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契約社員ハンドブック 2018 はじめに 近年は就業形態の多様化が進み パートタイマー 派遣労働者 契約社員などのいわゆる非正規労働者は 全労働者の4 割を超えています かつては正社員を補う形で活用されていた非正規労働者は いまでは職場に欠くことのできない人材となっています しかし一方で 雇止めや契

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契約社員ハンドブック

2018

◆ 労働問題全般の相談をしたいときは

労働相談情報センター

労働相談情報センターでは、賃金不払いや解雇をはじめ、労働問題全般に関す る相談に応じています。 ●電話相談(随時) 東京都 ろうどう 1 1 0 番 0570−00−6110 月〜金:午前9時〜午後8時(終了時間)     (祝日及び12月29日〜1月3日を除く) 土  :午前9時〜午後5時(終了時間)     (祝日及び12月28日〜1月4日を除く) ●来所相談(予約制) 担当区域(会社所在地)に応じて、各事務所が月〜金曜の午前9時〜午後5時(終了時間) まで実施しています。(祝日及び12月29日〜1月3日は除く。) 窓口 所在地 電話番号 担当地域(会社所在地) 夜間 労働相談情報 センター(飯田橋) 千代田区飯田橋3-10-3東京しごとセンター9階 03(3265)6110 千 代 田 区、中 央 区、新 宿 区、 渋谷区、中野区、杉並区、島しょ 月曜金曜 大崎事務所 品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎 ウエストタワー2階 03(3495)6110 港区、品川区、目黒区、 大田区、世田谷区 火曜 池袋事務所 豊島区東池袋4-23-9 03(5954)6110 文京区、豊島区、北区、 荒川区、板橋区、練馬区 木曜 亀戸事務所 江東区亀戸2-19-1 カメリアプラザ7階 03(3637)6110 台東区、墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区 火曜 国分寺事務所 国分寺市南町3-22-10 042(321)6110 立川市、武蔵野市、三鷹市、 青梅市、昭島市、小金井市、 小平市、東村山市、国分寺市、 国立市、福生市、東大和市、 清瀬市、東久留米市、武蔵 村山市、羽村市、あきる野市、 西東京市、西多摩郡 月曜 八王子事務所 八王子市明神町3-5-1 042(645)6110 八王子市、府中市、調布市、 町田市、日野市、狛江市、 多摩市、稲城市 水曜 ●夜間来所相談(予約制) 夜間は、各事務所が担当曜日に午後8時(終了時間)まで実施しています。 (祝日及び12月29日〜1月3日を除く。) ●土曜来所相談(予約制) 土曜日は、飯田橋で午前9時〜午後5時(終了時間)まで実施しています。 (祝日及び12月28日〜1月4日は除く。)

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契 約 社 員 ハ ン ド ブ ッ ク

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契約社員ハンドブック 2018

はじめに

 近年は就業形態の多様化が進み、パートタイマー・派遣労働者・契約 社員などのいわゆる非正規労働者は、全労働者の4割を超えています。 かつては正社員を補う形で活用されていた非正規労働者は、いまでは職 場に欠くことのできない人材となっています。  しかし一方で、雇止めや契約期間中の解雇などの非正規労働者に関わ る労使間トラブルが増加の一途を辿るなど、多くの問題を抱えていま す。東京都では、労働相談情報センターにおいて、非正規労働者の直面 するトラブルに関する相談にも応じています。平成28年度の労働相談件 数は53,019件となっており、その4割以上を、非正規労働者からの相 談が占めています。  この冊子は、非正規労働者のうち、契約社員(有期契約労働者)に関 わる労働法の知識を、わかりやすくまとめたものです。なお、パートタ イム労働や派遣労働については、それぞれ別個の法律に基づいた法制度 が確立していますので、この冊子では触れません。  現在契約社員として働いている方、これから契約社員として働きたい と考えている方に、雇用に関するルールを理解していただき、また、働 く上でのトラブルが未然に防止されることを願って作成しました。  ご活用いただければ幸いです。  平成30年3月

東京都産業労働局雇用就業部

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契約社員(有期契約労働者)と労働法  

  3

契約社員(有期契約労働者)の待遇  

  5

労働契約の締結・契約期間  

  7

契約社員(有期契約労働者)と就業規則  

14

不合理な労働条件の相違の禁止  

15

契約の終了・更新  

17

賃金  

26

労働時間  

29

年次有給休暇  

33

母性保護・育児休業・介護休業  

35

雇用保険と社会保険  

40

労働組合に加入する  

43

困ったときの相談窓口  

46

目  次

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契約社員(有期契約労働者)と労働法

Ⅰ   契約社員(有期契約労働者)と労働法

1  労働契約に期間の定めのある労働者(有期契約労働者)

 この冊子で扱うのは、労働契約に期間の定めのある労働者(有期契約労働 者)です。  この冊子の題名にある「契約社員」は、フルタイムで働いている期間の定め のある労働者の代表的な名称です。ただし、「契約社員」「準社員」「嘱託」な ど呼び名が違っていても、労働契約に期間の定めがあれば、この冊子の対象と なります。  また、「パートタイマー」「アルバイト」などと呼ばれている短時間労働者で あっても、労働契約に期間の定めがあれば、基本的にはこの冊子の記述があて はまります。もっとも、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パー トタイム労働法)など、短時間労働者特有のルールもありますので、その点は 注意が必要です。短時間労働者については東京都が発行している『パートタイ ム労働ガイドブック』などを参照してください。  この冊子では、期間の定めのある労働契約を、「有期労働契約」「有期契約」 と呼び、労働契約に期間の定めのある労働者を「有期契約労働者」と呼びま す。また、期間の定めのない労働契約を、「無期労働契約」「無期契約」と呼び ます。

2  有期契約労働者にも労働法や労働保険・社会保険は適用されます

 有期契約労働者であっても、労働者である限り(p4参照)、原則として、 通常の労働者と同じように労働基準法(労基法)、最低賃金法、労働安全衛生 法、労働契約法(労契法)、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法など の労働者保護法令が適用されます。  また、育児・介護休業法(育介法)、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保 険法も、有期契約労働者がその要件を満たしていれば適用されます。

3  正社員と比べて特徴的なこと、異ならないこと

 法律では、有期労働契約については、期間の定めのない労働契約(無期労働 契約)にはない、特徴的なルールが定められています。例えば、期間の長さの 制限や、契約期間中の解雇の制限、いわゆる無期転換ルール、雇止めの制限、 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止などがあります(詳しく は各項目を参照してください)。

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契約社員(有期契約労働者)と労働法

 逆に、有期契約労働者だからといって労働保険・社会保険の適用が全くない わけでもありませんし(p3)、有期契約労働者であることを理由とした嫌がら せをすることも許されません。  このように、有期労働契約に特徴的なことがあるとともに、他の社員と異な らないこともあることに注意しなければなりません。

