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香川産科婦人科雑誌投稿規定 1. 本誌に投稿するものは原則として日本産科婦人科学会の会員とする 2. 総説 原著 症例報告の 3 種類とする 3. 用語は原則として和文とするが 英文の投稿も受け付ける 4. 用紙の大きさは A4 版に揃え 活字は 12 ポイント 字数は 1ページあたり 1 行約 3

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(2)

香川産科婦人科雑誌

  Vo.12 No.1 (2010.9)

目     次

総  説

 胎児の顔の表情:4次元超音波による観察

      香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学   

秦  利之,他

1

 胎児血流計測からみた胎児 well-being 評価法について

      島根大学医学部産科婦人科    

青木 昭和

7

臨  床

 当科における子宮外妊娠について (薬物療法を中心に)

      香川労災病院産婦人科    

木下 敏史,他

19

症例報告

 子宮内胎児発育発達遅延に臍帯動脈拡張期逆流波を合併した一例

      香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学  

森  信博,他

23

海外文献紹介

 秦  利之

29

(3)

香川産科婦人科雑誌投稿規定

1.本誌に投稿するものは原則として日本産科婦人科学会の会員とする。

2.総説、原著、症例報告の3種類とする。

3.用語は原則として和文とするが、英文の投稿も受け付ける。

4.用紙の大きさはA4版に揃え、活字は 12 ポイント、字数は1ページあたり1行約 30 字で約 25 行、

天地左右に3cm 程度ずつ余白をつくり、印字する。

5.論文の記述は表題、所属、著者名、概要(800 字以内)

、緒言、対象および方法、結果、考察とする。

6.投稿論文は他紙に未発表のもので、それ自身で完結していなければならない。採否は編集委員会で

決定する。

7.論文の長さは印刷で 10 ページ以内とする。

8.文献は引用箇所の右肩に引用順に番号を打って記載する。文献は著者名全員と論文の表題を入れ次

のように記載する。雑誌名については、和文雑誌は公式の略称、英文雑誌は Index Medicus に従っ

て略したものを用いる。

例 ) 1.中山健太郎,

青木昭和,

真鍋 敦,

秦 幸吉,

秦 利之,

宮崎康二. OEIS (omphalocele,

extrophy of the cloaca, imperforata anus, spinal deformity)complex baby の出生前超音波所見.

日本産科婦人科学会雑誌 1998;50:167-170.

2.秦 利之,

青木昭和.異常妊娠.筋・骨格系疾患.

(佐藤 章編)

新女性医学大系 23.中山書店,

 1998;412-417.

3.Kuno A, Akiyama M, Yanagihara T, Hata T. Comparison of fetal growth in singleton, twin,

  and triplet pregnancied. Hum Reprod 1999 ; 14 : 1352-1360.

4.Hata T. Intrauterine ultrasonography in monitoring early embryonic developmenta ; in Weiner

S, Kurjak A(eds) : Interventional Ultrasound, London, Parthenon Publishing, 1999 : 71-79.

9.写真は白黒とし、カラー写真は使用しない。

10.印刷の初校は著者が行う。

11.別冊については送料を含め全額著者負担とする。

12.投稿に際しては、原稿とともに本文、文献、図表の説明を、Microsoft Word あるいはテキストファイ

ル形式で納めた floppy disk または CD-R を提出する。いずれもラベルには、

筆頭著者名、

ファイル名、

フォーマット形式を明記する。

13.投稿する場合の宛先は下記宛とする。

     〒 761-0793 木田郡三木町大字池戸 1750-1

     香川大学医学部周産期学婦人科学教室内

     日本産科婦人科学会香川地方部会 宛

     TEL(087)891-2174

     FAX(087)891-2175

(4)

平成 22 年度 日本産科婦人科学会香川地方部会 役員

  香 川 地 方 部 会 会  長  秦  利之

副 会 長  樋口 和彦

理  事  総務担当  栁原 敏宏,

 米澤  優

    会計担当  橋本  公,

 塩田 敦子

      学術担当  大野 義雄,

関  正明,

      西田 荘哉,

野々垣多加史

      編集担当  田中 宏和,

沼本 篤男,

      秦  幸吉

監  事 川田 昭徳,

藤田 卓男

  日 産 婦 代 議 員 秦  利之,

 樋口 和彦,

栁原 敏宏

  日産婦名誉会員 神保 利春,

半藤  保

  日産婦功労会員 猪原 照夫,

 林   要,

原  量宏,

 髙田  茂

  中 国 四 国 合 同 理  事 秦  利之

評 議 員  塩田 敦子,

 樋口 和彦,

 栁原 敏宏

名誉会員  猪原 照夫,

 神保 利春,

 髙田  茂,

      原  量宏,

林   要,

半藤  保

  四 国 連 合

理  事 秦  利之

評 議 員  大野 義雄,

 樋口 和彦,

 栁原 敏宏,

 

      米澤  優

  専門医制度香川地方委員会

委 員 長  秦  利之

副委員長  樋口 和彦

委  員 大野 義雄,

 田中 宏和,

栁原 敏宏,

      米澤  優

※五十音順 

(5)

vol.12,No.1 2010 Kagawa J Obstet Gynecol vol.12, No.1, pp.1-6, 2010( 平 22.9 月 ) 1

- 総説 -  

胎児の顔の表情 : 4次元超音波による観察

香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学1),板橋中央病院産婦人科2)

秦 利之

1)

,丸茂元三

2)  索引語:4次元超音波、胎児、顔、表情、感情

はじめに

 子宮内における胎動および胎児行動を観察することに より、我々は胎児の脳そして中枢神経系の発達ならびに その異常を直接知ることができる1)。つまり、最終的に は分娩前に子宮内で起きる脳性麻痺の診断も将来は出来 ることになるかもしれないのである。  従来の2次元超音波による胎動あるいは胎児行動の観 察は多数報告されているが、2次元超音波による胎動お よび胎児行動の観察における最も大きな制約は、観察断 面以外で起こる胎動および胎児行動を観察することが出 来ない点である2)。その問題を解決してくれたのが4次 元超音波である。さらに、4次元超音波のみで観察する ことができる胎動および胎児行動がある。それが、胎児 の顔の動き(facial movement)、あるいは胎児の顔の表 情(facial expression)である3,4)。本稿では4次元超音 波による胎児の顔の観察およびその臨床応用の可能性に ついて解説する。

Ⅰ. 4次元超音波による胎児の顔の観察

 胎児は子宮内で様々な表情をみせ、仕草をしている。 4次元超音波を用いるとそれらの表情を手に取るように 観察することができる。例えば、微笑み(図 1)、瞬き(図 2)、泣き顔(図 3、4)、しかめ面(図 5)、大あくび(図 6)、 舌の突き出し(図 7、8)などの表情をみせ、指しゃぶり(図 9)、困った様子(図 10、11)、鼻啜り(図 12)、O.K.サイ ン(図 13)などの仕草をときにしている。まさに我々に とっては驚きであり、これらが単なる胎児の一連の顔の 動きの一部なのか、それとも胎児の感情表現の一端なの

4D sonographic assessment of fetal facial expression Toshiyuki Hata, MD, PhD1)

, Genzo Marumo, MD2)

1)Department of Perinatology and Gynecology, Kagawa University School of Medicine, Kagawa, Japan 2)Department of Obstetrics and Gynecology, Itabashi Chuo Medical Center, Tokyo, Japan

Key words: Four-dimensional ultrasound, Fetal face, Facial expression, Fetal emotion

図1 胎児の微笑み (fetal smiling) (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248より引用6))

図2 胎児の瞬き(fetal blinking) a, 閉眼、b, 開眼

(Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

(6)

