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私は今夜 犯罪者であるアサド政権を支援し 武器を与え財政的にも支援している2つの政府に対して言いたいことがある イランとロシアよ 女性や子どもたちを含む無実の人々を大量に殺害する殺人者と協力したい国とはいったいどんな国なのか と問いたい ( 中略 )2013 年にプーチン大統領と彼の政府は 世界に対

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http://i-sugawara.jp/ 現地時間 4 月 14 日の午前 3 時 55 分、米英仏 3 ヵ国がシリアに対する軍事攻撃を実施した。 米国防総省の発表によれば、地中海や紅海に米海軍の駆逐艦、巡洋艦や原子力潜水艦が 展開し、巡航ミサイル「トマホーク」など約 100 発を発射。これに遠距離からの精密攻撃が可 能な B1 戦略爆撃機が加わり、長距離巡航ミサイル JASSM を発射したという。 英軍はキプロス島の基地からトーネード戦闘機 4 機を発進させ、空中から巡航ミサイル「スト ームシャドー」を発射。仏軍はフリゲート艦 4 隻とミラージュ戦闘機、ラファール戦闘機を使い、 巡航ミサイル 12 発を発射したという(『共同通信』4/14)。 攻撃は約一時間で終了。3 ヵ国による攻撃とは言いながらも、ほとんどは米軍による攻撃だっ たと言っていい。 今回米軍等が標的にしたのは、シリアの首都ダマスカス近郊の化学兵器研究施設、中部ホ ムス西方の化学兵器保管庫など計 3 カ所であった。これらの建物は破壊されたようだが、シリ ア側に人的な被害は出なかった模様。 軍 事 行 動 の 目 的 ・目 標 今回の軍事攻撃を、その「目標」、「手段」、「達成できた成果」という 3 点から分析してみよう。 トランプ大統領は攻撃終了後、「完璧に遂行された。任務完了だ」と述べたが、そもそも今回 の軍事行動の任務(ミッション)=目標とは何だったのだろうか。トランプ大統領は、攻撃開始 を宣言したスピーチの中で次のように述べていた。 「我々の行動の目的は、化学兵器の製造、拡散及び使用に対する強力な抑止を確立させる ことだ。これに関する抑止を確立することは、米国にとって死活的に重要な安全保障上の利 益である」 「我々はシリアの政権が、禁止されている化学物質の使用をやめるまでこの対応を持続させ る用意がある」

2018 年 4 月 16 日号

トランプ政権によるシリア攻撃を分析する

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http://i-sugawara.jp/ 「私は今夜、犯罪者であるアサド政権を支援し、武器を与え財政的にも支援している2つの政 府に対して言いたいことがある。イランとロシアよ、女性や子どもたちを含む無実の人々を大 量に殺害する殺人者と協力したい国とはいったいどんな国なのか、と問いたい…(中略)2013 年にプーチン大統領と彼の政府は、世界に対してシリアから化学兵器を除去すると約束した ではないか。アサドの最近の攻撃と我々の今日の対応は、ロシアが約束を果たさなかったこ との直接的な結果である」。 要するに、アサド政権に化学兵器を使用させないような「抑止」を確立することと、アサド政権 を支援するイランやロシア、とりわけロシアに対して「アサドを支援すべきでない」というメッセ ージを送る、ということが今回の行動の政治的な目的であり、そのためにシリアの化学兵器 製造に関連する施設を破壊してその能力を破壊するという軍事的な目標を立てた、ということ になる。 目 的 達 成 に ほ ど遠 い 成 果 そもそも、4 月上旬にダマスカス近郊の東グータ地区で化学兵器が使用されたという点につい ての中立的な検証はなされておらず、アサド政権側が化学兵器を使用したのかどうか、どん な化学兵器を使用したのか等は分かっていない。アサド政権が複数カ所で化学兵器による攻 撃をしたことが今回の攻撃の前提になっているが、実際に分かっているのは、化学物質散布 による被害が発生したことを示すような映像があるだけである。 米英仏それぞれの政府は、「アサド政府軍がやったことを示す証拠がある」と発表しているが、 その内容は一切公表されていない。ロシア政府もシリア政府も、そもそもこうした事実はない と否定しているが、本稿では、塩素ガスを使ったアサド政府軍による攻撃が行われたと仮定し て話を進めていく。 トランプ大統領が宣言したように、本当に「アサド政権に化学兵器を使用させないような『抑 止』を確立」させたいのであれば、化学兵器使用を決定する権限のある政権上層部の指揮官、 製造に携わる科学者や兵器を使用する兵士たちに懲罰を与え、化学兵器の使用を思いとど まらせる必要があるだろう。そうでなければ抑止の確立などできない。 また、化学兵器を製造する能力、すなわち原材料を調達する能力、輸送、製造、攻撃手段を 破壊して化学兵器の使用を物理的に不能にしてしまうことも必要になるだろう。 今回攻撃の目標にした 3 カ所は、研究開発施設、保管施設と司令部とされている。これが本

