山冂木学教育 学 部 附属 教 育実践 総 合セ ン ター研 究 紀 要 第21号 (ZOO6.3).
性
同
一性 障 害
(
GID
)
に
関 す
る
心 理
学 的
研
究
の
近年
の
動 向
山根 望’ ・名 島
潤 慈
Current
Psychological
Studies
onGender
Identity
Disorder
YAMANE
Nozomi
andNAJIMA
Junji
(
Received
January
10
,2006
)キーワー ド
性 同一性障 害
ト ラ ン ス ジェ ンダー
性別 適合
T
・段1
本稿
のねらい1997
年以降か ら性同一性 障 害 (Gender
Identity
Disorder
:GID
)とい う 理由での 改 名がで き る よ う に な り、1998
年5
月に埼玉医科大学が性転 換 症 者の 手術 療 法 を認 可し、1998
年10
月に最 初の 手術が行 われた 。 同年 、埼玉医科大学に続 き 岡 山大 学 も 岡 山大 学 精 神科 、産婦人科 、泌尿 器科 、川崎 人学形成外 科の 専門 医に よ り構 成された ジェ ンダーク リニ ッ ク (性 同一性障害や性に関する問題 を専 門とする医療機関)を発足 さ せ 、
2001
年1
月に は性別適 合 手術 (
Sex
Reassignment
S
urgery :SRS
)が施行された 。 また、2004
年7
月
16
目 に 「性同一性障害 者の 性 別の 取り扱い に関する特 例の法律」 (い わ ゆ る 「性同 性 障 害 特例 法」)が施行され 、特 定の 基準 を満た し てい る 人 は戸 籍 上の性 別 を変 更 する こと が可能と なっ た。 さ ら に、2002
年 、TBS
の ド ラマ 「3
年B
組金 八 先 生」でGID
が取 り上 げられ、2003
年にGID
の当 事 者で あ る 上 川 あ や が東 京 都世 田谷 区議 会議 員に当選 し たこ とでGID
が社会的に も認知されるよ うになっ た。こ のよ うに、
1990
年代後半か らGID
者 を取 り巻 く状況は法律や医療の分 野で め ざ まし く変化し てい る,、それに呼応し て、 精神神経科や ジェ ンダ ーク リニ ッ ク を受診 するGID
者が増加 し て い る。山内ら (1998
)に よ る と、GID
の 発現 率は成 人 男 性の24
,000
−37
,000
に1
人 、成 人 女 性の103
,000
−150
,000
に1
人の割合で あ る と言わ れ てい る。また、治 療 を求 め てい る 人 は男性で は30
,000
に1
人 、 女性で は100
,000
に1
人 くらい と み な さ れ、 こ の計 算で い くと 日本に も2
,200
人か ら7
,000
人程 度い る と想定 さ れ る がし か し、実 際に はその10
倍くらい い る で あ ろ う との こ と である。 なお、オラ ン ダ に お け る性転換症 (transsexual
) の最新の 発現率は、男 性11
,900
人に1
人、 女 性30
,400
人に1
人で ある とい う研 究も報告さ れて い る (東 ら,2001
)c医療 技 術の 発展に よっ て
GID
者が自分の 希望 す る性に体 を適合させ てい くこ と は可 能 と なっ て きた が 、GID
者が社会生活に適 応 し て い くこ と は ま だ ま だ むずか しい の が現状 で あ る。 た と え性別 適合 手術に よっ て 希望 する性に転換で きた と し て も社 会 的に受容され に くい 今 目の状 況で は、GID
者の心 理 的 負荷は相 当大 きい で あ ろ う。 し た がっ て 、 本稿 で は、2
〔〕00
年以降の研 究 を 中心 に ま と め て、GID
者の 心理 学 的研 究が ど こまで進み、 今 *山口大学大学院 教 育 学 研 究 科 学 校 臨床心 理学 専 修 一231
一後どの よ う な研 究が必要と な るか につ い て考察したい 。 ただし、
2000
年以前の研 究で わ れ われが重 要と考えた もの も紹 介する。 ま た、 ホル モ ン治療や外科的処置 を行 わずに外 見や 態 度 を希望する性に適合させ て生 活 し て い る もの を トラン ス ジェ ン ダ ー (transgender
) と言う が (中村,2005
)、こ の トラ ン スジ ェ ン ダ ーの なか にGID
も含 まれてい るの で 、 ト ラ ン ス ジ ェ ン ダーに 関する研究 も取 り上 げたい。 ちなみ に 、 本稿で 頻出する 「ジェ ン ダー (gender
)」と は 生物 学 的性 (sex ) と は異な る 心 理 ・社会的性の こ とで 、文化的概念の
1
つ で ある。 それは た とえば 、男ら しい / 女らし い外 見や身振 り、社 会的役 割 (た と え ば 夫や妻 と し ての役 割 ・責 任)の ことで あ る (中村,2005
)。 皿GID
の定義
東 ら (
2001
)に よ れば 、ア メ リ カ精 神医 学会の 「精神障害の 診断統 計マ ニ ュ ア ル 第4
版 (DSM
−IV
)』 と世 界保 健機 関の 『国 際疾 病 分類10
版 (IGD
−10
)
』の どちらか1
つ の 診断基 準に当て は まれ ば 、その 人 はGID
で あ る と 公式に認められる。こ こで は、GID
の 定 義の1
つ と して、DSM
−IV
の 診 断基 準 を紹 介 したい (American
Psychiatric
Association
,2000
),、表1
を参 照 されたい 。DSM
−IV
の 改訂版で あ るDSM
−IV
−TR
か らの引用 で あ る。性 別 違 和 感 を主 訴と し て精神科を受 診する人が増 加 する傾 向に あ り、
GID
は果 た し て 精神 疾患なの で あ ろ うか とい う問いが提起され 、活 発な議論が行 わ れてい る (Bartlett
et aL ,2000
;Langer
&Martin
, 2004 ;中村,2005
)。 ま た、ジ ェ ン ダーとい う概念 それ 自 体が心理 ・社 会的 産物で あ り、ア メ リカ社 会の ジェ ン ダー観に基づい たDSM
−IV
の診 断基準に疑 問を投 げか け る研 究 もある (Newman
,2002
)。し か し本 稿で は心理学 的研究 を巾心に述べ る の で 、こ こ で はGID
の診断基準の 紹 介に と どめ て お きた い。 皿統 計 的研 究にみ る
GID
の特徴
1
.初 診 時年齢、 性別 違和 感 、性志向、 不登校、 自殺念 慮 な ど生物 学 的に は男性で あ る が性の 白己認識は女 性で ある
MTF
群 (Male
t。Female
) と、 生物 学 的に は 女性で あ る が性の 自己 認識は男 性で あるFTM
群 (Female
toMale
)とで は、どの よ うな共 通 点 ない し相違点が あ るの で あ ろ うか、,真鍋 ら (2000
)は、30
名のGID
