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相互行為における不同意の会話分析研究 ―マルチモダリティの視点から―

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Academic year: 2021

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相互行為における不同意の会話分析研究

―マルチモダリティの視点から―

日本語教育学分野 M1詹暁嫺

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1.はじめに

日常の会話では、しばしば不同意という行為が遂行 される。しかしながら、次に同意が期待される先行発話 に対して不同意を行うのはBrown and Levinson(1987) のポライトネス理論から考えると、相手のポジティブ・ フェイスを脅かす行為である。したがって、不同意を行う には、対人関係に配慮して様々に工夫する必要がある。 こうしたことから、本研究では、会話分析の手法を用い て、日常会話において、行われている不同意の行為を 考察する。

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• 不同意の定義

➢ 本研究では、不同意をある物事に関して参与者が 異なる評価を与えたり、ある事柄に対して参与者 が違う意見をしたりする行為とする。

• 不同意の対象

➢ 意見 ➢ 評価

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マルチモダリティの視点とは

➢本研究では、C. GoodwinとM. Goodwinが提唱したマル チモダリティの視点に従って、日本語の会話で不同意 のターンにおける言語的特性のみならず、身体動作 や表情などの非言語的特性も考察の範囲に入れて分 析を行う。

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2.先行研究

2.1 同意・不同意と選好組織に関する先行研究 ➢Pomerantz(1984)はアメリカ人による自然会話を分析し、参 与者たちが同じにアクセスできるある事柄に対して、一致す ることを同意とし、一致しないことを不同意としている。同意 が 「選好される(preferred)」場面で同意を示す際には、早い タイミングで、簡潔に、直接的な肯定応答で発話がなされる のに対し、「非選好(dispreferred)」としての不同意行為が遂 行される前には、沈黙、修復の開始、言い淀み、弱い同意 などを用いた、すなわち前置きのような何らかの手続きに よって、発話の産出を遅らせる工夫がなされていると結論 付けている。

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不同意の例1:

01 A: おいしいですね. (第一評価) 02 (0.5)→

沈黙

03 B: う::::ん,そうでもないかも. (第二評価(

不同意

))

言い淀み

モダリティ表現による間接的な言い方

➢上記の例に示すように、不同意の場合は, 沈黙や言い淀み、間接的な言い方などが挟まれる形で 産出されることが観察されている。

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不同意の例2

((この断片の直前で、ユキがマリコに翻訳の仕事をするか聞いている)) 01 マリコ: 翻訳はやらない. 02 ユキ: ああそうで[ すか:?] 03 マリコ: [ う:::]::ん. 04 あれはねえ:::[:: う::]:::ん. .hh >面白くない.< →(第一評価) 05 ユキ: [ う:::ん] 06 (0.3) 07 ユキ: - > 面白くない:?= →(上昇調で第一評価の評価語を繰 り返して修復することによる不同意) 08 マリコ: - > =>だってそうじゃない,< 09 - > 机に向かってただ[: (.) .hhh 原稿見て]:::, 10 ユキ: [ まあ:, それはそうだけど.] (『会話分析入門』) ➢ 修復の開始による不同意ターンの組み立て

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2.2 同意に関する先行研究

➢ 杉浦(2011)はマルチモダリティの視点から、日常会話に おける強い同意ターンを考察している。相互行為の参 与者は、直前の話者によって開始された評価活動に対 して、その瞬間に利用可能な言語的な資源、プロソ ディー、表情や身体動作といった非言語的な資源と強く 関わり合って、「強い同意」という行為を認識可能にさ せる現象を記述している。 ➢ また、中村(2011)は話し手がある事柄に対する見解の 核心を明示した直後に、聞き手との間に「交渉空間」を 作って、聞き手の反応による主張や態度の調整を再開

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2.3 不同意に関する先行研究

• Brown and Levinsonのポライトネス理論に基づいた研究

➢王(2013)はポライトネスの観点から、日本人と中国人による 日中両言語における不同意表明の仕方を比較して考察して いる。 ➢堀田(2014)は中間言語語用論の観点から、「不同意」発話 行為において、主に学習者が用いたストラテジー、また、母 語話者との間で見られる差異、さらに、差異が生じた原因と いう研究課題について探求している。 ➢張(2017)はジェンダーの観点から、日韓男女同性間の会話 における不同意会話の参加者が互いにどのように配慮し 「不同意」を解決していくのかを分析している。

