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保険数理学特論ⅢA リスク理論1(第3回) 保険料計算原理

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生命保険の理論と実務(第15回)

公的年金の構造と問題

早稲田大学大学院会計研究科 2018年7月23日 大塚忠義 1

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社会的リスク

資本主義:市場経済に基づく国家運営 私有財産制度と自己責任を基盤 個人・家族の生活リスクは自助努力で備える 民間保険制度の発達 都市化、工業化:村落、職業集団による共同 扶助の低下、家族のつながりの希薄化、 産業革命、市民革命:民主主義の発達:生 存権、社会権は国民の権利とされ、これを守 るのは国の責任 社会的リスク:生存権、社会権が脅かされる リスク

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公私役割分担

•どの経済主体がどの程度まで、生活 のリスクを保障するか 国?会社?自分? •どの経済主体がどの程度まで、保険 料を負担するか 自己責任と国による強制 ⇔最低限の生活の保障(憲法によって 定められた基本的な人権)

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公私役割分担(2)

• 企業にとって、社会保障システムの めの税金、給料、ボーナスと同じく授 業員のためのコスト • 個人にとって、社会保障システムの ための税金、保険料は強制的な保 険加入 国民年金保険料を払っている人? ⇒現在の保険料負担と将来の年金受 給権放棄 どっちを選びますか。

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公私役割分担(3)

•充実した社会保障:EU ⇒高い税金(収入の50%↑、消費税2 5%)、社会保険料、高い社会保守、充実 した福祉、勤労意欲の喪失 •自由と自己責任:米国 ⇒低い税金、低い社会保障、貧富の差の 拡大、治安の悪化 “大きな政府”vs”小さな政府“ どっちを選びますか???

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社会保障(1)

生活リスクの発生によって生ずる経済的 困難から特定の社会構成員またはすべ ての国民を政府の責任により保護し、基 礎的な生活保障を行う制度 公的扶助:公費(税金)を財源に最低限の 給付 社会保険:保険料を財源に所定の給付を 行う。

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社会保障(2)

公的扶助:生活保護 社会福祉:老人福祉、身体障害者福祉、 児童福祉、学校給食、災害扶助など 社会保険:健康保険、年金保険(国民年 金・厚生年金)、介護保険、雇用保険、労 働者災害補償保険(労災)など 公衆衛生:上下水道、ごみ処理など 医療:伝染病予防、保健所など

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社会保障(3)

公的扶助:全額公費、資産調査・所得 調査を行い、生活に困窮していると認 定した人に対し、最低限の生活を維持 するために必要な給付を行う 社会福祉:全額公費、資産調査・所得 調査を行わず、一定の条件を満たした 人に対し、所定の給付を行う。福祉政 策の実現を図る

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年金の基本構造

3層構造による構成 •公的年金:社会保障:政府の責任によ り国民の生活を支える。 •企業年金:企業保障:企業がその従業 員のために •個人年金:個人保障:個人が自己責 任で

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年金の種類

老齢年金 障害年金 遺族年金 公的年金、企業年金、個人年金はどの 機能も持っているが、 老後の生活保障が中心 その他に育英年金

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日本の公的年金制度

防貧機能:加齢、障害、主たる家計の担い手 の喪失などによる稼得能力の減退・喪失に備 えるための社会保険 2階建て制度 1階部分 国民年金:基礎年金として機能する 国民皆年金:すべての国民に共通する給付を 行う 強制加入:現役世代はすべて国民年金の被保 険者となり、基礎年金の給付を受ける、しかし 未加入に対する罰則規定はない

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日本の公的年金制度(2)

2階部分 厚生年金・共済年金などの被用者年金制 度 会社員や公務員は国民年金に加え加入 することで、基礎年金の上乗せ支給として 機能する 所得比例年金制度 雇用主が事務を代行するので未加入者 の割合が低い

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自営業者など 会社員 公務員など 第2号被保険者の 被扶養配偶者 1,904 万人 3,892 万人 978 万人 6,775 万人 ※ 第2号被保険者等とは、被用者年金被保険者のことをいう(第2号被保険者のほか、65 歳以上で老齢、または、退職を支給事由とする年金給付の受給権を有する者を含 第1号被保険 者 第2号被保険者等 ※ 第3号被保険

