(1)(2)3.…設問別の結果等の概要… ……… 4
4.…調査問題とその結果の概要および
… 教科書における指導のポイント……… 6
… 数学A問題… ……… 6
… 数学B問題… ……… 21
参考文献………33
もくじ
(3) 本資料は,文部科学省「平成27年度全国学力・学習状況調査 中学校数学」(以下,調査と略
記)において,特に課題があると考えられる27の問題に焦点を当て,その問題と結果の概要お
よび教科書の扱いと指導のポイントをまとめたものである。
調査の結果は,各問題の正答率を示すだけでなく,問題ごとの生徒のつまずきに関する情報
(解答類型)も提供している。本資料においても「誤答例と反応率」を一部記載した(文部科学
省のホームページに,調査の詳細な情報が公表されている)。また,調査問題は,これからの
社会を生きるのに必要な数学の力やその力を育成するための授業のあり方についての示唆を
与えている。調査では,知識や技能を問う問題だけでなく,思考や判断,表現に関する問題が
多く出題されている。これからの社会において,現実事象について数学を用いて考えたり,新
たな考えを生み出したり,式や図などの数学的な表現から考えを読み取ったり,根拠を明らか
にしながら筋道立てて説明したりする力などを身に付けることが,すべての生徒にとって大切で
ある。調査は,そうした力に関する生徒の実態を明らかにするとともに,力を育成するために
授業で扱うとよい問題や活動についてのアイディアを提示している。
教科書には,調査で問われているような数学の概念や力を育成するのに十分な内容が,各単
元や練習問題,巻末などのいろいろな場所にちりばめられている。ただし,それらは,教科書
をなぞって読み進めるだけの仕方では十分に生かすことはできない。調査結果にみられる生
徒のつまずきを把握し,それを生かした授業展開を工夫することが求められる。例えば,数学
A(2)「さいころを投げるときの確率について正しい記述を選ぶ問題」では,さいころの目の出
方について,「6回投げるとき,そのうち1回は必ず1の目が出る」と「6回投げるとき,1から6まで
の目が必ず1回ずつ出る」と考えている生徒が,それぞれ22.3%と10.3%いることが報告されて
いる(なお,平成19年度調査における同一問題の結果も同様の傾向であることが報告されてい
る)。是非とも,授業において実際にさいころを投げて,生徒に目の出方を観察させなければな
らない。その体験は,生徒の確率の意味の理解を深めるのにきっと役立つであろう。また,「1
の目が出る確率が である,とはどういうことか」を,生徒が説明する活動を取り入れる工夫
も考えられる。考えを記述する問題の無解答率の高さは,調査が開始されて以来毎回指摘さ
れる大きな課題である。一方,思考力・判断力・表現力といった力は一朝一夕に身に付くもの
ではない。能力は一人一人の生徒自らが使うことによって,身に付き伸びるものである。日々の
授業の中で,教師が機会を捉えて一人一人に能力を発揮させる授業展開を工夫することなしに,
現状の課題を解決することはできない。
全国学力・学習状況調査は,その問題や結果が日々の数学の授業改善に生かされて,はじ
めてその役割を果たす。本資料がその一助になれば幸いである。
はじ めに
1
6
(4)成23年度は東日本大震災の影響等により実施は見送られた)。以下,文部科学省国立教育政策研究所が平成27年8月
に公表した「平成27年度全国学力・学習状況調査報告書 中学校数学 一人一人の生徒の学力・学習状況に応じた学習
指導の改善・充実に向けて」(以下,「平成27年度報告書」)を基に,調査の概要を示す。
⑴調査の目的
・ 義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から,全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し,教育施策の
成果と課題を検証し,その改善を図る。
・ 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。
・ そのような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。
⑵調査の対象学年
小学校第6学年,中学校第3学年(特別支援学校や中等教育学校を含む)
⑶調査の内容
○教科に関する調査(国語,算数・数学,理科)
国語,算数・数学では,それぞれ「主に知識に関する問題」と「主に活用に関する問題」が出題された。
・ 数学A:主として「知識」に関する問題
身に付けておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や,実生活において不可欠であり常に活用できるよ
うになっていることが望ましい知識・技能などに関する問題。
・ 数学B:主として「活用」に関する問題
知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や,様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力など
に関する問題。
○生活習慣や学校環境に関する質問紙調査
・ 児童生徒に対する調査
学習意欲,学習方法,学習環境,生活の諸側面等に関する質問紙調査。
・ 学校に対する調査
学校における指導方法に関する取組や学校における人的・物的な教育条件の整備の状況等に関する質問紙調査。
⑷調査の方式
平成19年度から21年度は,対象学年のすべての児童生徒を調査対象とする「 悉皆調査」であり,平成22年度と24年度は
「抽出調査」であった。平成25,26年度,および平成27年度は悉皆調査が行われ,平成27年度は,国公私立合わせて,小学
校第6学年のおよそ111万人,中学校第3学年のおよそ117万人の児童生徒が調査の対象となった。
⑸調査日時
平成27年4月21日(火) 中学校は次の時間割で実施された。
1時限目 2時限目 3時限目 4時限目 5 時限目
国語A(45分) 国語B(45分) 数学A(45分) 数学B(45分) 理科(45分) 生徒質問紙(20分程度)
⑹調査結果の解釈等に関する留意事項
「平成27年度報告書」では,次のような留意事項が記されている。
・ 本調査の結果については,児童生徒が身に付けるべき学力の特定の一部分であることや,学校における教育活動の一側面
に過ぎないことに留意することが必要であること。
・ 平均正答数,平均正答率のみでは必ずしも調査結果のすべてを表すものではなく,他の情報と合わせて総合的に結果を分
析,評価することが必要であること。
・ 個々の設問や領域等に着目して学習指導上の課題を把握,分析し,児童生徒一人一人の学習改善や学習意欲の向上につな
げることが重要であること。
(5) 「平成27年度報告書」では,調査問題の趣旨・内容や課題等の概要が,以下の通り示されている。
⑴調査問題の趣旨・内容
○数学A:基礎的・基本的な知識・技能が身に付いているかどうかをみる問題
例・正の数と負の数とその計算,文字式の計算をする。一元一次方程式,連立二元一次方程式を解く。
