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Part 1 2 Part Tortora GJ 8 332, , , , , vol.3 1 MED C MED A 174, Column 1 G P GLP G P

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(1)

報道関係者向け資料

徹底解説

インスリン

エネルギーの源「糖」を取り込むために

孤軍奮闘する“代用品”なきホルモン

‥‥‥‥

P2

インスリンの血糖調節作用 肝臓、筋肉、脂肪へと働きかけ 血糖値を一定に保つ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P4

糖尿病とインスリン インスリンが枯渇する

1

足りない、効きが悪くなる

2

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P6

インスリン抵抗性と肥満 肥大化した脂肪細胞が出す “悪玉”物質が糖の取り込みを阻害 ‥‥‥‥‥‥‥‥

P8

発見までの道のり 死の病だった糖尿病と 奇跡のホルモン、インスリン ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P10

生合成・分泌・構造 膵臓にある膵島のβ細胞が分泌

51

のアミノ酸でできている‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P12

「インスリン」とは

Part

Part

インスリン療法

分泌量が低下したインスリンを補充

初期・中期では膵臓を休ませる効果も

‥‥

P14

インスリン療法の“誤解”を解く 「使い出したらやめられない」 というのは本当か?‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P16

インスリン製剤の進歩① 不純物との闘いと 作用持続化のための工夫 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P18

インスリン製剤の進歩② “ヒト”インスリンを求め 遺伝子工学の力を借りる ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P20

インスリン製剤の進歩③ アナログ製剤が可能にした 効きめが速く&長く効く ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P22

デバイスの開発 ペン型注入器の進化で実現 痛み少なく簡便、安全・確実 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P24

インスリン療法の実際 多様な製剤を組み合わせ きめ細やかな治療が可能に‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

P28

インスリン療法の現在と未来 超速効型と持効型を

1

本のペンで 使いやすく、低血糖のリスクも低減 ‥‥‥‥‥‥

P30

ontents

(2)

「体内のインスリン量がゼロ」という状態が続いたら、ヒトは早ければ

1

2

日で死に至る。

これほどまでに直接的、かつ短期間に生死を揺るがすインスリンは、

糖代謝に欠かせない、唯一無二のホルモンだ。

Part

Ⅰでは、インスリンの働き、インスリンの作用不足が招く病態、

そもそもの発見の経緯から体内での生合成・分泌のメカニズムまで、

体内物質としてのインスリンについて、紐解いていこう。

エネルギーとして

糖を取り込む

ためのホルモン

血糖値を下げる

エネルギーとして

糖を使う

ためのホルモン

血糖値を上げる

 からだ中のさまざまな細胞は、寝ているときもエネルギ ーを消費し続けていて、その多くはブドウ糖(グルコース、 以下「糖」と表記)を利用している。特に脳細胞はエネルギー 源の多くを糖に依存しているし、赤血球は糖しか利用でき ない。つまり、常に一定量の糖を確保し、貯蔵しておくの は、生命維持に欠かせない。  インスリンは、食事などから得た糖を、エネルギー源と してからだに取り込むように働きかけるホルモン。血液中 の糖の濃度、血糖値の上昇を合図に膵臓のβ細胞が分泌し たインスリンは、肝臓や筋肉をはじめとするからだ中のさ まざまな細胞に糖を取り込ませ、その結果として血糖値を 低下させる。  このような重大な役割を担うインスリンには、“代役”が いない。主に小腸が分泌するインクレチンは、インスリン 分泌を促し血糖値を低下させるが、直接糖をからだに取り 込ませることはできない。  一方、貯蔵していた糖を血液中に取り出して使える状態 にする、つまり血糖値を上げるホルモンは、いくつも存在 する。成長ホルモン、グルカゴン、アドレナリン……。それ ぞれ、いつ、どのように働くかは違っていても、体内での糖 に対する作用は、インスリンとは真逆だ。

飢餓と闘ってきた人類が獲得した

多数の血糖値上昇システム

 エネルギーの確保と消費。どちらも生命活動には欠かせ ないはずなのに、これらをコントロールするホルモンが“

1

対多数”なのは、なぜだろうか。  それは、人類の飢餓の歴史と深く関連しているようだ。 太古の人類は、いつもお腹を空かせていた。エネルギー源 である糖は不足しがちだった。だから生きるためには、い つ、どこで獲物を見つけても全力で追いかけて捕え、身の 危険を察知すれば全力で逃げきらなければならなかった。 つまり、瞬時に血糖値を上げて全身にエネルギーを補給す る能力が必要だったというわけだ。そうして人類には、生 命を守るための安全機構として、血糖値を上げるための仕 組みがいくつも備わったのではないかと考えられている。  このような「いつも糖が足りない状況」では、糖があり余 る状況は想定外であり、血液中から糖を取り込んで血糖値 を下げる仕組みは、インスリン

1

つで“間に合っていた”。

飽食が招く高血糖が

省エネ体質のからだを蝕む

 現在、世界を見渡せば飢えに苦しむ人も少なくないが、 日本を含む多くの先進諸国では食べ物が容易に手に入る し、交通網の発達などによりからだを動かす機会も減った。 我々の脅威は「飢餓」から「飽食」へと変化し、太古に獲得し た“省エネ体質”のからだは今や、エネルギー源である糖を 処理しきれないほど抱え、血糖値が高い状態が続く「高血 糖」と、それによるトラブルに脅かされるようになった。  このような変化は、第

2

次世界大戦後約

70

年に起きたこ とであり、人類の誕生から約

600

万年という進化の歴史か ら考えれば、ほんの一瞬だ。人類が長い年月を経て獲得し てきたからだの仕組みが、その一瞬で変わるわけもない。  エネルギー源としての糖をからだに取り込んで血糖値を 下げるという重要な役割を担い、ほかのホルモンでは代用 できない唯一のホルモン、インスリンは、孤軍奮闘、生命維 持のために日々闘い続けている。

エネルギーの源「糖」を取り込むために

孤軍奮闘する“代用品”なきホルモン

Part

インスリン

とは

olumn

C

 「ホルモン」と命名したのは、英国ロンドン大学の生理 学者、アーネスト・スターリング。刺激する、興奮させる という意味のギリシャ語「ホルマオ」に由来する。「50m プールに水を満たしたところにスプーン1杯分を溶かし たくらい」と例えられるほどわずかな量で、絶大な効果 を発揮する。  以前は、内分泌臓器と呼ばれる視床下部や脳下垂体、 甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓、精巣、卵巣などから分泌 され、血流にのって遠く離れた標的細胞に届いて作用す ると考えられていたが、全身の至るところで作られ、す ぐそばの細胞、あるいはホルモンを作る細胞そのものに も作用を及ぼすことが分かってきた。ホルモンは、その 構造によって、大きく下記のように分類される。

ホルモンって何?