Kagawa J Obstet Gynecol

2 胎児の顔の表情 : 4次元超音波による観察

図 3 今にも泣き出しそうな胎児 (fetal crying) (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

図 4 胎児の泣き顔 (fetal crying)

(Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6)

図 5 しかめ面の胎児 (fetal scowling) (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

図 6 胎児の大あくび (fetal yawning) (a-d) (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

図 7 舌を突き出している胎児(tongue expulsion)(a-c) (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

図 8 しかめ面の胎児 (fetal scowling) (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

(7)

vol.12,No.1 2010 秦 他 3

図 9 指しゃぶりしている胎児 (fetal sucking) (a-c) (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

図 10 困った様子の胎児 (fetal embarracing) (a-b) (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

図 11 困った様子の胎児 (fetal embarracing) 図 12 鼻を啜っている胎児

(Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6))

図 13 O.K.サインを出している胎児 (Hata T, et al. Donald Scool J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248 より引用6)) かは多いに学問的興味のあるところである5、6)  4次元超音波を用いた妊娠後期の胎児の顔の表情の 観察の報告は多数認められている3、4、7 − 12)。4次元超音 波を用いると顔全体の観察が容易であることは間違いの ない事実である。しかしながら、それぞれの顔の表情 の出現頻度については報告者によって違いがあり、今後 多数例による詳細な検討が必要である。また、その観 察時間も様々であり、何分間観察するのが胎児の顔の表 情の評価には最も適しているかについてもさらなる検討 が必要である5)。胎児の顔の表情の観察は、今後胎児 の well-being を評価することができる新しい手段となり 得る可能性があり、大いに興味のある研究分野となって ゆくであろう。さらなる発展に期待したいところである。

(8)

Kagawa J Obstet Gynecol 4 胎児の顔の表情 : 4次元超音波による観察

Ⅳ. 胎児の神経学的予後の予測

 脳性麻痺は小児期に認められる最も一般的な慢性の 運動神経障害であり、その頻度は出生 1,000 に対し 2 − 2.5 であり、1951 年から変化していない15)。さらに、神 経発達障害の 60 − 70%は出生前に子宮内で発症すると されている14)。つまり、子宮内の胎児の脳そして中枢神 経の発達を分娩前に評価することが出来るならば、脳性 麻痺の診断を出生前に行うことができることになる。現 在、臨床的に最も興味のある胎児の神経学的予後の予 測に関する4次元超音波を用いた論文が一つだけ報告 されている16)。 それが Kurjak Antenatal Neurological

Test (KANET) である(表1)。0 ~ 5 点を異常、6 ~ 13 点が境界領域、14 ~ 20 点を正常と判定する(表2)。彼 らの報告では、120 例のハイリスク妊娠において、正常 新生児であった児はすべて KANET が 14 ~ 20 点であり、 軽度から中等度の異常が認められた新生児は 5 ~ 13 点、 高度の異常が認められた新生児はすべて 0 ~ 5 点であっ た。今後の KANET の再評価、そして臨床応用が期待 されるところである。

Ⅱ. 子宮内胎児発育遅延

(fetal growth restriction: FGR) での評価

 Andonotopo and Kurjak13)は4次元超音波を用い、50

例の正常胎児と 50 例の FGR 胎児の行動を比較検討し ている。その結果、FGR 胎児では正常胎児に比較して、 すべての顔の動きの頻度が有意に減少していた。また、 FGR 胎児では正常胎児に比較して、頭部の動き、さらに 手と頭部の接触の頻度が有意に減少していた。4次元 超音波は子宮内の FGR 胎児の中枢神経の発達を評価す る新しい手段となり得る可能性が示唆されており、今後 のさらなる研究が待たれるところである。

Ⅲ. 胎児期から新生児期への移行

 すべての胎児で認められた顔の表情は引き続いて新生 児でも認められており、胎児期で認められて新生児期で 認められなかったものはなかった10,14)。しかしながら、 新生児で認められるモロー反射は胎児では同定できな かった。それぞれの表情の頻度に関して、胎児期と新生 児期で有意差は認められていない14)

表 1 KANET(Kurjak Antenatal Neurological Test) スコアー (Kurjak A,et al.J Perinat Med 2008;36:73-81 より引用15))

Sign Score Sign

score

1 2 3

Isolated head anteflexion

Abrupt Small range (0-3 times of movements) Variable in full range, many alternation( > 3 times of movements) Cranial sutures and head circumference Overlapping of cranial suttures Nomal cranial sutures with measurement of HC below the normal limit (-2 SD)according to GA Nomal cranial sutures with normal measurement of HC according to GA Isolated eye blinking Not fluent (0-5 times of blinking) Fluency( > 5 times of blinking) Facial alteration (grimace or tongue expulsion) Not fluent (0-5 times of alteration) Fluency( > 5 times of alteration) Mouth opening (yawnig or mouthing) Not fluent (0-3 times of alteration) Fluency( > 3 times of alteration) Isolated hand movement

Cramped Poor repertoire Variable and complex

Isolated leg movement

Cramped Poor repertoire Variable and complex

Hand to face movements

Abrupt Small range (0-5 times of movement) Variable in full range,many alternation( > 6 times of movements)

Fingers movements Unilateral or bilateral clenched fist, (neurological thumb) Cramped invariable finger movements Smooth and complex, variable finger movements Gestalt perception of GMs Definitely abnormal Borderline Nomal Total score

(9)

vol.12,No.1 2010

おわりに

 4次元超音波は胎児の神経発達を評価できる画期的 な手段であり、胎児の脳の機能を正確に把握し、そして その異常を診断可能にし、さらには今まで知られていな かったまったく新しい胎児の行動様式あるいは脳機能を 発見できる可能性を秘めている5,17)。しかしながら、4 次元超音波のフレームレートは従来の2次元超音波に比 較して未だはるかに少ないため、現在の4次元超音波で は観察できない胎児の顔の表情あるいは動きがあるの も事実である。また、胎児の顔の表情の評価は、観察 者によって異なってくる主観的なものであることも否めな い。さらに、その検査には膨大な時間と多大な労力が 必要であり、臨床応用を阻んでいる。これらの問題を解 決できれば、4次元超音波による胎児の行動学は将来 飛躍的な発展を遂げるであろう。

文献

1) Hepper PG. Fetal behavior: why so skeptical? Ultrasound Obstet Gynecol 1996;8:145-148. 2) Kuno A, Akiyama M, Yamashiro C, Tanaka

H, Yanagihara T, Hata T. Three-dimensional sonographic assessment of fetal behavior in the early second trimester of pregnancy. J Ultrasound Med 2001;20:1271-1275.

3) Kurjak A, Stanojevic M, Azumendi G, Carrera JM. The potential of four-dimensional (4D) ultrasonography in the assessment of fetal awareness. J Perinat Med 2005;33:46-53.

4) Yan F, Dai SY, Akther N, Kuno A, Yanagihara T, Hata T. Four- dimensional sonographic assessment of fetal facial expression ealy in the third trimester. Int J Gynecol Obstet 2006;94:108-113.