・平行移動した図をかく。証明の根拠として用いられている合同条件を書く。
・反比例のグラフを選ぶ。2つの数量の関係をグラフから読み取る。
・与えられた資料の中央値を求める。確率の意味として正しい記述を選ぶ。
○数学B:基礎的・基本的な知識・技能を活用することができるかどうかをみる問題
例・数量関係を表す式を用いて,投映画面の大きさの適切な変え方を指摘し,その理由を説明する。
・連続する5つの整数の和について,予想した事柄を説明する。
・目的に応じたポップアップカードを作るための山折りの端点の位置を決める方法を説明する。
・グラフの形に着目し,判断の理由を数学的な表現を用いて説明する。
⑵課題等
◇は相当数の生徒ができている点,◆は課題のある点を,また,( )内の記号は,(A)が数学Aを,(B)が数学Bを表す。
〔 〕内の記号は問題番号を表す。
主な特徴
●等式の性質と式変形の関係を理解すること,垂線の作図の方法を図形の対称性に着目して見直すこと,記号で表さ
れた図形の構成要素間の関係を読み取ることについて,改善の状況がみられる。〔A3(1),A4(1),A7(1)〕
●空間における直線と平面の垂直についての理解,証明の必要性と意味の理解に課題がある。〔A5(1),A8〕
● 記述式問題のうち,予想した事柄の説明には改善の傾向がみられる〔B2(3)〕が,数学的な表現を用いた理由の説明,
図形の性質を用いた方法の説明に課題がある。〔B1(3),B3(2) ,B5(2)〕
数と式
◇(A)加減乗除を含む正の数と負の数の計算,一次式の減法の計算は,相当数の生徒ができている。〔A1(2),A2(1)〕
◆(A)数量の関係を文字式に表すことに課題があり,指導の充実が求められる。〔A2(2)〕
◆(A)具体的な事象における数量の関係を捉え,連立二元一次方程式をつくることに課題があり,指導の充実が求めら
れる。〔A3(3)〕
◆(B)事柄が成り立つ理由を,構想を立てて説明することに課題がある。〔B2(2)〕
図形
◇(A)投映図から空間図形を読み取ることは,相当数の生徒ができている。〔A5(3)〕
◇(A)面の回転によって回転体が構成されること,平行線における同位角の意味については,相当数の生徒が理解して
いる。〔A5(2),A6(1)〕
◆(B)平面図形と空間図形を関連付けて考察すること,図形の性質を用いて問題解決の方法を数学的に説明すること
に課題があり,指導の充実が求められる。〔B3(1)(2)〕
関数
◇(A)グラフを具体的な事象と関連付けて解釈することは,相当数の生徒ができている。〔A(2)〕
◆(B)与えられた情報から必要な情報を選択し,的確に処理すること,その結果を事象に即して解釈すること,数学的
な表現を用いて解釈した理由を説明することに課題があり,指導の充実が求められる。〔B1(1)(2)(3)〕
◆(B)与えられた式を基に事象における2つの数量の関係を判断すること,数学的な表現を用いて問題解決の方法を説
明することに課題があり,指導の充実が求められる。〔B6(1)(2)〕
資料の活用
◆(A)多数回の試行の結果から得られる確率の意味を理解することに課題がある。〔A(2)〕
「平成27年度 中学校数学」の調査結果の概要
2
(6)および正答率が60%未満であった設問についての,設問の概要,解答形式,正答率,無解答率は,以下の通りである。
<数学A>
問題番号 設問の概要 問題形式 正答率(%) 無解答率(%)
2⑵ 赤いテープの長さがacmで,白いテープの長さの3/5倍のとき,白いテープの長さをaを用いた式で表す。 短答式 23.6 8.7
2⑷ 連続する3つの整数のうち最も小さい整数をnとするとき,それらの和が
中央の整数の3倍になることを,nを用いた式で表す。 短答式 57.8 7.7
3⑶ 連立二元一次方程式をつくるために着目する数量を表した式を選ぶ。 選択式 46.1 0.9
3⑷ 連立二元一次方程式 4x+2y=5 を解く。 短答式 57.9 10.1
4⑴ 垂線の作図で利用されている図形の性質を選ぶ。 選択式 59.6 1.0
4⑵ △ABCを,矢印の方向に4cm平行移動した図形をかく。 短答式 55.2 2.1
5⑴ 直方体において,与えられた辺に垂直な面を書く。 短答式 47.9 1.9
5⑷ 与えられた式で体積が求められる立体をすべて選ぶ。 選択式 57.3 1.4
7⑶ 与えられた方法で作図された四角形が,いつでも平行四辺形になることの根拠となる事柄を選ぶ。 選択式 48.5 0.9
8 対頂角は等しいことの証明について正しい記述を選ぶ。 選択式 26.4 1.2
⑶ 比例のグラフから,xの変域に対応するyの変域を求める。 短答式 50.3 16.8
⑴ 時間と道のりの関係を表すグラフから,速さが最も速い区間を選ぶ。 選択式 50.6 1.3
二元一次方程式x+y=3の解を座標とする点の集合として正しいものを選ぶ。 選択式 38.6 2.2
⑴ 反復横とびの記録の中央値を求める。 短答式 46.3 9.5
⑵ さいころを投げるときの確率について正しい記述を選ぶ。 選択式 55.8 2.1
{
x+y=2
(7)<数学B>
問題番号 設問の概要 問題形式 正答率(%) 無解答率(%)
1⑴ 投映距離と投映画面の高さの関係を式で表す。 短答式 30.6 20.6
1⑵ 投映画面がスクリーンに収まり,できるだけ大きく映し出すことができる投映距離を選ぶ。 選択式 35.5 0.9
1⑶ 映像の明るさを2倍にするための投映画面の面積の変え方を選び,その理由を説明する。 記述式 12.3 5.4
2⑵ 連続する3つの整数の和が中央の整数の3倍になることの説明を完成する。 記述式 44.2 23.3
3⑴ ポップアップカードを90°に開いたとき,四角形EFGHが正方形になる場合のEFの長さを求める。 短答式 43.4 8.5
3⑵ 四角形EFGHがいつでも平行四辺形になるように点Fの位置を決める方法を,平行四辺形になるための条件を用いて説明する。 記述式 22.1 47.3
4⑴ 証明で用いた三角形の合同を根拠として,証明したこと以外に新たにわかることを選ぶ。 選択式 43.4 1.1
4⑵ 正方形ABCDを平行四辺形ABCDに変えても,AE=CFとなることの証明を完成する。 記述式 50.5 18.2
5⑴ 1回目の調査で,落とし物の合計のうち,文房具の占める割合を求める式を答える。 短答式 40.2 26.2
5⑵ 2回目の調査の方が落とし物の状況がよくなったとは言い切れないと主張することもできる理由を,グラフを基に説明する。 記述式 24.0 29.1
6⑴ 中心角の大きさxと半径の長さyの間にある関係について,正しい記述を選ぶ。 選択式 46.9 1.3
6⑵ 底面になる円の半径の長さが8cmのとき,表や式から,側面になるおうぎ形の中心角の大きさを求める方法を説明する。 記述式 31.9 16.7
これら合計27の設問について,問題と結果の概要および教科書の扱いと指導のポイントを,次に示す。「平成27年度
報告書」では,設問ごとに,「解答類型と反応率」,「分析結果と課題」,「学習指導に当たって」が示されている。それらを