者に、 初 診時年齢、 職業 、r
一どもの ころの遊 び 、 性別 に 対する違 利感 、 性 的指 向、 不登校の既 往 、 白傷ま たは 自殺 企 図の経験 、 内分泌 治療 、 外科 的治療の有 無 につ いて聴 取 した。 その 内訳 は、MTF
が17
名 (57
%)、FTM
が13
名 (43
%)で あっ た、, 職業に関し て は、FTM
で は定職8
名 (62
%)、無職0
に比べ て 、MTF
は定 職4
名 (23
%)、 無職8
名 (47
%)でMTF
の 定職率が低い こ と が 目立つ 。 子どもの 頃の遊びは、FTM
で は69
% が反 対の性の 役 割 を取っ た り、男 児の典 租 的な遊びをし て い た りした が、MTF
は 両 方の遊 び をし て おり明 らか な傾 向は見られ なか っ た。性 的指向に関 して は、MTF
は男 性 、女性 、両 性と比 較 的 分散 し て い た が、FTM
で はすべ て性 的対 象は女性で あっ た。 不 登 校に関 し て は、FTM
で は まっ た く見られなか っ たが、MTF
の場合10
名 (59
% )に認 め られた。 その 理由は、 い じめ や友 人がで き ない な ど の対人関係に よ るもの が多か っ た。 自傷ま た は自殺 企 図の経 験は、MTF
、FTM
共に高 率で あっ た。 その 内容は、MTF
は睡 眠 剤の大量 内服 、 外性器損傷、FTM
で は 睡眠剤の 大量内服 、リス トカ ッ トな どで あっ た。 内 分泌 療 法の既往に関し て は、 初診 時 、MTF
10
名 (41
%)、FTM
5
名 (38
%)がすで に 施行済みで 、継 続 中で あっ た。 外科 的治療の既 往に関しては、MTF
7
名 (41
%)、FTM
表
1 DSM
−IV
−TR
に よ る性 同一 性 障害Gender
ldentity
Disorder性 同一性 障害
Gender
ldentity
Disorder
A
. 反対の性に対する持続的な同一感(
他の性で ある こ とに よっ て 得られる と思 う文化 的有利性に対 する欲求だけで は ない)子供の場合、 その障害は以 下の
4
つ (ま た は そ れ 以上)によっ て表 れる。(
1
)反 対の 性に な り たい とい う欲 求 、 また は自分の 性が反 対で あ る とい う主 張 を繰り 返し述べ る。(
2
)男のf
の場 合 、女の子の服 を着ることを好む、 ま た は女装をま ね るの を好む こ と、女の子の場 合、 定型 的な男 性の 服装の みを身につ け たい と主張するこ と。
(
3
)ごっ こあそ びで 、反 対の性の 役割をと りたい とい う気 持ち が強 く持続 するこ と、また は反対の 性で ある とい う 空想 を続け るこ と。
(
4
)反 対の性の 典型 的な ゲーム や娯 楽に加 わ りたい とい う強い 欲求。(
5
)反対の性の遊び友 達に な るの を 強 く好む、,青年期お よび成 人の場 合 、 以下の よう な症 状で表れ る :反対の 性に な りたい とい う欲 求 を口 にする、何 度 も反対の性 とし て通用する、反 対の性 とし て生 き たい 、 ま た は扱わ れた い とい う欲 求 、 または反対の性に典型的な気持ち や反応 を 自分がもっ て い る とい う確信。
B
。 自分の性に対する持 続 的な不快感、 ま た は その 性の 役割につ い て の不 適 切感f
’供の場合、障害は以 ドの どれか の形で表 れる :男の子の場合、 自分の陰茎また は精巣 は気持ち悪い 、 また はそれが なくな る だ ろ う と主 張 する、 また は陰 茎 をもっ て いない ほ う が よか っ た と主張 する、 または乱暴で荒々 しい遊 びを嫌悪 し、男の子に典 型 的な玩具 、ゲー ム、活動 を拒 否 する ;女の子の 場合、座っ て排 尿 する の を拒絶 し、 陰茎 を もっ て い る、ま た は出て くると主 張 する、ま た は乳 房が 膨 ら ん だ り、ま た は月経が始 まっ て ほ しくない と 主張 する、 ま た は普通の 女性の服装を強 く嫌 悪 する。青年お よび成 人の場 合、 障害は以下の よ うな 症状で表 れる :自分の 第
1
次お よび第2
次 性徴か ら解放 されたい とい う考え に と ら わ れ る (例 :反 対の 性 ら しくなるた めに、性 的な 特徴を身体 的に変 化 させ るホル モ ン、 了術 、ま た は他の 方法 を要求する)、ま たは 自分が 誤っ た性に生 まれた と信 じ る。C
.その障 害は、 身体 的に半 陰 陽を伴っ てい ない 。D
.その 障 害は、臨床的に著しい 苫 痛 、ま た は社会的、 職業的、ま た は他の 重要 な領 域 に お け る機能 障害 を引き起 こ してい る。特定不能の性同一性障害
Gender
ldentityDisorder
Not
Otherwise
Specified
こ の カ テ ゴ リーは、特定の 性同一性障害と し て 分類で き ない性 同一 性の 障害にコ ー ド番 号 をつ け る ため に入れられて い る。 例を あげる と、
1
.半 陰陽 状 態 (例 :ア ン ドロ ゲン不応 性症 候群 ま た は先 天性副腎過形 成)に、性 別に 関する不快感 を伴っ て い る もの2
.一過性の ス トレス に関連した服装倒錯行動3
.去勢や陰茎切除の考えに持続 的に と ら わ れ てい て、 反対の性の 特徴 を獲 得 したい欲 求 を伴っ てい ない もの 一233
一4
名 (31
%)が既 往で あっ た。MTF
は精 巣摘 出 、 甲状軟 骨切除、豊 胸 、脂肪吸引 、顔面 骨形成な ど さ ま ざ まで 、7
名とも少 な くとも2
回 以il
手術して いる。 一方 、FTM
の 場合 は 乳房 切 除の み で あっ た。 真鍋ら はこ の 聴取 結 果か ら、MTF
で は 社会 的適応 の悪 さ が 目立 ち、 頻回手術症の傾 向が あり、一方FTM
で は 発 症が比較的早 期、 性 白認 (筆 者注 :genderidentity
の訳 語v 性同 一一性の こ と)に揺る ぎ が ない と 述べ て い る。中塚ら (
2004
)の研 究は症例 数が多い の で 、真鍋 ら(
2000
)の研究と比較する と信頼性 が 高い だ ろ う。lll塚ら は、GID
者329
人 (FTM
:202
人,MTF
:127
人)に 自記式 質 問紙 調 査 ( 初 診 時年 齢, 性 別 違 和感の 白覚 , 恋 愛 ,性的指 向, 不登 校, 自殺 未遂 , 精 神科 的合併 症)
を行う と と も に臨床 解 析 を行っ た。 初 診II
.i
年 齢は、GID
者全体で は平 均 年齢27歳で あっ た。 こ の うち、FTM
群で は26
歳 (14
〜41
歳)、MTF
群で は32
歳 (15
〜61
歳)で、FTM
群が有 意に低か っ た。性別違和感に関して は、FTM
群は小 学校以前と答 え た もの が多 く (66
.8
%)、その ほ と ん ど が 思春期 以 前に性別違 利感 を自覚して い た。 一 方 、MTF