表 2 KANET(Kurjak Antenatal Neurological Test) スコアーの評価 (Kurjak A,et al.J Perinat Med 2008;36:73-81 より引用15))

5) Hata T, Dai SY, Marumo G. Ultrasound for evaluation of fetal neurobehavioral development: From 2-D to 4-D ultrasound. Infant Child Dev 2010;19:99-118. 6) Hata T, Kanenishi K, Tanaka H, Marumo G, Sasaki M. Four-dimensional ultrasound evaluation of fetal neurobehavioral development. Donald School J Ultrasound Obstet Gynecol 2010;4:233-248. 7) Kurjak A, Azumendi G, Vecek N, Kupesic S, Solak M, Varga D, Chervenak F. Fetal hand movements and facial expression in normal pregnancy studied by four-dimensional sonography. J Perinat Med 2003;31:496-508. 8) Azumendi G, Kurjak A. Three-dimensional and four-dimensional sonography in the study of the fetal face. Ultrasound Rev Obstet Gynecol 2003;3:160-169. 9) Andonotopo W, Stanojevic M, Kurjak A, Azumendi G, Carrera JM. Assessment of fetal behavior and general movements by four-dimensional sonography. Ultrasound Rev Obstet Gynecol 2004;4:103-114. 10) Ku r ja k A , St a nojev ic M, A ndonot op o W,

Scazzocchio-Duenas E, Azumendi G, Carrera JM. Fetal behavior assessed in all three trimesters of nor mal preg nancy by fou r- di mensional ultrasonography. Croat Med J 2005;46:772-780. 11) Yigiter AB, Kavak ZN. Normal standards of fetal behavior assessed by four-dimensional sonography. J Matern Fetal Neonatal Med 2006;19:707-721. 12) Kurjak A, Andonotopo W, Hafner T, Salihagic-Kadic A, Stanojevic M, Azumendi G, Ahmed B, Carrera JM, Troyano JM. Normal standards for fetal neurobehavioral developments – longitudinal quantification by four-dimensional sonography. J 5 秦 他

(10)

Kagawa J Obstet Gynecol

Perinat Med 2006;34:56-65.

13) Andonotopo W, Kurjak A. The assessment of fetal behavior of growth restricted fetuses by 4D sonography. J Perinata Med 2006;34:471-478. 14)

Kurjak A, Stanojevic M, Andonotopo W, Salihagic-Kadic A, Carrera JM, Azumendi G. Behavioral pattern continuity from prenatal to postnatal life – A study by four-dimensional (4D) ultrasonography. J Perinat Med 2004;32:346-353. 15) Palmer FB. Strategies for the early diagnosis of cerebral palsy. J Pediatr 2004;145:8-11. 16) Kurjak A, Miskovic B, Stanojevic M, Amiel-Tison C, Ahmed B, Azumendi G, Vasilj O, Andonotopo W, Turudic T, Salihagic-Kadic A. New scoring system for fetal neurobehavior assessed by three- and four-dimensional sonography. J Perinat Med 2008;36:73-81. 17) Kurjak A, Lausin I, Azumendi G. Assessment of fetal behaviour by 3D and 4D sonography; in Hata T, Kurjak A, Kozuma S (eds): Current Topics on Fetal 3D/4D Ultrasound, Bentham Science Publishers (www.bentham.org/ebooks/9781608050192/index. htm) 2009:234-265. 6 胎児の顔の表情 : 4次元超音波による観察

(11)

vol.12,No.1 2010 Kagawa J Obstet Gynecol vol.12, No.1, pp.7-18, 2010( 平 22.9 月 ) 7

- 総説 -  

胎児血流計測からみた胎児 well-being 評価法について

島根大学医学部産科婦人科

青木 昭和

 キーワード:胎児血流計測、静脈血流、大動脈狭部、Tei index、MPI

はじめに

 近年、ME 機器の性能向上により、超音波検査法を中 心とした胎児機能評価法が広く普及してきた。代表的な 方法として、胎児心拍数モニタリングや超音波パルスドプ ラ法による胎児血流計測法が挙げられる。前者は分娩に 際しても持続的に計測できる利点があり、偽陽性率は高 いものの、胎児 well-being 評価として最も基本となる検 査である。一方、後者では臍帯動脈(UA)、中大脳動脈 (MCA)の血流計測が臨床的に最も普及している。特に 臍帯動脈 PI・RI の上昇は胎盤における血管抵抗の上昇を 意味し、胎盤機能不全の指標となる。これは、PI・RI 上 昇が測定部位より末梢に血管抵抗の高い場所があること を示すからである。これから見ると、臍帯上でサンプリ ングボリュームを置く部位としては胎盤近くが理想的とな る。一方、中大脳動脈 PI・RI の低下は低酸素による脳 血管拡張(brain sparing 効果)を意味し、脳血管抵抗 低下を示している。これら2つの血流変化は低酸素によ り胎児が受ける影響の中で比較的早期(代償期)に出現 すると言われる。これに対し、臍帯静脈をはじめとする 各種静脈波形異常は、心臓への静脈還流を含む胎児全 身の循環動態悪化を反映しており胎児機能不全の指標と なる。特に静脈管や臍帯静脈の血流異常は胎児循環不 全の中期から出現し後期(非代償期)に顕著化するため、 この時期の早期発見に有用とされる。以上の点は、実際 の胎児 well-being 評価を行う上で、充分理解しなければ ならない内容である。  本稿では、筆者が行っている静脈系血流評価、さら に集学的胎児評価として胎児大動脈狭部の血流計測や myocardial performance index (MPI) について述べてみ たい。

静脈管

1.特徴  胎児静脈血流計測の中で最も重要なものの一つに静 脈管血流計測が挙げられる。静脈管(DV)は胎盤から の酸素化血液を、門脈・肝臓を通さずに直接下大静脈 に流入させ全身に供給する役割をもったバイパスで、臍 静脈から右房に入る直前の下大静脈に至る。また、その 血流量は多いため、右心系に負担をかけないように、括 約筋による圧調節能を有している。 図 1 胎児腹部横断面(a : B モード、b : カラードプラ)。臍静脈から静脈管が起始している(a)。カラーを 乗せると静脈管の血流速度が速いため色が変化し区別しやすくなる(b)。 a b

(12)

Kagawa J Obstet Gynecol 8 胎児血流計測からみた胎児 well-being 評価法について  実際の DV 血流計測では、胎動や呼吸様運動の少な い時に行い、肝静脈・下大静脈波形の混入を避ける。 描出断面としては、腹部横断面が一般的だが(図1a, b)、 矢状断面の方が他の静脈波形の混入を避けやすく、ビー ム入射角も小さいことから、きれいな波形を得やすくな る(図2a, b, c, d)。また、カラーをのせるとこの部位 だけ血流速度が速いため色が変化し区別しやすくなる(図 1b、図2b)。  DV 波形は s 波(収縮期)、d 波(拡張期)、a 波(心 房収縮期)から成る(図2c, d)。DV の血流波形に影響 を与える要因として、低酸素、胎児心機能低下、さらに 胎盤からの血流量変化が挙げられる。一般に低酸素状 態では VD が拡張し血流量は増加する1)  これらを背景に、DV 血流波形は胎児機能不全(うっ 血性心不全など) および胎 盤 機能不全(fetal growth restriction ; FGR など)の両面から、児の周産期予後 の予測方法として研究されている。 2.胎児機能不全における静脈管血流計測  DV の異常波形として重要なのが、PI 値の異常高値 と逆転 a 波である。特に、臍帯動脈拡張期途絶・逆 流(UA-ARED)を呈する場合、短期生命予後を推測す る方法として非常に重要である。胎児 well-being 指標 の一つである acid-base の予測について Francisco ら2) は、UA-ARED を認めた際の動脈血 pH 予測に DV 波形 が有用であったと報告した。また Carvalho ら3)は、臍 帯動脈 PI(UA-PI) の異常高値(胎盤機能不全)、また は MCA/UA-PI ratio が1以下(brain sparing)といった 早い段階でも、DV の PI、s/a、(s-a)/s いずれも出生児 acidemia の予測に有用であったと報告している。   一方、 分娩タイミングに関して、Alves ら4) は、UA-ARED を認める場合、分娩当日に DV の a 波途絶・逆 転を認めた群と認めない群の間で周産期予後(低 Apgar score、臍帯動脈血 pH、気管内挿管率、肺出血率、頭 蓋内出血率、新生児死亡など)に有意な差があったと し、DV 波形評価が重要であると報告している。さらに、 周産期死亡の面から見ても、premature FGR では UA-ARED や brain sparing よりも DV の a 波途絶・逆流の 方が周産期死亡との関係が強かったと報告されている5)  これらの背景には、低酸素状態による VD の拡張以 外に、その解剖生理学的特徴が挙げられる。つまり DV 血流は下大静脈を介して右房、卵円孔、左房に至るほぼ 直線的な血流の起始部にあたる(図3)。そのため、VD は、 胎児機能不全における cardiac dysfunction の影響を受 けやすい位置となっている。実際、トロポニン T の測定 結果から DV 波形異常では severe cardiac compromise になっていると報告されている6)  一般的に、DV の PI 値としては 1.0 が目安とされ、こ 図 2 胎児の腹部矢状断面(a : B モード、 b : カラードプラ、 d : パルスドプラ)と、静脈管血流波形(c : シェーマ、d : 実際の波形)。矢状断面の方が他の静脈波形の混入を避けやすく、ビーム入射角も小さい ことから、きれいな波形を得やすくなる(d)。写真 c, d 中で、s ; 収縮期、 d ; 拡張期、 a ; 心房収 縮期をそれぞれ示す。 a b c d