参考にしながら,大日本図書「新版 数学の世界 1」「新版 数学の世界 2」「新版 数学の世界 3」(平成28年4月)の教科
書の該当部分を示し,その指導のポイントを述べる。
(8)赤いテープの長さがacmで,それが白いテープの長さの 倍のとき,白いテープの長さ
をaを用いた式で表す問題。
数量の関係を文字式に表すことができるかどうかをみる。
数量を表す式について,1チーム5人で走る駅伝大会のチーム数を文字
で表すときの選手の人数や,1個110円のドーナツをy個買うときの代金な
どについて,文字を使った式で表すことを扱っている。ここでは,小学校で
学んできた買い物場面での代金や図形の面積の求め方などに基づき,いろ
いろな数量を文字式で表す。そして,文字を使った式は,数量を求める計
算の仕方を表しているとともに,計算した結果の数量のことも表している
ことなどを学習する(1年・文字と式・p.62)。
「倍」という表現が含まれることから,「a× (cm)」と考える生徒が多くいる。文字を用いて数量
を表すことそのものは理解していても,小学校で学ぶ式の考え方が十分に理解できていないためにつ
まずく生徒がいる。特に,B× =Aの関係からBの値を求める問題を苦手とする生徒は多い(比の第
3用法の問題)。関係を図に表したり,具体的な数や言葉を使った式を利用するなどして関係を捉えることができるよう
に指導したり,問題文から,一度B× =Aのかけ算の関係で式に表してからBの表し方を考えるという仕方を指導した
りするとよい。
文字式の計算とその利用
A
2
数
学
設問⑵
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
数と式
1年⑵エ 技能 短答式 23.6% 8.7% 「 a」(51.6%)
出題の趣旨
教科書の扱い
問題の概要
「新版 数学の世界 1年」p.62
3
5
3
5
3
5
3
5
3
5
【正答】 53a
(9)連続する3つの整数のうち最も小さい整数をnとするとき,それらの和が中央の整数の3
倍になることを,
nを用いた式で表す問題。
文字を用いた式で数量の関係を説明するための構想を理解しているかどうかをみる。
文字を使った式を利用して,数の性質を調べることについて,奇数と奇
数の和が偶数であることや,2けたの自然数に関する性質を調べる場面な
どを基に扱っている。ここでは,例えば,奇数と奇数の和を考える際には,
2つの奇数を異なる文字m,nを使って表す必要があることや,文字m,nは
すべての整数を表すので,それを用いた説明は,どんな2つの奇数につい
ても,結果が成り立つことを示すことになることなどを学習する(2年・式
と計算・p.28)。
説明に用いる文字式の意味がわからなかったり,性質が成り立つことを示すには,どのような形の式
に変形すればよいのかがわからなかったりする生徒がいる。まず,1年「文字と式」(1年,p.71参照)の
文字式の表す数の意味についての学習内容を,確実に理解させる必要がある。その上で,目的に応じ
た式の表し方について考えさせる。問題に対して,具体的な説明の記述にとりかかる前に,説明するための構想を立て
る機会を設ける。「偶数であることを示すには?」,「中央の整数の3倍であることを示すには?」等,いろいろな場合につ
いて考えたい。
文字式の計算とその利用
A
2
数
学
設問⑷
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例
数と式
2 年⑴イ 知・理 短答式 57.8% 7.7% 略
問題の概要
「新版 数学の世界 2年」p.28
教科書の扱い
【正答】n+1
出題の趣旨
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント 調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(10)昨年と今年の入学者数の男女の増減に関する問題について,連立二
元一次方程式をつくるために着目する数量を表した式を選ぶ問題。
具体的な事象における数量の関係を捉え,連立二元一次方程式をつくることができるかどうかをみる。
割合の問題を連立方程式を使って解くことについて,2つの年のペットボ
トルのリサイクル率やリサイクル量について考える問題や,品物の定価と割
引額との関連を考える問題などを基に扱っている。ここでは,小学校およ
び中学1年で学習する割合の「割」や「%」の表し方について復習しながら,
問題場面の中から,2通りに表すことができる等しい数量の関係に着目し
て連立方程式をつくり,それを解いて解決することを学習する(2年・連立
方程式・p.59)。
まず,割合に関する数量を,文字を用いて適切に表すことができない生徒がいる。小学校や中学1年
の学習内容(1年「文字と式」pp.68-69で詳しく扱われている)を復習し,確実に表すことができるよう
にする。その上で,問題の中の数量やその関係から,2通りに表すことができる数量の関係を的確に捉
え,方程式に表すことができるように指導する。その際には,線分図や2次元表などを用いて問題にある数量を整理し
た上で,相当関係にあるものを見いだす活動を取り入れるとよい。
方程式の解き方とその利用
A
3
設問⑶
問題の概要
「新版 数学の世界 2年」p.59
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
数と式
2年⑵ウ 技能 選択式 46.1% 0.9%
イ「0.05x-0.03y」(29.6%)
ア「0.05x+0.03y」(14.2%)
出題の趣旨
教科書の扱い
【正答】ウ(1.05x+0.97y)
(11)連立二元一次方程式
4x+2y=5
を解く問題。
簡単な連立二元一次方程式を解くことができるかどうかをみる。
連立二元一次方程式の解き方については,代入法と加減法による解き
方のほか,文字を消去しやすい解き方を選んで解くことを扱っている。ここ
では,連立方程式を解くには,2つの文字のどちらか一方を消去して文字
が1つの方程式を導けばよいことや,かっこや小数,分数を含む連立方程
式の解き方,また,1つの連立方程式を,代入法と加減法の両方で解くこと
を通して,解き方の特徴やどちらの方法でも解を求めることができること
などについて学習する(2年・連立方程式・p.50)。
連立二元一次方程式を解く場面では,2つの文字のうち一方の文字を消去して一元一次方程式に帰
着させれば解けることを理解させ,代入法や加減法を用いて工夫して解くことができるように指導する
ことが大切である。また,xの値のみを正しく答え,yの値を誤る生徒がいる。xの値を代入して正しくy
の値を求める計算技能や,求めた結果を元の式に代入して解が正しいかどうかを確かめる態度を身に付けさせることで,
確実に答えを求めることができるようにしたい。
方程式の解き方とその利用
A
3
数
学
設問⑷
出題の主旨
教科書の扱い
指導のポイント
問題の概要
【正答】x= ,y=
出題の趣旨
教科書の扱い
x+y=2
{
1
2
3
2