群で は性 別 違 和感 を自覚しは じ め た時 期は広範囲に 分布し てい た。 恋愛 、性 的 指 向に関して は、全体で は269
人 (81
、8
%)が経験 して いた が、MTF
群はFTM
群 に比べ る と恋 愛経 験が低率で あっ た。ま た、法 的な結婚 をした こ との あるもの は、FTM
群がll
人 (5
.5
%)で あっ たの に対 し、MTF
群は40
人 (31
.7
%)と多かっ た。 その理 由と し てMTF
群は世 間体や家の継承問題の ため に結 婚 し た ものが多いか らで あろ う と中塚 ら は推 測 し て い る。性的指 向に 関して も、FTM
群 とMTF
群 と に は有意 な差 が認め られた。FTM
群の93
.1
% が異 性愛・者で あるの に対 し、異性愛者のMTF
群は38
.6
% と低 率で あっ た。 これは、MTF
群は女性とし て 女性に向か う (精神的に同性愛 者)ものや、 性 同…性 は女性で あ る が 男性と し て女性 を求め るものや、低 性 欲の もの など性的指向が多様で ある こ と を 意味 し て い る。 不 登校 経 験 者は全 体の96
人 (29
.2
%)に み ら れ、 自殺 念慮は245
人 (74
.5
%) と非常に高率で あっ た。 自殺 未 遂や白傷 行 為の頻 度はFTM
群で高い傾向が 見 られた。 また、精神科的合併症に 関し て は、FTM
、MTF
と も に強 迫 神経 症や うつ 状 態が 多く、FTM
群が59
人 (17
.9
%)で あっ たの に対し、MTF
群で は32
人 (25
.2
%)と有 意に 高か っ たc これは、MTF
は女性 的な男性と して社会的に批判 された り、い じめ られた り する 可能性が高い か ら で あ る と巾塚 ら は推 測 し て い る。これ らの 結果を吟味 し て 、GID
者は不登校や 自殺 未遂など悲惨な 思春期 を送っ てい る場合が多い の で 、病 院だけで な く学 校や地域で の早 期対 処 を考え る時期が来て い る と巾塚ら は結 論づ けて い る。以上 、真 鍋ら (
2000
)と中塚 ら (2004
)の 報告 をま と め る と、FTM
群は性 同 一性に揺 るぎの ない 中核 群が 多 く、…方MTF
群は性 同一 性に揺 ら ぎ が あ る周 辺群が多 く、 性的指 向 も多様で あるこ と が分か る。 ま た、FTM
群とMTF
群とで共通し てい るこ と は、 どち らもい じ め や社会的批 判を 理 由とし て不登校に なっ た り自殺念 慮を持っ たりし た こ とが あ るこ とで ある。 つ まり、GID
者は か な り早い発達段 階か ら心理 的ス トレ ス の 多い 生活を 送っ て き て おり、 特に思春期に おい てGID
の生徒がか な り悲惨 な学 校生 活 を送っ て き た こ と が示 されて い る。 した がっ て 、今 後は養護教諭や ス ク ール カ ウン セ ラーが中心 となっ て学校教 育におけ るGID
者へ の支援を考え てい く必要が あ る。 加 えて 、MTF
の 定職率 の低 さを考え る と、経済的に ゆ とりの ある社 会生 活 を送 れる よ う キ ャ リア カウ ン セ リ ン グ などの就業支援も 重要に な る と考え られる。2
.性 役 割志 向 と人格 特性森 ら (
2005
)は、MTF
とFTM
の性 役 割志 向 (男性 性 ・女 性 性)と 人格特性を比較 検討し てい る。 森らは、都 内の 大学 病院精神科外来を
2002
年5
月〜2004
年3
月に初 診で 受診した
GID
者24
名 (FTMI5
名 ,MTF9
名 )に、男 性性 ・女性 性 を測るBen
〕のBSRI
(Bem
Sex
−Role
Inventory
)の 日本 語 版と、 神 経症 傾 向 、 外 交性 、 開放 性 、 調 和性 、 誠実性 とい う5
つ の 特 性 を測 るNEO
−FFI
(NEO
Five
Factor
Inventory
)の 凵本 語 版 を実施した。 これ らの結果か ら、FTM
の特 徴 とし て 、 一般 成人男女と比較し て 心理 的 デ ィ ス トレ ス に過 敏で 、ス トレス へ の対 処は下 手であるこ と、 女性 性が高い場合、 高 い 目標を達成する た め に一生 懸 命努 丿J
し、 几帳而で あ るこ と、 女性性が高い と伝統 的 ・ 保 守 的で あること が分か っ た。 一方、MTF
は に 関し てFTM
と同様の 結 果で あっ た が 、 控えめ で社会 的な刺 激 を避け、活 動性が低 く、般 成 人女性に比べ て仕 事や課題 を途 中で や め て しま う傾 向に ある/)ま た、倫理観や道徳的義務に は固執 しない 傾 向にある。 さ らに 、 女 性 性が高い
MTF
は低い達成 レベ ルで 満足 し て い るこ と が多 く、 仕事や課題 を最後まで や りとおす気 力が続か ない傾 向に あ る。FTM
・MTF
に共 通 し てい る こ と は、 一般成人男 女 と比 較 し て神経症 傾 向が高い こ とで あ る。 これらの調査結果か ら、GID
者に おけるス トレ ス 対処 法の 検討が必要で ある こ と、ま た女性 性の 高いMTF
に対 し て は、ガ イ ドライ ンに沿っ て最 後 まで治 療を続け てい け る よ うに援助 し て い く必要が あ る と森 ら は述べ てい る。神 経症 的傾 向が高 く、仕 事や課題 を最 後 まで やりと おす 気 力が続か ない
MTF
が、数年 に も及ぶ 、精 神 的に も経済 的に も負担の 大きい治療に悲 観 した り絶 望 したりする可 能 性は 非常に高い。 特に、将来 を悲観 し て の 自殺や自傷行 為は最も憂 慮すべ きこ と で ある。GID
者が 自殺 する こ と が ない よ う長 期的に心 理 的ケア をし て い くこ と が 必要で ある。 また、森 ら も述べ てい るが、現 代の 日本社会の 価値観を反映 した男性性 ・女性 性 を測 る 尺度の 開発 が今後の課題と な ろ う。N
GID
の発達
上の問 題性 別違和感 を主訴に し て精神 科 外来 を受 診 したり、 カ ウン セ リン グ にや っ て きた りする 人は今 後 ますます 増加し てい く で あ ろ う。 そ う なる と、各
GID
者の 発達段 階に合わせ た アセ ス メ ン トや心理 的ケ ア が今後よりい っ そ う求め られる と考え られる。 し た がっ て、 こ こ で は各発達段階に分けてGID
者の心 理的特徴につ い て考 察 したい 。 発達段 階の 区分 け につ い ては堂 野ら (2000
)を参考に し た。1
.幼 児期 ・児童 期乳 児は早い 段階で、人 人や年 長の子ども達との 関わ りを通し て 自分 自身の性 別 を意 識 し は じ め、
1
歳か ら3
歳まで に は、 心 理 ・社 会 的性の違い を認 識 するこ と に よっ て 、 自分の 性同一 性や性 役割 を理 解 しはじめ る (Allgeier