生体に

100

種類以上存在

生命情報を伝えるメッセンジャー

ホルモンの種類 ●ペプチドホルモン ペプチドで構成。インスリン、成長 ホルモン、グルカゴン、ソマトスタ チンなど。 ●ステロイドホルモン コレステロールを材料に作られる。 副腎皮質ホルモン、性腺ホルモン、 ビタミンD3など。 ●アミノ酸誘導体 アミノ酸の構造の一部が変化したも の。アドレナリン、ノルアドレナリ ン、甲状腺ホルモンなど。 ●プロスタグランデン 全身の臓器や組織で、アラキドン酸 などから作られ、局所で多彩に作用。 (参考文献:日本内分泌学会のウェブサイトhttp://square.umin.ac.jp/endocrine/、 寺本民生他編集:講義録内分泌・代謝学メジカルビュー社:2-6, 2005、清野 裕他編集:ホルモンの事典朝倉書店:5-6,335, 2004、R Murray 他著、清水孝 雄監訳:イラストレイテッドハーバー・生化学原書29版丸善出版:257-258, 2013) 膵臓からインスリン 膵臓に散在するランゲルハ ンス島のβ細胞(膵β細胞) が分泌。血糖値上昇に伴い 速やかに分泌される。さま ざまな体細胞に作用。糖か らグリコーゲン(糖の重合 体)への合成速度を上げる。 小腸からインクレチン

G

P

GLP-1

栄養素の摂取が刺激となり 分泌。膵β細胞に働きかけ てインスリンの分泌を促 す。食後のインスリン分泌 量の20∼60%は、GⅠPと GLP-1のインクレチン作用 によるもの。 脳の下垂体前葉から成長ホルモン 肝臓、筋肉、軟骨、他の組織を刺激し、インスリ ン様成長因子(ⅠGFs)を合成、分泌させる。ⅠGFs は肝臓でのグリコーゲンの分解を促し、糖が血 中に放出される。 甲状腺から甲状腺ホルモン 消化管からの糖の吸収を促進。エネルギーとな るATPを生み出すために、糖や脂肪酸の消費を 促す。全身のほとんどの細胞に作用する。 副腎からコルチゾール 肝細胞に働きかけ、ある種のアミノ酸や乳酸を 糖に変換する。これを神経細胞や他の細胞が ATPの産生に用いる。 副腎からアドレナリン(エピネフリン)と ノルアドレナリン(ノルエピネフリン) ストレスが高い状況や運動時に分泌。この2つ が 闘争か逃走 反応の増強に関与。心拍出量を 上げ、血流量を増やし、血糖値を上げる。 膵臓からグルカゴン 膵臓に散在するランゲルハンス島のα細胞(膵 α細胞)が分泌。肝臓でのグリコーゲンの分解 を促し、ある種のアミノ酸や乳酸を糖に変換す る。糖を肝臓から放出し血糖値を上げる。 [参考文献] 1)  Tortora GJ 著、佐伯由香他編訳:トートラ人体解剖生理学原書8版丸善出版: 332,336-337,340-342,344-345, 2011 2) 門脇孝他編集:カラー版糖尿病学基礎と臨床西村書店:56, 2007 3) 医療情報科学研究所編集:病気がみえる vol.3 第1版代謝・内分泌疾患 MEDⅠC MEDⅠA:174, 2004

血糖値に関連するホルモンとその働き

123

(3)

解説

肝臓、筋肉、脂肪へと働きかけ

血糖値を一定に保つ

インスリンの血糖調節作用

 どんなに安静にしていても、寝ているときも、からだは 一定量のエネルギーを消費し続ける。それをまかなうため に、肝臓は毎分

1.8

2.2mg/kg

の糖を全身に供給し続け る1)。一方、膵臓のβ細胞は、肝臓からの糖の放出量と全身 における糖の取り込み量を適合させるために、常に一定量 のインスリンを分泌している。これをインスリンの「基礎 分泌」という。  食事をすると、血液中の糖の濃度、血糖値が上昇する。そ れに呼応してインスリンが「追加分泌」されて肝臓に入り、 肝臓からの糖の放出を抑えると同時に、肝臓への糖の取り 込みを促す。約

50

%の糖は肝臓に取り込まれ1)、残りは肝 臓を通り抜けて全身へと流れゆく。これもまた、インスリ PartⅠ

インスリン

とは

血糖値とインスリン分泌量の日内変動と、血糖値安定のメカニズム

ンの追加分泌によって速やかに全身の細胞に取り込まれ、 血糖値が下がる。  

1

24

時間の絶え間ない糖の消費に備え、糖の貯蔵庫とな るのはまず肝臓、そして骨格筋だ。糖は重合して「グリコー ゲン」に姿を変え、肝臓には約

100g

、骨格筋には合計約

400g

が蓄えられる2)。それでも余る分は肝臓や脂肪細胞でグリセ ロールに変えられ、中性脂肪として脂肪細胞に貯蔵される。  このように、インスリンの基礎分泌と追加分泌によっ て、空腹時の血糖値は通常

70

100mg/dL

くらいに収ま る。健康な状態(健常者)なら、たまに

1

食抜いても、暴飲暴 食をしても、この範囲から大きく外れることは、ほとんど ない。

「分泌不全」と「抵抗性」で高血糖

過剰で低血糖に

 からだを維持し活動するのに必要十分な糖があり、余剰 分は適切にストックしておける。これが本来あるべき姿だ が、そのバランスが崩れてしまうとどうなるのか̶̶。  食後であろうと空腹時であろうと、血糖値が高い「高血 糖」状態が続く病気、糖尿病の多くは、血糖値上昇に見合う 量のインスリンが分泌されなかったり、分泌が遅れたりす る「分泌不全」と、分泌されたインスリンの効きが悪い「抵 抗性」の

2

つに起因する。  肝臓は、空腹時には蓄えたグリコーゲンのほか、アミノ 酸や乳酸、ピルビン酸、グリセロールなどから糖を合成(糖 新生)し、放出する作用も持つ。これも、大切なエネルギー 源としての糖を確保するために人類が獲得した「血糖値を 上げる仕組み」の

1

つである。インスリンは、血糖値を下げ るだけでなく、血糖値が上がり過ぎないように、この糖新 生を抑える役目も担っている。インスリン分泌不全や抵抗 性があると、肝臓は必要以上の糖を放出することになり、 高血糖を助長する。  食後にだけ血糖値が高くなる「食後高血糖」は、インスリ ンの分泌不全が始まったサイン、すなわち膵臓の機能低下 の第一歩と考えられている。  高血糖の逆、「低血糖」は、糖尿病の薬物療法に伴って起 こることが多い。経口血糖降下薬やインスリン注射で治療 中の人が、食事を抜いたり激しい運動をしたり、あるいは薬 の量を間違って多く使ってしまった場合、血中にある糖の 量に比し、過剰なインスリンが存在することになり、低血糖 に至る。低血糖を放置し、血糖値が

70mg/dL

以下になると 空腹感、あくび、悪心など、

40mg/dL

以下になると冷汗、動 悸、震えなど、

30mg/dL

以下になると意識消失、異常行動な どが現れ、最悪の場合は昏睡状態から死に至ることもある。 [参考文献] 1) 日本糖尿病学会編:糖尿病専門医研修ガイドブック改訂第6版診断と治療社:25, 2014 2)  Harvey RA 他編、石崎泰樹他監訳:イラストレイテッド生化学原書5版丸善出版: 158, 2011 肝臓から出る糖の量≒全身で使われる糖の量 肝臓からは一定量の糖が放出される。インスリンの基礎分泌は、糖の 放出量が増え過ぎないように働く。 糖はまず肝臓に取り込まれ、肝臓を通り抜けた糖は、インスリンの追 加分泌の作用によって骨格筋や脂肪細胞に取り込まれる。 肝臓から出る糖の量>全身で使われる糖の量 膵臓 肝臓 24(時) 0 6 12 18 朝食 昼食 おやつ 夕食 血糖値 基礎分泌 追加分泌 インスリン分泌量 血糖値とインスリン分泌量の1日の動きを 模式化。健常な状態では常に一定量のイン スリンが分泌される(基礎分泌)。食事で血 糖値が上昇すると、上昇分に見合う量のイ ンスリンが分泌される(追加分泌)。 空腹時 グリコーゲンの 分解を抑える 余った糖は 骨格筋や脂肪細胞へ 全身の細胞へ 糖を供給 インスリンの 追加分泌 食後

