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氏 名 RANADIREKSA, Dinda Gayatri 学 位 の 種 類 博士(文学) 報 告 番 号 甲第377号 学 位 授 与 年 月 日 2014年9月19日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号) 第4条第1項該当 学 位 論 文 題 目 複合辞に関する研究 審 査 委 員 (主査)沖森 卓也 加藤 睦 阿久津 智(拓殖大学外国語学部教授)
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Ⅰ.論文の内容の要旨
(1)論文の構成
第1章 複合辞について 第1 節 本研究の目的と分析方法. 第2 節 複合辞に関する先行研究 第3 節 近代語と複合辞 第2章 複合助詞「において」 第1 節 はじめに 第2 節 先行研究 第3 節 現代語の「において」の意味用法 第4 節 江戸語における「において」の用法 第5 節 近代語辞書における「において」の意味用法 第6 節 明治・大正期における意味用法 第7 節 「において」を含む複合辞 第8 節 連体形式をめぐって 第9 節 おわりに 第3章 複合助詞「について」「に関して」 第1 節 はじめに 第2 節 先行研究と辞書記述 第3 節 近代語における「について」「に関して」の意味用法 第4 節 近代語辞書における「について」「に関して」の意味用法 第5 節 近代語の「について」「に関して」の用法 第6 節 「についての」「に関しての」「に関する」の語法 第7 節 おわりに. 第4章 複合助詞「を通して」「を通じて」 第1 節 はじめに 第2 節 先行研究と現代語の意味用法 第3 節 近代語における意味用法 第4 節 連体格助詞付加形の「を通しての」「を通じての」 第5 節 おわりに 第5章 複合助動詞「つもりだ」 第1 節 はじめに 第2 節 意味用法についての先行研究 第3 節 現代語における問題点 第4 節 近代語における用法 第5 節 連体格助詞付加形「つもりの」 第6 節 おわりに3 第6章 複合助動詞「はずだ」 第1 節 はじめに. 第2 節 先行研究. 第3 節 現代語における意味用法 第4 節 近代語における「はず」 第5 節 連体修飾の「はずの」 第6 節 おわりに 終章
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(2)論文の内容要旨
本論文は、複合辞のうち、複合助詞「において」、「について」、「を通して」、及 び複合助動詞「つもりだ」、「はずだ」について、それぞれの意味用法および形式が、江 戸時代から現代にかけてどのような変遷をとげてきたかを調査したものである。 第1章は、本研究の目的・分析方法、そして複合辞の発達について述べる。複合辞的な 形式については、近代語において発達したものであり、日本語の特徴の一つであると考え られる。歴史的に見ると、複合辞は室町時代に既に存在していたが、江戸時代に入ると、 さらに発達して、単純な助詞・助詞から複合辞的な形式へと変化した場合が少なくない。 明治以降一段とさまざまな表現が試みられ、中には定着して今日に至る言い方もある。複 合辞的な形式は、従来の助動詞・助詞を補完するような、文法上、非常に重要な役割を担う 表現となっていることを述べる。 第2章では、「において」は江戸語において評価の範囲の意味を表す用法がなかったが、 明治期にそれが出現したこと、同じく明治期には行為の主体や対象としての人などの意が あったことなどを指摘する、そして、「上において」は「じょうにおいて」と読む場合に は物事の前提の意を表さないことを述べ、さらに連体用法の「においての」と「における」 とでは、古くは「における」が優勢であったが、次第に「においての」が増加してきてい ることを明らかにする。 第3章では、「について」「に関して」の意味用法の変遷について考察し、「について」 は非音便形「につきて」の形で平安時代から用いられているのに対して、複合辞「に関し て」は明治以降に用いられ、当時はやや硬い言い方であったことなどを指摘する。さらに、 連体用法の「についての」「に関しての」「に関する」では、「に関する」が明治期から 多用されているが、格助詞付加形では「についての」の方が「に関しての」よりも古くか ら多く使用されていることなどを明らかにする。 第4章では、「を通して」「を通じて」について分析を加え、ニュアンスの違いとして、 「を通して」には因果の意が、「を通じて」には通知・伝播の意が強く、また、「を通し て」は通過の過程に、「を通じて」は情報などの広がりに重点があるとする。明治期後半 から大正期にかけては、「を通じて」が「を通して」よりもかなり優勢であったが、小説 では逆に「を通して」が「を通じて」より多く見えることを指摘する。 第5章では「つもりだ」について考察し、複合辞となるのは19 世紀初め頃であり、明治 初年には定着していたこと、明治大正期では「たいつもりだ」「つもりではない」など多 くの形式で用いられたのに対して、現代語では話し手の主観性が強まった結果、これらを 避ける傾向がうかがわれること、連体的用法では「つもりである~」などは見えず「つも りの」しかないことなどを述べる。 第6章では、「はずだ」は明治期において発展し、「たはずだ」「ないはずがない」「う はずがない」など多くの形式を持つようになったこと、平成期になるに従って、「はずに なる」「べきはずの」のような用法が古めかしい言い方となったりするものもあり、やや 整理されてきていること、連体用法では「はずだった~」という言い方も見えるが、明治 期以降に増加する格助詞「の」の付加形である「はずの」が普通の言い方であることなど を明らかにする。5