力 を視座 とし て、次の点 について も注 目 した。 ミュージカルの制作過程 における協働 による様 々な学び が、音楽や舞踊、演劇、美術の各分野 にも応用で きる表現力 として活用 してい く発想が学 生 らに培 われてい くという成果である。 すなわち、音楽のみならず、舞踊や演劇 といった 各芸術 ジャンルの表現力を横断的に高めてい く学習の成果が、 「新 しい表現方法-の気付 き

「多彩 な表現方法の創出

ひいては 「表現その ものの解釈の深 ま り

等 に導かれている 成果が、学生へのパ フォーマ ンス評価か ら認め られたのである。 このことか ら、今 日的な 学力 とされる 「創造力」や 「コミュニケーシ ョンカ」 などの幅広い力が、 ミュージカル実 践 などの総合表現活動 によって、 よ り効果的に培われるといった仮説 に も導かれる。 これ らを立証 してい くためにも、芸術のジャンルを超えた総合表現活動の学 びの成果 について、 筆者 らは今後 も継続的な研究 に挑んで きたい と考 えている。 中央短大 における長年の実践がそ うであったように、あまたの活動の中で表現の核 とな り、基盤 となっているのが音楽表現であ り、 この ことか ら音楽表現が、総合性、拡張性 を もつ とい う特徴が改めて浮 き彫 りにされた。 この音楽表現 による活動が もつ総合性、拡張 性 を生か した、幅広い学び とコラボ レー トさせた ミュージカル実践 などの有効性が、 この 点で も示唆 されよう。現状 における試みの第一歩 としては、大学や短期大学おける学習活 動その ものに、音楽 と様 々な活動 とのかかわ りを題材 とした表現活動 を組み込 むことが有 効ではないか とした発想 に至 ったのである。 今 日の学校音楽 において、音楽科が他教科 との関連の希薄 さか ら孤立 し、 さらには時数 削減 といった現状 を招 いたことな どを鑑みるならば、 こうした視点か らも大学や短期大学 におけるカリキュラム編成 において、今後 は積極的に音楽以外の表現領域 との横 断的なカ リキュラムの展開が望 まれるのである。一方で、舞踊や演劇 とのかかわった実践の レヴェ ルの向上 をめざす際の課題 も残 る。 昨今の学生はマスメディアの影響で、男女 ともに舞踊 の活動 に積極的に取 り組む者が多 く、 ヒップホ ップな どのダンススクールに通 った経験 を 持つ学生 も少な くない。 これに比 して、演劇分野の経験 を豊富 にもつ学生は極端 に少 な く、 演技指導等の支援 は未だに課題であることは否めない。今後はゲス トテ ィーチ ヤーの協力 を仰 ぎなが ら、この演劇の基礎 を育むことにも努めることで、バ ランスの取れた、総合的 な表現技能の全体の高 まりが実現で きる もの と思われる。 本来、創作表現活動その ものが協 同的 ・探究的な活動である。 これ ら協働する実践場面 において、彼 らは他者 とのかかわ りを通 じて、 自尊感情、他者への思いや りの気持 ちなど、 様 々な気付 きを得 なが ら、互いに表現 を共有す ることを獲得 してい くのである。 その過程 で得た様 々な感動体験が、学生たちの表現 ・コミュニケーシ ョンカは もとより、彼 らの豊 かな感性その もの をは ぐくむ契機 となることを願いなが ら、今後 も保育士 ・教員養成の大 学や短期大学 に学ぶ学生たちが、多彩 な表現力 を獲得 してい くことを期待 してや まない。

-3

(15)