インスリンは「同化ホルモン」

 血糖値が下がるのは、インスリンの作用によって全身の細 胞が糖を取り込み、貯蔵する結果だが、インスリンがコント ロールしているのは糖代謝だけではない。インスリンは、た んぱく質や脂質の代謝にも関与する。  たんぱく質については、肝臓や骨格筋でのたんぱくの合成 を促す。脂質については、脂肪組織での脂肪(脂肪酸、グリセ ロール、中性脂肪)の合成を促す。  総じていうとインスリンは、からだの中に入ってきた栄養分 をからだ中の細胞に取り込ませて貯蔵する働きを持つ。この ような作用を「同化」と呼ぶ。インスリンは「同化ホルモン」だ。  同化の逆の過程、貯蔵した栄養分を切り崩して利用する作 用は「異化」と呼ぶ。インスリンは、肝臓での糖新生にかかわ る酵素の抑制、インスリン拮抗ホルモンの作用による、糖、ア ミノ酸、たんぱく質の分解の抑制̶̶といった異化過程の抑 制作用も持っている。  各組織での代謝に対するインスリンの作用を、右表にまと めた。  (参考文献:葛谷健編:インスリン分子メカニズムから臨床へ講談社サイエンティフィ ック:90-92, 1996、小澤 司他総編集:標準生理学医学書院:979, 1985) インスリンの代謝に対する作用 筋肉 糖の取り込み促進、グリコーゲンの合成促進 アミノ酸の取り込み促進、たんぱく質の合成 促進、たんぱく質の分解抑制 ケトン体の利用促進、 カリウムイオンの取り込み促進 脂肪組織 糖の取り込み促進 脂肪酸合成の促進、リポたんぱくリパーゼの 活性化、脂肪分解の抑制 肝臓 グリコーゲンの合成促進、解糖の促進、 糖新生の抑制 脂肪の合成促進 たんぱく質の合成促進 ケトン体生成の抑制 その他の組織 たんぱく質の合成促進、成長促進 インスリン 糖(ブドウ糖) グリコーゲン 骨格筋 脂肪細胞 肝臓 グリコーゲンの 分解によって 生じた糖を放出 全身の細胞へ 糖を供給 膵臓 インスリンの 基礎分泌 骨格筋 脂肪細胞 (参考文献:葛谷健編:インスリン分子メカニズムか ら臨床へ講談社サイエンティフィック:91, 1996より 改変)

(4)

解説

インスリンが枯渇する

1

足りない、効きが悪くなる

2

糖尿病とインスリン

 糖尿病は「インスリン作用不足による慢性の高血糖状態 を主徴とする代謝疾患群」と定義される。糖尿病にもいく つかの種類があるが、生活習慣の変化を背景に、患者数が 急増しているのが

2

型糖尿病だ。インスリンの作用不足を 来す遺伝因子に、過食や運動不足、肥満やストレスなどの 環境因子、加齢の影響を受けて発症する。全糖尿病患者の

90

95

%を

2

型糖尿病が占める1)。  一方、

1

型糖尿病は、主に自己免疫による膵β細胞の破壊 が原因で、絶対的なインスリン不足に陥る。突然発症する 「劇症

1

型糖尿病」や、発症当初は

2

型糖尿病と同じような症 状を来すが、数年に渡って徐々に膵β細胞の機能が低下 し、最終的には「インスリン療法」(

P14

から詳しく解説)が 必須となる「緩徐進行

1

型糖尿病」もある。いずれの

1

型糖尿 病も、自らの膵β細胞からはインスリンがほとんど分泌さ れないという状態を呈する。  その他、遺伝子異常や、他の疾患や条件に伴い発症する 場合もある。  「妊娠糖尿病」は、胎盤から分泌されて血糖値を上げるよ うに作用する「インスリン拮抗ホルモン」の影響などで高血 糖が続く状態を指す。高血糖状態は母体だけでなく児の発 育にも影響を与え、産後にいったん改善しても、一定期間 後に糖尿病を発症するリスクが高いことが知られている。

アジア人は糖尿病になりやすい

遺伝的素因を持つ

 今、世界的に患者数が急増し、社会問題となっているの が

2

型糖尿病だ。国際糖尿病連合によると、成人(

20

79

歳)における世界の糖尿病人口(推計値)は

2015

年現在約

4

1,500

万人で、成人人口の約

8.8

%を占める。今後も増え 続け、

2040

年には約

6

4,200

万人、成人人口の約

10.4

% に達するという。  日本の糖尿病人口は

2015

年に約

720

万人となり、その数 は世界第

9

位にランクイン。糖尿病人口

1

位の中国は約

1

960

万人とすでに

1

億人を突破、

2

位のインド(

6,920

万人) も、

2040

年には

1

2350

万人になると見込まれる2)。  中国、インド、日本など、アジアの国々で糖尿病人口が急 増しているのはなぜか。実は、アジア人の持つ遺伝的素因 そのものが糖尿病のリスク因子になっており、我々アジア 人は、そもそもインスリンを分泌する能力、インスリン分 泌能が西洋人よりも低いことが確認されている(

P7

グラフ 上)。  脂肪の貯蔵の仕方も西洋人とは異なる。アジア人は、糖 尿病をはじめとする生活習慣病のリスクを高める“悪玉”物 質を出す内臓脂肪が、からだのクッションになる皮下脂肪 よりも付きやすい3)。だからアジア人の場合、少し太るだ けで糖尿病の危険信号がともる。実際、糖尿病患者の平均

BM

Ⅰ(注1)を比べてみると、西洋人の

30

前後(米国

32.3

、英国

29.4

)に対し、日本人は

23.1

だ4)5)。

2

型糖尿病は

10

年超の月日を経て進行

発症時の膵β細胞の機能は半分?!

2

型糖尿病は、静かに進行する。インスリン抵抗性が増す に従い膵臓に負荷がかかり、インスリン抵抗性を代償すべ くインスリンの分泌量が増える。  しかし徐々に膵β細胞は疲弊し、十分なインスリンを出 せなくなってしまう。するとますますインスリン抵抗性は 増していく。

2

型糖尿病との診断がつくころ、“沈黙の臓器” と呼ばれる我慢強い膵臓の機能(膵β細胞の機能)は、約半 分にまで低下していると考えられる(グラフ下)。

1型糖尿病と2型糖尿病の比較

1 2 発症年齢 ・小児から思春期に多い・中高年にも認められる・若年発症も増加40歳以上に多い 発症機構 ・主に自己免疫による膵β細胞の 破壊 ・ ヒト白血球抗原(HLA)などの 遺伝因子+何らかの誘因、環境因子 ・インスリン分泌の低下や インスリン抵抗性をきたす 複数の遺伝因子+環境因子 (過食や運動不足) 家族歴 ・血縁者の糖尿病は2型より少ない ・血縁者にしばしば糖尿病あり 病態 ・インスリン分泌が消失、 絶対的欠乏 ・インスリン分泌の遅延・低下 +インスリン抵抗性 肥満度 ・肥満とは関係ない ・肥満または肥満の既往が多い PartⅠ