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
数と式
2 年⑵ウ 技能 短答式 57.9% 10.1%
「xの値のみを正しく解答しているもの」
(9.5%)
「新版 数学の世界 2年」p.50
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(12)線分AB上にある点Pを通る線分ABの垂線(PQ)の作図で利用されている図形の性質
を選ぶ問題。
基本的な作図が図形の対称性を基に行われていることを理解しているかどうかをみる。
線分の垂直二等分線,角の二
等分線,垂線の作図について扱っ
ている。ここでは,紙を折ってでき
る折り目の線の性質を調べること
を通して,角の二等分線や垂直二
等分線の性質を学び,その作図の
仕方を学ぶ。また,垂線の作図の
仕方を,角の二等分線の作図の仕
方と比べて説明するなどの活動を
行う(1年・平面の図形・p.180,
p.182)。
作図の手順を正しく理解し作図することができても,作図の方法に用いられている図形の性質を理
解していない生徒がいる。作図の仕方を,図形の対称性に着目して見直す機会を設ける必要がある。具
体的には,垂線等を作図した後,作図の方法を振り返り,作図できる理由を説明する活動を設けるとよ
い。対称な図形の性質を用いていることを直観的には捉えていても,線対称なのか点対称なのか,また,線対称の対称
軸はどれかなどを正しく捉えていない生徒がいるので,数学用語を用いて適切に説明できるように指導したい。
垂線の作図・平行移動
A
4
設問⑴
指導のポイント
問題の概要
【正答】オ(直線PQを対称軸とする線対称な図
形の性質)
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
図形
1年⑴ア 知・理 選択式 59.6% 1.0%
「エ(直線ABを対称軸とする線対称な図形
の性質)」( 19.2%)
「ウ(点Qを対称の中心とする点対称な図形
の性質)」( 15.1%)
出題の趣旨
教科書の扱い
「新版 数学の世界 1年」p.182
「新版 数学の世界 1年」p.180
(13)方眼紙上に与えられた△ABCを,矢印の方向に4cm平行移動した図形をかく問題。
平行移動した図形をかくことができるかどうかをみる。
平行移動,回転移動,対称移動させた図形と元の図形との関係を調べ
ることについて,△ABCと移動後の△A′B′C′との関係を,移動した長さや
角の大きさ,移動前後の点や辺の位置関係を考える場面などを基に扱って
いる。ここでは,「平行移動させた図形と元の図形では,対応する辺は平
行になります。また,対応する点を結ぶ線分はどれも平行で長さが等しくな
ります。」などの図形の移動の性質について学習する(1年・空間の図形・
p.170)。
図形がきまりにしたがって移動していることを視覚的に捉えたり,図形の移動の性質を見いだしたり
する場面を設定し,移動前後の2つの図形の関係を捉えることができるように指導する。図形の移動を
視覚的に捉えさせる上では,コンピュータを利用することも効果的であろう。平行・回転・対称移動を,
直観的には捉えていても,正確に移動前後の2つの図形の関係を説明することができない生徒がいる。2つの図形の構
成要素の対応に着目して,関係を適切に説明できるように指導したい。
垂線の作図・平行移動
A
4
数
学
設問⑵
出題の主旨
教科書の扱い
指導のポイント
問題の概要
【正答】移動前後で対応する点が4cm離れた△A′B′C′
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
図形
1 年⑴イ 技能 短答式 55.2% 2.1%
「移動前後で,点 C と点 B′とが 4cm 離れ
た三角形(移動前後の三角形全体が 4cm
離れた図)」( 33.2%)
「新版 数学の世界 1年」p.170
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(14)直方体ABCD-EFGHにおいて,与えられた辺CGに垂直な面を書く問題。
空間における直線と平面の垂直について理解しているかどうかをみる。
直線と平面が垂直であるとはどういうことかを考えることについて,鉛
筆を机の面に垂直になるようにする場面や,直方体の面と辺の位置関係に
ついて調べる場面などを基に扱っている。ここでは,「平面に交わる直線
は,その交点を通る平面上の2直線に垂直ならば,その平面に垂直です。」
等の内容を学習する(1年・空間の図形・p.212)。
直方体における辺と面の垂直について,辺が面に含まれる場合と混同したり,その辺において垂直に
交わる2つの面の関係と混同したりする生徒がいる。また,「平成27年度報告書」では,与えられた面に
垂直な辺を答えることよりも,与えられた辺に垂直な面を答えることに課題があることも報告されてい
る。面と辺の位置関係について,どのような位置関係にあると言えるのかを根拠をあげて説明したり,面と面の位置関係
と面と辺の位置関係とのちがいについていろいろな場合を基に考える機会を設けたりするとよい。
空間図形
A
5
設問⑴
指導のポイント
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
図形
1年⑵ア 知・理 短答式 47.9% 1.9%
「辺CGを含む面(BFGC,CGHD)を解答
しているもの」(36.0%)
出題の趣旨
教科書の扱い
「新版 数学の世界 1年」p.212
【正答】ABCD,EFGHのいずれか
(15)与えられた式( Sh)で体積が求められる立体をすべて選ぶ問題。
与えられた式を用いて体積を求めることができる立体を理解しているかどうかをみる。
角錐や円錐の体積の求め方に
ついて,導入で,三角形の面積公式
が「× 」であることから,体積も
「× 」となるかという問題意識
をもたせる。そして,角錐状の容器
に入れた水を底面積と高さの等し
い容器に移す実験を基にして,角
錐,円錐の体積を求める公式をま
とめる学習を行う(1年・空間の図
形・pp.216-217)。
「平成27年度報告書」によれば,本設問に対して,三角柱などの三角形の面をもつ立体を解答した
生徒がいる。まずは,柱体と錐体を見分ける基本的な理解が必要である。また,錐体の体積公式にある
「 」の意味を理解していない生徒がいる。錐体の体積と柱体の体積の関係を予想し,予想を実験等
で確かめるなどして,実感を伴って公式の意味を理解することが大切である。また,例えば円錐と円柱との関係だけにと
どまらず,その結果を基に,角錐と角柱の関係を予想し確かめたり,底面が合同で高さが等しいほかの場合について考
えたりする機会を設けて,理解を深めたい。
空間図形
A
5
数
学
設問⑷
出題の主旨
教科書の扱い
指導のポイント
問題の概要
【正答】イ(円錐),オ(四角錐)
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
図形