&Allgeier
,2000
)。 とい うこ と は、 中核 群に あ るGID
者が、 すで に幼 児期 ・児童 期に おい て 自分の 生物学 的性別と心 理 的性 別の 不一一致 を訴え る可 能性は高い 。 中塚ら (2004)に よる と、幼 少 期に 「なぜ お ちん ちん が な い の 」と聞い て 母親 を困ら せ た とい う話がFTM
当事者か ら頻 繁に報 告されて い る。東ら (
2001
)は、幼 児期に おける性 同一 性の 葛藤の特徴とし て 、 言葉で 表現された異 性にな りたい とい う欲 求 、 異性装 (筆者 注 :異性の服 を着るこ と)、 そのr
一 どもが同 一視する性別に合 わせ た遊 戯や玩 具での遊 び 、 指 定された性 別に合 うと通 常考え られて い る服 装や態 度、 遊戯などの回避 、 そのr
一ど もが同一視する性別と同じ遊び仲 間や友 達 を好む こ と、 身体的性的特徴や性的機能へ の嫌悪 を挙 げてい る。東ら に よ る と、女 児 よ 一 235 一りも男児の ほ う が
GID
の診 断 を受 ける こ と が多い が、これは女児が 「おてんば な女の 子」と して社会的に受 容 されるの に対 し、「女の子み たい な男の 子」は社会 的批 判 を受け る た め に受診 するもの と考えられる。 特に、
MTF
の男 児は家族や友だ ち、 ま た他 者か ら た びた び激 しい 排斥を受け ること か ら、すで に幼 少 期か ら抑うつ 的傾 向や不安傾 向 を示 す。 そ
して 、 これ らの 傾 向が、 後 に 自殺 念 慮へ と 発展する 可能 性が あ る (
Meyer
−Bah
正burg
,
2002
)。この時期の
GID
の特 徴とし て 、 診 断のむずか し さ が あ る。Tarver
II
(2002
)は 、こ の 時期における診 断は 、反 対の性の服装をし た が る とい っ た行 動 を観 察 するこ と に重 点が置 かれて い る が、後の青年期に その 子どもが異性愛者、 同性愛者、 両性愛者、 ま た は ト ラ ン ス ジェ ン ダ ー (GID
を含む)の どれに移 行するの か を知るこ と はで き ない と述べ てい る。 ま た、 診 断の むずか しさの理 由と し てMeyer
−Bahlburg
(2002
)は、幼児期 ・児童期に お ける性 同 ・性に関する障害が多 くの 場 合 思 春 期 まで に消 失 するこ とを挙 げて い る。Meyer
−Bahlburg
は 、 社 会生活E
困難の 多いGID
をで き る だけ早い発達 段 階で消 失 させ る よ うな治 療 を11
家族に行っ たL.内訳 は、DSM
−IV
に基づ い てGID
、 あるい は特定 不 能 のGID
と診 断 された3
歳11
か月か ら6
歳3
か 月 まで の 男児と その 家 族で あ る。Meyer
−Bahlburg
は、 父親との 良好 な関係 を発展さ せ るこ と、 同性の友 人と の良好な 関係を 発展させ ること、 典型 的な男 児の 能力と習慣 を発達 させ る こと、 同性の集団に適 応 さ せ る こ と、 男子で あ るこ と に満足 させ るこ と とい う5
つ の 目標 を家族に提示 し、 両親の 日記 を通して経過 を観察 する とい う方法 を取っ た。 その後 数年間電 話による追跡調査 を行っ た結果 、ユ0
人の 男 児が その後GID
の 再発は な か っ た。 こ の治 療に よっ て、 父と息子の 関 係が改善され 、父親に対する男 児の愛着が増 し た。それが、 結 果と し て男児が男性の心理 ・祉会 的性に適応す る要 因となっ た と
Meyer
−Bahlburg
は考 察 し て い る。 た だ し、Meyer
−Bahlburg
も指 摘 し てい るが 、思春期以後 も性 別違 和感 を抱え る 子 ど も た ち がい ることも .事実で あるcこ の
Meyer
−Bahlburg
(2002
)の研究は 両親が そ ろっ て い る家 族 だ け を対象と して お り、治療の効 果は両親が共に そ ろっ てい ること が条件で あると結論づ け られてい る。 言い 換え る と、父r
− ・母子 家庭 、ある い は機 能 不 全の家族にMeyer
−Bahlburg
の アプ ロ ーチ を行 うこ と は むずか しい と考え られる。Meyer
−Bahlburg
は こ の治 療 をマ ニ ュ アル 化す る予定で あ る と述べ てい る が、その場合 、多様な家族シ ス テ ムに も対応で き る ようなマ ニ ュ ァル が必要と な ろ う。 ま た、Meyer
−Bahlurg
(2002
)の研 究 を 見る と、 生 物学 的性に基 づい た社会適 応 をさせ てGID
を消失させ るこ と が果た し てGID
者に とっ て 望 ま しい こと なの か ど うか とい う疑問が残る。 最 終 的に性 別 違 和感が消え なか っ た1
例 を吟 味する必要 が ある だ ろ う し、治療に よ るGID
者たちの 心理的ス トレ ス の 調査 やよ り長い期間で の追 跡調 査 をしなくて はならない だろ う。ま た、 幼 少期か ら性 同 一 性に揺るぎが ない場合の 多 いFTM
女子 につ い ての 同様の研 究 も必要で ある。 さら に、小学校就 学 時にGID
者や性 別違和感 を抱く児童に対 する学校 側の対応につ い て も今 後研 究 し て い く必要が あ る。 加藤 (2001
)は、強い 性別違和感を抱えて い た あるFTM
が小 学校入学 時に男子児童 と し て 入学 したい と強 く希望 し、結果的に校長の配慮で 校 内で は男子と して扱わ れた とい う事例 を報 告 し てい る。今後は、GID
で ある児童や性別違和感を持つ 児 童に対する学校側の対応や 配 慮につ い て詳 細に吟 味 する必要が あ る。 加 えて 、家族や同胞の動揺や不安を軽 減 し、GID
につ い て 理解 ・受容で き る よ う な介入 に関する研究 も今後求め られる だ ろう。
2
.青年期一般的に青年期の 若者は、 身体 的 ・認知 的 ・社会 的に著 しく成長 し、ま た自我 同一一性獲 得の た めの 長い 葛藤の時 期へ と移 行 する。
GID
者 も青年期 特 有の危機に直 而 するわ けで あるが 、一般 的な若 者と比べ る と よ り困 難な青年 期 を送る で あ ろ う と考え ら れ る。 まず、 大 き な危機と して考 え られる こ と は、初 潮や夢精な どの 第2
次 性 徴が生起 する ことに よっ て性 別 違 和 感 が深 刻化する こ とで あろう。 中 塚 ら (2004
)に よ る と、 青 年 期に お けるFTM
群は月経や乳房 増 大に よっ て 精神状態が不 安 定 と な り、 月経時に は自殺し たい 、 内 臓 を掻き出し たい などの衝 動にか られ るこ と が あ る、 一方 、 青年期におけるMTF