(13)

vol.12,No.1 2010 青木 9 れ以上では cardiac dysfunction の進んだ状態とされる。 また途絶 a 波ないし逆流 a 波を認めた場合は極めて危 険な状態とされ、termination の適応となるが遅きに失し た感がある。  一方、神経学的長期予後から見てみると、UA-ARED は独立した因子として挙げられ、DV を含む静脈波形や biophysical profile score(BPS) よりは分娩週数や出生体 重などの未熟さの方が重要であったとする報告もある7)

  最 近 で は DV 波 形 計 測 の 新しい 応 用として、first trimester での胎児 well-being 評価8)や trisomy などの

染色体異常に対するスクリーニング法に応用した報告も ある9) 3.その他の静脈管異常  DV には形態異常も存在し、その主なものに DV 欠損 がある。この場合、臍静脈・門脈の開口部異常を伴う場 合が多く、主な異常開口部として内腸骨静脈、肝静脈、 下大静脈、腎静脈、右房、さらに稀な場合として左房 や冠状静脈洞などがある10)。この病態は門脈・体循環 シャント(portosystemic shunt : PSS)を呈しやすく、 結合型ビリルビン高値を伴う肝疾患の病態として重要で ある11)。また生後の先天代謝異常スクリーニングではガ ラクトース血症示す。  一方、DV 拡張としては門脈欠損や肝腫大などによる門 脈圧亢進状態などが挙げられ、臍静脈は主に拡張した DV に移行し下大静脈に連続する。これら疾患では、圧 調節としての DV が作用していないため著明な preload 上 昇をきたし、心拡大や三尖弁逆流などの所見を呈するこ とも特徴である。

臍帯静脈

1.特徴  臍帯静脈の血流速度波形は子宮内で容易に描出でき る波形である。一般に定常波を示す場合が多いが、胎 児呼吸様運動や母体の深呼吸にも影響を受け、なだら かな脈波を呈したり(図4a, b, c)、心拍周期に伴っ た脈波 (pulsation) を呈する場合もある。その頻度につ いては、正常例でも臍輪部で 87%に認め、それと同期 して腹腔内臍静脈に 30%、臍帯静脈に 22%認められ る12) 2.胎児機能不全における臍帯静脈  臍帯静脈における脈波(UV-P)は、胎児心臓に対 する preload の著明な増加 ( 量・圧負荷 ) であり、特に TTTS(量負荷)、胎児心不全(量・圧負荷)、胎児水腫(量・ 圧負荷)などの症例にみられる。これらでは、下大静脈 圧上昇により DV の圧調節能が対応しきれず、下大静脈 の波形が直接、臍帯静脈まで伝播されたものと解釈され る13)。よって、UV-P の凹部分は下大静脈波形同様、拡 張期に一致する場合が多い(図5a)。この状態は児が非 代償的な機能不全に陥っていることを示し、帝王切開も 含めた急速遂娩術が必要となってくる。さらに状態が悪 化すると、下大静脈・静脈管の波形がより強く反映され ることとなり14)、pulsation が 2 峰性を示す(図5b)  UV-P は TTTS に おける受 血児うっ血性心 不全 の stage 分類において重要な1項目にも使われ15)臨床的意 義は大きい。また UV-P の RI を求め、胎児評価を試み ている報告もある16)。図6にダウン症における一過性骨 図 3 静脈管・下大静脈・右房・卵円孔・左房ライン(破線矢印)。静脈管から左房まで、ほぼ直線上に 並んでいるのが分かる。

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Kagawa J Obstet Gynecol 10 胎児血流計測からみた胎児 well-being 評価法について 髄異常増殖症(TAM)による著明な DV 拡張を、図5b にはそれにより 2 峰性 pulsation を呈した臍帯静脈波形 を示す。 3.臍帯局所血流障害(臍帯圧迫・巻絡および臍帯過捻 転など)  臍帯の過捻転、圧迫および巻絡などではその部分の compliance 低下により UV-P を生じることがある17)。こ の UV-P では隣接する臍帯動脈から伝播した脈波のた め凹部分が収縮期ピークに一致することが多い(図7a)。 また、もうひとつの特徴として、圧迫部分に流入する血 流と流出する血流ではその平均速度に差が生じ、後者の 方が著しく速くなる場合がある(図7b)。  Ghosh ら18)は、 分娩中の胎児心 拍モニターで異常 所見を認めた 26 例の内、8 例に UV-P を認め、 その 中の 6 例(75 %) が fetal distress にて緊 急帝 王切 開 となり、UV-P のない胎児心拍モニター異常群 18 例で は全例経膣分娩に至ったと報告した。筆者の自験例で も、pulsation 凹部分が収縮期ピークに一致する 16 例で は(表1)、全例にエコー上臍帯圧迫と推定される部分 を認めた。また軽度 pulsation( 凹部分の速度減少が平 均速度の 1/3 以下 ) 13 例の内、臍帯の頚部3回巻絡の ため予定帝王切開となった3例を除いた残り10 例中、8 例 (80% ) に分娩時の胎児心拍異常を認めた。そのうち 6例 (75% ) が double setup や体位変換、酸素投与、ク リステレルのいずれかの処置で経腟分娩に至ったが、2 例 (25% ) では NRFS のため緊急帝王切開となった。中 等度 pulsation( 凹部分の速度減少が平均速度の 1/3 ~ 図 5 preload 上昇による臍帯静脈の pulsation (UV-P)。凹部分は下大静脈波形同様、拡張期に一致

する場合が多い(a)。さらに臍帯動脈の拡張末期血流途絶(破線矢印)など状態が悪化すると、 下大静脈・静脈管の波形がより強く反映され pulsation が 2 峰性を示す(b)。 a b 図 4 臍帯静脈波形。一般に定常波を示す場合が多いが(a)、胎児呼吸様運動(b)や母体の深呼吸(c) にも影響を受け、なだらかな脈波を呈する場合もある。 32 週 34 週

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vol.12,No.1 2010 青木 11 図 6 胎児ダウン症における腹部横断面。一過性骨髄異常増殖症(TAM)により、著明な DV 拡張を認める。 a b 図 7 臍帯の過捻転、圧迫および巻絡により生じた臍帯静脈の脈波(UV-P)(a、b)。隣接する臍帯動脈 から伝播した脈波のため凹部分が収縮期ピークに一致することが多い(矢印)。圧迫部分から流出す る血流では、その平均速度が著しく上昇し、エイリシング(折り返し現象)を呈する場合がある(b)。 31W 脾腫 腹腔内臍帯静脈 下大静脈 DV 拡張