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http://i-sugawara.jp/ 当に現在もシリア軍に使用されている施設かどうかは不明であるが、仮にそうだったとしても、 「化学兵器の使用を物理的に不能にしてしまう」ことからは程遠い結果しか得られていないこ とになる。 今回使用されたとされる塩素ガスは商業的に売買がなされており、簡単に調達が可能である。 化学兵器を使用する意志さえあれば入手して使用するのは比較的容易である。 ちなみに、塩素ガスを使った攻撃は、イラクでは 10 年以上前から過激派イスラム国(IS)の前 身にあたるアルカイダ・イラク(AQI)が好んで使っていた手法であり、この地域の紛争を長く追 っている者からすれば、「何を今さら」としか思えない。 政府側も反政府側もこれまで散々使ってきた「使い古された手段」であり、国際社会はこれま でそれに対して何の反応も示してこなかった。ついでに付け加えると、塩素ガスは 2013 年に アサド政権が廃棄を約束した化学物質には含まれておらず、これまでは塩素ガス攻撃を「化 学兵器」攻撃とは呼んでこなかった。 本来、「抑止」を確立するのであれば、化学兵器の使用を決定する権限のある政策決定者に 懲罰を与えることがもっとも効果的であろう。しかし、そうするには、広範囲にわたる攻撃を実 施する必要があり、シリアの民間人に被害が出る可能性も高まる。 また、それよりもむしろ、シリア国内に駐留するロシア軍に被害が及ぶ可能性が高まり、ロシ ア軍が防衛のために反撃をする可能性も飛躍的に高まる。実際、ロシア政府は、トランプ大 統領が攻撃を示唆するメッセージを発した直後から、「攻撃されればミサイルを迎撃し、ミサイ ル発射した対象を破壊する」として反撃を明言していた。 トランプ大統領が感情に任せて攻撃を宣言してしまった後、米政権内では、「どのような軍事 目標を掲げ、どんな手段をとるか」について、激論が戦わされたようである。 「アサドを罰したい」と考えるトランプ大統領を支持するスタッフと、「紛争の拡大を防ぎたい」、 すなわち「ロシアとの衝突を避けたい」とするマティス国防長官派の間で議論が分かれ、最終 的にはマティス国防長官の主張するような「限定的な目標を達成するための限定的な攻撃」 に落ち着いたようである。 マティス国防長官の懸念は、軍事行動に賛成した英国や仏国にも共有されていたようで、両 国は、「限定的な攻撃の場合のみ作戦に参加する」とトランプ政権に伝えたのであろう。

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http://i-sugawara.jp/ 英国のメイ首相は、「この軍事作戦はシリア内戦に干渉するものではない。政権転覆を目指 すものでもない。これ以上この地域で緊張をエスカレートさせることなく、しかも民間人の被害 を可能な限り防ぐための、限定的で標的を絞った攻撃だ」と説明している。 また、米国防総省も、「この攻撃はロシアやイランによる報復を招かないことを確実にすること を視野に入れた限定されたものだ」と説明している。 限定された目標と手段による攻撃に過ぎなかったので、当然、得られる効果も限定的であり、 トランプ大統領が掲げた目的を達成するには程遠い成果しか得られていないことが明白であ ろう。 関 係 国 の 対 応 次に、この攻撃に対する関係国の反応をみてみたい。当事国であるシリアは、当然ながら「自 国が侵略を受け主権を侵害された」として激しく抗議をしている。またシリア大統領府は、アサ ド大統領が攻撃を受けた朝、いつものようにスーツとネクタイを着用し、ブリーフケースを片手 に、「まるで何事もなかった」かのように大統領府に出勤する映像を公表している。さすがプロ パガンダ大国である。 またアサド支持派のシリア国民が、米国がこの程度の攻撃しかできなかったのは我々の勝利 だ、と踊って祝うシーンも映像で報じられた。 ロシアは、今回の攻撃を「国際法違反」だとして米英仏を非難。14 日に米英仏 3 カ国を非難す る決議案を国連安全保障理事会に提出したが、当然、米英仏などが反対して否決された。ち なみに同決議案に賛成したのは中国とボリビアであった。 ロシア、シリアと共闘するイランも、「米英仏 3 カ国の首脳は犯罪者だ」とするコメントを最高指 導者ハメネイ師が発表した。 今回の攻撃を全面的に支持する声明を発表したのは、周辺国ではサウジアラビアとイスラエ ルである。イラクやレバノンは攻撃を批判したものの、15 日にサウジアラビアで開催されたア ラブ連盟の首脳会議では、「化学兵器使用に対する国際的な調査と証明も求める」とした上 で攻撃を支持する声明を出した。