インスリン

とは

日本人はインスリン分泌能が低い

0 0 30 60 90 120 (分) 50 100 (mU/L) 血中インスリン濃度 ■西洋人 0 0 30 60 90 120 (分) 50 100 (mU/L) 血中インスリン濃度 正常耐糖能 耐糖能異常 2型糖尿病  ■日本人 75g経口ブドウ糖負荷試験(注2)後2時間の血中インスリン濃度を、西 洋人と日本人それぞれ、正常、2型糖尿病の一歩手前の状態にある境界 型(耐糖能異常)、2型糖尿病の場合で比較。

(左はTripathy D et al.:Diabetes 49(6):975-980, 2000より改変

右はFukushima M et al.:Diabetes Res Clin Pract 66 Suppl1:S37-S43, 2004より改変)

[参考文献]

1)  CDC:National diabetes fact sheet:national estimates and general information on diabetes and prediabetes in the United States:11, 2011 2) 国際糖尿病連合(http://www.idf.org/):Diabetes Atlas 第7版

3) Tanaka S et al.:Acta Diabetol 40 Suppl1:S302-S304, 2003 4) Sone H et al.:Lancet 361(9351) :85, 2003

5) Saydah SH et al.:JAMA 291(3):335-342, 2004

2型糖尿病発症時、膵β細胞の機能は半減

250 200 150 100 50 0 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 (年) 相対値 インスリン抵抗性 インスリン分泌量 膵β細胞の機能 糖尿病発症 膵臓の機能(膵β細胞の機能)とインスリン分泌量、インスリン抵抗性 について、経年的な相対値を示したもの。インスリン抵抗性が高まる とインスリンの必要量が増えるため、膵β細胞に負担がかかる。一定 年数を経ると膵β細胞は疲弊し、インスリン分泌量が減少。糖尿病発 症時、膵β細胞の機能は正常時の約半分に。

(Kendall DM et al.:Am J Med 122(6 Suppl):S37-S50, 2009)

インスリン分泌指数、

HOMA-R

HOMA-

β

 糖尿病の診断には、空腹時血糖値や随時血糖値、直近1∼2 カ月の平均血糖値を反映するHbA1c(ヘモグロビンエーワ ンシー)、75g経口ブドウ糖負荷試験の値を用いる。  これらとは別に、インスリン分泌能やインスリン抵抗性に ついて詳しく知るために、臨床の現場では、以下の検査値も 用いられる。  「インスリン分泌指数」は、インスリン追加分泌の初期分泌 能を反映する。75g経口ブドウ糖負荷試験負荷後30分の血中 インスリン値の増加量を血糖値の増加量で割ったもので、糖 尿病患者ではこの値が0.4未満となる。  「HOMA-R」は、インスリン抵抗性の指標となる。インスリ ン抵抗性が強い(インスリンの効きが悪い)場合、空腹時の肝 臓からの糖の放出を抑えるインスリン基礎分泌は、効果を補 おうとして増えるため、この値が高くなる。1.6以下が正常、 糖尿病では2.5以上になる。なお早朝空腹時の血中インスリ ン値が15μU/mL以上なら、明らかなインスリン抵抗性の存 在が考えられる。  「HOMA-β」は、膵β細胞のインスリンの分泌能を反映す る。正常範囲は40∼60。  HOMA-RもHOMA-βも、血糖値上昇とインスリン分泌が 直線的に増加することを前提としている。そのため、糖尿病 が進行して十分なインスリンが出ていない人には適応できな い。HOMA-Rは空腹時血糖値が140mg/dL以下、HOMA-β は同130mg/dL以下なら信頼性が高い。 インスリン 分泌指数 = Δ血中インスリン値(30分値−0分値)(μU/mL Δ血糖値(30分値−0分値)(mg/dL

HOMA-

β=空腹時インスリン値(μ

U/mL

)×

360

空腹時血糖値(

mg/dL

)−

63

HOMA-R

=空腹時インスリン値(μ

U/mL

)×  空腹時血糖値(

mg/dL

/405

1型、

2型以外の糖尿病

・遺伝子異常によるもの インスリンを分泌する膵β細胞の機能にかかわる 遺伝子異常、インスリン作用の伝達機構にかかわ る遺伝子異常などが原因。 ・他の疾患、条件に伴うもの 膵外分泌疾患、内分泌疾患、肝疾患、薬剤や化学物 質によるもの、感染症、免疫機序によるまれな病 態、その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの 多いもの。 ・妊娠糖尿病 妊娠中に初めて発見、または発症した糖尿病に至 っていない糖代謝異常のこと。妊娠を機に糖代謝 異常が顕在化することが多い。産後いったん改善 しても、将来糖尿病を発症するリスクが高い。 (日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2016-2017 文光堂: 13-15,93-95, 2016より改変)

(注1)BMⅠ:Body Mass Ⅰndex=体重[kg]÷身長[m]÷身長[m]。

18.5未満がやせ、18.5以上25未満が普通、25以上が肥満。 (注2)75g経口ブドウ糖負荷試験:早朝空腹時に75g相当のブドウ糖 が入った甘い飲料を一気に飲み、その後の血糖値の推移を調 べる試験。 (参考文献:日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2016-2017 文光堂:11-12, 2016、日 本糖尿病学会編:糖尿病専門医研修ガイドブック改訂第6版診断と治療社:55, 2014) [この見開き全体の参考文献] 日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2016-2017 文光堂: 2016

(5)

解説

肥大化した脂肪細胞が出す

“悪玉”物質が糖の取り込みを阻害

インスリン抵抗性と肥満

PartⅠ

インスリン

とは

インスリン抵抗性は高血圧、脂質異常とも深い関連

 糖尿病や肥満もさることながら、高血圧や脂質異常症につ いてもインスリン抵抗性の存在は見逃せない。  血圧を上げる調節機構、「レニン・アンジオテンシン系」に よってインスリンの標的細胞内でのシグナル伝達は抑制さ れ、インスリン抵抗性を引き起こす。一方で、インスリン抵抗 性に引き続いて起こる高インスリン血症は、腎臓からのナト リウム排出を抑制したり、交感神経を亢進させるなどのさま ざまな作用によって高血圧を招く。  インスリン抵抗性は、脂肪の合成と分解のバランスも崩す。 毛細血管内皮細胞の表面にあり、血液中の中性脂肪を分解し て細胞内に取り込む「リポたんぱくリパーゼ」は、インスリン 抵抗性によって産生も活性も低下するため、血中の中性脂肪 は行き場をなくす。また、脂肪細胞が分解して生じた遊離脂 肪酸は肝臓へ流れ込み、中性脂肪が作られ肝臓に貯め込まれ る。  まさにインスリン抵抗性は、メタボリック症候群とは切っ ても切り離せない関係にあるといえる。