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Kagawa J Obstet Gynecol 12 胎児血流計測からみた胎児 well-being 評価法について 2/3) の3例ではいずれも分娩時の胎児心拍異常を認め、 2例 (67% ) で NRFS のため緊急帝王切開となった。さ らに、pulsation と同時に臍帯静脈最高血流速度上昇を 認めた4例(図8)では、全例で分娩中の NRFS のため 緊急帝王切開となった。  以上のことから、収縮期ピークに一致する UV-P が出 現した場合は、拡張期ピークに一致する UV-P ほどでは ないにしろ、児の管理には十分な注意を払う必要がある。 表 1 臍帯静脈 pulsation 凹部分が収縮期ピークに一致する 16 例 図 8 臍帯卷絡での臍帯静脈血流波形。定常波(a)が、胎動により乱れと血流速度上昇(b)を呈し、さら に pulsation が出現し一部逆流まで示している(c)。本症例は緊急帝王切開となった。

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vol.12,No.1 2010 特に中等度以上の pulsation や血流速度の上昇を認めた 場合は tight な臍帯卷絡、圧迫を念頭に入れ、すみや かに帝王切開に移行できる準備をしておいた方が良いと 思われる。

大動脈狭部血流

 大動脈狭部(AoI:aortic isthmus)とは、大動脈のう ちで、左鎖骨下動脈分岐部~動脈管合流部に相当する 部分である(図9)。2001 年に Fouron ら19)は、胎児大 動脈狭部の拡張期逆流(AoI-R)の程度と生後 2 ~ 4 年目の神経学的発達障害の程度に有意な相関を認めた

と発表した。その後彼らは、isthmus blood f low index (IFI : (S+D)/S)を導入し(図 10)、胎盤循環不全(臍帯 動脈 PI が 95%タイル以上)において、cut-off 値 0.7 以 上を optimal、0.5 未満を nonoptimal とした場 合、2 歳 ~ 5 歳時の神経学的予後不良の予測として最も適してい たと報告した20)

 一方、Del Rio ら21)は AoI の PI を計測し、その値の

上昇と周産期予後に有意な相関を認め、特に AoI-R を 伴った場合はさらに強い関係を示したとしている。また、 AoI-R の生じる時期は DV の逆転 a 波出現の 24 ~ 48 時間前とも報告している。   筆者による自験例(FGR22 例 ) の検 討では、brain 13 青木 図 9 胎児大動脈狭部(AoI:aortic isthmus)のシェーマ。AoI-R は大動脈のうち、左鎖骨 下動脈分岐部~動脈管合流部に相当する部分である。

図10 上断:胎児大動脈アーチにおける狭部の位置(*)とIsthmus blood flow index (IFI) の算出法。下段:grade(I~V) ごとの拡張期逆流の増加を示している。右になる程、悪化してくる。S : 収縮期血流、D : 拡張期血流

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Kagawa J Obstet Gynecol 胎児血流計測からみた胎児 well-being 評価法について

sparing を認めた 9 例(表2)の内、AoI-R(拡張期途絶 を含む)を 4 例に認めた。この 4 例は子宮形態異常 1 例(IFI=1.0)、PIH2 例(IFI=0.73 と 0.51)、trisomy21 の TAM1 例(IFI=0.53)で、臍帯動脈拡張期途絶(UA-AED) を全例に認めたが臍帯動脈拡張期逆流(UA-RED)や DV 波形の逆転 a 波は認めなかった。更に心拍出量(CO) について検討したところ、AoI-R を認めた時点で CO は 右室優位を示し、AoI-R(-) 群より左右差が大きい傾向を 示した。胎児心拍数モニターでは一過性徐脈を認めても すぐ回復し、一定した傾向は認めなかった。またこの 4 症例では AoI-R 確認後 24 時間以内に帝王切開となった が、臍帯動脈血 pH はいずれも 7.2 以上であった。これ らの事から、臨床的には臍帯動脈血流波形や胎児心拍 数モニターで判断に迷う場合でも、AoI-R が nonoptimal に達するまでに娩出できれば、児の acidemia は回避で きると思われ、AoI-R の観察は適切な分娩時期を決定す る上で有用と思われた。  一般的に、IUGR では脳への血流保持のため卵円孔血 流が増加し、右室心拍出量の減少と左室心拍出量の増 加が認められ(左室シフト)、これにより代償機能が維持 できているとされる22)。Makikallo ら22)は AoI-R の発症 機序として、胎盤循環不全が進んだ状態では afterload 上昇により左房圧が上昇し、この左室シフトが作用せず、 逆に右室シフトが進んでくるとした。この状態では、脳 血流保持のための増加分を動脈管からの逆流で補うよ うになり、これが AoI-R であると述べている。よって AoI-R 存在下では、代償機能は保っているものの、更 に進行した状態であると推定される。筆者による自験 例でも AoI-R を認めた時点で CO は右室優位に傾き、 AoI-R(-) 群より左右差が大きい傾向を示しており、これ を支持する結果であった。  尚、AoI-R を観察する時の注意点として、大動脈弁閉 鎖不全や左心低形成症候群などを否定しておくことが挙 げられる。

Tei index と MPI ・ m MPI

 胎児における well-being 評価法の中で最重要なもの のひとつに心機能評価がある。近年、IUGR や TTTS に おける胎児心機能評価が盛んにおこなわれるようになっ てきた。

 Tei index(別名 Doppler index)は成人における心臓 の収縮能と拡張能を左右心室別に評価する方法として考 案され23)、胎児の心機能評価にも導入されてきた。算出 法としては、左右心室流入路である房室弁通過血流と流 出路である半月弁血流において収縮期と拡張期の等容時 間の和を心室駆出時間で割った値である(図 11)。胎児 の正常範囲としては、週数に依存せず 0.3 前後で推移し 表 2 CPR < 1.0(Brain sparing effect)を認めた FGR9 症例

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vol.12,No.1 2010 青木 15

0.45 以上では異常高値として扱う。しかし Tei index の欠 点として、房室弁血流と半月弁血流の計測が同時に行え ないため、心拍数の変動に対して誤差が生じる点がある。 これを是正したのが myocardial performance index(MPI) である24,25)。これは左室内では心内構造の解剖的位置 関係で僧帽弁と大動脈弁が隣接していることから、左室 流入・流出路の血流を心室内で同時に描出できる点を応 用した方法である(図 12)。これにより心拍数変動から 生じる誤差が解消されることになる。その後さらに、弁 の動きも同時に捉え、正確な時相を割り出す modified MPI も考案された26)。ただし、これら同時測定法は、 右室では流入路と流出路が離れているため一般的に困 難とされているが、筆者の経験では特定の位置にサンプ リングボリュームを置くことで可能となった(図 13)。  Tei index や MPI・m MPI は、胎児心臓機能を収縮能, 拡張能両面から総合的かつ簡便に評価する方法として、 IUGR、胎児水腫、TTTS などの症例で有効に用いられて いる。また、予後評価では、周産期死亡率の予測として 図 11 Tei index の算出法。左右心室おいて収縮期と拡張期の等容時間の和(ICT+IRT)を心室

駆出時間(ET)で割った値が Tei index である。 Tei index =       =ICT + IRT

ET

a - b b

図 12 左室内にサンプリングボリュームを置いて(a)、流入波形と流出波形の同時描出を行ってい る(b)。これにより左室の myocardial performance index(MPI) が Tei index の式で算出される。 ICT:収縮期等容時間、IRT:拡張期等容時間、ET:心室駆出時間