4  「業務請負契約」や「業務委託契約」に注意

 労働関連法規は、「労働者」に適用されます。「労働者」とは、①使用者に使 用される者で、②賃金を支払われる者をいいます(労働基準法9条、労働契約 法2条1項)。  「業務請負契約」や「業務委託契約」という名称の契約で働いている場合に は、「労働者」に当たらない場合があり、労働関連法規が適用されない可能性 があります。請負契約や(準)委任契約の当事者については、最低賃金法や労 働基準法などによる労働条件の最低基準が適用されず、労災保険、雇用保険、 社会保険も加入対象外となります。  ただし、「労働者」かどうかは、契約の名称ではなく、実態で判断されま す。この判断においては、会社からの業務指示などを断ることができるか、業 務の進め方について具体的な指揮命令を受けているか、報酬が一定時間働いた ことへの対価として決められているか、機械器具や材料はだれが負担するの か、他社に従事することがあるのかなどが、重要な点といえます。  「労働者」かどうかは判断が困難なケースもあるので、トラブルが生じた場 合には、東京都ろうどう110番など、行政機関への相談をお勧めします。

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契約社員(有期契約労働者)の待遇

Ⅱ   契約社員(有期契約労働者)の待遇

1   均衡考慮の原則・仕事と生活の調和への配慮の原則

 労働契約は、労働者と使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締 結・変更すべきものとされています(労働契約法3条2項)。  また、労働契約は、労働者と使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締 結・変更すべきものとされています(労働契約法3条3項)。

2   不合理な労働条件の禁止・通常の労働者との均衡

 労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定 めがあることによる不合理と認められるような労働条件の相違を設けることを 禁止しています(詳細はp15)。  また、事業主は、以下の(1)〜(3)のような、通常の労働者との均衡のと れた待遇に配慮や努力をするべきとされています(有期契約労働者の雇用管理 の改善に関するガイドライン)。 (1) 賃金等  事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しながら、職務の内容、職務の 成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、賃金(基本給、賞与、職務に関す る手当)を決定するよう努める。  また、退職手当や通勤手当など職務に密接に関連して支払われるもの以 外の手当についても、就業の実体、通常の労働者との均衡等を考慮して定 めるように努める。 (2) 福利厚生  事業主は、通常の労働者が利用できる福利厚生施設のうち、給食施設、 休憩室、更衣室については、有期契約労働者も利用できるよう配慮する。  そのほか、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等を目的とした 福利厚生施設の利用、その他の福利厚生の措置についても、有期契約労働 者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするよう努 める。 (3) 苦情処理体制の整備  事業主は、有期契約労働者から賃金、教育訓練、福利厚生等に関して苦 情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事 業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処 理するための機関)に対して処理を委ねるなどして、自主的に解決するよ う努める。

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契約社員(有期契約労働者)の待遇

3   無期転換・キャリアパスへの配慮等(正社員登用)

 一定の条件を満たした有期契約労働者が無期転換の申込みを行った場合、無 期契約に転換されます(労働契約法18条。詳細はp21)。  また、事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、次の①〜③のいず れかの措置を講ずるべきとされています(有期契約労働者の雇用管理の改善に 関するガイドライン)。 ① 通常の労働者の募集を行う場合に、募集条件を有期契約労働者にも周知 する。 ② 通常の労働者のポストを社内公募する場合に、有期契約労働者にも応募 の機会を与える。 ③ 通常の労働者への転換のための試験制度を設けるなどの措置を構ずる。

4   教育訓練・能力開発の機会の付与

 事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、職務遂行に必 要なものについては、職務内容が同じ有期契約労働者に対しても実施するべき とされています。  そのほかにも、通常の労働者との均衡を考慮して、職務の内容、職務の成 果、意欲、能力、経験等に応じ、有期契約労働者に対して教育訓練を実施する ように努めるべきとされています(有期契約労働者の雇用管理の改善に関する ガイドライン)。 ※ 契約社員(有期契約労働者)の待遇については、今後、法律が改正され る可能性があります(平成30年3月現在)。

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労働契約の締結・契約期間

Ⅲ   労働契約の締結・契約期間

1   契約期間の制限

 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃 金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することにより成立します (労働契約法6条)。有期労働契約を結ぶ場合には、労働契約の期間についても 合意する必要があります。  有期労働契約の期間については、次のような制限があります(労働基準法 14条)。 <原則>  上限3年(以下の例外の場合を除く) <例外> (1) 高度の専門的知識等を有する労働者(※)との間に結ばれる労働契約 …上限5年 (2) 満60歳以上の労働者との間に結ばれる労働契約…上限5年 (3) 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(例えば、有期の 建設工事など)…期間終了まで ※具体的には、以下のような労働者である必要があります。 ① 高度なものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等 を有する労働者であること。 ② その高度の専門的な知識等を必要とする業務に就く労働者であること。  (厚生労働大臣が定める基準(平成15年厚生労働省告示第356号)で は、博士の学位を有する者、弁護士等のいわゆる「士業」、医師等一定 の資格を有する者などが定められています。)  短期間の契約の反復更新後に雇止めがされることは紛争が発生する要因にな ります。そのような紛争を防止するため、不必要に短い期間を定めて、契約を 反復更新することがないよう配慮しなければなりません(労働契約法17条2 項)。  また、使用者は、1回以上労働契約を更新し、かつ、雇入れから1年を超え て継続勤務している者について、労働契約を更新しようとする場合には、契約 の実態や労働者の希望に応じ、契約期間をできる限り長くするよう努めなけれ ばなりません(更新及び雇止めに関する基準3条)。

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労働契約の締結・契約期間

表:明示しなければならない労働条件 必 ず 明 示 し な け れ ば ならない事項 ①労働契約の期間 ②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準 ③仕事をする場所、仕事の内容 ④仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業 時転換(交替制勤務のローテーション等) ⑤賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期 ⑥退職(解雇の事由を含む) ⑦昇給 制度を設ける場合に明示 しなければならない事項 ⑧退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支 払いの方法と支払いの時期 ⑨臨時に支払われる賃金(退職金は除く)、賞与および最低賃金額 ⑩労働者に負担させる食費、作業用品など ⑪安全・衛生 ⑫職業訓練 ⑬災害補償・業務外の傷病扶助 ⑭表彰・制裁 ⑮休職 書面で明示しなければならない事項

2   労働条件の明示

 労働契約を結ぶときには、毎月の賃金、労働時間、休憩時間、休日、休暇、 残業の有無など、あらかじめ決めておかなければならないことがたくさんあり ます。それらをすべて口頭で済ませてしまうと、後に「言った、言わない」の トラブルのもとになりかねません。  このようなトラブルを防ぐため、使用者は、労働契約を結ぶときには、労働 者に対して、下表のような労働条件を明らかにしなければなりません(労働基 準法15条)。特に、下表の①〜⑥までの事項については、書面を交付しなけれ ばなりません(同法施行規則5条)。  ①〜⑥以外の労働契約の内容についても、使用者はできる限り書面により確 認するものとされています(労働契約法4条2項)。  労働契約を更新するときにも、労働条件を明示することが必要です。  なお、使用者から労働者に交付する、労働条件が記載された書面について、 特に決められた様式があるわけではありませんが、厚生労働省は、10ページ のようなモデル労働条件通知書を公表しています。  採用のときには、労働条件が記載されている書面をもらうのを忘れないよう にしましょう。また書面は、後でトラブルになったときに大事な証拠となるこ