インスリン抵抗性は高血糖を招く

血糖値が高くなるのを合図に膵臓はインスリンを出す。 インスリンは骨格筋に作用して、血液中の糖を取り込ま せる。やがて血糖値は、正常範囲内に戻る。 血糖値が高くなるのを合図に膵臓はインスリンを出す。 インスリンは骨格筋に作用して、血液中の糖を取り込ま せようとするがうまく取り込まれず、高血糖になる。 インスリンの効きが正常(例) インスリン抵抗性がある(例) (mg/kg・min) 0 糖の取り込み率 健常者 糖尿病患者 1 2 3 4 5 6 7 脳 骨格筋 脂肪組織 内臓  少々耳慣れない言葉であり、その意味するところもやや 理解しづらい「インスリン抵抗性」について、あらためて整 理しよう。インスリン抵抗性とは、標的となる細胞でイン スリンが効きにくい状態にあることを指す。これを「イン スリン抵抗性がある」「インスリン感受性が低下している」 などと表現する。  インスリンの作用によって糖を取り込む最大の組織はか らだを動かす筋肉である骨格筋で、健常者では、肝臓を通 過して全身で利用する糖の約

7

割を骨格筋が取り込む。と ころが、糖尿病患者では骨格筋での糖の取り込みが健常者 の約半分になっている(右グラフ)。つまり、インスリンが 全身で糖を取り込ませようとする主な標的は骨格筋であ り、ここでの糖の取り込みがうまくいかないこと、すなわ ち骨格筋におけるインスリン抵抗性が、高血糖を引き起こ す大きな要因となる(下図)。なお、脳はインスリンの存在 にかかわらず糖を取り込んでいる。

脂肪細胞の働きは

大型か小型かで異なる

 なぜインスリン抵抗性が生じるのか。ここで大きくかか わってくるのが肥満、中でも内臓脂肪の蓄積だ。  エネルギーが過剰になると、脂肪細胞は肥大化する。こ れを「大型脂肪細胞」と呼び、正常な状態にある脂肪細胞は 「小型脂肪細胞」と呼ぶ。脂肪細胞は、単なるエネルギー貯 蔵庫ではなく、さまざまな生理活性物質を分泌する内分泌 器官として働くが、同じ脂肪細胞でも大型か小型かによっ て、その働きは大きく異なる。  小型脂肪細胞は、インスリン抵抗性を改善する“善玉”の 生理活性物質「アディポネクチン」などを分泌する。一方、 大型脂肪細胞は、インスリン抵抗性を増悪する“悪玉”の生 理活性物質「

TNF

α」「

PA

-1

」などを分泌する。  これらの悪玉生理活性物質は、インスリンが標的細胞の 表面にある「インスリン受容体」に結合したとき起こる細胞 内のさまざまな反応を阻害し、糖を取り込みにくくする。

すべては相互に関連し合い

悪循環を形成する

 このような状況を打破すべく、インスリン抵抗性の進展 に伴い、膵β細胞はより多くのインスリンを分泌する。し かしそれも、やがて限界を迎える。インスリン分泌不全に 陥り高血糖状態が続くと「糖毒性」が生じ、膵β細胞が傷つ けられ機能が低下する。  正常にインスリンが分泌されていれば、インスリンは脳 に対して食欲抑制ホルモンとしても働く。これが足りなく なるということは、肥満を誘発する原因にもなる。  脂肪細胞でインスリンは、脂肪の合成を促し分解を抑え るように働くが、インスリン分泌不全になると脂肪の分解 が進み、「遊離脂肪酸」を血液中に放出する。この遊離脂肪 酸も

TNF

αや

PA

-1

同様、筋肉や肝臓で悪玉物質として作用 して糖の取り込みを阻害し、膵β細胞の機能を低下させる。  肥満、インスリン抵抗性、インスリン分泌不全、糖毒性、 β細胞の機能低下……。これらすべてが悪循環を形成し、

2

型糖尿病の発症や重症化を来している。

(Kahn SE et al.:Nature 444(7121):840-846, 2006)

38人のインスリン非依存型糖尿病患者(標準体重)と年齢 を合わせた33人の健常者にグルコースクランプ試験(注)を 実施した結果から解析。 (DeFronzo RA:Diabetes 37(6):667-687, 1988) (注)グルコースクランプ試験:インスリンを持続的に注入し、からだの 中のインスリン濃度を一定にしたうえで、糖も注入して血糖値を 一定(例えば90∼100mg/dL程度)に保つ試験法。この時に必要な 糖の量(注入グルコース量)の多少でインスリンの効き具合を判断 する。注入グルコース量が少なければインスリンの効きが悪い(イ ンスリン抵抗性が高い)ということ。

肝臓通過後の糖の約7割は骨格筋へ

糖尿病患者の糖取り込みは健常者の半分

高血糖 になる 糖があまり 取り込まれない インスリン を分泌して いるのに…… 血糖値 上昇が 伝わる 糖 血糖値 は正常 糖を取り込む インスリン を分泌 血糖値 上昇が 伝わる

インスリン分泌不全に続く

肥満とインスリン抵抗性、高血糖

膵臓 インスリン 分泌不全 食欲増進、肥満 インスリン抵抗性 肝臓 糖を放出(糖新生) 高血糖に 骨格筋 糖の取り込みが低下 高血糖に 脂肪細胞 脂肪分解促進 遊離脂肪酸を放出 インスリン 抵抗性、 膵β細胞の 機能低下 膵臓 膵臓 血管 血管 骨格筋 骨格筋 [この見開き全体の参考文献] 藤田敏郎監修:目で見る脂肪細胞とインスリン抵抗性メディカルレビュー社:2007 (参考文献:藤田敏郎監修:目で見る脂肪細胞とインスリン抵抗性メディカルレビュー社:2007)

(6)

olumn

C

死の病だった糖尿病と

奇跡のホルモン、インスリン

発見までの道のり

 生命活動の根源を支えるエネルギー代謝と深く関連し、 その作用不足が糖尿病をはじめとするさまざまな病態と関 連するホルモン、インスリン。その発見は、医学の分野にお ける最大の発見の

1

つといっても過言ではない。先人たち は、どのようにしてインスリンを発見したのか。インスリ ンが発見されるまで、糖尿病患者の末路は――。

糖尿病と膵臓の関連が分かり

膵臓抽出物からインスリンを発見

1869

年、膵臓に、これまで知られていない小さな細胞の 塊が点在することを見つけたのは、当時ドイツのベルリン 大学の学生だったパウル・ランゲルハンス。しかし、その 働きについて、ランゲルハンスは分からなかったという。 この小さな細胞の塊は、糖代謝に関係する物質を分泌して いるのではないかと考えたのは、フランスのグスタブ=エ ドュアルド・ラゲスだ。

1893

年、ラゲスはこれを「ランゲ ルハンス島」と命名した。  糖尿病と膵臓のかかわりを最初に指摘したのは、ドイツ の医学者、オスカー・ミンコフスキーとヨーゼフ・フォン・ メーリング。

2

人は

1889

年、膵臓を摘出した犬が、もれな く糖尿病になることを確認している。  ミンコフスキーは、膵臓を摘出した犬に膵臓の抽出液を 投与したら、糖尿病を阻止できないかと考え、実験を繰り 返したがうまくいかなかった。その後も多くの学者が同様 の実験を行い、糖尿病を阻止する物質を見出そうとした。  そして

1921

年、ついにインスリンを見つけたのがカナ ダの外科医、フレデリック・グラント・バンティングと医 学生のチャールズ・ハーバード・ベストだ。トロント大学 教授のジョン・ジェームズ・リチャード・マクラウドに実 験の場を提供してもらったバンティングは、ベストととも に実験を繰り返した。  バンティングは、犬の膵管(消化液の膵液を分泌するた めの管)を縛り、膵液を出す外分泌細胞を萎縮・退化させた 残りの細胞から、血糖値を下げる内分泌物質が得られるの ではないかと考えた。十分に萎縮・退化した膵臓からの抽 出物を、膵臓を摘出して糖尿病を発症させた犬に投与した ところ、一時的ではあるものの血糖値が下がった。  