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Kagawa J Obstet Gynecol DV 異常が最も良い指標と言われている中で27)、preterm IUGR における MPI 異常高値(95%タイル以上)は、DV 異常と同様に、良い周産期予後因子となることが分かり、 最近注目を集めている28)

集学的胎児血流評価

 胎児機能不全では、hypoxia の進行により acid-base disorder から acidemia、さらに asphyxia へと悪化してい くが、その過程で cardiac dysfunction の存在は特に重 要である。これは児の予後に対し重大な独立因子になり 得るからである。cardiac dysfunction は静脈環流異常と して preload に反映される。一方、胎盤機能不全では、 胎盤血管抵抗上昇を中心とする afterload(左心系)の上 昇が左心系機能低下を誘導し、さらに卵円孔を介して容 易に右心系機能に影響を及ぼし preload 上昇に反映され る。これから分かるように、胎児・胎盤循環不全という 時系列の中では、動脈系以外にも心機能評価や静脈血 流評価が、重症度判定として極めて重要となってくる。  Figueras ら29)の longitudinal study によると、preterm

FGR では、分娩の適応となる 24 日前から UA-PI の異 常高値、20 日前から MCA-PI 異常低値、13 日前から大 動脈狭部 PI 異常高値、7 日前から DV の PI 異常高値を 示していたと報告している。今後はこれらを背景として、 臍帯動脈、中大脳動脈の評価に DV を加え、さらに AoI-R、MPI などを組み合わせることにより、周産期予後 の予測精度を上げるという30,31)、集学的胎児血流評価が 注目されてくると思われる。

最後に

 筆者は最近、胎児低血糖(出生直後血糖値 25、臍帯 動脈血 pH7.18)と思われる胎児ジストレスを経験した。 この症例では胎児心拍数モニター上で著明な基線細変 動減少と反復する遅発性一過性徐脈を認めたにも関わら ず、胎児血流計測上はほとんど異常を認めていなかった。 このように胎児血流評価にはやはり限界があり、実際は 児のほんの一部の変化を捉えているにすぎない可能性が ある。まして、胎児・胎盤循環動態は分娩という激動の なかでダイナミックに変化する。よって胎児血流評価は、 今後、胎児心拍数図評価を補いながら、分娩中の胎児 ジストレス評価も含めて、さらに精度の高い客観的評価 が行えるように工夫していく必要性があると思われる。

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により右室でも myocardial performance index(MPI) 算出が可能となる。ICT:収縮期等容時間、 IRT:拡張期等容時間、ET:心室駆出時間

胎児血流計測からみた胎児 well-being 評価法について 16

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vol.12,No.1 2010

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胎児血流計測からみた胎児 well-being 評価法について 18

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vol.12,No.1 2010 Kagawa J Obstet Gynecol vol.12, No.1, pp.19-22, 2010( 平 22.9 月 ) 19

- 臨床 -  

当科における子宮外妊娠について (薬物療法を中心に)

香川労災病院 産婦人科

木下敏史、大河原美幸、大倉磯治、川田昭徳

概  要

 当科における子宮外妊娠数はH15,16,17 年の 3 年間まで年間 10 件以下であったが、H18 年より増加し、年間 20 件を 超えるようになった。症例の増加に伴い、腹腔鏡手術を積極的に施行し、またH 20 年より、産婦人科診療ガイドライン も参考に、治療法の選択基準を設けて薬物療法(メソトレキセート全身投与)も導入している。当科では方法が簡便な single dose 法でおこない、H 20,21 年では計 18 例で薬物療法を施行した。薬物療法を施行した全例において緊急手術と なることなく、手術を回避することができた。治療開始前の平均血清 hCG 値は 985IU/Lであり、投与回数は 2 回投与し た症例が最も多く、9 例(50%)であった。当科ではガイドラインで容認されている hCG 値(5,000IU/L 以下を許容、3,000IU/ L 以下を推奨)よりも比較的低値(当科では平均 1,000IU/L 以下)で行っており、かなり慎重に症例を選んでいる印象であっ た。血清 hCG 定量と経膣超音波検査との組み合わせで手術療法のみでなく、薬物療法による手術回避できる症例が増 える分、患者側の治療選択肢が増え、医療者側の負担も軽減した。今後、メソトレキセートの子宮外妊娠への保険適応 がえられ、症例の蓄積がされていけば、わが国における子宮外妊娠治療が大きく変化する可能性があると思われる。 キーワード;統計 , 子宮外妊娠 , メソトレキセート

Statistics on ectopic pregnancy in our hospital(Medical treatment with Methotrxate) Toshifumi Kinoshita, Miyuki Ogawara, Isoji 0hkura, Akinori Kawada

Department of Obstetrics and Gynecology,Kagawa Rosai Hospital

Ⅰ. 緒  言

 子宮外妊娠は性成熟期女性における代表的な緊急疾 患の一つで以前は腹腔内に大量出血した状態で診断さ れ、ショックから緊急開腹手術が行なわれることが多 かった。しかし近年、経膣超音波検査の普及、高感度 妊娠反応検査の登場(特に血清の hCG 定量検査)によ り破裂前の無症状時期に子宮外妊娠を疑う症例が増加し てきた1)。それに伴い、従来の開腹手術のみでなく、腹 腔鏡手術などの低侵襲手術、メソトレキセート(MTX) などの薬物療法による保存療法が選択できるようになっ た。また日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドライン 産科編 20082)でも子宮外妊娠と診断された場合、条件 を満たす場合は薬物療法、待機療法も記載されており、 早期診断により保存的治療が可能になることが示唆され ている。当科においても 2008 年より MTX 全身投与で の薬物療法を子宮外妊娠治療に開始しており、今回当科 においての子宮外妊娠治療について検討したので報告す る。

Ⅱ. 当院における子宮外妊娠の現状

1. 年次別症例数(図 1)  当科における子宮外妊娠数はH 15,16,17 年の 3 年間 まで 10 件以下であったが、H 18 年より急激に増加し 20 件を超えるようになった。STD の増加や、不妊治療等の 影響も考えられるが、H 20,21 年の合計 48 例中 43 例が 他院からの紹介であり、子宮外妊娠治療を取り扱う近隣 施設の減少が大きいと考えられた。   図 1 年次別症例数の推移

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Kagawa J Obstet Gynecol 20 子宮内胎児発育遅延に臍帯動脈拡張期逆流波を合併した一例 2. 年次別治療法の変遷(図 2)  H 17 年までは開腹手術による卵管摘出が大部分で あったが、症例の増加に伴い、H 18 年より低侵襲手術 として腹腔鏡手術を積極的に施行するようになった。ま たH 20 年より、産婦人科診療ガイドライン2)も参考にし、 子宮外妊娠における治療法の選択基準を設けて(表 1)、 手術を回避する保存的治療として薬物療法(MTX 全身 投与)も施行している。投与の方法は一般的には2つの 方法(表 2)3,4)が提唱されているが、当科では方法が簡 便な single dose 法でおこない、H 20,21 年では計 18 例 を薬物療法で治療した。薬物療法を施行した 90%以上 は手術を回避できる5)とされているが、当科では、幸い 全例緊急手術となることなく、手術を回避することがで きた。

Ⅲ. 薬物療法 (MTX) 症例の検討 (表 3)

 当科での薬物療法を施行した症例の詳細を表 3 に示 す。H 20,21 年で計 18 例に施行されており、治療開始 前の平均血清 hCG 値は 985IU/Lであった。投与回数は 2 回投与した症例が最も多く、9 例(50%)であった。ま た当院では薬物治療中は原則入院治療としているが、患 者の強い希望で外来治療となった症例が 2 例存在した。 MTX 症例の緊急手術例はなかったが、当科ではガイド ラインで容認されている血清 hCG 量(5,000IU/L 以下を 許容、3,000IU/L 以下を推奨)よりも比較的低値(当科 では平均 1,000IU/L 以下)で施行しており、かなり慎重 に症例を選んでいる印象であった(ただし治療中に腹痛 の出現、腹腔内貯留液の増量等がみられた症例は 1 例 図 2 年次別治療法の変遷 表 1 治療法選択基準 表 2 MTX 全身投与法