6-参考資料

2

ミュー ジ カルの活動 にか か わ る と考 え られ る主 な カ リキ ュ ラムの例11)12) 専門教育科 目/必修科 目 人間関係指導法 環境指導法 言葉指導法 表現指導法 音楽Ⅰ 器楽Ⅰ(ピアノ) 図画工作Ⅰ 幼児体育Ⅰ 総合研究 選択科 目/その 1 発達心理学Ⅱ 保育内容総論Ⅱ 乳児保育Ⅱ 表現活動指導法* 器 楽 Ⅱ 図画工作Ⅱ 幼児体育Ⅱ 人 とのかかわ りを育てる保育者の援助 自然の中で生 きる幸せ と喜びを幼心 に育む 子 どものことばの発達 と生活環境、援助 身体表現活動の技法 と創作、実演 乳幼児の心身の発達 に向けた音楽教育のあ り方 子 どもの反応 を見 なが ら演奏する 美術、造形の基礎、表現の方法 子 ども主体の運動あそびを指導する 卒業研究ゼ ミナール 子 どもの育 ちと保育実践の関係 を見る 保育 を計画 し模擬的場面で実践する 保育士 に求め られる乳児 と親 との関わ り方 保育表現技法の習熟 とミュージカル、出前保育の実践 ピアノ、ギ ターの即興的、応用的演奏法 制作 を通 して美術表現 を学ぶ 子 どもの心 と体 を揺 り動かす遊びの指導 レクリエーシ ョン実習 Ⅰレクリエーシ ョン活動の基礎的技術 保育実習 Ⅱ 選択科 目/その2 幼児教育教材研究 コンピュー タ基礎 保育所での観察 ・見学 ・参加 ・責任実習 身の周 りにある素材 を用いて遊 びを豊かにす る パ ソコンによる情報機器操作 と基礎処理能力 を高める *選択科 目/その1「表現活動指導法」 について ミュージカル製作のプロセス としての科 目として位置付 け られてお り、平成13年度 よ り表現系科 目の総合的な営み として開設 している。 この授業で学生 たちは、学園祭 において地域 の子 どもたち との交流の場 として催 される 「子 どもワール ド」 における演 目 (演劇 ・合唱 ・合奏 ・リズム体操 な ど)の製作 を経験 し、それをもとに総合芸術 としての ミュージカルの共同制作 を行 う。 この授業の 担当には、体育 ・図画工作 ・音楽の教員がかかわ り、演技指導 には特別講師 として外部 よ り演劇の 専門家 を招致 している。

(16)

暁星論叢第60号(2010) 参考資料

3

過 去 に上 演 され た ミュー ジ カル演 目の 一覧13) 1986年 第 1回 1987年 第2回 1988年 第3回 1989年 第4回 1990年 第5回 1991年 第6回 1992年 第7回 1993年 第8回 1994年 第9回 1995年 第10回 1996年 第11回 1997年 第12回 1998年 第13回 1999年 第14回 2000年 第15回 2

(

氾1年 第16回 2

(

氾2年 第17回 2

(

氾3年 第18回 2004年 第19回 2

(

氾5年 第20回 2

(

刀6年 第21回 2

C

K)7年 第22回 2008年 第23回 2

(

氾9年 第24回 2010年 第25回 2011年 第26回 窓 ぎわの トッ トちゃん しらゆ きひめ マ ッチ売 りの少女 ぼ くはスサ ノオ さるの王様 お しいれの冒険 ミツバチマ-ヤの冒険 オズの魔法使い ピーターパ ン ぼ くはスサ ノオ 不思議の国のア リス くるみわ り人形 新 ドン ・キホーテ お しいれの冒険 ピーターパ ン ぼ くはスサノオ オズの魔法使い 不思議の国のア リス ヘ ンゼル とグレーテル とゆかいな仲間たち 私の大切 なもの∼マ ツエキソウの奇跡∼ ピーターパ ン∼仲 間が くれた勇気 ∼ オズの魔法使い 不思議の国のア リス ヘ ンゼル とグレーテル-大切 な杵∼ ぼ くはスサ ノオ ピーターパ ン 註 1)学部1年生及び大学院1年生 (免許 プログラム)を対象 と した前期必修科 目 「人間教育学 セ ミ ナー」 において、全15回の授業の中で 「表現 ・コ ミュニケーシ ョン能力 を培 う活動」等、幅広い 活動が組み込 まれ実施 される。 2)文部科学省 (2008)

r

小学校学習指導要領解説音楽編J教育芸術社p86. 3)文部科学省 (2

0

08)r中学校学習指導要領解説保健体育編」東洋館出版社pp.117-132. 4)文部科学省 (2008)

r

小学校学習指導要領解説体育編J東洋館出版社p.52,pp.52-54. 5)文部科学省 (2

0

0

8)r中学校学習指導要領」第2章第5節 「音楽」pp.74-79、第6節 「美術」pp. 80-84、第4章 「総合的な学習の時間」東山書房、pp.116-121. 6)2010年7月8日(木)、12日(月)に実施 した各1回90分の講義 7)時得紀子 (2009)「総合表現活動 を総括す る」時得紀子編著 r総合表現活動の理論 と実践J教育 芸術社、pp.79-102. 8)お茶の水女子大学附属幼稚園 ・同附属小学校 ・中学校 (2006)r協働 して学 びを生み出す子 ども - 3 8