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• サックスらの会話分析の手法に基づいた研究

➢ 大塚(2005)は会話分析の手法で、主に言語形式から 日本人大学生によるグループ討論を分析している。不 同意の仕方には、「でも」のようなターンの始まりに生じ るマーカー、「受け入れ+けど+不同意」のようなター ンの中に生じるマーカー、また、特に何のマーカーもな いという3つの仕方があることを示している。 ➢ Hosoda(2009)は二人の話者による日本語会話におい て、会話参与者が言語及び非言語の相互行為的資源 や文法的資源に基づいて、この後で遂行される話し相

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2.4先行研究の問題点

➢先行研究から見ると、相互行為における同意の会話分 析研究には多くの蓄積がある。 ➢これに対して、不同意に関する研究では、Brown and Levinson(1987)のポライトネス理論の観点からの考察 が多くなされ、会話分析そのものの手法での分析研究 はまだ十分に見当たらない。 ➢従って、先行研究を踏まえて、本研究ではマルチモダリ ティの視点から、日本語の会話において不同意はいか に相互行為の参与者に構成され理解されるのかを解明 する。

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3.研究目的と研究課題

➢本研究では、マルチモダリティ(multimodality)の視点から、 相互行為における不同意という行為はどのようにして、 人々に構成され理解されるのかを明らかにすることを目的 とする。 ➢本研究の課題を以下の2点にまとめる。 i. 参与者はどのようにその瞬間に利用可能な言語形式、 音声、身体動作、表情などのあらゆる資源を利用して、 不同意という行為を組み立てるのかを解明する。

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4.研究方法

4.1 事前アンケート調査

本研究において、研究目的に応じて、会話データを収録 する際には、事前に参与者にアンケート調査を行う。ア ンケート調査を通じて主に参与者たちの共通話題を明ら かにする。アンケート調査において以下のような質問を 立てる。

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アンケート調査の問題:(自由回答)

1. 友達との間でよく話す話題は何ですか?(例えば:グルメ、 旅行、スポーツ、俳優についてなど) 2. 関心を持っていることは何ですか?(例えば:読書、映画、 政治についてなど) 3. アルバイト(仕事)をしていますか?または、これまでに(仕 事)アルバイトをしたことがありますか?ある場合、どのよう なアルバイト(仕事)ですか。(例えば:お店の店員、会社員、 日本語学校の先生についてなど)

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4.2 録音・録画

本研究では2〜4人による会話を収録する予定である。収 録時間は合計10時間程度で、必要に応じて調整する。協力 者はお互いに友人関係にある日本人とする。

4.3 データの書き起こし

収録したデータに不同意が含まれた断片を特定し、日本語 の会話分析用のトランクスクリプト記号に基づいて書き起こ しをする。

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4.4 収録したデータの分析

収録したデータ及び文字化した断片に基づき、ある事柄に 対する意見、評価の不同意を示す先行発話、不同意ターン、 不同意を示された話し手の反応を分析する。また、その反 応の後に不同意を行った話し手がなんらかの反応をすれ ば、それも考察の範囲に入れる。以上の手順で分析を行う。

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6.参考文献

• Pomerantz(1984). Agreeing and disagreeing with assessments: some features of Preferred/dispreferred turn shapes. In

Atkinson,J.M.,& Heritage,J.(Eds.) Structures of Social

Action.Cambridge: studies in conversation analysis. Cambridge Univesity Press.pp57-101

• Brown, P. & Levinson, S. (1987). Politeness: Some universals in language use. Cambridge : Cambridge University Press. (田中典 子監訳 (2011)『ポライトネス―言語使用におけるある普遍現象 ―』研究社.)

• 大塚淳子(2005)「不同意の表明―日本人大学生の場合―」『日 本語・日本文化』 31: 81-92

• Hosoda (2009). Diluting Disagreement in Japanese

Conversation. JINBUN KENKYU: KANAGAWA DAIGAKU JINBUN GAKKAI,169:87-117

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• 杉浦秀行(2011)「「強い同意」はどのように認識可能となるか―日 常会話における同意ターンのマルチモーダル分析―」『社会言語 科学』14(1):20-32 • 中村香苗(2011)「会話における見解交渉と主張態度の調整」『社 会言語科学』14(1):33-47 • 王萌(2013)『日本人と中国人の不同意表明:ポライトネスの観点 から』.花書院. • 堀田智子(2014)「中国人日本語学習者の「不同意」行為―中間 言語語用論の観点から―」東北大学国際文化研究科博士論文 • 張允娥(2017)「友人同士の自由会話におけるポライトネス・ストラ

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