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労働契約の締結・契約期間

3   明示すべき更新の基準の内容

 前ページの表の②「更新する場合の基準」の内容については、労働者が、期 間満了後の雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるもの であることが必要です。具体的には、以下の(1)(2)のようなものを明示し なければなりません(厚生労働省通達平成24.10.26基発1026第2号)。 (1)  更新の有無 具体例  ◦自動的に更新する  ◦更新する場合があり得る  ◦契約の更新はしない 等 (2)  更新の判断基準の明示(更新しないことが明らかな場合は、明示義務 はありません)。 具体例  ◦契約期間満了時の業務量により判断する  ◦労働者の勤務成績、態度により判断する  ◦労働者の能力により判断する  ◦会社の経営状況により判断する  ◦従事している業務の進捗状況により判断する 等  明示した更新の基準を変更する場合には、労働者との合意その他の方法によ り、適法に変更されなければなりません。  なお、雇止めをする場合には、雇止めの基準があっても、その解釈や適用を めぐってトラブルになる可能性はあります。トラブル防止の視点から、あいま いで抽象的な基準は避けましょう。なお、雇止めの有効性については労働契約 法19条に基づいて判断されます(詳細はp18)。

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労働契約の締結・契約期間

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労働契約の締結・契約期間

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労働契約の締結・契約期間

厚生労働省ホームページ「主要様式ダウンロードコーナー」より (http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/)

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契約社員(有期契約労働者)と就業規則

Ⅳ   契約社員(有期契約労働者)と就業規則

1   就業規則に定めなければならない事項

 就業規則とは、労働条件や服務規律など労働者に共通に適用される事項につ いて使用者が作成した文書をいいます。  就業規則には、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交代勤務をさ せる場合の就業時転換に関する事項、賃金及び退職に関する事項(解雇の事由 を含む)について、必ず記載しておかなければなりません。そのほかにも、制 度化する場合には必ず記載しておかなければならない事項もあります(労働基 準法89条)。

2   就業規則の作成・意見聴取・届出・周知義務

 常時10人以上の労働者を雇用している使用者は、必ず就業規則を作成し て、労働基準監督署長に届け出なければなりません。ここでいう「労働者」に は、パートタイマーや有期契約労働者なども含まれます。また、就業規則を変 更したときも、届出が必要です(労働基準法89条)。  就業規則を作成又は変更するときには、使用者は、①労働者の過半数で組織 する労働組合、これがない場合には、②労働者の過半数を代表する者の意見を 聴かなければなりません(同法90条)。  また、使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示したり、 労働者に書面を交付したりするなどの方法によって、労働者に周知しなければ なりません(同法106条)。

3  有期契約労働者についての就業規則

 正社員と有期契約労働者とで労働条件が異なる場合には、就業規則の中に特 別な規定を盛り込むか、有期契約労働者用の就業規則を作成する必要がありま す。有期契約労働者についての就業規則がなく、正社員を念頭においた就業規 則しかない場合、その就業規則が有期契約労働者に適用されることにもなりか ねません。他方、有期契約労働者について適用されるべき就業規則がないとす ると、就業規則の作成義務に違反することにもなりかねません。  また、有期契約労働者に係る事項について就業規則を作成または変更しよう とするときは、その事業所の有期契約労働者の過半数代表者の意見を聴くよう に努めるべきであるとされています(有期契約労働者の雇用管理の改善に関す るガイドライン)。

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不合理な労働条件の相違の禁止

Ⅴ   不合理な労働条件の相違の禁止

1   不合理な労働条件の相違の禁止

 ①同一の使用者に雇用されている有期契約労働者と無期契約労働者との間 で、②期間の定めがあることにより、③不合理な労働条件の相違を設けること は禁止されています(労働契約法20条)。 ■ 対象となる労働条件  労働契約法20条は、一切の労働条件について適用されます。すなわち、賃 金や労働時間等に限られず、服務規律や福利厚生等、労働契約の内容となって いる労働者に対する一切の待遇について、期間の定めの有無によって不合理な 労働条件の相違を設けることは許されません。 ■ 「不合理」の判断方法  労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、①職務の内容(業務の内 容及び当該業務に伴う責任の程度)、②当該職務の内容及び配置の変更(人事 異動や役割の変化など)の範囲、③その他の事情(合理的な労使慣行など) を考慮して判断されます。厚生労働省の通達(平成24.8.10基発0810第2 号)では、不合理性は、これらの事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断 されるとしています。  また、通達では、以下のような具体例が挙げられています。 具体例1:通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違さ せることは、上記①〜③を考慮して、特段の理由がない限り、合理的とは認 められないと解されています。 具体例2:定年後に有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件が、定 年前の他の無期契約労働者と相違することについては、定年の前後で、上記 ①、②等が変更されることが一般的であることを考慮すれば、特段の事情が ない限り、不合理とは認められないと解されています。

2  労働契約法20条違反の効果

 労働契約法20条により不合理とされた労働条件の定めは無効となります。 その場合、不法行為として損害賠償が認められる可能性があります。

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不合理な労働条件の相違の禁止

 無効とされた労働条件について、厚生労働省の通達では、無期契約労働者と 同じ労働条件となるとしています。しかし、裁判例には、無期労働契約者と同 じ労働条件になるわけではなく、不法行為のみを問題とするものもあります。 ※ 不合理な労働条件の相違については、今後、法律が改正される可能性が あります(平成30年3月現在)。

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契約の終了・更新

Ⅵ   契約の終了・更新

① 労働契約・就業規則に退職可能な事由の定めがある(かつ、その事由に あてはまる事実がある)場合。 ② やむを得ない事由がある場合(民法628条)。  ただし、やむを得ない事由が労働者の過失によって生じた場合には、使 用者に損害賠償の責任を負います。 ③ 1年を超える有期労働契約を結んだ労働者で、当該労働契約の初日から 1年を経過した日以降に、使用者に申し出た場合(労働基準法137条)。 ④ あらかじめ明示された労働条件と実際の労働条件が違う場合(労働基準 法15条2項)。

1   契約期間中の労働者の退職

 労働者も契約を守る義務があり、契約期間中に一方的に退職した場合には契 約違反の問題が生じます(民法627条1項は、無期契約についてのみ、解約 申入れ後2週間で契約が終了するとしています)。  以下の場合には、契約期間中でも退職することができます。  使用者との合意で退職することも可能です。一方的に退職する前に、なるべ く早い段階で使用者に相談し、合意の上での退職を試みるのが良いでしょう。

