平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠
ゴルフ会員権の売却と損益通算 ゴルフ場の倒産
ゴルフ会員権の売却と損益通算
1.概要 個人で所有する預託金方式のゴルフ会員権の場合、総合課税の譲渡所得として、その売却損は損益通算できま す(所基通 33-6 の 2)。 ゴルフ会員権やレジャークラブ会員権は優先的プレー権と預託金返還請求権の 2 要素があり、売却した場合は譲 渡所得になります。これは税法に限定列挙されている競走馬・別荘・骨董品のように「生活に通常必要でない資産」 (所令 178)に該当しないためです。 社会通念上は、ゴルフ会員権は、「生活に通常必要でない資産」に該当すると 考えられます。しかし、法律上はそれが限定列挙されているため税務上このような取扱となっています。したがって、 損切りによる譲渡所得の赤字があれば、給与所得等の黒字と損益通算出来ます。この譲渡所得の計算は、所有期 間が 5 年以下か 5 年超かで総合課税の計算が変わってきます。 所有期間 計算式 関連法規 短期(5 年以下) 譲渡所得=譲渡収入-取得費-譲渡費用-特別控除 50 万円 所法 33③一 長期(5 年超) 譲渡所得=短期譲渡所得×1/2 所法 22②二 2.設例 事業所得・給与所得・不動産所得・退職所得が多額の黒字の場合は、含み損のあるゴルフ会員権を売却すると課 税所得を減少させることが出来ます。売却損が 4,000 千円のケースでは、以下の通りです。 (金額単位:千円) 確定申告するケース しないケース 給与収入 8,000 8,000 給与所得(=給与収入-各種所得控除) ※ 3,680 3,680 譲渡所得(ゴルフ会員権売却損) △4,000 - 課税総所得 0 3,680 所得税額 0 308 住民税額 4 372 所得税+住民税額 4 680 ※給与所得控除+配偶者控除+扶養控除 2 人+社会保険料控除+基礎控除等=4,320 千円と仮定 上記の通り、大きな差が出てきます。毎年 12 月の税制改正大綱が発表される頃になると、「今年こそ廃止されるの ではないか?」と話題になります。税制変更で、いつ損益通算が不可になってもおかしくありません。ゴルフ会員権に 限らず、リゾート施設会員権やレジャークラブ会員権も施設の優先利用権があるので同様の取扱となっています。な お、法人名義のゴルフ会員権の売却損は損金算入可です。3.確定申告の必要資料リスト ・所得税の確定申告書(B 様式) ・譲渡所得の内訳書(ゴルフ会員権用) ・給与所得の源泉徴収票(原本) ・売買計算書(写) ・売却手数料の領収書 ・取得した際の領収書、計算書等(写) ・取得した際に会員権業者に支払った領収書や預託金の預り証、名義書換料、仲介料等の領収書
ゴルフ会員権と倒産
1.概要 ゴルフ会員権が株式方式・社団法人方式ではなく預託金方式である場合の現行の所得税法上の取扱は、以下の 通りです。 ①民事再生法、会社更生法等の適用で預託金が切り捨てられたら、「家事費」として切捨てされる。(損益通算でき ない) 再建型処理が行われた場合は、たとえ預託金債権が 100%切捨てとなっても、家事上の損失として切り捨てられ損 益通算は出来ません。民事再生法に基づく再生計画により、ゴルフ会員権の預託金全額が切り捨てられてプレー権 だけのゴルフ会員権となった場合は、そのプレー権だけのゴルフ会員権の取得価額はその取得時の時価であるとさ れます(国税不服審判所 平成 18 年 11 月 29 日裁決事例)。ゴルフ場経営会社が法律上の倒産手続をした場合、ゴ ルフ会員権業者に例えば 100 円で形式的に譲渡しても、倒産によりプレー権が消滅しているゴルフ場の会員権は譲 渡所得の起因とならない金銭債権(預託金返還請求権)の譲渡をしたものとされます。 有償で譲渡しているのだから譲渡損失となり、他の所得と損益通算が可能と認識をしている事例が多くみられます。 