1 年⑵ウ 知・理 選択式 57.3% 1.4% 「イまたはオのどちらか一方のみ」(9.9%)
「新版 数学の世界 1年」pp.216-217
1
3
1
2
1
2
1
3
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(16)与えられた方法で作図された四角形が,いつでも平行四辺形になることの根拠となる事
柄を選ぶ問題。
作図の根拠として用いられている平行四辺形になるための条件を理解しているかどうかをみる。
四角形はどのようなときに平行
四辺形になるかを調べることにつ
いて,三角形の合同などに着目し
て調べ,「平行四辺形になるため
の条件」をまとめる。ここでは,平
行四辺形を作図する手順を説明
したり,それが,平行四辺形の作
図手順として正しい理由を説明し
たりする(2年・三角形と四角形・
pp.158-159)。
「平行四辺形の定義・性質」と「平行四辺形になるための条件」とを混同している生徒がいる。平行
四辺形がもつ特徴を確かめることと,ある四角形が平行四辺形であると言えるかどうかを確かめること
とを区別して理解できるように指導する必要がある。そのためには,平行四辺形にならない場合も含め
て,いろいろな作図の仕方を対象に,理由の説明を考える機会を設けるとよい。また,作図にコンパスを用いることが,そ
れによってできる図形の特徴とどう結び付いているかを生徒自身が説明できるようにすることも大切である。
証明の根拠
A
7
設問⑶
指導のポイント
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
図形
2年⑵ウ 知・理 選択式 48.5% 0.9%
ほかの平行四辺形になるための条件の選択
肢を選んだもの(それぞれ9.5% ~ 17.2%
の範囲)
出題の趣旨
教科書の扱い
「新版 数学の世界 2年」pp.158-159
【正答】エ(対角線がそれぞれの中点で交わる四角形
は,平行四辺形である。)
(17)対頂角は等しいことの証明について正しい記述を選ぶ問題。
証明の必要性と意味を理解しているかどうかをみる。
図形の性質の調べ方について,
実測や実験による方法と,既に正
しいと認めた事柄を根拠に正しい
理由を明らかにする方法とを扱って
いる。そして,前者の方法は,図形
の性質を調べたり,発見したり,予
想したりするのに有効である一方
で,すべての場合について調べつく
すことはできないこと,後者の方法
は,どんな場合についても結論が
成り立つことを説明していることな
どを学習する(2年・平行と合同・
pp.116-117)。
実験や操作などの帰納的な方法による説明と演繹的な推論による説明とのちがいや帰納的な方法
による説明の限界を理解していない生徒や,証明するためにかかれた図は,すべての代表として示され
ていることを理解していない生徒がいる。証明を正しく記述する生徒の中にも,そうした本質的な理解
ができていない生徒が多くいると思われる。例えば「対頂角は等しい」という命題の全称性や,文字のもつ特性である
一般性を意識させながら,帰納的な説明と演繹的な証明とを比較しながら,それぞれの説明の特徴やよさを考える機会
証明の必要性と意味
A
8
数
学
設問
出題の主旨
教科書の扱い
問題の概要
【正答】ウ(文字を用いた一般的な方法は可であるが,分
度器を用いた実測による方法は不可であるとする内容)
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
図形
2 年⑴ア,⑵イ 知・理 選択式 26.4% 1.2%
「イ(文字を用いた一般的な方法は可であ
り,分度器を用いた実測による方法もいろ
いろに変えて同じように確かめれば可であ
るとする内容)」(28.4%)
「新版 数学の世界 2年」pp.116-117
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(18)比例のグラフとxの変域が与えられ,それに対応するyの変域を求める問題。
与えられた比例のグラフから,xの変域に対応するyの変域を求めることができるかどうかをみる。
関数の変域について,身の回りの問題について関数を利用して考える場
面を基にして扱っている。ここでは,歩いた時間(x)と進んだ道のり(y)との
関係について,出発から到着までを踏まえて,xとyの変域を不等号を用い
て表すことなどを学習する(1年・量の変化と比例,反比例・p.150)。な
お,変域については,1年の比例・反比例のほか,2年の1次関数,3年の関
数y=ax2
など,いろいろな学習場面で考える機会が設けられている。
今年度の調査のA問題の中で無解答の割合(16.8%)が最も高く,基本的な変域の意味や表し方が
理解できていない生徒が多くいると思われる。身の回りの事象など,具体的な場面を基にして,変域の
意味や,それを考えることの事象における意味を理解できるよう指導する。また,変域を式から読み取
る活動やグラフを用いて視覚的に捉える活動を充実させたい。右上がりの直線のグラフだけでなく,左下がりの直線の
グラフ,反比例,y=ax2
などのいろいろな場合について変域を考える機会を設けて,理解を深めたい。
変域
A
10
設問⑶
指導のポイント
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例
関数
1年⑴エ 技能 短答式 50.3% 16.8% 略
出題の趣旨
教科書の扱い
「新版 数学の世界 1年」p.150
【正答】1≦y≦3
(19)時間(x)と道のり(y)の関係を表すグラフから,速さが最も速い区間を選ぶ問題。
時間と道のりの関係を表すグラフについて,グラフの傾きが速さを表すことを理解しているかどうかをみる。
身の回りにある問題を,1次関数を見いだして解決することについて,A
さんの歩く時間と進んだ道のりの関係についてグラフから考える場面を基
に扱っている。ここでは,与えられたグラフを基にして,Aさんの歩く速さを
読み取ったり,ある時刻のAさんがいる位置について,グラフから読み取っ
た式を利用して調べたりする活動を行う(2年・1次関数・p.92)。なお,関
数を身の回りの問題解決に利用することについては,1年の比例・反比例
のほか,2年の1次関数,3年の関数y=ax2
など,いろいろな学習場面で考
える機会が設けられている。
時間(x)と道のり(y)の関係を表すグラフについて,グラフの傾きが速さを表すことを理解していない
生徒がいる。誤答例によれば,グラフの傾きではなく,傾きが0ではない線分の長さがより長い部分が,
より速いことを表すと捉えている生徒がいると思われる。傾きの異なる複数のグラフと速さとを対応さ
せて考える場面を設定し,傾きのちがいが速さのちがいを表すことについて,グラフから読み取れるxやyの増加量を基
にした計算(速さ=道のり/時間)によって確かめるなどして,理解させるようにする。
グラフの読み取り
A
12
数
学
設問⑴
出題の主旨
教科書の扱い
問題の概要
【正答】ア(xが0から5,yが0から400
に変化している区間)