2   契約期間中の解雇

 解雇をする場合には、解雇をすることができるのか(解雇事由)、解雇をす ることができるとして、どのような手続きが必要なのか(解雇手続)という点 が問題です。つまり、解雇をするためには、以下の(1)(2)のいずれも満た す必要があります。 (1) 解雇事由  使用者は、やむを得ない事由がなければ、契約期間途中で労働者を解雇す ることはできません(労働契約法17条1項)。労働契約や就業規則に「契約 期間中であっても○○という事由があれば解雇することができる」などと解 雇事由を定めていても、その事由がやむを得ないものでなければ、解雇をす ることができません。  なお、厚生労働省の通達では、「やむを得ない事由」とは、無期契約の解 雇権濫用法理で解雇が認められる場合(事由)よりも狭いとされています (※)。

(19)

契約の終了・更新

※ 無期労働契約では、解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であ ると認められない場合」は、権利濫用として無効である、と定められています(労働 契約法16条)。「解雇権濫用法理」と呼ばれるものです。 (2) 解雇手続  解雇をする場合には、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、30日分 以上の平均賃金(いわゆる解雇予告手当)を支払わなければなりません。た だし、以下の場合には、解雇予告の対象から除外されます(労働基準法20 条、21条)。 ◦雇用期間が引き続いて1か月を超えない日雇いの労働者 ◦雇用期間が2か月以内に定められ、かつ、働いた期間がその定められた 期間を超えていない労働者 ◦雇用期間が4か月以内に定められた季節的業務で働き、かつ、働いた期 間がその定められた期間を超えていない労働者 ◦試用期間中で、かつ、働き始めて14日以内の労働者

4   雇止め

(1) 雇止めとは  雇止めとは、有期労働契約の期間満了時に、使用者が契約の更新を拒否す ることをいいます。  雇止めについては、裁判でも、度々雇止めの有効性が争われてきました が、労働契約法19条が新設され、最高裁判例で確立した「雇止め法理」 が、法律に規定されました。  雇止めをする場合にも、雇止めが認められない場合ではないことと、一定 の手順を踏むこと(雇止め手続)の両方が必要です。 (2) 雇止めが認められない場合  次の①〜③を全て満たす場合には、雇止めは認められず、それまでの労働 条件と同一の条件の労働条件が締結された(申込みを承諾したものとみなさ れる)ことになります(労働契約法19条)。

(20)

契約の終了・更新 (3) 雇止めに関する裁判例の傾向  雇止めに関する裁判例の傾向は、下表のとおりです。  (「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告」(平成12年9月)を 参考にしたものです。厚生労働省ホームページ http://www2.mhlw.go.jp/ kisya/kijun/20000911_01_k/20000911_01_k.html 参照。) ① 以下の(ア)また(イ)のいずれかにあたる。 (ア) 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが、無期労働契 約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの (イ) 労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に、その有期労 働契約が更新されるものと期待されることについて合理的な理由があ ると認められるもの (※端的にいえば、(ア)は、有期契約が、実質的にみて無期契約と異 ならない場合であり、(イ)は、期間満了後の雇用継続について合理 的期待が認められる場合、ということになります。) ② 以下の(ア)または(イ)のいずれかにあたる。 (ア) 契約満了日までに更新の申込みをした (イ) 契約期間満了後遅滞なく有期労働契約締結の申込みをした ③ 使用者が、労働者の申込みを拒絶することが「客観的に合理的な理由を 欠き、社会通念上相当であると認められない」。 判断要素 具体的な内容 業務の客観的内容 ◦従事する仕事の種類・内容・勤務の形態(業務内容の恒常 性・臨時性、業務内容についての正社員との同一性の有無等) 契約上の地位の性格 ◦契約上の地位の基幹性・臨時性(例えば、嘱託、非常勤講師 等は地位の臨時性が認められる。) ◦労働条件についての正社員との同一性の有無等 当事者の主観的態様 ◦継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等 (採用に際しての雇用契約の期間や、更新ないし継続雇用の 見込み等についての雇主側からの説明等) 更新の手続・実態 ◦契約更新の状況(反復更新の有無・回数、勤続年数等) ◦契約更新時における手続の厳格性の程度(更新手続の有無・ 時期・方法、更新の可否の判断方法等) 他の労働者の更新状況 ◦同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等 その他 ◦有期労働契約を締結した経緯 ◦勤続年数・年齢等の上限の設定等

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契約の終了・更新

契約関係の状況 事案の特徴 雇止めの可否 1 実質的に無期契約と異ならな いとも、雇用継続への合理的 な期待があるとも認められな いもの (以下の2〜4以外の者) ◦業務内容の臨時性が認めら れるものがあるほか、契約 上の地位が臨時的なものが 多い。 ◦契約当事者が有期契約であ ることを明確に認識してい るものが多い。 ◦更新の手続が厳格に行われ ているものが多い。 ◦同様の地位にある労働者に ついて過去に雇止めの例が あるものが多い。 原則どおり契約期間の満了に よって当然に契約関係が終了 する。 2 期間の定めのない契約と実質 的に異ならない状態に至って いると認められたもの 業務内容が恒常的、更新手続 が形式的であるものが多い。 雇用継続を期待させる使用者 の言動がみられるもの、同様 の地位にある労働者に雇止め の例がほとんどないものが多 い。 ほとんどの事案で雇止めは認 められていない。 3 雇用継続への合理的な期待は 認められる契約であるとさ れ、その理由として相当程度 の反復更新の実態が挙げられ ているもの 更新回数は多いが、業務内容 が正社員と同一でないものも 多く、同種の労働者に対する 雇止めの例もある。 経済的事情による雇止めにつ いて、正社員の整理解雇とは 判断基準が異なるとの理由 で、当該雇止めを認めた事案 がかなりみられる。 4 雇用継続への合理的な期待 が、当初の契約締結時等から 生じていると認められる契約 であるとされたもの 更新回数は概して少なく、契 約締結の経緯等が特殊な事案 が多い。 当該契約に特殊な事情等の存 在を理由として雇止めを認め ない事案が多い。 (4) 雇止めの手続き  使用者は、以下①②の両方を満たす有期労働契約について、雇止めをする 場合には、少なくとも契約期間満了日の30日前までに、その予告をしなけ ればなりません(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準1条)。 ① 次のいずれかにあたる。 (ア) 労働契約が3回以上更新されている場合 (イ) 1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に 有期労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合

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契約の終了・更新  また、使用者は、雇止めの予告後に、労働者が雇止めの理由について証明書 を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません(同基準2条)。