Multi dose Single dose

MTX      1mg/kg 筋注(day1.3.5.7) ロイコボリン  0.1mg/kg 筋注(day2.4.6.8) 48 時間で血中 hCG 値が 15%以下に低下するまで投与する か、4 回投与。 治療開始後 14 日目に初回 hCG 値の 40%まで低下ない場 合、1 コース追加。 MTX     50mg/ ㎡筋注 投与後 4 日目と 7 日目の血中 hCG 値が 15%低下なければ 再投与する。 1 週おきに測定し、最大 4 回まで投与する。 (文献 4 を改変)

(25)

vol.12,No.1 2010 木下 他 21 あったが手術療法への変更を要した症例はなかった)。 治療後においては再度子宮外妊娠となり手術施行した症 例が 1 例、正常妊娠例は 2 例であった。MTX 投与中に 重篤な合併症を引き起こした症例はなかった。

Ⅳ. 入院患者での治療別比較 (H 20,21 年)

 入院患者での治療別比較を表 4 に示す。2 年間での 治療別の比較で最も多かったのは腹腔鏡下手術で、平 均在院日数は 8 日間と一番短かった。しかし平均単価で は平均 59.9 万円となり、一番高額となった。逆に薬物療 法例では治療効果の確認のため入院日数が長期化する 傾向にあり、平均在院日数が 16.3 日間となったが、手 術がない分、平均単価は低く抑えられていた。欧米の 報告6)では薬物療法、手術療法も費用対効果は同等と の報告もあるが、診断に腹腔鏡検査を含んでおり、薬 物療法による治療がより効果的だとの報告がされている。

Ⅴ. 考 察

 当科では従来子宮外妊娠の管理に尿中 hCG 定量でお こなっていたが、症例の増加に伴い血清 hCG 定量にて 管理するように変更した。このため経膣超音波検査との 組み合わせで手術療法のみでなく、薬物療法による手 術回避、卵管温存が比較的容易となった。また疾患の 性格上緊急手術で対応することが多かったが、手術回避 できる症例が増える分、患者側の治療選択肢が増え、医 療者側の負担も軽減した。今後 MTX の子宮外妊娠への 保険適応がえられ、症例の蓄積がされていけば、わが国 における子宮外妊娠治療が大きく変化する可能性がある と考えられる。  産婦人科ガイドライン2)では、血清 hCG < 1,000IU/L では待機療法の成功率が 88%であるが、1,000IU/L を 超える場合は 48%と減少するため、当科では MTX 投与 症例の基準をかなり緩めに考えて投与した。MTX を投与 せずに待機療法のみでよかった症例が含まれている可能 性も考えられ、今後その投与基準についてはさらに症例 数を重ねて検討したいと考えている。

文  献

1) Cynthia M. Ectopic Pregnancy. Lancet 2000; 366: 583-591. 2) 日本産婦人科学会、日本産婦人科医会編集 .産婦 人科診療ガイドライン産科編 2008;47-49. 3) Pisarska MD, Carson SA, Buster JE. Ectopic Pregnancy. Lancet 1998;351:1115-1120. 4) Barnhat KT,Gosman G,Ashby R,Sammel M. The 表 3 薬物療法(MTX) 症例の詳細 表 4 入院患者での治療別比較

(26)

Kagawa J Obstet Gynecol 22 子宮内胎児発育遅延に臍帯動脈拡張期逆流波を合併した一例 medical management of ectopic pregnancy: a meta-analysis comparing “single dose” and “multidose” regimens. Obstet Gynecol 2003;101:778-784. 5) Lipscomb GH,Mccord ML, Stovall TG, Huff G, Portera SG, Ling FW. Predictors of success of meyhotrexate treatment in women with tubal ectopic pregnancy. N Engl J Med 1999;341:1974-1978. 6) Mol BW,Hajenius PJ,Engelsbel S, Ankum WM,

Hemrika DJ, Van der Veen F, Bossuyt PM. Treatment of tubal pregnancy in The Netherlands: an economic comparison of systemic methotrexate administration and laparoscopic salpingectomy. Am J Obstet Gynecol 1999;181:945-951.

(27)

vol.12,No.1 2010 Kagawa J Obstet Gynecol vol.12, No.1, pp.23-28, 2010( 平 22.9 月 ) 23

- 症例報告 -  

子宮内胎児発育遅延に臍帯動脈拡張期逆流波を合併した一例

香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学1),香川県立保健医療大学保健医療学部看護学科2)

森 信博

1)

,柳原敏宏

1)

,奥 真紀

1)

,天雲千晶

1)

,岡田裕美子

1)

,松岡 恵

1)

花岡有為子

1)

,金西賢治

1)

,山城千珠

1)

,田中宏和

1)

,塩田敦子

1)

,秦 幸吉

2)

,秦 利之

1)

概  要

 子宮内胎児発育遅延 (fetal growth restriction;FGR) に臍帯動脈 (umbilical artery;UA) 血流速度波形の拡張期途絶・ 逆流を認めたが、児の予後は良好だった一例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

 症例は 32 歳、2 回経妊 2 回経産(前 2 回帝王切開)。妊娠 27 週 3 日に当院を初診した。一度前医を受診以後、妊婦 健診を受けていなかった。来院時所見としては特に異常を認めなかった。妊娠 31 週 4 日の超音波検査にて推定胎児体重 (estimated fetal weight,EFW) が 1,433g で胎児発育遅延傾向が認められた。

 さらに、UA 血流速度波形の pulsatility index (UAPI) 値は 1.94 と異常高値で、中大脳動脈 (middle cerebral artery, MCA) 血流速度波形の PI(MCAPI) は 1.44 と異常低値示した。そのため、FGR と診断し、入院管理を勧めたが家庭の都 合により外来管理とした。妊娠 32 週 4 日、UA の拡張期血流に時々途絶が出現するようになり、MCAPI は 0.98 と異常 低値で、AFI(amniotic fluid index) は 7.51cm であった。妊娠 33 週 1 日の胎児血流動態にも改善が認められなかった。そ の後来院せず、妊娠 36 週 3 日に再び来院し、超音波検査にて EFW は 1,596g(< mean-2SD)、UA の拡張期血流は明ら かに途絶したままの状態であった。妊娠 38 週 0 日、EFW は 1,646g(< mean-2SD) で、UA の拡張期血流に逆流が出現 し、胎児心拍数モニタリングで基線細変動の減少、軽度遅発一過性徐脈の頻発が認められたため、胎児機能不全と診断し、 同日緊急帝王切開術を施行した。 出生児は 1524g の男児で Apgar score は 3/6(1 分 /5 分 ) であった。UApH は 7.185 で あった。また胎盤重量は 225g と小さく、臍帯辺縁付着をみとめた。児は出生直後から NICU 入院となったが入院後経過 は良好であり、日齢 54 日目に退院となった。 索引語:子宮内胎児発育遅延、臍帯動脈血流速度波形、胎児機能不全

緒  言

  超音波ドプラ法による臍帯 動脈 (umbilical artery, UA) 血流計測に関する meta-analysis において、本法は 子宮内胎児発育遅延 (fetal growth restriction, FGR) に おける胎児胎盤循環不全を早期に予知できる検査法とし て有用であるとされている1)。今回我々は、胎児血流計 測を用いた当科における FGR の管理方針2)に従って管 理して、胎児発育停止、UA 拡張期逆流波の出現時点で 緊急帝王切開を施行し、児の予後は良好であった FGR の一例を経験したので報告する。