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
関数
2 年⑴イ 知・理 選択式 50.6% 1.3%
「ウ(x が 25 から 35,y が 400 から 1000
に変化している区間)」(37.3%)
「新版 数学の世界 2年」p.92
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(20)二元一次方程式x+y=3の解を座標とする点の集合として正しいものを選ぶ問題。
二元一次方程式の解を座標とする点の集合は,直線として表されることを理解しているかどうかをみる。
2元1次方程式の解を座標平面上に表す方法について,2元1次方程式
2x+y=6の解を表に整理し,座標平面上に点を取って考える場面を基に
扱っている。ここでは,その方程式の解は,(-2,10),(-1,8),(0,6),
(1,4)・・・のように数限りなくあることや,直線のグラフを示して,「それら
を座標とする点をすべて座標平面上に取るとこのような直線になる」とい
うこと等を学習する(2年・1次関数・p.86)。
2元1次方程式x+y=3の解を整数の範囲だけでしか考えない生徒がいる。解は,正の数や負の数の
ほか,整数以外の値についても考えられることに気づかせ,具体的にいろいろな解をあげるなどして理
解させる。また,それを理解していても,その解を表す点は無数にあり,その集合が直線になることにつ
いて理解していない生徒がいる。グラフ用紙にたくさんの点を取って点の集まりが直線になることを,実感を伴って理解
できるようにする。その際,コンピュータを用いて,そのようすを観察する場面を設けることも効果的であろう。
二元一次方程式のグラフ
A
13
設問
指導のポイント
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
関数
2年⑴ウ 知・理 選択式 38.6% 2.2%
「ウ(x+y=3を満たす整数値の組の点だけ
を示したもの)」(23.9%)
出題の趣旨
教科書の扱い
「新版 数学の世界 2年」p.86
【正答】オ(x+y=3の直線のグラフ)
(21)反復横とびの記録について,回数の少ない方から順に15人分の記録と度数分布表の枠
組みが与えられた上で,それらの記録の中央値を求める問題。
与えられた資料から中央値を求めることができるかどうかをみる。
平均値以外で,資料の代表値として使われる値について,ゲーム大会で
の得点や弁当店での販売個数などの資料を使って考える場面を基に扱っ
ている。ここでは,中央値や最頻値について学習する。中央値は,「数値
で表された資料を大きさの順に並べたとき,その中央にある数値を中央値
(メジアン)といいます。」,最頻値は,「度数分布表,または,ヒストグラ
ムや度数分布多角形で,最大の度数をもつ階級値を最頻値(モード)とい
います。」として学習する(1年・資料の整理と活用・p.249)。
中央値と平均値を混同している生徒がいる。また,中央値を,度数分布表の中央にある階級の階級
値であると誤解している生徒がいる。中央値の定義を確認するとともに,具体的な場面や状況を例に
あげて,中央値や最頻値を考えることの必要性や,その状況における値のもつ意味を考えさせる機会を
設けるとよい。また,度数分布表やヒストグラムが対称な分布になる場合だけでなく,非対称な分布になる場合も意図
的に扱い,その中で平均値や中央値,最頻値などについて考える機会を設け,理解を深めたい。
中央値の求め方・度数分布表
A
14
数
学
設問⑴
出題の主旨
教科書の扱い
問題の概要
【正答】52(少ない方から8人目の記録)
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
資料の活用
1 年⑴ア 技能 短答式 46.3% 9.5%
「50(資料の平均値)」(11.5%)
「51(度数分布表の真ん中の階級の階級
値)」(11.0%)
「新版 数学の世界 1年」p.249
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(22)さいころを投げるときの確率について正しい記述を選ぶ問題。
多数回の試行の結果から得られる確率の意味を理解しているかどうかをみる。
実 験の回数を多くするにした
がって,相対度数はどのように変化
するか,そのようすを調べることに
ついて,同じさいころを同じ方法で
100回投げる実験を行い,3の目が
出た回数を調べた資料を基に扱っ
ている。ここでは,『さいころを投
げる回数を増していくと,「3の目
が出る」相対度数は,しだいにある
一定の値に近づいていく』ことなど
を学習する(2年・確率・pp.180-181)。
確率の意味を「ある事柄が起こると期待される程度を数で表したもの」と捉えられていない生徒がい
る。例えば,さいころを投げることを多数回繰り返したとき,それぞれの目の出る回数の割合が,試行回
数全体に対して に近づくことを,実感を伴って理解できるようにすることが大切である。さいころを
6回投げても,1から6までの目で一度も出ない目がある場合もあることを,実際に体験させたい。また,様々な数学的確
率を求めた際に,その解釈を問う機会を設けるなどして理解を深めたい。
場合の数の求め方と確率の意味
A
15
設問⑵
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
資料の活用
2年⑴ア 知・理 選択式 55.8% 2.1%
「イ(6回投げるとき,そのうち1回は必ず1
の目が出る)」(22.3%)
「ウ(6回投げるとき,1 ~ 6までの目が必ず
1回ずつ出る)」(10.3%)
出題の趣旨
教科書の扱い
「新版 数学の世界 2年」pp.180-181
【正答】オ(3000回投げるとき,1の目はおよそ
500回出る。)
1
6
(23)投映距離(x)と投映画面の高さ(y)や投映画面の幅,面積に関する数値が表で与えられ
た上で,投映距離(x)と投映画面の高さ(y)の関係を式で表す問題。
与えられた情報から必要な情報を選択し,的確に処理することができるかどうかをみる。
与えられた情報から必要な情報を選択し,的確に処理して問題を解決す
ることについて,3つの通信会社が出すインターネットの料金プランの基本
料金や1分間の通話料などに関する情報を基に,どんな場合にどの通信会
社を利用するのが得かを考える場面を基に扱っている。ここでは,与えら
れた情報を基に,1か月に100分間の通信をする場合の利用料金を求めた
り,各社の通信時間と利用料金との関係をグラフに表したりする活動を通
して問題を解決する活動を行う(2年・1次関数・p.101)。
定型的な数学の問題の形で出題されれば解答できる内容であっても,現実の事象と関連付けられた
見慣れない形で出題されることで,情報を適切に選択して処理することができなくなる生徒がいる。本
設問は無解答の割合が20.6%と高く,問題が現実事象と関連付けられた形で提示されたというだけ
で,設問の意味が読み取れなくなったり,自分には解くことができない難問であると捉えたりした生徒がいると思われ