5   無期転換ルール

(1) 無期転換ルールとは  一定の条件を満たした有期契約労働者(詳細は(2))が、契約期間満了 日までに、期間の定めのない労働契約の締結の申込み(無期転換申込み)を した場合には、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換(無期転 換)されます(労働契約法18条)。  申込みもせずに自動的に無期転換されるわけではありません。なお、会社 によっては、自動的に無期転換されるという制度を設けている場合もありま す。 (2) 無期転換申込権発生の条件  無期労働契約への転換を申し込む権利(無期転換申込権)が発生するため には、以下の①〜③の3つの条件がそろっている必要があります。 ① 有期労働契約の通算期間が5年を超えている。  通算契約期間は、改正労働契約法の施行日である平成25年4月1日以降に開始した 有期労働契約から算定します。  実際に働いた年数が5年を経過していなくても、たとえば、契約期間が3年の有期 労働契約を更新した場合などは、通算契約期間自体は6年になるため、4年目には無 期転換申込権が発生していることになります。  同一の使用者の間で有期労働契約を締結していない期間(無契約期間)が、一定の 長さ(※)以上にわたる場合、この期間が「クーリング期間」として扱われ、それ以 前の契約期間は通算対象から除外されます。 ※ 無契約期間以前の通算契約期間が「1年以上」の場合には、6か月です。  無契約期間以前の通算契約期間が「1年未満」の場合には、契約期間の半分(1月 に満たない端数は切り上げ)です。 ② 契約の更新回数が1回以上  契約更新が1回以上行われていることが無期転換申込権発生の要件となります。 ③ 現時点で同一の使用者との間で契約している  通算5年を超えて契約をしてきた使用者との間で、現在、有期労働契約を締結して いることが要件となります。  無期転換申込権の発生を免れる意図をもって、就業実態がそれまでと変わらないに もかかわらず、派遣形態や請負形態を偽装して労働契約の締結主体を形式的に他の使 用者に切り替えた場合、同一の使用者の要件を満たしているものと解釈されます。

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契約の終了・更新

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契約の終了・更新

出典:厚生労働省発行資料「労働契約法改正のあらまし」 (3) 無期転換申込みをした場合の効果  ①申込み時点で契約は成立  有効に無期転換申込みをした場合、その時点で、有期労働契約期間満了 日の翌日から労務提供がされる無期労働契約が成立します。たとえば、3 月末日までの有期労働契約で、3月15日に申込みをした場合、4月から の無期労働契約が、3月15日の時点で成立していることになります。  したがって、申込みをしたにもかかわらず、契約期間満了日に契約関係 を終了することは、無期労働契約を解約(解雇)することを意味します。 したがって、使用者側から有効に契約を終了するためには、客観的に合理 的な理由と社会通念上相当であること(労働契約法17条1項)や、解雇 予告(労働基準法20条)が必要となります。  ②労働条件は、直前の有期労働契約と同一  申込みによって成立する無期労働契約の給与や待遇等の労働条件は、労 働協約・就業規則・個々の労働契約で別段の定めがある部分を除き、直前 の有期労働契約と同一の条件となります。必ずしも正社員と全く同じにな るわけではありません。

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契約の終了・更新  ただし、無期転換に当たり、職務の内容などが変更されないにもかかわ らず、無期転換後の労働条件を低下させることは、無期転換を円滑に進め る観点から望ましいものではありません。 (4) 無期転換ルールの例外  以下の①〜③のように、無期転換ルールが適用されない場合や、適用され るが5年を超える年数が必要な場合があります。  ①高度専門職の特例 (ア) 適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を 受けた事業主に雇用され、 (イ) 高収入で、かつ高度の専門的知識等を有し、 (ウ) その高度の専門的知識等を必要とし、5年を超える一定の期間内に 完了する業務(特定有期業務(プロジェクト))に従事する有期契約 労働者については、  そのプロジェクトに従事している期間は、無期転換申込権が発生しませ ん。ただし、発生しない期間の上限は、10年です。  ②継続雇用の高齢者の特例 (ア) 適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を 受けた事業主の下で、 (イ) 定年に達した後、引き続いて雇用される有期契約労働者について は、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は、無期転換申込 権が発生しません。  ③大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する特例  研究開発能力の効果及び教育研究の活性化等の観点から、大学等及び研 究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間 を10年とする特例が設けられました。  詳しくは、厚生労働省ホームページ「労働契約法の改正について〜有期労 働契約の新しいルールができました〜」を参照して下さい。また、東京労働 局雇用環境・均等部(p46)にお問い合わせ下さい。

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賃金

Ⅶ   賃金

1  「賃金」とは

 そもそも「賃金」とはどういうものなのでしょうか。  労働基準法11条では、「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その 他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのも のをいう。」と定義されています。  月給、時給、日給のみならず、各種手当(通勤手当、家族手当等)や一時金 (賞与、ボーナス等)、退職金も支給条件が明確に定められていれば、労働基準 法上の「賃金」となります。

2  賃金の支払いに関する原則

 「賃金」に該当する場合には、賃金の支払いに関して定めた労働基準法24条 が適用されます。この条文では、以下のような賃金支払の原則が定められてい ます。  ①通貨払いの原則  賃金は、法令又は労働協約で別に定めがある場合を除き、通貨で支払わ れなければなりません。口座振込みによって賃金を支払う場合には、一定 の要件(労働者の同意を得ること、労働者の指定する本人名義の口座に振 り込むこと、賃金の全額が所定の支払日の午前10時頃までには引き出せ ることなど)を満たしていなければなりません。  ②直接払いの原則  賃金は、労働者本人に支払わなければなりません。労働者が未成年者の 場合も、親や後見人に支払ったり、代理人に支払ったりすることは出来ま せん。  ③全額払いの原則  賃金は、その全額を支払わなければなりません。賃金から、所得税や社 会保険料など、法令で定められているもの以外を控除する場合には、労働 者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、これがない場 合は労働者の過半数を代表する者との間に、労使協定を結んでおくことが 必要です。  ④毎月一回以上払いの原則と、⑤一定期日払いの原則  賞与などの臨時的に支払われるものを除き、賃金は毎月1回以上、一定

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賃金

3  休業手当

 使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合には、使用者は平 均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません(労働基準法26条)。

4  最低賃金

 事業主は、最低賃金法に基づいて定められた地域別・産業別の最低賃金以上 の賃金を支払わなければなりません。  平成30年3月現在、東京都の最低賃金は958円です(最低賃金は毎年改定 されることが多いため、最新の金額をご確認ください。)。  (東京都で設定されている産業別最低賃金は、全て東京都の地域別最低賃金 を下回っているため、産業別最低賃金の対象事業場についても、この金額が適 用されます。)