プレー権が消滅した後のゴルフ会員権は、単なる預託金返還請求権に過ぎず、譲渡所得の基因となる資産の譲渡 ではなく金銭債権の譲渡なので損益通算は不可です。また、雑損控除もできません。 民事再生計画等で預託金の一部例えば 95%が切捨てられた会員権を売却した場合は、会員が従来どおりプレー 権を行使できるなら、その会員権は譲渡所得の資産に該当しますので損失を損益通算できます。その会員権を売却 したときの取得費は、預託金の一部が切捨てられても、その会員権の実際の取得価額になります。具体的には、 2,000 万円で取得したゴルフ会員権(預託金は 1,000 万円)が民事再生法で預託金の 90%がカットされても、プレー 権が保証されている限り、100 万円で売却すれば 1,900 万円が損益通算できます(H15.7.4 資産課税情報第 13 号)。 ②破産法、特別清算による処理の場合 破産宣告がなされた場合は、ゴルフ会員権はプレー権が無くなり預託金返還請求権のみとなり、譲渡した場合の売 却損は損益通算できません。 ③金融機関が担保権を行使してゴルフ場自体が競売されてしまった場合 この場合も、ゴルフ会員権はプレー権が無くなり預託金返還請求権のみとなり、譲渡した場合の売却損は損益通算 できません。 ④退会届をゴルフ場経営会社に提出して預託金の返還を受けた場合 預託金の返還は金銭債権を回収する行為であり、ゴルフ会員権を譲渡したことにはなりません。このため、損失が 出ても給与所得や事業所得とは損益通算できません。また、この返還により生じた損失は、単なる「家事上の損失」と なり所得税の計算上は何の控除も出来ません。また売却した場合でも、名義変更せずにゴルフ会員権を売却していわゆる買戻し条件付で売買を行うクロス取引は、 損益通算が認められないケースがあります(国税不服審判所 平成11年2月8日裁決事例)。営業譲渡のケースでゴ ルフ会員権としての性質を有していれば、損益通算できる場合があります。 2.注意点 法人での以下のようなケースの取り扱いは、個人の所得税の場合とは別途の検討が必要となります。 ゴルフ会員権が分割された場合 ゴルフ会員権の預託金の一部が返還された場合 ゴルフ会員権の預託金の一部が切り捨てられた場合 会社更生法の申立てがあった場合のゴルフ会員権への貸倒引当金の計上 3.法人会員の場合の比較表 パターン 個人会員 法人会員 プレー可能 (再建型倒産手続の申立 が行われた場合) プレー権があるので、損失計上も損益通算 も出来ません。 預託金返還請求権の全部または一部が顕在化していないの で、貸倒引当金や貸倒損失、評価損等は損金算入できません。 会社更生法の適用申立だけでは金銭債権が顕在化していない ので、個別評価の貸倒引当金で 50%損金算入はできません (法人税法 52 条①)。 プレー不可 (清算型倒産手続の申立 が行われた場合) 個人所有のゴルフ会員権には事業関連性 が無い場合は、申立段階では損失計上でき ません。 預託金返還請求権が顕在化したので、貸倒引当金の個別評 価による繰入の形式基準を満たす場合は 50%の損金算入が可 能です(民事再生手続開始の申立時点、法令 96①三)。 預託金の一部切捨て (裁判所の法的手続きで 決定された場合) 家事関連費となり貸倒損失は事業経費には ならず、雑損控除も認められません。※ 預託金返還請求権(簿価と一致するとは限らない)が顕在化し た部分つまり切捨て部分は、金銭債権として貸倒損失及び貸倒 引当金の対象とすることが出来ます(民事再生計画の認可決定 時点、法人税基本通達 9-7-12)。 ※ゴルフ場が破綻して経営母体が営業譲渡した場合は、スポンサーへの経営引継ぎ時の会員権の処理内容で、譲渡損失計上の可否 が決まります。プレー権が存続するのかしないのか、いったん買い取られるのか否かでも判断が異なります。また、預託金部分が切捨 てされた後に譲渡する場合には、従来のゴルフ会員権と同一性を有しているかどうかも、損益通算の可否に関係してきます。
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