2

人はこの内分泌物質を、

islet

(小島)を語源に「アイレチ ン」と名付けたが、マクラウドはアイレチンの名を採用せ ず、ラテン語の

insula

(島)を語源とする、エドワード・シャ ーピー=シェーファーが発表した「インスリン」の名で世界 に発表し、以後この物質はインスリンと呼ばれることにな った。  そして

1922

年、ついにインスリンがヒトに投与された。 最初の患者は、

14

歳の少年、レナード・トンプソンだった (以後の経緯は、

P18

から参照)。

飢えで死ぬか、糖尿病昏睡で死ぬか……

治療法は「飢餓療法」しかなかった

 そもそも、人類が糖尿病の存在を知ったのはいつか。紀 元

1

世紀、ギリシャ人の医師アレタエウスは、とめどもなく 口が渇き、頻尿・多尿となるこの疾患を「肉体と手足が尿中 に溶出する病気」と記述している。栄養物が利用されず、ま るでからだがサイフォン(ギリシャ語で

diabetes

)になり、 蜜のように甘い(ラテン語で

mellitus

)尿が出て行くことか ら、「

diabetes mellitus

」(糖尿病)の名が付いた。  

20

世紀初頭までには、医療機関での定期検査や、生命保 険加入時の検査として尿検査が行われるようになり、厳密 ではないが、中等度以上の糖尿病患者数が把握できるよう になった。世界の国々が豊かになり、栄養状態が良くなる につれて糖尿病患者は増え、

1920

年までには工業国人口に 占める糖尿病患者の割合は、

0.5

2.0

%に達していたとい う。  しかし、人類の歴史から考えれば、

90

余年前という“ごく 最近”のインスリン発見まで、糖尿病患者は過酷な運命を 背負っていた。発症すれば重症化する一方で、特に若年者 では、診断後の余命がわずか

1

年足らずしかなかったとも いわれている。  からだは糖をエネルギー源として取り込めない場合、脂 肪細胞を分解し脂質を利用しようとするが、副産物である 酸性物質の「ケトン体」が血中に増えてしまい、血液が極端 に酸性に傾く「ケトアシドーシス」を引き起こす。すると、 全身のさまざまな器官の働きが低下し、その影響が脳にま で達すると、昏睡状態(糖尿病昏睡)に陥り、死に至る。  先人たちはさまざまな治療法を試みた。酸性に傾いた血 液を中和するためにアルカリ液(重炭酸ソーダ)を投与した が、深い昏睡状態にはまったく効果なし。尿に出て行く栄 養を補わなくてはならないという発想から、大量の糖質を とるよう患者にすすめた結果、かえって寿命を短くしたり。  延命効果が期待できる唯一の治療法は、米国の糖尿病研 究者、フレデリック・マディソン・アレンが提唱した「飢餓 療法」だった。過剰な栄養分がからだに負担を与えて病態 を悪化させるという考えに基づき、患者がぎりぎり生きて いける限界まで摂取エネルギー量を制限。飢餓療法はそれ までに試みられてきた治療法よりは有効だったが、それで も通常

2

3

年、重症例では

2

3

カ月の延命効果しかなか った。厳格な飢餓療法を行えば、最悪の結果餓死してしま う。糖尿病昏睡で死ぬか、飢餓で死ぬか。インスリン発見 以前の糖尿病患者の末路は、この

2

つしかなかった。 PartⅠ

インスリン

とは 中央は膵臓を摘出した犬のマージョリー。  インスリンの発見は、医学史に金字塔を打ち立てる大偉業の 1つとなった。発見者のバンティングは1923年、研究の場を与 えたマクラウドとともに、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。  インスリン関連の研究は、生命科学の進歩そのものにも大き く貢献し、これまでに7つものノーベル賞に輝いている(表)。英 国ケンブリッジ大学のフレデリック・サンガーがインスリンの アミノ酸配列を、英国オックスフォード大学のドロシー・マリ ー・クロウフット・ホジキンがインスリンの立体構造を同定。 インスリンは、たんぱく質として、初めて構造が明らかとなっ た物質でもある。  放射性同位元素を使い、ホルモンや生理活性物質の量を測定 するラジオイムノアッセイも、米国ブロンクス在郷軍人病院の ロザリン・サスマン・ヤーロウとソロモン・アーロン・バースン によるインスリン抗体の発見がきっかけとなった。米国ロック フェラー研究所のロバート・ブルース・メリーフィールドは、 酵素やホルモンを効率よく作りだす「固相法」によるペプチド合 成法を開発、効率よくインスリンを作りだすことに成功した。

インスリンとノーベル賞

科学の進歩に大きく寄与したインスリンの発見

インスリン関連でノーベル賞が

7

つも! (参考文献:丸山工作:新インスリン物語東京化学同人:1992) [この見開き全体の参考文献] 丸山工作:新インスリン物語東京化学同人: 1992 マイケル・ブリス著、堀田饒訳:インスリンの発見朝日新聞社: 1993

インスリン発見までの道のり

西暦 出来事 1869年 ドイツのP.ランゲルハンスが膵臓に新たな細胞群を発見 1889年 ドイツの膵臓のかかわりに気付くO.ミンコフスキー、J.F.メーリングが糖尿病と 1893年 フランスの胞群にランゲルハンス島と命名G=E.ラゲスがランゲルハンスの見つけた細 1918年 英国のからの内分泌ホルモンとして「インスリン」命名E.シャーピー=シェーファーがランゲルハンス島 1921年 (インスリン)の抽出に成功カナダのF.G.バンティングとC.H.ベストが膵臓エキス 1922年 14のヒトでの効果を初めて確認歳のL.トンプソンにインスリンを注射し、インスリン 西暦 分野 受賞者(国籍) 授賞対象 1923 生理学・医学 F.G.バンティング(カナダ)、 J.J.R.マクラウド(カナダ) インスリンの発見 1947 生理学・医学 C.F.コリ、G.T.コリ夫妻(米国) 糖代謝の研究 B.A.ウセイ (アルゼンチン) 糖代謝と脳下垂体ホルモンとの関係の研究 1958 化学 F.サンガー(英国) インスリンのアミノ酸 配列を同定 1964 化学 D.M.C.ホジキン(英国) インスリンの立体構造 同定 1977 生理学・医学 R.S.ヤーロウ(米国) ラジオイムノアッセイ 法の開発 1980 化学 W.ギルバート(米国)、 F.サンガー(英国) 核酸の塩基配列の決定に関する研究 1984 化学 R.B.メリーフィールド (米国) 固相反応によるペプチド合成法の開発

バンティング(右)とベスト(左)

(7)

糖 GLUT2 脱分極 インスリン 糖代謝 ATP K+ Ca2+ ATP感受性 カリウムチャネル カルシウムチャネル電位依存性

膵臓にある膵島のβ細胞が分泌

51

のアミノ酸でできている

生合成・分泌・構造

 インスリンを分泌する膵臓は、いわば消化酵素の塊のよ うなものだ。体外へ取り出した膵臓を、もしも常温で放置 しておいたら自らの消化液で溶けてしまうほど。この消化 液を作る外分泌器官「腺房細胞」が膵臓の大半を占める。腺 房細胞の合間にポツポツと点在するのがインスリンを出す 内分泌器官の「膵島(ランゲルハンス島)」だ。  ランゲルハンス島は、