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国民年金

・政府が管掌する。 ・20-60歳の日本に住所を有するすべ ての人が加入する(日本に住む外国人を 含み、外国に住む日本人を除く) ・老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基 礎年金 ・65歳から年金支給開始、終身年金 ・保険料の3分の1を国庫負担している

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厚生年金など

•厚生年金:3599万人 •国家公務員等共済組合:441万人 •国民年金:1742万人 共済組合は厚生年金への統合により 減少している。(eg JR共済)現在厚生 年金への統合が検討されている。

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厚生年金(1)

•代表的な被用者年金制度 •政府が管掌する。 •民間企業(従業員5人以上)などで働く 被用者を対象とする •70歳以下の被用者に適用される強制 年金制度 雇い主の罰則規定あり •年金の種類は老齢年金、障害年金、遺 族年金

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厚生年金(2)

•老齢厚生年金は老齢基礎年金の受 給者に対し、上乗せ支給の形で終身支 払われる。 •保険料は労使で折半。事務経費は国 庫負担 •保険料は総報酬額の13.58%

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日本の公的年金の沿革(1)

1875年(明治7年):海軍退隠令 1876年(明治8年):陸軍恩給令 1884年(明治16年):官吏恩給令 軍人・官吏への恩給制度(全額租税) が起源 徴兵制度への反発への対応 1907年(明治39年):帝国鉄道庁職員 救済組合

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日本の公的年金の沿革(2)

1929年(昭和4年):大恐慌始まる 1931年(昭和6年):満州事変 1939年(昭和14年):船員保険法 戦時体制下での船員の医療や労災保険も 含む制度 1941年(昭和16年):太平洋戦争:戦費国債 の大量発行 1942年(昭和17年):労働者年金保険法 工場で働く男子労働者を対象 1944年(昭和19年):厚生年金保険法 適用範囲を男子事務員と女子労働者に拡 大

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日本の公的年金の沿革(3)

1954年(昭和29年):厚生年金法の大 改正。実質的な再スタート、戦後の混 乱期、復興資金が必要 1955年(昭和30年):SF講和会議 1959年(昭和34年):国民年金法。国民 皆年金制度がスタート 1985年:基礎年金の導入により、現行 制度となる。

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日本の企業年金の沿革

1905年(明治37年):鐘紡の従業員年 金給与規定 1914年(大正3年):三井商店(三井物 産)の使用人恩給内規 1952年(昭和27年):法人税法改正。退 職給与引当金制度 1962年(昭和37年):法人税法改正。税 制適格年金制度の導入 1964年(昭和39年):東京オリンピック

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公的年金の課題

年金制度が崩壊すると言われています が、なにが問題なのかを考える •高齢化社会 •出生率の低下 •長期間にわたる低金利の継続 •複雑な制度 •年金制度と現在の国民の生活パター ンとのかい離

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公的年金制度全体の問題(1)

・複雑な制度 もともとは異なった趣旨で始まった制度の 統合 給付額の差。財政状況の差 制度ごとに損得、有利不利があるため一 本化が極めて困難 ・給付水準に関する曲解 そもそも公的年金で老後の生活をすべて 賄うことは想定していない制度 北欧と異なりそのための必要な保険料を 徴収していない

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公的年金制度全体の問題(2)

・家族単位の年金制度 専業主婦が当たり前のころに構築され た制度。130万円以上の給料はもらわな い方が得。独身者・離婚の不利益 ・制度管理者(社会保険庁)の事務疎漏 30兆の収入、50兆の支出、160兆円の 預り資産を持つ機関としての事務体制の 不備、高コスト体質

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公的年金制度全体の問題(3)

・想定を上回る死亡率、平均寿命の改善 支払年金額の増加 ・想定を下回る出生率の低下 保険料を支払う勤労者の減少:収入保 険料の減少 ・想定を下回る低金利と想定をはるかを 超える低金利の継続 1.01の50乗は1.64、1.05の50乗は14.55