群で は、 ひ げや変 声 、骨格の 変化な どに起因する焦燥 感が出現 し た り、女性的な男性とし て い じ め に会い 、その結 果 、2
次 的な精神科的合 併症 を発症 する場 合が多い 。田中 (
2001
)が報 告 した事 例で は、エ イズ恐怖と強 迫症 状 を主 訴に来 談 した中学生の ク ライエ ン トは、第2
次性徴を機に性別違 和 感が深刻な もの と なっ たこ と が分か っ た 。 思春 期に お け るGID
者の 心 理的ス トレス を考慮 して 中塚 ら (2004
)は、12
−13
歳に なれ ば生 物 学 的性の 性徴を促 進 させ ない ホル モ ン治療 (puber
七y
−delaying
hormones
)を開始す べ きで は なか ろ うか と提 言し て い る。次に、青年期の一般 的な特徴とし て、性的成 熟に伴っ て急 速に高ま る 「異性へ の 関心 」 が挙 げられる が (堂 野ら,
2000
)、恋 愛がGID
者に とっ て は新たな心 理 的ス ト レス を生 じ させ る可 能性が高い。な ぜ な ら、GID
者の 多 くが、精 神的 に異 性愛 者で あっ て も、 同性 愛者や両性愛者 、 ある い は無 性欲で あ る と誤 解 される可 能 性があるか らで あ る。GID
者 が社会 的 性に即 し た行動 をしない とい う理 由で 、 彼 ら に対する社会的批 判は同性愛者に対 するもの よ り も大きい (Fisher
&Akman
,2002
)。 こ の よ う な非常に厳 しい 状況に おい て 、GID
者の なか には、社会的支援や精神 的よ り所を求めて 同性愛者 の コ ミュ ニ テ ィに 身 を寄せ る もの がい る (Fisher
&Akman
,2002
;中村 ,2005
)。ところで 、梅 宮 (
2001
)は、高 年齢 受 診で あっ たMTF
2
人の 思春期エ ピソ ー ドを分析 した 。2
事例 に共通した思春 期エ ピソー ドと し て、 罪深い 自己、 嫌 悪、 性別違和感 の発生 と 恐怖の対象と し ての 自己性が挙 げられてい る。 の罪深い 白己と は、他者 (社会) に受け 入れ られるべ き存在と しての 自己に対 する価値づ け、 それ を満たせ ない 自己の発 見 、 ま た は社会的罰を受け るべ き存在として の 自己像の 形成 を意 味し てい るn の 嫌 悪の対象 は、2
事 例とも本質 的に男 性 、あるい は男の子集団 で あっ た。 特に興 味深い こ と は、性 的 指向が男 性で あ るMTF
は、 男性の 身体に嫌悪し て い るの で は な く、 女性とし て生 まれた か っ た がた めに男性の機 能 (子ど もを産め ない とい う機 能 )が自分に与え られてい る事実 に対 し て嫌 悪 を示し てい るこ とで ある。 につ い て言えば、2
事例とも思春期に強い性 別 違 和感 を抱 き はじめ、 異性装を行うように なっ たの も思春 期で あっ た。加え て、彼 ら は男 性集団内に おい て恐怖 を感じ て い る。 それは、MTF
は生物 学 的性で所 属 を余儀な くさ れ る (されよ う とする)男性集 団との 問に「意昧不明なギャ ップ」を感 じ、 それに恐 怖 す るの で はなか ろ うか と梅宮は考察し てい る。こ の よ うな思 春期エ ピ ソ ードか ら、望む性へ の 一体感や確信よ りは、 自分の生物学 的性、 また はその集 団へ の恐 怖が 思春 期前の 性別違 和感の 指標と して確認 されるべ きで ある と梅宮は強調し てい る。
青 年 期の
GID
者が抱え る別の大きな問 題は、 就 学 ・就 労の 困難 さ で あ ろ う (真 鍋 ら,2000
;中塚 ら,2004
)。 特に 、 制服、 運動、 学 用 品などに おい て男 女 差が明確な学校生活 は、GID
者に とっ て は非 常に心 理 的ス トレ ス を感じる場とな ろ う。 その よ うな 心 理的ス 一237
一トレ ス の結果 、不登 校や学校生活か らの脱 落、 あるい は低 学歴 に な る もの も多い (山 内 ら,
2001
)。さ らに、職場での 不適 応 も顕 著で ある。異性 装で は、 ト イレ に行っ たり、履 歴 書 を提出し たりする さい に、職 場や取 引先に混乱 を招き、 雇 用 者側か らGID
者が嫌煙 され る傾 向が あ り、結 果 的に定 職につ け ないGID
者が多 くな る(真鍋ら,2000
;[ll
内ら,2001
)。今後
GID
と診断された り、 強い性 別違 和感 を訴えた り す る 牛徒が増 加 する もの と考え ら れ る が、 田中 (2005
)は その よう な生徒に対 する学 校側の対応につ い て報 告 し てい る。 ある高等 学校 定時 制 課 程に おい て 、GID
が疑 わ れる異性装の女性 (25
歳)が 入学 を希 望 した, その生徒は 生物学的に は女性で ある が、外見 的 に は男性で あっ た。 入学 後 、その生 徒が女性と し て扱 われることに不 満 を示さなか っ た こ と と、 担 任が他の同級生 に、 その生 徒は外 見 ヒ男性に見え るが実は女性なの で女子 トイレを使 う と説明したこ とで学校 内に大 きな混 乱は引き起 こさ れ なか っ た。 結 局 、その 生徒は仕事が忙しくなり、ほ と んど学校に 来 るこ と は なく、夏休み前に は退 学 し て しまっ たe 田中は、教 帥 ・ス ク ール カ ウンセ ラー は原 則と し て学校 生 活で は 生物学的性が前 提と されるこ とを生徒に 理解 させ る とい う役 割 を担わ な け れ ば な ら ない と述べ て い る。 た だし、生徒の精 神 的苦痛が は なはだしい 場 合に は医師と連携をとる必 要が ある と し てい る。異性 装 を認め た場 合に は 、在校生 と その 保護 者の 理解 をい か に得るか が重要と なる。 また、 もしも トラ ン ス ジェ ン ダーの 生 徒 (GID
も含む)が高校へ の進学 を希 望した場 合 、その生徒に対する進 学相 談で は、 制服が ない 、 服装 ・頭 髪指 導が なく、比 較 的 自由な校風 を有 する、 男女共学 校 、 年齢 ・国籍な ど 多種 多様 な生 徒が集 まっ てい る、 受 け入れる教 職 員の側に トラン ス ジェ ンダーやGID
に関する 理解が あ る とい っ た点 を考慮にい れて の学校選 択が 必要で ある と田 中は述べ てい る。こ の 田中が報告し た事例は、 実質的に は学校 生 活に適応 し た と は言い が たい。 今 後は 、
GID
と診 断 さ れ た (あ るい はその疑い の ある)生徒が学 校牛活に適 応で き るた めの学校 側の 対応 に関する研 究が必 要とな ろ う、,特に学校現場に おいてGID
者が学校不適応 を理 由に不登 校や引きこ も りや自殺 をしないため に も、教師 ・養護教諭 ・ス クール カ ウ ン セ ラー の 連携が求め られよ う、ま た、GID
・者の 生徒が 孤 立 し たり、孤 独 感に苛 まれたりするこ と が ない よ うに 、GID