4

種類のホルモン分泌細胞を含ん でいて、インスリンのほか、グルカゴン、ソマトスタチン、 膵ポリペプチドを分泌している。多くの内分泌器官は、脳 の下垂体前葉から出るホルモンの指令を受けてホルモンを 出すが、膵島では少し事情が異なる。血糖値の変動そのも のが最も重要な“指令”となり、血糖値が高くなればインス リン、低くなればグルカゴンを出す。  インスリンを出すのは膵β細胞(β細胞)で、膵島全体の

70

80

%1)。β細胞の中で作られたインスリンは細胞内の 分泌顆粒にためられていて、分泌顆粒は必要に応じて細胞 膜表面まで移動し、中のインスリンを血液中に放出する。 健常なヒトの場合、β細胞には

5

日から

1

週間分のインスリ PartⅠ

インスリン

とは ンが予備として蓄えられているという2)。  血液中に放出されたインスリンは門脈を経て肝臓へ入り、 肝臓で約半分(

40

60

%)が取り込まれたのち、全身へと運 ばれる1)。そして骨格筋などの標的細胞に到達して作用を発 揮する(

P12

図)。

アミノ酸の

2

本の鎖で構成

ヒト、ブタ、ウシ、魚……種が違っても効く

 インスリンは、

51

個のアミノ酸でできている。

2

つのア ミノ酸の鎖、

21

個のアミノ酸からなる

A

鎖と

30

個のアミノ 酸からなる

B

鎖を、イオウ原子が

2

カ所で橋渡ししたような 形(

S-S

結合)をしている。  もともとは「プレプロインスリン」という

110

のアミノ酸 が連なった

1

本鎖が作られ、ここから「シグナルペプチド」 が切り離されて「プロインスリン」に。インスリンが分泌顆 粒に貯蔵される段階になると、プロインスリンの

2

カ所が 切り離され、インスリンが出来上がる(下図)。  切り取られた残りのアミノ酸からなる

1

本鎖は「

C

ペプチ ド」と呼ばれ、

C

はコネクティング(連結)を意味する。

C

ペ プチドは、インスリンと同じだけ血液中に分泌され、ほと んど分解されずに血液中を循環して尿とともに排出される ので、血液中や尿中の

C

ペプチド濃度は、インスリンの分泌 能の指標としても使われている。  インスリンは、脊椎動物全般に存在する。種が違えばア ミノ酸配列に多少の違いはあるものの、ヒトとブタではた った

1

カ所、ヒトとウシでは

3

カ所のアミノ酸が違うだけ で、あとは同じだ(下表)。糖尿病の治療にブタやウシのイ ンスリンが用いられた時代もあったことからも明らかなよ うに、インスリンは種を超えて効く。その昔には、魚のイン スリンが治療に使われたこともあったという。  インスリンは生命維持の根幹にかかわる物質だけに、進 化の早い段階で基本的な構造が決定し、それによりこのよ うな“互換性”が得られたのかもしれない。ちなみに、直ち に生命にかかわるわけではない成長ホルモンは、ウシのも のはヒトに効かないがヒトのものはウシに効くという“上 位互換性”を持っている。

インスリンの生合成から分泌、全身への作用まで

1 膵臓と周辺臓器のつながり、β細胞の

ヒトインスリンの構造

構造と、β細胞が分泌したインスリン のからだの中での流れは下記の通り。 [参考文献] 1)  谷健編:インスリン分子メカニズムから臨床へ講談社サイエンティフィック: 18,51, 1996より改変 2) 二宮陸雄他:糖尿病とたたかう KKベストセラーズ:165, 2005

ヒトとブタは1つ、ヒトとウシは

3つのアミノ酸が違うだけ

A8 A10 B30 ヒト スレオニン イソロイシン スレオニン ブタ スレオニン イソロイシン アラニン ウシ アラニン バリン アラニン 小腸 α細胞とδ細胞で膵島の約15∼20%。 グルカゴンを分泌。 α細胞 α細胞とδ細胞で膵島の約15∼20%。 インスリンとグルカゴンの分泌を調節す るソマトスタチンを分泌。 δ細胞 でんぷんを分解する膵アミラーゼ、たん ぱく質を分解するトリプシン、キモトリ プシン、中性脂肪を分解する膵リパーゼ などの消化液を分泌。 腺房細胞 膵島の約5%。膵液の分泌を抑制する作 用などを持つ膵ポリペプチドを分泌。 PP細胞(F細胞) 標的細胞 腺房細胞の間に点在する内分 泌器官。1つの大きさは、75% は直径160㎛以下だが、直径 400㎛のものも。膵臓全体の 1%を占め、重量は1∼1.5g。 膵島(ランゲルハンス島) 約半分(40∼60%)が肝臓で取り込まれ たのち、血流にのって全身へ。標的細胞 にあるインスリン受容体にインスリンが 結合すると、標的細胞内に糖が取り込ま れ、エネルギー利用や貯蔵、たんぱく質 の合成、細胞の増殖など促す。 β細胞が分泌したインスリンは…… 脾臓 血管 肝臓 膵臓は、胃の裏側に位置し、 十二指腸につながっている。 膵島の70∼80 %を占め、イン スリンを分泌。 β細胞 インスリン受容体 糖 インスリン 膵臓

解説

糖によるインスリン分泌メカニズム

 血糖値が上がると、β細胞では何が起こりインスリンが分 泌されるのか̶̶。  糖はβ細胞にある糖輸送体「GLUT2」から取り込まれ、代謝 されてATPが産生する。細胞内にATPが増えると、「ATP感受 性カリウムチャネル」が閉鎖され、カリウムイオン(K+)の移 動量が減る。すると、本来あるべき細胞膜内外の電位差(分 極)が浅くなる「脱分極」が起こり、「電位依存性カルシウムチ ャネル」が開き、カルシウムイオン(Ca2+)が細胞内に取り込 まれる。細胞内のカルシウムイオン濃度が増える刺激で、イ ンスリンを貯蔵している分泌顆粒が細胞内から表面に移動 し、インスリンが分泌される(右図)。 N端末 S S S S 10 1 5 10 15 15 20 25 30 21 A鎖 B鎖 シグナルペプチド プロインスリン プレプロインスリン

インスリン

Cペプチド S S (参考文献:清野裕著:日本内科学会雑誌 93(9):21-32, 2004、 門脇孝他編集:カラー版糖尿病学基礎と臨床西村書店:37-38, 2007)

(8)

療法を行わなくても直ちに生死にかかわるわけではない が、血糖コントロールにインスリン療法が選択される。例 えば、経口薬療法で血糖コントロールがうまくいかなくな ったときなどで「相対的適応」と呼ばれる。  なお特別な例として、妊娠中の糖代謝異常がある。妊娠 前から糖尿病になっている「糖尿病合併妊娠」と、妊娠中に 発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常の「妊娠糖尿 病」、そして、妊娠時に発見された明らかな糖尿病がある。 いずれの場合も、妊娠中から授乳期にかけての治療は、経口 薬の胎児・乳児への影響を考慮し、インスリン療法を行う。