5  年俸制

(1) 年棒制とは  年俸制とは、1年間の総賃金(年俸)を契約で決めてしまう賃金形態です。  一般に、年俸制は個人の能力や仕事の成果を反映させる賃金形態といわれ ており、定型的業務・単純業務より、専門的・技術的業務や管理的業務に就 く労働者に適用されることが多くなっています。  契約社員には「専門的・技術的業務」に従事する方が一定割合存在するこ とから、契約社員の中には年俸制が適用される方が一定数いることが予想さ れます。 (2) 年棒制と時間外・休日労働  年俸制をめぐるトラブルの原因として、「年俸制を採用すれば、残業代を 支払わなくてもすむ」と考えている会社が多いことが挙げられます。しか し、裁量労働制などのみなし労働時間制を導入していなければ、年俸制とい えども、法定労働時間が適用され(p29〜31参照)、時間外労働・休日労 働・深夜労働等の割増賃金については、年俸とは別に支払わなければなりま せん(割増賃金についてはp29)。  予め一定の金額を割増賃金分として含んだ金額を年俸額とするのであれ ば、その内訳(年俸○○円、うち割増賃金分××円)を明らかにしておかな ければなりません。また、実際に働いてみた結果、事前に決められた割増賃 金分を超過した場合には、割増賃金の不足分を追加して支払うことが必要に なります。

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賃金

 割増賃金の算定の基礎となる時間単価を計算する際には、原則として賃金 (年俸額)を年間所定労働日数で割り、1時間あたりの賃金を算出します。  「賞与」は原則として、割増賃金の算定基礎から除外されますが、年棒制で 賞与扱いをしているものは、算定基礎から除外される「賞与」とはみなされな い場合があります。年俸制の場合、「年俸の16分の1を例月給与として支給 し、16分の4を二分割して6月と12月に賞与として支給する」といった取り 決めをする場合が多いようです。このように、毎月の給与と賞与とを合計して あらかじめ支給額が確定している場合、この賞与として扱われている部分は、 労働者の勤務成績などに応じて臨時に支給されるものではなく、「賞与」とは みなされません。したがって、賞与部分を含めて決定された年俸額を算定基礎 として割増賃金を支払う必要があります(労働省通達 平成12.3.8基収第78 号)。 【割増賃金の算出基礎額】 4 5 6 賞 与 7 8 9 10 11 12 賞 与 1 2 3 年俸額480万円   (例年給与 30万円、賞与相当分 夏冬合計120万円)     30万円 (1/16) 60万円 60万円 割増賃金算定基礎額は 40万円 (1/12) 算定基礎となる月給額(年俸額の12分の1)÷1ヶ月平均所定労働時間 = 算定基礎額(時間額)

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労働時間

Ⅷ   労働時間

1   法定労働時間・法定休日と時間外・休日労働

 使用者は、原則として、1日8時間1週40時間を超えて労働させてはなり ません。この時間を「法定労働時間」といいます。  使用者は、労働者に、毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以 上の休日を与えなければなりません(労働基準法35条)。この日を「法定休 日」といいます。  使用者が時間外労働・休日労働を命じるためには、労使協定(※)を締結 し、これを労働基準監督署長に届け出ておかなければなりません(労働基準法 36条)。また、労働協約・就業規則・労働契約で、時間外・休日労働を命令す ることができる旨を明らかにしておかなければなりません。 ※「労使協定」とは、使用者と、その事業場に、労働者の過半数で組織する 労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合 がない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定のことをい います。

2  時間外・休日労働・深夜労働における割増賃金

 時間外・休日労働・深夜労働では、割増賃金の支払いが必要です。割増率 は、以下のとおりです。 ①法定労働時間を超えて働いたときは(時間外労働)通常の賃金の25%以上 ②法定休日に働いたときは(休日労働)通常の賃金の35%以上 ③午後10時から午前5時までの深夜に働いたときは(深夜労働)通常の賃 金の25%以上を受け取ることができます。  割増賃金の理由が重なる場合は、以下のとおりです。 ①時間外労働と③深夜労働が重なった場合は、両者を合わせて50%以上 ②休日労働と③深夜労働が重なった場合は、両者を合わせて60%以上 ③時間外労働と②休日労働が重なった場合は、35%以上(休日労働は時間 外労働の概念を含んでいるため、休日労働に関する規制のみになります)  また、月60時間を超える時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計 算した割増賃金を支払わなければなりません(ただし当分の間、中小企業には 適用が猶予されます。また労使協定により代替休暇制度をつくることができま す。詳しくは労働基準監督署等にお問い合わせ下さい)。

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労働時間

3  休憩

 使用者は、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を 超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を与えなければなりません(労働 基準法34条1項)。休憩時間は、①労働時間の途中に、②原則として一斉に与 え、③自由に利用させることが必要です。

4  法定労働時間・時間外労働の例外

 一般に、使用者には労働者の労働時間を適切に把握し、時間外労働等に対し ては割増賃金を支払う義務があります。  もっとも、使用者が労働者の労働時間を適切に把握するのが難しい場合も存 在します。そこで、労働基準法は、通常の労働時間規制とは別に、「事業場外 労働のみなし労働時間制」(労働基準法38条の2)及び「裁量労働制」(労働 基準法38条の3、 38条の4)を用意しています。以下で順に見ていきましょ う。 (1) 事業場外労働のみなし労働時間制  事業場外労働のみなし労働時間制とは、労働者が、営業など会社の外で仕 事をするために労働時間の算定をすることが困難な業務について、通常の所 定労働時間だけ働いたものとみなすという制度です(労働基準法38条の2)。  その業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必 要となる場合には、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」 働いたもの とみなされます。この場合に、労使協定で 「当該業務の遂行に必要となる時 間」 を定めた場合には、その時間労働したものとみなされます(労働基準法 38条の2第1項ただし書き、第2項)。  ただし、事業場外労働であっても、以下のように労働時間の算定が可能な 場合は 「みなし労働時間」 の適用はありません。 ◦グループで業務に従事しており、その中に労働時間管理者がいる場合。 ◦携帯電話等により、随時使用者の指示を受けながら労働している場合。 ◦訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を事業場で受けた後、事業 場外で指示どおりに労働し、その後事業場にもどる場合。 (2) 裁量労働制  裁量労働制とは、業務の遂行手段や時間配分について、使用者が細かく指 示するのではなく、労働者本人の裁量にまかせ、実際の労働時間数とは関係 なく、労使の合意で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。裁量 労働制には、次の2つのタイプがあります。

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労働時間  一つ目が、専門業務型裁量労働制です(労働基準法38条の3)。これは、 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、その業務の 遂行の手段及び時間配分の決定等に関して使用者が具体的に指示をすること が難しい業務について導入が認められています。  二つ目が、企画業務型裁量労働制です(労働基準法38条の4)。事業の運 営についての企画、立案などについての業務であり、業務遂行のためにその 遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、その業務の遂行 の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないことと する業務について導入し得る制度になっています。 (3) 深夜業・休日に関する規定は適用されることに注意  なお、みなし労働時間を設定しても、労働基準法の休憩、深夜業、休日 (p29)に関する規定が適用されますので注意が必要です。したがって、少 なくとも深夜労働時間や休日労働時間については、 労働時間を記録し、割増 賃金を支払う必要があります。  また、近年長時間労働を原因とする労働者の健康障害が問題となっていま す。たとえ裁量労働制の適用者であっても、使用者には健康維持のための責 務があり、過重労働防止の措置を講ずるよう努めるものとされています(厚 生労働省通達 平成18.3.17基発第0317008号)。 ※ 労働時間については、今後、法律が改正される可能性があります(平成 30年3月現在)。