の 自助グル ー プや イン ターネッ ト に お け る ピア グル ープをGID
の 生徒に紹介するこ とも今 後必要と な るだろ う。 その さい 、自助グル ープや イン ター ネッ ト にお ける ピア グ ループの 問題 点 を吟 眛す る 必要が あ る (梅 宮,1999
)。 また 、就労 現場に おけるGID
者の適応と雇用側の対応に関する研究 も求め られる。3
.成 人 期青年期 と同様に成 人 期におい て も、
GID
者に とっ て 就 労は大きな 問題で あ る と考 え ら れる。 成 人 期に なる と、そ れ まで 生物学 的性で生活 し て い たGID
者が希望する性に移 行 する さい に就労場 面で 問題が生 じ る可 能性がある。 梅宮 (2001
)は、婚 姻経 験が あり、35
歳以降に性別変更を開始し た2
人のMTF
の 事例を報 告 し て い る。 両 事例 と も高学歴で専 門 職 とし て働い てい るこ とか ら、MTF
は高学歴 者が 多い こ とを特 徴に挙 げ、 高学 歴 者のMTF
は生物 学 的性に基づ い た社 会 適 応 を果たすことに よっ て高学歴や安定し た職 業 をT
に 入れて い る可能 性があ り、それゆ え、苫労して手に 入れた職 業 を危 険に さ らす実生活経 験の実 施に は注意 を払 う必要が あ る と梅 宮は警告 し て い る。事例B
は居住地を変え、男性 で あっ た自分の 姿が知 られてい ない 土地で再 就職 し た が、収入的に は かな りの減 収 と なっ た。 事例A
は、教 育職なの で 職場での フ ル タイム を断念 し て い る が、それに関わ る 心 理 的負 担はかな り大きい。
結婚生活 、あ るい は パ ー トナー との 生 活は、 成 人 期の 大 き な課 題で あ る。 山内ら
(
2001
)はGID
者の 心 理 的 特徴の1
つ に家 族やパ ー トナーと の葛 藤 を挙 げて い る。 中村 (2005
)は、パ ー トナーとの 性的 生活が よ り深 ま る なか で 、 自己の 性1
司一性を再構築 し て い っ た事例 をい くつ か報 告 し て い る。こ の 巾村が報告 し た事例で は 、付 き合っ た当初か らGID
、あ るい は トラ ン ス ジェ ン ダ ーで あ るこ とをパ ー トナーに受容されて い た。それで は、 結 婚 生 活の途中で配偶者が
GID
と診 断 されたり、 配偶者が性別違和感 を告 白した り し た場 合に はどの よ うな精 神 的状 況に陥るの であろ うか。 既 婚MTF
とその妻の 夫婦 関係につ いて 、 梅宮 (2002
)は貴重な事例 を報告し て い る。梅宮はMTF
を夫に持 つ 妻は、 婚姻 形 態の 破棄 を積極的に行 う場合 と、 夫との 婚姻 形態 に よっ て なに が し か の 利得 を得ており、その利得が彼女の生 活 を深 く支えてい る場合とい う2
種 類に人別で き る とし てい る。 通常 前者の 妻が ほ と ん どで あ る が、梅 宮が報 告 し た事例は後者で あ り、夫姉 関 係は非 常に よか っ た。 そこ で梅宮は、 夫 (MTF
)の性 別適合手術さ え も受容し てい る 女性が1
年 間つ けた 口記 を元にエ ピソー ド分析を行い 、彼 女が な ぜGID
の 夫 を容認したの か につ い て分析 してい る。 それによる と、 夫か ら性別違和感 を告自されて か ら夫の性 別適 合手術 を容 認 するまでの 心理的プロ セ ス は 、 夫に告 白された後の 動揺と悲 し み→ 抑 う つ 状態か ら陲眠薬に よる自殺 企 図→ 男 性の 姿とし て の夫が消え て い く悲 し さ→ 職場で 夫が受け た差 別に憤 りを覚える→ 夫へ の愛情の 変化→ 甲状 軟骨 縮小 術によっ て 夫の声 が女性化 すると知 ら されて動揺し刃物に よっ て 自殺企 図→ 夫婦 関係が家族 関係 (姉 妹 関 係)に移 行したこ とを認 識→ 夫の性別適合手術 を仕 方がない もの とし て受 諾する 、 とい うもの で あっk
、こ の プ ロセス をみ る と、2
回の 自殺未遂か ら妻は自分が愛 する (し てい た)夫に 「女 性 とし て」認め ら れ てい ない と感 じ た瞬 間か ら深刻な 心 理的危機に陥っ て い たこ と が 分か る。妻が こ のよ うな 心 理的 危機を乗り越えて 夫の 性別 適合 手 術を容認 し た大 き な要因は、 夫との 関係が夫婦関係か ら新 しい 家族 関係 (姉妹 関係)に変 化 したことで あ る と考え られる。 した がっ て、妻が心理的 危機 を乗 り越え、夫 との新 しい 信頼 関係 を築け る よ う に治療 者は尽 力すべ きで あ る と梅 宮は 強 調 して い る。こ の梅 宮 (
2002
)が報告 し た事例 に はGID
の 夫 を持つ 妻が陥る心 理 的危 機がよ く現 れ てい る。 今後GID
と診断 さ れ たり、性別違和 感 を訴 えたりする成人男女が増加する と考 え ら れ るの で、GiD
者の心 理的ケ ア と同様、その 配偶 者や パ ー トナ ーに対 す る 心 理的ケ ァの あ り方 を研究 し て い く必 要が あ ろ う。 特に、GID
の夫や妻が希望 する性に移 行 する 問 、その配偶 者やパ ー トナーが抑うつ状 態に なっ た さい に、 自殺を防止する た めの 介人が 重要で あ る。 また、梅 宮 (2002
)の 事例は深い愛情につ ながれた夫 婦 関係で あっ た が、そ うで ない場合に夫や妻か らGID
で ある と告 自さ れ た 配偶者やパ ー トナーが どの よ うな 心 理的プロセ ス を経る の か、新た な信頼関係 を築け るの か どうか、 信 頼 関係を築け た場合に は どの よ う な もの なの か につ い て の研 究が 必要で あ る。さ らに、配偶 者やパ ー トナーだけ で な く、GID
の 父 や母 を持つ 子 ど もの心 理 的 危機や 、 その 父や母とどの よ うな関係 を構 築するの かにつ い ての 研 究が求め られるu4
.老年期一般 的に言 っ て老年期に は、経 済生活 ・経済 保 証の 問題 ・心 身の健 康の 問題が成人 期よ りも大き な問題 と な り、職 業 的地位や対人関係 、社 会 的つ な が りとい っ た さ まざま な面で の喪失体験が増 えて くる (堂 野ら,
2000
)。老年期のGID
者 も同様の 問題 を抱え る と考え 一 239 一ら れ る が、
GID
者 特有の問 題 もあ るの で は な か ろうか 。 し か しなが ら、GID
者が 老年期 をどの よ うに乗 り越え てい くか につ いて の研 究は皆 無 とい っ て よい 。し た がっ て 、こ こ で は老年期に おい てGID
者が抱え るで あろ う と 思 わ れ る問題につ い て述べ てみた い 。まず、 老年期まで 自分が
GID
