中央学術研究所二十周年祝辞
どんな時代宅どんな問題に対してであれ、道を誤らぬためにいちばん大切なのは﹄まず|正しく見る﹂ 目をもつことでありましょう。しかし、﹁正しく見る﹂ということは、簡単そうにみえて、そう易しいこ とではありません・人が見方を誤るいちばんの原因は、自分の利害、自分の損得を中心にした見方になっ てしまうことにあるといえましょう。そのために、目の前のことしか見えなくなり、感情にふり回され て、ものごとの一面しか見えなくなってしまうのです。これが邪見です。 釈尊は、人が正しい道を歩む出発点として﹁正見﹂を示されました。邪見が自分の利害を中心にした 見方であるのに対して、正見は、仏さまが見られるとおりに見る見方、仏知見のことです。 いま日本の社会、世界の国々が激しく揺れ動いているよ、7に見えます。それぞれに、さまざまな事情 をかかえてはいるものの、そこに、戦後続いてきた対立と競争の構造から、平和と共存のための構造を 生み出そうとする大きな潮流が浩々と流れ始めているように思えます。 新たないのちの誕生は、陣痛の苦しみを経なければなりません。新しい世界のしくみを生み出すため には、いくつもの大きな課題を克服しなければならないでしょう。しかし、問題が大きければ大きいほ立正佼成会会長庭野日敬
中央学術研究所二十周年祝辞 ど、困難に見えれば見えるほど、せっかちな決めつけ方をせずに長い目で見ること一面的な見方にこ り固まらず常に全体を生かせるゆとりをもつこと、そして枝葉末節にこだわらず事の根本を見据えるこ と、が大切になってきます。 現代の世界は、人も国も、周囲とのかかわりを無視しては存在することが不可能であることを、ます ますはっきり示しております。周囲の人々、周囲の自然、周囲の国々といかにして共存していくか、そ れが二十一世紀の最大のテマになるでありましょう。また、現代社会のさまざまな問題に対しても、 ただ目先の対処だけではなく未来を賢く見据える先見性をもたなくてはなりません。そのためには、現 在の事態に内在する因縁所生を見きわめることが欠かせません。つまり、世界をあらしめている根本を 見据え、めざすべき目標をしっかりもつことこそが二十一世紀を生きる人々にとって何よりも大切にな るといっていいでしょう。それは、政治、経済、科学、倫理・道徳など、人間社会のあり方を考える学問の中 心に宗教的洞察にもとずく見方を据えることともいえるのではないでしょうか。 その意味で、もはや宗教の研究も自派のための教義の研究のみで事足れりとすることは許されなくなっ ていると申せましょう。宗教も、他のさまざまな分野の学問との関係について研究を深めていかなくて はなりません。それは一朝一夕になるものではなく、五十年、百年というような長い年月の積み上げに よって成就していく事業であります。そのために、あまたの人材を育て、さらに、それを引き継ぐ人々 を育て上げていく地道な努力の継続が必要です。 中央学術研究所は、それをめざしてきて、ここに創立二十周年を迎えることができました。ひとえに 諸先生方のご尽力と、所員、関係者の努力の賜物にほかなりません。しかし、われわれの行く手を思う
とき、事業はまだ緒についたばかりといわなくてはなりません。二十一世紀を生きる人々に確固たる