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公的年金の財政方式:賦課方式

•加入者全体(公的年金では国民全体)の保 険料収入と年金支払のバランスを考慮する 方法 •その年の保険料収入によってその年の年 金支払が賄われる •勤労者が高齢者の生活を支えるという観点 で、国家によって世代間扶を行う制度である (家族による支えあいを国家が行う) •年金制度を開始するときに既に年齢に高い 人にも給付するためにはこの方式の方が好 ましい

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賦課方式(2)

•すべての国の公的年金に、賦課方式の 考え方が含まれている。ただし、足らない 部分が国庫で負担 •5年に一度財政再計算を行い、保険料・ 年金額の変更を行っている •インフレーションに強いが、人口構造の 変化に弱い 高齢者の増加、勤労世代の減少は直撃

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積立方式

•各個人の将来の年金給付に必要な資金 を加入期間中に事前積立する •それぞれの被保険者の収入と支出のバ ランスが取れている •民間の年金はすべてこの方法によって いる •人口構造の変化に影響されないが、イ ンフレーションに弱い 長期間にわたる低金利は影響大

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修正積立方式(1)

•積立方式と賦課方式の折衷 •現在の日本の公的年金の財政制度 •現在ほぼすべての先進国でこの制度が とられている •日本での公的年金は最初は完全積立 方式であった •昭和40年代後半からのオイルショック、 狂乱物価といわれる高インフレ:30%の インフレが数年続いた

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修正積立方式(2)

•年金額をインフレに連動して引き上げる こと決定、しかしその分の保険料を過去に はもらっていたわけではない •その間、保険料は十分に引き上げること はできなかった •そのしわ寄せは現役世代、若者世代へと •現在でも176兆円の積立金、支払年金額 の3年分:基本は積立方式を維持している

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公的年金の財政の問題(1)

財政破たんの危機? 国の財政破たん:国が債務の支払を約定 どおりに行えないこと 国の債務:国債の利払い、公務員の給与、 公共事業の代金etc.. 年金財政の破たん:年金の支払を約定ど おりに行えないこと 現実に発生すると思えますか?

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公的年金の財政の問題(2)

受け取れる年金の総額は払った保険料 より少ない? 国民年金:1/3は国庫補助 厚生年金:雇用主が同額の負担 少なくとも国や会社が負担した分はお得

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公的年金の財政の問題(3)

平均寿命の延びは年金受給者にとってはお得 •保険料は一律月16,340円(2018年) •平均受給年金額月55千円 20歳から40年すべて支払うと784万円 月55,000円貰ったら約12年分 65歳の平均余命 男19.55年、女24.38年(2016年) 男 1290万円:保険料の1.6倍 女 1609万円:保険料の2.1倍

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公的年金の財政の問題(4)

低金利は年金財政に直撃 :年金預り金の運用成績に影響 1.01の50乗は1.64、1.05の50乗は14.55 年金の支給額には物価スライド条項があ る 金利と消費者物価の変化は並行

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公的年金制度全体の問題(5)

年金積立金運用独立行政法人(GPIF) 日本最大級の機関投資家: 2017年度末156兆円: 大きすぎるため資産運用に大きな制約: 効率的な運用はできない、常に平均 株が下がりそうでも売ることができない

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厚生年金の問題(1)

•年金の水準を維持するための、保険料の負担 水準はどの程度か? •修正積立方式のため、死亡率の改善と低金利 による影響は大きい •制度の設計は在職時の2/3の年金水準を目指 していた。 •60歳以上人口が全体の8%、金利が6%のときに 創設した制度。 •現行の保険料率13%、月給20万なら27千円。 他に所得税・住民税・健康保険・雇用保険 •年金水準維持のために将来20-25%まで上昇。

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厚生年金の問題(2)

•被用者年金を国が管理しつづける必要が あるか? •強制である必要が一体あるのか?(国民 年金と違って給料から天引きなので強制力 が強い) •財政方式を完全な積立方式に変更? •民営化? •企業にとっての負担が大きいと非正規雇 用が増大

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公的年金の最大の課題

公的年金制度の構築、変革は、国会で決議 保険数理、経済の問題より政治 投票者の意向が重要 選挙に行くのは •高齢者>弱年層 •地方>都市部 •農業従事者>給与所得者 選挙の結果が民意です。

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Question?

お疲れ様でした。

参照

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