で ある と周囲に言え なか っ た場 合につ い て考え て み たい 。 老年 期 まで 同性 愛 者や両性愛 者が 家 族 や友人に 自分の 性的指向を打ち 明け られ なか っ た場 合 、 当事者はか なり深刻な 心理 的負 荷 を抱 える とKimmel
(2002)
は述べ て い る。 これは、 老年期のGID
者に も当て は まる場合が あ る だ ろ う。 中塚 ら (2004
) とLawrence
(2005
) の デ ータによる と、老年期に なっ て初めて精神 科 外 来 を受診 し た り性別適合手術 を受 けた りしたGID
者がい る。 今後、 老年期において性別違和感 を主訴に精神 科 外来やGID
専門 の 医療機 関に来 談 する人は増加する と考え られる。 その場合 、 体 力 的な 問 題 か ら どこまで 性 別 適合 手 術 をし たら よい かにつ いての綿密な打 ち合わせ と、 心理 的ス トレ スを軽 減 する た めの カウン セ リング が 必要と な る と考 えられる。ま た、も し もGID
者が老年期になっ て 自分が希 望する性へ と転換 し た とすれば、 それは、青 年がそ うする場 合に比べ て より強 い社 会 的批 判 を受け る 可能 性が あ る。GID
者の 精 神 的 健康 を保つ た め に は、GID
者の配 偶者や家族の理解 と援 助が重 要で ある。GID
・者の治療と同時に、 配偶 者や家族の動揺や 心理 的ス トレ ス も軽 減 する よ う な治療シ ス テム が求め られる だ ろ う.J次 に 、
GID
者が満足する老年期 を送る ため に 、社会生活に おい て希 望 する性 とし て生 活 し て い るGID
者の場 合につ い て 考 えてみた い 。 老年期に お け る同性愛者、両性 愛者、 トラ ンス ジェ ン ダーは社 会 的に疎外さ れ て孤 独で ある とい うイ メージが一般にある が、Kimmel
(2002
)に よ る と、実際に は彼らの 多 くが老年 期に おい て良好な精神 的健康を保っ てい る。 その要 因とし て は、 自助グル ープや友人 な どの社 会 的 支援 を持っ てい るこ と、 パ ー トナーと良好な生 活 を送っ て い るこ と、 長 年 心理的ス トレ ス に さ ら されて き た た め危 機処 理 能 力が高い こ と が挙 げ られる。今の とこ ろ、 希望 し た性で生 きて きた
GID
者がどの ような老 年期 を送っ てい るの か に つ い て の研 究は ほ と ん どない。希望 し た性で生 きて き たGID
者も同性愛者や両性 愛者 、 トラ ン ス ジェ ンダーと同じ よ う に良 好な精神 的健 康 を保っ てい る か ど うか につ い ての 研究 が 必要で あ る。 ま た、GID
者の 治療に役立て る た め に、希望 した性で生き て き た高齢のGID
者 とそ う で なか っ た高齢のGID
者が、どの ように 自分の人 生 を統合するの か を比 較 検 討す る 研究 も 必要 と な ろう。V
性別適合手
術後
の心 理的 変 化日本に お け る
GID
の 医療 的 治療で は、日本精神神経学会の 治 療基 準 (改 訂2
版)が中 心 的役 割を担っ て い る。 こ の 治療 基準の原型 は、 ア メ リカ のハ リー ・ベ ンジ ャ ミン国際性別 違 和 協 会 (
The
Harry
Benjamin
International
Gender
Dysphoria
Association
)の
S
亡and αrds (’f
Cαre’The
hormon
α1
αnd surgic αl
sex reassignment ofGender
Dysphoric
Persons
/SOC6
で あ る。こ の治療 基 準に従っ て 、GID
者は、 精神 科によ る心 理療法 、 婦人科 ・泌尿器科による ホルモ ン治 療 、 形成外科に よ る手術 療法 (性別 適 合手 術)とい う
3
段階の治 療 を受 ける。 多 くのGID
者は社 会 的に希望する性で認知される た め に性 別 適合 手 術 を希望 する。
MTF
の 場合の性 別適 合 手術は、 乳房増大、 大腸法や陰茎 皮膚 翻転 法に よ る膣形成 、 輪状 甲状 軟骨 接 近術や声 帯萎縮 法による音 声変調 、 レーザー法 や 電気 針法に よる不 再 生 脱毛 、 甲状軟骨突 起の縮 小形 成 術 を含む (梅宮,
2003
)。一方
FTM
の 場 合に は 、 乳房切除、 子宮卵 巣 摘 出 、 膣 閉 鎖 、 尿 道延長 、 陰 茎 形成の 手術が行われる (原 科,2001
)。性 別 適合 手術 を施 術 さ れ ること に よっ て希望 する性へ と転 換で き るこ と か ら、 性別適合 手術を希望する
GID
者は多い 。 それで は、性別適 合 手術 を受 けた前 後で は どの ような 心理 的 変化が 起 こ るの で あ ろ うか。
Lawrence
(2003
)、Rehman
et aL (1999
)、Smith
etal.(
2001
)の追 跡 調査 に よ る と、ほ と ん どのGID
者は性 別 適合手術の結 果に満足 し て お り、 性器 が通常の外 形で あるこ とに満足 し、 オ ーガ ズム を感 じられる よ う に なっ た と報告 し て い るc ま た、 社会生活も手術前と比べ て かな り改善し てい る。性的指 向や性 的 興 奮に 関し てLawrence
(2005
)は、性別適 合 手術 を施 術 し て もらっ たMTF
(232
例)の 追跡調 査 に よっ て 、 性 的 指 向が手術 後 変わ る ものが多か っ た こ と (例えば手術 前に異 性 愛 者は 全 体の54
%で あっ た が,手 術 後は25
%に なっ た。 一方 ,手術 前1
司性愛指向の もの は全 体の9
%で あっ た が, 手 術後は34
% で あっ た)、 手 術前に性 的 パ ー トナ ーがい ない割合は6
%で あ っ た が、手 術 後23
%に増加 したこ と、 手術前49
%のMTF
が異性装 をする とい う 性 的 空想に対し て性 的興奮を感 じ て い た が、 乎術後 同様の 性的空想 を持っ た もの は3
%で あっ たこと な どを報 告し てい る。また、Cuypere
e七al.(2005
)の報告に よ る と、 手術後 、GID
者の 関心が身体 的な事 柄よ り も情緒的 、社 会 的 な事 柄へ と変 化 したこ と、MTF
群 よりFTM
群の ほ う がマ ス タ ーベ ーシ ョ ン をする回数が 多かっ たこ と、 オーガズム の 形 態が変 化したこ と (MTF
群 は よ り オーガズ ム が大 きくなっ て時 間 的に も長 くなっ た。 一方、FTM
群は よ り強烈 なオ ーガ ズム を感 じ る よ う に な っ た が時 間 的に は短 くなっ た)、 手術 後MTF
群で は性 交の さい に膣液が分泌 され、FTM
群で は勃起と性交痛が報 告 さ れた とい う。日本にお け る性別適合手術前後の心 理 的変化に関す る研 究に は、梅 宮 (
2003