(17)

-を育 てる一 助 ・小 ・中12年 間の学 びの適時性 と連続性 を考 えた連携 型 一貫 カ リキ ュラムの研 究 開 発

-」

文部科学省研 究 開発学校発表会発表要項NPO法人お茶の水児童教育研 究会pp.27-50. 9)TokieN.,EndoY.,KamiM.,&MutoT. (2008). EffectivenessofIntegratedArtsCumiculum for

JapaneseStudentsandPlansf♭rtheFu山reModelinJapaneseSchools :ToCultivateCommunication Skills:Bologna,Italy:FullPaperProceedingsofthe28thISMEWorldConference,pp.297-303・ 10)時得紀子 (2010)「総合表現型 カ リキュラムの実践へ の一考察」兵庫教 育大学大学 院連合学校 教 育学研究科教育実践学論集第11号、pp.155-166. ll)新潟 中央短期大学 (2011)…幼児教育学科TOTALGUIDEBOOK"p.17. 12)この他 、 カ リキュラムの一環 と して ミュー ジカル講演 を通 じ、地域 と密接 に結 びつい た文化 ・ 芸術 イヴェ ン トとして機能 させ るため、 ・地域 の子 どもたち との共演 、 ・近 隣小 ・中学校 の総合 学習の場 として ミュージカル製作 、 ・練習現場 の見学 また製作 ア ドヴ ァイス に も取 り組 んでい る。 13)新潟 中央短期大学 (2011)"幼児教育学科TOTALGUIDEBOOK"p.10. 参考文献 時得紀子 (2002)「子 どもを表現者 にす る総合 的 な学 習 -豊か な表現力 を培 うこ とで コ ミュニ ケー シ ョンを深 め る

-」

田中博 之編著 r給合 的学習の カ リキュラムデザ イ ン、第3巻総合表現型 カ 1)キ ユラム を創 る]明治図書、pp.43-52.

TokieN.(2009).TheImportanceofIntegratedArtsCurriculumforJapaneseStudents:IncreasingMotivation forLeamlngandCultivatingSelf-Expression.Shanghai,China:SelectedFullPaperProceedingsofthe7 thWorldConferenceoftheAs ia-PacificSymposiumonMusicEducationResearch,pp.473-478・ TokieN.(2010).UsingCross-CumicularClassestoHelpMeettheMandatedGoalsofJapaneseMusic

Classes.BeijingChina:FullPaperProceedingsofthe29thISMEWorldConference2010,pp・203-206・

時得紀子 (2011)「初等教員養成 にお ける リ トミック指導 の一考察一創造力 と課題解決力 を培 う音 楽 づ くりを中心 に

-」

ダル クローズ音楽教育研究 日本 ダル クローズ音 楽教 育学 会学会誌 第35号pp.3 3-43. 付記 ・本研 究 は2010-2012年度科学研 究費補助金 (基盤研 究 (C)研究代表 者 :時得紀子、課題番号 : 2253095)における、新潟 中央短期大学 の協力 を得 た共同研究の一環 をなす ものであ る。 写真1 新潟中央短期大学学部2年生 に よる ミュ 写真2 上越教育大学学部3年生 による表

参照

関連したドキュメント

○本時のねらい これまでの学習を基に、ユニットテーマについて話し合い、自分の考えをまとめる 学習活動 時間 主な発問、予想される生徒の姿

最も偏相関が高い要因は年齢である。生活の 中で健康を大切とする意識は、 3 0 歳代までは強 くないが、 40 歳代になると強まり始め、

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

1 単元について 【単元観】 本単元では,積極的に「好きなもの」につ

   がんを体験した人が、京都で共に息し、意 気を持ち、粋(庶民の生活から生まれた美

一︑意見の自由は︑公務員に保障される︒ ントを受けたことまたはそれを拒絶したこと

2) ‘disorder’が「ordinary ではない / 不調 」を意味するのに対して、‘disability’には「able ではない」すなわち

認知症の周辺症状の状況に合わせた臨機応変な活動や個々のご利用者の「でき ること」