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労働時間

専門業務型裁量労働制 企画業務型裁量労働制 根 拠 規 定 労働基準法第38条の3 労働基準法第38条の4 採 用 条 件 労使協定の締結、労働基準監督署へ の届出 労使委員会における委員の5分の4 以上の多数議決による決議と労働基 準監督署への届出 対象事業場 制限なし 対象業務が存在する事業場 対 象 業 務 専門性が高く、業務の遂行の手段や 時間配分に関する具体的な指示をす ることが難しい業務 ⑴研究開発、⑵情報処理システムの 分析・設計、⑶取材・編集、⑷デザ イナー、⑸プロデューサー・ディレ クター、⑹コピーライター、⑺シス テムコンサルタント、⑻インテリア コーディネーター、⑼ゲーム用ソフ トウェア創作、⑽証券アナリスト、 ⑾金融商品の開発、⑿大学における 教授研究、⒀公認会計士、⒁弁護 士、⒂建築士、⒃不動産鑑定士、⒄ 弁理士、⒅税理士、⒆中小企業診断 士 次の4つの要件すべてを満たす業務 ⑴事業の運営に関するものであるこ と ⑵企画、立案、調査及び分析の業務 であること ⑶業務遂行の方法を大幅に労働者の 裁量に委ねる必要があると、業務の 性質に照らして客観的に判断される 業務であること ⑷企画・立案・調査・分析という相 互に関連しあう作業を、いつ、どの ように行うか等について、使用者が 具体的な指示をせず、広範な裁量が 労働者に認められている業務である こと 協定・決議 事 項 ①対象業務の特定 ②当該業務の遂行の手段及び時間配 分等に関し、労働者に対し具体的な 指示をしないこと ③労働したものとみなす時間 ④対象業務に従事する労働者の健康 及び福祉を確保するための措置の具 体的内容 ⑤対象業務に従事する労働者からの 苦情の処理のため実施する措置の具 体的内容 ⑥協定の有効期間 ※3年以内とすることが望ましい ⑦記録の保存 ※協定の有効期間中及びその満了後 3年間 ①対象業務の範囲 ②対象労働者の具体的な範囲 (例:大学の学部を卒業して5年以 上の職務経験、主任(職能資格○級) 以上の労働者など) ③労働したものとみなす時間 ④対象業務に従事する労働者の健康 及び福祉を確保するための措置の具 体的内容 ⑤対象業務に従事する労働者からの 苦情の処理に関する措置の具体的内 容 ⑥制度の適用について労働者本人の 同意を得なければならないこと及び 同意しなかった労働者に対して解雇 その他不利益な取扱いをしてはなら ないこと ⑦決議の有効期間 ※3年以内とすることが望ましい ⑧記録の保存 ※決議の有効期間中及びその満了後 3年間 導 入 効 果 実際の労働時間と関係なく、労使協定で定めた時間、労働したものとみ 実際の労働時間と関係なく、労使委員会で定めた時間、労働したものと

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年次有給休暇

Ⅸ   年次有給休暇

1   有期契約労働者でも有給休暇は取れる

 有期契約労働者も、①雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、かつ② 全労働日の8割以上出勤した場合には、少なくとも10日間の有給休暇を取得 できます(労働基準法39条1項)。  労働者が同じ会社で働き続ける場合には、6か月継続勤務をした後、さらに 1年を経過するごとに、勤務期間に応じて取得できる年次有給休暇の日数が増 えていきます(同条2項)。取得できる有給休暇の日数は下表のとおりとなっ ています。  「継続勤務」しているかどうかについては、勤務の実態に即して判断すべき です。反復更新されたそれぞれの労働契約期間の終期と始期との間に短期間の 間隔を置いたとしても、それだけで当然に継続勤務が中断をすることにはなり ません。 週 所 定 労働時間 週 所 定労働日数 1年間の所定 労働日数 (週以外の期間によ って労働日数が定 められている場合) 継続期間ごとに区分した年次有給休暇の日数 6か月 6か月1年 6か月2年 6か月3年 6か月4年 6か月5年 6か月6年 以上 30時間以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日 30時間 未満 5日以上 217日以上 4日 169〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日 3日 121〜168日 5日 6日 8日 9日 10日 11日 2日 73 〜 120日 3日 4日 5日 6日 7日 1日 48 〜 72日 1日 2日 3日

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年次有給休暇

2   年次有給休暇の取得と時季変更権

 労働者は、使用者に対し、有給休暇の取得日を事前に申し出ることによっ て、有給休暇を取得することができます。このとき、使用者は、労働者が指定 した日に有給休暇を与えなければならないのが原則です(同条5項本文)。  しかし、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は、有給休暇を他 の日に変更することができます。これを時季変更権といいます(同項ただし書 き)。  「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、単に忙しいというだけでは足り ず、その労働者の年休指定日の労働が担当業務の運営にとって不可欠であり、 かつ、代替要員を確保するのが困難であることが必要です。

3   年休自由利用の原則

 判例上、「休暇をどのよう利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の 自由である。」とされています。そのため、労働者は、有給休暇を取る際にそ の利用目的を使用者に伝える必要はありません。

4   年次有給休暇の時効

 有給休暇の時効は付与日から起算して2年です(同法115条)。  その年度内に使いきれなかった場合、残りの休暇は翌年度にも請求すること ができます。 ※ 年次有給休暇については、今後、法律が改正される可能性があります (平成30年3月現在)。

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母性保護・育児休業・介護休業

Ⅹ   母性保護・育児休業・介護休業

1   母性保護

 労働基準法や男女雇用機会均等法では、働く女性の母性を保護するための規 定が定められています。  以下の規定は、有期契約労働者にも適用されます。 ◆産前産後休業(労働基準法65条1項、2項)  女性労働者は、出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)前か ら、使用者に産休を請求することができます。その場合、使用者は、その 女性を働かせてはいけません(同条1項)。  使用者は、出産後8週間を経過しない女性を働かせてはいけません(同 条2項本文)。  なお、産前・産後休業中の賃金は、必ずしも有給でなければならないと いう定めはなく、賃金が支払われるかどうかは、就業規則等の定めに従い ます。労働者が健康保険の被保険者であれば、健康保険法に基づいて、休 業期間中標準報酬日額の3分の2に相当する出産手当金及び出産育児一時 金42万円が支給されます。これは、健康保険の加入の大きなメリットで す。  その他にも母性保護に関して、以下のようなルールがあります。 ◆妊産婦に関わる危険有害業務の就業制限(同法64条の3) ◆妊産婦の軽易作業への転換(同法65条3項) ◆妊産婦の変形労働時間制、時間外・休日・深夜業の制限(同法66条) ◆育児時間(同法67条) ◆生理日の休暇(同法68条) ◆妊娠中・出産後の健康管理に関する措置(男女雇用機会均等法12、13条)  使用者は、雇用する女性労働者が保健指導や健康診査を受けるための時 間を確保し(通院休暇)、勤務時間の変更や勤務の軽減など医師等の指導 事項を守ることができるようにするため勤務時間の変更や勤務の軽減など 必要な措置を講じなければなりません。