)の もの が ある。 梅 宮は 、輪状甲状軟骨 接 近術 を施 術したMTF
(40
歳 ,初回面接時36
歳)の 事 例 を 報 告 し てい る (輪状 甲状 軟 骨接近術 と は声帯 を外 科 的に伸 長させ て声の ピッ チ をあげるこ とで 低い声を 高 くする手術で ある)。 ク ライエ ン トは外見上女性と し て 認知 されるが、声 が重 厚な感じ で低かっ た。 希死 念 慮 を伴う抑 うつ 症状が きつ く、 来談1
年前に左 手 首切 傷 と大 量服 薬に よる自殺 未遂の た め緊急外来に て処 置 を受 けた。 輪状 甲状 軟骨接近手術後 、 ク ラ イエ ン トの 声の周波数は278Hz
(女性声と認 知 される範 囲 )に上 昇 した。 心理 的 変化 を 見る た め に梅宮は、Zung
の抑 うつ 尺 度 (SDS
) を用い た。 そ れ に よ る と、初 回面 接 時58
であっ た もの が、術 後 半年で41
に低下して い た。 また、不 再生 脱 毛や女性 声の獲得など の治療に よっ て、希死念 慮の消 失と社 会的 接触欲求の 亢進が認め られたtt した がっ て 、輪 状 甲状 軟骨接 近 手術はMTF
の 心理 的安 定 を確保 する有 効な手段で あ る と梅宮は結論づ け てい る。これか ら性 別違和感を主 訴に精神 科 外来 を受診した り
GID
と診 断されたりする人が増 加 すると考えられるの で 、 今後日本で も欧 米の よ うに性 別 適合手術後の心 理的変 化に関す る大規模な追跡 調 査が行 われる で あ ろ う。 その結果に よっ て は 、性別 適合手術の有 効性や 問 題 点が よ り明確に なるで あろ うし、ま たGID
者をと り ま く日本 特 有の 問題が浮か び 上 がっ て くるか もしれない 。 さ ら に また 、性 別適 合 手 術 後にお け るGID
者に 必要な心理 的 ケアや社会 的 支援シ ス テ ム の あ り方につ い ての研 究が求め られるだ ろ う。 一241
一V
[ 心理ア セ ス メ ン トに み るGID
の特徴
GID
の 心 理特 性 を明 らか にす るた めに、海外で はロ ール シ ャ ッ ハ テ ス ト、MMPI
、人 物 描 画テ ス ト (D
−A
−P
)が よ く用い られて い る (ILI
内ら,2001
)。 日本で も、1990
年 代か らGID
が社 会 的に 認 知 さ れ は じ め、ま た、精神 科 外来 を受診 するGID
者が増加 したこと で 、心 理 ア セ ス メ ン トを通 し てGID
の特徴 を考 察 し た研 究が報 告さ れ はじ め た。庄 野 (
2001
)は 、50
名のGID
者 (FTM
が31
名〈平 均 年 齢27
.6
歳〉、MTF
が19
名〈平 均 年 齢35
.3
歳〉)を対象に し て ロ ール シ ャ ッ ハ テ ス トとMPI
(モーズ レイ性 格検 査 ) を実 施した。 ロ ール シ ャ ッ ハ テ ス ト とMPI
の テス ト結 果で は、 際だっ た偏 りや特 異 な傾 向は 見られなか っ た。ロ ール シ ャ ッハ テ ス トで は精神病 圏 を示 すよ う な逸脱 し た反応 も見られ なか っ た。FTM
群とMTF
群 を比 較する と、FTM
群はテ ス ト時に情緒的に安定 し て い た 人 が多か っ た が、MTF
群で は情 緒 的に不安 定な 人 が多かっ た。 庄野はその理 由 として、FTM
の ほ うが 「少 しおて ん ばな女の 子」と して 社 会に容 認 されやすい が 、一方、MTF
は女の子 っ ぽい 言動か らい じめの対 象になりやす く、社会的に疎外された状 況に陥 りやす い こ とを挙 げて い る。FTM
群が情 緒 的に安定 し てい る も う1
つ の理 由とし て 、MTF
群 と比 較 する と、FTM
群で はパ ー トナーの い る人が多い こ と が挙 げられ る. さ ら に、FTM
群 とMTF
群との違い は、FTM
群が心理テ ス トで も精神医学 的診 断で もGID
と し て ま と まっ た特 徴 を示 したの に対 し、MTF
群は年齢層も広 く、心 理検 査に表わ さ れ た特 徴や行 動 而で のパ ターン が 多様で 、ま と まっ た結果は得 られなか っ た 。以 上の結果か ら、情緒的 に 不安 定なMTF
は特に注 意深 く援 助 し てい く必要が あ るv 福 井 ら (2002
)は ロ ール シ ャ ッ ハ テ ス ト を通してGID
に み る依 存 性につ い て吟 味 して い る。 それに よ る と、GID
者7
例 中 中核 群のFTM
2
人 は、ロール シ ャ ッ ハ テ ス トを受 け て い た さい 、 過 度に外的現 実 を意識 するこ と でテ ス タ ーへ の依 存 を統 制 し て い たよ うで あ るが
、周 辺 群のFTM
3
人 とMTF
2
人 は、 不随意 的 、他 動 的に テス ターへ の依存と退 行 が起 こ り、 内的 統合性を回復するこ と がで き なか っ た。GID
にみ られる依存性は 、症状 が 不安定で あ る周辺群 、ま たは 人格 障害 を併発 してい る群に おい て 明らか に み られるよう で ある と福 井ら は述べ て い るe以 上の 序 野と福井らの 研 究を ま と める と、
MTF
群は情緒的に不安定 なもの が多 く、か つ 依 存 性が高い傾 向が ある。FTM
群に は社会生 活E
問題が ない わけで はない が 、MTF
の 特 性 を考 慮 する と、MTF
に 対する 治療の あり方や 社会 生 活の適 応に関する研 究が急 務 で あろ う、、 また 、GID
者の 心理 特 性 を よ り吟味 する た め に、今後は u 一ル シ ャ ッ ハ だ け で な く 人物画や 自画 像な ど他の 投影法によるGID
の研 究 も行っ て い く必 要が あ る だ ろ う。W
GID
者に対 する心理的ケア楕円枠 を治 療 的コ ミュ ニ ケーシ ョ ンに利用 し た卵両と洞 窟 画 を考 案し た 田中
(
2001
) は、強追 症 状とエ イズ恐 怖 を 主訴と して来談した中学2
年生 (14
歳)の男児の事例 を報 告 してい るe ク ラ イエ ン トは幼 少期か ら母親と密着し た関係に あ り、 遊び友だちは女 子 ばか りで 、小 学校時代に は 「おか ま」と し て男子か らい じめられてい た。 来 談 時の ク ラ イエ ン トに は強い女 性 化傾 向が見ら れ た。 そこ で 、ク ラ イエ ン トの 強迫症状とエ イズ恐怖は、思 春 期GID
に起因し た もの で あっ た と 田中は考えて い る。面接は週1
回1
時 間で 、約2
年 間行 われた。 ク ライエ ン トが神 経 質で非常に緊張 し て いたの で 、田 巾は言 葉に よ る面接で は な く、樹 木 画 、ス ク イッ グル 、卵 画 、洞 窟画 、雨 巾人物 画 をかい て も らっ た (スクイッグル を描い て もらっ た後ク ラ イエ ン トに物 語を作っ て もらっ た)。