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http://i-sugawara.jp/ 興味深いのがトルコの反応である。トルコは今回の攻撃を「適切な対応だ」として歓迎する声 明を発表し、ロシアやイランと距離を置いた。これまでトルコはロシア、イランと 3 カ国でシリア 和平を進めてきており、米国との関係が悪化していた。 しかし、トルコが 1 月に始めたアフリン侵攻作戦以降、3 カ国の関係は微妙に悪化している。 4 月 9 日、ロシアのラブロフ外相は、トルコが制圧したシリア北部アフリンをアサド政権に移譲 するように呼び掛けた。イランのロウハニ大統領も、最近トルコにアフリンからの撤退を呼び かけたことが分かっており、ロシア、イランがトルコに圧力をかけていることが明らかになって いる。 これに対してエルドアン大統領は 4 月 10 日、「アフリンはアフリンの住民に渡すべきであり、そ の時期は我々が決める。ラブロフ氏が決めるわけではない」と述べており、シリアの今後の和 平プロセスをめぐり、ロシアやイランと利害が衝突している様子が明確になっていた(『シリア: ロシアとイランがトルコに支配地域の移譲を促す』勝又郁子「中東研ニュースリポート」4 月 12 日付」。 シリア和平プロセスをめぐり、ロシアやイランとの関係が微妙になり始めているこの時期に、 エルドアン大統領は、米国を支持する立場を鮮明にすることで、ロシア・イラン・アサド連合を 牽制する姿勢を示したと言える。 トルコとしては、ロシアに対しては米国との関係を強化して「米国側につく」カードを使う必要が あるため、今後は米露間でよりバランスをとる外交を展開する可能性が高まると思われる。 今回の軍事行動を契機に、エルドアン政権とトランプ政権の関係は改善の方向に向かう可能 性がある。 戦 略 的 な イン パ クト 今回の軍事行動に関して、米国内では、FOX ニュースのような保守系メディアは全面的にトラ ンプ大統領の決断を支持し、ニューヨーク・タイムズ紙などは批判的な論調を多く掲載してい るようだ。ただし、大統領を支持するメディアや政治家の間でも、「今回のように懲罰的な意味 を持つ単発の軍事行動があってもいいが、より長期的な対シリア戦略を明確にしなくてはなら ない」とする意見が多く出ている。 今回、このような攻撃をしたところで、シリアにおけるアサド政権有利の戦略状況が変わるわ

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http://i-sugawara.jp/ けではない。トランプ大統領は、今後もこのようなことが起きればまた介入すると宣言している 一方、シリアから早期に米軍を撤収させることも約束しており、「いったい何をやろうとしている のか明確に示すべきだ」と共和党議員からも批判の声が上がっているのだ。 また、今回トランプ政権が、ロシアやイランとの軍事衝突を避けることを優先させて限定的な 攻撃しかできなかったことは、今後ネガティブな影響を地域全体に与えるとする見方も出てい る。 共和党上院議員のリンゼイ・グラハム氏は、ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューの中で、 「(今回の騒動による)埃が収まったところで、今回の攻撃が非常に弱々しい軍事対応だった と見られ、化学兵器を使用してもわずかなコストしか払わなくて済むとアサドに思われてしまう 恐れがある」と述べている。 また米中東研究所のアナリストであるランダ・スリム氏も、「もしこれで終わりならアサドは安 心してしまうだろう」とツイートしているが、私も両氏と同意見である。ロシア政府が「反撃する」 と述べたことで、米国は事実上大規模な軍事攻撃をすることを思いとどまってしまった。すな わち、ロシアにより米国の行動が「抑止」されたわけである。 さらに今回の軍事行動を決定する上での、ワシントンでの政策決定過程も、今後の危機を考 える上で参考になろう。マクマスター氏やティラーソン氏が政権を去ったが、軍事政策におい ては、引き続きマティス国防長官の助言が他のアドバイザーを勝ったという点である。 トランプ大統領は、ツイッターでは大口を叩いたが、結局、ロシアとガチで戦争になるリスクを 突き付けられたら、限定的な攻撃で留めることに同意してしまったということは、今後の対中、 対北朝鮮政策を考える上でも参考になるのではないか。 もっとも、政権内で本当にどのような議論が交わされ、どのような見積もりの下で最終的にト ランプ大統領が決断を下したのかは不明なので、次回の危機でも同じように大統領が引くと 考えることは出来ないが…。いずれにしても、今後、さらにトランプ政権内のアドバイザーたち の力関係や政策決定のメカニズムに注目していきたい。 今回の軍事行動が、直接的にシリア内戦の戦略構図や周辺地域の政治・治安情勢に大きな 影響を与えることはないであろう。しかし、今回米国がロシアやイランとの対立を避けるため に一歩引いて、小さな攻撃しかできなかったことは、中長期的には米国の影響力低下につな がるであろう。

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http://i-sugawara.jp/ これを契機に、米政権内で本格的に対シリア戦略の見直し作業が進むと考えられる。新たな 動きがあり次第、当レポートでもフォローしていきたい。 編集・発行人 菅原 出 発行日:2018 年 4 月 16 日(月)

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