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母性保護・育児休業・介護休業

2  育児・介護休業法

 育児・介護休業法では、育児又は家族介護を行う労働者の雇用継続等に対す る保護・支援のための制度を定めていますが、その中心にある育児・介護休業 の取得については、一定の条件付で契約社員等の有期雇用労働者にも適用され ます。 (1) 育児休業  ①育児休業の取得  育児休業は、原則として1歳に満たない子を養育する労働者からの申出 により、子の1歳の誕生日の前日までの期間で、一人の子につき原則1回 取得することができます。  有期契約労働者(ただし、日々雇用される者は含まれません。(育児・ 介護休業法2条1号))についても、以下の(ア)(イ)の両方を満たせ ば、育児休業の取得の申出が可能です(同法5条1項)。 (ア) 同一の事業主に引き続き1 年以上雇用されていること (イ) 子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、 更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと ※(イ)を満たさないケースについては、次のようなものが考えられます。 ◦労働契約の更新回数の上限が明示されていて、その最後の契約期間満了日が、子 が1歳6か月に達する日より前である場合 ◦労働契約を更新しない旨が明示されていて、その期間満了日が、子が1歳6か月 に達する日より前である場合  ただし、このようなケースでも、(1)雇用の継続の見込みに関する事業主の言 動、(2)同様の地位にある他の労働者の状況、(3)当該労働者の過去の契約の更 新状況等の実態を見て判断することがあります。  また、(ア)(イ)に該当するか否かにかかわらず、形式上は期間の定め があっても、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となってい る場合には、育児休業の対象となります(子の養育又は家族の介護を行 い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活の両立が図られるよ うにするために事業主が講ずべき措置に関する指針)。  ②1歳6か月までの延長  また、以下の場合などには、子の1歳6か月の誕生日の前日まで育児休 業を延長することができます(育児・介護休業法第5条第3項、同法施行 規則第6条)。

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母性保護・育児休業・介護休業 ・子の養育を行っている配偶者であって、1歳以降子を養育する予定で あった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難 になった場合  有期契約労働者についても、以下の(ア)(イ)の両方を満たせば、延 長が可能です。 (ア) 同一の事業主に引き続き1 年以上雇用されていること (イ) 子が1歳6か月に達する日までに、契約期間が満了し、更新がされな いことが明らかでないこと  ③2歳までの再延長  さらに、以下の場合などには、子の2歳の誕生日の前日まで育児休業を 延長することができます(育児・介護休業法第5条第4項、同法施行規則 第6条の2)。 ・保育所に入所を希望し、申込みをしているが、入所できない場合 ・子の養育を行っている配偶者であって、1歳6か月以降子を養育する予 定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが 困難になった場合    有期契約労働者についても、申出時点において、以下の(ア)(イ)の 両方を満たせば、延長が可能です。 (ア) 同一の事業主に引き続き1 年以上雇用されていること (イ) 子が2歳に達する日までに、契約期間が満了し、更新がされないこと が明らかでないこと ④労使協定による適用除外  有期契約労働者が次の(ア)〜(ウ)のいずれかに該当する場合には、使 用者が労働者の過半数を組織する労働組合との間の、そのような労働組合 がない場合には、労働者の過半数を代表する者との間の協定(労使協定)で 育児休業を認めないと定めれば、使用者は育児休業の申出を拒否すること ができます(育児介護休業法6条1項ただし書き、同法施行規則8条)。 (ア) 雇用されて1年に満たない者 (イ) 休業申出の日から起算して1年以内、休業延長の日から起算して6か 月以内に雇用契約が終了することが明らかな者 (ウ) 1週間の所定労働日数が2日以下の者

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母性保護・育児休業・介護休業

 また、育児休業と同様に、(ア)(イ)に該当するか否かにかかわらず、 期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている場合には、 介護休業の対象となります(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこ ととなる労働者の職業生活と家庭生活の両立が図られるようにするために 事業主が講ずべき措置に関する指針)。 (3) 休業期間の給与・給付  育児・介護休業期間を有給にするか、無給にするかは、就業規則等の定め に従います。 (2) 介護休業  ①介護休業の取得  介護休業は、負傷、疾病、身体上もしくは精神上の障害により、2週間 以上にわたって常時介護を必要とする状態(「要介護状態」といいます。) にある家族を介護するための休業です。対象となる家族1人につき、要介 護状態に至るごとに1回、通算93日休業することができます。3回まで 分割して取得することが可能です。介護休業の対象となる家族は、その労 働者の配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。  有期契約労働者(ただし、日々雇用される者は含まれません。(育児・ 介護休業法2条1号))についても、以下の両方を満たせば、介護休業の 取得の申出が可能です(同法5条1項)。 (ア) 同一の事業主に引き続き1 年以上雇用されていること (イ) 介護休業開始予定日から93日経過する日から6か月を経過する日ま でに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了す ることが明らかでないこと ※(イ)を満たさないケースについては、次のようなものが考えられます。 ◦労働契約の更新回数の上限が明示されていて、その最後の契約期間満了日が、介 護休業取得予定日から起算して93日経過日から6か月経過する日より前である場 合 ◦労働契約を更新しない旨が明示されていて、その期間満了日が、介護休業取得予 定日から起算して93日経過日から6か月経過する日より前である場合  ただし、このようなケースでも、育児休業の場合と同様に実態を見て判断するこ とがあります。

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母性保護・育児休業・介護休業  また、雇用保険に加入している労働者には、育児休業中、育児休業給付金 として、原則として休業開始時賃金月額の67%、育児休業の開始から6か 月経過後は50%が支給されます。また、介護休業中、介護休業給付金とし て、原則として休業開始時の賃金月額の67%が支給されます。 (4) その他の有期契約労働者にも適用される制度  育児・介護休業法で定める、育児・介護と仕事の両立支援に関する規定は、 一部例外を除き、契約社員を含む有期労働者にも適用されます。 ◆子の看護休暇(育児・介護休業法16条の2) ◆介護休暇制度(同法16条の5) ◆3歳までの子を養育する労働者の所定時間外労働の免除(同法16条の8) ◆介護をする労働者の所定時間外労働の制限(同法16条の9) ◆育児・介護を行う労働者の時間外労働の制限(同法17条・18条) ◆育児・介護を行う労働者の深夜業制限(同法19条・20条) ◆勤務時間短縮等の措置(同法23条、24条) ◆労働者の配置に関する配慮(同法26条)

参照

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