重症化してからだけでなく初期にも

インスリン療法は行う意義がある

 インスリン療法以外の治療法では、インスリン抵抗性の 改善、膵臓に直接的あるいは間接的に働きかけてのインス リン分泌促進、インスリンの分泌を阻害する働きの抑制、 食後および空腹時の高血糖の抑制を目的にしている(下 表)。ここで注目したいのは、これらの薬は膵臓の機能があ る程度残っている状態でなければ効果が期待できないとい うこと。それだけに、糖尿病の初期から中期の段階が主な 適応となる。  一方、「インスリンの分泌能がない、あるいは極めて低下 した状態」は、インスリン療法の絶対的適応である。そのせ いか、「インスリン療法は重症になってからの治療法」とい うイメージを持つ向きもあるが、これは正しくない。イン スリンを補うことで膵臓を休ませてやり、機能を回復させ るという目的で、治療の初期から用いることも多々ある (

P16 17

参照)。  あらためて言うと、インスリン療法とは、「からだに足り ないインスリンを外から補充して、健常な血糖コントロー ルを再現する治療法」である。治療に用いるインスリン製 剤中のインスリンは、私たちのからだに存在するものと基 本的には同じだ。後述のインスリンアナログ製剤では構造 の一部が異なるが、その体内動態はからだが作りだすイン スリンに、より近い(

P22 23

参照)。  製剤開発の初期に使われていたブタやウシのインスリン 製剤(

P18-19

参照)ではアレルギーなどの副作用が懸念さ れたが、ヒトインスリン製剤やインスリンアナログ製剤で は、そうした問題はほとんど起こっていない。ただし、必要 以上に投与すると、効き過ぎて低血糖を起こすこともある。  つまり、最も気を付けるべき副作用は低血糖であり、投 与量に注意すれば、進行した場合だけでなく、初期にもイ ンスリン療法は有効な治療法となる。  膵臓が分泌するインスリンには、

1

24

時間、一定量を 分泌し続ける「基礎分泌」と、食事をしたとき一時的に分泌 する「追加分泌」がある(

P4

参照)。糖尿病になるとこれらが 足りなくなるので、足りない分だけ注射で補うという至っ てシンプルな治療法が「インスリン療法」だ。  

1

型糖尿病では、インスリン分泌がまったくなくなる、あ るいは分泌していてもごくわずかな量しかないため、健常 な状態に比べて、圧倒的なインスリン不足に陥る(下グラフ 左)。多くの場合、発症当初から基礎分泌と追加分泌の両方 を補う、強化インスリン療法が必要となる。  一方

2

型糖尿病の場合、特に比較的初期の段階であれば、 基礎分泌はあるが、追加分泌が足りないというケースが多 い(下グラフ右)。追加分泌が不足していれば、その分を補 充する。しかし

2

型糖尿病でも、適切な治療を行わないまま 放置し、膵臓の機能が著しく低下すると、

1

型糖尿病と同 様、インスリンの分泌がほとんどなくなることもある。そ うなってしまうと、

2

型糖尿病でもインスリン療法が必須 となる。  このように、

1

型、

2

型に関係なく、インスリンが絶対的 に欠乏し、インスリン療法なしでは生きていけない状態に あるのが「インスリン依存状態」で、インスリン療法の「絶 対的適応」となる。(

P15

上表)。  一方、インスリンの絶対的欠乏はなく、相対的に不足し ている状態は「インスリン非依存状態」と呼ぶ。インスリン

インスリンの発見は、糖尿病患者を死の淵から救った。

足りない分のインスリンを適切なタイミングで補う「インスリン療法」によって

健常な血糖コントロールの実現が可能に。糖尿病は、うまく付き合っていける病気になった。

Part

Ⅱでは、薬剤としてのインスリンの役割や糖尿病治療におけるインスリン療法の意義、

そして“より安全でナチュラル”

“より生理的な分泌に近い”製剤の開発、使いやすさ、

続けやすさの追求

――

といった、

「薬」としてのインスリンの進化について紹介する。

分泌量が低下したインスリンを補充

初期・中期では膵臓を休ませる効果も

Part

インスリン療法はいつどのようなときに行うか

絶対的適応と相対的適応

絶対的適応 1インスリン依存状態 2高血糖性の昏睡(糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症 候群、乳酸アシドーシス) 3重症の肝障害、腎障害を合併しているとき 4重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例な ど)のとき 5糖尿病合併妊婦(妊娠糖尿病で、食事療法だけでは良好な血糖 コントロールが得られない場合も含む) 6静脈栄養時の血糖コントロール

(Polonsky KS et al.:N Engl J Med 318:1231-1239, 1988より改変)

インスリン製剤とその他の糖尿病治療薬の作用

インスリン製剤 体内にあるべき量のインスリンを、あるべきタイミングで補う ビグアナイド薬 肝臓での糖新生(糖の放出)や消化管からの糖の吸収を抑制、末梢組織のインスリン抵抗性を改善する チアゾリジン 大型脂肪細胞を減らすために重要な、細胞内にある核内受容体リン抵抗性を改善する PPARγを活性化して脂肪細胞の分化を促し、インス スルホニル尿素薬(SU薬) 膵β細胞膜上のSU受容体に結合してインスリンの分泌を促す 速効型インスリン分泌 促進薬(グリニド薬) 膵β細胞膜上のSU受容体に結合してインスリンの分泌を促す DPP-4阻害薬 インスリン分泌を促すホルモン、インクレチン(GLP-1、GⅠP)を分解・不活性化する酵素、DPP-4の作用を阻害する GLP-1受容体作動薬 GLP-1の分泌を促すの構造を変え、DPP-4による分解・不活性化の影響を受けにくくし、作用を持続化させた注射薬。インスリン α-グルコシダーゼ 阻害薬 糖が複数つながった多糖や二糖を分解する酵素、α-グルコシダーゼの作用を阻害し、糖の吸収を遅らせて食後高血 糖を抑える SGLT2阻害薬 腎臓での糖の再吸収を抑え、尿糖の排泄を促し血糖を低下させる 400 600 800 (pmol/min) 血中インスリン値 追加分泌 基礎分泌 健常者 1型糖尿病患者の1例 200 6 10 14 18 22 2 6(時) 朝食 昼食 夕食 400 600 800 (pmol/min) 血中インスリン値 追加分泌 基礎分泌 健常者 2型糖尿病患者の1例 200 6 10 14 18 22 2 6(時) 朝食 昼食 夕食

足りないインスリンはどのくらい?

インスリン療法

相対的適応 1インスリン非依存状態の例でも、著明な高血糖(例えば、空腹 時血糖値250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL以上)を認め る場合 2経口薬療法のみでは良好な血糖コントロールが得られない場 合 3やせ型で栄養状態が低下している場合 4ステロイド治療時に高血糖を認める場合 5糖毒性を積極的に解除する場合 (日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2016-2017 文光堂:57, 2016) (参考文献:日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2016-2017 文光堂:48-55,69-70, 2016、藤田敏郎監修:目で見る脂肪細胞とインスリン抵抗性メディカルレビュー社:26, 2007) 基礎分泌も追加分泌もほとんどない。健常者のインスリン分泌と比べ ると、その差は歴然としている。 進行度によってさまざまだが、比較的初期の段階に典型的なのは、基礎分泌 は足りているものの、食後の追加分泌が不十分なケース。 ・ほとんどインスリンが出ていない1型糖尿病の例 ・インスリンの出が悪い2型糖尿病の例

参照

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