症  例

患者:32 歳、2 回経妊 2 回経産 既往妊娠分娩歴: 前 2 回帝王切開   第 1 子、骨盤位のために予定帝王切開。体重 3214g、 身長 50.5cm、女児。 第 2 子、骨盤位のために予定帝王切開。体重 2670g、 身長 47.5cm、男児。 既往歴:喘息 家族歴:母、精神疾患。父、自殺。夫、家庭内暴力あり。 月経歴:初経 11 歳、月経周期は 28 日で整。 現病歴:妊娠 27 週 3 日、当院初診。一度前医を受診以後、 妊婦健診を受けていなかった。来院時所見としては特に 異常を認めなかったが、妊娠 29 週 4 日の超音波検査で は推定胎児体重 (estimated fetal weight,EFW)は 1,193g であった。妊娠31週4日の超音波検査にてEFWは1,433g で胎児発育遅延傾向が認められた(図 1)。

 さらに、UA 血流速度波形の pulsatility index(UAPI) 値は 1.94 と異常高値で、中大脳動脈 (middle cerebral artery, MCA) 血流速 度波の MCAPI は 1.44 と異常

(28)

Kagawa J Obstet Gynecol

24 子宮内胎児発育遅延に臍帯動脈拡張期逆流波を合併した一例

低値を示した ( 図 2, 図 3)。amniotic fluid index(AFI) は 15cm であった。そのため、FGR と診断し、入院管理を 勧めたが家庭の都合により外来管理とした。  妊 娠 32 週 4 日、UA の拡張 期血流に時々途 絶が出 現するようになり、MCAPI は 0.98 と異常低値で、AFI は 7.51cm であった。この時点でも再び入院を勧めたが 入院を拒否し、妊娠 33 週 1 日の胎児血流動態にも改 善が認められなかった。その後来院せず、妊娠 36 週 3 日に再び来院し、超音波検査にて EFW は 1,596g( < mean-2SD)、UA の拡張期血流は明らかに途絶したまま の状態で(図 4)、MCAPI は 1.52 と正常範囲内であった。 AFI は< 5cm となっていた。そのため、緊急入院を勧め るも家庭の事情により入院拒否された。 妊娠 38 週 0 日、 EFW は 1,646g( < mean-2SD) で前回受診時と比較して 増加がほとんど認められず、UA の拡張期血流に逆流が 出現し(図 5)、AFI はほとんど測定不能であった。胎児 心拍数 (fetal heart rate, FHR) モニタリングで基線細 変動の減少、軽度遅発一過性徐脈の頻発が認められた ため(図 6)、胎児機能不全と診断し、同日緊急帝王切 開術を施行した。  出生児は 1524g の男児で Apgar score は 3/6(1 分 /5 分 ) であった。UApH は 7.185 であった。また胎盤重量 は 225g と小さく、臍帯辺縁付着をみとめた。児は出生 直後から NICU 入院となったが入院後経過は良好であり 日齢 54 日目に退院となった。

図 1 推定胎児体重 (estimated fetal weight, EFW) の推移。基準範囲は文献3)より引用。

(29)

vol.12,No.1 2010 森 他 25

考  察

 FGR とは、発育、成熟の抑制または異常が認められ る児の総称として使用される。多くの因子が複雑に関与 して発症するため、その病態像(発育制限、成熟障害 など)は個々に異なり多彩である4)。ときに small for gestational age(SGA) と混同して用いられることがある が、SGA は出生時に児体重が在胎週数に比較して小さい 群(通常 10 パーセンタイル以下)を示すものである。し たがって、SGA の中には明らかな原因が認められず、妊 娠経過も良好で単に小さく生まれただけの児、いわゆる normal small も含まれている。一方、FGR はその児が本 来備えている発育のポテンシャルよりも実際の発育が下 回ってきたため、妊娠期間に相当しない児の発育となり、 胎児機能不全、胎児死亡、周産期死亡につながりやすい ものであるとされている5,6)。したがって、normal small と FGR を鑑別することは日常診療において非常に重要であ る。  図 7 に当科における FGR の管理方針を示す2)。当科 の FGR 管理方針は超音波断層法による EFW が 10 パー センタイル未満であっても、UAPI、MCAPI 値が基準範囲 内であれば、とくに問題のない SGA と考え、通常の外 来の妊婦健診で様子観察を行う。しかしながら、外来 で FHR モニタリング、AFI 計測を行い、non-reassuring fetal heart rate pattern あるいは AFI < 5cm となれば入 院管理とする。本症例では妊娠 31 週 4 日で超音波計測 図 3 中大脳動脈 (middle cerebral artery, MCA) 血流速度波 pulsatility index(MCAPI) 値の推移。基

準範囲は文献3)より引用。

(30)

Kagawa J Obstet Gynecol

26 子宮内胎児発育遅延に臍帯動脈拡張期逆流波を合併した一例

による EFW の推移より胎児発育遅延傾向が認められた ため、normal small と IUGR を鑑別する目的で UA およ び MCA の血流計測を施行した。その結果、UAPI の異 常高値、MCAPI の異常低値を認めたため、FGR と診断 した。おそらくこの時点で、胎児低酸素症により、生命 維持に重要でない臓器への血流が減少し、その分、脳、 心臓などの生命維持に重要な臓器への血流が増加する 血流再配分 (brain-sparing effect) の状態になっていた と考えられる。  この時点で入院管理が必要と考えられたが、患者の 都合で外来管理となった。さらに、AFI が減少してきた のは、胎児低酸素症が慢性に続き、頭部への血流を増 加させるための血流再配分機構により腎血流量が減少 し、その結果,胎児の尿量が減少し,羊水量の減少とし て捉えられたものと思われる。その後、UA 拡張期血流 途絶を示す中等度 FGR から UA 拡張期逆流波を呈する 高度 FGR へと進行し、胎児発育の停止も出現した。さ らに、AFI はほとんど測定不能となり、FHR モニタリング で基線細変動の減少、軽度遅発一過性徐脈の頻発が認 められたため、胎児機能不全7)と診断し、緊急帝王切 開術を施行した。また、MCAPI が妊娠 36 週 3 日に異常 低値から正常範囲内に戻ったのは FGR に認められる血 流再分配の代償機構がその重症度が増すにつれて破綻 し始めたと所見と考えられる。  FGR 症例では UA 拡張期血流の途絶あるいは逆流波 が認められた際には周産期予後が悪く、綿密な周産期 図 5 臍帯動脈血流速度波形で認められた拡張期血流の逆流波(妊娠 38 週 0 日)。 図 6 胎児心拍数モニタリング(妊娠 38 週 0 日)。基線細変動の減少、軽度遅発一過性徐脈頻発を認める。

図 7 舌を突き出している胎児(tongue expulsion)(a-c) (Hata  T,  et  al.  Donald  Scool  J  Ultrasound  Obstet  Gynecol 2010;4:233-248 より引用 6) )
図 9 指しゃぶりしている胎児 (fetal sucking) (a-c) (Hata  T,  et  al.  Donald  Scool  J  Ultrasound  Obstet  Gynecol 2010;4:233-248 より引用 6) )
表 1 KANET(Kurjak Antenatal Neurological Test) スコアー (Kurjak A,et al.J Perinat Med 2008;36:73-81 より引用 15) )
図 12 左室内にサンプリングボリュームを置いて(a) 、流入波形と流出波形の同時描出を行ってい る(b) 。これにより左室の myocardial performance index(MPI) が Tei index の式で算出される。 ICT:収縮期等容時間、IRT:拡張期等容時間、ET:心室駆出時間
+4

参照

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