る。日常の事象を数学的に考察する機会を積極的に設けるようにし,その中で,問題や与えられた情報を的確に捉え処
理できる力を養いたい。
事象の数学的な表現と解釈
(プロジェクター)
B
1
数
学
設問⑴
出題の主旨
教科書の扱い
問題の概要
【正答】y=0.6x
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例
関数
1 年⑴エ,オ 技能 短答式 30.6% 20.6% 略
「新版 数学の世界 2年」p.101
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(24)投映画面が高さ4.8mで幅が5.6mのスクリーンに収まり,できるだけ大きく映し出すこと
ができる投映距離を選ぶ問題。
与えられた情報から必要な情報を選択して的確に処理し,その結果を事象に即して解釈することができるかどうかを
みる。
数学で処理した結果を,事象に照らして解釈することについて,例えば,
ある事柄が起こるのは何年後かを計算で求めた結果が負の数である場
合や,ボールの個数を求めた計算の結果が整数ではない値となった場合
を基に扱っている。そこでは,計算で求めた結果がそのまま問題の答え
にならない場合があることや,計算で得た結果を,元の問題の答えとして
よいかどうかを確かめることが必要であることを学ぶ(1年・1次方程式・
p.116)。なお,こうした解の吟味は,方程式の学習のほか,様々な学年や
領域において,随時扱われている。
一つの条件に合うように計算して答えを見つけることはできても,複数の条件が与えられて,それらを
同時に考慮して最適な答えを見つけることができない生徒がいる。求めた解を問題の答えとしてよいか
を検討することを日頃から大切にし,批判的な見方が習慣づくように指導したい。また,扱う問題を工夫
して,はじめは条件を固定して調べて,そのあとで,複数の条件を満たす解の中で最適な答えを確定するといった問題の
解決の仕方を経験する機会も設けたい。
(プロジェクター)
B
1
設問⑵
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
関数
1年⑴エ,オ 考え方 選択式 35.5% 0.9%
「エ(8m:高さ4.8m,幅6.4mとなる距離)」
(32.1%)
「イ(6m:高さ4.2m,幅4.8mとなる距離)」
(21.5%)
出題の趣旨
教科書の扱い
「新版 数学の世界 1年」p.116
【正答】ウ(7m:高さ4.2m,幅5.6mと
なる距離)
(25)「(映像の明るさ)=(プロジェクターの光源の明るさ)÷(投映画面の面積)」の関係
が示された上で,映像の明るさを2倍にするための投映画面の面積の変え方を選び,その理由を
説明する問題。
事象を式の意味に即して解釈し,その結果について,数学的な表現を用いて説明することができるかどうかをみる。
1年で,反比例について,xの値
が2倍,3倍・・・になると,対応するy
の値は 倍, 倍・・・となることを
学習する(1年・量の変化と比例,
反比例・p.140)。また,3年「挑戦
しよう」では,自動車の速さと停止
距離について,文章で表現された
「停止距離」,「空走距離」,「制
動距離」の関係を読み取って,それ
を基に問題解決することを扱う(3
年・関数・p.130)。
文章や言葉の式で表された数量の関係を適切に捉えることができない生徒がいる。言葉を用いて言
葉の式をつくり,1つの数量(a)を定数とみて,y=a÷x,y=a/x,xy=aという式の形から,yはxに反比
例する関係を読み取り,xを 倍, 倍・・・にするとyが2倍,3倍・・・となることを判断する活動を取り入
れたい。また,関数関係を根拠として事柄が成り立つ理由を説明する機会を設け,説明すべき事柄とその根拠を明確に
区別し,数学的な表現を用いて簡潔に説明することの指導を充実させたい。
事象の数学的な表現と解釈
(プロジェクター)
B
1
数
学
設問⑶
出題の主旨
教科書の扱い
問題の概要
【正答】イ(投映画面の面積を 倍にする)を選択し,適切な説
明をしたもの)
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
関数
1 年⑴エ,オ 考え方 記述式 12.3% 5.4%
「ア(投映画面の面積を 2 倍にする)を選
択しているもの」(15.9%)
「イを選択し,説明は無解答のもの」
(10.8%)
「新版 数学の世界 3年」p.130
「新版 数学の世界 1年」p.140
1
2
1
2 13
1
2 13
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(26)連続する3つの整数の和が中央の整数の3倍になることの説明を完成する問題。
事柄が成り立つ理由を,構想を立てて説明することができるかどうかをみる。
成り立ちそうな事柄を予想し,それが成り立つ理由を,説明の構想を立
てて根拠を明確にして説明することについて,2けたの自然数から,十の位
と一の位の数を入れかえてできる数をひいた差を調べる場面を基に扱って
いる。ここでは,まず,どんな事柄が成り立ちそうかを予想し,次に,文字
を使って,それがいつでも成り立つことを説明する。また,できあがった説
明を振り返り,新たな性質を見つける活動や,差ではなく和を考えた場合
について調べるなどの発展的な活動を行う(2年・式と計算・p.29)。
無解答の割合が23.3%と高く,「説明・証明」の問題であるというだけで,解答をあきらめている生
徒がいると思われる。まずは,できることを試みてみるという姿勢をもたせたい。本設問では,与えられ
た文字式を正しく計算できない生徒がいることも報告されている。確かな計算力も必要である。また,
和を表す文字式を3n+3と計算することができても,3(n+1)と変形することができない生徒がいる。説明したいことと
式とを照らし合わせながら,どのような式を示せればよいのかを構想する機会を設け,目的に応じた式変形ができる力を
養いたい。
こと
(連続する整数の和)
B
2
設問⑵
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例
数と式
2年⑴イ,ウ 考え方 記述式 44.2% 23.3% 略
出題の趣旨
教科書の扱い
「新版 数学の世界 2年」p.29
【正答】和を表す文字式を3(n+1)と変形し,これを
基に適切に説明したもの。
(27)ポップアップカードを90°に開いたとき,四角形EFGHが正方形になる場合のEFの長さ
を求める問題。
平面図形と空間図形を関連付けて事象を考察し,その特徴を的確に捉えることができるかどうかをみる。
平面図形と空間図形を関連付けて考察し,その特徴を調べることにつ
いて,角錐や円錐の展開図を想像したり,かいたり,実際に組み立てたりす
ることを扱っている。ここでは,展開図と組み立てたあとの立体とで対応す
る頂点や辺について調べたり,円錐の展開図はおうぎ形になることや,そ
のおうぎ形の弧の長さと底面の円周との長さの関係を調べたりするなどの
学習をする(1年・空間の図形・p.198)。
平面図形について理解していても,空間図形の考察にそれを生かすことができない生徒がいる。空
間図形の理解を深めるには,教科書や黒板上の見取図だけではなく,実際の立体等に触れて観察や構
成・分解などの操作を行うことが欠かせない。例えば,ポップアップカードを作る場面において,開いて
できる四角形(EFGH)が正方形になる場合を想像することができない生徒がいる。そうした生徒に対しては,実際に
ポップアップカードを作り,結果を導く前提となる条件を,カードの操作を通して見いだす活動を行うことが必要であろ
う。
事象の図形的な考察と問題解決の方法
(ポップアップカード)
B
3
数
学
設問⑴
出題の主旨
教科書の扱い
問題の概要
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
図形
1 年⑵イ
2 年⑵ウ
考え方 短答式 43.4% 8.5% 「8cm」(9.8%)
「新版 数学の世界 1年」p.198
【正答】4cm(8cmの切れ目であるEGの半分の長さ)
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(28)ポップアップカードを開いてできる四角形EFGHがいつでも平行四辺形になるように点
Fの位置を決める方法を,平行四辺形になるための条件を用いて説明する問題。
事象を図形に着目して考察した結果を基に,問題解決の方法を図形の性質を用いて数学的に説明することができる
かどうかをみる。
三角形や四角形の性質を利用して,身近な事柄
を調べることについて,例えば,地面に水平に設置
されたブランコの台が,地面に対していつでも水平
であるという予想を基に扱われている。ここでは,
ブランコの台と地面の関係を図に表し,平行四辺
形になるための条件を利用して,予想が正しいこ
との証明などを学習する(2年・三角形と四角形・
p.171)。
問題解決の方法や手順を,数学的な表現を用いて的確に説明することができない生徒がいる。問題
解決のあとに,その過程を振り返りながら,「何を用いたのか」,「どのように用いたのか」を明らかにし
て,数学的な表現を用いて説明する活動を充実したい。また,本問題においては,平行四辺形になるた
めの条件の正しい理解とともに,ポップアップカードに施す操作が,数学的にはどのような意味をもつのかを正しく理解
することが必要となる。こうした理解につまずきを見せる生徒に対しては,実際にカードを操作しながら考えさせること
が重要であろう。
(ポップアップカード)
B
3
設問⑵
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例
図形
1年⑵イ
2年⑵ウ
考え方 記述式 22.1% 47.3% 略
出題の趣旨
教科書の扱い
教科書の扱い
「新版 数学の世界 2年」p.171
【正答例】2組の向かい合う辺がそれぞれ等しい四角形は
平行四辺
形であることと,EF=GH(EH=FG)となる位置に点F
をとること
を述べたもの)
(29)証明で用いた三角形の合同を根拠として,証明したこと以外に新たにわかることを選ぶ
問題。
証明を振り返り,新たな性質を見いだすことができるかどうかをみる。
証明を振り返り,新たな性質を
見いだすことについて,例えば,2
つの三角形が相似であることを証
明したあと,その証明を振り返り,
さらに別の相似な三角形の組を見
いだすことを扱っている(3年・相
似と比・pp.144-145)。また,数に
関しても,例えば,2けたの自然数
から,十の位と一の位の数を入れか
えてできる数をひいた差が9の倍
数であることを証明したあとで,証
明を振り返り,それがその数の十
の位の数から一の位の数をひいた
差の9倍になっていることを見いだ
すなどの学習も行う(2年・式と計
算・p.29)。
証明に用いている仮定や性質と,証明したことによってわかったことの区別を理解していなかったり,
証明に用いた図の見た目だけから事柄が成り立つと判断してしまったりする生徒がいる。証明のしくみ
を確認し仮定と結論との関係を確かめたり,証明の過程を振り返らせて,結論が正しく導けているかを
確認したりするなどして理解を図りたい。また,証明を書くだけでなく,証明を読む活動を充実させて,証明の結果や仮
定を振り返って,新たな性質を見いだすことができるように指導したい。
証明を振り返り,発展的に考えること
(正方形から平行四辺形)
B
4
数
学
設問⑴
出題の主旨
教科書の扱い
問題の概要
【正答】ア(合同な三角形の対応する角が等しいこと)
出題の趣旨
教科書の扱い
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例(カッコの値は反応率)
図形
2 年⑵ア,ウ 考え方 選択式 43.4% 1.1%
成り立つことが明らかでない内容や仮定か
ら明らかな内容の選択肢を選んだもの(そ
れぞれ 13.2 ~ 22.5% の範囲)
「新版 数学の世界 2年」p.29
「新版 数学の世界 3年」p.144
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
調査問題とその結果の概要および教科書における指導のポイント
(30)正方形ABCDを平行四辺形ABCDに変えても,AE=CFとなることの証明を完成する問
題。
発展的に考え,条件を変えた場合について証明することができるかどうかをみる。
ある証明を発展的に考え,条件を変えた場合を考えることについて,例
えば,2けたの自然数の性質について証明をしたあとで,3けたの自然数
の場合を考える問題を扱っている。ここでは,条件を変えた場合に成り立
つ性質について,数を文字式で表し,目的に応じた式変形をして証明する
(2年・式と計算・p.33)。また,四角形の4つの辺の中点を結んでできる
四角形がどんな四角形になるかについて,凸四角形の場合で証明したあ
とに,凹四角形の場合を考え証明する等の学習も行う(3年・相似と比・
p.155)。
本設問の誤答に,結論を根拠に用いて証明しようとしたものや,図の見かけを基にした説明があるこ
とが報告されている。まずは,証明の基本的な仕組みの理解を確かにすることが必要である。その上
で,一つの証明をしたあとで,「もし,正方形でないならば」といった条件替えの視点をもって,問題を発
展的に考えることができるように指導したい。まずは,教師がその視点をもって,機会を捉えて生徒に問題の発展のさせ
方の手本を示すことが必要であろう。そしてしだいに,生徒自らが問題を発展させるようになるようにしたい。
(正方形から平行四辺形)
B
4
設問⑵
問題の概要
学習指導要領の領域・内容 評価の観点 問題形式 正答率 無解答率 誤答例
図形
2年⑵イ,ウ 考え方 記述式 50.5% 18.2% 略
出題の趣旨
教科書の扱い
【正答例】平行四辺形の性質を根拠に,正しく証明してい
るもの
「新版 数学の世界 3年」p.155
「新版 数学の世界 2年」p.33